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特開2024-66295ヒートシンク及びヒートシンク成形金型並びにヒートシンクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066295
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ヒートシンク及びヒートシンク成形金型並びにヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175781
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】302023194
【氏名又は名称】株式会社 寿原テクノス
(71)【出願人】
【識別番号】391050248
【氏名又は名称】株式会社メック
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】名取 正象
(72)【発明者】
【氏名】目黒 雅裕
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA14
(57)【要約】
【課題】フィンを離型させるための押出し座を不要とし、フィン同士の間を流れる冷却媒体の流通が押出し座によって妨げられることのない、ヒートシンクを得る。
【解決手段】ヒートシンク10は、ベース11と、放熱部12とを備えている。放熱部12は、ベース11から突出する複数のフィン14,15を有している。ベース11と複数のフィン14,15とは、金属材料により一体成形されている。複数のフィン14,15は、隣り合うフィン14,15の対向する一対の板面同士の間隔が徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となるように並んでいる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと前記ベースから突出する複数のフィンとが金属材料により一体成形され、
前記フィンは、当該フィンの突出方向と直交する方向に延びる板形状を有し、板面同士を対向させながら複数並んでいるヒートシンクであって、
前記複数のフィンは、隣り合うフィンの対向する板面同士の間隔が徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている、ヒートシンク。
【請求項2】
前記複数のフィンは、その突出方向の全域にわたり同一の厚さを有している、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記複数のフィンは、前記突出方向から見て、前記対向する板面同士が等脚台形の斜辺をなすように設けられている、請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記複数のフィンは、
前記フィン並び方向の両端に設けられた外側フィンと、
前記外側フィン同士の間に設けられた内側フィンと、
を有し、
前記外側フィンは前記内側フィンよりも厚く形成されている、請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項5】
ベースと前記ベースから突出する複数のフィンとが金属材料により一体成形されたヒートシンクを成形するヒートシンク成形金型であって、
前記複数のフィンを成形する一対のフィン成形部を備え、
前記一対のフィン成形部は、それぞれ、金型基部と、当該金型基部から突出し、突出先端に向かって徐々に細くなる複数の櫛片を有する櫛歯部とを有し、互いの前記櫛歯部が相対向した状態で、前記櫛片の突出方向及びその逆方向に移動可能に設けられており、
前記一対のフィン成形部が前記櫛片の突出方向に移動して、前記一対のフィン成形部のそれぞれの前記櫛歯部が組み合わさると、一方のフィン成形部が有する前記櫛片と、他方のフィン成形部が有する前記櫛片とがその並び方向において交互に並び、隣接する前記櫛片の間に複数のフィン成形間隙が形成される、ヒートシンク成形金型。
【請求項6】
前記一対のフィン成形部を第1フィン成形部及び第2フィン成形部とし、両フィン成形部の前記櫛歯部が組み合わさった場合に、前記櫛片の並び方向の両側から前記両フィン成形部を挟み込む第3フィン成形部及び第4フィン成形部を有し、
前記第1フィン成形部の前記櫛歯部と前記第2フィン成形部の前記櫛歯部とが組み合わさって形成される前記フィン成形間隙は内側フィン成形間隙であり、
前記第3フィン成形部及び前記第4フィン成形部はそれぞれフィン成形面を有し、前記櫛歯部同士の組み合わせ部分を一対の前記フィン成形面で挟み込み、前記櫛片の並び方向の両端にそれぞれ配置された櫛片と前記フィン成形面との間に外側フィン成形間隙が形成される、請求項5に記載のヒートシンク成形金型。
【請求項7】
金型基部と複数の櫛片を有する櫛歯部とを備えた一対のフィン成形部を、互いの前記櫛歯部が相対向するように配置し、前記一対のフィン成形部をそれぞれ前記櫛片の突出方向に移動させて型閉じし、前記一対のフィン成形部がそれぞれ有する前記櫛歯部を組み合わせ、一方のフィン成形部が有する前記櫛片と、他方のフィン成形部が有する前記櫛片とがその並び方向において交互に並び、隣接する前記櫛片の間に複数のフィン成形間隙を形成する型閉じ工程と、
前記フィン成形間隙に金属材料を導入する材料導入工程と、
前記一対のフィン成形部を前記櫛片の突出方向とは逆方向へ移動させ、前記フィン成形部同士を離間させて型開きする型開き工程と、
を備えたヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及びヒートシンク成形金型並びにヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やパワーLED等の発熱する電子部品には、その冷却のためにヒートシンクが設けられる。ヒートシンクは、アルミニウム、銅、マグネシウム、それらの合金等、熱伝導性が比較的高い金属材料の鋳造によって成形される。
【0003】
ヒートシンクは、ベースと放熱部とを備えている。放熱部は、ベースから突出する複数のフィンを有している(例えば特許文献1参照)。個々のフィンは板形状をなし、ベースに立設されている。複数のフィンはその板面を相対向させ、互いに平行をなすように並んでいる。特許文献1に示されたヒートシンクの構成例では、放熱部においてフィンの一部をなくし、ベース部の平面を露出させた部位が複数設けられている。このヒートシンクは、露出部位に押出ピンを押し当て成形品を離型させることによって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-340284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形品の押出しのため、フィンの一部をなくしてベースの平面を露出させた部位が設けられた場合、複数のフィンが設けられた領域でのフィンの根本側で、鋳造時に生じるバリの処理を行わなければならず、その除去作業が困難である。そこで、特許文献1では、露出部位に、フィンの厚みよりも大きい径を有する押出し座が設けられている。しかしながら、このような押出し座が存在すると、フィン同士の間を流れる冷却媒体の流通経路が狭くなる部分が存在することとなり、その流通が妨げられてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フィンを離型させるための押出し座を不要とし、フィン同士の間を流れる冷却媒体の流通が押出し座によって妨げられることのない、ヒートシンクを得ることを目的とする。また、このヒートシンクを鋳造するのに適したヒートシンク成形金型、及び押出し座のないヒートシンクを製造できるヒートシンクの製造方法を得ることも併せて、本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明のヒートシンクは、
ベースと前記ベースから突出する複数のフィンとが金属材料により一体成形され、
前記フィンは、当該フィンの突出方向と直交する方向に延びる板形状を有し、板面同士を対向させながら複数並んでいるヒートシンクであって、
前記複数のフィンは、隣り合うフィンの対向する板面同士の間隔が徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている。
【0008】
また、本発明のヒートシンク成形金型は、
ベースと前記ベースから突出する複数のフィンとが金属材料により一体成形されたヒートシンクを成形するヒートシンク成形金型であって、
前記複数のフィンを成形する一対のフィン成形部を備え、
前記一対のフィン成形部は、それぞれ、金型基部と、当該金型基部から突出し、突出先端に向かって徐々に細くなる複数の櫛片を有する櫛歯部とを有し、互いの前記櫛歯部が相対向した状態で、前記櫛片の突出方向及びその逆方向に移動可能に設けられており、
前記一対のフィン成形部が前記櫛片の突出方向に移動して、前記一対のフィン成形部のそれぞれの前記櫛歯部が組み合わさると、一方のフィン成形部が有する前記櫛片と、他方のフィン成形部が有する前記櫛片とがその並び方向において交互に並び、隣接する前記櫛片の間に複数のフィン成形間隙が形成される。
【0009】
さらに、本発明のヒートシンクの製造方法は、
金型基部と複数の櫛片を有する櫛歯部とを備えた一対のフィン成形部を、互いの前記櫛歯部が相対向するように配置し、前記一対のフィン成形部をそれぞれ前記櫛片の突出方向に移動させて型閉じし、前記一対のフィン成形部がそれぞれ有する前記櫛歯部を組み合わせ、一方のフィン成形部が有する前記櫛片と、他方のフィン成形部が有する前記櫛片とがその並び方向において交互に並び、隣接する前記櫛片の間に複数のフィン成形間隙を形成する型閉じ工程と、
前記フィン成形間隙に金属材料を導入する材料導入工程と、
前記一対のフィン成形部を前記櫛片の突出方向とは逆方向へ移動させ、前記フィン成形部同士を離間させて型開きする型開き工程と、
を備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒートシンクが有する複数のフィンは、次のようにして製造することができる。まず、複数の櫛片からなる櫛歯部を備えた一対のフィン成形部を準備し、それぞれの櫛片同士を組み合わせて一方のフィン成形部の櫛片と他方のフィン成形部の櫛片とが交互に並び、隣接する櫛片間にフィン成形間隙を形成する。次いで、当該間隙に金属材料を導入し、その後、一対のフィン成形部をそれぞれ逆方向に移動させて離間させる。一対のフィン成形部の櫛歯部がそれぞれ有する櫛片は、この方向に抜けるための抜き勾配を有し、突出先端に向かって徐々に細くなる台形状に形成されている。一対のフィン成形部がそれぞれ逆方向に抜けることでフィンが離型するため、隣り合うフィンの対向する板面同士の間隔が徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている複数のフィンが形成される。
【0011】
成形されたフィンから一対のフィン成形部が離型する際、その成形されたフィンを挟む櫛片はそれぞれ逆方向に移動する。成形されたフィンを挟む櫛片が同じフィン突出方向へ移動して離型させる従来の手法と比較し、フィンを挟む櫛片が逆方向へ移動して離型させる方が離型させやすく、そのため、フィンを離型させるための押出し座が不要となる。押出し座がない構成であれば、ヒートシンクが電子部品に取り付けられた場合に、フィン同士の間を流れる冷却媒体の流通が押出し座によって妨げられることがなく、冷却媒体をスムーズに流通させることができる。これにより、フィンに接する冷却媒体の入れ替わりがスムーズに行われ、フィンによる放熱効率を高めることができる。
【0012】
また、本発明のヒートシンク成形金型及びヒートシンクの製造方法では、型閉じにより、一対のフィン成形部の櫛歯部同士が組み合わさって複数のフィン成形間隙が形成され、当該間隙に金属材料を流し込む。その後、型開きをすれば、押出し座のない本発明のヒートシンクが得られる。そのため、本発明のヒートシンクを製造することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒートシンクを示す斜視図。
図2】ヒートシンクを示す平面図。
図3】ヒートシンクの製造に用いられる固定金型及び可動金型を示す概略図であり、(a)は型開き状態、(b)は型閉じ状態をそれぞれ示している。
図4】第1スライド金型を示す平面図。
図5】第2スライド金型を示す平面図。
図6】型閉じ時において、一対のフィン成形スライド金型及び一対の成形用突出部が組み合わさった状態を示す概略平断面図。
図7図6において櫛歯部同士が組み合わさった部分の拡大図。
図8】ヒートシンクを製造する際の型閉じ工程において、フィン成形スライド金型の動きを示す概略図であり、(a)は型閉じ前の状態、(b)は型閉じ状態をそれぞれ示している。
図9】ヒートシンクを製造する際の型開き工程において、フィン成形スライド金型の動きを示す概略図であり、(a)は型開き前の状態、(b)は型開き途中の状態をそれぞれ示している。
図10】型開き工程において、型開き位置における可動金型を示す概略図。
図11】型開き工程において、櫛片が抜ける様子を従来の製造方法と本実施形態の製造方法とで比較した概略図であり、(a)は従来の製造方法で櫛片が抜ける様子を示し、(b)は本実施形態の製造方法で櫛片が抜ける様子をそれぞれ示している。
図12】別形態のヒートシンクを示す斜視図。
図13】別形態のシートシンクを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(ヒートシンクの構成)
図1及び図2に示すように、ヒートシンク10はベース11と放熱部12とを備え、それらが同じ金属材料で一体成形されている。金属材料としては、アルミニウム、銅、マグネシウム、それらの合金等、熱伝導性が比較的高いものが用いられる。
【0016】
ヒートシンク10のベース11は板形状を有し、平面視において四角形状に形成されている。ベース11の四隅には、ヒートシンク10を電子部品等に取り付ける際の取付け孔13が形成されている。
【0017】
放熱部12は、ベース11が有する一対の板面のうち一方の板面(以下「上面」という)に設けられ、ベース11の上面から突出している。放熱部12は複数のフィン14,15を有し、個々のフィン14,15はベース11の上面に対して垂直に立設されている。各フィン14,15はその突出方向と直交する方向に延びる略四角形の板形状をなし、板面同士を相対向させて一方向に並んでいる。各フィン14,15は、ベース11よりも薄く形成されている。各フィン14,15は、その突出方向から見た平面視において、それが延びる方向の略全域にわたって切れ目なく設けられている。各フィン14,15は、その突出方向の全域にわたり同一の厚さを有している。
【0018】
複数のフィン14,15は、一対の外側フィン14と、複数の内側フィン15とを有している。一対の外側フィン14は、フィン14,15の突出方向からみた平面視においてフィン並び方向の両端にそれぞれ設けられている。内側フィン15は、一対の外側フィン14の間に複数設けられている。
【0019】
内側フィン15は、平面視において、その延びる方向の全域にわたり同一厚さを有している。隣り合う内側フィン15の対向する板面同士の間隔は徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている。隣り合う内側フィン15同士は、等脚台形の斜辺をなすように配置されている。
【0020】
各外側フィン14は、平面視において、一対の板面のうちの外面14aがフィン並び方向と直交している。これに対し、各外側フィン14の内面14bは、それと対向する内側フィン15の板面との間隔が徐々に広がるように形成されている。その間隔の広がり方向は、その隣で、隣り合う内側フィン15の対向する板面同士の間隔が広がる方向と逆となっている。平面視において、外側フィン14の内面14bと、それと対向する内側フィン15の板面とは、等脚台形の斜辺をなすように傾斜している。そのため、各外側フィン14は、それぞれ、平面視において直角台形をなし、外側フィン14の延びる方向において一端側から他端側まで連続して厚さが変化している。外側フィン14が延びる方向において、その一端の厚さは内側フィン15の厚さと同じであり、他端の厚さは内側フィン15よりも厚く形成されている。
【0021】
(ヒートシンクの製造方法)
上記ヒートシンク10は、ダイカスト等の技術を用いて鋳造により成形される。ヒートシンク10の鋳造には、図3に示すように、固定金型20と可動金型30とが用いられる。固定金型20及び可動金型30は、いずれもヒートシンク成形金型に相当する。
【0022】
ヒートシンク10の製造方法として、型閉じ工程と、材料導入工程と、型開き工程と、取出し工程とを有している。型閉じ工程では、固定金型20と可動金型30とを型閉じする。材料導入工程では、型閉じによって形成されたヒートシンク成形間隙53(後述する図7参照)に、金属材料M(図9(a)参照)を導入する。型開き工程では、可動金型30を固定金型20から離間させて型開きする。取出し工程では、成形品P(後述する図10参照)を取り出す。まず、固定金型20及び可動金型30について、図3乃至図7を用いて説明する。
【0023】
図3(a)に示すように、固定金型20は鋳造装置等に固定されている。固定金型20の分割面には、収容凹部21が設けられている。収容凹部21は、固定金型20に可動金型30が組み合わされて型閉じされた場合に、可動金型30の側の部材を収容する。
【0024】
可動金型30は固定金型20に対して接離する方向に移動可能に設けられ、型閉じ位置と型開き位置との範囲で移動する。図3(b)に示すように、型閉じ位置では可動金型30は固定金型20と組み合わされ、ヒートシンク10を成形するヒートシンク成形間隙53が形成される(後述する図7参照)。一方、型開き位置では、可動金型30は固定金型20から離間する。
【0025】
可動金型30は、一対のスライドコア31,32を有している。一対のスライドコア31,32は、図3(a)に示すように可動金型30の分割面に設けられている。一対のスライドコア31,32は、可動金型30の移動方向と直交する方向に沿って、可動金型30の移動に伴って互いに接離する方向へ移動する。分割面を平面視した場合に、一対のスライドコア31,32は同一直線上を移動する。
【0026】
一対のスライドコア31,32の移動方向における両者の間には、成形ブロック33が設けられている。成形ブロック33は可動金型30の一部であり、固定金型20に向けて突出している。成形ブロック33は、可動入子として可動金型30とは別に設けられ、可動金型30と一体化されていてもよい。成形ブロック33の突出端面33aは可動金型30の分割面を形成し、当該突出端面33aにはヒートシンク10のベース11を成形するキャビティ34が設けられている。一対のスライドコア31,32は、成形ブロック33を間に挟みながら両者同期して接離する。一対のスライドコア31,32を同期移動させる構成は任意であり、固定金型20に設けられたアンギュラピン(図示略)をスライドコア31,32に挿入する構成等、既知の構成が採用される。型閉じ位置では、各スライドコア31,32は固定金型20の収容凹部21に収容される。
【0027】
可動金型30は、成形品Pを取り出すための押出ピン35を有している。押出ピン35は、可動金型30の移動方向に沿って延びる棒状部材である。押出ピン35の先端は、成形ブロック33の突出端面33aに設けられたキャビティ34の底面に配置され、その位置を基準として、固定金型20の側に向けて突出する位置との間で移動可能に設けられている。
【0028】
可動金型30は、一対のフィン成形スライド金型36,37を有している。一対のフィン成形スライド金型36,37はフィン成形部に相当し、ヒートシンク10が有する複数のフィン14,15を成形する。図3(a)に示すように、一対のフィン成形スライド金型36,37は、成形ブロック33の突出端面33aの上で移動可能に設けられている。一対のフィン成形スライド金型36,37のうちの一方は一対のスライドコア31,32の一方に、他方は一対のスライドコア31,32の他方に取り付けられている。一対のスライドコア31,32が移動すると、それぞれに取り付けられたフィン成形スライド金型36,37がスライドコア31,32と一緒に移動する。そのため、可動金型30の移動に合わせて両フィン成形スライド金型36,37も互いに接離する方向に移動する。
【0029】
図4及び図5に示すように、一対のフィン成形スライド金型36,37は、第1スライド金型36と第2スライド金型37とで構成されている。第1スライド金型36は第1フィン成形部に、第2スライド金型37は第2フィン成形部にそれぞれ相当する。いずれも金型基部41,42と、櫛歯部43,44とを有している。
【0030】
櫛歯部43,44は、金型基部41,42の端面41a,42aから突出する複数の櫛片45,46を有している。櫛歯部43,44が設けられた金型基部41,42の端面41a,42aは、櫛片45,46の突出方向に対して垂直をなしている。また、可動金型30の分割面を平面視した場合に、櫛片45,46が並ぶ櫛片並び方向における端面41a,42aの幅Wは、第1スライド金型36と第2スライド金型37とで同じに設定されている。
【0031】
第1スライド金型36が有する櫛歯部43の各櫛片45は、すべて同じ寸法(上底、下底及び高さ寸法)の等脚台形をなしている。各櫛片45の櫛片並び方向におけるピッチも、すべて同じである。各櫛片45の高さ(紙面と直交する方向の寸法)は、成形するヒートシンク10が有するフィン高さと同じ寸法に設定されている。第2スライド金型37が有する櫛歯部44の各櫛片46は、いずれも第1スライド金型36の櫛片45と同じ寸法の等脚台形である。第2スライド金型37の各櫛片46のピッチ、高さについても、第1スライド金型36の櫛片45と同じに設定されている。ただ、一対のフィン成形スライド金型36,37のうち、一方が有する櫛片数は、他方が有する櫛片数よりも1つ少ない。この実施形態では、一例として、第1スライド金型36の櫛歯部43が有する櫛片数は5つであり、第2スライド金型37の櫛歯部44が有する櫛片数は6つである。
【0032】
一対のフィン成形スライド金型36,37は、可動金型30において次のように配置されている。図6に示すように、一対のフィン成形スライド金型36,37は、互いの櫛歯部43,44の先端が相対向するように配置されている。可動金型30の分割面を平面視した場合において、一対のフィン成形スライド金型36,37は、一対のスライドコア31,32が移動する直線と同じ一直線上を移動する。つまり、第1スライド金型36において、その櫛歯部43の櫛片45が突出する方向に延びる中央線L1(図4参照)と、第2スライド金型37において、その櫛歯部44の櫛片46が突出する方向に延びる中央線L2(図5参照)とが一致している。なお、中央線L1,L2における「中央」とは、櫛片並び方向の中央を意味する。一対のフィン成形スライド金型36,37は、この中央線L1,L2の方向に沿って互いに接離する方向へ、つまりそれぞれの櫛片45,46が突出する方向とその逆方向へ移動する。
【0033】
図7に拡大して示すように、第1スライド金型36が有する各櫛片45の中央線L3(図4参照)は、第2スライド金型37が有する櫛片46同士の間の中央線L6(図5参照)と一致している。また、第2スライド金型37が有する各櫛片46の中央線L4(図5参照)と、第1スライド金型36が有する櫛片45同士の間の中央線L5(図4参照)とが一致している。なお、図4には一つの櫛片45について中央線L3を示し、図5では櫛片46同士の間が複数ある中の一つについて中央線L6を示している。同様に、図4には一つの櫛片45について中央線L3を示し、図5では櫛片46同士の間が複数ある中の一つについて中央線L6を示している。同様に、図5では一つの櫛片46について中央線L4を示し、図4では櫛片45同士の間が複数ある中の一つについて中央線L5を示している。
【0034】
そして、型閉じされると、第1スライド金型36の櫛歯部43と第2スライド金型37の櫛歯部44とが、成形ブロック33の突出端面33aに形成されたキャビティ34の上で組み合わされる。この時、第2スライド金型37が有する櫛片46同士の間に、第1スライド金型36が有する一つの櫛片45が入り込んでいる。そのため、第1スライド金型36の櫛片45と第2スライド金型37の櫛片46とが、櫛片並び方向に沿って交互に並んでいる。また、第1スライド金型36の櫛片45の先端面45aは、第2スライド金型37における金型基部42の端面42aに当接し、第2スライド金型37の櫛片46の先端面46aは、第1スライド金型36における金型基部41の端面41aに当接している。
【0035】
このように櫛歯部43,44同士が組み合わされることにより、キャビティ34の上で、隣接する第1スライド金型36の櫛片45と第2スライド金型37の櫛片46との間には、複数の内側フィン成形間隙51が形成される。内側フィン成形間隙51は、フィン成形間隙に相当する。なお、外側フィン成形間隙52については後述する。複数の内側フィン成形間隙51のうち、隣り合う内側フィン成形間隙51は、分割面を平面視した場合において、等脚台形の斜辺に沿って切れ目なく延び、その延びる方向の全域にわたって同一厚さを有している。
【0036】
ちなみに、図3(b)は、櫛歯部43,44同士が互いに組み合わさった第1スライド金型36及び第2スライド金型37を、その側方から見た状態を示している。図3(b)に示すように、型閉じ時には、第1スライド金型36及び第2スライド金型37は固定金型20の収容凹部21に収容されている。
【0037】
図6に戻り、ヒートシンク10が有する複数のフィン14,15を成形するための成形部として、一対のフィン成形スライド金型36,37に加え、一対の成形用突出部22,23が用いられる。一対の成形用突出部22,23は、固定金型20の一部として設けられている(図3(a)参照)。なお、一対の成形用突出部22,23が固定金型20とは別で設けられた固定入子の一部として構成され、固定入子が固定金型20と一体化されていてもよい。
【0038】
一対の成形用突出部22,23は、型閉じ時において、組み合わさった櫛歯部43,44の櫛片並び方向の両側方にそれぞれ配置される。一対の成形用突出部22,23は、第1突出部22と第2突出部23とで構成されている。なお、図3(a)では、第1突出部22だけが示されている。型開きにより可動金型30が固定金型20から離間すると、一対の成形用突出部22,23は、一対のフィン成形スライド金型36,37から離れて固定金型20の側に残る。なお、第1突出部22は第3フィン成形部に、第2突出部23は第4フィン成形部に相当する。
【0039】
図3(a)、図6及び図7に示すように、第1突出部22及び第2突出部23は、それぞれフィン成形面24,25を有している。いずれのフィン成形面24,25も、その高さ(図6及び図7の紙面と直交する方向の寸法)は、フィン成形スライド金型36,37が有する櫛片45,46の高さと同じに設定されている。図6に示す平面視において、各フィン成形面24,25はフィン成形スライド金型36,37の移動方向と平行をなしている。各フィン成形面24,25は、ヒートシンク10の放熱部12の両外面を成形する。
【0040】
型閉じ時において、各フィン成形面24,25は、成形ブロック33の突出端面33aからその突出端面33aに対して垂直に立ち上がる。図6及び図7に示すように、一対のフィン成形スライド金型36,37の櫛歯部43,44同士が組み合わさった部分は、両フィン成形面24,25によって挟み込まれる。各フィン成形面24,25は、第2スライド金型37の櫛歯部44が有する複数の櫛片46のうち、櫛片並び方向の両端に設けられた櫛片46とそれぞれ隣接する。隣り合う櫛片46とフィン成形面24,25と間には、外側フィン成形間隙52が形成される。外側フィン成形間隙52は、櫛片46の斜辺とフィン成形面24,25とで形成される。そのため、外側フィン成形間隙52は、長尺の四角形状をなす内側フィン成形間隙51と異なり、直角台形状をなし、その延びる方向に沿って厚さが連続して変わる。
【0041】
このように、型閉じ時には、成形ブロック33の突出端面33aに形成されたキャビティ34と、外側フィン成形間隙52と、内側フィン成形間隙51とで、ヒートシンク10を成形するヒートシンク成形間隙53が形成される。また、組み合わさった第1スライド金型36の櫛歯部43及び第2スライド金型37の櫛歯部44は、成形ブロック33の突出端面33aからの立ち上がり方向における上端面が、固定金型20の収容凹部21の底面21a(図3(a)参照)と全面的に当接する。これにより、外側フィン成形間隙52及び内側フィン成形間隙51は、前記立ち上がり方向の上端が収容凹部21の底面21aで閉塞される。
【0042】
以上説明した固定金型20及び可動金型30を使用してヒートシンク10を製造する方法について、図8乃至図10を参照しながら説明する。なお、図8及び図9では、フィン成形スライド金型36,37や成形用突出部22,23の図示が簡略化され、櫛片45,46の数も減らされている。
【0043】
型閉じ工程では、型開き位置に配置されて固定金型20から離間している可動金型30を固定金型20に接近する方向へ移動させ、固定金型20と組み合わせて型閉じする。図8(a)に示すように、互いに離間していた一対のフィン成形スライド金型36,37は、可動金型30の移動に伴って、一対の成形用突出部22,23が有するフィン成形面24,25同士の間を、互いに接近する方向へ同期移動する。型閉じ時には、図8(b)に示すように、第1スライド金型36の櫛歯部43と、第2スライド金型37の櫛歯部44とがキャビティ34の上で組み合わされ、ヒートシンク成形間隙53が形成される。この型閉じ工程では、押出ピン35の先端は固定金型20の側へ突出しない基準位置で保持されている。
【0044】
続く材料導入工程では、ヒートシンク成形間隙53に溶融させた金属材料Mを導入する。これにより、図9(a)に示すように、ヒートシンク成形間隙53に金属材料Mが充填される。ヒートシンク成形間隙53のうちキャビティ34に金属材料Mが充填されることにより、ヒートシンク10のベース11が成形される。ヒートシンク成形間隙53のうち外側フィン成形間隙52に金属材料Mが充填されることにより、外側フィン14が成形される。また、内側フィン成形間隙51に金属材料Mが充填されることにより、内側フィン15が成形される。
【0045】
次に、型開き工程では、固定金型20と組み合わされている可動金型30を、固定金型20から離間する方向へ移動させて型開きする。図9(b)及び図10に示すように、櫛歯部43,44同士が組み合わされていた一対のフィン成形スライド金型36,37は、可動金型30の移動に伴ってスライドコア31,32と共に、互いに離間する方向へ移動する。これにより、一対の成形用突出部22,23及び一対のフィン成形スライド金型36,37が成形品Pから離間し、成形ブロック33の突出端面33aには成形品Pが残される。
【0046】
その後、図10に二点鎖線で示すように、押出ピン35の先端をキャビティ34の底面から突出させると成形品Pがキャビティ34から取り出され、本実施形態の構成を有するヒートシンク10が得られる。
【0047】
(本実施形態によって得られる効果)
以上のとおり説明した本実施形態のヒートシンク10、当該ヒートシンク10の製造方法、当該製造方法に用いられる固定金型20及び可動金型30によれば、次の効果を得ることができる。
【0048】
(1)ヒートシンク10はその放熱部12が複数のフィン14,15によって形成され、個々のフィン14,15はその延びる方向に沿って切れ目がない。特に、外側フィン14同士の間に複数又は多数設けられる内側フィン15については、その延びる方向に沿って同じ厚さを有している。つまり、ヒートシンク10には押出し座が設けられていない。
そのため、ヒートシンク10が電子部品等に取り付けられた場合に、フィン14,15同士の間を流れる冷却媒体の流通が押出し座の存在によって妨げられることなく、スムーズに冷却媒体を流通させることができる。これにより、フィン14,15に接する冷却媒体の入れ替わりがスムーズに行われ、フィン14,15による放熱効率を高めることができる。
【0049】
(2)外側フィン14及び内側フィン15は、その突出方向の全域にわたり同一の厚さを有しているため、フィン14,15がその基端側ほど幅広となる台形状をなす場合と比べ、フィン14,15同士の間の隙間をより狭くすることができる。フィン14,15同士の間の隙間を狭くできれば、放熱部12により多くのフィン14,15を設けることができる。
【0050】
(3)ヒートシンク10が有する複数のフィン14,15には、一対の外側フィン14と、その間に設けられた内側フィン15とがある。外側フィン14は、平面視において直角台形をなし、その延びる方向において一端は内側フィン15よりも厚く形成されている。放熱部12の最も外側に設けられた外側フィン14は内側フィン15よりも外力が作用しやすいため、その外側フィン14を内側フィン15よりも厚く形成することにより、放熱部12の強度を高めることができる。
【0051】
(4)外側フィン14の内面14bと、それと隣り合う内側フィン15の対向面との間隔、内側フィン15の対向する板面同士の間隔は、いずれも徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている。そして、このヒートシンク10には押出し座が設けられていない。
【0052】
このようなヒートシンク10を製造する場合、複数のフィン14,15の成形には、固定金型20に設けられた一対の突出部22,23と、可動金型30に設けられた一対のフィン成形スライド金型36,37とが用いられる。一対のフィン成形スライド金型36,37は、それぞれ複数の櫛片45,46を有する櫛歯部43,44を備え、互いの櫛歯部43,44を相対向させて接離する方向に移動可能に設けられている。型閉じによって両者の櫛歯部43,44が組み合わさると、一方の櫛片45と他方の櫛片46とが交互に並び、隣り合う櫛片45,46同士の間に内側フィン成形間隙51が形成される。型開きの際は、フィン成形スライド金型36,37の移動により、平面視において成形品Pのフィン並び方向と直交する方向に櫛片45,46が抜ける。
【0053】
一対のフィン成形スライド金型36,37の櫛歯部43,44がそれぞれ有する櫛片45,46は、この方向に抜けるための抜き勾配を有し、突出先端に向かって徐々に細くなる等脚台形に形成されている。一対のフィン成形スライド金型36,37がそれぞれ逆方向に抜けることでフィン14,15が離型するため、隣り合うフィン14,15の対向する板面同士の間隔が徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となっている複数のフィン14,15が形成される。
【0054】
ところで、図11(a)に示すように、従来のヒートシンク1が有する複数のフィン2は、一つのフィン成形金型3を用いて成形されていた。従来のフィン成形金型3は複数の櫛片4を備え、ベース5を成形するキャビティ6に櫛片4の先端を向け、キャビティ6に向けて接離する方向に移動可能に設けられていた。そのため、型開き時は、フィン成形金型3を矢印で図示したフィン突出方向に移動させることになる。
【0055】
この従来のフィン成形金型3及びそれを用いた製造方法では、一方向に移動するフィン成形金型3に成形されたヒートシンク1が追従して離型しづらい。そのため、成形されたヒートシンク1をフィン成形金型3から離型させるべく、押出し座(図示略)が設けられてそこに押出ピンが押し当てられる。押出し座(図示略)は、その厚みがフィン2の厚みよりも大きいため、フィン2同士の間の隙間を流れる冷却媒体の流通を妨げる原因となる。
【0056】
また、成形された個々のフィン2は、図11(a)に示すように、型開き時に、その両側を挟む櫛片4によってフィン突出方向に引っ張られるため、フィン2の突出端部が折れやすい。特に、フィン2の厚さを薄くするとその問題は顕著となるため、フィン2を薄くしづらいという問題があった。
【0057】
さらに、フィン2の突出端部が仮に折れてしまうと、固まった金属材料Mの一部が櫛片4間に残る。その場合、櫛片4のピッチが狭いと櫛片4間に残った金属材料Mの一部を除去しづらいため、フィン2を成形するための空間である櫛片4の間の隙間を狭くしづらい。それに加え、従前のフィン成形金型3はフィン突出方向に移動するため、従来のフィン2にはその突出方向に抜き勾配を形成する必要がある。この場合、従来のフィン2はその基端ほど幅広となるため、その点でもフィン2同士の隙間を狭くしづらい。その結果、ベース5に設けられるフィン2の数を増やしづらいという問題もあった。
【0058】
これに対し、本実施形態の製造方法によれば、フィン14,15の成形には、前述したように、互いに接離する方向へ移動する一対のフィン成形スライド金型36,37が用いられる。そして、第1スライド金型36が有する櫛片45と、第2スライド金型37が有する櫛片46とで内側フィン成形間隙51が形成される。型開き時には、図11(b)に示すように、個々の内側フィン15を挟む櫛片45,46がそれぞれ別方向に移動して抜けるため、個々の内側フィン15の両面に作用する力の方向も逆方向となる。
【0059】
内側フィン15を挟む櫛片45,46がそれぞれ逆方向に移動することで、内側フィン15が櫛片45,46から離型するため、従来のフィン成形金型3のように一方向のみ移動する場合と比較して、離型させやすい。そのため、成形品Pのフィン14,15を離型させるための押出し座を放熱部12に設ける必要がない。これにより、フィン14,15の対向する板面の間隔は徐々に広がり、その広がる方向がフィン並び方向において交互に逆となり、押出し座も設けられていない。つまり、本実施形態のヒートシンク10を製造することに適している。それに加え、型開き時に、個々の内側フィン15の両側に作用する力の方向も逆方向となるため、櫛片45,46が抜ける際に内側フィン15の各端部が折れづらい。そのため、従来の製造方法を用いた場合よりも、内側フィン15の厚さを薄くすることができる。
【0060】
また、本実施形態の製造方法によれば、フィン14,15の突出方向に櫛片45,46を抜くための抜き勾配が形成されず、その突出方向の全域で同一厚さを有するフィン14,15を成形できる。そのため、フィン14,15同士の間の隙間をより狭くして、より多くのフィン14,15を設けることができる。このように、フィン14,15の厚さをより薄くし、かつより多くのフィン14,15を設けることが可能なため、放熱部12の表面積を増やしてヒートシンク10の冷却性能を高めることができる。そして、フィン14,15の突出高さを低くしても、少なくとも従来と同程度の冷却性能を確保できることから、冷却性能を維持しながらヒートシンク10を小型化かつ軽量化することができる。さらに、フィン14,15の突出方向に抜き勾配が形成されないため、フィン14,15のピッチ設定の自由度が高まる。これにより、冷却性能、大きさ、重さ等を必要に応じて変更し、ヒートシンク10のバリエーションを増し、需要者の様々な要求に応えることができる。
【0061】
その他、フィン14,15同士の間隔を狭くし、より多くのフィン14,15が設けられたヒートシンク10を製造する場合でも、個々のフィン14,15を成形するフィン成形間隙51,52は、一対のフィン成形スライド金型36,37の櫛片45,46同士が組み合わさって形成される。そのため、各フィン成形スライド金型36,37の櫛歯部43,44では、櫛片45,46同士のピッチが広くなり、櫛片45,46の加工が容易となる。櫛歯部43,44における櫛片45,46は、同じ寸法に設定された等脚台形をなしている。この点においても、櫛片45,46の形状が個々に異なっていたり、異なる角度の斜辺を有する台形状に形成したりする場合と比べ、櫛片45,46の加工が容易となる。
【0062】
また、型開きにおいて櫛片45,46を抜いた際に、フィン14,15の端部に折れが生じた場合でも、櫛片45,46同士のピッチが広いことから、櫛片45,46同士の間に残った金属材料Mを取り除きやすい。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態のヒートシンク10やその製造方法に限定されるものではなく、例えば次のような形態としてもよい。
【0064】
(a)外側フィン14を省略し、内側フィン15に相当するものだけで放熱部12が構成されていてもよい。この場合、放熱部12の両外側に配置されるものは、それよりも内側で隣接するものと等脚台形の斜辺をなす。
【0065】
(b)放熱部12を構成する複数のフィン14,15について、その突出高さを統一させる必要はなく、所定の領域に設けられたフィン14,15の突出高さを他と異ならせてもよい。また、フィン14,15同士の間隔についても統一させる必要はなく、他と異なる間隔を有する箇所があってもよい。さらに、隣り合う内側フィン15同士は、その突出方向から見た平面視において、両者によって形成される台形の斜辺の角度が異なっていてもよい。同様に、外側フィン14の内面14bと、外側フィン14と隣接する内側フィン15とで形成される台形の斜辺の角度も異なっていてもよい。
【0066】
(c)可動金型30の移動方向は、上下方向であっても、水平方向であってもよい。
【0067】
(d)可動金型30に設けられた一対のスライドコア31,32及び一対のフィン成形スライド金型36,37が、固定金型20の側に設けられた構成であってもよい。この場合、固定金型20に設けられた収容凹部21及び一対の成形用突出部22,23が可動金型30の側に設けられる。
【0068】
(e)一対の成形用突出部22,23が、固定金型20の側ではなく、可動金型30の側に設けられていてもよい。また、一対の成形用突出部22,23も、一対のフィン成形スライド金型36,37のように、スライド可能に設けられた構成であってもよい。この場合、一対の成形用突出部22,23は、成形ブロック33の突出端面33aの上で、一対のフィン成形スライド金型36,37の移動方向と直交する方向にスライドさせ、型閉じ時に、外側フィン成形間隙52が形成される。
【0069】
(f)一対のフィン成形スライド金型36,37において、櫛歯部43,44が有する複数の櫛片45,46すべてを同じに形成することなく、斜辺の傾きが異なる櫛片45,46が設けられていてもよい。櫛片45,46の構成は、一対のフィン成形スライド金型36,37を用いて製造しようとするヒートシンク10について、それが有するフィン14,15の設計に応じて変更される。
【0070】
このように櫛片45,46の構成を変更したことにより、フィン14,15の平面視における厚みが確保される場合は、当該フィン14,15の突出端面に押出ピンを当てて成形品Pを取り出すような金型構成を採用してもよい。
【0071】
(g)外側フィン14及び内側フィン15を、その突出方向において同一厚さとするのではなく、突出先端からベース11の側(突出基端側)ほど幅広となる台形状をなすように形成してもよい。
【0072】
(h)図12及び図13に示すように、フィン14,15同士の間に横リブ16が設けられていてもよい。横リブ16は、隣り合うフィン14,15の対向する板面同士が狭くなっている側の端部において、フィン突出方向の中央部に1つ設けられている。横リブ16は、フィン並び方向からみて、板面同士が広くなっている側に頂点を向けた三角形状をなしている。
【0073】
横リブ16が設けられることにより、隣接するフィン14,15が横リブ16によって連結されるため、フィン14,15が薄くなってもその強度を向上させることができる。また、横リブ16を成形するための間隙によってフィン成形間隙51,52同士がつながるため、金属材料Mを充填する際の湯流れ性が向上する。さらに、横リブ16の存在によってその部分では冷却媒体の通路が塞がれるものの、横リブ16は、板面同士が広くなっている側に頂点を向けた三角形状となっている。そのため、冷却媒体の流れの妨げの程度を低くすることができる。
【0074】
なお、横リブ16のフィン並び方向から見た形状は任意であり、三角形状でなくても四角形状、丸や楕円などあってもよい。フィン突出方向における配置も任意であり、複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…ヒートシンク、11…ベース、14…外側フィン、15…内側フィン、20…固定金型(ヒートシンク成形金型)、22…第1突出部(第3フィン成形部)、23…第2突出部(第4フィン成形部)、30…可動金型(ヒートシンク成形金型)、36…第1スライド金型(第1フィン成形部)、37…第2スライド金型(第2フィン成形部)、41,42…金型基部、43,44…櫛歯部、45,46…櫛片、51…内側フィン成形間隙、52…外側フィン成形間隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13