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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006630
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】充電装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240110BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240110BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107710
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519417676
【氏名又は名称】株式会社アパード
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 唯
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】北川 亘
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】給電側の一次コアから受電側の二次コアに対して所定量の電力を安定的に伝送可能な充電装置を実現する。
【解決手段】電源6と電気的に接続される一次コイル23が巻回された一次コア24と、蓄電池5と電気的に接続される二次コイル25が巻回された二次コア26とを備え、両コア24,26が、それぞれ、軟磁性を有する金属板7をその板厚方向に複数枚積み重ねた層状体で構成されると共に、複数枚の金属板7の板長方向端部で形成された層状の開放端面24d,26dを有する充電装置20において、一次コイル23への通電時に、一次コア24の開放端面24dと二次コア26の開放端面26dとで挟持される軟磁性を有する中間部材28を備える。この中間部材28は、両コア24,26よりも磁気異方性が小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と電気的に接続される一次コイルが巻回された一次コアと、蓄電池と電気的に接続される二次コイルが巻回された二次コアとを備え、
前記一次コア及び前記二次コアが、それぞれ、軟磁性を有する金属板をその板厚方向に複数枚積み重ねた層状体で構成されると共に、複数枚の前記金属板の板長方向端部で形成された層状の開放端面を有する充電装置において、
前記一次コイルへの通電時に、前記一次コアの前記開放端面と前記二次コアの前記開放端面とで挟持される軟磁性を有する中間部材を備え、該中間部材は、前記一次コア及び前記二次コアよりも磁気異方性が小さいことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記中間部材が、軟磁性を有する焼結体で形成されている請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記中間部材は、前記一次コアの前記開放端面との対向面を前記一次コアの前記開放端面に当接させた状態で前記一次コアと一体的に保持されている請求項1又は2に記載の充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導作用を利用して給電側から受電側に(非接触で)電力を伝送するタイプの充電装置では、蓄電池(「バッテリー」や「二次電池」などとも称される)への充電をできるだけ迅速に完了すべく、給電側から受電側への電力伝送効率(給電側のコイルと受電側のコイルの間の結合係数)をできるだけ高めることが求められる。
【0003】
下記の特許文献1には、電源と電気的に接続される給電側の一次コイルが巻回される略凹字形状の一次コアと、蓄電池と電気的に接続される受電側の二次コイルが巻回される略凹字形状の二次コアとを備え、両コアの開放端面同士が対向配置される充電装置(電源装置)において、一次コア及び二次コアの外側に、銅等の非磁性材料で形成された第一及び第二介在物をそれぞれ配置し、一次コイルを一次コア及び第一介在物周りに巻回すと共に、二次コイルを二次コア及び第二介在物周りに巻回すという技術手段が開示されている。
【0004】
このような技術手段によれば、一次コアから二次コアに鎖交する磁束量を増加させることができるので、両コイル間の結合係数、つまり給電側から受電側への電力伝送効率を高めることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-17399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、蓄電池への充電に電磁誘導作用を利用する上記の充電装置において、図11に概念的に示すように、一次コア101及び二次コア102のそれぞれに、軟磁性を有する金属板103をその板厚方向に複数枚積み重ねた積層体からなるコア(積層コア)を採用した場合、一次コア101に巻回された図示外の一次コイルに通電すると、一次コア101の各層(金属板103の板長方向)に沿って磁束Z(同図中に破線で示す)が流れる。そのため、一次コア101の開放端面101aを構成する各層に対して、開放端面101aに対向する二次コア102の開放端面102aを構成する各層が一対一で精度良く配置されていなければ、一次コア101と二次コア102の間での磁束Zの伝達効率、ひいては給電側から受電側への電力伝送効率が低下する。従って、一次コア101及び二次コア102に上記の積層コアを採用する場合には、一次コア101の開放端面101aに対して二次コア102の開放端面102aを精度良く位置決め配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、例えば、蓄電池に接続される受電側の二次コイルが巻回された二次コアが大規模工場内で製品等を自動搬送する自動搬送装置に搭載され、電源に接続される給電側の一次コイルが巻回された一次コアが工場内に定点設置された充電ステーションに設けられているような場合、蓄電池への充電の都度、二次コアを一次コアに対して精度良く位置決め出来るとは限らない。自動搬送装置の走行位置(走行ルート)は、GPS等の測位システムを用いることで比較的精度良く制御することができるが、上記の測位システムを用いても、一次コアと二次コアとをミリメートルオーダーで位置決めするのは容易ではない。
【0008】
係る実情に鑑み、本発明は、互いに平行に配置される一次コアの開放端面及び二次コアの開放端面の一方が他方に対して両開放端面と平行な面内で位置ズレ配置された場合でも、一次コアと二次コアとの間で磁束の伝達効率が低下(両コア間で発生する励磁インダクタンスが低下)するのを可及的に防止し、これにより、給電側から受電側に所定量の電力を安定的に伝送することのできる充電装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために創案された本発明は、
電源と電気的に接続される一次コイルが巻回された一次コアと、蓄電池と電気的に接続される二次コイルが巻回された二次コアとを備え、一次コア及び二次コアが、それぞれ、軟磁性を有する金属板をその板厚方向に複数枚積層させた積層体で構成されると共に、複数枚の金属板の板長方向端部で形成された層状の開放端面を有する充電装置において、
一次コイルへの通電時に一次コアの開放端面と二次コアの開放端面とで挟持される軟磁性を有する中間部材を備え、この中間部材は、一次コア及び二次コアよりも磁気異方性が小さいことを特徴とする。
【0010】
上記の構成を有する本発明に係る充電装置では、軟磁性を有する中間部材が一次コアの開放端面と二次コアの開放端面とで挟持された状態で一次コイルに通電されることから、一次コイルへの通電に伴って一次コアに生じる磁束は中間部材を介して両コア間で伝送(伝達)される。このとき、中間部材が一次コア及び二次コアよりも磁気異方性が小さい部材である関係上、両コア間に、磁束を様々な方向に流すことを可能とする(磁束の流通方向の自由度が高められた)磁束流通経路を形成することができる。このため、二次コアの開放端面が一次コアの開放端面に対して所定の(理想の)配置位置から位置ズレした状態で配置されていても、両コアの開放端面で中間部材が挟持されていれば、両コア間で磁束の伝達効率が低下するのを可及的に防止することができる。これにより、給電側の一次コアから受電側の二次コアに対し、所定量の電力を安定的に伝送することができる充電装置を実現することができる。
【0011】
軟磁性を有する中間部材としては、例えば、軟磁性を有する焼結体(軟磁性を有する金属粉末の圧粉体を加熱・焼結したもの)を用いることができる。この種の焼結体の具体例としては、フェライト、すなわち酸化鉄を主成分とした軟磁性を有する焼結体を挙げることができる。フェライトは、安価で、かつ実質的に磁気異方性がないので、一次コアから二次コアへの電力伝送効率の低下を低コストに防止することができて好適である。
【0012】
中間部材は、一次コアの開放端面との対向面を一次コアの開放端面に当接させた状態で一次コアと一体的に保持しておくことができる。この場合、一次コアと中間部材とを常時適切に当接した状態に維持することができるので、本発明に係る充電装置を、例えば自動搬送装置に搭載された蓄電池に充電するための充電装置として用いる場合、上記蓄電池への充電を容易にかつ適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上より、本発明によれば、互いに平行に配置される一次コアの開放端面及び二次コアの開放端面の一方が他方に対して両開放端面と平行な面内で位置ズレ配置された場合でも、一次コアから二次コアに所定量の電力を安定的に伝送することのできる充電装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】蓄電池への充電時に、本発明の実施形態に係る充電装置が用いられる自動搬送装置の移動態様を概念的に示す平面図である。
図2】自動搬送装置(車両搬送中の自動搬送装置)の概略側面図である。
図3】自動搬送装置の概略斜視図である。
図4】自動搬送装置の部分正面図である。
図5】自動搬送装置の部分平面図である。
図6図5の右側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る充電装置の概略図である。
図8】上記充電装置によって実施される充電工程の実施手順を概念的に示す図であって、(a)図は、同充電工程の開始直後の状態を示す図、(b)図は、同充電工程の途中段階を示す図である。
図9】充電工程の実施中における上記充電装置の部分拡大断面図である。
図10】確認試験の試験結果を示す図である。
図11】従来の充電装置の問題点を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係る充電装置は、電動の移動体に搭載された蓄電池に充電するための充電装置として好適に使用し得る。上記の移動体としては、例えば図1に示す態様で自動走行する自動搬送装置1、具体的には、システム制御部Sからの無線指令Saに従って工場(車両生産工場)FとコンテナヤードYの間を往復移動し、工場FからコンテナヤードYに向けて移動する際に工場Fで生産された車両CをコンテナヤードYに自動で搬送する自動搬送装置1、を挙げることができる。以下、自動搬送装置1の具体的な一例を図2図6に基づいて説明してから充電装置について説明する。
【0017】
図2図6に示す自動搬送装置1は、車両(ここでは前輪駆動車)Cの前輪W1を搭載すると共に車両Cの後輪W2を接地させた状態で車両Cを搬送するものであり、車両Cの前輪W1を搭載する本体2と、本体2の幅方向(車両Cの車幅方向)両端部に設けられた左右一対の駆動輪ユニット3とを備える。本体2には、前輪W1の回転を規制する前後一対の車輪止め4、駆動輪ユニット3に供給すべき電力を蓄えた蓄電池5、及び駆動輪ユニット3を制御する制御部(図示省略)などが搭載される。
【0018】
各駆動輪ユニット3は、前後一対の車輪9と、車輪9を走行駆動する走行用モータ11と、転舵用モータ12により、鉛直方向に延びる転舵軸14回りに車輪9を回転させる転舵機構10と、車輪9を制動するブレーキ機構(図示省略)と、これらを収容したケーシング13とを備える。なお、図3図6では、ケーシング13の一部や車輪止め4等の図示を省略している。各駆動輪ユニット3が上記の転舵機構10を具備していることにより、自動搬送装置1は、本体2(車両C)の前後方向に沿って走行可能な前後方向走行モードと、本体2の幅方向(車両Cの車幅方向)に沿って走行可能な幅走行モードとに切り替え可能である。
【0019】
走行用モータ11は、図4に示すように、各車輪9に内蔵されたインホイールモータとされる。この走行用モータ11及び転舵用モータ12は、本体2に搭載された蓄電池5及び制御部と電気的に接続され、制御部からの指令に基づいて回転駆動される。
【0020】
転舵機構10は、転舵用モータ12が回転駆動されると複数(ここでは二本)の転舵軸14が同期回転するように構成されている。ここでは、水平方向に沿って配置された転舵用モータ12の出力軸12aと鉛直方向に沿って配置された中間軸15とを図示しない傘歯車やウォームギヤ等を介してトルク伝達可能に連結すると共に、中間軸15上に配した2つのプーリ16と各転舵軸14に設けたプーリ17との間にベルト(又はチェーン)18を架け渡すことにより、転舵用モータ12が回転駆動されると二本の転舵軸14が同期回転するようになっている。
【0021】
中間軸15の上端には角度センサ19が取り付けられており、この角度センサ19で検知される中間軸15の回転角などに基づいて転舵軸14(車輪9)の転舵角が算出される。角度センサ19としては、例えばポテンショメータを使用できる。
【0022】
以下、図1等を参照して、上記の自動搬送装置1による車両Cの搬送手順を簡単に説明する。
【0023】
まず、工場Fにおいて、図示外のリフト手段により前部が持ち上げられた車両Cの下方に自動搬送装置1の本体2を潜り込ませてから、リフト手段により車両Cの前部を降下させる。これにより、車両Cの前輪W1が自動搬送装置1の本体2に搭載される。このとき、車両Cの前輪W1は本体2の車輪止め4の間に嵌め込まれ、車両Cの後輪W2は接地している(図2参照)。
【0024】
車両Cの前輪W1が本体2に搭載されると、自動搬送装置1はシステム制御部Sからの無線指令Saに従って所定のルート(図1中に矢印P1で示す)に沿って自動で走行する。具体的には、システム制御部Sからの無線指令Saが自動搬送装置1の制御部に入力されると、制御部は、無線指令Saに従って、各駆動輪ユニット3に設けられた走行用モータ11及び転舵用モータ12の駆動/停止やブレーキ機構による車輪9の制動/解放を制御する。これにより、自動搬送装置1に搭載された車両Cは、コンテナヤードYまで自動で搬送される。なお、図1において、車両Cを工場FからコンテナヤードYまで搬送するときの自動搬送装置1の走行モードは、基本的には「前後方向走行モード」である。車両CがコンテナヤードY内の所定位置まで搬送されると、図示外のリフト手段によって車両Cの前部が持ち上げられ、車両Cの下方から自動搬送装置1が退避する。自動搬送装置1が退避すると、リフト手段は車両Cの前部を降下させて前輪W1を接地させる。これにより、コンテナヤードYへの車両Cの搬送が完了する。
【0025】
コンテナヤードY内で車両Cが降ろされたことによって空になった自動搬送装置1においては、システム制御部Sからの無線指令Saに従って、走行用モータ11を停止させた状態で転舵用モータ12が回転駆動され、転舵軸14がその軸心回りに略90°回転する。これにより、自動搬送装置1の走行モードが前後方向走行モードから幅方向走行モードに切り替わる。そして、自動搬送装置1がシステム制御部Sからの無線指令Saに従ってコンテナヤードY内を幅方向走行モードの状態で自動走行し、コンテナヤードY(に設けられた車両配置エリア)の外側に抜け出ると(図1中の矢印P2を参照)、走行用モータ11が停止する。走行用モータ11が停止すると、転舵用モータ12が回転駆動され、転舵軸14がその軸心回りに略90°回転する。これにより、自動搬送装置1の走行モードが幅方向走行モードから前後方向走行モードに切り替わる。そして、自動搬送装置1は、システム制御部Sからの無線指令Saに従って前後方向走行モードの状態で工場Fまで自動走行する(図1中の矢印P3を参照)。工場Fに到着した自動搬送車1には、上記同様にして新たな車両Cが搭載される。
【0026】
以上が繰り返されることにより、工場Fで次々に生産される車両Cが自動搬送装置1によって順次コンテナヤードYに自動で搬送される。
【0027】
上記のようにして車両Cを自動で搬送する自動搬送装置1に搭載された蓄電池5の残量が所定量以下になると、自動搬送装置1は、例えば工場F内に定点設置された充電ステーションまで自動走行して蓄電池5に充電する。この蓄電池5への充電に、本発明の実施形態に係る充電装置20を用いることができる。
【0028】
図7に概念的に示すように、充電装置20は、充電ステーションに設けられた給電側コアユニット21と、自動搬送装置1に設けられた受電側コアユニット22とを備える。給電側コアユニット21は、充電ステーションに設置された電源(直流電源)6と電気的に接続される一次コイル23と、この一次コイル23が巻回された一次コア24とを有し、一次コア24は図示しない昇降機構によって昇降可能に支持されている。受電側コアユニット22は、自動搬送装置1に搭載された蓄電池5と電気的に接続される二次コイル25と、この二次コイル25が巻回された二次コア26とを有し、二次コア26は図示外の保持部材を介して自動搬送装置1の本体2に固定的に保持されている。給電側の一次コイル23の巻き数は、受電側の二次コイル25の巻き数よりも多く設定される。
【0029】
図示例の一次コア24は、互いに平行な一対の脚部24a,24b及び両脚部24a,24bの基端同士を繋ぐ接続部24cを一体に有する略凹字状(U字状)をなし、接続部24bを下側に配置した縦姿勢の状態で保持されている。二次コア26は、互いに平行な一対の脚部26a,26b及び両脚部26a,26bの基端同士を繋ぐ接続部26cを一体に有する略凹字状(U字状)をなし、接続部26cを上側に配置した縦姿勢の状態で保持されている。一次コア24及び二次コア26は、何れも、複数枚の金属板27をその板厚方向に積み重ねた層状体で構成される。そのため、一次コア24の開放端面(脚部の自由端側の端面)24d及び二次コア26の開放端面26dは、何れも、多層に積み重ねられた複数枚の金属板27の板長方向端部で形成される層状面となっている。なお、二次コア26には、一次コア24と同一の形状や体積を有するものを用いている。つまり、本実施形態の一次コア24と二次コア26は同一部材である。
【0030】
各コア24,26の構成部材である金属板27には、軟磁性を有する金属板、例えば、鉄の含有量を97質量%以上とした純鉄の板材、Fe-Si合金、Fe-Ni合金(パーマロイ)、Fe-Si-Al合金(センダスト)及び鉄系アモルファス合金などといった鉄系合金の板材などを使用することができる。これらの中でも、鉄系アモルファス合金の一種である日立金属株式会社製のファインメット(登録商標)の板材は、磁気特性に優れることから特に好適である。
【0031】
充電装置20は、一次コイル23への通電時(蓄電池5への充電時)に、一次コア24の開放端面24dと二次コア26の開放端面26dとで板厚方向に挟持される平板状の中間部材28を有する。本実施形態の中間部材28は、その一面(板厚方向の一端面)28aを一次コア24の開放端面24dに当接させた状態で一次コア24と一体的に保持されている。中間部材28としては、以下の(1)~(3)の特徴的構成を併せ持つものが選択使用される。
(1)軟磁性を有し、
(2)一次コア24及び二次コア26よりも磁気異方性が小さく、
(3)コア24,26の開放端面24d,26dがそれぞれ当接する一面28a及び他面28bの面積が上記開放端面24d,26の面積よりも十分に大きいもの。
ここでは、磁気異方性が実質的にないフェライト(ソフトフェライト)、すなわち酸化鉄を主成分とする焼結金属製の中間部材28が使用される。
【0032】
以上の構成を有する充電装置20を用いて自動搬送装置1に搭載された蓄電池5に充電する際には、図8(a)に示すように、水平方向における一次コア24(詳細には、開放端面24dに中間部材28の一面28aを当接させた一次コア24)と二次コア26との相対的な位置決めを行ってから、図8(b)に示すように、垂直方向における両コア24,26の相対的な位置決めを行うようにして、給電側コアユニット21と受電側コアユニット22とを相対的に接近移動させ、一次コア24の開放端面24dと二次コア26の開放端面26dとで中間部材28を挟持する。
【0033】
ここでは、自動搬送装置1が走行することにより、水平方向における一次コア24と二次コア26との相対的な位置決めが行われ、給電側コアユニット21を昇降可能に支持した昇降機構が上昇すると共に、受電側コアユニット22を昇降可能にした昇降機構が下降することにより、垂直方向における両コア24,26の相対的な位置決め(両コア24,26による中間部材28の挟持)が行われる。そして、中間部材28を両コア24,26によって挟持した状態で電源6と電気的に接続された一次コイル23に通電すると、一次コイル23周りに磁束が発生し、この磁束は一次コイル23が巻回された一次コア24に鎖交する。
【0034】
一次コア24に鎖交した磁束Zは、図9に示すように、一次コア24を構成する各金属板27の板長方向に沿って流れる。一次コア24の開放端面24dと二次コア26の開放端面26dとで軟磁性を有する中間部材28を挟持していることから、一次コア24を流れる磁束Zは、一対の脚部24a,24bのうちの一方(ここでは24a)の開放端面24d、中間部材28、及び二次コア26の脚部26aの開放端面26dを通って二次コア26の脚部26aに流れ込む。二次コア26の脚部26aに流れ込んだ磁束Zは、二次コア26を構成する各金属板27の板長方向に沿って流れ、脚部26bの開放端面26d、中間部材28、及び一次コア24の脚部24bの開放端面24dを通って一次コア24の脚部24bに流れ込む。このようにして一次コア24及び二次コア26を磁束Zが流通するのに伴い、二次コア26に巻回された二次コイル25に誘導電流が流れ、二次コイル25に電気的に接続された蓄電池5(図7参照)に充電される。
【0035】
本発明に係る充電装置20では、上記のとおり、軟磁性を有する中間部材28が一次コア24の開放端面24dと二次コア26の開放端面26dとで挟持された状態で一次コイル23に通電されることから、一次コイル23への通電に伴って一次コア24に生じる磁束Zは中間部材28を介して両コア24,26間で伝達される。そして、中間部材28が一次コア24及び二次コア26よりも磁気異方性が小さい部材である関係上、両コア24,26間に、磁束Zを様々な方向に流すことを可能とする(磁束Zの流通方向の自由度が高められた)磁束流通経路が形成される。
【0036】
このため、図9に示すように、二次コア26の開放端面26dが一次コア24の開放端面24dに対して理想の配置位置(対向する開放端面24d,26d同士が完全に衝合する位置)から水平方向に位置ズレした状態で配置されていても、両コア24,26の開放端面24d,26dで中間部材28が挟持されていれば、両コア24,26間で磁束Zの伝達効率が低下する(両コア24,26間で発生する励磁インダクタンスが低下する)のを可及的に防止することができる。これにより、給電側の一次コア24から受電側の二次コア26に対し、所定量の電力を安定的に伝送することができる充電装置20を実現することができる。従って、この充電装置20を用いれば、自動搬送装置1に搭載された蓄電池5への充電を迅速に完了することができる。
【0037】
特に本実施形態では、中間部材28として、フェライト(ソフトフェライト)で形成されたもの、すなわち酸化鉄を主成分とした軟磁性を有する焼結体、を用いている。フェライトは、磁気異方性が実質的になく、また安価であることから、両コア24,26間での電力伝送効率の低下を低コストに防止することができて好適である。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る充電装置20について説明を行ったが、本発明の実施の形態は、以上で説明したものに限定されるわけではない。例えば、以上の実施形態では、中間部材28を一次コア24と一体的に保持するようにしたが、中間部材28は、その他面28bを二次コア26の開放端面26dに当接させた状態で二次コア26と一体的に保持するようにしても良い。
【実施例0039】
本発明の有用性を実証すべく、本発明者らは、本発明の構成を有する「実施例に係る充電装置」、及び本発明の構成を有さない「比較例に係る充電装置」を準備し、これらそれぞれについて、給電側の一次コアの開放端面に対する受電側の二次コアの開放端面の相対位置が変化する(ここでは、両端面の水平方向でのズレ量が大きくなる)のに伴って、一次コアに巻回した一次コイルへの通電時に一次コアと二次コアの間に生じる励磁インダクタンスがどのように変化するかを確認した。その結果を図10に示す折れ線グラフ、すなわち、横軸をズレ量(単位:mm)とし、縦軸を両コア間で発生する励磁インダクタンスを第1コア(又は第2コア)の体積で除した値(単位:mH/L)とした折れ線グラフに示す。
【0040】
上記確認試験の実施に際して準備した「実施例に係る充電装置」とは、図7図9を参照して説明した本発明の実施形態に係る充電装置20と同様の構成を有する充電装置、すなわち略U字状の積層コアからなる一次コアの開放端面と二次コアの開放端面とで、軟磁性を有すると共に両コアよりも磁気異方性が小さい中間部材を挟持し、その状態で一次コアに巻回した一次コイルに通電される充電装置である。この充電装置では、一次コア及び二次コアとして、日立金属株式会社製のファインメット(登録商標)からなる金属薄板を板厚方向に複数枚積層させたものを使用した。また、中間部材として、フェライト製の平板状部材を使用した。
【0041】
また、上記試験の実施に際しては、2種類の「比較例に係る充電装置」を準備した。
第1には、実施例に係る充電装置で用いた中間部材が省略された充電装置、つまり、一次コアの開放端面と二次コアの開放端面とが間隔を空けて対向配置され、その状態で一次コアに巻回した一次コイルに通電されるもの(以下、「比較例1に係る充電装置」と言う)である。第2には、比較例1に係る充電装置における一次コア及び二次コアのそれぞれを同サイズのフェライトコアに置き換えたもの(以下、「比較例2に係る充電装置」と言う)である。
【0042】
図10に示す試験結果からは以下のことがわかる。
・比較例1に係る充電装置の場合、互いに平行に配置される一次コアの開放端面と二次コアの開放端面が、両開放端面と平行な面内で位置ズレしなければ、両コア間で発生する励磁インダクタンスが最も高い。但し、両開放端面の上記面内での位置ズレ量に比例するかたちで励磁インダクタンスが低下する。
・比較例2に係る充電装置の場合、両開放端面がこれと平行な面内で位置ズレしても励磁インダクタンスは変化しない。但し、この充電装置で発生する励磁インダクタンスは、比較例1に係る充電装置で発生する励磁インダクタンスの最大値の30%程度しかない。
【0043】
これに対し、本発明に係る充電装置では、比較例2に係る充電装置と同様に、一次コアの開放端面に対して二次コアの開放端面が両開放端面と平行な面内で位置ズレしても励磁インダクタンスは変化しない。しかも、両コア間に発生する励磁インダクタンスは、比較例2に係る充電装置で発生する励磁インダクタンスよりも大きい。
【0044】
従って、本発明によれば、互いに平行に配置される一次コアの開放端面及び二次コアの開放端面の一方が他方に対して両開放端面と平行な面内で位置ズレ配置された場合でも、両コア間で磁束の伝達効率が低下するのを可及的に防止することができる。これにより、一次コアから二次コアに所定量の電力を安定的に伝送することのできる充電装置を実現することができる。そのため、本発明に係る充電装置を、例えば、所定のルートに沿って製品等を自動的に搬送する自動搬送装置に搭載される蓄電池に充電するための充電装置に適用すれば、蓄電池への充電を効率良くかつ安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 自動搬送装置
5 蓄電池
6 電源
20 充電装置
23 一次コイル
24 一次コア
24d 開放端面
25 二次コイル
26 二次コア
26d 開放端面
27 金属板
28 中間部材
C 車両
Z 磁束
図1
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図5
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図9
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図11