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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066319
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】宝飾箱
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/02 20060101AFI20240508BHJP
   A44C 9/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A44C17/02
A44C9/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175827
(22)【出願日】2022-11-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】509350446
【氏名又は名称】田中 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105094
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳子
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA21
3B114BA03
3B114BA06
3B114BE01
3B114CC04
(57)【要約】
【課題】従来の宝飾箱の問題点を克服し、音声の演出効果で観察者に他にはない感動を引き起こすことができる宝飾箱を提供する。
【解決手段】宝飾箱11は、上箱体13が閉じ位置から開き位置に達し予め決められた第1時間が経過するまで紫外線の照射を抑止し、第1時間が経過するダイヤモンド23に向かって紫外線の照射を開始する光源33と、スピーカー47から、録音された音声を再生する音声再生ユニット45と、上箱体13が閉じ位置から開き位置に達し紫外線の照射の開始から予め決められた第2時間が経過するまで音声の再生を保留する保留回路51とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下箱体と、
前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、
前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、
前記下箱体および前記上箱体に接続されて、前記開き位置に前記上箱体を位置させる駆動力を発揮するばね部材と、
前記下箱体または前記上箱体に支持される光源であって、前記上箱体が前記閉じ位置から前記開き位置に達し予め決められた第1時間が経過するまで紫外線の照射を抑止し、前記第1時間が経過すると前記ダイヤモンドに向かって紫外線の照射を開始する光源と、
前記下箱体または前記上箱体に支持されて、スピーカーから、録音された音声を再生する音声再生ユニットと、
前記音声再生ユニットに接続されて、前記上箱体が前記閉じ位置から前記開き位置に達し前記照射の開始から予め決められた第2時間が経過するまで前記音声の再生を保留する保留回路と
を備えることを特徴とする宝飾箱。
【請求項2】
請求項1に記載の宝飾箱において、前記光源は、前記照射の開始後に、徐々に光量を増加させながら前記ダイヤモンドに前記紫外線を照射し、前記保留回路は、前記紫外線が最大光量に達した後に予め決められた第3時間が経過するまで前記音声の再生を保留することを特徴とする宝飾箱。
【請求項3】
請求項1または2に記載の宝飾箱において、前記上箱体または前記下箱体に支持されて、前記音声の録音をオンオフする録音スイッチと、宝飾箱の構成体以外の物体から前記録音スイッチを保護する防護体とを備えることを特徴とする宝飾箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下箱体と、下箱体にヒンジで開閉自在に連結される上箱体とを備える宝飾箱に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、指輪やその他の宝飾品を支持する下箱体と、下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、閉じ位置で下箱体に合わさって宝飾品を隠し、開き位置で宝飾品を露出する上箱体とを備える宝飾箱を開示する。宝飾箱には、宝飾品に向かって可視光線を照射する光源と、録音された音声を再生する録音チップとが組み込まれる。スイッチが導通すると、透明なダイヤモンドに可視光線は照射され、例えばプレゼントならば贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)は再生されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6405858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いまのところ、聴覚効果を強調する宝飾箱は宝飾品市場で普及していない。とはいえ、例えばプレゼントであれば、宝飾箱を開くたびに贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が再生されるなら、プレゼントされた女性は好んで音声を聞く。宝飾箱に対して強い愛着は醸成される。録音された音声を再生する宝飾箱の普及が望まれる。本発明者は、特許文献1に記載の宝飾箱を深く観察する過程で従来の宝飾箱の問題点に気づいた。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、従来の宝飾箱の問題点を克服し、音声の演出効果で観察者に他にはない感動を引き起こすことができる宝飾箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、下箱体と、前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、前記下箱体および前記上箱体に接続されて、前記開き位置に前記上箱体を位置させる駆動力を発揮するばね部材と、前記下箱体または前記上箱体に支持される光源であって、前記上箱体が前記閉じ位置から前記開き位置に達し予め決められた第1時間が経過するまで紫外線の照射を抑止し、前記第1時間が経過すると前記ダイヤモンドに向かって紫外線の照射を開始する光源と、前記下箱体または前記上箱体に支持されて、スピーカーから、録音された音声を再生する音声再生ユニットと、前記音声再生ユニットに接続されて、前記上箱体が前記閉じ位置から前記開き位置に達し前記照射の開始から予め決められた第2時間が経過するまで前記音声の再生を保留する保留回路とを備える宝飾箱は提供される。
【0007】
上箱体が開き位置に達すると、ダイヤモンドは露出する。可視光(自然光や電灯の光)の下でダイヤモンドは透明な輝きを放つ。上箱体が開き位置に達して第1時間が経過すると、光源からダイヤモンドに紫外線は照射され始める。ダイヤモンドは透明から青色に変色する。こうして上箱体の開放動作に応じて光の視覚効果は作り出される。ばね部材は、開き位置に上箱体を位置させる駆動力を発揮するので、閉じ位置および開き位置の中間位置でダイヤモンドが変色し始めることは防止され、観察者は確実にダイヤモンドの変色を目撃することができる。
【0008】
音声再生ユニットは録音された音声を再生する。音声はスピーカーから出力される。例えばプレゼントであれば、観察者には贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が届けられることができる。音声の再生はダイヤモンドの視覚効果から遅延することから、ダイヤモンドの視覚効果および音声の演出効果は順番に観察者に作用する。観察者はダイヤモンドの視覚効果を意識した後に音声の聴覚効果(言語処理を含む)を意識することができる。音声の演出効果は視覚効果に上積みされる。本発明者の気づきによれば、ひとは同時に複数の感覚を意識することができないことから、音声の演出効果が視覚効果と同時に進行する場合に比べて、音声の再生が視覚効果からずれることで視覚および音声の相乗効果は強められることができる。この演出効果で宝飾箱の観察者は他では味わえない感動を体験することができる。
【0009】
前記光源は、前記照射の開始後に、徐々に光量を増加させながら前記ダイヤモンドに前記紫外線を照射してもよく、この場合には、前記保留回路は、前記紫外線が最大光量に達した後に予め決められた第3時間が経過するまで前記音声の再生を保留するとよい。上箱体が開き位置に達した後、ダイヤモンドは徐々に透明から青色に変色していく。ダイヤモンドの観察者は変色の過程をつぶさに目の当たりにする。演出効果は一層高められることができる。
【0010】
宝飾箱は、前記上箱体または前記下箱体に支持されて、前記音声の録音をオンオフする録音スイッチと、宝飾箱の構成体以外の物体から前記録音スイッチを保護する防護体とを備えてもよい。録音スイッチが導通すると、音声再生ユニットに音声は録音されることができる。防護体の働きで、録音スイッチは誤操作から保護されることができる。意図しない音声の録音(上書きに基づく音声の消去)は防止されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る宝飾箱の外観を示す斜視図である。
図2】上箱体が開放された際に宝飾箱の構造を概略的に示す斜視図である。
図3】ヒンジの構成を概略的に示す拡大斜視図である。
図4図1の4-4線に沿った垂直断面図である。
図5図2の5-5線に沿った垂直断面図である。
図6】第1具体例に係る光照射回路の回路図である。
図7】音声再生ユニットの構成を概略的に示すブロック図である。
図8図5に対応し、録音スイッチおよび防護体の関係を示す図である。
図9】第2具体例に係る光照射回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る宝飾箱11を概略的に示す。宝飾箱11は、下箱体12と、下箱体12に重なって下箱体12とともに直方体を形成する上箱体13とを備える。下箱体12は、四角い輪郭の底板14a、および、底板14aの4辺から垂直に立ち上がる4つの側壁14bを有する硬質の樹脂成形体と、樹脂成形体の外面に貼り付けられて、樹脂成形体に装飾を施す貼り紙15とを有する。上箱体13は、四角い輪郭の天板16a、および、天板16aの4辺から下降し下端で下箱体12の側壁14bの上端に合わさって宝飾箱11の側壁を形成する側壁16bを有する硬質の樹脂成形体と、樹脂成形体の外面に貼り付けられて、樹脂成形体に装飾を施す貼り紙17とを有する。貼り紙15、17には例えばスエード調や布質のものが用いられればよい。
【0014】
図2に示されるように、下箱体12には側壁14bで囲まれた直方体の空間に緩衝材18が嵌め込まれる。緩衝材18は、例えば、スポンジと、スポンジを包み込む布材18aとで形成される。緩衝材18にはスリット19が形成される。スリット19には例えば指輪21が差し込まれる。緩衝材18の弾性力の働きで指輪21はスリット19内に保持される。
【0015】
指輪21は、例えば指の太さに応じた径を有するプラチナ製の環部材22と、環部材22の台座に固定されるダイヤモンド粒23とを備える。ダイヤモンド粒23は1つであっても複数であってもよい。ダイヤモンド粒23はストロング以上の青色蛍光性(ストロングブルーまたはベリーストロングブルー)を有する。ダイヤモンド粒23は、可視光(例えば自然光や電灯の光)の下で透明な輝きを放つ一方で、紫外線の下では青色に輝く。こうしてダイヤモンド粒23は下箱体12に支持される。複数のダイヤモンド粒23が配置される場合には、全ての(あるいはデザイン上でまとまりある群ごとに)ダイヤモンド粒23の青色蛍光性はストロングブルーまたはベリーストロングブルーに統一されるとよい。
【0016】
上箱体13には側壁16bで囲まれた直方体の空間内に内張材24が嵌め込まれる。内張材24は、宝飾箱11の天井面を形成する四角い輪郭の化粧天板24aと、化粧天板24aの4辺からそれぞれ連続して、4つの側壁16bに内側から重ねられる4枚の内張板24bとを備える。ここでは、4枚の内張板24bは側壁16bの内面に接着されず、内張材24は上箱体13に対して着脱自在に収容される。
【0017】
図3に示されるように、上箱体13は下箱体12にヒンジ26で開閉自在に連結される。ヒンジ26は、上箱体13の1側壁16bに内側から重ねられて固定され、複数の管体27aを有する第1羽根27と、下箱体12の側壁14bに内側から重ねられて固定され、第1羽根27の管体27aに互い違いに直列に配置される複数の管体28aを有する第2羽根28と、第1羽根27の管体27aおよび第2羽根28の管体28aに共通に挿入される1本のヒンジピン29とを備える。第1羽根27および第2羽根28はヒンジピン29回りで相対回転する。
【0018】
ヒンジ26には板ばね31が接続される。図4に示されるように、板ばね31は、ヒンジピン29の軸心に平行に母線を維持する湾曲体に形成される。板ばね31の両端はヒンジピン29から離れた位置で第1羽根27および第2羽根28にそれぞれ結合される。上箱体13の下端が下箱体12の上端に合わさる閉じ位置では、第1羽根27および第2羽根28は1つの面に沿って並んで配置され、板ばね31の中間域はヒンジピン29から内側に最も遠ざかる。上箱体13が閉じ位置から開き位置にヒンジピン29回りで変位するにつれて、第1羽根27および第2羽根28の間で外側の角度は狭まっていき、板ばね31の中間域はヒンジピン29に接近する。図5に示されるように、板ばね31の中間域がヒンジピン29に接触すると、下箱体12に対してヒンジピン29回りに上箱体13の変位は規制され、上箱体13の開き位置が規定される。ヒンジピン29回りで規定の中間開度よりも開度が小さいと、板ばね31は閉じ位置に向かって上箱体13に駆動力を作用する。開度が規定の中間開度より大きいと、板ばね31は開き位置に向かって上箱体13に駆動力を作用する。ヒンジ26および板ばね31はヒンジカバー32で覆われる。ヒンジカバー32は例えば緩衝材18の布材18aと同等な素材から形成される。
【0019】
上箱体13の化粧天板24aには予め決められた指向性Dvに則って紫外線を放出するLEDランプ(光源)33が埋め込まれる。LEDランプ33は、例えば長波長UV―A(315nm~400nmの波長)の光線を放出する。望ましくは、LEDランプ33は可視光線以外の光線のみを放出する。望ましくは、LEDランプ33は狭い指向性Dvを有する。LEDランプ33は、照射域全域で下箱体によって遮られる指向性Dvを有する。
【0020】
LEDランプ33には、樹脂成形体の天板16aと化粧天板24aとの間に区画される電池室34に収容される電池35が接続される。電池35には例えば薄型のボタン電池が用いられればよい。ここでは、例えば複数のボタン電池が直列に接続される。LEDランプ33には電池35から電流が供給される。
【0021】
ヒンジ26および板ばね31には、LEDランプ33に対して電流の供給および切断を制御するスイッチ36が組み込まれる。板ばね31の中間域には、板ばね31から電気的に絶縁されながら第1接点37が固着される。ヒンジ26は、第1接点37と協働してスイッチ36を構成する第2接点として機能する。したがって、ヒンジ26は導電材から形成される。第1接点37は例えば銅といった導電材から形成される。第1接点37および板ばね31の間には例えば絶縁体が挟まれる。第1接点37は、板ばね31でヒンジピン29に向き合う面に配置される。第1接点37は、上箱体13の開き位置でヒンジ26に接触し、開き位置以外ではヒンジ26から離隔する。
【0022】
図6に示されるように、宝飾箱11では、LEDランプ33、電池35およびスイッチ36を含む第1具体例に係る光照射回路38が構築される。光照射回路38では電池35に直列にLEDランプ33のLED素子が接続される。LEDランプ33には直列にタイマー限時ノーマリーオープン接点(以下「タイマー接点」)39が接続される。LEDランプ33およびタイマー接点39には並列にスイッチ36およびタイマー41が接続される。スイッチ36が導通すると、タイマー41が動作し、予め決められた時間(以下「第1時間」という)の経過後にタイマー接点39が閉じる。その結果、LEDランプ33は通電する。スイッチ36が開くと、タイマー41は復帰し、タイマー接点39が開放される。その結果、LEDランプ33は消える。
【0023】
図7に示されるように、宝飾箱11には録音された音声を再生する音声再生ユニット45が組み込まれる。音声再生ユニット45は、マイクロホン46から音声信号を取得し、スピーカー47に音声信号を供給する音声回路48を備える。音声回路48には電池35が接続される。音声回路48は電池35の電圧を受けて動作する。
【0024】
マイクロホン46は音声に基づく空気の振動を検出し音声信号(電気信号)に変換する。生成された音声信号は例えばメモリー49に記録される。メモリー49には例えばEEPROMが用いられることができる。メモリー49は、一度だけ音声信号の書き込みを許容するメモリーであるとよい。マイクロホン46は上箱体13または下箱体12に支持される。ここでは、例えば天板16aと化粧天板24aとの間に区画される空間にマイクロホン46は収容される。天板16aや化粧天板24aには、マイクロホン46の位置に対応して配置されマイクロホン46に外気を接続する通孔が形成されてもよい。
【0025】
スピーカー47は音声信号に基づき空気の振動を生成し対応する音声を再生する。再生された音声は観察者の聴覚を刺激する。こうして観察者は音声を聞き取ることができる。スピーカー47は上箱体13または下箱体12に支持される。ここでは、例えば天板16aと化粧天板24aとの間に区画される空間にスピーカー47は収容される。天板16aや化粧天板24aには、スピーカー47の位置に対応して配置されスピーカー47に外気を接続する通孔が形成されてもよい。
【0026】
音声再生ユニット45には、紫外線の照射の開始から予め決められた時間(以下「第2時間」という)が経過するまで音声の再生を保留する保留回路51が接続される。保留回路51は音声回路48にスイッチ36を接続する。音声回路48と光照射回路38とで電池35およびスイッチ36は共通化される。保留回路51はスイッチ36の導通から(第1時間+第2時間)を計時する。ここでは、紫外線の照射が開始されてから予め決められた第2時間が経過すると、音声回路48は音声信号をメモリー49から取り出しスピーカー47に供給する。
【0027】
音声回路48には録音スイッチ52が接続される。録音スイッチ52が導通すると、音声回路48はマイクロホン46から音声信号を取得しメモリー49にその音声信号を格納する。図8に示されるように、録音スイッチ52のボタンは上箱体13の内壁面に設置されることができる。ここでは、ボタンが押され続ける限り、録音スイッチ52は導通する。ボタンが押し操作から解放されると、録音スイッチ52は切断される。ボタンが上箱体13の内側に配置されることで、上箱体13が閉じ位置に位置するだけで録音スイッチ52は誤操作から保護されることができる。上箱体13は、宝飾箱11の構成体以外の物体から録音スイッチ52を保護する防護体として機能する。こうして、意図しない音声の録音(上書きに基づく音声の消去)は防止されることができる。その他、録音スイッチ52はスイッチ36の導通と連動してもよい。その結果、上箱体13が開き位置に達した状態で録音スイッチ52が操作されると、音声はメモリー49に録音されることができる。
【0028】
LEDランプ33、タイマー接点39、タイマー41、音声回路48、メモリー49および保留回路51は例えば共通のプリント基板上に実装されてもよい。スイッチ36の第1接点37やヒンジ26の第1羽根27または第2羽根28、電池35、マイクロホン46、スピーカー47などは例えばビニル被膜線といった電線でプリント基板上の配線パターンに電気的に接続されればよい。プリント基板は例えば電池室34に収容されればよい。
【0029】
次に宝飾箱11の作用を説明する。図1に示されるように、上箱体13が閉じ位置に位置すると、上箱体13の下縁は下箱体12の上縁に合わさる。上箱体13は指輪21に覆い被さってダイヤモンド粒23を隠す。宝飾箱11の観察者は閉じた宝飾箱11の外観を視認する。ダイヤモンド粒23は観察者の視界から外れる。
【0030】
このとき、図4に示されるように、板ばね31の中間域はヒンジピン29から最も遠ざかる。したがって、スイッチ36の第1接点37はヒンジ26すなわち第2接点から離れる。スイッチ36は切断される。LEDランプ33は消灯状態に維持される。音声回路の動作は停止状態に維持される。
【0031】
観察者が板ばね31の弾性力に抗してヒンジピン29回りで開き位置に向かって上箱体13を動かすと、上箱体13の下端は下箱体12の上端から離れていく。上箱体13および下箱体12の隙間からダイヤモンド粒23に向かって可視光線は差し込む。ダイヤモンド粒23は徐々に露出していく。ダイヤモンド粒23は可視光線の照射に曝される。したがって、ダイヤモンド粒23は透明な輝きを放つ。
【0032】
上箱体13の開度が規定の中間開度よりも増大すると、板ばね31は開き位置に向かって上箱体13を駆動する。その結果、上箱体13は最大開度の開き位置に到達する。板ばね31の弾性力に応じて上箱体13は最大開度の開き位置に保持される。図2に示されるように、上箱体13に遮られずに観察者はダイヤモンド粒23を視認することができる。ダイヤモンド粒23は可視光(自然光や電灯の光)の下で透明な輝きを放つ。
【0033】
上箱体13が開き位置に到達すると、図5に示されるように、板ばね31の弾性力を受けて板ばね31の中間域はヒンジピン29に押し当てられる。こうして第1接点37はヒンジ26すなわち第2接点に接触する。スイッチ36は導通する。スイッチ36の導通(オン動作)から第1時間が経過すると、LEDランプ33は点灯する。LEDランプ33はダイヤモンド粒23に紫外線を照射し始める。ダイヤモンド粒23は青色に輝く。
【0034】
上箱体13の開放後しばし透明に輝くダイヤモンド粒23が観察された後に、ダイヤモンド粒23は透明から青色に変色する。こうして上箱体13の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。板ばね31は、開き位置に上箱体13を位置させる駆動力を発揮するので、閉じ位置および開き位置の中間位置でダイヤモンド粒23が変色し始めることは防止され、観察者は確実にダイヤモンド粒23の変色を目撃することができる。
【0035】
紫外線の照射開始から第2時間が経過すると、音声回路48は録音された音声を再生する。例えばプレゼントであれば、観察者には贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が届けられることができる。音声の再生はダイヤモンド粒23の視覚効果から遅延することから、ダイヤモンド粒23の視覚効果および音声の演出効果は順番に観察者に作用する。観察者はダイヤモンド粒23の視覚効果を意識した後に音声の聴覚効果(言語処理を含む)を意識することができる。音声の演出効果は視覚効果に上積みされる。本発明者の気づきによれば、ひとは同時に複数の感覚を意識することができないことから、音声の演出効果が視覚効果と同時に進行する場合に比べて、音声の再生が視覚効果からずれることで視覚および音声の相乗効果は強められることができる。この演出効果で宝飾箱の観察者は他では味わえない感動を体験することができる。
【0036】
スイッチ36が切断されると、LEDランプ33は消える。音声回路48は音声信号の供給を終了する。音声の再生は終了する。
【0037】
プレゼントに先立って贈り主の音声は予め宝飾箱11に録音される。録音にあたって上箱体13は開き位置に位置づけられる。贈り主は録音スイッチ52を押しながらマイクロホン46に向かって音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)を発する。録音スイッチ52の導通に応じて音声回路48は動作する。音声はマイクロホン46で音声信号に変換される。音声信号はメモリー49に格納される。録音スイッチ52のボタンから指が離れると、音声の録音は終了する。
【0038】
ここでは、緩衝材18の布材18aは黒色や濃紺色といった色に着色されるとよい。こうした着色によれば、LEDランプ33の光線に紫外線域に隣接する可視光線が微妙に混入しても布材18aに照らされる可視光線は目立たない。LEDランプ33の光線は観察者の視覚から除外されることができる。
【0039】
図9は第2具体例に係る光照射回路の構成を概略的に示す。光照射回路43は、電池35に接続されるNPNトランジスターTR1を備える。電池35のプラス端子とNPNトランジスターTR1のコレクターCとの間にLEDランプ33のLED素子は接続される。電池35のプラス端子とNPNトランジスターTR1のベースBとの間にはスイッチ36および第1抵抗R1が直列に接続される。NPNトランジスターTR1のベースBと電池35のマイナス端子との間にはキャパシターC1が接続される。第1抵抗R1およびキャパシターC1と並列に第2抵抗R2は接続される。NPNトランジスターTR1のエミッターEは電池35のマイナス端子に接続される。この光照射回路43では、スイッチ36が導通すると、時定数回路R1、C1の働きでNPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は徐々に上昇する。電圧の上昇中にNPNトランジスターTR1のベースBで電圧が規定値に達すると、コレクターCに電流は流入する。その後、規定の時間が経過すると、NPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は一定に維持される。スイッチ36が切断されると、キャパシターC1の電荷は第2抵抗R2を通じて放電される。
【0040】
音声再生ユニット45の保留回路51は、紫外線が最大光量に達した後に予め決められた時間(以下「第3時間」という)が経過するまで音声の再生を保留する。音声回路48と光照射回路43とで電池35およびスイッチ36は共通化される。保留回路51は、スイッチ36の導通から紫外線が最大光量に達する時間(以下「漸増時間」という)、および、第3時間を計時する。漸増時間は光照射回路43の電圧特性で特定されることができる。漸増時間は、スイッチ36の導通から、NPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧が最大値で維持され始める時間に相当する。ここでは、紫外線が最大光量に達した時点から予め決められた第3時間が経過すると、音声回路48は音声信号をメモリー49から取り出しスピーカー47に供給する。
【0041】
LEDランプ33、NPNトランジスターTR1、キャパシターC1、第1および第2抵抗R1、R2、音声回路48、メモリー49および保留回路51は例えば共通のプリント基板上に実装されてもよい。スイッチ36の第1接点37やヒンジ26の第1羽根27または第2羽根28、電池35、マイクロホン46、スピーカー47などは例えばビニル被膜線といった電線でプリント基板上の配線パターンに電気的に接続されればよい。プリント基板は例えば電池室34に収容されればよい。
【0042】
第2具体例に係る光照射回路43では、上箱体13が開き位置に到達してスイッチ36が導通してから、スイッチ36の導通(オン動作)後、第1時間の経過を待って電池35からNPNトランジスターTR1のベースBに規定値の電圧が印加される。NPNトランジスターTR1のコレクターCに電流が流入し、LEDランプ33は点灯し始める。したがって、宝飾箱11の観察者は、上箱体13の開放後しばし透明に輝くダイヤモンド粒23を観察することができる。
【0043】
時定数回路R1、C1の働きでNPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は徐々に上昇する。LEDランプ33に流通する電流量は徐々に増加していく。LEDランプ33からダイヤモンド粒23に照射される紫外線の光量は増加していく。ダイヤモンド粒23は徐々に透明から青色に変色していく。こうして上箱体13の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。板ばね31は、開き位置に上箱体13を位置させる駆動力を発揮するので、閉じ位置および開き位置の中間位置でダイヤモンド粒23が変色し始めることは防止され、観察者は確実にダイヤモンド粒23の変色を目撃することができる。
【0044】
紫外線の照射開始から第2時間が経過すると、すなわち、ダイヤモンド粒23が最大限に青く輝き始めてから第3時間が経過すると、音声回路48は録音された音声を再生する。例えばプレゼントであれば、観察者には贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が届けられることができる。音声の再生はダイヤモンド粒23の視覚効果から遅延することから、ダイヤモンド粒23の視覚効果および音声の演出効果は順番に観察者に作用する。観察者はダイヤモンド粒23の視覚効果を意識した後に音声の聴覚効果(言語処理を含む)を意識することができる。音声の演出効果は視覚効果に上積みされる。本発明者の気づきによれば、ひとは同時に複数の感覚を意識することができないことから、音声の演出効果が視覚効果と同時に進行する場合に比べて、音声の再生が視覚効果からずれることで視覚および音声の相乗効果は強められることができる。この演出効果で宝飾箱の観察者は他では味わえない感動を体験することができる。
【0045】
スイッチ36が切断されると、LEDランプ33は消える。音声回路48は音声信号の供給を終了する。音声の再生は終了する。キャパシターC1の電荷は第2抵抗R2を通じて放電される。
【0046】
なお、LEDランプ33は上箱体13に代わって下箱体12に支持されてもよい。その他、ダイヤモンド粒23は、ネックレスのチェーンを形成する複数の台座に搭載されてもよい。台座は例えばプラチナや金といった金属材から成形される。個々の台座には1個のダイヤモンド粒23が固定されてもよく複数のダイヤモンド粒23が固定されてもよい。その他、ダイヤモンド粒23は、ペンダントやブレスレット、ピアス、リング、アンクレット上にあしらわれてもよい。ダイヤモンド粒は均一な大きさでもよく大小混ぜ込まれてもよい。
【0047】
前述の宝飾箱11では、スイッチ36に、上箱体13が開き位置に達すると上箱体13によって押し下げられるプランジャーを有するタクトスイッチが用いられてもよい。第1具体例に係る光照射回路38や第2具体例に係る光照射回路43は前述と同様な機能を実現する限り他の構成の電子回路に置き換えられてもよい。また、スイッチ36の動作は、前述のように開き位置に位置する上箱体13に連動するだけでなく、閉じ位置に位置する上箱体13に連動してもよい。その他、光照射回路38、43や音声回路48、保留回路51の機能はマイクロプロセッサー(MPU)で実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
11…宝飾箱、12…下箱体、13…上箱体および防護体、23…ダイヤモンド(ダイヤモンド粒)、26…ヒンジ、31…ばね部材(板ばね)、33…光源(LEDランプ)、45…音声再生ユニット、47…スピーカー、51…保留回路、52…録音スイッチ。
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