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特開2024-66267シート保持機構、金型、成形機、成形システム、成形製品の製造方法および成形シートの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066267
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シート保持機構、金型、成形機、成形システム、成形製品の製造方法および成形シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20240508BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240508BHJP
   B29C 51/36 20060101ALI20240508BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240508BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20240508BHJP
   B29C 51/26 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/26
B29C51/36
B29C45/14
B29C51/10
B29C51/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175744
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 一樹
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 浩之
(72)【発明者】
【氏名】阿光 誉良
(72)【発明者】
【氏名】奥薗 重徳
(72)【発明者】
【氏名】堀田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 隆浩
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD08
4F202CA11
4F202CA17
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB13
4F202CL42
4F202CL50
4F202CQ01
4F202CQ06
4F206AD05
4F206AD08
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JL02
4F206JM02
4F206JQ81
4F208AC03
4F208MA01
4F208MB01
4F208MC01
4F208MC02
4F208MC03
4F208MH06
4F208MJ23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シートを保持する部材からシートが脱落することを抑制するシート保持機構を提供する。
【解決手段】シート保持機構は、シートを成形する成形システムにおいてシートを保持するシート保持機構であって、開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部33と、枠部に設けられた枠部吸着孔と、吸着開口が設けられた第1端及び第1端とは反対側に位置する第2端を有する枠部伸縮部材であって、第2端は枠部吸着孔に収容され且つ第1端は枠部吸着孔から突出し、押圧されることで第1端が枠部吸着孔に収容されるように縮む、枠部伸縮部材と、を備え、シートを、吸着開口の真空吸着によって保持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられた枠部吸着孔と、
吸着開口が設けられた第1端及び前記第1端とは反対側に位置する第2端を有する枠部伸縮部材であって、前記第2端は前記枠部吸着孔に収容され且つ前記第1端は前記枠部吸着孔から突出し、押圧されることで前記第1端が前記枠部吸着孔に収容されるように縮む、枠部伸縮部材と、を備え、
前記シートを、前記吸着開口の真空吸着によって保持する、シート保持機構。
【請求項2】
シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられた枠部吸着孔と、
前記枠部の前記開口部を形成する内面及び前記内面とは反対側に位置する外面の、少なくともいずれか一方に取り付けられた、前記枠部を加熱する枠部ヒーターと、を備え、
前記シートを、前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持する、シート保持機構。
【請求項3】
シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられ、前記枠部の前記シートと向かい合う枠部第1面において開口した枠部吸着孔と、
前記枠部第1面の前記枠部吸着孔が設けられていない領域に、前記開口部を囲うように取り付けられる、前記枠部よりも弾性変形しやすい弾性体と、を備え、
前記シートを、前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持する、シート保持機構。
【請求項4】
シートの真空成形に用いられる金型であって、
真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、
前記金型本体に設けられ、前記外周領域において開口する吸着孔と、
前記外周領域に、前記吸着孔が設けられた領域を囲うように取り付けられる、前記金型本体よりも弾性変形しやすい弾性体と、を備え、
前記シートを、前記吸着孔の真空吸着によって保持する、金型。
【請求項5】
シートの真空成形に用いられる金型であって、
真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、
前記金型本体に設けられ、前記外周領域において開口する吸着孔と、
吸着開口が設けられた第1端及び前記第1端とは反対側に位置する第2端を有する伸縮部材であって、前記第2端は前記吸着孔に収容され且つ前記第1端は前記吸着孔から突出し、押圧されることで前記第1端が前記吸着孔に収容されるように縮む、伸縮部材と、を備え、
前記シートを、前記吸着開口の真空吸着によって保持する、金型。
【請求項6】
前記第1面に設けられ、前記成形領域の少なくとも一部を囲う線状溝と、
少なくとも一部が前記線状溝の壁面に設けられた開口を有し、真空吸着によって前記線状溝に前記シートを引き込む線状溝吸引孔と、をさらに備え、
前記吸着孔は、前記線状溝によって囲まれた領域の外側において開口している、請求項5に記載の金型。
【請求項7】
請求項4に記載の金型と、
前記シートの一部が収容されて樹脂が射出成形される収容空間を前記金型の前記成形領域とともに形成する、対向金型と、を備え、
前記対向金型は、前記金型と前記対向金型とが前記収容空間を形成しているときに前記弾性体の少なくとも一部を収容する凹部を有する、成形機。
【請求項8】
シートを成形する成形システムであって、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シートの真空成形に用いられる金型を含む成形機と、を備え、
前記シート保持機構は、開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、前記枠部に設けられ、前記枠部の前記シートと向かい合う枠部第1面において開口した枠部吸着孔と、前記枠部第1面の前記枠部吸着孔が設けられていない領域に設けられ、前記開口部を囲う線状凸部と、を有して、前記シートを前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持し、
前記金型は、真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、前記外周領域に設けられ、前記成形領域を囲う吸着線状溝と、前記金型本体に設けられ、少なくとも一部が前記吸着線状溝の壁面に設けられた開口を有する吸着孔と、を有し、
前記シート保持機構は、保持した前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させ、
前記シート保持機構が前記シートを前記第1面の前記成形領域を囲う領域に密着させているときに、前記線状凸部の少なくとも一部が前記吸着線状溝に挿入される、成形システム。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート保持機構と、
前記シートの真空成形に用いられ、真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体を有する金型を含む成形機であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、成形機と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記第1面の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システム。
【請求項10】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の金型を含む成形機と、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システム。
【請求項11】
請求項7に記載の成形機と、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システム。
【請求項12】
前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形する、請求項8に記載の成形システム。
【請求項13】
前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形する、請求項9に記載の成形システム。
【請求項14】
前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形する、請求項10に記載の成形システム。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法。
【請求項18】
請求項8に記載の成形システムを用いた成形シートの製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、を備える、成形シートの製造方法。
【請求項19】
請求項9に記載の成形システムを用いた成形シートの製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、を備える、成形シートの製造方法。
【請求項20】
請求項10に記載の成形システムを用いた成形シートの製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、を備える、成形シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート保持機構、金型、成形機、成形システム、成形製品の製造方法および成形シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、真空成形を利用して基材を成形する方法が広く知られている。例えば、特許文献1には、基材を真空成形した後に、真空成形された基材の表面に対して樹脂の射出成形を行うことによって、基材を成形することが開示されている。特許文献1には、基材を吸着させることにより基材を保持する保持機構を用いて、気体の流路が接続された凹部を有する金型に基材を搬送し、吸引ポンプによって気体の流路から気体を引くことによって、基材を凹部の形状に沿うように真空成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/186414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型にシートを搬送し、金型を用いて基材を成形する方法において、シートを保持する部材からシートが脱落することを抑制することが求められていた。例えば、シート保持機構を用いて金型にシートを搬送する場合に、シート保持機構からシートが脱落することを抑制することが求められていた。また、金型を用いて基材を成形する場合に、金型からシートが脱落することを抑制することが求められていた。
【0005】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、シートを保持する部材からシートが脱落することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられた枠部吸着孔と、
吸着開口が設けられた第1端及び前記第1端とは反対側に位置する第2端を有する枠部伸縮部材であって、前記第2端は前記枠部吸着孔に収容され且つ前記第1端は前記枠部吸着孔から突出し、押圧されることで前記第1端が前記枠部吸着孔に収容されるように縮む、枠部伸縮部材と、を備え、
前記シートを、前記吸着開口の真空吸着によって保持する、シート保持機構である。
【0007】
本開示の第2の態様は、シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられた枠部吸着孔と、
前記枠部の前記開口部を形成する内面及び前記内面とは反対側に位置する外面の、少なくともいずれか一方に取り付けられた、前記枠部を加熱する枠部ヒーターと、を備え、
前記シートを、前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持する、シート保持機構である。
【0008】
本開示の第3の態様は、シートを成形する成形システムにおいて前記シートを保持するシート保持機構であって、
開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、
前記枠部に設けられ、前記枠部の前記シートと向かい合う枠部第1面において開口した枠部吸着孔と、
前記枠部第1面の前記枠部吸着孔が設けられていない領域に、前記開口部を囲うように取り付けられる、前記枠部よりも弾性変形しやすい弾性体と、を備え、
前記シートを、前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持する、シート保持機構である。
【0009】
本開示の第4の態様は、シートの真空成形に用いられる金型であって、
真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、
前記金型本体に設けられ、前記外周領域において開口する吸着孔と、
前記外周領域に、前記吸着孔が設けられた領域を囲うように取り付けられる、前記金型本体よりも弾性変形しやすい弾性体と、を備え、
前記シートを、前記吸着孔の真空吸着によって保持する、金型である。
【0010】
本開示の第5の態様は、シートの真空成形に用いられる金型であって、
真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、
前記金型本体に設けられ、前記外周領域において開口する吸着孔と、
吸着開口が設けられた第1端及び前記第1端とは反対側に位置する第2端を有する伸縮部材であって、前記第2端は前記吸着孔に収容され且つ前記第1端は前記吸着孔から突出し、押圧されることで前記第1端が前記吸着孔に収容されるように縮む、伸縮部材と、を備え、
前記シートを、前記吸着開口の真空吸着によって保持する、金型である。
【0011】
本開示の第6の態様は、上述した第5の態様による金型において、前記第1面に設けられ、前記成形領域の少なくとも一部を囲う線状溝と、
少なくとも一部が前記線状溝の壁面に設けられた開口を有し、真空吸着によって前記線状溝に前記シートを引き込む線状溝吸引孔と、をさらに備え、
前記吸着孔は、前記線状溝によって囲まれた領域の外側において開口していてもよい。
【0012】
本開示の第7の態様は、上述した第4の態様による金型と、
前記シートの一部が収容されて樹脂が射出成形される収容空間を前記金型の前記成形領域とともに形成する、対向金型と、を備え、
前記対向金型は、前記金型と前記対向金型とが前記収容空間を形成しているときに前記弾性体の少なくとも一部を収容する凹部を有する、成形機である。
【0013】
本開示の第8の態様は、シートを成形する成形システムであって、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シートの真空成形に用いられる金型を含む成形機と、を備え、
前記シート保持機構は、開口部が設けられた枠状の形状を有する枠部と、前記枠部に設けられ、前記枠部の前記シートと向かい合う枠部第1面において開口した枠部吸着孔と、前記枠部第1面の前記枠部吸着孔が設けられていない領域に設けられ、前記開口部を囲う線状凸部と、を有して、前記シートを前記枠部吸着孔の真空吸着によって保持し、
前記金型は、真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、金型本体と、前記外周領域に設けられ、前記成形領域を囲う吸着線状溝と、前記金型本体に設けられ、少なくとも一部が前記吸着線状溝の壁面に設けられた開口を有する吸着孔と、を有し、
前記シート保持機構は、保持した前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させ、
前記シート保持機構が前記シートを前記第1面の前記成形領域を囲う領域に密着させているときに、前記線状凸部の少なくとも一部が前記吸着線状溝に挿入される、成形システムである。
【0014】
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによるシート保持機構と、
前記シートの真空成形に用いられ、真空成形時に前記シートと向かい合う第1面を有する金型本体を有する金型を含む成形機であって、前記第1面は前記シートを真空成形する成形領域と前記成形領域を囲う外周領域とを有する、成形機と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記第1面の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システムである。
【0015】
本開示の第10の態様は、上述した第4の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる金型を含む成形機と、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システムである。
【0016】
本開示の第11の態様は、上述した第7の態様による成形機と、
前記シートを保持するシート保持機構と、
前記シート保持機構に保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させるように、前記シート保持機構を駆動する駆動装置と、を備える、成形システムである。
【0017】
本開示の第12の態様は、上述した第8の態様による成形システムにおいて、前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形してもよい。
【0018】
本開示の第13の態様は、上述した第9の態様による成形システムにおいて、前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形してもよい。
【0019】
本開示の第14の態様は、上述した第10の態様による成形システムにおいて、前記成形機は、一部が前記成形領域によって区画されて前記シートの一部が収容された収容空間を形成し、前記収容空間に樹脂を射出成形してもよい。
【0020】
本開示の第15の態様は、上述した第11の態様又は上述した第12の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【0021】
本開示の第16の態様は、上述した第13の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【0022】
本開示の第17の態様は、上述した第14の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【0023】
本開示の第18の態様は、上述した第8の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【0024】
本開示の第19の態様は、上述した第9の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【0025】
本開示の第20の態様は、上述した第10の態様による成形システムを用いた成形製品の製造方法であって、
前記シート保持機構によって保持された前記シートを前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させる工程と、
前記金型の前記成形領域を囲う領域に密着させられた前記シートを、前記金型を用いて真空成形する工程と、
前記成形機に前記シートの一部が収容された前記収容空間を形成させて、前記収容空間に樹脂を射出成形する工程と、を備える、成形製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、シートを保持する部材からシートが脱落することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1の実施の形態に係る成形システムの全体を概略的に示す上面図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係るシート供給装置によって供給されるシートのシート面に平行な方向から観察したシート供給装置の側面図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係るヘッド及び駆動装置を概略的に示す正面図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係るシート保持機構の斜視図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面の、1つの枠部吸着孔の周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿った断面を示す断面図である。
図7図7は、第1の実施の形態に係る成形品保持機構の斜視図である。
図8図8は、第1の実施の形態に係る成形機及び成形機の金型と対向金型との間に配置されたヘッドを概略的に示す図である。
図9図9は、第1の実施の形態に係る金型を金型本体の第1面側から見た様子を示す平面図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿った断面を示す断面図である。
図11図11は、第1の実施の形態においてシート保持機構から成形機の金型にシートが受け渡される様子を示す図である。
図12図12は、第1の実施の形態においてシート保持機構によって保持されたシートを金型に密着させた様子を示す図である。
図13図13は、第1の実施の形態においてシートが真空成形された様子を示す図である。
図14図14は、第1の実施の形態において対向金型を金型に対して相対移動させる様子の一例を示す図である。
図15図15は、第1の実施の形態において金型と対向金型との間に収容空間が形成されている様子を示す図である。
図16図16は、第1の実施の形態において対向金型が金型から離間する様子を示す図である。
図17図17は、第1の実施の形態において対向金型から成形品保持機構に成形品が受け渡される様子を示す図である。
図18図18は、第1の実施の形態において対向金型から成形品保持機構に成形品が受け渡された様子を示す図である。
図19図19は、成形製品の製造方法によって製造された成形製品の側面図である。
図20図20は、第2の実施の形態に係るシート保持機構の斜視図である。
図21図21は、図20のXXI-XXI線に沿った断面を示す断面図である。
図22図22は、第3の実施の形態に係るシート保持機構を枠部第1面側から見た様子を示す平面図である。
図23図23は、図22のXXIII-XXIII線に沿った断面を示す断面図である。
図24図24は、第4の実施の形態に係る金型を金型本体の第1面側から見た様子を示す平面図である。
図25図25は、図24のXXV-XXV線に沿った断面を示す断面図である。
図26図26は、第4の実施の形態に係る金型の断面を示す断面図である。
図27図27は、第4の実施の形態において金型と対向金型との間に収容空間が形成されている様子を示す図である。
図28図28は、第5の実施の形態に係る金型を金型本体の第1面側から見た様子を示す平面図である。
図29図29は、図28のXXIV-XXIV線に沿った断面を示す断面図である。
図30図30は、第6の実施の形態に係るシート保持機構を枠部第1面側から見た様子を示す平面図である。
図31図31は、図30のXXXI-XXXI線に沿った断面を示す断面図である。
図32図32は、第6の実施の形態に係る金型を金型本体の第1面側から見た様子を示す平面図である。
図33図33は、変形例に係る成形シートの製造方法によって製造された成形シートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本開示の実施の形態は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されることなく、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行、垂直や直角などの用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0029】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係る成形システム1について説明する。図1には、第1の実施の形態の成形システム1の上面図が概略的に示されている。第1の実施の形態において、成形システム1は、図19に示し且つ後述するように、シート11に樹脂を含む成形部品12が設けられた成形製品16を製造する。図1に示すように、成形システム1は、クリーンブース5に覆われている。クリーンブース5は、外部から成形システム1に意図されずに物体が入り込むことを抑制する。クリーンブース5には、第1方向d1の第1側s1に第1開口部6が設けられており、第1方向d1の第2側s2に第2開口部7が設けられている。クリーンブース5において、第1開口部6から空気が流入し、第2開口部7から空気が流出する。すなわち、クリーンブース5には、第1方向d1の第1側s1から第1方向d1の第2側s2への空気の流れが生じている。この空気の流れにより、成形システム1が有する各装置等においてシート11等に外部から異物が付着することが抑制される。
【0030】
成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。図1に示す例において、成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、を更に備える。特に図1に示されている例では、成形システム1においては、第1方向d1の第1側s1から第1方向d1の第2側s2に向かって、上述した順で各構成要素が並んでいる。シート供給装置20は、ロール10をなすように巻かれたシート11から、所定の寸法に切断されたシート11を供給する。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部として、後述するシート保持機構31を備えている。ヘッド30は、シート保持機構31においてシート11を受け取って、シート11を保持する。ヘッド30が駆動装置40に駆動されて、シート11を成形機50に搬送する。成形機50は、ヘッド30からシート11を受け取る。成形機50は、金型51と対向金型52とを含んでいる。成形機50は、受け取ったシート11を、金型51を用いて真空成形する。シート11を真空成形した後、成形機50は、金型51と対向金型52とを接近させることによって、シート11の一部が収容された収容空間55を形成する。成形機50は、収容空間55に樹脂を射出成形することで、シート11に成形部品12を設けて、成形品13を成形する。成形品13は、ヘッド30に保持される。成形品13を保持したヘッド30が駆動装置40に駆動されることによって、成形品13がトリミング装置80に搬送される。トリミング装置80は、成形品13をトリミングして、成形製品16を作製する。このようにして、成形システム1は、シート11の供給、成形品13の成形及び成形品13のトリミングを単一のシステムで連続して実施して、成形製品16を製造できる。
【0031】
以下、成形システム1の各構成要素について、詳しく説明する。
【0032】
図2には、シート供給装置20の側面図が示されている。より詳しくは、図2には、給されるシート11の側方方向から観察したシート供給装置20が示されている。シート供給装置20は、シート11が巻かれたロール10から供給され所定の寸法に切断されたシート11を供給する。シート11は、加熱されることで軟化する熱可塑性樹脂からなる。シート11の材料としては、例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートが挙げられる。シート11には、模様等の意匠や文字等の情報等が付されていてもよい。意匠や情報等は、例えばシート11の表面への印刷によって、シート11に設けられる。シート11に意匠や情報等が付される場合、シート供給装置20から供給されるシート11には、成形機50等によってシート11が変形した後に適切に表示されるように、意匠や情報等が付されている。シート供給装置20が供給するシート11は、図2に示すように、ヘッド30のシート保持機構31に保持される。図2に示されているように、シート供給装置20は、シート切断手段21と、第1クランプ23a及び第2クランプ23bと、プレート部材25と、センサ27と、を有している。
【0033】
シート供給装置20は、シート11がシート保持機構31に保持されるように、シート11をシート保持機構31に向かい合うように送り出す。図2に示す例において、シート11は、ロール10からシート保持機構31に向かい合うように送り出されている。シート供給装置がシートを送り出す方向を、送り方向d2とも称する。図2に示す例において、シート11は、鉛直方向(図2の上下方向)の下方から上方に送り出されている。すなわち、送り方向d2は、鉛直方向の下方から上方に向かう方向である。シート切断手段21は、第2クランプ23bの上方において、ロール10から送り出されたシート11を送り出された方向に非平行な方向で切断して、シート11を所定の寸法に整える。上述したように、図2に示す例において、シート11は、鉛直方向の下方から上方に送り出されている。したがって、シート切断手段21は、シート11の鉛直方向の下方を鉛直方向に非平行な方向、例えば水平方向に切断する。これにより、鉛直方向の上方に、所定の寸法に整えられたシート11が形成される。特に、シート11を鉛直方向の下方から上方に送り出し、水平方向に切断することによって、矩形の形状のシート11が形成される。シート切断手段21は、例えば金属からなる刃物である。
【0034】
第1クランプ23a及び第2クランプ23bは、ロール10から送り出されたシート11を挟持する。図2に示されているように、第1クランプ23aは、シート11の上方を挟持できる。第2クランプ23bは、シート11の下方を挟持できる。第1クランプ23aがシート11の上方を挟持してシート11の中央部をシート保持機構31が保持した後に、第2クランプ23bがシート11を狭持する。その後、シート切断手段21がシート11を切断し、第1クランプ23aがシート11を解放することで、切断されて所定の寸法に整えられたシート11を円滑にシート保持機構31に保持させることができる。一例として、第1クランプ23a及び第2クランプ23bは棒状であるが、これに限られず、任意の形状であってよい。
【0035】
プレート部材25は、第1クランプ23aに挟持されたシート11を、例えば押し出すことで、シート保持機構31の方へ移動させる。プレート部材25は、シート供給装置20においてシート11をシート保持機構31の方へ押し出すために、第1クランプ23aのヘッド30が接近する側とは逆側に配置されている。図2に示された例において、シート保持機構31は第1方向d1の第2側s2からシート供給装置20に接近するため、プレート部材25は、第1クランプ23aの第1方向d1の第1側s1に配置されている。また、プレート部材25は、シート保持機構31に対応した形状を有している。言い換えると、プレート部材25は、シート保持機構31と相補的な形状となっている。図2に示されている例では、プレート部材25のシート11と向かい合う面は、第1クランプ23aに挟持されたシート11の面に平行な平面となっている。シート保持機構31のシート11と向かい合う面は、第1クランプ23aに挟持されたシート11の面に平行な平面となっている。これにより、プレート部材25のシート11と向かい合う面と、シート保持機構31のシート11と向かい合う面とは、互いに平行となっている。プレート部材25によってシート11を押し出すことによって、シート11をシート保持機構31に接触させて、シート11をシート保持機構31に保持させられる。その後、シート11が第2クランプ23bによって狭持される。シート11がシート切断手段21に切断されて、所定の寸法に整えられる。これにより、シート11は、撓むことなくシート供給装置20からシート保持機構31に受け渡される。
【0036】
センサ27は、シート供給装置20におけるシート11を検出する。この検出に基づいて、シート11をシート供給装置20に適切な位置及び向きにて配置できる。また、センサ27は、シート11が鉛直方向の上方に送り出される長さを検出してもよい。図2に示されている例では、センサ27は、プレート部材25と同じ側、すなわちシート保持機構31が接近する側とは逆側に配置されている。言い換えると、センサ27は、第1クランプ23a及び第2クランプ23bの第1方向d1の第1側s1に配置されている。センサ27は、プレート部材25に設けられた図示しない孔等を介してシート11の位置や向き等を検出する。しかしながら、図示されている例に限らず、センサ27は、シート供給装置20においてシート11を保持するためにシート保持機構31が接近する側と同じ側に配置されていてもよい。このようなセンサ27は、例えばカメラ等の撮像装置である。一例として、図示はしないが、シート11には、十字型の記号などのアラインメントマークが設けられている。この場合、センサは、シート11に設けられたアラインメントマークに基づいて、シート11の位置や向きを容易に検出できる。
【0037】
図3には、ヘッド30及び駆動装置40が概略的に示されている。ヘッド30は、シート11を保持する。駆動装置40は、シート11を成形機50の金型51に搬送するようヘッド30を駆動する。図3に示す例において、駆動装置40は、シート保持機構31に保持されたシート11をシート供給装置20から金型51に搬送するように、シート保持機構31を駆動する。また、図3に示す例において、ヘッド30は、成形機50において成形される成形品13を保持する。駆動装置40は、ヘッド30に保持された成形品13を成形機50からトリミング装置80に搬送するよう、ヘッド30を駆動する。駆動装置40は、例えば多関節ロボットである。
【0038】
図3に示されているように、ヘッド30は、シート保持機構31とヒーター35とを有する。図3に示す例において、ヘッド30は、成形品保持機構32と成形品ヒーター36とを更に有する。駆動装置40は、接続部41と回動部43とを有する。
【0039】
図4には、シート保持機構31及びヒーター35の斜視図の一例が示されている。シート保持機構31は、シート11を成形する成形システム1においてシート11を保持する部分である。シート保持機構31は、シート供給装置20からシート11を受け取り、成形機50の金型51にシート11を搬送して、金型51にシート11を受け渡す。
【0040】
第1の実施の形態に係るシート保持機構31は、図4に示すように、開口部33aが設けられた枠部33と、枠部33に設けられた枠部吸着孔31aと、を有する。第1の実施の形態に係るシート保持機構31は、枠部伸縮部材34をさらに備える。
【0041】
枠部33は、枠状の形状を有している。図4に示されている例では、枠部33は、矩形の枠状の形状を有している。すなわち、枠部33は、一方向(図4の上下方向)に延びる一対の第1部分33dと、一対の第1部分33dの延びる方向(図4の左右方向)に直交する方向に延びて一対の第1部分33d同士を連結する一対の第2部分33eと、を有している。
【0042】
図4に示す例において、枠部33は、シート保持機構31に保持されたシート11と向かい合う面である枠部第1面31bを有する。また、枠部33は、枠部第1面31bとは反対側に位置する枠部第2面31cを有する。シート保持機構31は、枠部33の枠部第1面31b側にシート11を保持する。
【0043】
シート保持機構31は、金型51に適切にシート11を受け渡すことができるよう、金型51に対応した形状、言い換えると金型51と相補的な形状となっている。シート保持機構31は、特に、金型51の後述する金型本体511の第1面51aの外周領域51cを形成する部分と相補的な形状となっている。また、上述したように、枠部第1面31bは、第1クランプ23aに挟持されたシート11の面に平行な平面となっている。
【0044】
図4に示すように、シート保持機構31は、枠部33に設けられた枠部吸着孔31aを備える。図4に示す例において、シート保持機構31は、複数の枠部吸着孔31aを備えている。複数の枠部吸着孔31aは、一対の第1部分33d及び一対の第2部分33eの延びる方向に沿って並んでいる。枠部吸着孔31aは、枠部33のシート11と向かい合う枠部第1面31bにおいて開口している。シート保持機構31は、シート11を、枠部吸着孔31aの真空吸着によって保持する。すなわち、枠部第2面31c側から枠部吸着孔31a内の空気を吸引することで、シート11を保持する。枠部吸着孔31aは、例えば直径が2mm以上10mm以下の円形の断面を有する。これにより、枠部吸着孔31aが十分に大きくなり、シート11を適切に吸着して保持できる。また、枠部吸着孔31aが大き過ぎないため、枠部吸着孔31aに異物が吸引される等の不具合を生じる可能性が低減される。
【0045】
図5は、図4のV-V線に沿った断面の、1つの枠部吸着孔31aの周辺を拡大して示す拡大断面図である。特に図5は、1つの枠部吸着孔31aの中心を通過する仮想の直線である、枠部吸着孔31aの軸線L1を通る断面を示している。図5に示すように、シート保持機構31は、吸着開口34aが設けられた第1端34b及び第1端34bとは反対側に位置する第2端34cを有する枠部伸縮部材34を備える。図5において、枠部伸縮部材34は、押圧されていない状態にある。このとき、第2端34cは枠部吸着孔31aに収容される。また、第1端34bは枠部吸着孔31aから突出する。換言すれば、第1端34bは、枠部第1面31bの、枠部第2面31cが位置する側とは反対側に位置する。
【0046】
第1の実施の形態において、シート保持機構31は、複数の枠部伸縮部材34を備えている。枠部伸縮部材34の数は、枠部吸着孔31aの数と同じである。複数の枠部伸縮部材34の各々の第2端34cは、枠部吸着孔31aの各々に収容される。複数の枠部伸縮部材34の各々の第1端34bは、枠部吸着孔31aの各々から突出する。
【0047】
図5に示す例において、枠部伸縮部材34は、枠部吸着孔31aの延びる方向に延びる筒状の形状を有している。枠部伸縮部材34は、第1端34bから第2端34cまで延びる貫通孔34dを有している。貫通孔34dが、第1端34bにおいて吸着開口34aを形成している。貫通孔34dの、軸線L1に垂直な方向における最小幅w1は、例えば1mm以上5mm以下である。
【0048】
第1の実施の形態のシート保持機構31は、シート11を、吸着開口34aの真空吸着によって保持する。図5に示す例では、枠部伸縮部材34の第2端34c側において、枠部伸縮部材34の外壁34eと枠部吸着孔31aの内壁31dとの間が密閉されている。シート保持機構31は、枠部伸縮部材34の外壁34eと枠部吸着孔31aの内壁31dとの間に配置される密閉部材31fをさらに備えている。密閉部材31fによって、枠部伸縮部材34の外壁34eと枠部吸着孔31aの内壁31dとの間が密閉されている。これにより、枠部第2面31c側から枠部吸着孔31a内の空気を吸引することで、貫通孔34d内の空気を吸引して、吸着開口34aの真空吸着によってシート11を保持できる。枠部吸着孔31a内の空気を吸引することで吸着開口34aの真空吸着を行えるため、シート11を枠部吸着孔31aの真空吸着によって保持することには、シート11を吸着開口34aの真空吸着によって保持することが含まれると言える。図5に示す例においては、第1端34bが枠部吸着孔31aから突出している。これにより、シート保持機構31は、シート11が枠部第1面31bから離間するように、シート11を保持できる。
【0049】
枠部伸縮部材34は、押圧されることで第1端34bが枠部吸着孔31aに収容されるように縮む。枠部伸縮部材34は、第1端34bが第2端34cに向けて押圧されることで、第1端34bと第2端34cとの距離が小さくなるように縮む。枠部伸縮部材34は、後述するシート保持機構31によって保持されたシート11を金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させる工程において枠部伸縮部材34が受ける押圧力によって押圧されることで、第1端34bが枠部吸着孔31aに収容されるように縮む程度に変形しやすい。また、枠部伸縮部材34は、押圧から解放されると、第1端34bが枠部吸着孔31aから突出した位置に戻るように伸びる。
【0050】
枠部伸縮部材34の伸縮する変形のしやすさを確保する手段は、シート11を吸着開口34aの真空吸着によって保持できる限り、特に限られない。第1の実施の形態の枠部伸縮部材34は、枠部吸着孔31aの軸線L1を通る断面において、蛇腹状の形状を有している。すなわち、枠部伸縮部材34は、枠部吸着孔31aの軸線L1を通る断面において、山折りと谷折りとが交互に繰り返された形状を有している。山折り及び谷折りの各々は、軸線L1を周回している。この場合、山折り及び谷折りの折れの角度が変化することで、枠部伸縮部材34が伸縮する。例えば、第1端34bが第2端34cに向けて押圧されると、山折り及び谷折りの折れの角度が変化することで、枠部伸縮部材34が、第1端34bと第2端34cとの距離が小さくなるように縮む。なお、枠部伸縮部材34の材料として弾性変形しやすい材料、例えば枠部33の材料よりも弾性変形しやすい材料を選択することによって、枠部伸縮部材34を伸縮可能としてもよい。この場合、枠部伸縮部材34の材料は、例えばゴムである。
【0051】
図4に示す一点鎖線は、シート保持機構31がシート11を保持した場合の、シート11の輪郭線の一例を示している。図6は、図4のVI-VI線に沿った断面を、シート保持機構31に保持されるシート11とともに示す断面図である。図4及び図6に示す例において、シート11は、開口部33aに向かい合うとともに、枠部33の枠部吸着孔31aが設けられた部分に向かい合っている。このため、シート11は、枠部吸着孔31aの真空吸着によって、シート保持機構31に保持される。第1の実施の形態において、シート11は、吸着開口34aの真空吸着によって、シート保持機構31に保持される。
【0052】
シート保持機構31が枠部伸縮部材34を備え、シート11が吸着開口34aの真空吸着によってシート保持機構31に保持されることの効果について説明する。シート保持機構31がシート11を保持している状態において、シート11が変形することがあり得る。例えば、シート保持機構31がシート11を保持している状態において、シート11は、シート11自体の重さのためにたるむことによって、変形し得る。また、シート11は、後述するようにヒーター35によって加熱されることによって、変形し得る。より具体的には、シート11は、ヒーター35によって加熱されて軟化し、よりたるみやすくなることで、変形し得る。また、シート11が製造時に引き伸ばされる場合があり、この場合にシート11の内部には応力が発生する。この場合において、シート11がヒーター35によって加熱されると、シート11の内部の応力が低下してシート11が収縮する。すなわち、シート11がヒーター35によって加熱されることによって、応力緩和によりシート11が収縮するように変形する場合がある。ここで、第1の実施の形態においては、シート保持機構31が枠部伸縮部材34の吸着開口34aの真空吸着によってシート11を保持する。これによって、シート11が変形した場合に、枠部伸縮部材34が変形することで、吸着開口34aをシート11の変形に追従するように移動させることができる。このため、シート11が吸着開口34aに対してずれることによってシート保持機構31からシート11が脱落することを、抑制できる。このように、第1の実施の形態によれば、シート11を保持する部材であるシート保持機構31からシート11が脱落することを抑制できる。
【0053】
シート保持機構31は、枠部吸着孔31aによるシート11の真空吸着のオンオフを切り替える回路を有していてもよい。これによって、吸着開口34aによるシート11の真空吸着のオンオフを切り替えることができる。
【0054】
ヒーター35は、シート保持機構31の枠部第2面31c側に配置される。ヒーター35は、シート保持機構31に重ねて設けられている。図示されている例では、ヒーター35は、シート保持機構31の枠部第2面31cに平行な面を有する板状の形状を有している。ただし、ヒーター35の形状は、図示されている例に限られない。また、ヘッド30は、複数のヒーター35を有していてもよい。図4に示す例において、シート保持機構31の枠部第2面31cとヒーター35の面とは接しており、シート保持機構31とヒーター35との位置関係は固定されている。
【0055】
ヒーター35は、シート保持機構31に保持されたシート11を加熱する。ヒーター35は、開口部33aに向かい合う部分の全体において熱を発し得る。ヒーター35は、シート11を例えば100℃以上160℃以下に加熱する。とりわけ、ヒーター35は、シート保持機構31がシート供給装置20からシート11を受け取ってから、金型51にシート11を受け渡すまでの少なくとも一期間、シート11を加熱する。ヒーター35は、シート保持機構31に保持されたシート11の全体を均一に加熱できるように、シート保持機構31に保持されるシート11の寸法以上の寸法となっていてもよい。なお、ヒーター35とシート保持機構31に保持されたシート11との間の距離を比較的大きく離間させる部分がある場合、当該部分においてヒーター35の温度を高くすることで、シート11の全体を均一に加熱できる。また、シート保持機構31に保持されたシート11とヒーター35との間を側方から無機板等で覆うことで、シート11の全体をより均一に加熱できる。
【0056】
図7には、成形品保持機構32及び成形品ヒーター36の斜視図が示されている。成形品保持機構32は、成形機50の対向金型52から成形品13を受け取り、トリミング装置80に成形品13を搬送する。図7に示されている例では、成形品保持機構32は、複数の吸着パッド32aを有している。成形品保持機構32は、吸着パッド32aから空気を吸引することで、成形品13を吸着して保持できる。成形品保持機構32は、対向金型52から成形品13を適切に受け取ることができるよう、複数の吸着パッド32aが対向金型52に対応した形状、言い換えると対向金型52と相補的な形状に沿って並んでおり、複数の吸着パッド32aが、それぞれ成形部品12に圧着、真空吸着できる位置に配置されている。しかしながら、図示されている例に限らず、成形品保持機構32は、任意の方法で成形品13を保持してもよい。
【0057】
成形品ヒーター36は、成形品保持機構32に重ねて設けられている。図示されている例では、成形品ヒーター36は、矩形である。成形品ヒーター36は、成形品保持機構32に保持された成形品13を加熱する。成形品ヒーター36は、成形品13を例えば40℃以上70℃以下に加熱する。とりわけ、成形品ヒーター36は、成形品保持機構32が成形機50から成形品13を受け取ってから、トリミング装置80に成形品13を搬送するまでの少なくとも一期間、成形品13を加熱する。成形品ヒーター36は、成形品保持機構32に保持された成形品13の全体を均一に加熱できるよう、成形品保持機構32に保持される成形品13の寸法以上の寸法となっていることが好ましい。
【0058】
駆動装置40は、接続部41においてヘッド30と接続しており、接続されているヘッド30を駆動する。駆動装置40は、ヘッド30を駆動することによって、ヘッド30の一部であるシート保持機構31を駆動する。駆動装置40は、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させるように、シート保持機構31を駆動する。これによって、シート保持機構31は、保持したシート11を金型51に密着させ得る。駆動装置40は、例えば回動部43を回動させることでヘッド30を駆動する。駆動装置40は、複数の回動部43を有していてもよい。このような駆動装置40は、例えばいわゆる多軸ロボットアームである。駆動装置40は、ヘッド30と取り外し可能に接続している。したがって、駆動装置40が接続するヘッド30は交換可能である。
【0059】
駆動装置40は、シート保持機構31がシート供給装置20からシート11を受け取るように、ヘッド30を駆動する。また、駆動装置40は、シート保持機構31から成形機50の金型51にシート11を受け渡すように、ヘッド30を駆動する。また、駆動装置40は、対向金型52から成形品13を成形品保持機構32で受け取るように、ヘッド30を駆動する。また、駆動装置40は、成形品13を成形品保持機構32からトリミング装置80に搬送するように、ヘッド30を駆動する。図8に示されている例においては、シート保持機構31が成形機50の金型51にシート11を受け渡し、且つ成形品保持機構32が対向金型52から成形品13を受け取っている。この際には、駆動装置40は、成形機50の対向金型52が金型51から離間した状態で、第1方向d1における金型51と対向金型52との間にヘッド30の少なくとも一部を配置するよう、ヘッド30を駆動する。特に、駆動装置40は、第1方向d1における金型51と対向金型52との間にシート保持機構31及び成形品保持機構32を配置するよう、ヘッド30を駆動する。図8に示されている例では、ヘッド30の全体が、第1方向d1における金型51と対向金型52との間に配置されている。駆動装置40は、シート保持機構31を第1方向d1の第1側s1へ駆動させる。これによって、シート保持機構31から金型51にシート11が受け渡される。また、シート保持機構31に保持されたシート11が、金型51に密着する。また、駆動装置40は、成形品保持機構32を第1方向d1の第2側s2へ駆動させる。これによって、成形品保持機構32が対向金型52から成形品13を受け取る。このとき、駆動装置40は、ヘッド30の全体を第1方向d1の第1側s1や第1方向d1の第2側s2に駆動させてもよいし、ヘッド30においてシート保持機構31のみを第1方向d1の第1側s1に、成形品保持機構32のみを第1方向d1の第2側s2に、それぞれ駆動させてもよい。
【0060】
成形機50は、上述したように金型51を含む。図8に示す例において、成形機50は、さらに対向金型52を含む。図8に示されているように、成形機50の金型51が、シート保持機構31の第1方向d1の第1側s1に保持されたシート11を受け取る。また、成形機50の対向金型52が、成形品13を成形品保持機構32の第1方向d1の第2側s2に受け渡す。より詳しくは、成形品保持機構32が対向金型52から成形品13を受け取った後に、シート保持機構31が金型51にシート11を受け渡す。あるいは、成形品保持機構32が対向金型52から成形品13を受け取ると同時に、シート保持機構31が金型51にシート11を受け渡す。
【0061】
成形機50は、シート保持機構31から受け取ったシート11を、金型51を用いた真空成形によって成形する。シート11を真空成形した後、成形機50は、シート11の一部が収容された収容空間55を形成し、収容空間55に樹脂を射出成形する。収容空間55は、金型51と対向金型52とを接近させることによって、金型51の面と対向金型52の面とによって区画される。特に、成形機50は、シート11の真空成形された部分が収容空間55に収容された状態で、収容空間55に樹脂を射出成形する。これによって、シート11に、樹脂の射出成形によって成形部品12を設けて、後述する成形品13を成形できる。
【0062】
金型51について説明する。金型51は、成形システム1に備えられる。上述したように、成形システム1が成形機50を備え、成形機50が金型51を含むことによって、金型51が成形システム1に備えられている。金型51は、シート11の真空成形に用いられる。図1に示す例において、金型51は、第1方向d1においてシート供給装置20と対向金型52との間に位置している。言い換えると、シート供給装置20、金型51及び対向金型52は、第1方向d1において、この順で並んでいる。
【0063】
図8に示すように、金型51は、金型本体511を有する。金型本体511は、第1面51aを有する。第1面51aは、シート11の真空成形時にシート11と向かい合う面である。また、金型本体511は、第1面51aとは反対側に位置する第2面51gを有する。図9は、金型51を第1面51a側から見た様子を示す平面図である。図10は、図9のX-X線に沿った断面を示す断面図である。
【0064】
第1面51aの詳細について説明する。図9及び図10に示すように、第1面51aは、シート11を真空成形する成形領域51bと、成形領域51bを囲う外周領域51cとを有している。成形領域51bは、当該成形領域51bにおいて真空成形により成形しようとするシート11の形状に対応した形状を有する。図10に示す例において、成形領域51bは、曲面を有している。
【0065】
上述したように、成形機50は、シート11の一部が収容された収容空間55を形成し、収容空間55に樹脂を射出成形する。ここで、収容空間55の一部は、成形領域51bによって区画される。図9及び図10に示す例においては、外周領域51cにおいて、第1面51aは平面となっている。
【0066】
成形領域51bの、収容空間55の一部を区画する領域を、収容空間領域51dと称する。図9に示す例において、収容空間領域51dは、成形領域51bの中央部に位置している。図9に示す例において、成形領域51bは、収容空間領域51dと、収容空間領域51dを囲う吸引孔領域51eとを有する。吸引孔領域51eは、後述する吸引孔516が設けられる領域である。図9に示す例において、吸引孔領域51eは、略矩形の成形領域51bの周縁に位置している。
【0067】
図10に示す例において、吸引孔領域51eは、収容空間領域51dよりも、真空成形時にシート11が位置する側に突出している。図10に示す例において、収容空間領域51dには、吸引孔領域51eに対して金型本体511の第2面51g側に凹んだ凹部が形成されている。このために、吸引孔領域51eは、収容空間領域51dよりも、金型本体511の第1面51a側に位置している。
【0068】
図9及び図10に示す例において、収容空間領域51dは、後述する成形品13に含まれるシート11の形状に対応した形状となっている。後述する図18に示す例において、成形品13のシート11の吸引孔領域51eと接触する面は、平面である。また、図18に示す成形品13のシート11において、吸引孔領域51eに接触する面と、外周領域51cに接触する面とは、平行である。この場合、図10に示すように、吸引孔領域51eは、外周領域51cに平行な平面である。
【0069】
図9に示す例において、第1面51aは、外周領域51cに垂直な方向からの観察において、矩形の形状を有している。図9に示す矩形の形状を有する第1面51aの、図9の上方に位置する辺を、上辺514と称する。また、図9の下方に位置し、上辺514と向かい合う辺を、下辺512と称する。また、上辺514と下辺512との間を図9の上下方向に延びる一対の辺を、側辺513と称する。第1の実施の形態において、金型51は、上辺514が上方に位置し、下辺512が下方に位置する状態で、成形システム1に組み込まれている。
【0070】
金型51は、金型本体511に設けられ、外周領域51cにおいて開口する吸着孔515をさらに備える。金型51は、シート11を、吸着孔515の真空吸着によって保持する。図9に示す例において、金型51は、複数の吸着孔515を備える。複数の吸着孔515は、金型51の上辺514、下辺512及び側辺513に沿って並んでいる。
【0071】
吸着孔515は、例えば直径が1.5mm以上10mm以下の円形の断面を有する。吸着孔515は、より好ましくは直径が1.5mm以上5mm以下の円形の断面を有する。これにより、吸着孔515が十分に大きくなり、シート11を適切に吸着して金型51に保持させ得る。また、吸着孔515が大き過ぎないため、吸着孔515に異物が吸引される等の不具合を生じる可能性が低減される。なお、金型51の全体のサイズが大きくなって、金型51に供給されるシート11のサイズを金型51に保持させるために大きくする必要が生じることを抑制する観点からは、吸着孔515の大きさは小さいことが好ましい。
【0072】
金型51は、成形領域51bにおいて開口する吸引孔516をさらに備える。吸引孔516は、金型51に保持されたシート11を真空吸引して真空成形する。吸引孔516は、金型本体511に設けられている。吸引孔516は、金型本体511の第1面51aの成形領域51bに設けられている。特に、吸引孔516は、吸引孔領域51eに設けられている。図9に示す例において、金型51は、複数の吸引孔516を備える。
【0073】
吸引孔516の形状、数及び配置は、吸引孔516の真空吸引によってシート11を真空成形できる限り、特に限られない。吸引孔516は、例えば直径が1.5mm以上10mm以下の円形の断面を有する。これにより、吸引孔516が十分に大きくなり、シート11を十分に真空成形できる程度の吸引力で、シート11を真空吸引できる。また、吸引孔516が大き過ぎないため、吸引孔516に異物が吸引される等の不具合を生じる可能性が低減される。また、図9に示す例において、複数の吸引孔516は、収容空間領域51dと吸引孔領域51eとの境界51fに沿って並んでいる。
【0074】
シート保持機構31にシート11を保持させて、シート11を真空成形する場合のシート保持機構31及び金型51の作用について、図11乃至図13を参照して具体的に説明する。図11は、シート保持機構31によって保持されたシート11を金型51に密着させるために、駆動装置40によってシート保持機構を駆動させる様子を示している。図11に示す符号A1を付した矢印は、シート保持機構31が駆動される方向を示している。図12は、図11に示すようにシート保持機構31を駆動することによって金型51にシート11を密着させた場合における、シート保持機構31、シート11及び金型51の断面を示す断面図である。金型51を固定した上で、シート保持機構31を第1方向d1の第1側s1に移動させて金型51に接近させることで、図12に示すように、金型51にシート11が密着する。より具体的には、シート11を保持したシート保持機構31を、枠部第1面31bを金型本体511の第1面51aに向けた状態で、金型本体511の第1面51aに接近させることによって、シート11が、金型本体511の第1面51aに向かい合った状態で、金型51の成形領域51bを囲う領域に密着する。
【0075】
ここで、第1の実施の形態において、枠部伸縮部材34は、押圧されることで第1端34bが枠部吸着孔31aに収容されるように縮む。これによって、金型51にシート11を密着させた状態において、シート保持機構31の枠部33の枠部第1面31bを、吸着開口34aの真空吸着によって保持されたシート11に接触させることができる。図12に示す例においては、シート保持機構31の枠部33の枠部第1面31bと、金型本体511の第1面51aの外周領域51cとが、向かい合っている。そして、シート保持機構31を第1方向d1の第1側s1に移動させて金型51に接近させていることによって、図12には表れないが、枠部伸縮部材34が枠部33と金型51との間で押圧されて縮んでいる。このために、シート保持機構31の枠部33の枠部第1面31bが、シート11に接触している。これによって、シート11を、シート保持機構31の枠部33の枠部第1面31bによって押して、第1面51aの外周領域51cに強固に密着させることができる。言い換えれば、シート11を、枠部33の枠部第1面31bと、第1面51aの外周領域51cとの間で挟んで、第1面51aの外周領域51cに強固に密着させることができる。このように、第1の実施の形態によれば、シート11を、金型51の成形領域51bを囲う領域に強固に密着させることができる。なお、シート11が金型51の成形領域51bを囲う領域に密着している状態であって、後述するシート11の真空成形を行う前の状態においては、シート11は、成形領域51bには接触しない。
【0076】
シート11が金型51の成形領域51bを囲う領域に密着している状態において、第1面51aの成形領域51bとシート11との間の空間を吸引孔516によって真空引きすることによって、図14に示すように、シート11が真空成形される。図14に示す例においては、真空成形によって、シート11に、成形領域51bに沿って曲げられた部分が形成されている。
【0077】
対向金型52は、シート11の一部が収容されて樹脂が射出成形される収容空間55を、金型51の成形領域51bとともに形成する。対向金型52は、金型51に対して第1方向d1に相対移動して、金型51とともに収容空間55を形成する。図1に示す例において、対向金型52は、第1方向d1において金型51とトリミング装置80との間に位置している。言い換えると、金型51、対向金型52及びトリミング装置80は、第1方向d1に沿ってこの順で並んでいる。
【0078】
図14は、対向金型52を金型51に対して相対移動させる様子の一例が示されている。図14に示す符号A2を付した矢印は、対向金型52が移動する方向を示している。図14に示す例において、金型51は固定されており、対向金型52が第1方向d1の第1側s1に移動している。図示はしないが、対向金型52が固定されており、金型51が第1方向d1の第2側s2に移動してもよい。あるいは、金型51と対向金型52との両方が第1方向d1に移動することによって、金型51と対向金型52とが接近してもよい。図15には、対向金型52が金型51に接近することによって、収容空間55が形成された状態が示されている。金型51を用いてシート11を真空成形した後に、シート11を金型51に対して移動させずに対向金型52を金型51に対して相対移動させることで、図15に示すように、シート11の真空成形された部分が収容空間55に収容された状態が形成される。
【0079】
対向金型52は、金型51との間に適切な収容空間55を形成できる形状を有している。図15に示す例において、対向金型52の面は、対向収容空間領域52dと、対向吸引孔領域52eと、対向外周領域52cとを有する。対向収容空間領域52dは、金型51の成形領域51bの収容空間領域51dに向かい合う。図示されている例では、対向金型52は、対向収容空間領域52dにおいて凸となるように屈曲している。図15に示す例において、収容空間55は、金型51の成形領域51bの収容空間領域51dと、対向金型52の対向収容空間領域52dとによって区画される。対向吸引孔領域52eは、金型51の成形領域51bの吸引孔領域51eに向かい合う。図15に示す例において、対向吸引孔領域52eは、吸引孔領域51eと相補的な形状となっている。図15に示す例において、対向吸引孔領域52eは平面となっている。収容空間55が形成された状態において、吸引孔領域51eと対向吸引孔領域52eとは、ともにシート11に密着している。言い換えれば、シート11は、吸引孔領域51eと対向吸引孔領域52eとによって挟まれている。対向外周領域52cは、金型51の外周領域51cに向かい合う。対向外周領域52cは、外周領域51cと相補的な形状となっている。図15に示す例において、対向外周領域52cは平面となっている。収容空間55が形成された状態において、外周領域51cと対向外周領域52cとは、ともにシート11に密着している。言い換えれば、シート11は、外周領域51cと対向外周領域52cとによって挟まれている。
【0080】
上述したように、収容空間領域51dは、後述する成形品13に含まれるシート11に対応した形状となっている。また、対向収容空間領域52dは、後述する成形品13に含まれる成形部品12の形状に対応した形状となっている。これによって、収容空間領域51dと対向収容空間領域52dとによって区画される収容空間55は、成形品13の形状に対応した形状となっている。上述したようにシート11の真空成形された部分が収容空間55に収容された状態が形成された後に、収容空間55に樹脂を注入する。これによって収容空間55のシート11が配置されていない部分において樹脂の射出成形がされる。このため、対向収容空間領域52dの形状に対応した形状の成形部品12がシート11の真空成形された部分に設けられる。収容空間55に射出される樹脂は、例えば高温に加熱されたABS、PC-ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンの熱可塑性樹脂である。この場合、熱可塑性樹脂が注入された後に冷却されることで、成形部品12がシート11に設けられる。以上によって、図16に示すように、シート11と成形部品12とを含む、収容空間55の形状に対応した形状の成形品13が成形される。
【0081】
対向金型52は、成形品13が成形された後、図16に示すように、第1方向d1の第2側s2に移動して金型51から離間する。図16に示す符号A3を付した矢印は、対向金型52が移動する方向を示している。成形品13は、対向金型52とともに金型51から離間する。例えば成形部品12の一部と対向金型52とが係合していることで、成形品13は、対向金型52とともに第1方向d1の第2側s2に移動する。
【0082】
また、対向金型52は、成形機50によって成形した成形品13を、ヘッド30の成形品保持機構32に受け渡す。図17に示す符号A4を付した矢印は、成形品保持機構32が移動する方向を示している。図17に示す例においては、金型51と対向金型52との間に配置された成形品保持機構32が、成形品13が配置された対向金型52に対して移動している。すなわち、第1方向d1の第2側s2に移動している。これによって、成形品保持機構32が対向金型52に接近して、対向金型52から成形品13を受け取る。その後、図18に示すように、成形品保持機構32は、第1方向d1の第1側s1に移動して、対向金型52から離間する。図18に示す符号A5を付した矢印は、成形品保持機構32が移動する方向を示している。
【0083】
トリミング装置80は、成形機50が成形した成形品13をトリミングする装置である。図18に示すようにヘッド30の成形品保持機構32に保持された成形品13は、駆動装置40がヘッド30を駆動することによって、トリミング装置80に搬送される。トリミング装置80は、成形品保持機構32から成形品13を受け取って、トリミングする。トリミング装置80は、トリミングによって、成形品13から製品として不要な部分を取り除く。これによって、図19に示すように、成形製品16が製造される。図19に示す例においては、トリミングによって、図15においてシート11の外周領域51cと対向外周領域52cとの間に位置していた部分、及びシート11の吸引孔領域51eと対向吸引孔領域52eとの間に位置していた部分が、取り除かれている。言い換えると、トリミングによって、図15においてシート11の収容空間領域51dと対向収容空間領域52dとの間に位置していた部分以外の部分が、取り除かれている。
【0084】
トリミング装置80の形態は、搬送される成形品13を受け取って所望の形状にトリミングできるものであれば、特に限られない。トリミング装置80は、例えば、成形品13が載置される支持台と、支持台上に載置された成形品13を切断する切断手段とを有していてもよい。この場合、支持台が成形品保持機構32から成形品13を受け取ることによって、支持台上に成形品13が載置される。切断手段は、例えば金属からなる刃物である。トリミング装置80は、切断手段を成形品13に当接させた状態で切断手段を移動させることにより、成形品13を切断できる。これによって、成形品13がトリミングされる。切断手段の移動は、制御装置等によって、成形品13が所望の形状にトリミングされるように制御されてもよい。成形品13を所望の形状にトリミングすることで、図19に示すような成形製品16が製造される。なお、図示はしないが、1つの成形品13から複数の成形製品16が製造されてもよい。
【0085】
次に、上述した第1の実施の形態の成形システム1を用いた成形製品16の製造方法の一例について説明する。成形製品16の製造方法は、シート保持機構31によって保持されたシート11を金型51の成形領域51bに密着させる工程と、シート11を、金型51を用いて真空成形する工程と、樹脂を射出成形する工程と、をこの順に備える。第1の実施の形態の成形製品16の製造方法は、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させる工程においてシート11が金型51に密着するよりも前に、シート11をシート保持機構31に供給する工程をさらに備える。
第1の実施の形態の成形製品16の製造方法は、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させる工程の後に、金型51にシート11を保持させる工程をさらに備える。第1の実施の形態の成形製品16の製造方法は、樹脂を射出成形する工程の後に、成形機50が成形した成形品13をトリミングする工程をさらに備える。
【0086】
シート11をシート保持機構31に供給する工程においては、シート11がシート保持機構31に保持されるように、シート11をシート保持機構31に供給する。シート11をシート保持機構31に供給する工程においては、まず、図2に示すように、ロール10をなすように巻かれたシート11が、第1クランプ23aに挟持される。一例として、シート11は、センサ27で図示しないアラインメントマークを検出されながら、鉛直方向における上方に送り出される。センサ27によるアラインメントマークの検出により、所望の位置に、所望の向きで、送り出される寸法(長さ)を所望の寸法としつつ、シート供給装置20からシート保持機構31にシート11を供給できる。次に、シート11をシート保持機構31に保持させる。その後、第2クランプ23bが、シート11の下方を挟持する。シート11の鉛直方向における下方であって第2クランプ23bの上方をシート切断手段21で鉛直方向に非平行な方向、例えば水平方向に切断することで、所定の寸法のシート11が形成される。最後に、第1クランプ23aが、シート11を解放する。このようにして、シート供給装置20からシート保持機構31に所定の寸法のシート11が供給される。シート保持機構31は、シート11を枠部吸着孔31aの真空吸着によって保持する。第1の実施の形態の成形システム1を用いた成形製品16の製造方法において、シート保持機構31は、シート11を吸着開口34aの真空吸着によって保持する。
【0087】
シート11をシート保持機構31に供給する工程の後、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に搬送する。具体的には、駆動装置40によってヘッド30を駆動して、ヘッド30のシート保持機構31に保持されたシート11を成形機50の金型51に搬送する。シート11は、シート保持機構31に保持されてから金型51に受け渡されるまでの少なくとも一期間、ヘッド30が有するヒーター35によって加熱される。ヒーター35がシート11を加熱する時間は長いことが好ましいため、シート保持機構31に保持されてから成形機50に受け渡されるまでの全期間にわたって、シート11がヒーター35によって加熱されることが好ましい。ヒーター35の温度は、シート11を適切に加熱するよう、シート保持機構31がシート11を保持する時間に応じて決定される。例えばシート保持機構31がシート11を保持する時間が長くなる程、ヒーター35の温度を低くする。シート11は、適切に加熱されることで、ブリスター(気泡)が発生する等の不具合が生じることなく、その全体が軟化する。
【0088】
シート11を金型51に密着させる工程においては、シート保持機構31に保持されたシート11を、金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させる。一例として、シート保持機構31に保持されたシート11を、第1面51aの外周領域51cに密着させる。シート11を金型51に密着させる工程においては、まず、軟化したシート11をシート保持機構31に保持したヘッド30を駆動装置40によって駆動して、図8に示すように、成形機50の金型51と対向金型52との間に配置する。図8に示す例においては、シート11を保持したシート保持機構31が金型51と向かい合っている。また、成形機50から成形品13を受け取るヘッド30の成形品保持機構32が対向金型52と向かい合っている。言い換えると、図8に示されているように、シート保持機構31は第1方向d1の第1側s1を向いている。また、成形品保持機構32は第1方向d1の第2側s2を向いている。その後、駆動装置40によって、図11に示すように、ヘッド30を金型51に接近させる。これによって、図12に示すように、シート保持機構31に保持されたシート11を、シート保持機構31によって金型本体511の第1面51aに向けて押圧して、金型51に密着させ得る。
【0089】
ここで、第1の実施の形態において、枠部伸縮部材34は、押圧されることで第1端34bが枠部吸着孔31aに収容されるように縮む。上述したように、枠部伸縮部材34は、シート11を金型51に密着させる工程において枠部伸縮部材34が受ける押圧力によって押圧されることで、第1端34bが枠部吸着孔31aに収容されるように縮む程度に変形しやすい。これにより、シート11を金型51に密着させる工程において、枠部伸縮部材34が縮むことによって、シート保持機構31の枠部33の枠部第1面31bがシート11に接触する。このため、シート11を、枠部33の枠部第1面31bと、金型本体511の第1面51aの外周領域51cとの間で挟んで、第1面51aの外周領域51cに強固に密着させることができる。以上により、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させられる。
【0090】
金型51にシート11を保持させる工程においては、吸着孔515の真空吸着によって、金型51にシート11を保持させる。シート保持機構31によって金型51にシート11が密着させられた状態において、吸着孔515がシート11を真空吸着することによって、金型51にシート11が保持される。
【0091】
シート11を真空成形する工程においては、金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させられたシート11を、金型51を用いて真空成形する。具体的には、図12に示す第1面51aの成形領域51bとシート11との間の空間を、吸引孔516によって真空引きする。これによって、図14に示すように、シート11が真空成形される。
【0092】
シート11を真空成形する工程においては、シート保持機構31によって金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させられたシート11を、金型51を用いて真空成形することができる。シート11を真空成形する工程においては、シート保持機構31によってシート11を外周領域51cに向けて押圧しつつ、シート11を真空成形してもよい。具体的には、金型51にシート11を保持させる工程を行った後に、図14に示すように、シート保持機構31によるシート11の押圧を維持しつつ、シート11を真空成形してもよい。なお、吸着孔515によるシート11の真空吸着と、吸引孔516による真空引きとを、同時に開始してもよい。これによって、吸着孔515によるシート11の吸着の効果と、シート保持機構31によるシート11の押圧の効果との両方を利用して、第1面51aの外周領域51cにシート11を強固に密着させ得る。これによって、吸引孔516の真空吸引によるシート11の真空成形を、効率的に行い得る。
【0093】
図示はしないが、シート11を真空成形する工程においては、シート保持機構31がシート11を外周領域51cに向けて押圧していない状態で、シート11を真空成形してもよい。具体的には、金型51にシート11を保持させる工程を行った後に、枠部吸着孔31aによるシート11の吸着を停止し、駆動装置40によってシート保持機構31をシート11から離間させる工程を行い、さらにその後にシート11を真空成形してもよい。この場合においても、吸着孔515によるシート11の吸着の効果によって第1面51aの外周領域51cにシート11を強固に密着させて、シート11の真空成形を行い得る。なお、枠部吸着孔31aによるシート11の吸着を停止し、駆動装置40によってシート保持機構31をシート11から離間させる工程は、少なくとも収容空間55に樹脂を射出成形する工程よりも前に行う。成形製品16の製造方法の一例として、まずシート11を金型51に密着させ、次に枠部吸着孔31aによるシート11の吸着を停止し、その後に吸着孔515の真空吸着によって金型51にシート11を保持させてもよい。
【0094】
枠部吸着孔31aによるシート11の吸着を停止し、駆動装置40によってシート保持機構31をシート11から離間させた後に、樹脂を射出成形する工程を行う。樹脂を射出成形する工程においては、成形機50にシート11の一部が収容された収容空間55を形成させて、収容空間55に樹脂を射出成形する。具体的には、まず、図14に示すように、対向金型52を金型51に対して相対移動させる。これにより、対向金型52が金型51に保持されたシート11に接触して、収容空間55が形成される。これによって、図15に示すように、シート11の真空成形された部分が収容空間55に収容された状態が形成される。
【0095】
次に、形成された収容空間55に樹脂を射出成形する。具体的には、収容空間55に、高温に加熱された熱可塑性樹脂を注入する。これによって、収容空間55に対応した形状の成形部品12がシート11に設けられて、シート11と成形部品12とを含む成形品13が成形される。
【0096】
一例として、収容空間55に樹脂を射出成形する工程は、シート11の吸着孔515による吸着を停止する工程を含む。一例として、吸着孔515による吸着の停止は、収容空間55が形成されて以降、後述するように対向金型52及び成形品13が金型51から離間するより前に、実行される。収容空間55に樹脂を射出成形する際に、吸着孔515はシート11を吸着していてもよいし、吸着していなくてもよい。
【0097】
成形された成形品13は、以下の方法によって、ヘッド30に保持されて収容空間55から取り出される。まず、図16に示すように、対向金型52を、第1方向d1の第2側s2に移動させて、金型51から離間させる。このとき、成形品13は、対向金型52とともに金型51から離間する。次に、駆動装置40によってヘッド30を駆動して、図8に示すように、再度、金型51と対向金型52との間にヘッド30を配置する。次に、駆動装置40によって、図17に示すようにヘッド30の成形品保持機構32を第1方向d1の第2側s2に移動させて対向金型52に接近させる。そして、成形品保持機構32の吸着パッド32aを成形品13に接触させ、吸着パッド32aの吸着によって成形品13を成形品保持機構32に保持させる。この後、図18に示すように、成形品保持機構32を駆動装置40によって第1方向d1の第1側s1に移動させることによって、成形品13が対向金型52から離間する。これによって、成形品13がヘッド30に保持されて収容空間55から取り出される。
【0098】
成形機50が成形した成形品13をトリミングする工程においては、まず、駆動装置40によってヘッド30を駆動することで、ヘッド30の成形品保持機構32に保持された成形品13をトリミング装置80に搬送する。次に、トリミング装置80によって成形品13を所望の形状にトリミングする。
【0099】
成形品13は、成形品保持機構32に保持されてからトリミング装置80に搬送されるまでの少なくとも一期間、ヘッド30が有する成形品ヒーター36によって加熱される。成形品13は、成形品ヒーター36によって適切に加熱されることで、温度の変化による収縮等の変形が生じにくくなる。
【0100】
成形品13をトリミング装置80に搬送する方法、及びトリミング装置80によって成形品13をトリミングする方法は、トリミング装置80の形態に応じて適宜定められる。例えば、上述したように、トリミング装置80が、成形品13が載置される支持台と、支持台上に載置された成形品13を切断する切断手段とを有する場合には、以下の方法によって、成形品13をトリミング装置80に搬送してトリミングできる。まず、駆動装置40によってヘッド30を駆動することで、ヘッド30の成形品保持機構32に保持された成形品13を支持台に載置する。次に、吸着パッド32aによるシート11の吸着を停止する。次に、駆動装置40によってヘッド30を駆動することで、成形品保持機構32を成形品13から離間させる。次に、支持台に載置された成形品13に切断手段を当接させて、切断手段を移動させる。これによって、成形品13を切断し、成形品13を所望の形状にトリミングできる。成形品13のトリミングによって、図19に示すような成形製品16が作製される。
【0101】
なお、成形製品16の製造方法は、成形機50が成形した成形品13をトリミングする工程を備えなくてもよい。例えば、樹脂を射出成形する工程において、収容空間55に樹脂を射出成形することによって成形された成形品13を、トリミングせずに成形製品16としてもよい。
【0102】
第1の実施の形態において、シート保持機構31は枠部伸縮部材34を備えており、シート11が吸着開口34aの真空吸着によってシート保持機構31に保持される。第1の実施の形態のシート保持機構31、成形システム1及び第1の実施の形態に係る成形システム1を用いた成形製品16の製造方法によれば、上述したように、シート保持機構31からシート11が脱落することを抑制できる。特に、シート11自体の重さやヒーター35による加熱のためにシート11が変形する場合においても、シート保持機構31からシート11が脱落することを抑制できる。
【0103】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る成形システム1について説明する。第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。以下の説明においては、第2の実施の形態に係る成形システム1について、第1の実施の形態に係る成形システム1との差異点を中心に説明する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0104】
第2の実施の形態に係る成形システム1も、第1の実施の形態に係る成形システム1と同様に、図1に示す上面図によって表せる。すなわち、第2の実施の形態に係る成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。第2の実施の形態に係る成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、をさらに備える。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部としてシート保持機構31を備えている。
【0105】
図20は、第2の実施の形態に係るシート保持機構31及びヒーター35の一例を示す斜視図である。図21は、図20のXXI-XXI線に沿った断面を、シート保持機構31に保持されるシート11及びシート11が密着する金型51とともに示す断面図である。図20に示すように、第2の実施の形態において、シート保持機構31は、開口部33aが設けられた枠状の形状を有する枠部33と、枠部33に設けられた枠部吸着孔31aと、を備えている。
【0106】
シート保持機構31の枠部33は、枠部33の開口部33aを形成する内面33bと、内面33bとは反対側に位置する外面33cとを有する。図20及び図21に示す例において、内面33b及び外面33cは、枠部第1面31bと枠部第2面31cとを接続する面である。また、内面33b及び外面33cは、枠部第1面31b及び枠部第2面31cに垂直な面である。
【0107】
第2の実施の形態において、シート保持機構31は、枠部33を加熱する枠部ヒーター37をさらに備える。第2の実施の形態において、枠部ヒーター37は、枠部33の開口部33aを形成する内面33b及び内面33bとは反対側に位置する外面33cの、少なくともいずれか一方に取り付けられている。図20及び図21に示す例において、枠部ヒーター37は、内面33bに取り付けられている。図示はしないが、枠部ヒーター37は、外面33cに取り付けられていてもよい。
【0108】
枠部ヒーター37の種類は、枠部33の枠部第1面31bを加熱できる限り、特に限られない。枠部ヒーター37は、例えばプレートヒーターと呼ばれる板状のヒーターである。
【0109】
シート保持機構31が枠部ヒーター37をさらに備えることによって、以下の効果が得られる。第2の実施の形態において、シート保持機構31の枠部第2面31c側にはヒーター35が配置されている。ヒーター35は、シート保持機構31がシート供給装置20からシート11を受け取ってから、金型51にシート11を受け渡すまでの少なくとも一期間、シート11を加熱する。ここで、ヒーター35の熱のシート11への伝達が、枠部33によって妨げられる場合がある。この場合、シート11の、枠部33の枠部第1面31bと向かい合う部分には、ヒーター35からの熱が伝達しにくくなる。シート11の、枠部33の枠部第1面31bと向かい合う部分を、枠部対向部111と称する。この場合、ヒーター35と枠部対向部111の間に枠部33が位置するために、枠部対向部111にはヒーター35からの熱が伝達しにくくなる。この場合に、シート保持機構31が枠部ヒーター37を備えることにより、枠部ヒーター37によって枠部33を加熱し、枠部ヒーター37の熱を、枠部33を介して枠部対向部111に伝達させることができる。
【0110】
ここで、シート保持機構31が金型51にシート11を受け渡すときに、金型51に密着させられたシート11が、金型51に熱を奪われて冷やされる場合がある。一例として、シート保持機構31に保持されてヒーター35や枠部ヒーター37によって加熱されたシート11の温度は120℃以上170℃以下である。また、一例として、金型51の温度は40℃以上70℃以下である。シート11が金型51に熱を奪われて冷やされると、シート11が収縮し得る。この場合に、ヒーター35によっては加熱されにくい枠部対向部111において、特に急激にシート11の収縮が生じる場合がある。ここで、枠部ヒーター37によって枠部対向部111を加熱することによって、枠部対向部111におけるシート11の急激な収縮を抑制し得る。これにより、シート保持機構31が金型51にシート11を受け渡したときにおいて、金型51が吸着孔515の真空吸着によってシート11を保持するときに、枠部対向部111におけるシート11の急激な収縮のために金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0111】
さらに、シート供給装置20からシート保持機構31に供給されるシート11の寸法に対する成形システム1を用いて製造される成形製品16及び後述する成形シート17などの寸法を大きくして、シート11の利用効率を大きくすることが求められる場合がある。この場合、成形システム1を用いて製造される成形製品16及び後述する成形シート17などの寸法を十分に大きくしつつ、シート保持機構31及び金型51によって保持できるシート11の寸法を小さくすることが求められる。この場合、図21に示すように、シート保持機構31によって保持されたシート11を金型51に密着させるときに枠部33が吸着孔515に重なるように、シート保持機構31及び金型51を設計することが求められる場合がある。図21に示す例において、シート保持機構31及び金型51は、シート保持機構31によって保持されたシート11を金型51に密着させるときに枠部吸着孔31aが吸着孔515に重なるように、設計されている。この場合、金型51は、吸着孔515によって枠部対向部111を真空吸着することにより、シート11を保持する。ここで、上述したように、ヒーター35の熱の枠部対向部111への伝達が、枠部33によって妨げられる場合がある。この場合であっても、シート保持機構31が枠部ヒーター37を備えることによって、枠部ヒーター37により枠部対向部111を加熱して軟化させることができる。このため、金型51が吸着孔515によって枠部対向部111を真空吸着するときに、吸着孔515への枠部対向部111の引き込みを発生させて、金型51にシート11を安定的に保持させることができる。また、枠部ヒーター37によって枠部対向部111を加熱することによって、枠部対向部111におけるシート11の急激な収縮を抑制し得る。これにより、金型51が、吸着孔515によって枠部対向部111を真空吸着することによりシート11を保持する場合であっても、枠部対向部111におけるシート11の急激な収縮のために金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0112】
以上により、シート保持機構31が枠部ヒーター37をさらに備えることによって、シート11を保持する部材である金型51からシート11が脱落することを抑制できる。特に、成形システム1を用いた成形製品16の製造方法において、金型51に保持されたシート11からシート保持機構31が離間してから、金型51に保持されたシート11に対向金型52が接触するまでの間に、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0113】
なお、図21に示すように、シート保持機構31によって保持されたシート11を金型51に密着させるときに枠部吸着孔31aが吸着孔515に重なる場合、成形システム1を用いた成形製品16の製造方法においては、以下の手順で、シート11の金型51への密着、枠部吸着孔31aによるシート11の吸着の停止、及び金型51によるシート11の保持を行う。まずシート11を金型51に密着させ、次に枠部吸着孔31aによるシート11の吸着を停止し、その後に吸着孔515の真空吸着によって金型51にシート11を保持させる。
【0114】
なお、図20及び図21に示すシート保持機構31は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていない。図20及び図21に示すシート保持機構31は、枠部吸着孔31aから空気を吸引することで、シート11を、枠部吸着孔31aの真空吸着によって保持する。図示はしないが、第2の実施の形態のシート保持機構31が、さらに第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていてもよい。
【0115】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る成形システム1について説明する。第3の実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。以下の説明においては、第3の実施の形態に係る成形システム1について、上述の各実施の形態に係る成形システム1との差異点を中心に説明する。また、上述の各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0116】
第3の実施の形態に係る成形システム1も、第1の実施の形態に係る成形システム1と同様に、図1に示す上面図によって表せる。すなわち、第3の実施の形態に係る成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。第3の実施の形態に係る成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、をさらに備える。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部としてシート保持機構31を備えている。
【0117】
図22は、第3の実施の形態に係るシート保持機構31及びヒーター35の一例をシート保持機構31の枠部33の枠部第1面31b側から見た様子を示す平面図である。図23は、図22のXXIII-XXIII線に沿った断面を、シート保持機構31に保持されるシート11及びシート11が密着する金型51とともに示す断面図である。図22に示すように、第3の実施の形態において、シート保持機構31は、開口部33aが設けられた枠状の形状を有する枠部33と、枠部33に設けられた枠部吸着孔31aと、を備えている。
【0118】
第3の実施の形態において、シート保持機構31は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられていない領域に、開口部33aを囲うように取り付けられる、枠部33よりも弾性変形しやすい弾性体381をさらに備える。一例として、弾性体381は、金型51の金型本体511よりも弾性変形しやすい。弾性変形のしやすさの指標として、デュロメータ硬さを用いることができる。すなわち、枠部33、金型本体511及び弾性体381の材料について試験片を準備し、規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときに押針が押し込まれる深さから得られる値を、弾性変形のしやすさの指標として用いることができる。デュロメータ硬さは、以下の方法によって測定できる。JIS K6253-3:2012に準拠して、押針を有する試験機を準備し、且つ枠部33、金型本体511及び弾性体381の材料について形状の同じ試験片を作成する。試験機としては、タイプAデュロメータを準備する。次に、当該試験機を用いて、試験片に規定の条件で押針を押し込む。そして、試験片に押針が押し込まれる深さから、デュロメータ硬さを算出する。そして、枠部33、金型本体511及び弾性体381について、測定された試験片の伸びの大きさを比較する。JIS K6253-3:2012に準拠したタイプAデュロメータ硬さ試験により測定される弾性体381のデュロメータ硬さは、例えば60未満である。これにより、弾性体381が、一般的な金型本体511よりも弾性変形しやすくなる。弾性体381は、好ましくは、JIS K6253-3:2012に準拠したタイプAデュロメータ硬さ試験により測定されるデュロメータ硬さが20以下の、軟質ゴムである。
【0119】
弾性体381は、枠部33の第1部分33dの延びる方向に沿って延びている部分と、第2部分33eの延びる方向に沿って延び且つ第1部分33dの延びる方向に沿って延びている部分に接続している部分と、を有する、枠状の形状を有している。図22に示す例において、弾性体381は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられた領域を囲うように取り付けられている。図示はしないが、弾性体381は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられた領域と開口部33aとの間に取り付けられていてもよい。図23に示すようにシート保持機構31がシート11を金型51に密着させている状態において、弾性体381は、金型51の外周領域51cの、吸着孔515が設けられた領域を囲う領域に重なる。
【0120】
図23に示す例において、枠部33の枠部第1面31bには、弾性体381の一部を収容する収容溝382が設けられている。収容溝382は、弾性体381に重なるように、開口部33aを囲うように設けられている。弾性体381は、弾性体381の一部が収容溝382に嵌められることによって、枠部第1面31bに対して取り付けられている。図示はしないが、弾性体381は、枠部第1面31bの、枠部吸着孔31aが設けられた領域以外の領域の全体を覆っていてもよい。この場合、枠部33の枠部第1面31bに収容溝382が設けられていなくてもよい。
【0121】
シート保持機構31が弾性体381をさらに備えることによって、以下の効果が得られる。図23に示すように、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させるときに、弾性体381と金型51との間でシート11を挟んで、シート11を金型51に強固に密着させることができる。これにより、金型51とシート11との間の空間を強固に密閉した上で、吸着孔515によるシート11の真空吸着を行うことができる。このため、吸着孔515によるシート11の真空吸着を、より強固に行って、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。特に、シート11が変形する場合においても、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。また、金型51とシート11との間の空間を強固に密閉した上で、吸引孔516の真空吸引によるシート11の真空成形を行うことができる。このため、吸引孔516の真空吸引によるシート11の真空成形を、効率的に行い得る。
【0122】
図23に示す例において、弾性体381は、枠部第1面31bに垂直な方向において、枠部第1面31bから幅w2だけ突出している。弾性体381の突出する幅w2は、例えば2mm以上5mm以下である。幅w2を2mm以上とすることによって、より安定的に、弾性体381と金型51との間でシート11を挟むことができる。幅w2を5mm以下とすることによって、以下の効果が得られる。図23に示すような枠部33と弾性体381とを備えるシート保持機構31にシート11を保持させる場合、シート11を、弾性体381及び枠部33の枠部吸着孔31aが設けられている部分に接触するように変形させる必要が生じる。図23に示す例において、シート11は、弾性体381の金型51に向かい合う面と、枠部33の枠部吸着孔31aが設けられている部分と、に接触するように折れ曲がるように変形している。ここで、幅w2を5mm以下とすることにより、シート11を、弾性体381の金型51に向かい合う面と、枠部33の枠部吸着孔31aが設けられている部分とに接触するように変形させることが容易となる。これにより、弾性体381と金型51との間でシート11を挟みつつ、シート11を枠部33の枠部吸着孔31aが設けられている部分に接触させて枠部吸着孔31aの真空吸着によりシート11を保持できる。
【0123】
弾性体381の材料は、枠部33よりも弾性変形しやすく、且つ弾性体381と金型51との間でシート11を挟むことによって金型51とシート11との間の空間を密閉できる限り、特に限られない。弾性体381の材料は、例えばシリコンスポンジである。
【0124】
なお、図22及び図23に示すシート保持機構31は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていない。図示はしないが、第3の実施の形態のシート保持機構31が、さらに第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていてもよい。また、図22及び図23に示すシート保持機構31は、第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていない。図示はしないが、第3の実施の形態のシート保持機構31が、さらに第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていてもよい。
【0125】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態に係る成形システム1について説明する。第4の実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。以下の説明においては、第4の実施の形態に係る成形システム1について、上述の各実施の形態に係る成形システム1との差異点を中心に説明する。また、上述の各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0126】
第4の実施の形態に係る成形システム1も、第1の実施の形態に係る成形システム1と同様に、図1に示す上面図によって表せる。すなわち、第4の実施の形態に係る成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。第4の実施の形態に係る成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、をさらに備える。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部としてシート保持機構31を備えている。
【0127】
図24は、第4の実施の形態に係る金型51の一例を金型本体511の第1面51a側から見た様子を示す平面図である。図25は、図24のXXV-XXV線に沿った断面を、シート保持機構31及びシート保持機構31に保持されて金型51に密着するシート11とともに示す断面図である。図24に示すように、第4の実施の形態において、金型51は、第1面51aを有する金型本体511を備えている。第1面51aは、シート11を真空成形する成形領域51bと、成形領域51bを囲う外周領域51cとを有している。金型51は、さらに、金型本体511に設けられ、外周領域51cにおいて開口する吸着孔515を備えている。
【0128】
第4の実施の形態において、金型51は、外周領域51cに、吸着孔515が設けられた領域を囲うように取り付けられる、金型本体511よりも弾性変形しやすい弾性体518をさらに備える。一例として、弾性体518は、シート保持機構31の枠部33よりも弾性変形しやすい。第4の実施の形態における金型51の弾性体518の弾性変形のしやすさの指標は、第3の実施の形態において上述したシート保持機構31の弾性体381の弾性変形のしやすさの指標と同様である。
【0129】
弾性体518は、金型51の上辺514及び下辺512に沿って延びている部分と、側辺513に沿って延び且つ上辺514及び下辺512に沿って延びている部分に接続している部分と、を有する、枠状の形状を有している。弾性体518は、金型本体511の第1面51aに、成形領域51bを囲うように取り付けられている。これによって、弾性体518は、金型51の成形領域51bを囲う領域を形成している。一例として、シート保持機構31がシート11を金型51に密着させている状態において、弾性体518は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられていない領域に重なる。一例として、弾性体518は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられた領域を囲う領域に重なる。
【0130】
図25に示す例において、金型本体511の第1面51aには、弾性体518の一部を収容する収容溝519が設けられている。収容溝519は、弾性体518に重なるように、外周領域51cの吸着孔515が設けられた領域を囲うように設けられている。弾性体518は、弾性体518の一部が収容溝519に嵌められることによって、第1面51aに対して取り付けられている。
【0131】
金型51が弾性体518をさらに備えることによって、以下の効果が得られる。図25に示すように、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させるときに、シート保持機構31の枠部33と弾性体518との間でシート11を挟んで、シート11を金型51の弾性体に強固に密着させることができる。図25に示す例において、弾性体518は、金型51の成形領域51bを囲う領域を形成している。このため、シート保持機構31の枠部33と弾性体518との間でシート11を挟むことによって、シート11を金型51の成形領域51bを囲う領域に強固に密着させることができる。これにより、金型51とシート11との間の空間を強固に密閉した上で、吸着孔515によるシート11の真空吸着を行うことができる。このため、吸着孔515によるシート11の真空吸着を、より強固に行って、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。特に、シート11が変形する場合においても、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。また、金型51とシート11との間の空間を強固に密閉した上で、吸引孔516の真空吸引によるシート11の真空成形を行うことができる。このため、吸引孔516の真空吸引によるシート11の真空成形を、効率的に行い得る。
【0132】
図25に示す例において、弾性体518は、第1面51aの外周領域51cに垂直な方向において、外周領域51cから幅w3だけ突出している。弾性体518の突出する幅w3は、例えば2mm以上5mm以下である。幅w3を2mm以上とすることによって、より安定的に、枠部33と弾性体518との間でシート11を挟むことができる。幅w3を5mm以下とすることによって、以下の効果が得られる。図25に示すような金型本体511と弾性体518とを備える金型51にシート11を保持させる場合、図26に示すように、シート11を、弾性体518及び金型本体511の吸着孔515が設けられている部分に接触するように変形させる必要が生じる。図26に示す例において、シート11は、弾性体518のシート保持機構31に向かい合う面と、金型本体511の吸着孔515が設けられている部分と、に接触するように折れ曲がるように変形している。ここで、幅w3を5mm以下とすることにより、シート11を、弾性体518のシート保持機構31に向かい合う面と、金型本体511の吸着孔515が設けられている部分とに接触するように変形させることが容易となる。これにより、シート11と弾性体518のシート保持機構31に向かい合う面との間や、シート11と金型本体511の吸着孔515が設けられている部分との間に隙間が空いて真空漏れが生じることを抑制できる。特に、シート11が弾性体518及び金型本体511の形状に沿って変形せずに、波打つように変形して、シート11と弾性体518のシート保持機構31に向かい合う面との間や、シート11と金型本体511の吸着孔515が設けられている部分との間に隙間が空くことを抑制できる。以上より、枠部33と弾性体518との間でシート11を挟みつつ、シート11を金型本体511の吸着孔515が設けられている部分に接触させて吸着孔515の真空吸着によりシート11を保持できる。また、w3を5mm以下とすることにより、図25に示すようにシート保持機構31に保持されたシート11が金型51に密着している状態での、シート11の面に垂直な方向におけるシート11と成形領域51bとの距離の最大値w4が、小さく抑えられる。これにより、吸引孔516の真空吸引によりシート11の真空成形を行うときに、シート11の引き伸ばされる量が小さく抑えられる。シート11の引き伸ばされる量が小さく抑えられることによって、シート11にクラックや柄伸びが生じることを、より安定的に抑制できる。なお、柄伸びとは、シート11の表面に印刷された意匠や情報等の表示が、シート11が想定以上に大きく引き伸ばされることによって、所望の表示とは異なったものになることを指す。また、シート11が大きく引き伸ばされることによってシート11が透けてしまうことも抑制できる。
【0133】
弾性体518の材料は、金型本体511よりも弾性変形しやすく、且つ枠部33と弾性体518との間でシート11を挟むことによって金型51とシート11との間の空間を密閉できる限り、特に限られない。一例として、金型51の弾性体518の材料は、第3の実施の形態において上述したシート保持機構31の弾性体381の材料と同様である。弾性体518の材料は、例えばシリコンスポンジである。
【0134】
図27は、第4の実施の形態に係る成形システム1において、シート11を真空成形した後に、対向金型52が金型51に接近することによって、収容空間55が形成された状態を示す図である。第4の実施の形態において、成形機50は、上述した金型51と、対向金型52と、を備える。そして、対向金型52は、金型51と対向金型52とが収容空間55を形成しているときに弾性体518の少なくとも一部を収容する凹部521を有する。凹部521は、対向金型52の対向外周領域52cに、対向収容空間領域52d及び対向吸引孔領域52eを囲うように設けられている。
【0135】
一例として、凹部521は、金型51と対向金型52とが収容空間55を形成しているときに、弾性体518の少なくとも一部と、シート11の弾性体518に接触している部分とを収容する。これによって、金型51と対向金型52とが収容空間55を形成しているときに、金型本体511の外周領域51cの弾性体518が取り付けられていない部分がシート11に密着できる。また、対向金型52の対向外周領域52cの凹部521が設けられていない領域がシート11に密着できる。このため、対向金型52が凹部521を有することによって、金型本体511に弾性体518を取り付けつつ、金型51と対向金型52とが収容空間55を形成しているときに、弾性体518に阻害されることなく、金型本体511の外周領域51c及び対向金型52の対向外周領域52cをシート11に密着させ得る。これにより、シート11を、外周領域51cと対向外周領域52cとによって挟んで、収容空間55を強固に密閉できる。
【0136】
なお、図24乃至図27に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていない。図示はしないが、第4の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていてもよい。また、図24乃至図27に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていない。図示はしないが、第4の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていてもよい。
【0137】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態に係る成形システム1について説明する。第5の実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。以下の説明においては、第5の実施の形態に係る成形システム1について、上述の各実施の形態に係る成形システム1との差異点を中心に説明する。また、上述の各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0138】
第5の実施の形態に係る成形システム1も、第1の実施の形態に係る成形システム1と同様に、図1に示す上面図によって表せる。すなわち、第5の実施の形態に係る成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。第5の実施の形態に係る成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、をさらに備える。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部としてシート保持機構31を備えている。
【0139】
図28は、第5の実施の形態に係る金型51の一例を第1面51a側から見た様子を示す平面図である。図29は、図28のXXIV-XXIV線に沿った断面を示す断面図である。図29に示すように、第5の実施の形態において、金型51は、第1面51aを有する金型本体511を備えている。第1面51aは、シート11を真空成形する成形領域51bと、成形領域51bを囲う外周領域51cとを有している。金型51は、さらに、金型本体511に設けられ、外周領域51cにおいて開口する吸着孔515を備えている。
【0140】
第5の実施の形態において、金型51は、吸着開口56aが設けられた第1端56b及び第1端56bとは反対側に位置する第2端56cを有する伸縮部材56をさらに備えている。図28において、伸縮部材56は、押圧されていない状態にある。このとき、第2端56cは吸着孔515に収容される。また、第1端56bは吸着孔515から突出する。換言すれば、第1端56bは、第1面51aの、第2面51gが位置する側とは反対側に位置する。
【0141】
第5の実施の形態において、金型51は、複数の伸縮部材56を備えている。伸縮部材56の数は、吸着孔515の数と同じである。複数の伸縮部材56の各々の第2端56cは、吸着孔515の各々に収容される。複数の伸縮部材56の各々の第1端56bは、吸着孔515の各々から突出する。
【0142】
図28に示す例において、伸縮部材56は、吸着孔515の延びる方向に延びる筒状の形状を有している。伸縮部材56は、第1端56bから第2端56cまで延びる貫通孔56dを有している。貫通孔56dが、第1端56bにおいて吸着開口56aを形成している。
【0143】
第5の実施の形態の金型51は、シート11を、吸着開口56aの真空吸着によって保持する。図28に示す例では、伸縮部材56の第2端56c側において、伸縮部材56の外壁と吸着孔515の内壁との間が密閉されている。金型51は、伸縮部材56の外壁と吸着孔515の内壁との間に配置される密閉部材57をさらに備えている。密閉部材57によって、伸縮部材56の外壁と吸着孔515の内壁との間が密閉されている。これにより、第2面51g側から吸着孔515内の空気を吸引することで、貫通孔56d内の空気を吸引して、吸着開口56aの真空吸着によってシート11を保持できる。吸着孔515内の空気を吸引することで吸着開口56aの真空吸着を行えるため、シート11を吸着孔515の真空吸着によって保持することには、シート11を吸着開口56aの真空吸着によって保持することが含まれると言える。図28に示す例においては、第1端56bが吸着孔515から突出している。これにより、金型51は、シート11が第1面51aから離間するように、シート11を保持できる。
【0144】
伸縮部材56は、押圧されることで第1端56bが吸着孔515に収容されるように縮む。伸縮部材56は、第1端56bが第2端56cに向けて押圧されることで、第1端56bと第2端56cとの距離が小さくなるように縮む。伸縮部材56は、上述したシート保持機構31によって保持されたシート11を金型51の成形領域51bを囲う領域に密着させる工程において伸縮部材56が受ける押圧力によって押圧されることで、第1端56bが吸着孔515に収容されるように縮む程度に変形しやすい。また、伸縮部材56は、押圧から解放されると、第1端56bが吸着孔515から突出した位置に戻るように伸びる。
【0145】
伸縮部材56の伸縮する変形のしやすさを確保する手段は、シート11を吸着開口56aの真空吸着によって保持できる限り、特に限られない。伸縮部材56は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34と同様の部材であってもよい。伸縮部材56は、吸着孔515の軸線を通る断面において、蛇腹状の形状を有していてもよい。
【0146】
金型51が伸縮部材56を備え、シート11が吸着開口56aの真空吸着によって金型51に保持されることの効果について説明する。上述したように、金型51がシート11を保持している状態において、シート11が変形することがあり得る。ここで、第5の実施の形態においては、金型51が伸縮部材56の吸着開口56aの真空吸着によってシート11を保持する。これによって、シート11が変形した場合に、伸縮部材56が変形することで、吸着開口56aをシート11の変形に追従するように移動させることができる。このため、シート11が吸着開口56aに対してずれることによって金型51からシート11が脱落することを、抑制できる。このように、第5の実施の形態によれば、シート11を保持する部材である金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0147】
また、伸縮部材56は、押圧されることで第1端56bが吸着孔515に収容されるように縮む。上述したように、伸縮部材56は、シート11を金型51に密着させる工程において伸縮部材56が受ける押圧力によって押圧されることで、第1端56bが吸着孔515に収容されるように縮む程度に変形しやすい。これにより、シート11を金型51に密着させる工程において、伸縮部材56が縮むことによって、金型本体511の第1面51aの外周領域51cがシート11に接触する。このため、シート11を、枠部33の枠部第1面31bと、金型本体511の第1面51aの外周領域51cとの間で挟んで、第1面51aの外周領域51cに強固に密着させることができる。以上により、シート保持機構31に保持されたシート11を金型本体511の第1面51aの外周領域51cに密着させられる。
【0148】
図28及び図29に示す例において、金型51は、第1面51aに設けられ、成形領域51bの少なくとも一部を囲う線状溝58をさらに備える。また、金型51は、真空吸着によって線状溝58にシート11を引き込む線状溝吸引孔517をさらに備える。線状溝吸引孔517は、金型本体511に設けられている。線状溝吸引孔517は、開口を有している。線状溝吸引孔517の開口の少なくとも一部は、線状溝58の壁面58aに設けられている。図28及び図29に示す例において、線状溝58は、金型本体511の第1面51aの吸引孔領域51eに設けられている。線状溝58は、金型本体511の第1面51aの収容空間領域51dを囲うように設けられている。図28及び図29に示す例において、金型51は、複数の線状溝吸引孔517を備えている。複数の線状溝吸引孔517は、線状溝58の延びる方向に沿って並んでいる。図28及び図29に示す例においては、複数の線状溝吸引孔517の開口の全体が、線状溝58の壁面58aに設けられている。
【0149】
線状溝吸引孔517の開口の少なくとも一部が線状溝58の壁面58aに設けられていることによって、線状溝吸引孔517内の空気を吸引することで、線状溝58の近傍に配置されたシート11の一部を線状溝58に引き込むことができる。
【0150】
図28及び図29に示す例においては、上述した、シート11の真空成形に用いられる吸引孔516が、線状溝吸引孔517を兼ねている。換言すれば、吸引孔516の開口の少なくとも一部が、線状溝58の壁面58aに設けられている。図示はしないが、線状溝吸引孔517は、吸引孔516とは別の孔であってもよい。線状溝吸引孔517が吸引孔516とは別の孔である場合、線状溝58及び線状溝吸引孔517は、吸引孔領域51eに設けられていてもよく、外周領域51cに設けられていてもよい。
【0151】
第5の実施の形態において、吸着孔515は、線状溝58によって囲まれた領域の外側において開口している。図28及び図29に示す例において、金型51は複数の吸着孔515を備える。そして、複数の吸着孔515の全てが、線状溝58によって囲まれた領域の外側において開口している。
【0152】
金型51が線状溝58と線状溝吸引孔517とを備えることによって、金型51にシート11を保持させるときに、シート11の一部を線状溝58に引き込むことで、線状溝58によってシート11を保持できる。このため、吸着孔515の真空吸着によってシート11を保持するとともに、線状溝58によってもシート11を保持できる。このため、より安定的に、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。特に、シート11が変形する場合においても、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0153】
シート11の真空成形に用いられる吸引孔516が線状溝吸引孔517を兼ねている場合、吸引孔516の真空吸引により、シート11が真空成形されると同時に、シート11の一部が線状溝58に引き込まれてもよい。
【0154】
なお、図28及び図29に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていない。図示はしないが、第5の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていてもよい。この場合、枠部伸縮部材34及び伸縮部材56は、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させるときに、枠部伸縮部材34と伸縮部材56とが接触しないように配置される。一例として、枠部吸着孔31a及び吸着孔515は、シート保持機構31に保持されたシート11を金型51に密着させるときに枠部吸着孔31aの開口と吸着孔515の開口とが重ならないように配置される。これによって、枠部伸縮部材34と伸縮部材56とを互いに接触しないように配置できる。また、図28及び図29に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていない。図示はしないが、第5の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていてもよい。また、図28及び図29に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第3の実施の形態において上述した弾性体381を備えていない。図示はしないが、第5の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第3の実施の形態において上述した弾性体381を備えていてもよい。また、図28及び図29に示す成形システム1において、金型51は、第4の実施の形態において上述した弾性体518を備えていない。図示はしないが、第5の実施の形態の成形システム1の金型51が、さらに第4の実施の形態において上述した弾性体518を備えていてもよい。
【0155】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態に係る成形システム1について説明する。第6の実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。以下の説明においては、第6の実施の形態に係る成形システム1について、上述の各実施の形態に係る成形システム1との差異点を中心に説明する。また、上述の各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0156】
第6の実施の形態に係る成形システム1も、第1の実施の形態に係る成形システム1と同様に、図1に示す上面図によって表せる。すなわち、第6の実施の形態に係る成形システム1は、ヘッド30と成形機50と駆動装置40とを備える。第6の実施の形態に係る成形システム1は、シート供給装置20と、トリミング装置80と、をさらに備える。ヘッド30は、シート保持機構31を有している。すなわち、成形システム1は、ヘッド30の一部としてシート保持機構31を備えている。
【0157】
図30は、第6の実施の形態に係るシート保持機構31及びヒーター35の一例をシート保持機構31の枠部33の枠部第1面31b側から見た様子を示す平面図である。図31は、図30のXXXI-XXXI線に沿った断面を、シート保持機構31に保持されるシート11及びシート11が密着する金型51とともに示す断面図である。図31に示すように、第6の実施の形態において、シート保持機構31は、開口部33aが設けられた枠状の形状を有する枠部33と、枠部33に設けられた枠部吸着孔31aと、を有している。また、図31に示すように、金型51は、第1面51aを有する金型本体511を有している。第1面51aは、シート11を真空成形する成形領域51bと、成形領域51bを囲う外周領域51cとを有している。
【0158】
第6の実施の形態において、シート保持機構31は、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられていない領域に設けられ、開口部33aを囲う線状凸部33fをさらに有する。図30及び図31に示す例において、線状凸部33fは、枠部33と一体となっている。また、線状凸部33fは、枠部33の第1部分33dの延びる方向に沿って延びている部分と、第2部分33eの延びる方向に沿って延び且つ第1部分33dの延びる方向に沿って延びている部分に接続している部分と、を有する。図30に示す例において、線状凸部33fは、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられた領域と開口部33aとの間に設けられている。図示はしないが、線状凸部33fは、枠部第1面31bの枠部吸着孔31aが設けられた領域を囲うように設けられていてもよい。図31に示すようにシート保持機構31がシート11を金型51に密着させている状態において、線状凸部33fは、金型本体511の外周領域51cの、後述する吸着線状溝59が設けられた領域に重なる。図31に示すようにシート保持機構31がシート11を保持しているときに、シート11の一部は、線状凸部33fに重なる。
【0159】
第6の実施の形態において、金型51は、外周領域51cに設けられた吸着線状溝59をさらに有する。図32は、図31に示す金型51を、第1面51a側から見た様子を示す平面図である。図32に示すように、吸着線状溝59は、成形領域51bを囲っている。また、金型51は、金型本体511に設けられた吸着孔515を有する。吸着孔515は、開口を有している。吸着孔515の開口は、少なくとも一部が吸着線状溝59の壁面59aに設けられている。図31に示す例において、吸着線状溝59は、金型本体511の第1面51aの外周領域51cに設けられている。図31に示す例において、金型51は、複数の吸着孔515を備えている。複数の吸着孔515は、吸着線状溝59の延びる方向に沿って並んでいる。図31に示す例においては、複数の吸着孔515の開口の全体が、吸着線状溝59の壁面59aに設けられている。吸着孔515の開口の少なくとも一部が吸着線状溝59の壁面59aに設けられていることによって、吸着孔515内の空気を吸引することで、吸着線状溝59の近傍に配置されたシート11の一部を吸着線状溝59に引き込むことができる。
【0160】
ここで、図31に示すように、シート保持機構31がシート11を第1面51aの成形領域51bを囲う領域に密着させているときに、線状凸部33fの少なくとも一部が吸着線状溝59に挿入される。線状凸部33fの少なくとも一部が吸着線状溝59に挿入されることによって、シート11の線状凸部33fに重なる部分が吸着線状溝59に押し込まれる。第6の実施の形態において、線状凸部33fの先端33gの全体が、吸着線状溝59に挿入される。この場合、シート11の、線状凸部33fの先端33gに重なる部分の全体が、吸着線状溝59に押し込まれる。
【0161】
シート保持機構31がシート11を第1面51aの成形領域51bを囲う領域に密着させているときに、線状凸部33fの少なくとも一部が吸着線状溝59に挿入されることによって、以下の効果が得られる。シート保持機構31がシート11を第1面51aの成形領域51bを囲う領域に密着させているときに、線状凸部33fによって、シート11の一部を吸着線状溝59に押し込むことができる。シート11の一部が吸着線状溝59に押し込まれることにより、吸着線状溝59の壁面59aにおいて開口している吸着孔515によるシート11の真空吸着を、より安定的に生じさせ得る。また、シート11の一部が吸着線状溝59に押し込まれることによって、金型51に対するシート11の移動が抑制される。以上により、金型51にシート11をより安定的に保持させて、金型51からシート11が脱落することを抑制できる。
【0162】
なお、図30及び図31に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていない。図示はしないが、第6の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第1の実施の形態において上述した枠部伸縮部材34を備えていてもよい。また、図30及び図31に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていない。図示はしないが、第6の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第2の実施の形態において上述した枠部ヒーター37を備えていてもよい。また、図30及び図31に示す成形システム1において、シート保持機構31は、第3の実施の形態において上述した弾性体381を備えていない。図示はしないが、第6の実施の形態の成形システム1のシート保持機構31が、さらに第3の実施の形態において上述した弾性体381を備えていてもよい。また、図30及び図31に示す成形システム1において、金型51は、第4の実施の形態において上述した弾性体518を備えていない。図示はしないが、第6の実施の形態の成形システム1の金型51が、さらに第4の実施の形態において上述した弾性体518を備えていてもよい。
【0163】
第1乃至第6の実施の形態を具体例により説明してきたが、これらの具体例は第1乃至第6の実施の形態を限定しない。上述した第1乃至第6の実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行える。
【0164】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0165】
(変形例)
上述の第1乃至第6の実施の形態においては、第1乃至第6の実施の形態に係る成形システム1を、シート11と成形部品12とを含む成形製品16の製造方法に用いる例について説明した。しかしながら、第1乃至第6の実施の形態に係る成形システム1の用途は、これに限られない。第1乃至第6の実施の形態に係る成形システム1は、図33に示す成形シート17の製造方法に用いられてもよい。この場合、成形機50は、対向金型52を有しなくてもよい。また、金型51において真空成形されたシート11がトリミング装置80に搬送されてもよい。
【0166】
本変形例に係る成形シート17の製造方法は、樹脂を射出成形する工程を備えない以外は、第1乃至第6の実施の形態に係る成形システム1のいずれか1つを用いた成形製品16の製造方法と同様である。すなわち、本変形例に係る成形シート17の製造方法は、シート保持機構31によって保持されたシート11を第1面51aの成形領域51bを囲う領域に密着させる工程と、第1面51aの成形領域51bを囲う領域に密着させられたシート11を、金型51を用いて真空成形する工程と、を備える。本変形例に係る成形シート17の製造方法は、真空成形されたシート11をトリミングする工程を更に備えてもよい。真空成形されたシート11をトリミングする工程は、金型51において真空成形されたシート11をトリミング装置80に搬送して、上述の第1乃至第6の実施の形態に係る成形システム1のトリミング装置80と同様のトリミング装置80を用いて行い得る。これによって、図33に示す成形シート17を製造できる。
【0167】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0168】
1 成形システム
11 シート
16 成形製品
17 成形シート
31 シート保持機構
31a 枠部吸着孔
33 枠部
33a 開口部
33f 線状凸部
34 枠部伸縮部材
34a 吸着開口
37 枠部ヒーター
381 弾性体
40 駆動装置
50 成形機
51 金型
51b 成形領域
51c 外周領域
511 金型本体
515 吸着孔
516 吸引孔
517 線状溝吸引孔
518 弾性体
52 対向金型
521 凹部
55 収容空間
56 伸縮部材
56a 吸着開口
58 線状溝
59 吸着線状溝
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