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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066321
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/24 20120101AFI20240508BHJP
   G06Q 20/08 20120101ALI20240508BHJP
【FI】
G06Q20/24
G06Q20/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175833
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】516103389
【氏名又は名称】FTS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 祐太郎
【テーマコード(参考)】
5L020
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA21
5L020AA52
5L055AA21
5L055AA52
(57)【要約】
【課題】後払い決済における不払いを抑制可能な情報処理装置及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】後払い決済事業者を介して購入者が購入した商品又はサービスの代金を、購入者に代わって後払い決済事業者に支払う情報処理装置2であって、購入者又は後払い決済事業者から後払い決済代金の支払い要求を受け付け、支払い要求に基づいて、購入者の勤務先が購入者に支払う給与の中から後払い決済代金を差し引き、差し引いた後払い決済代金を後払い決済事業者に支払う。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後払い決済事業者を介して購入者が購入した商品又はサービスの代金を、前記購入者に代わって前記後払い決済事業者に支払う情報処理装置であって、
前記購入者又は前記後払い決済事業者から前記代金の支払い要求を受け付ける後払い請求受付部と、
前記支払い要求に基づいて、前記購入者の勤務先が従業員である前記購入者に支払う給与の中から前記代金を差し引き、差し引いた前記代金を前記後払い決済事業者に支払う代金支払い実行部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記従業員から前記給与の前払い要求を受け付ける前払い要求受付部と、
前記前払い要求に基づいて、前記給与の前払いを実行する前払い実行部と、をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置
【請求項3】
前記前払いした金額が前記給与の総額に満たない場合、前記給与の残りの額の支払いを給与支払い日に実行する給与支払い実行部をさらに備える、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記従業員の前記前払いが可能な額、又は前記代金として前記給与から差し引き可能な額を算出するための情報を取得する情報取得部をさらに備える、請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記購入者の前記代金として前記給与から差し引き可能な額を与信情報として前記後払い決済事業者に提供する与信情報提供部をさらに備える、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記前払いを利用する前記従業員に、前記給与から前記代金の支払いが可能であることを示す広告を表示する広告表示部をさらに備える、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
後払い決済事業者を介して購入者が購入した商品又はサービスの代金を、前記購入者に代わって前記後払い決済事業者に支払う情報処理方法であって、
前記購入者又は前記後払い決済事業者から前記代金の支払い要求を受け付ける後払い請求受付ステップと、
前記支払い要求に基づいて、前記購入者の勤務先が従業員である前記購入者に支払う給与の中から前記代金を差し引き、差し引いた前記代金を前記後払い決済事業者に支払う支払い実行ステップと、を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネット通販などにおいて、後払いで商品やサービスの購入を可能とする後払い決済が普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6674578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、購入者の不払いによる貸倒れリスクを低減させるための仕組みを示しているものの、購入者の不払い自体を抑制することは難しい。
【0005】
そこで、本開示は、後払い決済における不払いを抑制可能な情報処理装置及び情報処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
(1)後払い決済事業者を介して購入者が購入した商品又はサービスの代金を、前記購入者に代わって前記後払い決済事業者に支払う情報処理装置であって、前記購入者又は前記後払い決済事業者から前記代金の支払い要求を受け付ける後払い請求受付部と、前記支払い要求に基づいて、前記購入者の勤務先が従業員である前記購入者に支払う給与の中から前記代金を差し引き、差し引いた前記代金を前記後払い決済事業者に支払う代金支払い実行部と、を備えることを特徴とする。
(2)上記(1)の構成において、前記従業員から前記給与の前払い要求を受け付ける前払い要求受付部と、前記前払い要求に基づいて、前記給与の前払いを実行する前払い実行部と、をさらに備えることを特徴とする。
(3)上記(2)の構成において、前記前払いした金額が前記給与の総額に満たない場合、前記給与の残りの額の支払いを給与支払い日に実行する給与支払い実行部をさらに備えることを特徴とする。
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記従業員の前記前払いが可能な額、又は前記代金として前記給与から差し引き可能な額を算出するための情報を取得する情報取得部をさらに備えることを特徴とする。
(5)上記(4)の構成において、前記購入者の前記代金として前記給与から差し引き可能な額を与信情報として前記後払い決済事業者に提供する与信情報提供部をさらに備えることを特徴とする。
(6)上記(2)の構成において、前記前払いを利用する前記従業員に、前記給与から前記代金の支払いが可能であることを示す広告を表示する広告表示部をさらに備えることを特徴とする。
(7)後払い決済事業者を介して購入者が購入した商品又はサービスの代金を、前記購入者に代わって前記後払い決済事業者に支払う情報処理方法であって、前記購入者又は前記後払い決済事業者から前記代金の支払い要求を受け付ける後払い請求受付ステップと、前記支払い要求に基づいて、前記購入者の勤務先が従業員である前記購入者に支払う給与の中から前記代金を差し引き、差し引いた前記代金を前記後払い決済事業者に支払う支払い実行ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、後払い決済における不払いを抑制可能な情報処理装置及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の情報処理システムを示す図である。
図2】サービス事業者担当者、導入企業担当者及び導入企業従業員の設定画面を示す図である。
図3】情報処理装置への基本情報登録手順を示す図である。
図4】情報処理装置に設定される情報の一例を示す図である。
図5】導入企業従業員に対するサービス提供画面(前払い申請を含む)の一例を示す図である。
図6】情報処理装置の支払い処理手順を示す図である。
図7】情報処理システムにおける前払い及び給与払いの処理手順を示す図である。
図8】後払い決済の流れを示す図である。
図9】後払い決済時の表示画面の一例を示す図である。
図10】後払い決済支援サービスによる与信情報提供の流れを示す図である。
図11】後払い決済支援サービスによる第1給与天引き払いの流れを示す図である。
図12】後払い決済支援サービスによる第2給与天引き払いの流れを示す図である。
図13】後払い決済支援サービスによる後払い決済誘導の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0010】
(情報処理システム)
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置2と、サービス事業者端末3と、企業端末4と、従業員端末5と、人事労務サーバ6と、金融機関サーバ7と、後払い決済事業者サーバ8と、ネットワーク9と、を備える。
【0011】
情報処理装置2は、単一又は複数のサーバによって構成され、導入企業に対して前払い・給与払いサービスを提供する。また、情報処理装置2は、後払い事業者に対して後払い決済支援サービスを提供する。なお、後払い決済支援サービス及び後払い決済事業者サーバ8については後述する。サービス事業者端末3は、導入企業に前払い・給与払いサービスを提供するサービス事業者が使用する端末である。企業端末4は、前払い・給与払いサービスの導入企業が使用する端末である。従業員端末5は、前払い・給与払いサービスの導入企業に勤める従業員が使用する端末である。人事労務サーバ6は、前払い・給与払いサービスの導入企業に人事労務サービスを提供するサーバである。金融機関サーバ7は、銀行振込や電子マネーチャージの指示を受け付けるサーバである。ネットワーク9は、情報処理装置2、サービス事業者端末3、企業端末4、従業員端末5、人事労務サーバ6及び金融機関サーバ7を通信可能に接続する。なお、図面においては、前払い・給与払いサービスを「FUKUPE」と表記する場合がある。
【0012】
情報処理装置2が提供する前払い・給与払いサービスは、労働の対価を支払い予定日の前に支払う前払いを可能にするだけでなく、前払いした対価の額が支払い予定日に支払うべき対価の総額に満たない場合、残りの対価の額について支払い予定日に支払いを実行するサービスである。したがって、このような前払い・給与払いサービスを導入した企業は、自前でシステムを構築することなく、従業員に対する給与の前払いや、前払い分を差し引いた給与の支払いを行うことが可能になる。
【0013】
なお、上記の労働の対価には、報酬、賃金、給与、賞与、手当、経費などが含まれる。また、前払いは、貸付による前払いを含んでもよい。また、前払い及び支払い予定日に行う支払いは、銀行口座への振込み、電子マネーへのチャージ、プリペイドカードの発行やチャージ、現金自動預け払い機(ATM)による支払い、家族、友人、知人への送金などが含まれる。
【0014】
(情報処理装置の機能構成)
情報処理装置2は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能構成として、取得部21(情報取得部)と、受付部22(前払い要求受付部、後払い請求受付部)と、予約部23と、実行部24(前払い実行部、給与支払い実行部、代金支払い実行部)と、データベース25と、与信情報提供部26と、広告表示部27と、を備える。なお、与信情報提供部26及び広告表示部27は、後払い決済支援サービスのみに関連する機能構成であるため、詳細は後述する。
【0015】
取得部21は、前払い・給与払いサービスを導入する企業の基本情報や設定情報を取得し、データベース25に登録する。例えば、前払い・給与払いサービスを提供するサービス事業者の担当者(以下、サービス事業者の担当者とも言う。)は、企業から前払い・給与払いサービスの導入申込みを受け付けると、サービス事業者端末3から情報処理装置2(サービス事業者ログイン用URL)にアクセスする。これを受けた取得部21は、図2の上段に示すように、サービス事業者用のログイン画面G11を表示させるとともに、ログインに成功すると、導入企業登録画面G12を表示させる。サービス事業者の担当者は、この画面で導入企業の基本情報を登録する(図3のステップS101)。導入企業の基本情報には、例えば、企業ID、企業名、企業名カナ、代表者名、代表者名カナ、所在地などが含まれる。取得部21は、サービス事業者の担当者によって導入企業の基本情報が登録されると、サービス事業者端末3に対しては、引き続き各種の設定画面G13、G14を表示させ、導入企業担当者には、導入企業用のログイン情報を通知する(図3のステップS102)。この通知を受け取った導入企業担当者は、企業端末4から情報処理装置2(導入企業ログイン用URL)にアクセスする。これを受けた取得部21は、導入企業用のログイン画面G21を表示させるとともに、ログインに成功すると、各種の設定画面G22、G23を表示させる。なお、設定画面G13、G14、G22、G23で設定可能な設定情報は後述する。
【0016】
図3に示すように、取得部21は、ステップS101、S102の処理が終わると、反社会勢力による悪用やマネーロンダリングを防止するために導入企業の信用情報調査を行い(ステップS103)、その結果を信用情報データベースとしてデータベース25に登録する。さらに、取得部21は、人事労務サーバ6に含まれる導入企業の人事系システム、勤怠系システム及び給与系システムと接続した後(ステップS104)、これらのシステムから従業員台帳を取得する(ステップS105)。その後、取得部21は、反社会勢力による悪用やマネーロンダリングを防止するために従業員の信用情報調査を行い(ステップS106)、その結果を信用情報データベースとしてデータベース25に登録する。また、取得部21は、従業員台帳を取得後、勤怠系システムから勤怠情報を取得するとともに(ステップS107)、給与系システムから給与情報を取得する(ステップS108)。以上で取得部21による導入企業の基本情報の登録処理が完了する。なお、取得部21は、定期的に人事労務サーバ6にアクセスし、導入企業の勤怠情報や給与情報を最新のものに更新する。
【0017】
図2の上段に示すように、取得部21は、サービス事業者端末3に設定画面G13を表示させ、導入企業が利用する機能の選択を求める。ここで選択可能な機能は、前払い機能と給与払い機能であり、本実施形態では両方の機能が選択されることを前提とする。また、取得部21は、機能が選択されると、設定画面G14において支払い方法などの設定を求める。
【0018】
また、図2の中段に示すように、取得部21は、サービス事業者担当者が前払い機能を有効にした場合、企業端末4に設定画面G22を表示させ、前払い機能に関する利用設定を求める。さらに、取得部21は、サービス事業者担当者が給与払い機能を有効にした場合、企業端末4に設定画面G23を表示させ、給与払い機能に関する利用設定を求める。ここで設定可能な項目は、例えば、図4に示すように、支払い上限額設定、支払い種別設定、支払い承認設定などが含まれる。支払い上限額設定では、時給の場合の支払い上限額、日給の場合の支払い上限額、月給の場合の支払い上限額、拡張払い(分割払い、指定日払い、指定日時払いなど)の場合の支払い上限額などを設定できる。また、支払い種別設定では、現金払い、口座振込払い、電子マネー払い(プリペイドカードを含む)などを設定できる。また、支払い承認設定では、前払いや給与払いに関する都度承認、即時承認、時限承認、承認省略、多要素承認などを設定できる。なお、前払いや給与払いに関する承認者としては、導入企業担当者、支払先となる従業員の他、任意の承認者を設定できる。即時承認は、例えば、従業員の申請から、即時に前払いを実行することで実現されてもよい。また、時限承認とは、支払いの実行を決定した後、所定のキャンセル可能期間を経過してから支払いを実行するものであり、キャンセル可能期間に支払い先、支払い金額などの誤記が見つかった場合、支払いの実行を中止することができる。
【0019】
受付部22は、支払い対象者となる従業員から前払いの要求を受け付ける。例えば、図5に示すように、サービス事業者が提供する総合サービスのメニュー画面MG(従業員端末5)において、前払いボタンBをタップすることにより、図2の下段に示すような前払い申請画面G31が表示される。この画面で入力される前払い申請情報を受付部22が取得する。前払い申請情報には、例えば、前払い希望日と、前払い希望金額と、支払い方法(銀行口座振込、電子マネーチャージなど)が含まれる。
【0020】
また、受付部22は、図2の下段に示すように、給与支払い予定日の前に従業員に給与支払通知メールを送付する。これを受け取った従業員は、従業員端末5から給与支払通知メールに含まれるURLにアクセスすると、給与割合設定画面G32が表示される。この画面には、今回の給与をどのような支払い方法で受け取るかを設定することができ、例えば、給与の70%を銀行口座振込で受け取り、残りの30%を電子マネーチャージで受け取る、といった設定が可能となる。
【0021】
予約部23は、導入企業の従業員から前払いの事前予約を受け付ける。また、予約部23は、支払い予定日までの間に複数の事前予約を受け付けるだけでなく、支払い方法の異なる複数の事前予約を受け付けることができる。例えば、毎月25日が給与の支払い日である場合に、毎月5日に5万円を電子マネーチャージで受け取り、毎月15日に5万円を銀行口座振込で受け取り、毎月25日の給与は70%を銀行振込、30%を電子マネーチャージで受け取りたい、といった予約情報を受け付ける。
【0022】
実行部24は、従業員からの前払い申請に応じて前払いを実行するとともに、前払いした額が支払い予定日に支払うべき給与の総額に満たない場合、残りの額について支払い予定日に支払いを実行する。これらの支払いに際しては、承認設定で設定された方法で承認を行い、承認者が承認した支払いのみを実行する。また、実行部24は、予約部23による前払いの事前予約がある場合は、その予約情報に基づいて前払いを実行する。以下、実行部24の具体的な処理手順について、図6を参照して説明する。
【0023】
図6に示すように、実行部24は、データベース25に登録された前払い申請情報、前払い予約情報、給与払い情報などに基づいて当日実行する支払いの有無を判断する(ステップS201)。実行部24は、この判断結果がYESの場合、各支払いに関する支払い先情報や、支払い方法、承認方法などの設定情報をデータベース25から取得する(ステップS202)。また、実行部24は、支払い先となる従業員の勤怠情報をデータベース25(又は人事労務サーバ6)から取得する(ステップS203)。その後、実行部24は、勤怠情報に基づいて勤務の実態を確認(又は与信情報に基づいて確認)した後(ステップS204)、送金確認を行う(ステップS205)。この送金確認は、予め設定された承認方法で行われる。実行部24は、支払いが承認されたら、設定された支払い方法で所定金額の送金処理を実行し(ステップS206)、送金先である従業員及びその勤務先である導入企業に送金通知を行う(ステップS207)。
【0024】
(情報処理システムの処理手順)
つぎに、情報処理システム1における前払い及び給与払いの処理手順について、図7を参照して説明する。
【0025】
図7に示すように、情報処理装置2は、人事労務サーバ6から導入企業の人事情報、勤怠情報及び給与情報を取得する(ステップS301)。この取得処理は、定期的に行われ、取得情報は随時更新される。導入企業の従業員は、給与の前払いを希望する場合、従業員端末5から情報処理装置2に前払い申請を行う(ステップS302)。情報処理装置2は、前払い申請を受信すると、勤怠情報に基づいて従業員の勤務の実態を確認するとともに、予め設定された承認方法で承認を行う(ステップS303)。情報処理装置2は、ステップS303の確認及び承認が正常に完了すると、予め設定された支払い方法で前払いを実行し(ステップS304)、従業員端末5、企業端末4及び人事労務サーバ6に前払いを実行した旨の通知を行う(ステップS305)。
【0026】
導入企業は、給与計算の締め日になると、月次勤怠情報を人事労務サーバ6に送信するとともに(ステップS306)、給与計算の実行を指示する(ステップS307)。これを受けた人事労務サーバ6は、勤怠情報などに基づいて給与計算を実行する(ステップS308)。情報処理装置2は、人事労務サーバ6から給与明細を取得し(ステップS309)、従業員に給与確定通知を送信する(ステップS310)。給与確定通知を受け取った従業員は、情報処理装置2にアクセスし、給与の支払い方法(銀行口座振込額と電子マネーチャージ額の設定など)を設定する(ステップS311)。
【0027】
情報処理装置2は、給与の支払い実行指示日になると、勤怠情報に基づいて従業員の勤務の実態を確認するとともに、予め設定された承認方法で承認を行う(ステップS312)。情報処理装置2は、ステップS312の確認及び承認が正常に完了すると、予め設定された支払い方法で給与払いを実行し(ステップS313)、従業員端末5、企業端末4及び人事労務サーバ6に給与払いを実行した旨の通知を行う(ステップS314)。その後、情報処理装置2は、予め設定された請求先(企業端末4、人事労務サーバ6など)に支払い額及び手数料の請求を行う(ステップS315)。なお、ステップS315による請求には、サービス事業者が立替えた額を請求する立替え請求と、予めサービス事業者側に予納された予納金の中から請求分を差し引くデポジット請求が含まれる。
【0028】
(後払い決済支援サービス)
つぎに、情報処理装置2が提供する後払い決済支援サービスについて、図1図8図13を参照して説明する。まず、後払い決済事業者(後払い決済事業者サーバ8)が行う後払い決済の流れについて、図8を参照して説明する。
【0029】
(1)注文
購入者は、販売者に対して、購入を希望する商品又はサービスの注文を行う。例えば、販売者が出店しているネットショップ上で購入手続きを行う。その際、購入者は、支払い方法として後払いを選択することができる(図9の左側参照)。
【0030】
(2)注文情報登録
販売者は、後払いによる注文を受け付けると、後払い決済事業者サーバ8に注文情報を登録する。この注文情報には、購入者の氏名、連絡先(メールアドレス、住所、電話番号など)、購入商品名又は購入サービス名、購入金額、販売者名などが含まれる。
【0031】
(3)与信結果配信
後払い決済事業者サーバ8は、登録された注文情報に基づいて、購入者の信用審査を行い、その結果を与信結果として販売者に送信する。例えば、後払い決済事業者サーバ8は、注文情報に基づいて購入者を特定し、信用情報機関などのデータベースを参照して後払い可能な購入者であるか否かを審査する。また、後払い決済事業者サーバ8は、後払い可能な購入者であるとの審査結果が出た場合は、購入者の後払い決済履歴を参照し、過去の後払い決済の未払い金を特定する。そして、後払い決済事業者サーバ8は、購入者に未払い金がない場合は、予め設定される後払い決済可能額(後払い与信枠)の上限額(例えば、2万円)を与信結果として販売者に送信する。また、後払い決済事業者サーバ8は、購入者に未払金がある場合は、後払い決済上限額から未払金を差し引いた額を与信結果として販売者に送信する。なお、後払い決済事業者サーバ8は、信用情報機関のデータベースで購入者の事故情報を見つけた場合や、購入者の未払い金が後払い決済の上限額に達している場合は、販売者に対して後払い決済の申込みを受けられない旨の与信結果を送信する。
【0032】
(4)商品発送(又はサービスの提供)
販売者は、後払い決済事業者サーバ8から送信された与信結果に基づいて、前述した注文情報に係る商品の販売(又はサービスの提供)の可否を判断し、可能と判断した場合は、購入者に対して商品を発送(又はサービスを提供)する。
【0033】
(5)配送伝票番号登録
販売者は、購入者に対して商品を発送(又はサービスを提供)した後、配送伝票番号を前述した注文情報に紐付けて後払い決済事業者サーバ8に登録する。なお、サービスを提供する場合は、サービスを提供した旨の情報(サービス提供開始情報、サービス提供完了情報など)を後払い決済事業者サーバ8に登録する。
【0034】
(6)請求書送付
後払い決済事業者サーバ8は、配送伝票番号(又はサービス提供情報)が登録されたら、前述した注文情報に係る後払い決済の請求書を購入者に送付する。この請求書には、例えば、前述した注文情報や、支払い方法、支払い期限などが記載されている。なお、後払い決済の請求書は、書面であってもよいし、電子データであってもよい。
【0035】
(7)立替払い
つぎに、後払い決済事業者サーバ8は、前述した注文情報に係る購入金額を販売者に立替え払いする。立替払いの金額は、例えば、前述した注文情報に係る購入金額から後払い決済手数料を引いた額である。
【0036】
(8)支払い
後払い決済の請求書を受け取った購入者は、請求された金額を指定された支払い期限までに支払う。その支払い方法には、銀行口座振込、コンビニ払い、電子マネー払いなどが含まれる。
【0037】
情報処理装置2が提供する後払い決済支援サービスには、与信情報提供機能と、第1給与天引き払い機能と、第2給与天引き払い機能と、後払い決済誘導機能と、が含まれる。
【0038】
与信情報提供機能は、後払い決済を利用する購入者が、前払い・給与払いサービスを導入している導入企業の従業員である場合に、購入者の所属企業情報や、購入者の支払い能力を与信情報として後払い決済事業者サーバ8に提供する機能である。この機能は、取得部21が、支払い能力(例えば、給与から差し引き可能な額)を算出するための勤怠情報などを取得し、与信情報提供部26が、算出した支払い能力や所属企業情報を与信情報として後払い決済事業者サーバ8に提供することで実現される。
【0039】
与信情報提供機能は、例えば、図9に示すように、購入者がお支払い方法画面で「後払い」を選択した後に表示される後払い画面において、「後払い+」を選択した場合に発動される。購入者が「後払い+」を選択して注文を完了させた場合は、販売者が後払い決済事業者サーバ8に登録する注文情報に「後払い+」の適用情報が加えられる。後払い決済事業者サーバ8は、「後払い+」が適用された注文情報である場合、情報処理装置2に購入者の与信情報を要求し(図10の(3-1))、情報処理装置2から購入者の与信情報を受け取る(図10の(3-2))。そして、後払い決済事業者サーバ8は、情報処理装置2から受け取った購入者の与信情報を加味して後払い決済可能額を決定し、与信結果として販売者に送信する(図10の(3))。例えば、情報処理装置2から受け取った購入者の与信情報に基づいて、購入者の支払い能力が高いと判断すると、後払い決済可能額を引き上げる。
【0040】
このような与信情報提供機能によれば、後払い決済を利用する購入者が、前払い・給与払いサービスを導入している導入企業の従業員である場合に、「後払い+」を選択することで、後払い決済可能額を増額(信用枠の拡張)させることが可能になるので、後払い決済の利用を促進できるだけでなく、後払い決済の利用金額を増加させることができる。
【0041】
第1及び第2給与天引き払い機能は、後払い決済を利用する購入者が、前払い・給与払いサービスを導入している導入企業の従業員である場合に、従業員の給与から後払い決済代金を差し引いて後払い決済事業者に支払う機能である。第1給与天引き払い機能は、後払い決済事業者からの支払い要求に応じて、後払い決済代金を後払い決済事業者に支払うのに対し、第2給与天引き払い機能は、購入者(従業員)からの支払い要求に応じて、後払い決済代金を後払い決済事業者に支払う点が相違している。
【0042】
第1給与天引き払い機能は、取得部21と、与信情報提供部26と、受付部22と、実行部24とにより実現される。例えば、第1給与天引き払い機能において、取得部21は、給与から差し引き可能な給与天引き可能額を算出するための勤怠情報などを取得する。与信情報提供部26は、算出した給与天引き可能額を与信情報として後払い決済事業者サーバ8に提供する。受付部22は、後払い決済事業者サーバ8から後払い決済代金の支払い要求を受け付ける。実行部24は、支払い要求に基づいて、購入者に支払う給与の中から後払い決済代金を差し引き、差し引いた後払い決済代金を後払い決済事業者に支払う。
【0043】
第1給与天引き払い機能は、例えば、図9に示すように、購入者がお支払い方法画面で「後払い」を選択した後に表示される後払い画面において、「給与天引き払い」を選択した場合に発動される。購入者が「給与天引き払い」を選択して注文を完了させた場合は、販売者が後払い決済事業者サーバ8に登録する注文情報に「給与天引き払い」の適用情報が加えられる。後払い決済事業者サーバ8は、「給与天引き払い」が適用された注文情報である場合、情報処理装置2に購入者の与信情報を要求し(図11の(3-1))、情報処理装置2から購入者の与信情報を受け取る(図11の(3-2))。そして、後払い決済事業者サーバ8は、情報処理装置2から受け取った購入者の与信情報を加味して給与天引き可能額を決定し、与信結果として販売者に送信する(図11の(3))。例えば、後払い決済事業者が設定した後払い決済可能額とは別枠で、給与天引き可能額を販売者に提示する。
【0044】
後払い決済事業者サーバ8は、「給与天引き払い」が適用された注文情報である場合、販売者に立替払い(図11の(7))を実行した後、情報処理装置2に後払い決済代金の支払いを要求する(図11の(8))。これを受け取った情報処理装置2は、導入企業(企業端末4、人事労務サーバ6)に対して給与天引きによる後払い決済代金の支払いを要求し(図11の(9))、導入企業から後払い決済代金を受け取る(図11の(10))。その後、情報処理装置2は、後払い決済事業者に対して後払い決済代金の支払いを実行する(図11の(11))。また、導入企業は、従業員に対して後払い決済代金を差し引いた天引き額控除後の給与を支払う(図11の(12))。なお、導入企業が前払い・給与払いサービスを導入している場合は、天引き額控除後の給与の支払いを情報処理装置2が実行する。また、情報処理装置2は、後払い決済代金を後払い決済事業者に対して立替え払いし、その後、導入企業に請求するようにしてもよい。
【0045】
このような第1給与天引き払い機能によれば、後払い決済を利用する購入者が、前払い・給与払いサービスを導入している導入企業の従業員である場合に、「給与天引き払い」を選択することで、後払い決済可能額を増額(信用枠の拡張)させることが可能になるので、後払い決済の利用を促進できるだけでなく、後払い決済の利用金額を増加させることができる。また、後払い決済事業者は、後払い決済代金を購入者が勤める企業から受け取れるので、後払い決済における購入者の不払いを抑制し、不払いによる貸し倒れリスクを低減できる。
【0046】
第2給与天引き払い機能は、受付部22と、実行部24とにより実現される。例えば、第2給与天引き払い機能において、受付部22は、購入者から後払い決済代金の支払い要求を受け付ける。実行部24は、支払い要求に基づいて、購入者に支払う給与の中から後払い決済代金を差し引き、差し引いた後払い決済代金を後払い決済事業者に支払う。
【0047】
第2給与天引き払い機能は、例えば、図9に示すように、購入者がお支払い方法画面で「後払い」を選択した後に表示される後払い画面において、「後払い」を選択した場合に利用可能となる。購入者は、通常の後払いの流れ(図8の説明参照)で後払い決済事業者サーバ8から後払い決済の請求書を受け取った後(図12の(6))、情報処理装置2に後払い決済代金の支払いを要求する(図12の(8))。例えば、購入者は、請求書に記載された支払い方法の中から給与払いを選択し、支払い方法の説明に従って情報処理装置2に後払い決済代金の支払いを要求する。この支払い要求の中には、購入者を特定するための情報、後払い決済を特定するための情報(請求番号、決済番号など)、後払い決済代金を特定するための情報などが含まれる。
【0048】
情報処理装置2は、支払い要求を受け取ると、支払い要求があった後払い決済の状況を後払い決済事業者サーバ8に照会し(図12の(9))、照会結果を受け取る(図12の(10))。情報処理装置2は、受け取った照会結果に基づいて、後払い決済代金の支払いを実行するか否かを判断する。情報処理装置2は、後払い決済代金の支払いを実行すると判断すると、導入企業(企業端末4、人事労務サーバ6)に対して給与天引きによる後払い決済代金の支払いを要求し(図12の(11))、導入企業から後払い決済代金を受け取る(図12の(12))。その後、情報処理装置2は、後払い決済事業者に対して後払い決済代金の支払いを実行する(図12の(13))。後払い決済事業者サーバ8は、後払い決済代金を受け取ると、購入者に決済完了通知を送付する(図12の(14))。また、導入企業は、従業員に対して後払い決済代金を差し引いた天引き額控除後の給与を支払う(図12の(15))。なお、導入企業が前払い・給与払いサービスを導入している場合は、天引き額控除後の給与の支払いを情報処理装置2が実行する。また、情報処理装置2は、後払い決済代金を後払い決済事業者に対して立替え払いし、その後に、導入企業に請求するようにしてもよい。
【0049】
このような第2給与天引き払い機能によれば、後払い決済を利用する購入者が、前払い・給与払いサービスを導入している導入企業の従業員である場合に、後払い決済代金を給与から支払うことができるので、後払い決済の利用を促進できる。また、後払い決済事業者は、後払い決済代金を購入者が勤める企業から受け取れるので、後払い決済における購入者の不払いを抑制し、不払いによる貸し倒れリスクを低減できる。
【0050】
後払い決済誘導機能は、前払い・給与払いサービスの導入企業の従業員を後払い決済支援サービスに誘導する機能であり、広告表示部27によって実現される。例えば、広告表示部27は、図5に示すサービス提供画面に、後払い決済代金を給与から支払い可能であることを示す広告(図示省略)を表示させ(図13の(9))、後払い決済事業者による後払い決済に送客する(図13の(10))。
【0051】
このような後払い決済誘導機能によれば、後払い決済における給与天引き払いの利用を促進できるので、後払い決済における購入者の不払いを抑制し、不払いによる貸し倒れリスクを低減できる。
【0052】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0053】
例えば、本発明の情報処理装置及び情報処理方法は、メタバース(ユーザがアバターを介して自由に動き回ることができる3次元の仮想空間)内でも成り立つ。メタバースの場合、労働は、メタバース内での労働でもよいし、現実の労働であってもよい。また、メタバースの場合、支払い等は、仮想通貨やNFT(非代替性トークン)等であってよく、また、送金等は、ブロックチェーンで管理することができる。また、メタバースでは、貸付による前払いを行う場合、前払いの可否や額を決める信用情報(与信情報)は、現実内の当人の個人情報に基づくものであってもよいし、メタバース(仮想空間)内の個人情報(例えば、アバターに対応付けられた信用スコア)に基づくものであってもよい。また、前払いの可否や額は、ビックデータを利用して決めてもよい。例えば、各種支払い状況(公共料金の支払いなど)を考慮して前払いの可否や額を決めれば、焦げ付きの可能性を低減できる。
【0054】
また、対価は、労働の対価だけでなく、商品や成果物に対する対価も含まれる。また、対価の支払い予定日は、月に1回などのように固定であってもよいし、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。究極的には、毎日の支払いを設定可能としてもよい。また、対価の前払い要求は、ユーザによる事前の手動設定に基づいて自動的に発生するようにしてもよい。
【0055】
情報処理装置は、導入企業が予め、給与の払い過ぎの差押えや、控除額の事前回収を行うためにストックした金額を設定するストック金額設定を可能としてもよい。ストック金額が設定されている場合、ストック金額に基づいて前払い申請可能な額を決定することができる。例えば、ストック金額を超える金額の前払い申請を禁止したり、あるいは許容することができる。
【0056】
また、情報処理装置は、反社会勢力チェックの結果や、有事の際の緊急的な措置により、前払い申請の受付を停止する前払い申請停止処理機能を備えることができる。例えば、外部から申請停止信号を受信すると、前払い申請の受付を自動的に停止する。また、前払い申請の停止は、従業員単位、導入企業単位、又は全導入企業を対象とし、手動による停止ではなく、自動的な停止を行うことができる。また、停止解除も、所定の条件に応じて自動的に行うことが望ましい。例えば、想定はAIサーバなど、外部のシステムと連携して判断を行い、前払い申請を自動的に停止したり、停止解除するものとする。
【0057】
また、実施形態では、月次勤怠情報に基づいて給与額などの支払い額を算出しているが、締め日の設定に応じて、日次勤怠情報や週次勤怠情報に基づいて支払い額を算出するようにしてもよい。つまり、所定の期間における勤怠情報に基づいて支払い額を算出することができる。
【0058】
また、実施形態では、給与確定通知を行うが、給与確定通知は行わなくともよく、いずれかを設定できるようにしてもよい。また、実施形態では、前払い、給与などの支払い方法を予め設定可能としているが、支払い毎に設定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理システム
2 情報処理装置
21 取得部
22 受付部
23 予約部
24 実行部
25 データベース
26 与信情報提供部
27 広告表示部
3 サービス事業者端末
4 企業端末
5 従業員端末
6 人事労務サーバ
7 金融機関サーバ
8 後払い決済事業者サーバ
9 ネットワーク
図1
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図4
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図7
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図10
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図13