(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000663
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231226BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 451
B41J2/14 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099490
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】平 英明
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA24
2C056EB07
2C056EB39
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C057AF34
2C057AF61
2C057AG45
2C057AG91
2C057AL13
2C057AN01
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】レイアウトの向上や低コスト化を図った上で、汎用性に優れた液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係る液体噴射記録ヘッドは、第1方向に交差して配置された第1面と、第1面に形成された第1導体部と、第1方向に交差するとともに、第1面に対して間隔をあけて配置された第2面と、第2面に形成された第2導体部と、第1導体部及び第2導体部間での前記液体の介在を検出する検出機構と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
第1方向に交差して配置された第1面と、
前記第1面に形成された第1導体部と、
前記第1方向に交差するとともに、前記第1面に対して間隔をあけて配置された第2面と、
前記第2面に形成された第2導体部と、
前記第1導体部及び前記第2導体部間での前記液体の介在を検出する検出機構と、を備えている液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記検出機構は、前記第1導体部及び前記第2導体部間が短絡したことに基づいて、前記第1導体部及び前記第2導体部間に前記液体が介在していることを判定する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記検出機構は、前記第1導体部及び前記第2導体部間の静電容量が基準値に対して所定量変化した場合に、前記第1導体部及び前記第2導体部に前記液体が介在していることを判定する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルが、駆動壁を挟んで前記第1方向で交互に形成されたアクチュエータプレートを備え、
前記第1面は、前記駆動壁のうち前記噴射チャネルの内面を形成する部分であり、
前記第2面は、前記駆動壁のうち前記非噴射チャネルの内面を形成するとともに、前記第1方向において前記第1面と反対側を向く部分である請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記噴射チャネル及び前記非噴射チャネルの延在方向を第2方向とすると、
前記アクチュエータプレートは、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向を分極方向とする圧電材料であり、
前記駆動壁は、前記第1導体部及び前記第2導体部間で電位差を発生させることで、前記噴射チャネルの容積を拡大又は縮小させる方向に変形可能である請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記液体が充填される噴射チャネルが前記第1方向で並んで形成されたチャネル列、及び前記チャネル列に対して前記第1方向の少なくとも一方側に形成されたダミーチャネルを有するアクチュエータプレートを備え、
前記第1面及び前記第2面の少なくとも何れか一方の面は、前記ダミーチャネルの内面を構成している請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第1面を有する第1部材と、
前記第2面を有し、前記第1部材に対して前記第1方向で向かい合って配置された第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材同士を接合させる接着層と、を備えている請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1部材は、前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートであり、
前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記第2部材と向かい合う面であり、
前記噴射チャネルの内面には、駆動電極が形成され、
前記第1面及び前記噴射チャネルの内面には、前記第1導体部及び前記駆動電極を覆うとともに、絶縁性を有する保護膜が設けられている請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第1部材は、前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートであり、
前記第2部材は、前記アクチュエータプレートに対して前記第1方向に積層されて前記噴射チャネルを閉塞するカバープレートを含み、
前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記カバープレートに向かい合うカバー対向面を含み、
前記第2面は、前記カバープレートのうち前記アクチュエータプレートに向かい合う第1対向面を含んでいる請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記第2部材は、前記噴射チャネル内に連通する噴射孔を有し、前記第1部材に向かい合って配置された噴射孔プレートを含み、
前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射孔プレートに向かい合う噴射孔対向面を含み、
前記第2面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレートに向かい合う第2対向面を含んでいる請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記噴射孔プレートは、導電性を有し、
前記第2導体部は、前記噴射孔プレートとして一体に形成されている請求項10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネル内に連通する噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートに向かい合って配置された噴射孔プレートと、を備え、
前記噴射孔プレートは、絶縁性を有する樹脂材料により形成され、
前記第1面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレート側を向く面であり、
前記第2面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレートとは反対側を向く面である請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドでは、圧電体等の駆動により圧力室の容積を変化させることで、圧力室内に収容されるインクがノズル孔を通じて吐出される。ノズル孔から吐出されたインクは、被記録媒体に着弾することで、被記録媒体に印刷情報が記録される。
【0003】
下記特許文献1には、被記録媒体を検出する光学センサを利用して、インクジェットヘッドにおけるインクの漏洩を検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、インクジェットヘッドに光学センサが搭載されていることが前提となるため、汎用性が低いという課題がある。
被記録媒体の検出とインク漏洩の検出との双方の機能を一つの光学センサによって満足させるためには、光学センサの取付箇所に制限が生じる等、レイアウトの自由度が低いという課題がある。
【0006】
本開示は、レイアウトの向上や低コスト化を図った上で、汎用性に優れた液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、第1方向に交差して配置された第1面と、前記第1面に形成された第1導体部と、前記第1方向に交差するとともに、前記第1面に対して間隔をあけて配置された第2面と、前記第2面に形成された第2導体部と、前記第1導体部及び前記第2導体部間での前記液体の介在を検出する検出機構と、を備えている。
【0008】
本態様によれば、第1導体部及び第2導体部間での液体の介在を検出機構によって検出することで、第1面と第2面との間に液体が侵入していることを判定できる。これにより、所望の位置での液体の漏洩を正確に検出し、信頼性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
特に、従来のように光学センサを用いて液体を漏洩する場合と異なり、液体噴射ヘッドに光学センサを搭載する必要がないので、低コスト化が可能になるとともに、汎用性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。また、被記録媒体の検出と液体の検出とを1つの光学センサで兼用する場合に比べて、導体部のレイアウトの自由度を向上させることができる。
しかも、光学センサで液体を検出する場合には、光学センサの検出範囲に一定程度の液体が存在していることが必要となる。そのため、光学センサにより液体が検出された時点では、既に液体噴射ヘッドが故障している可能性がある。これに対して、本態様では、第1導体部及び第2導体部間に液体が介在したことによる電気的な変化を検出することで、電気的な変化に基づき液体噴射ヘッドの状態(例えば正常状態や故障の予兆段階、故障発生段階)を把握し易い。よって、故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前に液体噴射ヘッドを交換する等の対処が可能になる。その結果、液体噴射ヘッドの不具合が印刷品質に及ぶことを抑制できる。
【0009】
(2)上記(1)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記検出機構は、前記第1導体部及び前記第2導体部間が短絡したことに基づいて、前記第1導体部及び前記第2導体部間に前記液体が介在していることを判定することが好ましい。
従来のように光学センサを用いた場合には、液体の付着位置によっては過剰に反応し、微小量の液体であっても漏洩として誤検出してしまう可能性がある。これに対し、本態様では、液体の噴射時に発生するミスト等、液体噴射ヘッドの不具合が生じない程度の微小量の液体によって、液体が漏洩していると誤検出することを抑制できる。
【0010】
(3)上記(1)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記検出機構は、前記第1導体部及び前記第2導体部間の静電容量が基準値に対して所定量変化した場合に、前記第1導体部及び前記第2導体部に前記液体が介在していることを判定することが好ましい。
従来のように光学センサを用いた場合には、液体の付着位置によっては過剰に反応し、微小量の液体であっても漏洩として誤検出してしまう可能性がある。これに対し、本態様では、液体の噴射時に発生するミスト等、液体噴射ヘッドの不具合が生じない程度の微小量の液体によって、液体が漏洩していると誤検出することを抑制できる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルが、駆動壁を挟んで前記第1方向で交互に形成されたアクチュエータプレートを備え、前記第1面は、前記駆動壁のうち前記噴射チャネルの内面を形成する部分であり、前記第2面は、前記駆動壁のうち前記非噴射チャネルの内面を形成するとともに、前記第1方向において前記第1面と反対側を向く部分であることが好ましい。
本態様によれば、噴射チャネル及び非噴射チャネル間での液体の漏洩を速やかに検出することができる。
【0012】
(5)上記(4)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記噴射チャネル及び前記非噴射チャネルの延在方向を第2方向とすると、前記アクチュエータプレートは、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向を分極方向とする圧電材料であり、前記駆動壁は、前記第1導体部及び前記第2導体部間で電位差を発生させることで、前記噴射チャネルの容積を拡大又は縮小させる方向に変形可能であることが好ましい。
本態様によれば、第1導体部及び第2導体部を駆動壁の駆動電極として機能させることができる。これにより、導体部と駆動電極とを別々に形成する場合に比べて電極パターンの簡素化を図ることができる。
【0013】
(6)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記液体が充填される噴射チャネルが前記第1方向で並んで形成されたチャネル列、及び前記チャネル列に対して前記第1方向の少なくとも一方側に形成されたダミーチャネルを有するアクチュエータプレートを備え、前記第1面及び前記第2面の少なくとも何れか一方の面は、前記ダミーチャネルの内面を構成していることが好ましい。
本態様によれば、ダミーチャネルには駆動電極等が形成されていないため、ダミーチャネルの内面に第1導体部及び第2導体部を形成することで、各導体部のレイアウト自由度等が向上し、低コスト化や製造工程の効率化を図ることができる。
【0014】
(7)上記(1)から(6)の何れかの態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第1面を有する第1部材と、前記第2面を有し、前記第1部材に対して前記第1方向で向かい合って配置された第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材同士を接合させる接着層と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、接着層と第1面との界面、接着層と第2面との界面若しくは接着層内に浸透した液体を検出機構によって検出することができる。これにより、例えば第1部材又は第2部材が液体によって接着層から剥がされることに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前に液体噴射ヘッドを交換する等の対処が可能になる。
【0015】
(8)上記(7)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第1部材は、前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートであり、前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記第2部材と向かい合う面であり、前記噴射チャネルの内面には、駆動電極が形成され、前記第1面及び前記噴射チャネルの内面には、前記第1導体部及び前記駆動電極を覆うとともに、絶縁性を有する保護膜が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、保護膜とアクチュエータプレートとの界面、若しくはクラックやピンホール等を通じて保護膜内に侵入した液体を検出機構によって検出することができる。これにより、例えば保護膜による駆動電極の絶縁性が失われることに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前に液体噴射ヘッドを交換する等の対処が可能になる。
【0016】
(9)上記(7)又は(8)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第1部材は、前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートであり、前記第2部材は、前記アクチュエータプレートに対して前記第1方向に積層されて前記噴射チャネルを閉塞するカバープレートを含み、前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記カバープレートに向かい合うカバー対向面を含み、前記第2面は、前記カバープレートのうち前記アクチュエータプレートに向かい合う第1対向面を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、接着層とアクチュエータプレート(カバー対向面)との界面、接着層とカバープレート(第1対向面)との界面若しくは接着層内に浸透した液体を検出機構によって検出することができる。また、アクチュエータプレートのうちカバー対向面上に保護膜が形成されている場合には、保護膜と接着層との界面若しくはクラックやピンホール等を通じて保護膜内に侵入した液体を検出機構によって検出することができる。これにより、例えば第1部材又は第2部材が液体によって接着層から剥がされることに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前に液体噴射ヘッドを交換する等の対処が可能になる。
【0017】
(10)上記(8)又は(9)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第2部材は、前記噴射チャネル内に連通する噴射孔を有し、前記第1部材に向かい合って配置された噴射孔プレートを含み、前記第1面は、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射孔プレートに向かい合う噴射孔対向面を含み、前記第2面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレートに向かい合う第2対向面を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、接着層とアクチュエータプレート(噴射孔対向面)との界面、接着層と噴射孔プレート(第2対向面)との界面若しくは接着層内に浸透した液体を検出機構によって検出することができる。また、アクチュエータプレートのうち噴射孔対向面上に保護膜が形成されている場合には、保護膜と接着層との界面若しくはクラックやピンホール等を通じて保護膜内に侵入した液体を検出機構によって検出することができる。これにより、例えばアクチュエータプレート又は噴射孔プレートが液体によって接着層から剥がされることに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前に液体噴射ヘッドを交換する等の対処が可能になる。
【0018】
(11)上記(10)の態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記噴射孔プレートは、導電性を有し、前記第2導体部は、前記噴射孔プレートとして一体に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、噴射孔プレート自体が導電性を有する材料により形成されることで、噴射孔対向面に別体の第2導体部を形成する必要がない。そのため、製造効率の向上を図ることができる。
【0019】
(12)上記(1)から(6)の何れかの態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記液体が充填される噴射チャネルが形成されたアクチュエータプレートと、前記噴射チャネル内に連通する噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートに向かい合って配置された噴射孔プレートと、を備え、前記噴射孔プレートは、絶縁性を有する樹脂材料により形成され、前記第1面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレート側を向く面であり、前記第2面は、前記噴射孔プレートのうち前記アクチュエータプレートとは反対側を向く面であることが好ましい。
本態様によれば、噴射孔プレートに浸透した液体を検出機構によって検出することができる。
【0020】
(13)本開示の態様に係る液体噴射記録装置は、(1)から(12)の何れかの態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、レイアウトの向上や低コスト化を図った上で、汎用性に優れた液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、レイアウトの向上や低コスト化を図った上で、汎用性に優れた液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に対応するヘッドチップの断面図である。
【
図5】
図3のV-V線に対応するヘッドチップの断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る漏洩検出機構のブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る漏洩検出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】第1実施形態の変形例に係るヘッドチップの断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【
図11】第2実施形態の変形例に係るヘッドチップの断面図である。
【
図12】第3実施形態に係るヘッドチップについて、ノズルプレートを取り外した状態の底面図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に対応する断面図である。
【
図14】第3実施形態の変形例に係るヘッドチップについて、
図13に対応する断面図である。
【
図15】第4実施形態に係るヘッドチップについて、
図13に対応する断面図である。
【
図16】第5実施形態に係るヘッドチップについて、
図13に対応する断面図である。
【
図17】第5実施形態の変形例に係るヘッドチップについて、
図13に対応する断面図である。
【
図18】第6実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図22】
図21のXXII-XXII線に対応する断面図である。
【
図23】第8実施形態に係るヘッドチップについて、
図22に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1は、第1実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インク供給機構4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、走査機構6と、を備えている。
【0025】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構6の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本明細書において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0026】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インク供給機構4は、インクが収容されたインクタンク13と、インクタンク13とインクジェットヘッド5とを接続するインク配管14と、を備えている。インクタンク13には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク13に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0027】
走査機構6は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構6は、Y方向に延びるガイドレール15と、ガイドレール15に移動可能に支持されたキャリッジ16と、を備えている。図示の例において、一つのキャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド5がY方向に並んで搭載されている。
【0028】
<インクジェットヘッド5>
図2は、インクジェットヘッド5の斜視図である。以下の説明では一のインクジェットヘッド5を例にしてインクジェットヘッド5の詳細について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ16に固定されるベースフレーム21と、ベースフレーム21に固定されたヘッドチップ22と、インク供給機構4(インク配管14)及びヘッドチップ22間を接続するインク供給部23と、インクジェットヘッド5を統括的に制御する制御部24と、を備えている。
【0029】
<ヘッドチップ22>
図3は、第1実施形態に係るヘッドチップ22の分解斜視図である。
図3に示すヘッドチップ22は、後述する吐出チャネル41における延在方向(Z方向)の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプである。具体的に、ヘッドチップ22は、アクチュエータプレート31と、カバープレート32と、ノズルプレート(噴射孔プレート)33と、を備えている。
【0030】
アクチュエータプレート31は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されている。アクチュエータプレート31の分極方向は、例えばY方向の全体で一方向に設定されている(いわゆる、モノポールタイプ)。但し、アクチュエータプレート31は、Y方向における分極方向が異なる2枚の圧電プレートが積層された構成であってもよい(いわゆるシェブロンタイプ)。
【0031】
アクチュエータプレート31には、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)41、及びインクが充填されない非吐出チャネル(非噴射チャネル)42が形成されている。各チャネル41,42は、アクチュエータプレート31において、X方向(第1方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されることで、チャネル列40を構成している。本実施形態では、チャネル延在方向がZ方向(第2方向)に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がZ方向に交差していてもよい。
【0032】
図4は、
図3のIV-IV線に対応するヘッドチップ22の断面図である。以下の説明において、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側とし、+Z側を上側とし、-Z側を下側として説明する。
図4に示すように、吐出チャネル41は、アクチュエータプレート31の表面上で開口するとともに、Z方向に延びている。吐出チャネル41の上端部は、上方に向かうに従いY方向の深さが漸次浅くなっている。
【0033】
図5は、
図3のV-V線に対応するヘッドチップ22の断面図である。
図5に示すように、非吐出チャネル42は、アクチュエータプレート31の表面上で開口するとともに、アクチュエータプレート31をZ方向に貫通している。非吐出チャネル42におけるY方向の深さは、Z方向の全長に亘って一様である。非吐出チャネル42は、アクチュエータプレート31をY方向に貫通している。
【0034】
図3に示すように、アクチュエータプレート31のうち、吐出チャネル41及び非吐出チャネル42間に位置する部分は、それぞれ駆動壁45を構成している。したがって、吐出チャネル41は、一対の駆動壁45によってX方向の両側が囲まれている。アクチュエータプレート31のうち、吐出チャネル41に対して上方に位置する部分は、尾部48を構成している。
【0035】
アクチュエータプレート31には、共通配線(第1電極)51及び個別配線(第2電極)52が形成されている。各配線51,52は、Ti/AuやNi/Au等の電極材料を、例えば蒸着やスパッタ、めっき等により成膜することで形成される。
【0036】
共通配線51は、共通電極54と、共通端子55と、を備えている。
共通電極54は、吐出チャネル41の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、共通電極54は、吐出チャネル41の表面側端縁からY方向の半分程度の深さに形成されている。
【0037】
共通端子55は、尾部48の表面に形成されている。共通端子55は、尾部48の表面において、各吐出チャネル41に対応して設けられている。各共通端子55は、対応する吐出チャネル41の上方でZ方向に直線状に延びている。共通端子55における下端部は、共通電極54に連なっている。
【0038】
個別配線52は、個別電極57と、個別端子58と、を備えている。
個別電極57は、各非吐出チャネル42の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極57は、非吐出チャネル42の表面側端縁からY方向の半分程度の深さに形成されている。
【0039】
個別端子58は、尾部48の表面において、共通端子55よりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子58は、X方向に延びる帯状に形成されている。個別端子58は、吐出チャネル41を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル42の表面側開口縁において、吐出チャネル41を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極57同士を接続している。尾部48において、共通端子55と個別端子58との間に位置する部分には、区画溝49が形成されている。区画溝49は、尾部48において、X方向に延びている。区画溝49は、共通端子55と個別端子58とを分離している。
【0040】
尾部48の表面には、フレキシブルプリント基板59が圧着されている。フレキシブルプリント基板59は、尾部48の表面において、共通端子55と個別端子58に接続されている。フレキシブルプリント基板59は、ヘッドチップ22と制御部24との間を接続している。
【0041】
<カバープレート32>
図3~
図5に示すように、カバープレート32は、アクチュエータプレート31の表面に重ね合わされている。具体的に、カバープレート32は、尾部48の表面を露出させた状態で各チャネル41,42の表面側開口部を閉塞している。カバープレート32は、アクチュエータプレート31の表面に接着層50を介して接合されている。カバープレート32の下端面は、アクチュエータプレート31の下端面と面一に配置されている。
【0042】
カバープレート32において、吐出チャネル41の上端部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室60が形成されている。共通インク室60は、例えば各チャネル41,42を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート32の表面上で開口している。
共通インク室60において、吐出チャネル41とY方向から見て重なり合う位置には、スリット61が形成されている。スリット61は、各吐出チャネル41の上端部と、共通インク室60内と、の間を各別に連通している。したがって、共通インク室60は、各スリット61を通じて各吐出チャネル41にそれぞれ連通する一方、各非吐出チャネル42には連通していない。
【0043】
<ノズルプレート33>
ノズルプレート33は、アクチュエータプレート31の下端面に接着層64を介して接合されている。ノズルプレート33は、Z方向を厚さ方向とし、X方向を長手方向として配置されている。本実施形態において、ノズルプレート33は、ポリイミド等の樹脂材料により厚さが50μm程度に形成されている。但し、ノズルプレート33は、樹脂材料の他、金属材料(SUSやNi-Pd等)、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造であってもよい。ノズルプレート33は、アクチュエータプレート31の下端面に直接固定されていてもよく、例えば中間プレート等を介して間接的に固定されていてもよい。
【0044】
ノズルプレート(噴射孔プレート)33には、ノズルプレート33をZ方向に貫通するノズル孔(噴射孔)65が形成されている。ノズル孔65は、ノズルプレート33のうち、吐出チャネル41にZ方向で向かい合う位置に各別に形成されている。なお、各ノズル孔65は、上方から下方に向かうに従い漸次先細るテーパ状に形成されている。
【0045】
<漏洩検出機構100>
図6は、漏洩検出機構100のブロック図である。
図6に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド5は、ヘッドチップ22内でのインクの漏洩を検出する漏洩検出機構100を備えている。漏洩検出機構100は、センサ部101と、検出機構102と、を備えている。
センサ部101は、間隔をあけて配置された一対の導体部により構成されている。本実施形態では、一の吐出チャネル41の内面に形成された共通電極(第1導体部)54、及び一の吐出チャネル41を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極(第2導体部)57によってセンサ部101が構成されている。すなわち、第1実施形態では、共通電極54及び個別電極57がセンサ部101を兼ねることで、吐出チャネル41毎にセンサ部101が設けられている。センサ部101は、フレキシブルプリント基板59を介して検出機構102に接続されている。なお、第1実施形態では、駆動壁45のうち、共通電極54が形成された面が第1面を構成し、個別電極57が形成された面が第2面を構成している。
【0046】
検出機構102は、例えば制御部24に搭載されている。検出機構102は、取得部110と、判定部111と、報知部112と、を備えている。
取得部110は、センサ部101での検出結果を取得する。
【0047】
判定部111は、取得部110で取得した情報に基づき、ヘッドチップ22内でのインクの漏洩状態を判定する。具体的に、判定部111は、短絡判定部111aと、容量判定部111bと、を備えている。但し、判定部111は、短絡判定部111a及び容量判定部111bの少なくとも何れかの判定部を備えていればよい。
【0048】
短絡判定部111aは、センサ部101を構成している一対の導体部間で短絡が生じているか否かに基づき、一対の導体部(電極54,57)間にインクが介在しているか否かを判定する。例えばアクチュエータプレート31及びカバープレート32間(接着層50)やアクチュエータプレート31及びノズルプレート33間(接着層64)等の接合領域を通じて吐出チャネル41内から非吐出チャネル42内へインクが漏れ出たり、駆動壁45内をインクが浸透したりした場合には、一対の導体部間がインクで架け渡されることで、一対の導体部間で短絡が生じている可能性がある。
【0049】
容量判定部111bは、一対の導体部間での静電容量の変化に基づき、一対の導体部間にインクが介在しているか否かを判定する。具体的に、容量判定部111bは、一対の導体部間にインクが介在していない状態での静電容量を基準容量とし、基準容量に対して静電容量が所定の閾値以上変化しているか否かを判定する。例えば接合領域を通じて吐出チャネル41内から非吐出チャネル42内へインクが漏れ出たり、駆動壁45内をインクが浸透したりした場合には、一対の導体部間の静電容量が変化する可能性がある。
【0050】
報知部112は、判定部111によりインクが漏洩していると判定された場合に、プリンタ1のユーザに対して報知する。なお、報知方法としては、警告音や警告灯、警告表示等、適宜選択可能である。
【0051】
[プリンタ1の動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク13にはそれぞれ異なる色のインクが十分に充填されているものとする。また、インクタンク13内のインクは、インク配管14を通じてインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0052】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ16がY方向に移動することで、キャリッジ16に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
【0053】
インクジェットヘッド5が往復移動する間に、各インクジェットヘッド5よりインクを被記録媒体Pに適宜吐出させる。具体的に、キャリッジ16(
図1参照)の移動によってインクジェットヘッド5の往復移動が開始されると、フレキシブルプリント基板59を介して共通電極54及び個別電極57間に駆動電圧が印加される。この際、個別電極57を駆動電位Vddとし、共通電極54を基準電位GNDとして各電極54,57間に駆動電圧(パルス信号)を印加する。これにより、共通電極54及び個別電極57間で電位差が発生する。すると、駆動壁45は、いわゆる逆圧電効果によって厚み滑り変形が生じることで、Y方向の中央部を起点にしてV字状に屈曲変形する。すなわち、駆動壁45は吐出チャネル41の容積が拡大するように変形する。
【0054】
各吐出チャネル41の容積が増大した後、共通電極54及び個別電極57間に印加した駆動電圧をゼロにする。すると、駆動壁45が復元し、一旦増大した吐出チャネル41の容積が元の容積に戻る。これにより、吐出チャネル41の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。そして、吐出チャネル41内の圧力増加によって発生した圧力波が、ノズル孔65に向けて伝播する。その結果、吐出チャネル41内のインクがノズル孔65を通じて液滴状に吐出される。ノズル孔65から吐出されたインクが被記録媒体P上に着弾することで、被記録媒体Pに文字や画像等の印刷情報を記録することができる。
【0055】
[インクの漏洩検出方法]
次に、漏洩検出機構100を用いたインクの漏洩検出方法について説明する。
図7は、漏洩検出方法を説明するためのフローチャートである。本ルーチンは、インクの非吐出時に定期的に行う。インクの非吐出時とは、例えば連続するパルス信号の間や、印刷停止期間(ヘッドチップ22の非駆動時)等を意味する。
【0056】
図7に示すように、取得部110は、インクの非吐出時において、各センサ部101の検出結果を定期的に取得する(ステップS1)。
続いて、判定部111は、取得部110で取得した情報に基づき、インクの漏洩があるか否かを判定する(ステップS2)。具体的に、ステップS2では、短絡判定部111aにおいて、一対の導体部間で短絡が生じているか否かを判定したり、容量判定部111bにおいて、一対の導体部間での静電容量が基準容量に対して所定の閾値以上変化しているか否かを判定したりする。
【0057】
ステップS2における判定結果が「NO」の場合、インクの漏洩はないと判定して、ステップS1に戻る。
一方、ステップS2における判定結果が「YES」の場合、インク漏洩の可能性があると判定して、ステップS3に進む。
【0058】
ステップS3において、報知部112は、インク漏洩の可能性をユーザに報知する。以上により、本ルーチンが終了する。
【0059】
このように、本実施形態では、吐出チャネル41の内面(第1面)に形成された共通電極(第1導体部)55と、非吐出チャネル42の内面(第2面)に形成された個別電極(第2導体部)57と、共通電極54及び個別電極57間でのインクの介在を検出する検出機構102と、を備える構成とした。
この構成によれば、共通電極54及び個別電極57間でのインクの介在を検出機構102によって検出することで、吐出チャネル41及び非吐出チャネル42間(本実施形態では、接合領域や駆動壁45、非吐出チャネル42内)にインクが侵入していることを判定できる。これにより、所望の位置でのインクの漏洩を正確に検出し、信頼性に優れたインクジェットヘッド5を提供できる。
特に、従来のように光学センサを用いてインクを漏洩する場合と異なり、インクジェットヘッドに光学センサを搭載する必要がないので、低コスト化が可能になるとともに、汎用性に優れたインクジェットヘッド5を提供できる。また、被記録媒体の検出とインクの検出とを1つの光学センサで兼用する場合に比べて、導体部のレイアウトの自由度を向上させることができる。
しかも、光学センサで液体を検出する場合には、光学センサの検出範囲に一定程度のインクが存在していることが必要となる。そのため、光学センサにより液体が検出された時点では、既にインクジェットヘッドが故障している可能性がある。これに対して、本実施形態では、共通電極54及び個別電極57間にインクが介在したことによる電気的な変化を検出することで、電気的な変化に基づきインクジェットヘッド5の状態を把握し易い。この場合、例えば容量判定部111bにおける閾値を適宜設定することで、正常状態や故障の予兆段階、故障発生段階等、インクジェットヘッド5の状態を正確に把握できる。よって、故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前にインクジェットヘッド5を交換する等の対処が可能になる。その結果、インクジェットヘッド5の不具合が印刷品質に及ぶことを抑制できる。
【0060】
ところで、従来のように光学センサを用いた場合には、インクの付着位置によっては光学センサが過剰に反応し、微小量のインクであっても漏洩として誤検出してしまう可能性があった。
これに対して、本実施形態において、検出機構102は、共通電極54及び個別電極57間が短絡したことに基づいて、共通電極54及び個別電極57間に液体が介在していることを判定する構成とした。
この構成によれば、インク吐出時に発生するミスト等、インクジェットヘッド5の不具合が生じない程度の微小量の液体によって、インクが漏洩していると誤検出することを抑制できる。
【0061】
本実施形態において、検出機構102は、共通電極54及び個別電極57間の静電容量が基準値に対して所定量変化した場合に、共通電極54及び個別電極57間に液体が介在していることを判定する構成とした。
この構成によれば、例えば容量判定部111bにおける閾値を適宜設定することで、インク吐出時に発生するミスト等、インクジェットヘッド5の不具合が生じない程度の微小量の液体によって、インクが漏洩していると誤検出することを抑制できる。
【0062】
本実施形態のインクジェットヘッド5は、駆動壁45のうち吐出チャネル41の内面を形成する部分を第1面とし、駆動壁45のうち非吐出チャネル42の内面を形成する部分を第2面とする構成とした。
この構成によれば、吐出チャネル41及び非吐出チャネル42間でのインクの漏洩を高精度に検出することができる。
しかも、本実施形態のインクジェットヘッド5では、共通電極54及び個別電極57間に電位差を発生させることで、駆動壁45を変形させることができる。すなわち、共通電極54及び個別電極57にセンサ部101と駆動電極との双方の機能を持たせることができる。これにより、センサ部と駆動電極とを別々に形成する場合に比べて電極パターンの簡素化を図ることができる。
【0063】
本実施形態のプリンタ1は、上述したインクジェットヘッド5を備えているため、レイアウトの向上や低コスト化を図った上で、汎用性に優れたプリンタ1を提供できる。
【0064】
(変形例)
図8は、変形例に係るヘッドチップ22の断面図である。第1実施形態では、チャネル列40を構成するチャネル41,42のみを利用してインクの漏洩を検出する構成について説明した。これに対して。本変形例のヘッドチップ22は、ダミーチャネル130を利用して、インクの漏洩を検出する点で異なっている。
図8に示すように、ダミーチャネル130は、アクチュエータプレート31のうちチャネル列40に対してX方向の両側に、X方向に間隔をあけて複数ずつ形成されている。具体的に、ダミーチャネル130は、インクの吐出に寄与しないチャネルであって、接着層50,64形成時の接着剤溜まりや、アクチュエータプレート31に発生したクラックの進行を抑制する等の機能を有している。したがって、ダミーチャネル130には、駆動電極(共通電極54や個別電極57等)は通常形成されていない。各ダミーチャネル130の表面側開口部は、カバープレート32によって閉塞されている。各ダミーチャネル130の下端開口部は、ノズルプレート33によって閉塞されている。
【0065】
ダミーチャネル130のうち、チャネル列40に隣接するダミーチャネル130(以下、対象チャネル130aという。)の内面には、導体部131が形成されている。導体部131は、チャネル列40を構成するチャネル41,42のうち、対象チャネル130aに隣接するチャネル(本実施形態では、最外に位置する非吐出チャネル42a)に形成された個別電極57とともに、センサ部101を構成している。この場合、対象チャネル130aの導体部131と、非吐出チャネル42aの個別電極57と、は対象チャネル130aと非吐出チャネル42aとを区画する区画壁132によって分離されている。本変形例では、非吐出チャネル42の内面が第1面を構成し、対象チャネル130aの内面が第2面を構成している。なお、導体部131は、各配線51,52と同様に、Ti/Au等の電極材料を蒸着等することで形成される。
【0066】
本変形例において、例えば区画壁132内にインクが浸透した場合や、接合領域を通じてインクが対象チャネル130a内に漏れ出た場合には、個別電極57及び導体部131間が短絡したり、個別電極57及び導体部131間の静電容量が変化したりする。そして、個別電極57及び導体部131間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。なお、本変形例では、ダミーチャネル130及びチャネル列40間でのインクの介在を検出できる構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、ダミーチャネル130に一対の導体部(センサ部101)を設けてもよい。
【0067】
本変形例のように、ダミーチャネル130の内面にセンサ部の一部を形成することで、導体部のレイアウト自由度等が向上し、低コスト化や製造工程の効率化を図ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るアクチュエータプレート31の平面図である。第2実施形態では、アクチュエータプレート(第1部材)31及びカバープレート(第2部材)32間でインクの漏洩を検出する点で第1実施形態と相違している。
図9に示すヘッドチップ22において、アクチュエータプレート31の表面(カバー対向面)には第1導体部200が形成されている。第1導体部200は、駆動壁45の表面上をZ方向に帯状に延びている。したがって、第1導体部200は、各吐出チャネル41に対してX方向の両側において、Z方向に延びている。Z方向において、第1導体部200は、吐出チャネル41の全長に亘って延びている。具体的に、第1導体部200の下端縁は、アクチュエータプレート31の下端縁に達している。一方、第1導体部200の上端縁は、尾部48上で終端している。但し、第1導体部200は、Z方向における少なくとも一部において、吐出チャネル41と重なっていればよい。
【0069】
第1導体部200は、X方向において、各チャネル41,42の表面側開口縁から離間している。したがって、第1導体部200は、駆動壁45の表面において、共通電極54及び個別電極57とそれぞれ分離されている。また、第1導体部200の上端部は、尾部48の表面において、共通端子55及び個別端子58とそれぞれ分離されている。第1導体部200は、例えばフレキシブルプリント基板59を介して検出機構102に接続される。なお、第1導体部200は、全ての駆動壁45に対して設けられていてもよく、複数の駆動壁45に対して一つずつ設けられていてもよい。
【0070】
図10は、
図9のX-X線に対応する断面図である。
図10に示すように、カバープレート32の裏面(第1対向面)において、第1導体部200と向かい合う位置には、第2導体部201が形成されている。第2導体部201は、第1導体部200に対して接着層50の厚さ分の間隔をあけて向かい合っている。すなわち、第2導体部201は、第1導体部200とともにセンサ部101を構成する。なお、第2実施形態では、Y方向を第1方向とした上で、アクチュエータプレート31の表面が第1面を構成し、カバープレート32の裏面が第2面を構成する。
【0071】
第2導体部201は、例えば第1導体部200と同形同大の帯状に形成されている。第2導体部201は、Y方向から見て少なくとも一部が第1導体部200に重なり合っていることが好ましい。第2導体部201は、例えば不図示の接続配線を介してフレキシブルプリント基板59に接続された後、検出機構102に接続されている。
【0072】
第2実施形態においては、第1導体部200及び第2導体部201が接着層50を介して向かい合っている。そのため、例えばクラックやピンホール等を通じて接着層50内にインクが浸透した場合には、第1導体部200及び第2導体部201間が短絡したり、第1導体部200及び第2導体部201間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート31と接着層50との界面や、カバープレート32と接着層50との界面にインクが侵入した場合には、第1導体部200及び第2導体部201間の静電容量が変化する。そして、第1導体部200及び第2導体部201間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。これにより、例えばアクチュエータプレート31やカバープレート32がインクによって接着層50から剥がされることに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前にインクジェットヘッド5を交換する等の対処が可能になる。
【0073】
なお、所定箇所の接着層50の接着力を低下させておき、所定箇所でのインクの侵入をセンサ部101により検出することで、インクジェットヘッド5(ヘッドチップ22)の寿命判定をしてもよい。この場合、接着力の低下方法としては、所定箇所について接着層50を薄くしたり、接着面積を低下させたり、接着力の異なる接着剤を使用したりすることが考えられる。
【0074】
(変形例)
図11は、変形例に係るヘッドチップ22の断面図である。
図11に示すように、ヘッドチップ22では、配線51,52を保護する保護膜210が設けられていてもよい。保護膜210は、例えばパラキシリレン系樹脂材料(例えば、パリレン(登録商標))等の有機絶縁材料を含んでいる。保護膜210は、酸化タンタル(Ta
2O
5)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、酸化シリコン(SiO
2)又はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon)等により構成されていてもよく、これらの少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0075】
保護膜210は、各チャネル41,42の内面及びアクチュエータプレート31の表面に設けられている。具体的に、保護膜210は、吐出チャネル保護部210aと、非吐出チャネル保護部210bと、接続部210cと、を備えている。
吐出チャネル保護部210aは、吐出チャネル41の内面全体に形成されている。吐出チャネル保護部210aは、吐出チャネル41内において共通電極(駆動電極)54を覆っている。
非吐出チャネル保護部210bは、非吐出チャネル42の内面全体に形成されている。非吐出チャネル保護部210bは、非吐出チャネル42内において(駆動電極)個別電極57を覆っている。
接続部210cは、アクチュエータプレート31の表面において、尾部48よりも下方に位置する部分に形成されている。接続部210cは、アクチュエータプレート31の表面上において、第1導体部200を覆っている。したがって、第1導体部200は、接続部210c及び接着層50を挟んで第2導体部201と向かい合っている。接続部210cは、吐出チャネル41の表面側開口縁において吐出チャネル保護部210aに連なり、非吐出チャネル42の表面側開口縁において非吐出チャネル保護部210bに連なっている。
【0076】
本変形例において、例えばクラックやピンホール等を通じて接着層50や保護膜210内にインクが浸透した場合には、第1導体部200及び第2導体部201間が短絡したり、第1導体部200及び第2導体部201間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート31と接着層50との界面や、カバープレート32と接着層50との界面、接着層50と保護膜210との界面にインクが侵入した場合には、第1導体部200及び第2導体部201間の静電容量が変化する。そして、第1導体部200及び第2導体部201間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。これにより、例えばアクチュエータプレート31やカバープレート32がインクによって接着層50から剥がされることや、保護膜210による絶縁性が失われたことに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前にインクジェットヘッド5を交換する等の対処が可能になる。
【0077】
(第3実施形態)
図12は、ノズルプレート33を取り外した状態におけるヘッドチップ22の底面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII線に対応する断面図である。第3実施形態では、アクチュエータプレート(第1部材)31とノズルプレート(第2部材)33との間でインクの漏洩を検出する点で各実施形態と相違している。
図12、
図13に示すヘッドチップ22において、アクチュエータプレート31の下端面(噴射孔対向面)には第1導体部300が形成されている。第1導体部300は、駆動壁45の下端面上をY方向に帯状に延びている。したがって、第1導体部300は、各吐出チャネル41に対してX方向の両側にそれぞれ形成されている。
【0078】
Y方向において、第1導体部300は、吐出チャネル41の全長に亘って延びている。具体的に、第1導体部300における-Y側端部は、吐出チャネル41の底面よりも-Y側に位置している。一方、第1導体部300の+Y側端部は、アクチュエータプレート31の表面まで達している。但し、第1導体部300は、Y方向における少なくとも一部において、吐出チャネル41と重なっていればよい。なお、第1導体部300は、不図示の接続配線を介してフレキシブルプリント基板59に接続された後、検出機構102に接続されている。この場合、第1導体部300は、第2実施形態の第1導体部200と接続されていてもよい。
【0079】
ノズルプレート33の上面(第2対向面)において、第1導体部300と向かい合う位置には、第2導体部301が形成されている。第2導体部301は、第1導体部300に対して接着層64の厚さ分の間隔をあけて向かい合っている。すなわち、第2導体部301は、第1導体部300とともにセンサ部101を構成する。なお、第3実施形態では、Z方向を第1方向とした上で、アクチュエータプレート31の下端面が第1面を構成し、ノズルプレート33の上面が第2面を構成する。
【0080】
第2導体部301は、例えば第1導体部300と同形同大の帯状に形成されている。第2導体部301は、Y方向から見て少なくとも一部が第1導体部300に重なり合っていることが好ましい。第2導体部301は、例えば不図示の接続配線を介してフレキシブルプリント基板59に接続された後、検出機構102に接続されている。
【0081】
第3実施形態においては、第1導体部300及び第2導体部301が接着層64を介して向かい合っている。そのため、例えば接着層64内にインクが浸透した場合には、第1導体部300及び第2導体部301間が短絡したり、第1導体部300及び第2導体部301間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート31と接着層64との界面や、ノズルプレート33と接着層64との界面にインクが侵入した場合には、第1導体部300及び第2導体部301間の静電容量が変化する。そして、第1導体部300及び第2導体部301間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。これにより、アクチュエータプレート31やノズルプレート33がインクによって接着層64から剥がされることや、保護膜210による絶縁性が失われたことに起因する故障の発生を事前に察知することができ、不具合が生じる前にインクジェットヘッド5を交換する等の対処が可能になる。
【0082】
(変形例)
図14は、変形例に係るヘッドチップ22について、
図13に対応する断面図である。
図14に示すように、ヘッドチップ22では、アクチュエータプレート31の下端面が保護膜210によって覆われていてもよい。具体的に、保護膜210は、アクチュエータプレート31の下端面を覆う端面保護部210dを備えている。端面保護部210dは、第1導体部300を覆っている。したがって、第1導体部300は、端面保護部210d及び接着層64を挟んで第2導体部301と向かい合っている。
【0083】
本変形例において、例えば接着層64や保護膜210内にインクが浸透した場合には、第1導体部300及び第2導体部301間が短絡したり、第1導体部300及び第2導体部301間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート31と接着層64との界面や、ノズルプレート33と接着層64との界面、接着層64と保護膜210との界面にインクが侵入した場合には、第1導体部300及び第2導体部301間の静電容量が変化する。そして、第1導体部300及び第2導体部301間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。
【0084】
(第4実施形態)
図15は、第4実施形態に係るヘッドチップ22について、
図13に対応する断面図である。第4実施形態では、ノズルプレート33に浸透したインクに基づいてインクの漏洩を検出する点で上述した実施形態と相違している。
図15に示すヘッドチップ22において、ノズルプレート33は、ポリイミド等の吸湿性を有する材料により形成されている。ノズルプレート33の上面には、第1導体部400が形成されている。第1導体部400は、ノズルプレート33の上面において、例えば駆動壁45と向かい合う部分に形成されている。すなわち、第1導体部400は、チャネル41,42内やノズル孔65内に露呈しない位置に形成されている。なお、第1導体部400は、全ての駆動壁45に対して設けられていてもよく、複数の駆動壁45に対して一つずつ設けられていてもよい。また、複数の第1導体部400は、それぞれ独立して検出機構102に接続されていてもよく、不図示の集合配線でまとめられた後、検出機構102に接続されていてもよい。
【0085】
ノズルプレート33の下面のうち、各第1導体部400と向かい合う位置には、第2導体部401がそれぞれ形成されている。各第2導体部401は、ノズルプレート33の厚さ分の間隔をあけて、Z方向から見て対応する第1導体部400の少なくとも一部とそれぞれ重なり合っている。すなわち、第2導体部401は、第1導体部400とともにセンサ部101を構成する。なお、ノズルプレート33の下面には、第2導体部401を覆うように被膜を設けてもよい。これにより、インク吐出時に発生するミスト等、ノズルプレート33の下面に付着したインク等がノズルプレート33に吸湿されることを抑制し、ノイズの発生を軽減できる。被膜としては、フッ素系やシリコーン系、アクリル系等の樹脂材料が挙げられる。第4実施形態では、Z方向を第1方向とした上で、ノズルプレート33の上面が第1面を構成し、ノズルプレート33の下面が第2面を構成する。
【0086】
第4実施形態においては、第1導体部400及び第2導体部401がノズルプレート33を介して向かい合っている。そのため、接着層64に浸透したインクや接着層64とノズルプレート33との界面に侵入したインクが、ノズルプレート33に浸透することで、第1導体部400及び第2導体部401間の静電容量が変化する。そして、第1導体部400及び第2導体部401間の静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。
【0087】
(第5実施形態)
図16は、第5実施形態に係るヘッドチップ22について、
図13に対応する断面図である。第5実施形態では、ノズルプレート33自体を導電部の一部として利用する点で上述した実施形態と相違している。
図16に示すヘッドチップ22において、ノズルプレート33は、SUS等の導電性を有する材料により形成されている。本実施形態において、ノズルプレート33は、第1導体部として機能する。ノズルプレート33は、不図示の接続配線を介してフレキシブルプリント基板59に接続された後、検出機構102に接続されている。
【0088】
アクチュエータプレート31の下端面には導体部(第2導体部)500が形成されている。導体部500は、駆動壁45の下端面上をY方向に帯状に延びている。したがって、導体部500は、接着層64の厚さ分の間隔をあけてノズルプレート33と向かい合っている。なお、導体部500は、不図示の接続配線を介してフレキシブルプリント基板59に接続された後、検出機構102に接続されている。第5実施形態では、Z方向を第1方向とした上で、ノズルプレート33の上面が第1面を構成し、アクチュエータプレート31の下端面が第2面を構成する。
【0089】
第5実施形態においては、ノズルプレート33と導体部500が接着層64を介して向かい合っている。そのため、例えば接着層64内にインクが浸透した場合には、ノズルプレート33及び導体部500間が短絡したり、ノズルプレート33及び導体部500間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート31と接着層64との界面や、ノズルプレート33と接着層64との界面にインクが侵入した場合には、ノズルプレート33及び導体部500間の静電容量が変化する。そして、ノズルプレート33及び導体部500間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。特に、ノズルプレート33自体が導電性を有する材料により形成されることで、ノズルプレート33の上面に別体の導体部を形成する必要がない。そのため、製造効率の向上を図ることができる。
【0090】
(変形例)
上述した第5実施形態では、ノズルプレート33とアクチュエータプレート31との間に接着層64が介在する構成について説明したが、これに加え、
図17に示すように、導体部500が端面保護部210dにより覆われていてもよい。
【0091】
(第6実施形態)
図18は、第6実施形態に係るヘッドチップ22の分解斜視図である。第6実施形態では、サイドシュートタイプのヘッドチップ600に本開示を採用した場合について説明する。
図18に示すように、サイドシュートタイプのヘッドチップ600は、吐出チャネル611における延在方向の中央部からインクを吐出する。具体的に、ヘッドチップ600は、アクチュエータプレート601と、カバープレート602と、ノズルプレート603と、を備えている。
【0092】
アクチュエータプレート601には、チャネル列610が形成されている。チャネル列610は、吐出チャネル611及び非吐出チャネル612がX方向(第1方向)に交互に並んで形成されている。
【0093】
図19は、
図18のXIX-XIX線に対応する断面図である。
図19に示すように、吐出チャネル611は、X方向から見て下方に向けて凸の円弧状に形成されている。吐出チャネル611は、Y方向の中央部において、アクチュエータプレート601をZ方向(第2方向)に貫通している。吐出チャネル611は、Y方向の両端部において、Y方向の外側に向かうに従い深さが漸次浅くなっている。
【0094】
図20は、
図18のXX-XX線に対応する断面図である。
図20に示すように、非吐出チャネル612は、アクチュエータプレート601をZ方向に貫通した状態で、Y方向に直線状に延びている。アクチュエータプレート601のうち、吐出チャネル611及び非吐出チャネル612間に位置する部分は、それぞれ駆動壁615を構成している。したがって、チャネル611,612は、一対の駆動壁615によってX方向の両側が囲まれている。本実施形態では、チャネル列610が一列のヘッドチップ600を例にして説明しているが、チャネル列610は、Y方向に複数列設けられていてもよい。この場合、隣り合うチャネル列610を構成する吐出チャネル611同士は、チャネル列610の個数をnとすると、一のチャネル列610における吐出チャネル611の配列ピッチに対して1/nピッチ毎にずれて配列されていることが好ましい。
【0095】
図21は、
図18のXXI-XXI矢視図である。
図19、
図21に示すように、アクチュエータプレート601には、共通配線620及び個別配線621が形成されている。共通配線620は、共通電極625と、取出部626と、共通端子627と、を備えている。
共通電極625は、吐出チャネル611の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、共通電極625は、吐出チャネル611の下端開口縁からZ方向の半分程度の深さに形成されている。
【0096】
取出部626は、アクチュエータプレート601の下面において、吐出チャネル611の下端開口部を取り囲んでいる。取出部626は、吐出チャネル611の下端開口縁において共通電極625に連なっている。
共通端子627は、アクチュエータプレート601のうち、吐出チャネル611に対して-Y側に位置する部分(以下、尾部601aという。)に形成されている。共通端子627は、尾部601aの下面において、各吐出チャネル611に対応して設けられている。各共通端子627は、対応する吐出チャネル611に対してY方向に直線状に延びている。共通端子627における+Y側端部は、取出部626を介して共通電極625に連なっている。
【0097】
図20に示すように、個別配線621は、個別電極628と、個別端子629と、を備えている。
個別電極628は、各非吐出チャネル612の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極628は、非吐出チャネル612の下端開口縁からZ方向の半分程度の深さに形成されている。
【0098】
個別端子629は、尾部601aの下面において、共通端子627よりも-Y側に位置する部分に形成されている。個別端子629は、X方向に延びる帯状とされている。個別端子629は、吐出チャネル611を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル612の下端開口縁において、吐出チャネル611を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極628同士を接続している。尾部601aにおいて、共通端子627と個別端子629との間に位置する部分には、区画溝601bが形成されている。区画溝601bは、尾部601aにおいて、X方向に延びている。区画溝601bは、共通端子627と個別端子629とを分離している。
【0099】
尾部601aの下面には、フレキシブルプリント基板630が圧着されている。フレキシブルプリント基板630は、尾部601aの上面において、共通端子627と個別端子629に接続されている。
【0100】
カバープレート602は、各チャネル611,612の上端開口部を覆うように、アクチュエータプレート601の上面に重ね合わされている。カバープレート602は、アクチュエータプレート601の上面に接着層631を介して接合されている。
【0101】
カバープレート602において、チャネル列610の-Y側端部と平面視で重なり合う位置には、入口共通インク室640が形成されている。入口共通インク室640は、例えばチャネル列610を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート602の上面で開口している。
入口共通インク室640において、吐出チャネル611と平面視で重なり合う位置には、入口スリット641が形成されている。入口スリット641は、各吐出チャネル611の-Y側端部と、入口共通インク室640内と、の間を各別に連通している。
【0102】
カバープレート602において、チャネル列610の+Y側端部と平面視で重なり合う位置には、出口共通インク室645が形成されている。出口共通インク室645は、例えばチャネル列610を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート602の上面で開口している。
出口共通インク室645において、吐出チャネル611と平面視で重なり合う位置には、出口スリット646が形成されている。出口スリット646は、各吐出チャネル611の+Y側端部と、出口共通インク室645内と、の間を各別に連通している。したがって、入口スリット641及び出口スリット646は、それぞれ各吐出チャネル611に連通する一方、非吐出チャネル612には連通していない。
【0103】
図19に示すように、ノズルプレート603は、アクチュエータプレート601の下面に接着層650を介して接合されている。ノズルプレート603には、ノズルプレート603をZ方向に貫通する複数のノズル孔651が形成されている。各ノズル孔651は、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。ノズル孔651は、吐出チャネル611のうちY方向の中央部に各別に連通している。
【0104】
第6実施形態においても、共通電極625と個別電極628とを一対の導体部によってセンサ部101(
図6参照)を構成することができる。すなわち、例えばアクチュエータプレート601及びカバープレート602間やアクチュエータプレート601及びノズルプレート603間等の接合領域を通じて吐出チャネル611内から非吐出チャネル612内へインクが漏れ出たり、駆動壁615内をインクが浸透したりすることで、共通電極625と個別電極628との間で短絡したり、共通電極625と個別電極628との間の静電容量が変化したりする。そして、共通電極625と個別電極628との間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。
【0105】
(第7実施形態)
第6実施形態のようなサイドシュートタイプのヘッドチップ600においても、第2実施形態~第5実施形態や各変形例と同様の方法でインクの漏洩を検出することができる。第7実施形態では第2実施形態をヘッドチップ600に採用した場合について説明する。
【0106】
図22は、
図21のXXII-XXII線に対応する断面図である。
図22に示すヘッドチップ600において、アクチュエータプレート601の上面には第1導体部700が形成されている。第1導体部700は、駆動壁615の上面上をY方向に帯状に延びている。第1導体部700は、Y方向における少なくとも一部において、吐出チャネル611と重なっていればよい。第1導体部700は、X方向において、各チャネル611,612の上端開口縁から離間している。したがって、第1導体部700は、駆動壁615の上面において、共通電極625及び個別電極628とそれぞれ分離されている。なお、第1導体部700は、保護膜等によって覆われていてもよい。
【0107】
カバープレート602の下面において、第1導体部700と向かい合う位置には、第2導体部701が形成されている。第2導体部701は、第1導体部700に対して接着層631の厚さ分の間隔をあけて向かい合っている。すなわち、第2導体部701は、第1導体部700とともにセンサ部101を構成する。なお、第7実施形態では、Z方向を第1方向とした上で、アクチュエータプレート601の上面が第1面を構成し、カバープレート602の下面が第2面を構成する。
【0108】
第7実施形態においては、第1導体部700及び第2導体部701が接着層631を介して向かい合っている。そのため、例えば接着層631内にインクが浸透した場合には、第1導体部700及び第2導体部701間が短絡したり、第1導体部700及び第2導体部701間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート601と接着層631との界面や、カバープレート602と接着層631との界面にインクが侵入した場合には、第1導体部700及び第2導体部701間の静電容量が変化する。そして、第1導体部700及び第2導体部701間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。
【0109】
(第8実施形態)
第8実施形態では第3実施形態をヘッドチップ600に採用した場合について説明する。
図23は、第8実施形態に係るヘッドチップ600について、
図22に対応する断面図である。
図23に示すヘッドチップ600において、ノズルプレート603の上面には、導体部(第1導体部)800が形成されている。導体部800は、接着層650を挟んで取出部(第2導体部)626と向かい合う位置に配置されている。すなわち、導体部800は、取出部626に対して接着層650の厚さ分の間隔をあけて向かい合っている。導体部800は、取出部626とともにセンサ部101を構成する。
【0110】
第8実施形態においては、取出部626及び導体部800が接着層650を介して向かい合っている。そのため、例えば接着層650内にインクが浸透した場合には、取出部626及び導体部800間が短絡したり、取出部626及び導体部800間の静電容量が変化したりする。また、アクチュエータプレート601と接着層650との界面や、ノズルプレート603と接着層650との界面にインクが侵入した場合には、取出部626及び導体部800間の静電容量が変化する。そして、取出部626及び導体部800間の短絡や静電容量の変化を検出機構102によって検出することで、インクの漏洩を検出することができる。なお、第8実施形態では、取出部626を一方の導体部として利用した場合について説明したが、この構成に限られない。アクチュエータプレート602の下面に、一方の導体部を別途形成してもよい。
【0111】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0112】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0113】
上述した実施形態では、インク漏洩の検出箇所を実施形態毎に分けて説明したが、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、アクチュエータプレートとノズルプレートとの間や、アクチュエータプレートとカバープレートとの間にそれぞれセンサ部として導体部を設けてもよい。
上述した実施形態では、導体部間の短絡や静電容量の変化に基づきインク漏洩を判定する構成について説明したが、例えば導体部間の静電容量が0(すなわち、オープン状態)になったことに基づいてインク漏洩を判定してもよい。オープン状態は、例えば導体部同士が導体部の根元部分で短絡し、導体部が断線することで、導体部間に電荷を保持できない状態である。
【0114】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
31:アクチュエータプレート(第1部材)
32:カバープレート(第2部材)
33:ノズルプレート(第2部材、噴射孔プレート)
40:チャネル列
41:吐出チャネル(噴射チャネル)
42:非吐出チャネル(非噴射チャネル)
45:駆動壁
50:接着層
54:共通電極(駆動電極)
57:個別電極(駆動電極)
64:接着層
65:ノズル孔(噴射孔)
102:検出機構
130:ダミーチャネル
131:導体部
200:第1導体部
201:第2導体部
300:第1導体部
301:第2導体部
400:第1導体部
401:第2導体部
500:導体部(第1導体部)
601:アクチュエータプレート(第1部材)
602:カバープレート(第2部材)
603:ノズルプレート(噴射孔プレート、第2部材)
610:チャネル列
611:吐出チャネル
612:非吐出チャネル
615:駆動壁
626:取出部(第2導体部)
631:接着層
650:接着層
651:ノズル孔(噴射孔)
700:第1導体部
701:第2導体部
800:導体部(第1導体部)