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  • 特開-アルファ化米の製造方法 図1
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  • 特開-アルファ化米の製造方法 図4A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066281
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】アルファ化米の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240508BHJP
【FI】
A23L7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175761
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 光輝
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LE03
4B023LP08
4B023LP10
4B023LP14
4B023LP20
4B023LQ01
(57)【要約】
【課題】砕米の発生を抑制し、かつ、歩留まりを向上させたアルファ化米の製造方法を提供する。
【解決手段】アルファ化米の製造方法は原料米1を加圧及び蒸煮する加圧蒸煮工程を有する。また、アルファ化米の製造方法は加圧及び蒸煮した原料米を蒸気により炊飯する炊飯工程を有する。さらに、アルファ化米の製造方法は炊飯した原料米を散水により膨潤する膨潤工程を有する。加えて、アルファ化米の製造方法は膨潤した原料米を所定の領域に拡散する拡散工程を有する。そして、アルファ化米の製造方法は原料米を乾燥する乾燥工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料米を加圧及び蒸煮する加圧蒸煮工程と、
加圧及び蒸煮した前記原料米を蒸気により炊飯する炊飯工程と、
炊飯した前記原料米に散水することにより膨潤する膨潤工程と、
膨潤した前記原料米を所定の領域に拡散する拡散工程と、
前記原料米を乾燥する乾燥工程を含むアルファ化米の製造方法。
【請求項2】
前記原料米の水分値を60%~80%とする請求項1に記載のアルファ化米の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファ化米の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アルファ化米は通常の米と比較して炊飯に係る時間が短く、洗米及びつけ置きの必要がなく容易に炊飯することができる。
【0003】
特許第6784165号公報には、原料米を用いて加圧蒸煮、炊飯、膨潤化浸漬、乾燥して早戻りインスタントライスを製造する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6784165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第6784165号公報に記載の方法は、炊飯した米をコンベア上でスクリューで拡げるが、飯は表面にねばりがあり飯粒どうしの結着が強いのでスクリューの作用によって飯がまとまって移動し、コンベヤ中央部に飯が無い状態になる。
【0006】
このため、飯をコンベア上に均一に薄層拡散できず、左右の米飯層が厚くなり、この状態で熱風乾燥するとこれを解砕して単粒化する際に、米粒の破損が多発して砕米が増えて歩留まりが低下すると考えられた。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、砕米の発生を抑制し、かつ、歩留まりを向上させたアルファ化米の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るアルファ化米の製造方法は原料米を加圧及び蒸煮する加圧蒸煮工程を有する。また、加圧及び蒸煮した原料米を蒸気により炊飯する炊飯工程を有する。さらに、炊飯した原料米を散水により膨潤する膨潤工程を有する。加えて、膨潤した原料米を所定の領域に拡散する拡散工程を有する。そして、原料米を乾燥する乾燥工程を有する。
【0009】
本発明に係るアルファ化米の製造方法によれば、砕米の発生を抑制し、かつ、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るアルファ化米の製造方法のフロー図
図2】本実施の形態に係るアルファ化米の製造方法を実現する装置を表す概略図
図3】本実施の形態に係るアルファ化米の製造方法を実現する装置を表す上面図
図4A】本実施の形態に係るアルファ化米の製造方法を用いて作成されたアルファ化米の表面を表す図
図4B】従来のアルファ化米の製造方法を用いて作成されたアルファ化米の一部を、図4Aと同一スケールで表す図
図5】本実施の形態に係るアルファ化米の製造方法を実現する装置の攪拌スクリューを複数備えた装置を表す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るアルファ化米の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1を参照して、上記のアルファ化米の製造方法を説明する。本発明のアルファ化米の製造方法は、米を加圧及び蒸煮する加圧蒸煮工程(S10)と、加圧蒸煮工程により加圧及び蒸煮した米を、蒸気により炊飯する炊飯工程(S20)と、炊飯工程により炊飯した米を散水により膨潤させる膨潤工程(S30)と、膨潤工程により膨潤した原料米を所定の領域に拡散させる拡散工程(S40)と、拡散工程を経た原料米を乾燥する乾燥工程(S50)と、を有する。
【0013】
まず、処理の対象となる原料米1を準備する。原料米1は、所望の分量、準備され、アルファ化米の製造装置10を用いてアルファ化米になる。
【0014】
(1)原料米
本発明では、原料米1としてジャポニカ米(短粒種)の精白米を用いる。精白米の白度は38%以下、含水率は、一実施形態では10~20%であり、他の実施形態では10~16%であり、さらなる他の実施形態では10~14%である。本明細書において、精白米に重量比15%以下の水又は除糠用粘着物質を添加して精白米の表面を研磨し、精白米表面に残存する糠を完全に除去した米を無洗米とする。また、白度とは、暗黒の状態を0、硫酸バリウムの白さを100とした場合に、米粒からの反射光を受光して測定した値をいう。
【0015】
(2)加圧蒸煮工程
加圧蒸煮工程(S10)では、米粒の表面をアルファ化する。原料米1をアルファ化米の製造装置10の投入口11からアルファ化米の製造装置10内部に投入し、第1コンベア12上に原料米1を搬送する。原料米1を搬送する第1コンベア12には多数の孔を設け、原料米1を搬送して蒸気を通過させる。
【0016】
次に、第1コンベア12上に搬送された原料米1に、圧力0.01~0.1MPa(ゲージ圧)下で、100~130℃の加圧加熱蒸気をスチームすることにより、0.5~2分間処理する。
【0017】
原料米1は、加圧及び蒸煮の処理がされつつ第1コンベア12により後工程の処理のために搬送される。
【0018】
このように、原料米1を高温で急速に加圧処理することにより、原料米1の表面の0.1~0.2mmにアルファ化膜が形成され、後の炊飯工程、膨潤工程での煮崩れを完全に防止することができる。
【0019】
(3)炊飯工程(S20)
加圧蒸煮工程で炊飯前の処理を施した原料米1は、加圧蒸煮工程が行われる加圧蒸煮ユニットと同一ユニット内にある炊飯ユニットに搬送され、炊飯処理が施される。炊飯ユニットに搬送された原料米1は炊飯水、炊飯水に添加されるアミラーゼ及びプロテアーゼのうちの1種の酵素とともに、炊飯される。酵素は原料米1の重量に対して0.07~0.6%添加する。炊飯水は初期温度35~40℃である。
【0020】
炊飯工程が行われる炊飯ユニットは、第1コンベア12の上部に設けられ、炊飯水を噴射するノズル13、第1コンベア12上の原料米1の層厚を完全に均一にするための撹拌棒14、第1コンベア12の下部に設けられた加熱蒸気噴出部15を備える。
【0021】
炊飯工程では第1コンベア12上で撹拌棒14により均一にされた原料米1に向けて、アミラーゼ及びプロテアーゼのうちの1種の酵素を配合した炊飯水をノズル13から噴射する。また、撹拌棒14により第1コンベア12上を移動する原料米1を均一にする。また、加熱蒸気噴出部15から第1コンベア12の孔を介して第1コンベア12上を移動する原料米1に向けて、100~130℃程度の加熱蒸気が噴出される。
【0022】
このとき加熱蒸気噴出部15から噴射される加熱蒸気は低温蒸気として噴射される。
【0023】
この炊飯工程の時間は原料米1が炊飯ユニットから搬出されるまでの間の15~60分間であり、他の実施形態では20~40分間である。
【0024】
このように、炊飯工程を加熱蒸気により進めることにより、炊飯前に原料米1を浸漬する必要がなくなり、炊飯工程における効率化もできる。
【0025】
なお、炊飯工程により炊飯された原料米1の一粒当たりの含水率は60%以上80%以下であり、他の実施形態では70%以上75%以下であり、さらなる他の実施形態では70%以上72%以下である。
【0026】
(4)膨潤工程・拡散工程(S30、S40)
炊飯工程において炊飯された原料米1は、膨潤ユニットに搬送され、膨潤処理が施される。膨潤ユニットは、炊飯ユニットから搬送された原料米1を膨潤ユニットにおいて搬送する第2コンベア16、膨潤ユニットにおいて原料米1に水を添加する水添加ノズル17、原料米1を第2コンベア16上に拡げる撹拌スクリュー18を備える。攪拌スクリュー18は左右対称に設計されている。
【0027】
膨潤ユニットに搬送された原料米1は、第2コンベア16上を移動する原料米1に向けて60~70℃の水を水添加ノズル17から0.5~4L/minとなるように噴射する。
【0028】
水添加ノズル17は第1コンベア12から撹拌スクリュー18までの範囲に配置される。これにより、攪拌スクリュー18に原料米1が到達するまでに散水することができ、第2コンベア16上を移動する原料米1を攪拌スクリュー18の作用で左右方向に均一化すことができる。
【0029】
そして、第2コンベア16の上部に配置された撹拌スクリュー18により、第2コンベア16上を移動する原料米1を第2コンベア16上で左右方向に均一にしつつ、第2コンベア16上で薄層にする。
【0030】
このような観点から、撹拌スクリュー18と第2コンベア16の間には約5~7mm程度のクリアランスが設けられる。
【0031】
こうして、膨潤工程により膨潤した原料米1の一粒当たりの含水率は60%以上80%以下であり、他の実施形態では70%以上75%以下であり、さらなる他の実施形態では73%以上75%以下である。
【0032】
このように、炊飯工程により炊飯された原料米1を散水により膨潤させ、米粒の内部に空洞を作成し、原料米1のアルファ化が完了する。
【0033】
こうして製造されたアルファ化米に含水させると約5分以内に喫食可能な状態に到達させることが可能になる。
【0034】
また、米の表面から過度に澱粉が流出することを防止でき、乾燥工程において砕米につながる亀裂の発生も防止でき歩留まり率を向上させ、食感の向上にもつながる。
【0035】
なお、膨潤工程の時間は原料米1が膨潤ユニットに搬送されて膨潤ユニットから搬出されるまでの約5~10分間である。
【0036】
(5)一次乾燥工程(S50)
膨潤工程を経た原料米1は飛散用ピン19により弾かれ水分を蒸発させる熱風乾燥機構、過熱蒸気乾燥機構、マイクロ波乾燥機構等の乾燥機構を備え、一次乾燥ユニット及び二次乾燥ユニットにより形成される乾燥ユニットの内部に順次搬送される。
【0037】
一次乾燥ユニットでは比較的高温の約115~130℃で約20~30分間、急速に膨潤工程を経た原料米1の水分を蒸発させる。前述のように、膨潤工程により原料米1のアルファ化は完了しているが、一次乾燥工程において再度アルファ化が起こり、原料米1が膨化して原料米1の含水率は約20~25%となる。
【0038】
(6)二次乾燥工程(S50)
一次乾燥工程に続いてなされる二次乾燥工程では、比較的低温の約60~90℃で約50~60分乾燥処理を行い、原料米1の含水率を約5%以上10%以下に調整する。
【0039】
図4Aに示すように作成されたアルファ化米は、図4Bに示す従来のアルファ化米に比べて一定の表面に現れる孔のサイズが小さいものとなる。
【0040】
このように、緩やかに乾燥させることにより水分活性AW0.45以下とすることができるので、アルファ化米としての保存性を向上させることができる。
【0041】
二次乾燥工程が完了したアルファ化米は単粒化装置で米粒同士の結着を解消し、最終的にシフターや光学式の選別機によって異物や砕米が除去されて製品化される。
【0042】
<実施例>
原料米として含水率14%で白度40%の平成26年山形県産「はえぬき」300gを準備した。このとき、試験室内の気温は25℃に設定した。
【0043】
精白米を洗米した後、精白米の含水率を計測し、精白米の含水率が16%以下であることを確認した。
【0044】
この精白米をアルファ化米の製造装置10の投入口11に投入し、内部の第1コンベア12上に精白米を搬送した。第1コンベア12上を移動する精白米に0.02MPaの加圧下で105℃の加圧加熱蒸気を1分間スチームした。
【0045】
予め、水にアミラーゼ及びプロテアーゼを含む液体酵素(大塚薬品工業OS-60L)2g(0.7%)と大豆由来レシチンからなる乳化剤(大塚薬品工業OS-77L)1g(0.3%)を添加し炊飯水を調整した。次に、スチームの後、第1コンベア12により炊飯ユニットに搬送され、撹拌棒14により均一にしつつ第1コンベア12上の原料米1に、35℃の炊飯水をノズル13から噴射した。また、第1コンベア12上の原料米1に向けて加熱蒸気噴出部15から100℃の加熱蒸気を噴射して35分間炊飯し、その後20分間の蒸らしを行った。蒸らした後の原料米1の含水率は70%であり、炊飯後の体積は、炊飯前の原料米の体積の約1.5倍であった。
【0046】
炊飯された原料米1を第1コンベア12から第2コンベア16に搬送して膨潤ユニットに搬送した。膨潤ユニットに搬送された原料米1に水添加ノズル17から原料米1に向けて60℃の水を噴射する。その後、撹拌スクリュー18により第2コンベア16上の左右方向に原料米1を均一にして膨潤した。膨潤させた炊飯米の含水率を計測したところ、含水率は74%であった。
【0047】
膨潤させた原料米1を飛散用ピン19により強く弾くことにより一次乾燥ユニット内に搬送した。一次乾燥ユニット内において、熱風温度115℃で20分間一次乾燥させた。
【0048】
一次乾燥ユニットで原料米1を乾燥させた後、原料米1を二次乾燥ユニットに搬送し、80℃の熱風で60分間の二次乾燥を行ってアルファ化米を取得した。
【0049】
こうして得られたアルファ化米の含水率は7%であった。このように取得したアルファ化米は米粒同士の結着状態が弱く、手を用いて容易に捌くことができた。
【0050】
作成されたアルファ化米50gに対して95℃の熱湯85ccを加えたところ、約4~5分で、喫食可能なご飯に復元し、喫食した。
【0051】
その結果表1に示すように、ご飯復元後の米粒は外観の崩れが少なく、適度な粒感もあって食味・食感共に良好であった。また、精白米に対する歩留り率は90%以上であり、従来の製法による歩留まり率(67%)と比較して良好な歩留まり率を有した。
【0052】
【表1】
【0053】
アルファ化米の製造方法について説明してきたが、アルファ化米の製造方法は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
本発明では、加圧蒸煮ユニットと炊飯ユニットとが同一ユニット内に含まれる形態を説明したが、原料米1を適切に加圧、蒸煮、炊飯させることができるのであればこれに限定されない。例えば、加圧蒸煮ユニットと炊飯ユニットとをそれぞれ別のユニットとして形成し両者を連接させて作成してもよい。
【0055】
図5に示すように、攪拌スクリュー18のサイズを変更して、複数設けてもよい。
【0056】
水添加ノズル17の個数も任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 原料米
10 アルファ化米の製造装置
11 投入口
12 第1コンベア
13 ノズル
14 撹拌棒
15 加熱蒸気噴出部
16 第2コンベア
17 水添加ノズル
18 攪拌スクリュー
19 飛散用ピン
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5