(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066341
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】制動力調整体
(51)【国際特許分類】
A01K 89/033 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A01K89/033 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175877
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】709005418
【氏名又は名称】有限会社メガテック
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆一
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108HC05
2B108HC08
(57)【要約】
【課題】リールカスタムの自由度に優れる制動力調整体を提供する。
【解決手段】制動力調整体1は、両軸受リールのドラグ機構においてリールの制動力を調整し、略円環状の本体部21および該本体部から径方向に延出する複数の突起部22を有し、本体部21の回転軸Oの周囲に開口部が設けられた操作部材2と、開口部に挿入される挿入部およびドラグ機構のハンドル軸と螺合するナットを内部に収容するナット収容部を有し、ハンドル軸と操作部材2とをナットを介して接続する接続部材3と、接続部材3に着脱可能に取り付けられ、操作部材2を接続部材3との間に挟んで固定する固定部材4とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両軸受リールのドラグ機構においてリールの制動力を調整する制動力調整体であって、
略円環状の本体部および該本体部から径方向に延出する複数の突起部を有し、前記本体部の回転軸周囲に開口部が設けられた操作部材と、
前記開口部に挿入される挿入部および前記ドラグ機構のハンドル軸と螺合するナットを内部に収容するナット収容部を有し、前記ハンドル軸と前記操作部材とを前記ナットを介して接続する接続部材と、
前記接続部材に着脱可能に取り付けられ、前記操作部材を前記接続部材との間に挟んで固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする制動力調整体。
【請求項2】
前記接続部材は、前記操作部材が前記接続部材に対して周方向に独立して回転することを止める回り止め部を有し、
前記回り止め部は、前記操作部材と相補的に嵌合することを特徴とする請求項1記載の制動力調整体。
【請求項3】
前記固定部材は、ネジ部を有し、
前記挿入部は、前記固定部材のネジ部と螺合可能なネジ部を有し、
前記操作部材は、前記固定部材と前記挿入部とを締結することにより前記固定部材から前記接続部材へ押圧されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の制動力調整体。
【請求項4】
前記固定部材は、内周面に雌ネジを有し、
前記挿入部は、外周面に雄ネジを有することを特徴とする請求項3記載の制動力調整体。
【請求項5】
前記固定部材は、周方向に沿って設けられた複数の凹部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の制動力調整体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールにおいてドラグ力を調整する制動力調整体に関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リール、スピニングリールなどの釣り用リールには、スプールの糸繰り出し方向の回転を制動するドラグ機構が設けられる。ドラグ機構は、ノブ、つまみなどの操作部材を操作することでドラグ力(リールの制動力)を調整できる。
【0003】
両軸受リールは、スピニングリールと比較して、ハンドルの回転力が糸に伝達しやすく巻き上げ力が大きいという特徴がある。両軸受リールでは、ハンドル軸に螺合するスタードラグ、リール本体に設けられたレバードラグなどの制動力調整体を操作してスプールを制動する。両軸受リール用の制動力調整体としては、ハンドル近傍に位置することでドラグ力の調整を行いやすいスタードラグが一般的に用いられている。ここで、スタードラグは、周方向に等間隔で形成された放射状の複数の突起部を有する制動力調整体である。
【0004】
特許文献1には、ハンドル軸に螺合するナットと、ナットの外周部の一側に嵌着されて軸方向規制されるスカート部を有するカラーと、制動力調整ツマミとで構成された制動力調整体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、駆動軸の第1雄ネジ部に螺合するナット部材と、ナット部材を一体回転可能かつ軸方向移動自在に支持する本体部材とを有するスタードラグが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-35438号公報
【特許文献2】特開2018-203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
釣り人は、魚を釣ることだけでなく、リールなどの釣り具の機能を向上したり、自分好みの見た目にしたりするために部品の交換を行うこと(例えば、リールの部品交換を行って改造することをリールカスタムという)も楽しみの一つである。
【0008】
両軸受リールのリールカスタム用部品としては、ハンドルアーム、ハンドルノブ、スタードラグ、メカニカルブレーキノブなど種々の部品が販売されている。特に、スタードラグは、見た目や性能を向上させる重要な部品の一つとして各メーカーから様々なタイプが販売されている。
【0009】
リールカスタムにおいては、メーカーや機種ごとに各部品の形状や位置関係が異なるため、他部品と干渉しないことや、余分な隙間なく取り付けられること(適合性)が重要である。特に、スタードラグのようにハンドルとリールケースとの間に配置されるとともに、メカニカルブレーキノブなどが近くに配置される制動力調整体の場合、形状や大きさの制限を受けやすいため、見た目と適合性の両方を満たす部材を入手することは容易ではない。
【0010】
ここで、特許文献1に記載の制動力調整体において、制動力調整ツマミは、ナットの他側に嵌着されナットの端部をカシメなどの潰し加工することで、ナット、およびカラーと一体化されている。また、特許文献2に記載のスタードラグにおいて、本体部材は、ドラグの回動を操作する操作部と、ナットを収容するナット収容部とを有する一つの部材として形成されている。
【0011】
従来の両軸受リール用の制動力調整体は、リールメーカー純正品、カスタム用部品のいずれも、上述のように各部が一体化された一つの部品として提供されているため、種々のハンドル形状やリール形状に応じて所望の形状の制動力調整体を得にくい場合があった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、リールカスタムの自由度に優れる制動力調整体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の制動力調整体は、両軸受リールのドラグ機構においてリールの制動力を調整し、略円環状の本体部および該本体部から径方向に延出する複数の突起部を有し、上記本体部の回転軸周囲に開口部が設けられた操作部材と、上記開口部に挿入される挿入部および上記ドラグ機構のハンドル軸と螺合するナットを内部に収容するナット収容部を有し、上記ハンドル軸と上記操作部材とを上記ナットを介して接続する接続部材と、上記接続部材に着脱可能に取り付けられ、上記操作部材を上記接続部材との間に挟んで固定する固定部材とを備えることを特徴とする。
【0014】
上記接続部材は、上記操作部材が上記接続部材に対して周方向に独立して回転することを止める回り止め部を有し、上記回り止め部は、上記操作部材と相補的に嵌合することを特徴とする。
【0015】
上記固定部材は、ネジ部を有し、上記挿入部は、上記固定部材のネジ部と螺合可能なネジ部を有し、上記操作部材は、上記固定部材と上記挿入部とを締結することにより上記固定部材から上記接続部材へ押圧されることを特徴とする。
【0016】
上記固定部材は、内周面に雌ネジを有し、上記挿入部は、外周面に雄ネジを有することを特徴とする。
【0017】
上記固定部材は、周方向に沿って設けられた複数の凹部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制動力調整体は、略円環状の本体部および該本体部から径方向に延出する複数の突起部を有し、本体部の回転軸周囲に開口部が設けられた操作部材と、開口部に挿入される挿入部およびドラグ機構のハンドル軸と螺合するナットを内部に収容するナット収容部を有し、ハンドル軸と操作部材とをナットを介して接続する接続部材と、接続部材に着脱可能に取り付けられ、操作部材を接続部材との間に挟んで固定する固定部材とを備えるので、各部材の組合せにより所望の形状、大きさの制動力調整体を容易に得ることができ、リールカスタムの自由度に優れる。
【0019】
接続部材は、操作部材が接続部材に対して周方向に独立して回転することを止める回り止め部を有し、回り止め部は、操作部材と相補的に嵌合するので、操作部材を回動する力が、接続部材に収容されるナットへ無駄なく伝わり、操作性により優れる。
【0020】
固定部材は、ネジ部を有し、挿入部は、固定部材のネジ部と螺合可能なネジ部を有し、操作部材は、固定部材と挿入部とを締結することにより固定部材から接続部材へ押圧されるので、操作部材が接続部材に強固に固定され、操作部材を回動する力が、接続部材に収容されるナットへ伝達しやすい。
【0021】
固定部材は、内周面に雌ネジを有し、挿入部は、外周面に雄ネジを有するので、簡易な構造でありつつ、操作部材を接続部材に強固に固定できる。
【0022】
固定部材は、周方向に沿って設けられた複数の凹部を有するので、操作部材の固定や取り外しを行いやすく、リールカスタムの自由度により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の制動力調整体を備えた両軸受リールの側面図である。
【
図6】各部材をリール本体側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の制動力調整体の一例を
図1から
図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の制動力調整体を備えた両軸受リールの側面図である。
図1に示すように、本発明の制動力調整体1は、両軸受リール100のドラグ機構110において、ネジ部の形成されたハンドル軸Shに挿通され、ハンドル120とリール本体130との間に設けられる。制動力調整体1の内部にはリール本体から延出するハンドル軸Shと螺合するナットが嵌め合うように収容され、制動力調整体1を回動させることにより、ドラグ機構110の内部でのドラグワッシャ間の摩擦力を変化させてリールの制動力を調整できる。制動力調整体1は、ハンドル120や、リール本体130、メカニカルブレーキノブ140と干渉しないよう、適切な形状、大きさのものが設けられる。
【0025】
図2は、本発明の制動力調整体の斜視図である。
図2に示すように、本発明の制動力調整体1は、操作部材2と、接続部材3と、固定部材4とを備える。制動力調整体1をリールに装着した場合、紙面上側がハンドル側で、紙面下側がリール本体(スプール)側である。制動力調整体1において、操作部材2に対して、固定部材4はハンドル側に設けられ、接続部材3はリール本体側に設けられる。
【0026】
図2において、操作部材2は、略円環状の本体部21、および本体部21から径方向に延出する5本の突起部22を有している。5本の突起部22は、周方向に等間隔で離間して放射状に形成されている。なお、突起部22は5本に限らず複数本であればよく、例えば、3本~8本とすることができる。接続部材3は、ナット(図示省略)を内部に収容するナット収容部31を有している。ナットは、上述したように、ドラグ機構の一部であるハンドル軸と螺合し、接続部材3は、ハンドル軸と操作部材2とをナットを介して接続する。固定部材4は、円環状であり、操作部材2を接続部材3との間に挟んで固定している。固定部材4は、接続部材3に着脱可能に取り付けることができる。なお、固定部材4は、円環状に限らず、多角形状、略多角形状でもよい。
【0027】
操作部材2の回転軸Oの周囲には、開口部24(
図5参照)が設けられている。操作部材2は、開口部24が接続部材3と固定部材4との間に挟まれることで接続部材3に固定され、3つの部材が一体化する。その結果、制動力調整体1の突起部22を押して操作部材2を周方向に回動すると、接続部材3と固定部材4も一体的に回動する。
【0028】
本発明の制動力調整体は、上記構成により、操作部材、接続部材、固定部材の組み合わせを自由に変えることができるので、リール構造、他部材の形状に応じて適切な部材の組み合わせからなる制動力調整体を容易に得られる。
【0029】
図3は、本発明の制動力調整体の側面図である。
図3に示すように、接続部材3は、回転軸O方向において操作部材2の側に延出し、操作部材2の開口部に挿入される挿入部32を有する。また、接続部材3は、挿入部32の延出方向と反対方向へ延出するスカート部33を有する。ナット収容部は、接続部材3の内部に設けられていればよく、挿入部32の内部、スカート部33の内部、または、挿入部32およびスカート部33の両方の内部のいずれかに設けることができる。
【0030】
図3において、挿入部32の端部は操作部材2よりもハンドル側に突出している。これにより、挿入部32の端部はスペーサーとして、操作部材2と、ハンドルとの間隔を調整することができる。なお、挿入部32の端部は操作部材2よりもハンドル側に突出していなくてもよい。突起部22は、リール本体側(紙面下側)へ向かって緩やかに湾曲しながら延出している。スペーサー機能を有する接続部材3や、リール本体側へ湾曲した突起部22を有する操作部材2を用いることで、制動力調整体1とハンドル、リール本体などとの干渉が起こりにくくなる。なお、突起部22は、本体部21から径方向に真直ぐに延出してもよく、ハンドル側(紙面上側)へ向かって緩やかに湾曲しながら延出してもよい。また、突起部22は、径方向に延出しつつ、周方向に湾曲してもよい。その場合、湾曲部は1つに限らず複数でもよい。また、各突起部22は、同形状で、同方向に湾曲していることが好ましい。さらに、突起部22は、端部の方が中間部より太くてもよい。
【0031】
本発明の制動力調整体を構成する各部材を
図4~
図6に基づいて説明する。
図4は、各部材の側面図である。
図4(a)に固定部材、
図4(b)に操作部材、
図4(c)に接続部材を示す。
【0032】
図4において、挿入部32の回転軸O方向の長さL
iは、操作部材2の本体部21の幅W
b(側面視回転軸O方向の長さ)よりも大きく、制動力調整体とした場合、挿入部32の端部が操作部材2よりもハンドル側に突出する。なお、挿入部32の長さL
iは、本体部21の幅W
bと同じ、または幅W
bよりも小さくてもよい。これにより、挿入部32の端部は、操作部材2よりもハンドル側に突出しないため、ハンドル軸の長さが短い場合でも、ハンドルを取り付けやすい。
【0033】
固定部材4の厚みT
fは、例えば、本体部21の幅W
bよりも小さい場合、制動力調整体にすると、固定部材4は本体部21の内部の固定部材収容部に収容されやすく、側面視では視認しにくくなる(
図3参照)。これにより、固定部材4はハンドルと干渉を起こしにくく、制動力調整体のリールへの適合性を、操作部材2と接続部材3の選択により調整することができる。なお、固定部材4の厚みT
fは、本体部21の幅W
bと同じでもよく、幅W
bよりも大きくてもよい。
【0034】
図5は、各部材をハンドル側から見た斜視図である。
図5(a)に固定部材、
図5(b)に操作部材、
図5(c)に接続部材を示す。
図5に示すように、操作部材2の本体部21には、回転軸O方向に沿った貫通孔23が設けられている。本体部21は、貫通孔23の接続部材3の側で回転軸O周囲に内周形状が略6角形の開口部24を有している。また、本体部21は、貫通孔23の固定部材4の側に、固定部材4を収容する固定部材収容部25を有している。
【0035】
挿入部32は、開口部24の内周面と全周にわたって接触し、操作部材2と相補的に嵌合する外周形状が略6角形の回り止め部321を、スカート部33に隣接して有している。これにより、固定部材4により操作部材2を接続部材3に強く押圧しなくても、操作部材2から接続部材3、ナット(図示省略)へと回動力を伝達できる。なお、開口部24の内周形状および回り止め部321の外周形状は、操作部材2の回動力がナットへ伝達されれば、略6角形に限らず、略5角形、略7角形、楕円形、波形、歯車形状などの非円形状であってもよい。開口部24の内周形状および回り止め部321の外周形状は、頂点の角が曲面化された略多角形でもよいし、曲面化されていない多角形でもよい。また、回り止め部321は、開口部24の内周面の一部と接触していてもよい。
【0036】
開口部24の回転軸O方向の厚みT
aは、例えば、回り止め部321の厚みT
sと同じとしたり、厚みT
sよりも大きくしたりすることができる。開口部24の厚みT
aが、回り止め部321の厚みT
sよりも大きい場合、操作部材2は接続部材3の側へ押圧されやすく、操作部材2と接続部材3との間の回転方向の摩擦力が増大する結果、上述した嵌合の効果と相まって回動力の伝達しやすさにより優れる。厚みT
aは、開口部24と回り止め部321とが十分に嵌合して回動力を伝達する観点から、本体部21の幅W
b(
図4参照)の0.5~0.9倍程度での厚みであることが好ましい。
【0037】
接続部材3は、回り止め部321として、操作部材2が接続部材3に対して周方向に独立して回転することを止める部分を有していれば、その形態は上記に限られない。回り止め部321は、操作部材2と相補的に嵌合することが好ましく、これにより、操作部材2と接続部材3とはより一体的に動きやすくなる。接続部材3は、例えば、スカート部33に回り止め部を有してもよい。その場合、接続部材3はスカート部33における操作部材2の側の鍔部34に突起状の回り止め部321を有し、操作部材2がこの回り止め部321と相補的に嵌合する窪み状の嵌合部を有していることが好ましい。上記突起状の回り止め部321は、操作部材2の側へ突出し、上記嵌合部と嵌め合うことで操作部材を回動させた際の接続部材3の空転を防ぐことができる。突起状の回り止め部321は、1つであってもよいし、複数であってもよい。なお、接続部材3は、回り止め部321を有していなくてもよい。
【0038】
固定部材4は、ネジ部Saを内周面に有している。また、挿入部32は、ネジ部Saと螺合可能なネジ部Sbを外周面に有している。
図5において、ネジ部Saは雌ネジであり、ネジ部Sbは雄ネジである。これにより、接続部材3および固定部材4は簡易な構造でありつつ、固定部材4の回転により、各部材の一体化と取り外しを容易にできる。操作部材2は、固定部材4と挿入部32とを締結することにより、固定部材4から接続部材3へ押圧され、他の部材と強固に一体化される。
【0039】
固定部材の接続部材への取り付けは、上記の方法以外に、固定部材と、接続部材のそれぞれの対応する位置にネジ部としてネジ穴を設け、固定部材から接続部材へネジを挿通して、両部材を締結して行うこともできる。また、固定部材の接続部材への取り付けは、圧入や、磁石による接合など、着脱可能に取り付けられる方法を自由に用いることができる。回動力の伝達しやすさ、および各部材一体化の観点からは、接続部材が回り止め部を有し、固定部材の接続部材への取り付けがネジ部同士の螺合により行われることが特に好ましい。
【0040】
図5において、固定部材4は、周方向に沿って設けられた凹部41を4つ有している。これにより、凹部41に治具などを係合させて操作部材2の固定や取り外しを行いやすく、リールカスタムの作業性に優れる。固定部材4がネジ部Saを有し挿入部32と螺合により取り付けられる場合、固定部材4を回転させやすく、特に作業性に優れる。なお、固定部材4は、凹部41を有していなくてもよい。固定部材4は、操作部材2を強固に固定する観点から、凹部41が複数設けられていることが好ましい。また、凹部41は、回転軸O方向に貫通した孔であってもよいし、非貫通の窪みであってもよい。治具への係合しやすさ、および固定状態の確認しやすさの観点から、凹部41は回転軸方向に貫通した孔であることが好ましい。
【0041】
図6は、各部材をリール本体側から見た斜視図である。
図6(a)に固定部材、
図6(b)に操作部材、
図6(c)に接続部材を示す。
図6に示すように、操作部材2の厚みT
cは、本体部21の幅W
bよりも薄く、操作部材2の接続部材3の側には薄肉部26が形成されている。なお、操作部材2は、薄肉部26が形成されていなくてもよい。操作部材2の素材としてチタンなどの比較的高価な材料が用いられる場合、コスト低減の観点から、操作部材2には薄肉部26が形成されていることが好ましい。薄肉部26が形成される場合、厚みT
cは、機械的強度確保の観点から、幅W
bの0.05~0.5倍程度の厚みであることが好ましい。操作部材2の接続部材3の側にはリブが形成されていてもよい。
【0042】
また、操作部材2の接続部材3の側には、薄肉部26を覆うように蓋体が設けられていてもよい。これにより、一方の手でロッドとリールを持ち、他方の手でハンドルを持っている状態において、一方の手でドラグ操作(通常とは逆方向での操作)を行った場合の不都合(操作部材2の端面に接触することによる痛みや、糸切れ)を防ぐことができる。操作部材2において蓋体を設ける場合、薄肉部26が操作部材2の内部空間となる。操作部材2と蓋体との溶接などによる接合部について、突起部22の外周部分は閉じられ、接続部材3側の内周部分に一部隙間がある場合、上記内部空間への水の侵入などを防止するため、接続部材3の外周部に、当該隙間を埋めるためのシール部材(Oリングなど)を設けることが好ましい。
【0043】
接続部材3のナット収容部31は、例えば、内周形状が4角形で、ナットの外周面と全周にわたって接触して嵌め合い、制動力調整体とナットとが一体的に回動する。ナット収容部31の内周形状は、制動力調整体とナットとが一体的に回動できるような形状であればよく、4角形以外の多角形、略多角形、楕円形、波形、歯車形状などの非円形状にできる。ナット収容部31は、ナットの外周面の一部と接触して嵌め合ってもよい。
【0044】
接続部材の別例を
図7に基づいて説明する。
図7(a)は接続部材の別例をハンドル側から見た斜視図であり、
図7(b)は接続部材の別例をリール本体側から見た斜視図である。
図7(a)に示すように、挿入部32の端部には、天板部35が設けられており、
図5に示した接続部材3の端部よりも小さく開口している。また、
図7(b)に示すように、スカート部33において、ナット収容部31よりもリール本体側には、音出し溝36が設けられている。これにより、制動力調整体から音を出す機構のドラグに対してもリールカスタムを行うことができる。なお、音出し溝36は、スカート部33に限らず、天板部35のリール本体側に設けられていてもよい。
【0045】
本発明の制動力調整体を構成する各部材の素材としては、例えば、金属材料や、樹脂材料を用いることができる。金属材料としては、アルミニウムや、マグネシウム、チタン、ステンレスなどを用いることができる。また、樹脂材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、各種エンジニアリングプラスチック、繊維強化樹脂材料などを用いることができる。特に、操作部材の素材としては、機械的強度に優れるチタンが好ましい。操作部材が薄肉部を有し、該薄肉部が蓋体により覆われる場合、該蓋体の素材としては、炭素繊維強化樹脂、エラストマー、アルミニウムなどを用いることが好ましい。また、接続部材および固定部材の素材としては、比較的軽量で加工性にも優れるアルミニウムが好ましい。
【0046】
本発明の制動力調整体を構成する各部材は、例えば、プレス加工、切削加工、3次元積層造形、鋳造、樹脂成型、射出成形などの種々の方法を単独または組み合わせて製造できる。製造工程には、耐久性向上の観点から、例えば、表面処理工程を組み合わせてもよい。素材として金属材料を用いる場合、機械的強度向上の観点から、熱処理工程を組み合わせてもよい。特に、操作部材の素材としてチタンを用いる場合、チタン製の板をプレス加工により成型し、さらに熱処理を行って機械的強度を高めることが好ましい。
【0047】
以上、各図などに基づき本発明の制動力調整体について説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の制動力調整体は、リールカスタムの自由度に優れるので、種々の両軸受リールに幅広く適合し、両軸受リールのカスタム部品として広く利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 制動力調整体
2 操作部材
21 本体部
22 突起部
23 貫通孔
24 開口部
25 固定部材収容部
26 薄肉部
3 接続部材
31 ナット収容部
32 挿入部
321 回り止め部
33 スカート部
34 鍔部
35 天板部
36 音出し溝
4 固定部材
41 凹部
100 両軸受リール
110 ドラグ機構
120 ハンドル
130 リール本体
140 メカニカルブレーキノブ