特開 2024-66256 減速装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024066256

(43)【公開日】2024-05-15

(54)【発明の名称】減速装置

(51)【国際特許分類】

   F16H 57/023 20120101AFI20240508BHJP

   F16H 1/32 20060101ALI20240508BHJP

【ＦＩ】

F16H57/023

F16H1/32 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022175730

(22)【出願日】2022-11-01

(71)【出願人】

【識別番号】000002107

【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100105924

【弁理士】

【氏名又は名称】森下 賢樹

(74)【代理人】

【識別番号】100116274

【弁理士】

【氏名又は名称】富所 輝観夫

(72)【発明者】

【氏名】田村 光拡

【テーマコード（参考）】

3J027

3J063

【Ｆターム（参考）】

3J027FA37

3J027GB03

3J027GC08

3J027GC22

3J027GE11

3J063AB12

3J063AB14

3J063AB15

3J063AC01

3J063BA01

3J063BB11

3J063CB05

3J063CD52

3J063CD53

3J063XA03

(57)【要約】

【課題】樹脂部材のクリープの影響を低減可能な減速装置を提供することを目的の一つとする。
【解決手段】ある態様の減速装置１０は、被駆動部材５０が連結される出力部材２６、２７を有する減速装置であって、出力部材２６、２７は、樹脂により構成され、被駆動部材５０を連結するための細目ネジＢ１がねじ込まれる有底の第１ネジ孔Ｈ１を複数有し、出力部材２６、２７には、周方向において、複数の第１ネジ孔Ｈ１の間に肉抜き部が設けられる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

被駆動部材が連結される出力部材を有する減速装置であって、
前記出力部材は、樹脂により構成され、前記被駆動部材を連結するための細目ネジがねじ込まれる有底の第１ネジ孔を複数有し、
前記出力部材には、周方向において、前記複数の第１ネジ孔の間に肉抜き部が設けられる減速装置。

【請求項2】

前記出力部材は、第１出力部材と第２出力部材を連結した構成とされ、前記第１出力部材と前記第２出力部材とを連結するための連結ボルトがねじ込まれる第２ネジ孔を有し、
前記第２ネジ孔は、周方向において、前記複数の第１ネジ孔のうち一のネジ孔と別のネジ孔の間に配置され、
前記出力部材は、周方向において、前記一のネジ孔と前記別のネジ孔の間には肉抜き部を有しない、請求項１に記載の減速装置。

【請求項3】

前記連結ボルトは並目ネジであり、前記第２ネジ孔は有底である、請求項２に記載の減速装置。

【請求項4】

前記第１出力部材は内歯歯車であり、前記第２出力部材は入力軸を支持する軸受が配置される軸受ハウジングである、請求項２に記載の減速装置。

【請求項5】

起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う第１内歯歯車および第２内歯歯車と、を有し、前記第１出力部材は前記第１内歯歯車であり、前記第２出力部材は前記起振体を支持する軸受が配置される軸受ハウジングである、請求項４に記載の減速装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、減速装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、軽量化を目的として減速機部品へ樹脂材料の適用が試みられてきた。例えば、特許文献１には、歯車装置に搭載される部材であって、樹脂材料で形成された第２内歯歯車が記載されている。第２内歯歯車には、駆動対象の外部部材と連結するための連結用孔と、第２カバーと連結するための連結用孔が設けられている。これらの連結用孔には、連結用のボルトが締結されるための雌ネジ部が形成されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２１－１８１１２６号公報（図２（Ａ））

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

樹脂材料は自己潤滑性を有し、且つクリープ等の特有の現象も発生する為、締結構造に対して十分な配慮をすることが重要である。特に、樹脂製の雌ネジを用いたネジ締結においては、過大な締付トルクが雌ネジのせん断破壊やクリープ破壊をもたらすことも考えられる。クリープ等の影響を低減するために、金属製の雌ネジをインサート成形することも考えられるが、この場合、製造コストの点で不利になり、精度低下の要因になり得る。特許文献１は、樹脂部材についてクリープ等の影響を低減する観点から、十分な開示をしているとは言えない。

【0005】

本発明の目的の一つは、樹脂部材のクリープの影響を低減可能な減速装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記課題を解決するために、本発明のある態様の減速装置は、被駆動部材が連結される出力部材を有する減速装置であって、出力部材は、樹脂により構成され、被駆動部材を連結するための細目ネジがねじ込まれる第１ネジ孔を有し、第１ネジ孔は有底であり、周方向において第１ネジ孔と第１ネジ孔の間には肉抜き部が設けられる。

【0007】

なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。

【発明の効果】

【0008】

本発明によれば、樹脂部材のクリープの影響を低減可能な減速装置を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】実施形態の減速装置を概略的に示す側面図である。

【図2】図１の減速装置の出力部材を入力側から視た図である。

【図3】図２のＡ－Ａ線およびＢ－Ｂ線に沿った出力部材の断面を示す。

【0010】

以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。

【0011】

また、共通点のある別々の構成要素には、要素名の先頭に「第１、第２」などの序数を付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第１、第２などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。

【0012】

［実施形態］
以下、図１を参照して、本発明の実施形態の減速装置の全体構成を説明する。図１は、実施形態の減速装置を概略的に示す側面図である。一例として、減速装置１０は、撓み噛合い式歯車装置である。実施形態の減速装置１０は、入力軸１１と、起振体１２、１３と、外歯歯車１４、１５と、主軸受２４と、入力軸軸受３０、３１と、起振体軸受３４、３５と、内歯歯車１６、１７と、ケーシング２１、２２、２３と、出力部材２６、２７と、受板部材３６、３７とを備える。

【0013】

以下、内歯歯車１６、１７の中心軸線Ｌａに沿った方向を「軸方向」といい、その中心軸線Ｌａを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側（図中右側、駆動源が配置される側）を入力側といい、他方側（図中左側、被駆動部材が配置される側）を反入力側という。このような方向の表記は、減速装置１０の使用姿勢を制限するものではなく、減速装置１０は、任意の姿勢で使用されうる。

【0014】

起振体１２、１３のうち第１起振体１２は、第２起振体１３の反入力側に配置される。外歯歯車１４、１５のうち第１外歯歯車１４は、第２外歯歯車１５の反入力側に配置される。内歯歯車１６、１７のうち第１内歯歯車１６は、第２内歯歯車１７の反入力側に配置される。入力軸軸受３０、３１のうち第１入力軸軸受３０は、第２入力軸軸受３１の反入力側に配置される。起振体軸受３４、３５のうち第１起振体軸受３４は、第２起振体軸受３５の反入力側に配置される。受板部材３６、３７のうち第１受板部材３６は、第２受板部材３７の反入力側に配置される。

【0015】

減速装置１０は、内歯歯車１６、１７と噛み合う外歯歯車１４、１５を撓み変形させつつ回転させることで外歯歯車１４、１５を自転させ、その自転成分を出力する撓み噛み合い式歯車装置である。

【0016】

入力軸１１は、中空の軸部材であり、入力軸１１の入力側には駆動部のモータが接続され、モータからの動力回転が入力される。入力軸１１は、起振体１２、１３を有しており、起振体軸としても機能する。起振体１２、１３は、入力軸１１の外周に一体的に形成されている。起振体１２、１３は、中心軸線Ｌａに沿った方向に直交する断面の外周形状が楕円状をなす。本明細書での「楕円」とは、幾何学的に厳密な楕円に限定されず、略楕円も含まれる。

【0017】

外歯歯車１４、１５は、可撓性を持つ筒状の部材である。外歯歯車１４、１５は、外歯基部として機能する筒状部の外周部に軸方向に離れて設けられている。なお、第１外歯歯車１４および第２外歯歯車１５は、筒状の基部の外周に軸方向に連続して一体的に形成されており、両者の歯数は同じである。第１外歯歯車１４は、出力用内歯歯車として機能する第１内歯歯車１６と噛み合い、第２外歯歯車１５は、減速用内歯歯車として機能する第２内歯歯車１７と噛み合う。

【0018】

外歯歯車１４、１５は、起振体１２、１３の回転に追従して、起振体軸受３４、３５を介して起振体１２、１３により楕円状に撓み変形させられる。このとき、外歯歯車１４、１５は、内歯歯車１６、１７との噛合位置を周方向に変えつつ、起振体１２、１３の形状に合うように撓み変形させられる。起振体軸受３４、３５は、起振体１２、１３と外歯歯車１４、１５の間に配置される。実施形態では、起振体軸受３４、３５は、リテーナ３２、３３を有する。

【0019】

第１内歯歯車１６の歯数は第１外歯歯車１４の歯数と同数であり、第２内歯歯車１７の歯数は、第２外歯歯車１５の歯数より２ｉ（ｉは１以上の自然数）だけ多い。これにより、起振体１２、１３が回転したとき、第１内歯歯車１６には、外歯歯車１４、１５の自転成分と同じ大きさの回転が出力される。

【0020】

ケーシング２１、２２、２３は、主軸受２４を介して第１内歯歯車１６を回転自在に支持する第１ケーシング２１と、第１ケーシング２１の入力側に配置される第２ケーシング２２と、第２ケーシング２２の入力側に配置される第３ケーシング２３とを有する。第２ケーシング２２には、第２内歯歯車１７が一体化される。第１ケーシング２１と、第２ケーシング２２は、ボルトＢ３により互いに連結される。第２ケーシング２２と、第３ケーシング２３は、ボルトＢ４により互いに連結される。

【0021】

出力部材２６、２７は、外歯歯車１４の自転成分を取り出して被駆動部材５０に伝達する。出力部材２６、２７は、第１出力部材２６と、第１外歯歯車１４の反入力側に配置される第２出力部材２７とを含む。第１出力部材２６には、第１内歯歯車１６と一体化される。第１出力部材２６と、第２出力部材２７は、連結ボルトＢ２により互いに連結される。

【0022】

第１入力軸軸受３０は、第２出力部材２７と入力軸１１との間に配置される。第２入力軸軸受３１は、第３ケーシング２３と入力軸１１との間に配置される。入力軸軸受３０、３１は、第２出力部材２７および第３ケーシング２３に対して、起振体１２、１３を有する入力軸１１を回転自在に支持する。入力軸軸受３０、３１の構成に限定はないが、この例の入力軸軸受３０、３１は玉軸受けである。

【0023】

主軸受２４は、第１ケーシング２１と第１出力部材２６との間に配置される。主軸受２４は、第１ケーシング２１に対して、出力部材２６、２７を回転自在に支持する。主軸受２４の構成に限定はないが、この例の主軸受２４は玉軸受けである。

【0024】

第１外歯歯車１４の反入力側には第１受板部材３６が配置される。第２外歯歯車１５の入力側には第２受板部材３７が配置される。受板部材３６、３７は、入力軸１１を環囲する環状の板部材である。受板部材３６、３７は、外歯歯車１４、１５および起振体軸受３４、３５の反入力側および入力側に延在して、外歯歯車１４、１５およびリテーナ３２、３３の反入力側および入力側への軸方向移動を規制する。

【0025】

減速装置１０の動作を説明する。モータ（不図示）の回転により入力軸１１が回転すると、入力軸１１とともに起振体１２、１３が回転する。起振体１２、１３が回転すると、内歯歯車１６、１７との噛合位置を周方向に変えつつ、起振体１２、１３の形状に合うように外歯歯車１４、１５が連続的に撓み変形させられる。外歯歯車１４、１５は、起振体１２、１３が一回転するごとに、第２内歯歯車１７の第２外歯歯車１５との歯数差に相当する分、第２内歯歯車１７に対して相対回転（自転）する。

【0026】

このとき、起振体１２、１３の回転は、この歯数差に応じた減速比で減速されて外歯歯車１４、１５が自転する。第１内歯歯車１６は、第１外歯歯車１４と歯数が同じである。よって、第１内歯歯車１６は、起振体１２、１３が一回転した前後で外歯歯車１４、１５との相対的な噛合位置が変わらないまま、外歯歯車１４、１５と同じ自転成分で同期して回転する。第１出力部材２６は第１内歯歯車１６と一体的に形成されており、この第１内歯歯車１６の回転は、第１出力部材２６と、第２出力部材２７とを介して被駆動部材５０に伝達される。この結果、入力軸１１に入力された回転が減速されて、被駆動部材５０の回転として伝達される。

【0027】

減速装置１０を構成する各部材の素材を説明する。歯車以外の各部材の素材は、特に限定されるものではないが、実施形態では以下のように構成されている。ケーシング２１、２２、２３、出力部材２６、２７および受板部材３６、３７は、樹脂材料から構成されている。樹脂材料には、樹脂単体、あるいは、補強繊維を含有した樹脂を適用でき、例えばＰＥＥＫ（Poly Ether Ether Ketone）材やＰＯＭ（Polyacetal又はPolyoxymethylene等）材など種々の樹脂材料を採用できる。補強繊維を含有した樹脂としては、ＣＦＲＰ（Carbon Fiber Reinforced Plastics）などの複合材料、樹脂とその他の別素材との複合材料、ベーク材（紙ベーク材や布ベーク材等）などを適用することができる。これらの部材を樹脂製とすることにより、減速装置１０の低コスト化と軽量化を図ることができる。

【0028】

入力軸１１、起振体１２、１３、外歯歯車１４、１５は、ニッケルクロムモリブデン鋼などの鉄鋼素材（金属材料）から構成される。一方、内歯歯車１６、１７は、ベース樹脂に補強繊維として炭素繊維を含有させた炭素繊維強化樹脂材料により構成される。ベース樹脂には、例えばＰＥＥＫ材やＰＯＭ材など、種々の樹脂材料を採用できる。樹脂材料は、含有される補強繊維が布状に結び付いてない繊維である場合、樹脂材料を用いて射出成形又は圧縮成形が可能である。樹脂材料に含有される素材が布状又は片状に結びついた繊維であれば、樹脂材料を用いて圧縮成形が可能である。

【0029】

可動部分の潤滑性を確保するために、減速装置１０の内部空間Ｓには、潤滑剤Ｊが封入される。

【0030】

図２、図３も参照して、実施形態の減速装置１０の特徴構成を説明する。図２は、第１出力部材２６を入力側から視た図である。図３（Ａ）は、第１出力部材２６のＡ－Ａ線に沿った断面を示し、図３（Ｂ）は、第１出力部材２６のＢ－Ｂに沿った断面を示す。

【0031】

減速装置の部材に樹脂材料を適用することが考えられる。樹脂部材は、一定の荷重が掛かると時間とともにその周辺部分が変形するクリープ現象を生じる。また、樹脂材料は自己潤滑性を有するため、クリープ現象と相まって締結構造が弛む場合がある。特に、樹脂製の雌ネジを有するネジ締結部においては、過大な締付トルクが雌ネジのせん断破壊やクリープ破壊をもたらすことも考えられる。クリープ等の影響を低減するために、金属製の雌ネジをインサート成形することも考えられるが、この場合、製造コストの点で不利になり、精度低下の要因になり得る。

【0032】

ネジ締結部の経時的な弛み現象を抑制するために、減速装置１０は、被駆動部材５０が連結される出力部材２６、２７を有する減速装置であって、出力部材２６、２７は、樹脂により構成され、被駆動部材５０を連結するための細目ネジＢ１がねじ込まれる有底の第１ネジ孔Ｈ１を複数有し、出力部材２６、２７には、周方向において、複数の第１ネジ孔Ｈ１の間に肉抜き部２８が設けられる。図３（Ａ）に示すように、第１ネジ孔Ｈ１と肉抜き部２８とは、軸方向において互いに逆方向から周方向に交互に設けられる。この例の第１ネジ孔Ｈ１は、反入力側の開口から入力側に向かって凹む円形の孔である。第１ネジ孔Ｈ１にはタップ（雌ネジ）が設けられていてもよい。図３の例では、肉抜き部２８の周方向幅は、第１ネジ孔Ｈ１の周方向幅よりも大きい。

【0033】

この構成によれば、細目ネジＢ１は、ネジのリード角が小さいため緩みが発生しにくく、緩める際のトルクも小さいため、ネジ締結部の経時的な弛み現象を抑制できる。また、細目ネジＢ１は、同じサイズの並目ネジと比較し、有効径が大きいため耐力が高く、有効断面積が大きいためせん断方向の外力にも強い。さらに、細目ネジＢ１は、並目ネジに比べて、より小さなトルクで必要軸力を得ることが可能である。これらにより、第１ネジ孔Ｈ１の破損を減らすことができる。第１ネジ孔Ｈ１が有底であるため、第１ネジ孔Ｈ１から潤滑剤Ｊが漏れる可能性は低い。

【0034】

図２の例では、第１ネジ孔Ｈ１は、周方向に所定の間隔で複数（例えば、１６個）設けられる。複数の第１ネジ孔Ｈ１は、周方向に等間隔で配置されてもよい。肉抜き部２８は、周方向に隣り合う２つの第１ネジ孔Ｈ１の間に複数（例えば、１２個）設けられる。肉抜き部２８は、入力側から視て扇形状または矩形状の輪郭を有する。肉抜き部２８は、入力軸側の開口から反入力側に向かって凹む凹部であり、非貫通の有底孔として設けられる。肉抜き部２８を有することにより、樹脂成形時の第１出力部材２６の冷却速度を均一化し、形状精度を確保する効果が期待できる。肉抜き部２８が有底であるため、肉抜き部２８から潤滑剤Ｊが漏れる可能性は低い。

【0035】

樹脂成形により出力部材２６、２７を一体に形成することも可能であるが、この場合、金型構造が複雑になり、樹脂成形時の工程数が増えるおそれがある。そこで、実施形態の減速装置１０では、出力部材２６、２７は、第１出力部材２６と第２出力部材２７を連結した構成とされ、第１出力部材２６と第２出力部材２７とを連結するための連結ボルトＢ２がネジ込まれる第２ネジ孔Ｈ２を有する。この場合、出力部材２６、２７の製造が容易になる。第２出力部材２７は、入力軸軸受３０の反入力側を覆うカバーとしても機能する。

【0036】

一例として、第２ネジ孔Ｈ２は、周方向において、複数の第１ネジ孔Ｈ１のうち一のネジ孔Ｈ１（Ａ）と別のネジ孔Ｈ１（Ｂ）の間に配置される。一のネジ孔Ｈ１（Ａ）と別のネジ孔Ｈ１（Ｂ）は、複数の第１ネジ孔Ｈ１のうち周方向に隣り合う２つの第１ネジ孔Ｈ１である。図２の例では、第２ネジ孔Ｈ２は、周方向に所定の間隔で複数（例えば、４個）設けられる。第２ネジ孔Ｈ２は、周方向において、一のネジ孔Ｈ１（Ａ）と別のネジ孔Ｈ１（Ｂ）の中央に配置される。第２ネジ孔Ｈ２の径方向位置は、第１ネジ孔Ｈ１の径方向位置と同一である。この例の第２ネジ孔Ｈ２は、反入力側の開口から入力側に向かって凹む円形の孔である。第２ネジ孔Ｈ２にはタップ（雌ネジ）が設けられていてもよい。

【0037】

経時的な弛み現象を抑制する観点から、第１ネジ孔Ｈ１の周辺を肉盛りして剛性を維持することが望ましい。そこで、実施形態では、図２に示すように、第１出力部材２６は、周方向において、一のネジ孔Ｈ１（Ａ）と別のネジ孔Ｈ１（Ｂ）の間には肉抜き部２８を有しない。換言すれば、周方向において、第２ネジ孔Ｈ２を挟んで隣り合う一のネジ孔Ｈ１（Ａ）と別のネジ孔Ｈ１（Ｂ）との間において、肉抜き部に対応する位置に上覆い部２９が設けられる。図３（Ｂ）に示すように、上覆い部２９に、反入力側から第２ネジ孔Ｈ２が形成されているため、厚肉部が殆ど形成されず、樹脂成形時の第１出力部材２６の冷却速度は均一化される。

【0038】

連結ボルトＢ２は、第２出力部材２７を支持するもので、第１ネジ孔Ｈ１よりも小さな荷重を負担するから安価であることが望ましい。そこで、実施形態では、連結ボルトＢ２は並目ネジであり、第２ネジ孔Ｈ２は有底である。この場合、細目ネジよりもコスト的に有利である。また、有底であるため第２ネジ孔Ｈ２から潤滑剤Ｊが漏れる可能性は低い。

【0039】

第１出力部材２６と第１内歯歯車１６の間にはトルク伝達の過程で大きな荷重がかかるため、両者は大きな結合強度を有することが望ましい。そこで、前述したように、第１出力部材２６は第１内歯歯車１６と一体的に形成されており、第１出力部材２６は内歯歯車１６である。この場合、第１出力部材２６と第１内歯歯車１６とを別々に形成した後に結合する場合より、大きな結合強度を実現できる。

【0040】

実施形態では、第２出力部材２７は、入力軸１１を支持する軸受３０が配置される軸受ハウジングとして機能する。この場合、入力軸１１を支持するために専用の部材を設ける場合に比べて、部品点数が減り、小型化、コスト、および信頼性の面で有利である。

【0041】

前述したように、起振体１２、１３と、起振体１２、１３により撓み変形する外歯歯車１４、１５と、外歯歯車１４、１５と噛合う第１内歯歯車１６および第２内歯歯車１７と、を有する。実施形態では、第１出力部材２６は第１内歯歯車１６であり、第２出力部材２７は起振体１２、１３を支持する軸受３０が配置される軸受ハウジングとして機能する。この場合、起振体１２、１３を支持するために専用の部材を設ける場合に比べて、部品点数が減り、小型化、コスト、および信頼性の面で有利である。

【0042】

以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。

【0043】

以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。

【0044】

実施形態の説明では、減速装置１０が筒型の撓み噛合い式歯車装置である例を示したが、本発明はこれに限定されない。減速装置は他の形式の歯車装置であってもよい。当該他の形式の歯車装置としては、一例として、カップ型、シルクハット型等の撓み噛合い式歯車装置、センタークランク型、振り分け型等の偏心揺動型歯車装置、単純遊星歯車型の歯車装置等が挙げられる。

【0045】

実施形態の説明では、肉抜き部２８が、入力軸側の開口から反入力側に向かって凹む形状を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、肉抜き部は、反入力軸側の開口から入力側に向かって凹む形状を有してもよい。

【0046】

実施形態の説明では、肉抜き部２８にリブが設けられない例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、肉抜き部にリブが設けられてもよい。

【0047】

実施形態の説明では、肉抜き部２８の周方向幅が、第１ネジ孔Ｈ１の周方向幅よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限定されない。肉抜き部の周方向幅は、第１ネジ孔の周方向幅以下であってもよい。

【0048】

実施形態の説明では、肉抜き部２８が、軸方向から視て扇形状または矩形状の輪郭を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、肉抜き部は、軸方向から視て円形状、楕円形状、多角形状等の輪郭を有してもよい。

【0049】

上述の各変形例は実施形態と同様の作用と効果を奏する。

【0050】

上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。

【符号の説明】

【0051】

Ｂ１ 細目ネジ、 Ｂ２ 連結ボルト、 Ｈ１ 第１ネジ孔、 Ｈ２ 第２ネジ孔、 １０ 減速装置、 １１ 入力軸、 １２ 第１起振体、 １３ 第２起振体、 １４ 第１外歯歯車、 １５ 第２外歯歯車、 １６ 第１内歯歯車、 １７ 第２内歯歯車、 ２６ 第１出力部材、 ２７ 第２出力部材、 ２８ 肉抜き部、 ３０ 第１入力軸軸受、 ５０ 被駆動部材。

【図1】

【図2】

【図3】