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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066257
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20240508BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/91 K
H01L29/86 301D
H01L29/91 F
H01L29/86 301P
H01L29/91 B
H01L29/48 F
H01L29/48 P
H01L29/48 D
H01L21/265 V
H01L21/265 R
H01L29/48 M
H01L29/86 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175731
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 直之
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA10
4M104BB14
4M104BB18
4M104BB21
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD08
4M104DD37
4M104DD43
4M104DD84
4M104DD96
4M104FF07
4M104FF32
4M104GG02
4M104GG03
4M104GG18
(57)【要約】
【課題】順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性の改善が可能となる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型のドリフト層2と、ドリフト層2の上面側に設けられた複数のトレンチ3a~3dと、トレンチ3a~3dに挟まれたメサ部10a~10eの少なくとも側部に、ドリフト層2に接して設けられた第2導電型のアノード領域5a~5eと、トレンチ3a~3dに埋め込まれたアノード電極(6a~6e,7,8)と、第1導電型のカソード領域1を備え、メサ部10a~10eが隣り合う第1メサ部及び第2メサ部を有し、第1メサ部の一方の側面においてアノード領域5a~5eが露出し、アノード領域5a~5eとアノード電極(6a~6e,7,8)とがオーミック接合し、第1メサ部の他方の側面、又は第2メサ部の第1メサ部側の一方の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とアノード電極(6a~6e,7,8)がショットキー接合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上面側に設けられた第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上面側に設けられた複数のトレンチと、
前記半導体基板の隣り合う前記トレンチに挟まれたメサ部の少なくとも側部に、前記ドリフト層に接して設けられた第2導電型のアノード領域と、
前記トレンチに埋め込まれたアノード電極と、
前記半導体基板の下面側に設けられた第1導電型のカソード領域と、
を備え、
前記メサ部が隣り合う第1メサ部及び第2メサ部を有し、
前記第1メサ部の一方の側面において前記アノード領域が露出し、前記アノード領域と前記アノード電極とがオーミック接合し、
前記第1メサ部の他方の側面、及び前記第2メサ部の前記第1メサ部側の一方の側面の少なくともいずれかにおいて前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合する
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板が炭化珪素で構成されている
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1メサ部の前記一方の側面が前記第2メサ部側であり、
前記第1メサ部の前記他方の側面、及び前記第2メサ部の前記一方の側面において前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合し、
前記第2メサ部の他方の側面において前記アノード領域が露出し、前記アノード領域と前記アノード電極とがオーミック接合する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記アノード領域が、更に前記第1および第2メサ部の上部に設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アノード領域が、更に前記トレンチの底部に設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トレンチの底部に設けられ、前記アノード領域よりも低不純物濃度の第2導電型の保護領域を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記アノード電極が、
前記アノード領域に接して設けられ、前記アノード領域とオーミック接合するオーミック電極と、
前記オーミック電極及び前記ドリフト層に接して設けられ、前記ドリフト層とショットキー接合するショットキー電極と、
を備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記トレンチが平面パターン上、ストライプ状に延伸する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記アノード電極が、前記アノード領域及び前記ドリフト層に接して設けられ、前記アノード領域とオーミック接合し、且つ前記ドリフト層とショットキー接合するショットキー電極を備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記トレンチの下面の一部において前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1メサ部の前記一方の側面の上部において前記アノード領域が露出し、前記アノード領域と前記アノード電極とがオーミック接合し、
前記第1メサ部の前記一方の側面の下部において前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1メサ部の前記一方の側面が前記第2メサ部とは反対側であり、
前記第1メサ部の前記第2メサ部側の前記他方の側面、及び前記第2メサ部の前記一方の側面において前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合し、
前記第2メサ部の他方の側面において前記アノード領域が露出し、前記アノード領域と前記アノード電極とがオーミック接合する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1メサ部の前記他方の側面において前記アノード領域が露出し、前記アノード領域と前記アノード電極とがオーミック接合し、
前記第2メサ部の前記一方の側面及び他方の側面において前記ドリフト層が露出し、前記ドリフト層と前記アノード電極がショットキー接合する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
半導体基板の上面側に第1導電型のドリフト層を形成する工程と、
前記ドリフト層の上面側にトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの一方の側壁面に第2導電型の不純物を斜め方向からイオン注入することにより、前記半導体基板の隣り合う前記トレンチに挟まれるメサ部の少なくとも側部に、前記ドリフト層に接する第2導電型のアノード領域を形成する工程と、
前記トレンチを埋め込み、前記メサ部の一方の側面において露出する前記アノード領域とオーミック接合し、且つ前記メサ部の他方の側面において露出する前記ドリフト層とショットキー接合するアノード電極を形成する工程と、
を含む
半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記半導体基板が炭化珪素で構成されている
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記アノード電極を形成する工程は、
前記トレンチの前記一方の側壁面に金属膜を形成し、
熱処理により、前記金属膜と前記ドリフト層とを反応させて、シリサイド層からなるオーミック電極を形成する
ことを含む
請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記金属膜は、斜め方向からのスパッタリングにより形成する
請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記アノード領域を更に前記トレンチの底部に形成する
請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記アノード領域を更に前記メサ部の上部に形成する
請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)からなるダイオードとして、n型ドリフト層を構成するn型エピタキシャル成長層の設計仕様を薄い厚さ及び高い不純物濃度に設定可能であることから、ショットキーバリアダイオード(SBD)が一般的に使用されている。
【0003】
SiCからなるSBDでは、半導体基板とアノード電極との接合面での電界強度が高く、逆方向電圧の印加時にショットキー障壁を電子がトンネリングすることに起因する逆方向リーク電流の増大や、SiC固有の表面欠陥に起因する逆方向リーク電流の増大という問題がある。このため、半導体基板の上面側にショットキー接合(接触)とpn接合とを混在させたジャンクションバリアショットキー(JBS)構造を採用することが検討されている。
【0004】
JBS構造では、n型ドリフト層の上面側に複数のp型領域を形成し、複数のp型領域のそれぞれとn型ドリフト層とによりpn接合を形成する、また、p型領域の間のドリフト層とショットキー電極とによりショットキー接合を形成する。JBS構造を採用することで、半導体基板とアノード電極との接合面での電界強度を低くすることができ、逆方向リーク電流を抑制することができる。
【0005】
JBS構造のSBDにおいて、順方向サージ電流(IFSM)耐量を改善するために、pn接合を形成するp型領域とオーミック接合(接触)するオーミック電極を形成することにより、pn接合部に局所的にサージ電流を流し、順方向サージ電流耐量を改善することが検討されている。
【0006】
特許文献1は、素子領域に形成されたトレンチの下部をp型のアノード領域で埋めてpnダイオードを構成し、トレンチの上部をアノード電極で埋めてSBDを構成する構造を開示する。特許文献2は、半導体基板の表面に設けられた凹み部の下側にp型領域を設け、凹み部をショットキー電極で埋めた構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6400544号明細書
【特許文献2】特許第5600411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
JBS構造のSBDにおいて、順方向サージ電流耐量を改善するために、同一平面上にショットキー接合及びオーミック接合を形成する場合、ショットキー接合とオーミック接合とで面積を取り合うこととなる。このため、オーミック接合の面積を増加させると順方向サージ電流耐量は改善するものの、ショットキー接合の面積が減少するため、順方向電圧(VF)が悪化する。このように、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧にはトレードオフの関係があり、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することは困難である。
【0009】
本発明は、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性の改善が可能となる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(a)半導体基板の上面側に設けられた第1導電型のドリフト層と、(b)ドリフト層の上面側に設けられた複数のトレンチと、(c)半導体基板の隣り合うトレンチに挟まれたメサ部の少なくとも側部に、ドリフト層に接して設けられた第2導電型のアノード領域と、(d)トレンチに埋め込まれたアノード電極と、(e)半導体基板の下面側に設けられた第1導電型のカソード領域と、を備え、メサ部が隣り合う第1メサ部及び第2メサ部を有し、第1メサ部の一方の側面においてアノード領域が露出し、アノード領域とアノード電極とがオーミック接合し、第1メサ部の他方の側面、及び第2メサ部の第1メサ部側の一方の側面の少なくともいずれかにおいてドリフト層が露出し、ドリフト層とアノード電極がショットキー接合する半導体装置であることを要旨とする。
【0011】
本発明の他の態様は、(a)半導体基板の上面側に第1導電型のドリフト層を形成する工程と、(b)ドリフト層の上面側にトレンチを形成する工程と、(c)トレンチの一方の側壁面に第2導電型の不純物を斜め方向からイオン注入することにより、半導体基板の隣り合う前記トレンチに挟まれるメサ部の少なくとも側部に、前記ドリフト層に接する第2導電型のアノード領域を形成する工程と、(d)トレンチを埋め込み、メサ部の一方の側面において露出する前記アノード領域とオーミック接合し、且つメサ部の他方の側面において露出するドリフト層とショットキー接合するアノード電極を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性の改善が可能となる半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の一例を示す平面図である。
図2図1のA-A線方向から見た断面図である。
図3】オーミック接合面積比率とIFSM及びVFの関係を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の工程断面図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図4に引き続く工程断面図である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図5に引き続く工程断面図である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図6に引き続く工程断面図である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図7に引き続く工程断面図である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図8に引き続く工程断面図である。
図10】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図9に引き続く工程断面図である。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例の図10に引き続く工程断面図である。
図12】第2実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図13】第3実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図14】第4実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図15】第5実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図16】第6実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図17】第7実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、図面を参照して本発明の第1~第7実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」及び「下面」を「おもて面」及び「裏面」とそれぞれ読み替えてもよい。
【0016】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。また、ミラー指数の表記において、「-」はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に「-」を付けることで負の指数を表している。
【0017】
(第1実施形態)
<半導体装置の構造>
第1実施形態に係る半導体装置として、ジャンクションバリアショットキー(JBS)構造の炭化珪素(SiC)からなるショットキーバリアダイオード(SBD)を例示する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。第1実施形態に係る半導体装置は、SiCからなる半導体基板(半導体基体)100を備える。半導体基板100の結晶構造は、例えば四層周期六方晶(4C-SiC)であり、半導体基板100のおもて面は(0001)面であるSi面である。
【0018】
第1実施形態に係る半導体装置は、半導体基板100に設けられた活性領域101と、半導体基板100に、活性領域101の周囲を囲むように設けられた終端領域102を備える。活性領域101は、ダイオードがオン状態のときに電流が流れる領域である。終端領域102は、活性領域101の端部に印加される電界を緩和し耐圧を保持する領域である。
【0019】
図1では、活性領域101に設けられた複数のトレンチ3a~3dを破線で模式的に示している。平面パターン上、トレンチ3a~3dは、一方向(図1の上下方向)に互いに平行に延伸する直線状(ストライプ状)の部分を有する。トレンチ3a~3dは、トレンチ3a~3dが延伸する方向とは直交する方向(図1の左右方向)に互いに離間して設けられている。なお、図1では、4本のトレンチ3a~3dを例示するが、トレンチ3a~3d以外の複数のトレンチが更に設けられていてよい。
【0020】
図1の活性領域101のトレンチ3a~3d上を通過するA-A方向から見た断面図を図2に示す。図2に示すように、半導体基板100の下面側には、第1導電型(n型)のカソード領域1が設けられている。カソード領域1は、例えばSiC基板で構成されている。
【0021】
カソード領域1の上面側には、カソード領域1よりも低不純物濃度の第1導電型(n型)のドリフト層2が設けられている。ドリフト層2は、例えばSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。なお、カソード領域1とドリフト層2との間に、カソード領域1よりも低不純物濃度で、且つドリフト層2よりも高不純物濃度のn型のバッファ層が設けられていてもよい。
【0022】
半導体基板100の上面から、半導体基板100の上面の垂直方向である深さ方向に複数のトレンチ3a~3dが互いに離間して設けられている。トレンチ3a~3dは、互いに対向する側壁面と下面を有する。トレンチ3a~3dの幅は例えば0.3μm以上、1μm以下程度である。トレンチ3a~3dの深さは例えば1μm以上、5μm以下程度である。トレンチ3a~3dの幅に対する深さであるアスペクト比は例えば2以上、5以下程度である。隣り合うトレンチ3a~3dの間隔は例えば0.3μm以上、1μm以下程度である。
【0023】
トレンチ3a~3dの並列方向(図2の左右方向)において、隣り合うトレンチ3a~3dの間にはメサ部10a~10eが設けられている。メサ部10a~10eは、隣り合うトレンチ3a~3dに挟まれた半導体基板100の領域であり、トレンチ3a~3dの下面の最も深い位置よりも上方の領域である。メサ部10a~10eの上面は、半導体基板100の上面と一致する。メサ部10a~10eの側面は、トレンチ3a~3dの側壁面と一致する。
【0024】
メサ部10a~10eの上部及び右側の側部には、第2導電型(p型)のアノード領域5a~5eが設けられている。メサ部10a~10eの上面及び右側の側面には、アノード領域5a~5eが露出する。メサ部10a~10eの左側の側面には、ドリフト層2が露出する。
【0025】
アノード領域5a~5eは、ドリフト層2のトレンチ3a~3dの底部の左側の部分まで設けられている。アノード領域5a~5eは、Z字状の断面形状を有する。アノード領域5a~5eの不純物濃度は、例えば1×1019/cm以上、1×1022/cm以下程度である。アノード領域5a~5eはドリフト層2に接している。p型のアノード領域5a~5eとn型のドリフト層2とによりpn接合が形成されている。
【0026】
なお、アノード領域5a~5eは、メサ部10a~10eの右側の側部に少なくとも設けられていればよい。アノード領域5a~5eは、メサ部10a~10eの上部及びトレンチ3a~3dの下面側には設けられていなくてもよい。
【0027】
トレンチ3a~3dの底部の右側の部分には、p型の保護領域4a~4dが設けられている。保護領域4a~4dは、トレンチ3a~3dの底部の電界を緩和する機能を有する。保護領域4a~4dの不純物濃度は、アノード領域5a~5eの不純物濃度よりも低く、例えば1×1018/cm以上、1×1019/cm以下程度である。
【0028】
保護領域4a~4dは、ドリフト層2及びアノード領域5a~5dの右側の端部に接している。また保護領域4a~4dは、アノード領域5a~5dとあわせてトレンチ3a~3dの下面全体を覆うように設けられる。図2では、保護領域4a~4dの厚さは、アノード領域5a~5dの厚さと同一である場合を例示する。保護領域4a~4dの厚さは、アノード領域5a~5eよりも厚くてもよく、或いはアノード領域5a~5eよりも浅くてもよい。
【0029】
トレンチ3a~3dの右側の側壁面、及びトレンチ3a~3dの下面の左側には、アノード領域5a~5eが露出する。トレンチ3a~3dの下面の右側には保護領域4a~4dが露出する。トレンチ3a~3dの右側の側壁面にはドリフト層2が露出する。
【0030】
トレンチ3a~3dの内側及びメサ部10a~10eの上面には、アノード電極(上面電極)(6a~6e,7,8)が設けられている。アノード電極(6a~6e,7,8)は、オーミック電極6a~6e、ショットキー電極7、及び上層電極8を備える。
【0031】
オーミック電極6a~6eは、アノード領域5a~5eの表面に選択的に設けられている。オーミック電極6a~6eは、例えばニッケルシリサイド(NiSi)膜等のシリサイド膜で構成されている。メサ部10a~10eの上面、メサ部10a~10eの右側の側面、及びトレンチ3a~3dの下面の左側においてアノード領域5a~5eが露出し、オーミック電極6a~6eとアノード領域5a~5eとがオーミック接合している。
【0032】
ショットキー電極7は、オーミック電極6a~6eを覆うように、トレンチ3a~3dの両側の側壁面及び下面と、メサ部10a~10eの上面に設けられている。ショットキー電極7は、例えばチタン(Ti)又はタングステン(W)等の金属で構成されている。メサ部10a~10eの左側の側面においてドリフト層2が露出し、ショットキー電極7とドリフト層2とがショットキー接合している。
【0033】
上層電極8は、ショットキー電極7を覆うように、トレンチ3a~3dの内側を埋めて、更にメサ部10a~10eの上面に設けられている。上層電極8は、例えば、アルミニウム(Al)やAl合金、銅(Cu)等の金属で構成されている。Al合金としては、Al-シリコン(Si)、Al-Si-銅(Cu)、Al-Cu等が挙げられる。上層電極8のうち、トレンチ3a~3dの内側の埋め込み部分にタングステン(W)を使用し、メサ部10a~10eの上面の部分にAlを使用してもよい。
【0034】
カソード領域1の下面側には、カソード電極(裏面電極)9が設けられている。カソード電極9は、例えば金(Au)等の金属からなる単層膜や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)の順で積層された積層膜で構成されている。また、カソード領域1とカソード電極9との間に、シリサイド膜を挿入してもよい。
【0035】
このように、第1実施形態に係る半導体装置は、アノード領域5a~5eとドリフト層2とのpn接合と、ショットキー電極7とドリフト層2とのショットキー接合とを混在させたJBS構造を有する。そして、メサ部10a~10eの一方(右側)の側面においてアノード領域5a~5eが露出し、アノード領域5a~5eとアノード電極(6a~6e,7,8)とがオーミック接合する。また、メサ部10a~10eの他方(左側)の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とアノード電極(6a~6e,7,8)がショットキー接合する。
【0036】
図3は、従来のJBS構造のSBDであって、同一平面上にオーミック接合とショットキー接合を形成した構造において、オーミック接合面積比率と、順方向サージ電流(IFSM)及び順方向電圧(VF)の関係を示すグラフである。オーミック接合面積比率は、オーミック接合及びショットキー接合の合計の面積に対するオーミック接合の面積の比率である。図3に示すように、オーミック接合面積比率を高くすると、オーミック接合の面積が増加するため、順方向サージ電流耐量が増加し、順方向サージ電流耐量が改善する。しかし、ショットキー接合の面積が減少するため、順方向電圧が増加し、VFが悪化する。よって、順方向サージ電流耐量と順方向電圧はトレードオフの関係にあり、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を同時に改善することは困難である。
【0037】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置によれば、図2に示すように、メサ部10a~10eの右側の側面においてアノード領域5a~5eを露出させて、オーミック接合を形成すると共に、メサ部10a~10eの左側の側面において、ドリフト層2を露出させて、ショットキー接合を形成する。このため、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができる。よって、チップ面積を広げることなく、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。
【0038】
更に、第1実施形態に係る半導体装置では、例えば、メサ部10a~10eの上面及びトレンチ3a~3dの下面の面方位として(0001)面であるSi面を使用し、トレンチ3a~3dの両側の側壁面の面方位として(0001)面に垂直な(1-100)面であるm面を使用している。メサ部10a~10eの上面及びトレンチ3a~3dの下面のSi面と、トレンチ3a~3dの両側の側壁面のm面では、ショットキー障壁が異なるため、仮に、ショットキー接合をトレンチ3a~3dの両側の側壁面だけでなく、メサ部10a~10eの上面又はトレンチ3a~3dの下面にも形成すると、ショットキー障壁の差に起因する特性バラツキが生じる。
【0039】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置によれば、メサ部10a~10eの上面及びトレンチ3a~3dの下面ではショットキー接合を形成せずに、トレンチ3a~3dの左側の側壁面のみに選択的にショットキー接合を形成する。これにより、ショットキー障壁の差に起因する特性バラツキを抑制することができる。
【0040】
<半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0041】
まず、図4に示すように、窒素(N)等の不純物が添加された第1導電型(n型)の半導体基板(出発基板)をカソード領域1として用意する。カソード領域1としての出発基板の上面は、例えばSi面に対して4°程度のオフ角を有していてもよい。次に、カソード領域1としての出発基板上に、N等の不純物が添加されたドリフト層2をエピタキシャル成長させる。カソード領域1及びドリフト層2により、半導体基板100が構成される。
【0042】
次に、化学気相成長(CVD)法又は熱酸化法等により、ドリフト層2の上面にシリコン酸化膜等の絶縁膜11を形成し、フォトリソグラフィ技術により、絶縁膜11をパターニングする。パターニングされた絶縁膜11をエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングにより、ドリフト層2の上部の一部を選択的に除去する。この結果、図5に示すように、ドリフト層2の上部に複数のトレンチ3a~3dが形成される。また、ドリフト層2のトレンチ3a~3dに挟まれた部分がメサ部10a~10eとなる。
【0043】
次に、図6に示すように、p型の保護領域4a~4dを形成するために、絶縁膜11をイオン注入用マスクとして用いて、トレンチ3a~3dの深さ方向に略平行で、且つトレンチ3a~3dの下面に対して略垂直方向から、トレンチ3a~3dの下面の全面にアルミニウム(Al)等のp型不純物をイオン注入する。その後、絶縁膜11を除去する。
【0044】
次に、図7に示すように、p型のアノード領域5a~5eを形成するために、トレンチ3a~3dの深さ方向に対して斜め方向から、トレンチ3a~3dの左側の側壁面に対して、アルミニウム(Al)等のp型不純物をイオン注入(斜めイオン注入)する。このときのイオン注入の角度は、トレンチ3a~3dの深さ、開口幅、テーパ角等に依存して適宜調整可能である。また、イオン注入のドーズ量は、図6に示したイオン注入のドーズ量よりも高い。p型不純物は、トレンチ3a~3dの左側の側壁面だけでなく、メサ部10a~10eの上面及びトレンチ3a~3dの下面の左側に亘ってイオン注入される。p型不純物は、トレンチ3a~3dの右側の側壁面及びトレンチ3a~3dの下面の右側にはイオン注入されない。
【0045】
なお、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図6の保護領域4a~4dを形成するためのイオン注入の後に、図7のアノード領域5a~5eを形成するためのイオン注入を実施する場合を例示したが、イオン注入の順番は限定されない。即ち、図7のアノード領域5a~5eを形成するためのイオン注入の後に、図6の保護領域4a~4dを形成するためのイオン注入を実施してもよい。
【0046】
次に、熱処理により、図6及び図7に示した手順でイオン注入されたp型不純物を活性化させる。この結果、図8に示すように、メサ部10a~10eの上部、メサ部10a~10eの右側の側部、及びトレンチ3a~3dの底部の左側に亘って、p型のアノード領域5a~5eが形成される。また、トレンチ3a~3dの底部の右側には、アノード領域5a~5eに接してp型の保護領域4a~4dが形成される。
【0047】
次に、図9に示すように、トレンチ3a~3dの深さ方向に対して斜め方向からのスパッタリング等により、アノード領域5a~5eの表面にニッケル(Ni)等の金属膜6を堆積する。この堆積には、成膜される粒子が基板に入射する方向がそろっている成膜方法が好適である。その後、熱処理(シンタリング)により、金属膜6中のNi原子とアノード領域5a~5e中のSi原子とをシリサイド反応させて、アノード領域5a~5eの表面にニッケルシリサイド(NiSi)等のシリサイドからなるオーミック電極(シリサイド層)6a~6eを形成する。
【0048】
次に、CVD法、スパッタリング法又は蒸着法等により、図10に示すように、トレンチ3a~3dの両側の側壁面及び下面と、メサ部10a~10eの上面に、チタン(Ti)等からなるショットキー電極7を形成する。次に、CVD法、スパッタリング法又は蒸着法等により、図11に示すように、トレンチ3a~3dを埋め込むように、メサ部10a~10eの上面にアルミニウム(Al)等からなる上層電極8を形成する。
【0049】
次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、半導体基板100を下面側から研削し、半導体基板100の厚さを製品厚さに調整する。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、半導体基板100の下面の全面に金(Au)等からなるカソード電極9を形成する。その後、半導体基板100を切断(ダイシング)して個片化することにより、図1及び図2に示した第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0050】
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる半導体装置を実現可能となる。更に、p型のアノード領域5a~5eを形成するための斜めイオン注入時には、トレンチ3a~3dの右側の側壁面にはイオン注入されないため、イオン注入用マスクが不要である。更に、トレンチ3a~3dを形成した後に、斜めイオン注入によりp型のアノード領域5a~5eを形成するため、設備単価の高い高加速イオン注入装置等が不要となる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置は、図12に示すように、p型のアノード領域5a~5eとショットキー電極7との間にオーミック電極6a~6eが設けられていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0052】
アノード電極(7,8)は、ショットキー電極7及び上層電極8のみを備える。ショットキー電極7は、メサ部10a~10eの上面、トレンチ3a~3dの両側の側壁面、及びトレンチ3a~3dの下面に接して設けられている。メサ部10a~10eの左側の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合する。メサ部10a~10eの上面、メサ部10a~10eの右側の側面、及びトレンチ3a~3dの下面においてアノード領域5a~5eが露出し、アノード領域5a~5eとショットキー電極7とがオーミック接合する。
【0053】
即ち、第2実施形態に係る半導体装置では、オーミック電極6a~6eを設けなくても、ショットキー電極7がアノード領域5a~5eとオーミック接合するするように構成されている。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0054】
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法としては、図9に示した金属膜6を形成する手順と、その後の熱処理(シンタリング)してオーミック電極6a~6eを形成する手順を省略すればよい。
【0055】
また、アノード領域5a~5eとショットキー電極7とをオーミック接合させるためには、例えば、図5に示したトレンチ3a~3dの形成時に、メサ部10a~10eの右側の側面に3C-SiC構造を形成する。そして、図7に示したアノード領域5a~5eを形成するためのイオン注入時に、p型不純物であるAlを、メサ部10a~10eに4H-SiC構造を崩す条件でイオン注入することにより、アノード領域5a~5eを形成する。4H-SiC構造を崩すとは、4H-SiC構造の一部がアモルファス構造もしくは3C-SiC構造になることである。このための不純物濃度は、例えば5×1019/cm以上、1×1022/cm以下程度である。その後、アノード領域5a~5eの表面にチタン(Ti)等からなるショットキー電極7を形成することで、アノード領域5a~5eとショットキー電極7とをオーミック接合させることができる。
【0056】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半導体装置は、図13に示すように、トレンチ3a~3dの底部にp型の保護領域4a~4dが無い点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。トレンチ3a~3dの下面の右側には、ドリフト層2が露出している。トレンチ3a~3dの下面の右側においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合する。
【0058】
第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。第3実施形態に係る半導体装置の製造方法としては、図6に示したp型の保護領域4a~4dを形成するためのp型不純物のイオン注入の手順を省略すればよい。
【0059】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。更に、トレンチ3a~3dの下面の右側がショットキー接合となるため、ショットキー接合の面積を増加することができると共に、p型の保護領域4a~4dを形成するための工数を削減することができる。
【0060】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る半導体装置は、図14に示すように、p型のアノード領域5a~5dが、メサ部10a~10eの上部、及びメサ部10a~10eの右側の側部にのみ選択的に設けられ、トレンチ3a~3dの底部には設けられていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0061】
アノード領域5a~5dとショットキー電極7との間にはオーミック電極6a~6dが設けられている。メサ部10a~10dの上面、メサ部10a~10dの右側の側面においてアノード領域5a~5dが露出し、アノード領域5a~5dとオーミック電極6a~6dとがオーミック接合する。メサ部10a~10dの左側の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合する。トレンチ3a~3dの底部には、トレンチ3a~3dの下面全体に亘って、p型の保護領域4a~4dが設けられている。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0062】
第4実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図7に示したp型のアノード領域5a~5dを形成するためのp型不純物のイオン注入時に、イオン注入の角度をトレンチ3a~3dの深さ方向に対して更に傾けることにより、メサ部10a~10eの上面、及びトレンチ3a~3dの左側の側壁面のみにp型不純物をイオン注入すればよい。
【0063】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。
【0064】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る半導体装置は、図15に示すように、p型のアノード領域5a~5dが、メサ部10a~10dの上部、及びメサ部10a~10dの右側の側部の上部にのみ選択的に設けられ、メサ部10a~10dの右側の側部の下部、及びトレンチ3a~3dの底部には設けられていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0065】
アノード領域5a~5dとショットキー電極7との間にはオーミック電極6a~6dが設けられている。メサ部10a~10dの上面、メサ部10a~10dの右側の側面の上部においてアノード領域5a~5dが露出し、アノード領域5a~5dとオーミック電極6a~6dとがオーミック接合している。
【0066】
メサ部10a~10dの右側の側面の下部には、アノード領域5a~5dが設けられていない。メサ部10a~10dの右側の側面の下部と、メサ部10a~10dの左側の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合している。トレンチ3a~3dの底部には、トレンチ3a~3dの下面全面に亘ってp型の保護領域4a~4dが設けられている。第5実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0067】
第5実施形態に係る半導体装置の製造方法では、図7に示したp型のアノード領域5a~5dを形成するためのp型不純物のイオン注入時に、イオン注入の角度をトレンチ3a~3dの深さ方向に対して更に傾けることにより、メサ部10a~10eの上面、及びトレンチ3a~3dの左側の側壁面の上部のみにp型不純物をイオン注入すればよい。
【0068】
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。更に、メサ部10a~10dの右側の側面の下部においてもショットキー接合が形成される、ショットキー接合の面積を増加することができる。
【0069】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る半導体装置は、図16に示すように、メサ部10a~10eの一方の側面においてショットキー接合が形成され、メサ部10a~10eの他方の側面においてオーミック接合が形成される点は、第1実施形態に係る半導体装置と共通する。しかし、第6実施形態に係る半導体装置は、トレンチ3a,3cの両側の側壁面において、ショットキー接合同士が対向すると共に、トレンチ3a,3cに隣り合うトレンチ3b,3dの両側の側壁面において、オーミック接合同士が対向する点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第6実施形態に係る半導体装置では、メサ部10a,10c,10eが共通の構造を有し、メサ部10b,10dが共通の構造であり且つメサ部10a,10c,10eと逆向きの構造を有する。
【0070】
メサ部10aの上部、メサ部10aの右側の側部、トレンチ3aの底部、メサ部10bの左側の側部、メサ部10bの上部に亘って、p型のアノード領域5abが設けられている。アノード領域5abとショットキー電極7との間にはオーミック電極6abが設けられている。メサ部10aの上面、メサ部10aの右側の側面、トレンチ3aの下面、メサ部10bの左側の側面、メサ部10bの上面においてアノード領域5abが露出し、オーミック電極6abとアノード領域5abとがオーミック接合している。
【0071】
メサ部10cの上部、メサ部10cの右側の側部、トレンチ3cの底部、メサ部10dの左側の側部、メサ部10dの上部に亘って、p型のアノード領域5cdが設けられている。アノード領域5cdとショットキー電極7との間にはオーミック電極6cdが設けられている。メサ部10cの上面、メサ部10cの右側の側面、トレンチ3cの下面、メサ部10dの左側の側面、メサ部10dの上面において、アノード領域5cdが露出し、オーミック電極6cdとアノード領域5cdとがオーミック接合している。
【0072】
メサ部10bの右側の側面、メサ部10cの左側の側面、メサ部10dの右側の側面、メサ部10eの左側の側面のそれぞれにおいてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合している。トレンチ3b,3dの底部には、トレンチ3b,3dの下面全面に亘ってp型の保護領域4b,4dが設けられている。
【0073】
このように、第6実施形態に係る半導体装置では、メサ部10b,10dの一方(左側)の側面においてアノード領域5ab,5cdが露出し、アノード領域5ab,5cdとアノード電極(6ab,6cd,7,8)とがオーミック接合する。また、メサ部10b,10dの他方(右側)の側面、及びメサ部10a,10c,10eの一方(左側)の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とアノード電極(6ab,6cd,7,8)がショットキー接合する。また、メサ部10a,10c,10eの他方(右側)の側面においてアノード領域5ab,5cd,5eが露出し、アノード領域5ab,5cd,5eとアノード電極(6ab,6cd,7,8)とがオーミック接合する。第6実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0074】
第6実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。
【0075】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る半導体装置は、図17に示すように、トレンチ3a~3dの両側の側壁面において、ショットキー接合とオーミック接合が対向する点は、第1実施形態に係る半導体装置と共通する。しかし、第7実施形態に係る半導体装置は、メサ部10a,10c,10eの両側の側面において、ショットキー接合同士が対向すると共に、メサ部10a,10c,10eに隣り合うメサ部10b,10dの両側の側面において、オーミック接合同士が対向する点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第7実施形態に係る半導体装置では、メサ部10a,10c,10eが共通の構造を有し、メサ部10b,10dが共通の構造を有する。
【0076】
メサ部10a,10c,10eにはp型のアノード領域は設けられていない。メサ部10a,10c,10eの上面及び両側の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とショットキー電極7とがショットキー接合している。
【0077】
メサ部10bの上部及び両側の側部には、p型のアノード領域5abが設けられている。アノード領域5abは、更にトレンチ3a,3bの底部にまで設けられている。アノード領域5abとショットキー電極7との間にはオーミック電極6abが設けられている。メサ部10bの上面及び両側の側面においてアノード領域5abが露出し、オーミック電極6abとアノード領域5abとがオーミック接合している。
【0078】
メサ部10dの上部及び両側の側部には、p型のアノード領域5cdが設けられている。アノード領域5cdは、更にトレンチ3c,3dの底部にまで設けられている。アノード領域5cdとショットキー電極7との間にはオーミック電極6cdが設けられている。メサ部10dの上面及び両側の側面においてアノード領域5cdが露出し、オーミック電極6cdとアノード領域5cdとがオーミック接合している。
【0079】
このように、第7実施形態に係る半導体装置では、メサ部10b,10dの一方(左側)の側面及び他方(右側)の側面においてアノード領域5ab,5cdが露出し、アノード領域5ab,5cdとアノード電極(6ab,6cd,7,8)とがオーミック接合する。また、メサ部10a,10c,10eの一方(左側)の側面及び他方(右側)の側面においてドリフト層2が露出し、ドリフト層2とアノード電極(6ab,6cd,7,8)がショットキー接合する。第7実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0080】
第7実施形態によれば、第1実施形態と同様に、トレンチ3a~3dの深さ方向に、オーミック接合及びショットキー接合の面積をそれぞれ増加させることができるので、順方向サージ電流耐量及び順方向電圧の両特性を改善することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
上記のように第1~第7実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0082】
例えば、第1~第7実施形態では、半導体基板100が4C-SiCで構成される場合を例示したが、これに限定されない。半導体基板100は、例えば、3C-SiC、6H-SiC等の他の結晶構造で構成されていてよい。
【0083】
また、第1~第7実施形態では、半導体基板100がSiCで構成される場合を例示したが、これに限定されない。半導体基板100は、例えば、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド(C)又は窒化アルミニウム(AlN)等のSiよりも禁制帯幅が広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)で構成されていてよい。
【0084】
また、第1~第7実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0085】
1…カソード領域
2…ドリフト層
3a~3d…トレンチ
4a~4d…保護領域
5a~5e,5ab,5cd…アノード領域
6…金属膜
6a~6e,6ab,6cd…オーミック電極
7…ショットキー電極
8…上層電極
9…カソード電極(裏面電極)
10a~10e…メサ部
11…絶縁膜
100…半導体基板
101…活性領域
102…終端領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17