(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066292
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】インピーダンス測定方法、コンデンサユニット、コンデンサユニット保持装置およびコンデンサユニットシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20240508BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20240508BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175776
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(71)【出願人】
【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 稔
(72)【発明者】
【氏名】山本 典央
【テーマコード(参考)】
2G028
2G216
【Fターム(参考)】
2G028BE04
2G028CG08
2G028CG20
2G028DH04
2G028DH11
2G028DH21
2G028FK09
2G028HN11
2G028HN13
2G216BA51
(57)【要約】
【課題】電池のインピーダンスを良好に測定できるインピーダンス測定方法を提供する。前記インピーダンス測定方法に用いられるコンデンサユニット、コンデンサユニット保持装置およびコンデンサユニットシステムを提供する。
【解決手段】測定器2の4つの端子T11~T14と電池20との間にコンデンサユニット7A~7Dを介装した状態で、これらの端子T11~T14に電池20を接続する。そして、測定器2を用いて、電池20のインピーダンスを測定する。4つのコンデンサユニット7A~7Dは、互いに同じ静電容量を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に接続すべき2つの電圧端子および2つの電流端子を有し、四端子対法により前記測定対象のインピーダンスを測定する測定器を用いて、前記測定対象としての電池のインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
前記2つの電圧端子のそれぞれと前記電池との間および前記2つの電流端子の少なくとも一方と前記電池との間に、コンデンサを含むコンデンサユニットを介装した状態で、前記2つの電圧端子および前記2つの電流端子に前記電池を接続する接続工程と、
前記2つの電圧端子および前記2つの電流端子に接続された前記電池のインピーダンスを、前記測定器を用いて測定する測定工程と、を含み、
前記2つの電圧端子に接続される前記コンデンサユニットは、互いに同じ静電容量を有し、
前記2つの電流端子の少なくとも一方に接続される前記コンデンサユニットは、予め定める静電容量を有している、インピーダンス測定方法。
【請求項2】
前記測定器は、前記2つの電圧端子に入力された電圧の差分と、前記2つの電流端子の一方に入力された電流とに基づいて、前記電池のインピーダンスを測定する、請求項1に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項3】
前記接続工程は、前記2つの電圧端子のそれぞれと前記電池との間、および前記2つの電流端子のそれぞれと前記電池との間に前記コンデンサユニットを介装する工程を含み、
前記2つの電圧端子に接続される前記コンデンサユニットおよび前記2つの電流端子に接続される前記コンデンサユニットは、いずれも同じ静電容量を有している、請求項1または2に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項4】
前記電池に接続される測定ヘッドを有する測定治具に、複数の前記コンデンサユニットを装着する装着工程をさらに含み、
前記接続工程は、前記測定ヘッドに接続された前記電池を、前記測定治具に装着されている前記複数の前記コンデンサユニットを介して前記電圧端子および前記電流端子に接続する工程を含む、請求項1または2に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項5】
前記測定工程の前に、前記測定治具に装着されている前記複数の前記コンデンサユニットを、前記測定ヘッドに接続されている前記電池によって充電する充電工程をさらに含む、請求項4に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項6】
前記コンデンサユニットが、一端および他端を有する中心導体と、前記中心導体に非接触な外部導体と、前記中心導体に介装された前記コンデンサと、を含み、
前記充電工程は、前記コンデンサユニットにおける前記電池の接続側と反対側の端部に終端抵抗ユニットを装着し、前記中心導体と前記外部導体とを前記終端抵抗ユニットを介して接続した状態で、前記コンデンサを前記電池によって充電する工程を含む、請求項5に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項7】
前記充電工程の開始から予め定める時間が経過した後に、前記測定工程を開始する、請求項5に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項8】
前記充電工程に先立って、前記コンデンサユニットの前記コンデンサを強制的に放電させる強制放電工程をさらに含む、請求項5に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項9】
前記コンデンサユニットが、一端および他端を有する中心導体と、前記中心導体に非接触な外部導体と、前記中心導体に介装された前記コンデンサと、を含み、
前記強制放電工程は、前記中心導体の両端を前記外部導体に接続することにより、前記コンデンサの二極を短絡させる工程を含む、請求項8に記載のインピーダンス測定方法。
【請求項10】
四端子対法により測定対象のインピーダンスを測定する測定器の同軸型の端子と、前記端子に接続された前記測定対象の電池との間に介装可能なコンデンサユニットであって、
一端および他端を有する中心導体と、
前記中心導体に非接触な外部導体と、
前記中心導体に介装されたコンデンサと、を含む、コンデンサユニット。
【請求項11】
前記コンデンサは、互いに並列に接続された複数のコンデンサ素子を含む、請求項10に記載のコンデンサユニット。
【請求項12】
前記複数のコンデンサ素子は、第1コンデンサ素子と、前記第1コンデンサ素子よりも静電容量の小さな第2コンデンサ素子と、を含む、請求項11に記載のコンデンサユニット。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載のコンデンサユニットを保持するコンデンサユニット保持器を含み、
前記コンデンサユニットが一端部および他端部を有し、
前記コンデンサユニットの前記一端部に装着される第1キャップであって、当該一端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体とを電気的に接続する第1キャップと、
前記コンデンサユニットの前記他端部に装着される第2キャップであって、当該他端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体とを電気的に接続する第2キャップと、をさらに含む、コンデンサユニット保持装置。
【請求項14】
前記コンデンサユニット保持器が、前記コンデンサユニットを、前記一端部および前記他端部が上下に並ぶ鉛直姿勢に保持するスタンド台を含み、
前記スタンド台には、前記第2キャップが固定されており、
前記コンデンサユニットは、前記スタンド台において、前記他端部に前記第2キャップが装着された状態で保持される、請求項13に記載のコンデンサユニット保持装置。
【請求項15】
請求項10~12のいずれか一項に記載のコンデンサユニットと、
請求項13に記載のコンデンサユニット保持装置と、を含む、コンデンサユニットシステム。
【請求項16】
前記コンデンサユニットが一端部および他端部を有し、
前記コンデンサユニットの前記一端部に装着される終端抵抗ユニットであって、当該一端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体との間に接続される終端抵抗を有する終端抵抗ユニットをさらに含む、請求項15に記載のコンデンサユニットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インピーダンス測定方法、コンデンサユニット、コンデンサユニット保持装置およびコンデンサユニットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、測定対象のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定システムを開示している。
【0003】
また、非特許文献1は、自動平衡ブリッジ方式のインピーダンス測定器を用いて電池のインピーダンスを測定する場合に、測定器に直流電流が流れ込まないように、4つの端子のうち信号出力端子HCおよび電圧計測端子HPにコンデンサを接続することを開示している。さらに、非特許文献1には、信号出力端子HCに接続されるコンデンサの静電容量を32μF以上にすること、および電圧計測端子HPに接続されるコンデンサの静電容量を1μFとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「インピーダンス測定ハンドブック 2003年11月版」Agilent Technologies(第5章第24頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者らは、特許文献1に記載の測定システムを用いて電池のインピーダンスを測定することを検討している。この場合、起電力を有する電池を測定対象として測定器に接続することにより、電池からの直流電流が、測定器に流れ込んで、測定器に内蔵されている電子部品(たとえば抵抗器)に悪影響を及ぼすおそれがある。測定器への悪影響を回避するため、本件発明者は、非特許文献1の手法を特許文献1に記載の測定方法に組み合わせ、測定器と電池との間にコンデンサを介装し、このコンデンサによって直流電流を遮断することを検討している。
【0007】
しかし、非特許文献1に記載の手法が、特定の周波数範囲(1kHz以上)で測定することを前提としているのに対し、特許文献1では、広い周波数範囲(1Hz~100MHz)での周波数応答の測定を行っている。非特許文献1に記載の手法をそのまま採用したのでは、特定の周波数範囲(1kHz以上)とは異なる周波数範囲で測定するときに正確なインピーダンス測定を行えないおそれがある。また、非特許文献1に記載の手法は、自動平衡ブリッジ方式を用いた測定にのみ有効であり、他の方式のインピーダンス測定器(たとえば周波数応答解析によって測定するための装置)を用いた測定には使えない。いずれにしても、非特許文献1に記載の手法は、四端子対法によりインピーダンスを測定する測定器を用いて電池のインピーダンスを測定するための最適な手法とは言えない。
【0008】
そこで、この発明の一つの目的は、四端子対法によりインピーダンスを測定する測定器を用いて電池のインピーダンスを良好に測定できるインピーダンス測定方法を提供することである。
【0009】
また、この発明の他の目的は、電池のインピーダンス測定に適したコンデンサユニット、コンデンサユニット保持装置およびコンデンサユニットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一実施形態は、次のような特徴を有するインピーダンス測定方法を提供する。
【0011】
1.測定対象に接続すべき2つの電圧端子および2つの電流端子を有し、四端子対法により前記測定対象のインピーダンスを測定する測定器を用いて、前記測定対象としての電池のインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
前記2つの電圧端子のそれぞれと前記電池との間および前記2つの電流端子の少なくとも一方と前記電池との間に、コンデンサを含むコンデンサユニットを介装した状態で、前記2つの電圧端子および前記2つの電流端子に前記電池を接続する接続工程と、
前記2つの電圧端子および前記2つの電流端子に接続された前記電池のインピーダンスを、前記測定器を用いて測定する測定工程と、を含み、
前記2つの電圧端子に接続される前記コンデンサユニットは、互いに同じ静電容量を有し、
前記2つの電流端子の少なくとも一方に接続される前記コンデンサユニットは、予め定める静電容量を有している、インピーダンス測定方法。
【0012】
この方法によれば、各電圧端子と電池との間にコンデンサユニットが介装される。2つのコンデンサユニットは、互いに同じ静電容量を有している。また、2つの電流端子の少なくとも一方に、予め定める静電容量を有するコンデンサユニットが介装される。これらのコンデンサユニットは、コンデンサに電荷が蓄積されている状態で直流電流を遮断する。そのため、測定器内に直流電流が流れ込むことを阻止できる。2つの電圧端子に接続される2つのコンデンサユニットの静電容量が互いに同じであるので、2つの電圧端子に入力される電圧に、電圧端子へのコンデンサの接続に伴うアンバランスな影響が生じない。これにより、電池から測定器への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器によって電池のインピーダンスを正確に測定できる。
【0013】
2.前記測定器は、前記2つの電圧端子に入力された電圧の差分と、前記2つの電流端子の一方に入力された電流とに基づいて、前記電池のインピーダンスを測定する、項1に記載のインピーダンス測定方法。
【0014】
この方法によれば、2つの電圧端子に入力された電圧の差分に基づいて、測定器が電池のインピーダンスを測定する。2つの電圧端子に接続される2つのコンデンサユニットの静電容量が互いに同じであるので、2つの電圧端子に入力される電圧の差分の値は、電圧端子へのコンデンサの接続の影響を受けない。これにより、電池から測定器への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器によって電池のインピーダンスを正確に測定できる。
【0015】
3.前記接続工程は、前記2つの電圧端子のそれぞれと前記電池との間、および前記2つの電流端子のそれぞれと前記電池との間に前記コンデンサユニットを介装する工程を含み、
前記2つの電圧端子に接続される前記コンデンサユニットおよび前記2つの電流端子に接続される前記コンデンサユニットは、いずれも同じ静電容量を有している、項1または2に記載のインピーダンス測定方法。
【0016】
この方法によれば、2つの電圧端子および2つの電流端子に接続される4つのコンデンサユニットのコンデンサの静電容量が互いに同じである。これにより、測定器において電圧と電流との間に位相のずれが生じない。そのため、インピーダンス測定に用いられる測定周波数の如何によらずに、インピーダンスを正確に測定できる。
【0017】
また、互いに同じ静電容量の4つのコンデンサユニットを4つの端子に接続する。接続すべきコンデンサユニットが端子毎に異ならないので、コンデンサユニットの接続先の間違えが生じない。測定者は、4つのコンデンサユニットを区別することなく4つの端子に1つずつ接続すれば足りるから、電圧端子および電流端子にコンデンサユニットを接続する際の作業性が良い。
【0018】
4.前記電池に接続される測定ヘッドを有する測定治具に、複数の前記コンデンサユニットを装着する装着工程をさらに含み、
前記接続工程は、前記測定ヘッドに接続された前記電池を、前記測定治具に装着されている前記複数の前記コンデンサユニットを介して前記電圧端子および前記電流端子に接続する工程を含む、項1~3のいずれか一項に記載のインピーダンス測定方法。
【0019】
この方法によれば、複数のコンデンサユニットを測定治具に装着しかつ電池を測定ヘッドに接続した状態において、コンデンサユニットを電圧端子および電流端子に接続することにより、電圧端子および電流端子に電池を接続できる。これにより、コンデンサユニットを介した電圧端子および電流端子と電池との接続を良好に実現できる。
【0020】
5.前記測定工程の前に、前記測定治具に装着されている前記複数の前記コンデンサユニットを、前記測定ヘッドに接続されている前記電池によって充電する充電工程をさらに含む、項4に記載のインピーダンス測定方法。
【0021】
この方法によれば、測定治具の測定ヘッドに接続されている電池によって、測定治具に装着されている複数のコンデンサユニットを、測定工程の前に充電する。測定工程の前にコンデンサユニットを電荷のバランスのとれた状態にすることにより、コンデンサに予め電荷を蓄積した状態で測定工程を開始できるので、測定工程において、測定器への直流電流の流れ込みをコンデンサユニットによって良好に阻止できる。
【0022】
また、測定治具の測定ヘッドに接続されている電池によって、測定治具に装着されているコンデンサユニットを電荷のバランスのとれた状態にするので、充電器、電源装置などを別途用意することなく、コンデンサユニットを電荷のバランスのとれた状態にできる。
【0023】
また、コンデンサユニットが接続されている状態で測定対象の電池を測定治具に装着することにより、直ちにコンデンサユニットへの充電が開始される。そのため、充電のための作業を別途行うことなく、コンデンサユニットを電荷のバランスのとれた状態にできる。
【0024】
6.前記コンデンサユニットが、一端および他端を有する中心導体と、前記中心導体に非接触な外部導体と、前記中心導体に介装された前記コンデンサと、を含み、
前記充電工程は、前記コンデンサユニットにおける前記電池の接続側と反対側の端部に終端抵抗ユニットを装着し、前記中心導体と前記外部導体とを前記終端抵抗ユニットを介して接続した状態で、前記コンデンサを前記電池によって充電する工程を含む、請求項5に記載のインピーダンス測定方法。
【0025】
この方法によれば、充電工程において、コンデンサユニットにおける電池の接続側と反対側の端部に、終端抵抗ユニットが装着される。コンデンサユニットの前記反対側の端部への終端抵抗ユニットの装着によって、コンデンサユニットの中心導体と外部導体とが、終端抵抗ユニットの終端抵抗を介して接続される。これにより、コンデンサユニットの中心導体に電流が流れ、コンデンサユニットのコンデンサが、電荷のバランスのとれた状態になる。
【0026】
終端抵抗の抵抗値を、前記測定器の前記2つの電流端子の入力インピーダンス(たとえば50Ω)および出力インピーダンス(たとえば50Ω)と同じ値(たとえば50Ω)としてもよい。
【0027】
終端抵抗の抵抗値を、測定器の電流端子の入出力インピーダンスと合わせることで、測定器に接続している状態(実際の測定状況)に近い状態で充電工程を実施することができる。このような状態で充電することにより、コンデンサユニットが電荷のバランスのとれた状態になり、測定器に接続した状態において、測定系に電位の乱れが生じ難い。これにより、コンデンサユニットを測定器に接続した直後から、測定系の電位を安定させることができる。
【0028】
7.前記充電工程の開始から予め定める時間が経過した後に、前記測定工程の実行を開始する、項5または6に記載のインピーダンス測定方法。
【0029】
この方法によれば、コンデンサユニットのコンデンサにおいて見かけ上電荷の移動がなくなるような時間が経過するまで、充電工程が続行される。電荷の移動がなくなった状態(以下、このような状態を「電荷のバランスがとれた状態」という場合がある)では、コンデンサに対する直流電流の出入りはない。この状態で測定工程の実行を開始することにより、測定器への直流電流の流れ込みを、測定工程の開始当初から阻止できる。
【0030】
8.前記充電工程に先立って、前記複数の前記コンデンサユニットの前記コンデンサを強制的に放電させる強制放電工程をさらに含む、項5~7のいずれか一項に記載のインピーダンス測定方法。
【0031】
この方法によれば、充電工程に先立って、コンデンサユニットのコンデンサが強制的に放電させられる。コンデンサユニットを充電工程の前に強制的に放電させることにより、コンデンサユニットのコンデンサに電荷が存在していない状態で、充電工程を開始できる。
【0032】
コンデンサユニットのコンデンサを強制的に放電させずに、自然放電させることも考えられるが、自然放電では、放電後にコンデンサユニットに残存する電荷量がコンデンサユニット毎にばらつくおそれがある。そのため、充電工程の前に自然放電を行ったのでは、複数のコンデンサユニットに蓄積されている電荷量が互いにばらついた状態で、充電工程が開始されるおそれがある。
【0033】
これに対し、この方法によれば、複数のコンデンサユニットの個々のコンデンサに蓄積されている電荷量を零に揃えた状態で複数のコンデンサユニットに充電を開始できる。これにより、充電工程後における、複数のコンデンサユニットを電荷のバランスがとれた状態とすることができる。
【0034】
9.前記コンデンサユニットが、一端および他端を有する中心導体と、
前記中心導体に非接触な外部導体と、
前記中心導体に介装された前記コンデンサと、を含み、
前記強制放電工程は、前記中心導体の両端を前記外部導体に接続することにより、前記コンデンサの二極を短絡させる工程を含む、項8に記載のインピーダンス測定方法。
【0035】
この方法によれば、強制放電工程では、中心導体の両端が外部導体に接続されることにより、コンデンサの二極が短絡される。これにより、コンデンサに蓄積されている電荷を強制的に放電できる。ゆえに、強制的な放電を、比較的簡単に実現できる。
【0036】
また、この発明の一実施形態は、次のような特徴を有するコンデンサユニットを提供する。
【0037】
10.四端子対法により測定対象のインピーダンスを測定する測定器の同軸型の端子と、前記端子に接続された前記測定対象の電池との間に介装可能なコンデンサユニットであって、
一端および他端を有する中心導体と、
前記中心導体に非接触な外部導体と、
前記中心導体に介装されたコンデンサと、を含む、コンデンサユニット。
【0038】
この構成によれば、コンデンサユニットが測定器の同軸型の端子に接続された状態で、端子と測定対象の電池との間にコンデンサが介装される。コンデンサに電荷が蓄積されている状態では、コンデンサユニットは、同軸型の端子との間で信号の授受を許容しながら、電池からの直流電流を遮断する。これにより、電池からの直流電流が測定器に流れ込むことを阻止しながら、電池のインピーダンス測定を行える。ゆえに、電池のインピーダンス測定に適したコンデンサユニットを提供できる。
【0039】
11.前記コンデンサは、互いに並列に接続された複数のコンデンサ素子を含む、項10に記載のコンデンサユニット。
【0040】
この構成によれば、複数並列に接続されるコンデンサ素子の個数を変更することにより、コンデンサの静電容量を変えることができる。コンデンサ素子の個数を増やすことでコンデンサの静電容量が増え、これにより、大容量のコンデンサを実現可能である。コンデンサの周波数特性は、コンデンサの静電容量に依存する。コンデンサの静電容量の大容量化を図ることにより、コンデンサユニットを通過可能な信号周波数を低周波数側に広げることができる。これにより、測定周波数が低周波数であっても、電池からの直流電流の流れ込みを阻止しながら電池のインピーダンスを測定できる。
【0041】
12.前記複数のコンデンサ素子は、第1コンデンサ素子と、前記第1コンデンサ素子よりも静電容量の小さな第2コンデンサ素子と、を含む、項11に記載のコンデンサユニット。
【0042】
この構成によれば、コンデンサには、第1コンデンサ素子だけでなく、第1コンデンサ素子よりも静電容量の小さな第2コンデンサ素子が含まれる。静電容量の小さな第2コンデンサ素子は、高周波数の信号を通しやすい。第2コンデンサ素子を第1コンデンサ素子に組み合わせてコンデンサを構成することにより、高周波の信号をコンデンサに通すことができる。このように静電容量の異なる互いに異なる複数種のコンデンサ素子をコンデンサに含めることにより、コンデンサユニットを通すことの可能な信号周波数のレンジを、高周波を維持しながら低周波数側に広げることができる。これにより、電池からの直流電流の流れ込みを阻止しながら、広い周波数レンジで電池のインピーダンスを測定できる。
【0043】
また、この発明の一実施形態は、次のような特徴を有するコンデンサユニット保持装置を提供する。
【0044】
13.項10~12のいずれか一項に記載のコンデンサユニットを保持するコンデンサユニット保持器を含み、
前記コンデンサユニットが一端部および他端部を有し、
前記コンデンサユニットの前記一端部に装着される第1キャップであって、当該一端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体とを電気的に接続する第1キャップと、
前記コンデンサユニットの前記他端部に装着される第2キャップであって、当該他端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体とを電気的に接続する第2キャップと、をさらに含む、コンデンサユニット保持装置。
【0045】
この構成によれば、第1キャップをコンデンサユニットの一端部に装着し、かつ第2キャップをコンデンサユニットの他端部に装着した状態で、コンデンサユニットの中心導体、コンデンサユニットの外部導体、第1キャップおよび第2キャップによって、短絡回路が形成される。これにより、コンデンサユニットの中心導体に介装されたコンデンサの二極を短絡させることができ、コンデンサに蓄積されている電荷の強制的な放電を、比較的簡単な構成で実現できる。ゆえに、電池のインピーダンス測定に適した、コンデンサ保持ユニットを提供できる。
【0046】
14.前記コンデンサユニット保持器が、前記コンデンサユニットを、前記一端部および前記他端部が上下に並ぶ鉛直姿勢に保持するスタンド台を含み、
前記スタンド台には、前記第2キャップが固定されており、
前記コンデンサユニットは、前記スタンド台において、前記他端部に前記第2キャップが装着された状態で保持される、請求項13に記載のコンデンサユニット保持装置。
【0047】
この構成によれば、スタンド台によってコンデンサユニットが保持されている状態では、コンデンサユニットの他端部に第2キャップが装着されている。そして、測定者が、スタンド台によって保持されているコンデンサユニットの一端部に第1キャップを装着することにより、保持されているコンデンサユニットのコンデンサの二極を短絡させることができる。これにより、コンデンサユニットがコンデンサユニット保持器によって保持されている状態において、コンデンサユニットを強制的に放電させ続けることができる。
【0048】
また、この発明の一実施形態は、次のような特徴を有するコンデンサユニットシステムを提供する。
【0049】
15.項10~12のいずれか一項に記載のコンデンサユニットと、
項13または14に記載のコンデンサユニット保持装置と、を含む、コンデンサユニットシステム。
【0050】
この構成によれば、コンデンサユニットが測定器の同軸型の端子に接続された状態で、端子と測定対象の電池との間にコンデンサが介装される。コンデンサに電荷が蓄積されている状態では、コンデンサユニットは、同軸型の端子との間で信号の授受を許容しながら、電池からの直流電流を遮断する。これにより、電池からの直流電流が測定器に流れ込むことを阻止しながら、電池のインピーダンス測定を行える。
【0051】
また、コンデンサユニットの一端部に第1キャップを装着し、かつコンデンサユニットの他端部に第2キャップを装着した状態で、コンデンサユニットの中心導体、コンデンサユニットの外部導体、第1キャップおよび第2キャップによって、短絡回路が形成される。これにより、コンデンサユニットの中心導体に介装されたコンデンサの二極を短絡させることができ、コンデンサに蓄積されている電荷の強制的な放電を、比較的簡単な構成で実現できる。
【0052】
ゆえに、電池のインピーダンス測定に適したコンデンサユニットシステムを提供できる。
【0053】
16.前記コンデンサユニットが一端部および他端部を有し、
前記コンデンサユニットの前記一端部に装着される終端抵抗ユニットであって、当該一端部に装着された状態で、前記中心導体と前記外部導体との間に接続される終端抵抗を有する終端抵抗ユニットをさらに含む、項15に記載のコンデンサユニットシステム。
【0054】
この構成によれば、コンデンサユニットの一端部に、終端抵抗ユニットが装着される。コンデンサユニットの一端部への終端抵抗ユニットの装着によって、コンデンサユニットの中心導体と外部導体とが、終端抵抗ユニットの終端抵抗を介して接続される。これにより、コンデンサユニットの中心導体に電流が流れ、コンデンサユニットのコンデンサに電荷が蓄積される。ゆえに、コンデンサユニットへの良好な充電を実現できる。
【0055】
終端抵抗の抵抗値を、前記測定器の内部インピーダンスと同じ値(たとえば50Ω)としてもよい。
【0056】
終端抵抗の抵抗値を、測定器の内部インピーダンスと合わせることで、測定器に接続している状態(実際の測定状況)に近い状態で、充電を開始することができる。このような状態で充電することにより、コンデンサユニットが電荷のバランスのとれた状態になり、測定器に接続した状態において、測定系に電位の乱れが生じ難い。これにより、コンデンサユニットを測定器に接続した直後から、測定システムの電位を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る測定システムの構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】
図2は、前記測定システムに含まれる測定治具の構成例を説明するための図解的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、前記測定治具、コンデンサユニットおよびコンデンサユニット保持装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、測定器から測定対象の電池に至る配線の構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、前記コンデンサユニットの構成を説明するための模式的な図である。
【
図6】
図6は、前記コンデンサユニットに含まれるコンデンサを説明するための模式的な回路図である。
【
図7】
図7は、前記コンデンサユニット保持装置の斜視図である。
【
図8】
図8は、前記コンデンサユニット保持装置の縦断面図である。
【
図9】
図9は、前記測定システムを用いた電池のインピーダンス測定方法の手順を示す流れ図である。
【
図10】
図10は、前記コンデンサユニット保持器によって4つの前記コンデンサユニットを保持している状態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、前記コンデンサユニット保持器から上キャップに至る配線の構成を説明するための図である。
【
図12】
図12は、充電工程(
図9のS5)における、前記測定治具、前記コンデンサユニットおよび前記コンデンサユニット保持装置の斜視図である。
【
図13】
図13は、充電工程(
図9のS5)における、測定対象の電池から終端抵抗ユニットに至る配線の構成を説明するための図である。
【
図15】
図15は、前記測定システムを用いて電池のインピーダンスを測定した結果を表すNyquist線図である。
【
図16】
図16は、前記測定システムを用いて電池のインピーダンスを測定した結果を表すNyquist線図である。
【
図17】
図17は、この発明の第2実施形態に係る測定システムにおいて、測定器から測定対象の電池に至る配線の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
図1は、この発明の第1実施形態に係る測定システム1の構成を説明するためのブロック図である。測定システム1は、測定器2と、測定治具3と、制御装置5と、4つのコンデンサユニット7と、コンデンサユニット保持装置8(
図1には図示せず。
図3参照)とを備えている。測定システム1は、測定治具3に保持された電池20のインピーダンスを測定する。測定システム1によってインピーダンスを測定する際には、4つのコンデンサユニット7を測定治具3に装着し、かつ同軸ケーブル4を対応するコンデンサユニット7に接続した状態とする。すなわち、測定システム1は、コンデンサユニット7および同軸ケーブル4を介して、測定治具3を測定器2に接続して構成されている。測定器2が出力するデータは、制御装置5に入力される。
【0060】
測定器2は、測定対象である電池20のインピーダンスを、周波数応答解析によって測定するための装置(FRA: Frequency Response Analyzer)である。具体的には、測定器2は、たとえば、ソーラトロン(Solartron)社の1260型測定器であってもよく、仕様上の測定周波数範囲は、10μHz~32MHzである。ソーラトロン社の1260型測定器は、四端子対法による測定が可能であり、高周波数から低周波数への掃引が可能である。
【0061】
測定器2は、端子群T1を備えている。端子群T1は、4つの端子T11~T14を備えている。4つの端子T11~T14は、信号出力端子T11(GEN)と、高側電圧計測端子T12(VH)と、低側電圧計測端子T13(VL)と、電流計測端子T14(I-in)とを含む。信号出力端子T11および電流計測端子T14は電流端子であり、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13は電圧端子である。これら4つの端子T11~T14は、いずれも、ピン状の信号伝達部を中央に有し、それを取り囲むように円筒状のシールド部を有する同軸型の端子である。
【0062】
測定治具3は、保持容器21と、保持容器21の上部開口を閉じる蓋22とを備えている。保持容器21の内部には、測定対象である電池20が収容されている。保持容器21の内部には、電池20を加熱するためのヒータ23が配置されている。ヒータ23に対して、リード線24によって電力が供給される。リード線24は、蓋22を通して測定治具3外に引き出され、ヒータ23を制御するための温度調節器28に接続されている。温度調節器28によるヒータ23の制御のために、保持容器21内には、測定対象である電池20の温度を検出する熱電対25が導入されている。測定対象である電池20の温度はヒータ23の表面温度と同等とみなせるので、熱電対25は、ヒータ23の表面に接触するように配置されてもよい。
【0063】
測定治具3は、必要に応じて、冷却装置19によって冷却される。それによって、室温未満の温度での測定が可能になる。冷却装置19は、液体窒素などの冷媒を入れたステンレスデュワーであってもよい。冷却装置19で測定治具3を冷却する一方で、ヒータ23への通電を制御することによって、測定対象である電池20の温度を正確に制御できる。
【0064】
制御装置5は、たとえば、パーソナルコンピュータからなる。制御装置5には、測定器2および温度調節器28が接続されている。制御装置5は、これらを制御することにより、測定器2によって測定対象である電池20を測定させながら測定器2が出力する測定結果データを取得する測定制御を実行する。
【0065】
図2は、測定治具3の構成例を説明するための図解的な縦断面図である。
図2は、可能な限り多くの構成要素を表すために、一部の構成要素の配置を変更して表してあり、したがって、必ずしも厳密な構造を表すものではない。
【0066】
測定治具3は、測定対象である電池20を収容する保持容器21と、この保持容器21の開口21aを閉じる蓋22と、電池20を支持する支持アセンブリ32と、電池20に異なる位置で接触する第1電極リード(測定ヘッド)E1および第2電極リード(測定ヘッド)E2とを備えている。
【0067】
保持容器21は、この実施形態では、有底円筒状であり、上部に開口21aを有し、開口21aの周囲に外向きのフランジ21bが形成されている。蓋22は、その周縁部の下面をフランジに合わせて保持容器21に取り付けられている。蓋22とフランジの間には、シール部材としてのOリング33が挟み込まれる。蓋22とフランジ21bとがクランプ34によって固定され、それによって、保持容器21に蓋22が固定される。保持容器21、蓋22およびクランプ34は、たとえば、ステンレスからなる。Oリング33は、フッ素樹脂またはフッ素ゴムからなる。
【0068】
支持アセンブリ32は、蓋22の下面に固定されており、蓋22を保持容器21に装着することによって、保持容器21内に収容されるように構成されている。支持アセンブリ32は、蓋22に固定され、保持容器21の軸線方向に沿って蓋22の下面側に直線状に延びた複数本(たとえば4本)の支柱35と、支柱35の途中部に固定された下支持プレート37と、下支持プレート37の上方で支柱35に沿って上下動可能に配置された上支持プレート36と、上支持プレート36と蓋22の下面との間において各支柱35に巻装されたコイルばね38と、下支持プレート37と上支持プレート36との間において各支柱35に螺合した丸ナット39とを備えている。4本の支柱35は、容器の中心軸線まわりに等角度間隔をなすように配置されている。支柱35の外周に螺子35aが螺刻してあり、その螺子35aに丸ナット39が螺合している。コイルばね38は、上支持プレート36を丸ナット39に向かって、すなわち、下方に向けて付勢する。支柱35、コイルばね38および丸ナット39は、たとえばステンレスからなる。また、上支持プレート36および下支持プレート37は、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはセラミックスからなる。
【0069】
上支持プレート36の下面には、保持容器21の中心軸線上に第1電極リードE1が固定されている。第1電極リードE1は、電池20に上方から接触する接点E1aを下端に有している。
【0070】
下支持プレート37の下面には、保持容器21の中心軸線上に第2電極リードE2が固定されている。第2電極リードE2は、電池20に下方から接触する接点E2aを上端に有している。下支持プレート37の上面中央部には、凹所(この実施形態では平面視円形の凹所)が形成されている。この凹所内に板状のヒータ23が配置されている。第2電極リードE2の接点E2aは、凹所の中央位置で下支持プレート37を貫通し、さらに、ヒータ23の中央位置を貫通してその上面から上方に突出している。この接点E2a上に電池20が配置される。ヒータ23は、たとえば、シリコンラバーヒータまたはセラミックヒータからなる。下支持プレート37は、電池20を支持する測定対象支持部材の一例である。そして、凹所内に電池20を配置する測定対象配置位置が設定されている。凹所は、電池20を支持する対象支持部であり、その底面(より正確にはヒータ23の表面)は、電池20を支持する支持面である。
【0071】
測定対象である電池20の下面を第2電極リードE2の接点E2aに接触させて配置した状態で、上支持プレート36を下降させることにより、第1電極リードE1の接点E1aを電池20の上面に接触させることができる。具体的には、丸ナット39をまわして下方に移動させることにより、コイルばね38のばね力によって上支持プレート36が押し下げられ、第1電極リードE1の接点E1aが測定対象である電池20の上面に達する。さらに、丸ナット39をまわして下方に移動させることにより、コイルばね38のばね力によって、第1電極リードE1の接点E1aが測定対象である電池20の上面に押し付けられ、それによって、測定対象である電池20の下面が第2電極リードE2の接点E2aに押し付けられる。
【0072】
測定対象である電池20は、たとえば、円板状のコイン電池であり、その上面および下面には、それぞれ電極20a,20bが予め形成されている。電極20aは正電極であり、電極20bは負電極である。これらの電極20aおよび電極20bが、それぞれ第1電極リードE1および第2電極リードE2の接点E2aに接触する。コイン電池は、リチウム電池であってもよい。リチウムコイン電池の例としてCR2032を例示できる。
【0073】
測定治具3は、さらに、第1同軸ケーブル41、第2同軸ケーブル42、第3同軸ケーブル43および第4同軸ケーブル44を含む。これらの同軸ケーブル41~44は、芯線41a~44aと、この芯線41a~44aを取り囲むシールド線41b~44bと、芯線41a~44aおよびシールド線41b~44bの間を絶縁する絶縁体41c~44cとを含む。芯線41a~44aは、たとえば、銅撚線またはステンレス線からなる。シールド線41b~44bは、たとえば、銅撚線またはステンレス線からなる。絶縁体41c~44cは、たとえば、PTFE、ポリイミドまたはセラミックスからなる。たとえば、測定治具3を250℃以上の耐熱仕様とする場合には、芯線およびシールド線をステンレスとし、それらの間の絶縁体をポリイミドとしてもよい。
【0074】
第1同軸ケーブル41の芯線41aの一端および第2同軸ケーブル42の芯線42aの一端は、第1電極リードE1にそれぞれ接続されている。第3同軸ケーブル43の芯線43aの一端および第4同軸ケーブル44の芯線44aの一端は、第2電極リードE2にそれぞれ接続されている。
【0075】
第1同軸ケーブル41および第2同軸ケーブル42は、上支持プレート36に形成された貫通孔(図示せず)を貫通しており、それらの上端は、蓋22を貫通する同軸状のフィードスルー46,47にそれぞれ結合され、かつ支持されている。第3同軸ケーブル43および第4同軸ケーブル44は、下支持プレート37に形成された貫通孔(図示せず)を貫通し、さらに上支持プレート36に形成された貫通孔(図示せず)を貫通しており、それらの上端は、蓋22を貫通する同軸状のフィードスルー48,49にそれぞれ結合され、かつ支持されている。同軸状のフィードスルー46~49は、絶縁型であり、芯線部のみならずシールド部も蓋22から絶縁された状態で、蓋22を貫通して当該蓋22に固定されている。
【0076】
測定治具3の保持容器21内の雰囲気を制御するために、蓋22には、ガス導入管26および排気管27が取り付けられている。たとえば、排気管27を真空ポンプなどの排気設備(図示せず)に接続し、ガス導入管26を不活性ガスタンク等のガス供給源(図示せず)に接続することにより、保持容器21内の雰囲気を制御できる。ガス導入管26および排気管27には、この実施形態では、それぞれガスバルブ30,31が介装されている。
【0077】
図3は、測定治具3、コンデンサユニット7およびコンデンサユニット保持装置8の斜視図である。
図2および
図3に示すように、4つのコンデンサユニット7は、測定治具3の蓋22に着脱可能に取り付けられる。4つのコンデンサユニット7は、蓋22の外方において、蓋22に固定されたフィードスルー46~49の一端(上端)にそれぞれ接続されている。コンデンサユニット7は、一端および他端を有する中心導体11と、中心導体11を絶縁状態で取り囲む筒状の外部導体12と、中心導体11の途中部に介装されたコンデンサ13とを備えている。4つのコンデンサユニット7は、互いに同じ静電容量を有している(つまり、コンデンサ13の静電容量が互いに同じである)。以下、便宜上、第1~第4同軸ケーブル41~44に接続されるコンデンサユニット7を、それぞれコンデンサユニット7A,7B,7C,7Dと呼ぶ場合がある。フィードスルー46~49にコンデンサユニット7A,7B,7C,7Dが接続された状態で、第1~第4同軸ケーブル41~44が、コンデンサユニット7A~7Dに接続される。
【0078】
また、
図3に示すように、この状態で、同軸ケーブル4の各一端をコンデンサユニット7A~7Dの一端部(電池の接続側と反対側の端部)7eに接続する。そして、
図1に示すように、同軸ケーブル4の各他端を、測定器2の端子T11~T14に接続する。それにより、コンデンサユニット7A~7Dの中心導体11および外部導体12が、それぞれ端子T11~T14の信号伝達部およびシールド部に接続される。この状態で、第1~第4同軸ケーブル41~44が、コンデンサユニット7A~7Dを介して端子T11~T14に接続される。4つのコンデンサユニット7A~7Dは、紛失防止のため、紐やチェーンで互いに連結されていてもよい。コンデンサユニット7A~7Dは4つ一体で使用されるため、互いに連結されていても、特段の不具合はない。
【0079】
図3に示すように、コンデンサユニット保持装置8は、4つのコンデンサユニット7を鉛直姿勢で保持するコンデンサユニット保持器81を備えている。コンデンサユニット保持器81は、測定治具3と同じテーブル(図示せず)上に載置される。コンデンサユニット保持装置8とコンデンサユニット7(4つのコンデンサユニット7)とによって、電池20のインピーダンス測定に適した専用のコンデンサユニットシステム6が構成されている。
【0080】
図4は、測定器2から測定対象の電池20に至る配線の構成を説明するための図である。第1電極リードE1において電池20から比較的遠い位置に接続される第1同軸ケーブル41の芯線41aは、電流端子である。第1電極リードE1において電池20の比較的近い位置に接続される第2同軸ケーブル42の芯線42aは、電圧端子である。第2電極リードE2において電池20の比較的近い位置に接続される第3同軸ケーブル43の芯線43aは、電圧端子である。第2電極リードE2において電池20から比較的遠い位置に接続される第4同軸ケーブル44の芯線44aは、電流端子である。
【0081】
第1同軸ケーブル41のシールド線41bの第1電極リードE1側端部は、第1線61によって第2同軸ケーブル42のシールド線42bの第1電極リードE1側端部に直接接続され、第2線62によって第3同軸ケーブル43のシールド線43bの第2電極リードE2側端部に直接接続されている。第2同軸ケーブル42のシールド線42bの第1電極リードE1側端部は、第3線63によって第4同軸ケーブル44のシールド線44bの第2電極リードE2側端部に直接接続されている。第3同軸ケーブル43のシールド線43bの第2電極リードE2側端部は、第4線64によって第4同軸ケーブル44のシールド線44bの第2電極リードE2側端部に直接接続されている。「直接接続」とは、他の同軸ケーブルのシールド線を介することなく接続されていることを意味している。第1同軸ケーブル41および第4同軸ケーブル44のシールド線41b,44bの第1電極リードE1側端部および第2電極リードE2側端部の間を直接接続する線はない。また、第2同軸ケーブル42および第3同軸ケーブル43のシールド線42b,44bの第1電極リードE1側端部および第2電極リードE2側端部の間を直接接続する線もない。
【0082】
第1同軸ケーブル41は、コンデンサユニット7Aを介して、測定器2の信号出力端子T11に接続される。第2同軸ケーブル42は、コンデンサユニット7Bを介して、測定器2の高側電圧計測端子T12に接続される。第3同軸ケーブル43は、コンデンサユニット7Cを介して、測定器2の低側電圧計測端子T13に接続される。第4同軸ケーブル44は、コンデンサユニット7Dを介して、測定器2の電流計測端子T14に接続される。これらにより、四端子対法による測定が行われる。
【0083】
測定器2は、交流信号源71を内部に有しており、この交流信号源71は、信号出力端子T11に交流信号を出力する。この交流信号は、コンデンサユニット7Aの中心導体11を介して、第1同軸ケーブル41の芯線41aに付与される。それによって、第1同軸ケーブル41の芯線41aから電流(交流電流)が供給される。この電流は、第1電極リードE1、電池20、第2電極リードE2を通って、第4同軸ケーブル44の芯線44aに流れ込み、コンデンサユニット7Dの中心導体11を通って、測定器2内の電流計73へと供給される。この電流計73を通った電流は、コンデンサユニット7Dの外部導体12を介して第4同軸ケーブル44のシールド線44bを通り、さらに、第1線61~第4線64を通って、第1同軸ケーブル41のシールド線41bへと導かれ、このシールド線41bからコンデンサユニット7Aの外部導体12を通って、交流信号源71へと帰る。
【0084】
第2同軸ケーブル42の芯線42aは、コンデンサユニット7Bの中心導体11を介して、測定器2の高側電圧計測端子T12に接続される。第3同軸ケーブル43の芯線43aは、コンデンサユニット7Cの中心導体11を介して、測定器2の低側電圧計測端子T13に接続される。測定器2の内部の電圧計72は、差動増幅器74を有している。差動増幅器74は、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13の間の電位差に対応する信号を出力する。電圧計72は、この信号に基づいて、第2同軸ケーブル42の芯線42aと第3同軸ケーブル43の芯線43aとの間の電圧を測定し、それによって、測定対象である電池20の両端にかかる電圧を測定する。
【0085】
そして、測定器2は、電流計73によって計測される電流と、電圧計72によって計測される電圧とに基づいて、測定対象である電池20のインピーダンスを演算する。
【0086】
また、測定器2の対象が、起電力を有する電池20である。第1電極リードE1および第2電極リードE2のそれぞれに、電池20の正極および負極のそれぞれが接続された状態においては、以下の第1電流経路および第2電流経路という2つの電流経路が形成される。第1電流経路は、第1電極リードE1から、第1同軸ケーブル41の芯線41a、コンデンサユニット7Aの中心導体11、交流信号源71、第1同軸ケーブル41のシールド線41b、第1線61~第4線64、第4同軸ケーブル44のシールド線44b、電流計73、コンデンサユニット7Dの中心導体11および第4同軸ケーブル44の芯線44aを通って第2電極リードE2に至る経路である。第2電流経路は、第1電極リードE1から、第2同軸ケーブル42の芯線42a、コンデンサユニット7Bの中心導体11、第2同軸ケーブル42のシールド線42b、第1線61~第4線64、第3同軸ケーブル43のシールド線43b、コンデンサユニット7Cの中心導体11および第3同軸ケーブル43の芯線43aを通って第2電極リードE2に至る経路である。
【0087】
第1電流経路において、コンデンサユニット7Aの中心導体11にコンデンサ13が介装されている。コンデンサユニット7Aのコンデンサ13が電荷のバランスがとれた状態であれば、コンデンサ13に対する直流電流の出入りはないので、電池20からコンデンサユニット7Aへの直流電流の流入はなく、電池20と測定器2との間の直流電流経路(第1電流経路)はコンデンサ13によって遮断される。
【0088】
一方、第2電流経路において、コンデンサユニット7Bの中心導体11にコンデンサ13が介装されている。コンデンサユニット7Bのコンデンサ13が電荷のバランスがとれた状態であれば、コンデンサ13に対する直流電流の出入りはないので、電池20からコンデンサユニット7Aへの直流電流の流入はなく、電池20と測定器2との間の直流電流経路(第1電流経路)はコンデンサ13によって遮断される。
【0089】
この実施形態では、4つのコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサの静電容量は互いに同じである。また、4つのコンデンサユニット7A~7Dが、互いに同じ形状および大きさを有している。そのため、同種のコンデンサユニット7を4つ設け、それらを4つのコンデンサユニット7A~7Dとして用いている。
【0090】
図5は、コンデンサユニット7の具体的な構成を説明するための模式的な図である。
【0091】
コンデンサユニット7は、中心導体11と、中心導体11に非接触な外部導体12と、コンデンサ13と、中心導体11、外部導体12およびコンデンサ13を取り囲む円筒状のハウジング14と、中心導体11の一端および他端にそれぞれ接続された一端側コネクタ15および他端側コネクタ16と、を備えている。
図5の例では、外部導体12は、中心導体11を非接触な状態で同軸状に取り囲んでいる。一端側コネクタ15は、中心導体15aと、中心導体15aに非接触な外部導体15bとを備えていてもよい。外部導体15bは、中心導体15aを非接触な状態で同軸状に取り囲んでいてもよい。他端側コネクタ16は、中心導体16aと、中心導体16aに非接触な外部導体16bとを備えていてもよい。外部導体16bは、中心導体16aを非接触な状態で同軸状に取り囲んでいてもよい。コンデンサユニット7は、パッシブ同軸コーポネントである。中心導体11は、回路基板17の表面に形成された信号用パターン11aおよび信号用パターン11bを備えている。信号用パターン11aは、一端側コネクタ15の中心導体15aに接続されている。信号用パターン11bは、他端側コネクタ16の中心導体16aに接続されている。回路基板17の表面において、信号用パターン11aと信号用パターン11bとの間に、複数(たとえば12つ)のコンデンサ素子18が実装されている。これら複数のコンデンサ素子18によって、コンデンサ13が構成されている。回路基板17の裏面には、グランド用パターン(図示しない。たとえばベタパターン)が形成されている。このグランド用パターンは、一端側コネクタ15の外部導体15bおよび他端側コネクタ16の外部導体16bに接続されている。
【0092】
ハウジング14は、たとえば金属材料を用いて形成されている。金属材料を用いてハウジング14を形成することにより、耐ノイズ性が向上する。一端側コネクタ15および他端側コネクタ16は、同軸状のコネクタ(たとえばBNCコネクタ)によって構成されている。
【0093】
図6は、コンデンサユニット7に含まれるコンデンサ13を説明するための模式的な回路図である。コンデンサ13は、互いに並列に接続された複数のコンデンサ素子18を含む。複数のコンデンサ素子18は、複数(たとえば11つ)の第1コンデンサ素子18Aと、1つの第2コンデンサ素子18Bとを含む。第2コンデンサ素子18Bの静電容量は、第1コンデンサ素子18Aの静電容量に比べて十分に小さい。第1コンデンサ素子18Aの静電容量はたとえば47μFである。第2コンデンサ素子18Bの静電容量はたとえば68pFである。
【0094】
複数個並列に接続される第1コンデンサ素子18Aの個数を変更することにより、コンデンサ13の静電容量を変えることができる。第1コンデンサ素子18Aの個数を増やすことでコンデンサ13の静電容量が増え、これにより、大容量のコンデンサ13を実現可能である。一般的に、コンデンサ13の周波数特性は、コンデンサ13の静電容量に依存する。コンデンサ13の静電容量の大容量化を図ることにより、コンデンサ13を通過可能な信号周波数を低周波数側に広げることができる。コンデンサ13の複数のコンデンサ素子18の個数が11つである場合、コンデンサ13の静電容量は約500μFであり、大容量である。コンデンサ13の静電容量が約500μFである場合、100mHz~1Hz程度の低周波数の信号を良好に通すことができる。これにより、コンデンサユニット7を通過可能な信号周波数を低周波数側に広げることができる。そして、コンデンサユニット7を測定器2の端子T11~T14に接続することにより、測定周波数が低周波数である場合であっても、電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0095】
第1コンデンサ素子18Aの個数の11つは一例であり、この個数に限られない。コンデンサ13の静電容量の大容量化のためには、第1コンデンサ素子18Aの個数は複数であることが好ましいが、1つであってもよい。コンデンサユニット7に求められる静電容量やコンデンサユニット7のハウジング14内の収容体積等に応じて、コンデンサユニット7に含まれる第1コンデンサ素子18Aの個数が定められる。また、第1コンデンサ素子18Aの静電容量は47μFに限られず、他の値であってもよい。
【0096】
また、小さな静電容量を有するコンデンサは、一般的に高周波の信号を比較的通しやすい。小さな静電容量(たとえば68pF)を有する第2コンデンサ素子18Bを第1コンデンサ素子18Aに組み合わせてコンデンサ13を構成することにより、低周波の信号だけでなく、高周波の信号をコンデンサ13に通すことができる。第2コンデンサ素子18Bの個数の1つは一例であり、この個数に限られない。また、第2コンデンサ素子18Bの静電容量は68pFに限られず、他の値であってもよい。
【0097】
静電容量の異なる互いに異なる複数種のコンデンサ素子18A,18Bから構成されるコンデンサ13を含むコンデンサユニット7を用いることにより、コンデンサユニット7を通すことの可能な信号の周波数のレンジを広げることができる。そして、コンデンサユニット7を測定器2に接続することにより、電池20からの直流電流の流れ込みを阻止しながら、広い周波数レンジでのインピーダンス測定を良好に実現できる。
【0098】
図7は、コンデンサユニット保持装置8の斜視図である。
図8は、コンデンサユニット保持装置8の縦断面図である。
【0099】
コンデンサユニット保持装置8は、4つのコンデンサユニット7を鉛直姿勢に保持するコンデンサユニット保持器81と、下キャップ(第2キャップ、
図8参照)83と、接続端子(第2キャップ、
図8参照)84とを含む。
【0100】
コンデンサユニット保持器81は、4つのコンデンサユニット7を鉛直姿勢に保持するスタンド台であり、上面81aを有する上面板81bを備えている。コンデンサユニット保持器81の上面81aには、8つの下キャップ83および接続端子84の組が、4つずつ2列に配列されている。接続端子84は、上面81a上に配置されている。各下キャップ83は、対応する接続端子84の下に配置されている。
【0101】
下キャップ83は、同軸状の短絡プラグ(たとえばBNCショートプラグ)である。下キャップ83は、コンデンサユニット保持器81から絶縁された状態でコンデンサユニット保持器81に固定されている。
【0102】
接続端子84は、同軸状のフィードスルー(たとえばBNCメス-BNCメスアダプタ)である。接続端子84は、下キャップ83に上方から結合されて、接続端子84に機械的および電気的に接続される。接続端子84は、コンデンサユニット保持器81から絶縁されている。接続端子84の下部は、下キャップ83に対し、たとえばねじ結合によって装着されている。接続端子84の上部は、コンデンサユニット保持器81の上面81a上に露出しており、コンデンサユニット7の他端部7fに対し、たとえばねじ結合によって装着可能である。コンデンサユニット保持器81の上面81aには、8つの接続端子84が露出している。
【0103】
コンデンサユニット保持器81の上面板81bには、8つの貫通穴82が形成されている。貫通穴82は、たとえば円形である。接続端子84を貫通穴82に上方から嵌めた状態で、上面板81bの下方から接続端子84にナット86をねじ締結することにより、接続端子84が上面板81bに固定される。そして、上面板81bに固定された接続端子84に、上面板81bの下方から下キャップ83をねじ締結することにより、下キャップ83が上面板81bに固定される。下キャップ83の接続端子84への締結状態で、下キャップ83と接続端子84との電気的接続が達成される。
【0104】
1つの接続端子84と、接続端子84に結合される1つの下キャップ83とによって、1つのコンデンサユニット7を下方から支持するための支持部85が構成されている。すなわち、コンデンサユニット保持器81の上面81aには、コンデンサユニット7を支持するための支持部85が8つ配置されている。
【0105】
8つの支持部85は、互いに同じ大きさおよび形状を有している。そのため、4つのコンデンサユニット7をいずれの支持部85によって支持させることも可能である。なお、
図8に示す最も右の支持部85から、下キャップ83を取り外した状態を示している。
【0106】
図9は、測定システム1を用いた電池20のインピーダンス測定方法の手順を示す流れ図である。
図10は、コンデンサユニット保持装置8によって4つのコンデンサユニット7A~7Dを保持している状態を示す斜視図である。
図11は、
図10に示す状態における、コンデンサユニット保持器81から上キャップ80に至る配線の構成を説明するための図である。
図12は、充電工程(
図9のS5)における、測定治具3、コンデンサユニット7およびコンデンサユニット保持装置8の斜視図である。
図13は、充電工程(
図9のS5)における、電池20から終端抵抗ユニット9A~9Dに至る配線の構成を説明するための図である。
図14は、
図13に示す配線の模式的な回路図である。
図1~
図9を参照しながら、測定システム1を用いた電池20のインピーダンス測定方法の手順について説明する。
図10~
図15は、適宜参照する。
【0107】
電池20のインピーダンスの測定においてコンデンサユニット7A~7Dによる直流電流の遮断を実現するためには、測定の開始時において、端子T11~T14に接続されているコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13に予め電荷が蓄積されている必要がある。そのため、
図9に示すインピーダンス測定方法では、測定工程(
図9のS7)の前に、コンデンサユニット7A~7Dに充電することから始まり電荷のバランスのとれた状態を達成する充電工程(
図9のS5)を行っている。また、電池20のインピーダンスを正確に測定するためには、測定工程(
図9のS7)の前の開始時に、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13に蓄積されている電荷のバランスがとれた状態である必要がある
。そのため、
図9に示すインピーダンス測定方法では、充電工程(
図9のS5)の前に、コンデンサユニット7A~7Dを強制的に放電する強制放電工程(
図9のS1)を行っている。
【0108】
測定器2による測定を行わないときは、
図10および
図11に示すように、4つのコンデンサユニット7は、コンデンサユニット保持装置8に収納されている。具体的には、4つのコンデンサユニット7の他端部7fが、コンデンサユニット保持器81の上面81aの4つの支持部85によって支持されている。また、コンデンサユニット保持装置8は、さらに、コンデンサユニット7と同数の上キャップ(第1キャップ)80をさらに備えており、コンデンサユニット保持器81による収納状態では、コンデンサユニット7の一端部7e(すなわち、上端部)に上キャップ80が装着されている。次に、下キャップ83および上キャップ80について、順に説明する。
【0109】
図11に示すように、下キャップ83は、中心導体83aと、中心導体83aを非接触状態で同軸状に取り囲む筒状の外部導体83bとを備えている。中心導体83aの一端(
図11に示す下端)と外部導体83bの一端(
図11に示す下端)とは、互いに電気的に接続されている。コンデンサユニット7の他端部7fを支持部85に装着した状態、すなわち、コンデンサユニット7が支持部85によって支持された状態において、4つのコンデンサユニット7の他端部7fに、接続端子84を介して下キャップ83が接続されている。この状態では、コンデンサユニット7の中心導体11と外部導体12とが、下キャップ83および接続端子84を介して電気的に接続されている。
【0110】
上キャップ80は、同軸状の短絡プラグ(たとえばBNCショートプラグ)である。
図11に示すように、上キャップ80は、中心導体80aと、中心導体80aを非接触状態で同軸状に取り囲む筒状の外部導体80bとを備えている。中心導体80aの一端(
図11に示す上端)と外部導体80bの一端(
図11に示す上端)とは、互いに電気的に接続されている。上キャップ80は、コンデンサユニット7の一端部7eに、たとえばねじ結合によって装着可能である。コンデンサユニット7の一端部7eに上キャップ80を装着することにより、コンデンサユニット7の中心導体11と外部導体12とが、上キャップ80を介して電気的に接続される。
【0111】
したがって、コンデンサユニット7の他端部7fが支持部85によって支持されている状態で、コンデンサユニット7の一端部7eに上キャップ80を装着することにより、コンデンサユニット7の中心導体11、コンデンサユニット7の外部導体12、上キャップ80、接続端子84および下キャップ83によって短絡回路が形成される。これにより、コンデンサユニット7の中心導体11に介装されているコンデンサ13の二極が短絡する。これにより、コンデンサ13に蓄積されている電荷がコンデンサ13から強制的に排出され、コンデンサ13が強制放電される(
図9のS1:強制放電工程)。一端部7eに上キャップ80が装着された状態で、4つのコンデンサユニット7をコンデンサユニット保持器81に収納しておくことにより、4つのコンデンサユニット7が強制的に放電された状態に保たれている。
【0112】
なお、4つの終端抵抗ユニット9は、
図10に示すように、コンデンサユニット保持器81の上面81aの8つの支持部85のうち、コンデンサユニット7が装着されていない、残りの4つの支持部85に嵌めた状態としている。つまり、残りの4つの支持部85を、4つの終端抵抗ユニット9の載置のために用いている。
【0113】
電池20のインピーダンスの測定のために、測定者は、4つのコンデンサユニット7の一端部7eから上キャップ80を外し、4つのコンデンサユニット7をコンデンサユニット保持器81から取り出して、測定治具3に装着する(
図9のS2:コンデンサユニット装着工程)。具体的には、測定治具3の蓋22に固定されている4つのフィードスルー46~49に、それぞれ4つのコンデンサユニット7を接続する。4つのコンデンサユニット7は、互いに同じ形状および大きさでありかつコンデンサ13の静電容量が互いに同じである。そのため、4つのコンデンサユニット7をいずれのフィードスルー46~49に接続してもよい。
【0114】
次いで、測定者は、
図12に示すように、測定治具3に装着した4つのコンデンサユニット7のそれぞれに終端抵抗ユニット9を装着する(
図9のS3:終端抵抗ユニット装着工程)。
【0115】
図13に示すように、終端抵抗ユニット9は、たとえば同軸状の終端コネクタ(たとえばBNC終端プラグ)である。終端抵抗ユニット9は、中心導体91と、中心導体91を非接触状態で同軸状に取り囲む筒状の外部導体92と、中心導体91と外部導体92とを接続する終端抵抗93とを備えている。終端抵抗ユニット9の使用状態に関し、中心導体91の一端(
図13に示す上端)と外部導体92の一端(
図13に示す上端)とは、互いに電気的に接続されている。終端抵抗ユニット9は、コンデンサユニット7の一端部7eに、たとえばねじ結合によって装着可能である。コンデンサユニット7の一端部7eに終端抵抗ユニット9を装着した状態で、コンデンサユニット7の中心導体91と外部導体92とが終端抵抗93を介して接続される。以下、コンデンサユニット7A,7B,7C,7Dのそれぞれに装着される終端抵抗ユニット9を、それぞれ終端抵抗ユニット9A,9B,9C,9Dという場合がある。
【0116】
コンデンサユニット7A~7Dの一端部7eへの終端抵抗ユニット9A~9Dの装着によって、コンデンサユニット7の中心導体11と外部導体12とが、終端抵抗ユニット9A~9Dの終端抵抗93を介して接続される。終端抵抗ユニット9A~9Dの終端抵抗93の抵抗値は、測定器2の信号出力端子T11の入力インピーダンス(たとえば50Ω)および電流計測端子T14の出力インピーダンス(たとえば50Ω)と同じ値(たとえば50Ω)である。
【0117】
終端抵抗ユニット9の装着後、測定対象の電池20を測定治具3に装着する(
図9のS4:電池装着工程)。具体的には、測定者は蓋22を開けて上支持プレート36を上昇させ、下支持プレート37の凹所に電池20を配置する。その後、上支持プレート36を下降させて電池20の上下面にそれぞれ第1電極リードE1および第2電極リードE2を接続させた後に蓋22を閉じる。これにより、測定治具3に電池20がセットされる。第1電極リードE1および第2電極リードE2に電池20が接続されるので、
図14に示すように、コンデンサユニット7Aおよび終端抵抗ユニット9Aの直列回路と、コンデンサユニット7Dおよび終端抵抗ユニット9Dの直列回路とが並列に接続される。また、コンデンサユニット7Bおよび終端抵抗ユニット9Bの直列回路と、コンデンサユニット7Cおよび終端抵抗ユニット9Cの直列回路とが並列に接続される。そして、コンデンサユニット7Bおよびコンデンサユニット7Cの並列回路と、コンデンサユニット7Aおよびコンデンサユニット7Dの並列回路とが、電池20に直列接続される。この状態において、電池20から、コンデンサユニット7A~7Dに電流が流れ、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13に電荷が蓄積され、最終的に電荷のバランスのとれた状態になる。
【0118】
測定治具3への電池20の装着後直ちに、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13への充電が開始される。また、測定治具3への電池20の装着と同時に、測定者は、温度調節器28の起動を開始し、ヒータ23の昇温を開始させる。
【0119】
その状態で、予め定める時間(2時間程度)待機する(
図9のS5:充電工程)。これにより、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13が電荷のバランスのとれた状態になる。上記の予め定める時間は、4つのコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13において電荷の移動がなくなるような時間に設定されている。
【0120】
なお、充電工程(
図9のS5)において使用しない4つの上キャップ80は、
図12に示すように、コンデンサユニット保持器81の上面81aの8つの支持部85のうちいずれか4つの支持部85に嵌めた状態としている。つまり、4つの支持部85を、使用していない4つの上キャップ80の仮置きのために用いている。
【0121】
上記の予め定める時間が経過すると、測定者は、コンデンサユニット7A~7Dの一端部7eから終端抵抗ユニット9を取り外し、
図3に示すように、同軸ケーブル4の一端をコンデンサユニット7の一端部7eに接続し、その他端を測定器2の端子T11~T14に接続する(
図9のS6:接続工程)。これにより、電池20が、4つのコンデンサユニット7A~7Dを介して、測定器2の4つの端子T11~T14に接続される。
【0122】
この状態で、測定者は、測定器2を用いて電池20のインピーダンスを測定する(
図9のS7:測定工程)。コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13が電荷のバランスのとれた状態で、測定工程(
図9のS7)を実行するので、測定器2への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器2を用いて電池20のインピーダンスを測定できる。そして、コンデンサユニット7A~7Dにおいて電荷の移動がなくなった状態で測定工程(
図9のS7)を開始するので、測定工程(
図9のS7)の開始当初から、測定器2への直流電流の流れ込みを阻止できる。
【0123】
なお、測定に使用しない4つの終端抵抗ユニット9は、
図3に示すように、コンデンサユニット保持器81の上面81aの8つの支持部85のうち、上キャップ80の置かれていない、残りの4つの支持部85に嵌めた状態としている。つまり、残りの4つの支持部85を、使用していない4つの終端抵抗ユニット9の仮置きのために用いている。
【0124】
測定終了後、測定者は、温度調節器28を停止させる。そして、測定者は、同軸ケーブル4を、4つのコンデンサユニット7から取り外し、かつ4つのコンデンサユニット7を測定治具3の蓋22から取り外してコンデンサユニット保持器81に戻す(
図9のS8:収納工程)。そして、コンデンサユニット7の一端部7eに上キャップ80を装着する(
図9のS9:強制放電工程、
図10参照)。これにより、コンデンサユニット7のコンデンサ13が強制的に放電される。また、測定者は、測定治具3の蓋22を開けて、測定治具3から電池20を取り出す。
【0125】
図15および
図16は、測定システム1を用いて電池20のインピーダンスを測定した結果(実施例)を表すNyquist線図である。電池20は、コイン形リチウム電池(たとえばCR2032)である。
【0126】
測定器2として、ソーラトロン社1260型を用いた。測定器2の下限測定周波数および上限測定周波数は、それぞれ10mHzおよび10MHzに設定した。交流電圧は10mV、一桁あたりの測定点数は10点に設定した。電池20の温度は室温(25℃)である。測定器2の端子T11~T14にコンデンサユニット7を接続した。コンデンサユニット7のコンデンサ13は、47μFの静電容量を有する11つの第1コンデンサ素子18A(
図6参照)と、68pFの1つの第2コンデンサ素子18B(
図6参照)とを含む。すなわち、コンデンサユニット7の静電容量は、約500μFである。
【0127】
図15に、
図9に示す測定方法から強制放電工程(
図9のS1)および充電工程(
図9のS5)を省略して行ったインピーダンス測定の測定結果を示し、
図16に、
図9に示す測定方法でインピーダンス測定を行ったときの測定結果を示す。
図15におけるインピーダンス測定では、コンデンサユニット7に対する充電工程(
図9のS5)を行っていないものの、コンデンサユニット7には、所定量の電荷が蓄積されている。
図16では、測定周波数が100mHz付近で測定値に乱れが生じたため、その時点で測定を中止した。そのため、100mHz未満の測定周波数では測定していない。
【0128】
図15では、測定周波数が66kHz付近(図中の矢印参照)において、測定インピーダンス値に乱れが確認できた。これに対し、
図16では、同じ測定周波数(図中の矢印参照)において、測定インピーダンス値に特段の乱れがみられない。この測定結果から、測定工程(
図9のS7)の前に、強制放電工程(
図9のS1)および充電工程(
図9のS5)を行うことで、安定した状態でインピーダンス値の測定を行えることがわかる。
【0129】
以上により、この実施形態によれば、端子T11~T14と電池20との間にコンデンサユニット7A~7Dが介装された状態で、測定器2によって電池20のインピーダンスが測定される。4つのコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13の静電容量が互いに同じである。コンデンサ13の電荷のバランスのとれた状態でコンデンサユニット7A~7Dは直流電流を遮断する。そのため、コンデンサユニット7A~7Dによって、電池20からの直流電流が測定器2内に流れ込むことを阻止できる。高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13に接続される2つのコンデンサユニット7B,7Cの静電容量が互いに同じであるので、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13に入力される電圧の差分の値は、計測端子T12,T13へのコンデンサユニット7B,7Cの接続の影響を受けない。また、信号出力端子T11および電流計測端子T14にそれぞれ接続されるコンデンサユニット7A,7Dのコンデンサ13の静電容量が、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13にそれぞれ接続されるコンデンサユニット7B,7Cと同じであるので(コンデンサユニット7A,7Dに蓄積されている電荷量が、コンデンサユニット7B,7Cに蓄積されている電荷量と同じであるので)、測定器2において電圧と電流との位相のずれが生じない。これらにより、電池20から測定器2への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器2によって電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0130】
また、4つの端子T11~T14に接続される4つのコンデンサユニット7A~7Dが、互いに同じ形状および大きさでありかつコンデンサ13の静電容量が互いに同じであるので、接続先の端子T11~T14毎にコンデンサユニット7の種類を異ならせる必要がない。つまり、測定者は、4つのコンデンサユニット7を区別することなく4つの端子T11~T14に1つずつ接続すれば足りる。コンデンサユニット7A~7Dの接続先の間違えが生じないから、端子T11~T14にコンデンサユニット7A~7Dを接続する際の作業性が良い。
【0131】
また、測定治具3の第1および第2電極リードE1,E2に接続されている電池20を起点とする電荷移動によって、測定治具3に装着されている4つのコンデンサユニット7A~7Dが、測定工程(
図9のS7)の前に電荷のバランスのとれた状態になる(充電工程(
図9のS5))。そのため、コンデンサ13の電荷のバランスのとれた状態で、測定工程(
図9のS7)を実行できる。とくにこの実施形態では、コンデンサ13が電荷のバランスのとれた状態に達する時間(2時間程度)が経過した(充電工程(
図9のS5))後に測定工程(
図9のS7)の実行を開始するので、測定工程(
図9のS7)の開始当初から、測定器2への直流電流の流れ込みを阻止できる。
【0132】
終端抵抗ユニット9A~9Dの終端抵抗93の抵抗値が、測定器2の信号出力端子T11の入力インピーダンス(たとえば50Ω)および電流計測端子T14の出力インピーダンス(たとえば50Ω)と同じ値(たとえば50Ω)である。これにより、測定器2に接続している状態(実際の測定状況)に近い状態で充電工程(
図9のS5)を実施することができるので、充電後のコンデンサユニット7A~7Dを測定器2に接続した状態において、測定系に電位の乱れが生じ難い。これにより、コンデンサユニット7A~7Dを測定器2に接続した直後から、測定系の電位を安定させることができる。
【0133】
充電工程(
図9のS5)に先立って、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13が強制的に放電させられる(
図9のS1:強制放電工程)。コンデンサユニット7A~7Dを強制的に放電させずに、自然放電させることも考えられる。しかし、自然放電では、コンデンサ13にいくらかの量の電荷が残存し、この電荷量はコンデンサ13毎にばらつく。自然放電後に充電工程(
図9のS5)を開始させると、4つのコンデンサユニット7A~7Dに蓄積されている電荷量が互いにばらついた状態で、充電工程(
図9のS5)が開始されるおそれがある。充電工程(
図9のS5)の前にコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13を強制的に放電させることにより、コンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13に電荷が存在していない状態で、充電工程(
図9のS5)を開始できる。4つのコンデンサユニット7A~7Dに蓄積されている電荷量を零に揃えた状態で4つのコンデンサユニット7A~7Dに対する充電を開始できるので、充電工程(
図9のS5)後における、4つのコンデンサユニット7A~7Dの電荷のバランスのとれた状態を達成できる。これにより、4つのコンデンサユニット7A~7Dの電荷のバランスのとれた状態で、測定工程(
図9のS7)を開始できる。
【0134】
図17は、第2実施形態に係る測定器202から測定対象の電池20に至る配線の構成を説明するための図である。
【0135】
図17において、第1実施形態(
図1~
図16に示す実施形態)と共通する部分には、
図1~
図16の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
【0136】
第2実施形態に係る測定システムが、第1実施形態に係る測定システム1と相違する点は、測定器2に代えて測定器202を備えた点にある。測定器202は、測定対象である電池20のインピーダンスを、自動平衡ブリッジ法によって測定するための装置である。具体的には、測定器202は、たとえば、キーサイト(Keysight)社のE4990A型または同社の4294A型であってもよい。キーサイト社のこれらの測定器は、四端子対法による測定が可能であり、高周波数から低周波数への掃引が可能である。
【0137】
測定器202は、4つの端子T21~T24を備えている。4つの端子T21~T24は、信号出力端子T21(HC)と、電圧計測端子T22(HP)と、Null(ヌル)点検出端子T23(LP)と、電流計測端子T24(LC)とを含む。信号出力端子T21および電流計測端子T24は電流端子であり、電圧計測端子T22およびNull(ヌル)点検出端子T23は電圧端子である。これら4つの端子T21~T24は、いずれも、ピン状の信号伝達部を中央に有し、それを取り囲むように円筒状のシールド部を有する同軸型の端子である。
【0138】
第2実施形態における、測定器202を用いた電池20のインピーダンスの計測は、第1実施形態における測定器2を用いた電池20のインピーダンスの計測と同様に行われる。具体的には、
図1および
図3等に示すように、4つのコンデンサユニット7を測定治具3に装着した状態で、同軸ケーブル4の各一端をコンデンサユニット7A~7Dの一端部7eに接続し、同軸ケーブル4の各他端を、測定器202の端子T21~T24に接続する。それにより、コンデンサユニット7A~7Dの中心導体11および外部導体12が、それぞれ端子T21~T24の信号伝達部およびシールド部に接続される。それにより、第1~第4同軸ケーブル41~44が測定器202の端子T21~T24にそれぞれ接続されることになる。
【0139】
具体的には、第1同軸ケーブル41は、コンデンサユニット7Aを介して、測定器202の信号出力端子T21に接続される。第2同軸ケーブル42は、コンデンサユニット7Bを介して、測定器202の電圧計測端子T22に接続される。第3同軸ケーブル43は、コンデンサユニット7Cを介して、測定器202のNull(ヌル)点検出端子T23に接続される。第4同軸ケーブル44は、コンデンサユニット7Dを介して、測定器202の電流計測端子T24に接続される。これらにより、四端子対法による測定が行われる。
【0140】
測定器202は、交流信号源271を内部に有しており、この交流信号源271は、信号出力端子T21に交流信号を出力する。この交流信号は、コンデンサユニット7Aの中心導体11を介して、第1同軸ケーブル41の芯線41aに付与される。それによって、第1同軸ケーブル41の芯線41aから電流(交流電流)が供給される。この電流は、第1電極リードE1、電池20、第2電極リードE2を通って、第4同軸ケーブル44の芯線44aに流れ込み、コンデンサユニット7Dの中心導体11を通って、測定器202内の電流計274へと供給される。この電流計274を通った電流は、コンデンサユニット7Dの外部導体12を介して第4同軸ケーブル44のシールド線44bを通り、さらに、第1線61~第4線64を通って、第1同軸ケーブル41のシールド線41bへと導かれ、このシールド線41bからコンデンサユニット7Aの外部導体12を通って、交流信号源271へと帰る。こうして、交流信号源271から電池20を通り、さらに電流計274を通って交流信号源271へと戻る電流経路が形成されている。
【0141】
第2同軸ケーブル42の芯線42aは、コンデンサユニット7Bの中心導体11を介して、測定器202の内部の電圧計272に接続されている。電圧計272は、第2同軸ケーブル42の芯線42aとシールド線42bとの間の電圧を測定する。
【0142】
第3同軸ケーブル43の芯線43aは、コンデンサユニット7Cの中心導体11を介して、測定器202の内部のNull(ヌル)点検出器273に接続されている。Null(ヌル)点検出器273は、第3同軸ケーブル43の芯線43aおよびシールド線43bの間の電位差がゼロ(これを仮想接地という)になるように測定器202内のベクトル信号源275に制御信号を出力する。この制御信号によって、第3同軸ケーブル43の芯線43aの電位とシールド線43bの電位差を同電位、つまり、第2電極リードE2の電位と第2同軸ケーブル42のシールド線42bの電位をシールド線と同電位にすることで、電圧計272で電池20の両端の電圧の測定を可能にするとともに、電流計274で電池20を流れる電流の測定を可能にしている。
【0143】
測定器202は、電流計274によって計測される電流と、電圧計272によって計測される電圧とに基づいて、電池20のインピーダンスを演算する。
【0144】
この第2実施形態によれば、端子T21~T24と電池20との間にコンデンサユニット7A~7Dが介装された状態で、測定器202によって電池20のインピーダンスが測定される。4つのコンデンサユニット7A~7Dのコンデンサ13の静電容量が互いに同じである。コンデンサ13に電荷が蓄積されている状態でコンデンサユニット7A~7Dは直流電流を遮断する。そのため、コンデンサユニット7A~7Dによって、電池20からの直流電流が測定器202内に流れ込むことを阻止できる。
【0145】
電圧計測端子T22およびNull(ヌル)点検出端子T23に接続される2つのコンデンサユニット7B,7Cの静電容量が互いに同じであるので、電圧計測端子T22およびNull(ヌル)点検出端子T23に入力される電圧に、端子T22へのコンデンサユニット7B,7Cの接続に伴うアンバランスな影響が生じない。また、信号出力端子T21および電流計測端子T24にそれぞれ接続されるコンデンサユニット7A,7Dのコンデンサ13の静電容量が、電圧計測端子T22およびNull(ヌル)点検出端子T23にそれぞれ接続されるコンデンサユニット7B,7Cと同じであるので、測定器202において電圧と電流との位相のずれが生じない。これらにより、電池20から測定器202への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器202によって電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0146】
なお、
図9に示す1回のインピーダンス測定において、共通の電池20を、測定器2(周波数応答解析によって測定)および測定器202(自動平衡ブリッジ法によって測定)のそれぞれによって順に測定することがある。この場合には、先に測定器2によって電池20を測定し、次いで、測定器202によって電池20を測定する。具体的には、測定器2を用いた測定工程(
図9のS7)の終了後、同軸ケーブル4の各他端を、測定器2の端子T11~T14から取り外し、測定器202の端子T21~T24に接続する。そして、測定者は、測定器202を用いて電池20のインピーダンスを測定する(
図9のS7:測定工程)。測定終了後、測定者は、温度調節器28を停止させる。そして、測定者は、同軸ケーブル4を、4つのコンデンサユニット7から取り外し、かつ4つのコンデンサユニット7を測定治具3の蓋22から取り外してコンデンサユニット保持器81に戻す(
図9のS8:収納工程)。そして、4つのコンデンサユニット7の一端部7eに上キャップ80を装着する(
図9のS9:強制放電工程、
図10参照)。
【0147】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。
【0148】
たとえば、第1実施形態では、4つの端子T11~T14すべてにコンデンサユニット7A~7Dを接続し、しかもこれらのコンデンサユニット7A~7Dの静電容量を互いに同じにするとして説明したが、信号出力端子T11に接続されるコンデンサユニット7Aを廃止してもよい。つまり、第1同軸ケーブル41と接続された同軸ケーブル4を信号出力端子T11に直接接続するようにしてもよい。このような接続態様を採用した測定システム1によっても、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13に接続される2つのコンデンサユニット7B,7Cの静電容量が互いに同じであるので、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13に入力される電圧の差分の値は、計測端子T12,T13へのコンデンサユニット7B,7Cの接続の影響を受けない。また、電流計測端子T14に接続されるコンデンサユニット7Dのコンデンサ13の静電容量が、高側電圧計測端子T12および低側電圧計測端子T13にそれぞれ接続されるコンデンサユニット7B,7Cと同じであるので、測定器2において電圧と電流との位相のずれが生じないから、電池20から測定器2への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器2によって電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0149】
また、信号出力端子T11に接続されるコンデンサユニット7Aを残し、電流計測端子T14に接続されるコンデンサユニット7Dを廃止することもでき、電池20から測定器2への直流電流の流れ込みを阻止しながら、測定器2によって電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0150】
また、コンデンサユニット7Aおよびコンデンサユニット7Dの静電容量が、コンデンサユニット7B,7Cの静電容量と異なっていてもよい。インピーダンス測定に用いられる信号周波数が、コンデンサユニット7A,7Dの静電容量でも通過する信号周波数である場合には、測定器2によって電池20のインピーダンスを正確に測定できる。
【0151】
同様に、第2実施形態において、信号出力端子T21に接続されるコンデンサユニット7Aを廃止してもよい。信号出力端子T21に接続されるコンデンサユニット7Aを残し、電流計測端子T24に接続されるコンデンサユニット7Dを廃止してもよい。コンデンサユニット7Aおよびコンデンサユニット7Dの静電容量が、コンデンサユニット7B,7Cの静電容量と異なっていてもよい。
【0152】
また、第1および第2実施形態において、コンデンサユニット7の外部導体12を同軸状に取り囲む円筒状として説明したが、外部導体12は円筒状には限られず、角筒状であってもよい。また、外部導体12は、必ずしも筒状に限られず、棒状、直方体状等であってもよい。
【0153】
また、第1および第2実施形態において、コンデンサ13を構成する複数のコンデンサ素子18が2種類のコンデンサ素子18A,18Bを含むとして説明したが、3種類以上のコンデンサ素子を含んでもよい。
【0154】
また、第1および第2実施形態において、下キャップ83を上面板81bの下方に配置する構成に代えて、下キャップ83を上面板81bの上面81aに配置する構成が採用されていてもよい。
【0155】
また、下キャップ83を、接続端子84を介してコンデンサユニット7の他端部7fを接続する構成を例に挙げたが、コンデンサユニット7の他端部7fと下キャップ83とが接続端子84を介さずとも互いに結合可能な構成である場合には、接続端子84を省略して下キャップ83を他端部7fに直接装着するようにしてもよい。この場合、下キャップ83のみによってコンデンサユニット7の他端部7fが支持される。
【0156】
また、コンデンサユニット保持器81の上面81aにおける8つの支持部85の配置として、4つずつ2列に配列される態様以外の他の態様を採用することもできる。
【0157】
また、コンデンサユニット保持器81に設けられる支持部85の個数を、測定システム1に含まれるコンデンサユニット7の数(4つ)よりも多く設定したが、コンデンサユニット7と同数であってもよいし、コンデンサユニット7よりも少数としてもよい。コンデンサユニット7よりも少数とする場合には、測定システム1における電池20のインピーダンスの測定において、複数のコンデンサユニット保持器81を準備する必要がある。
【0158】
また、コンデンサユニット保持器81が4つのコンデンサユニット7を鉛直姿勢に保持するスタンド台として説明したが、コンデンサユニット保持器81がコンデンサユニット7を横向きに保持する構成であってもよい。
【0159】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0160】
2 :測定器
3 :測定治具
6 :コンデンサユニットシステム
7 :コンデンサユニット
7e :一端部(電池の接続側と反対側の端部)
7f :他端部
8 :コンデンサユニット保持装置
9 :終端抵抗ユニット
11 :中心導体
12 :外部導体
13 :コンデンサ
18 :コンデンサ素子
18A:第1コンデンサ素子
18B:第2コンデンサ素子
20 :電池
80 :上キャップ(第1キャップ)
80a:中心導体
80b:外部導体
81 :コンデンサユニット保持器
83 :下キャップ(第2キャップ)
83a:中心導体
83b:外部導体
84 :接続端子(第2キャップ)
91 :中心導体
92 :外部導体
93 :終端抵抗
202:測定器
E1 :第1電極リード(測定ヘッド)
E2 :第2電極リード(測定ヘッド)
T11:信号出力端子(電流端子)
T12:高側電圧計測端子(電圧端子)
T13:低側電圧計測端子(電圧端子)
T14:電流計測端子(電流端子)
T21:信号出力端子(電流端子)
T22:電圧計測端子(電圧端子)
T23:Null(ヌル)点検出端子(電圧端子)
T24:電流計測端子(電流端子)