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特開2024-66348カメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066348
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】カメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20240508BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240508BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
G03B17/56 Z
G03B15/00 S
H04N5/225 430
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175884
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹人
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105EE06
2H105EE35
5C122DA11
5C122EA02
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】降雨降雪時にカメラ用屋根部材の上面に降った雨水がその先端から前方に流れ落ちてカメラの視界や撮影が妨げられるのを防止する。
【解決手段】屋根部材1は、構造物に固定される固定基台10と、カメラ30を上方から覆う覆い部21及び組付け部24を有する覆い部材20と、からなる。覆い部21の上面は、覆い部21の幅方向の中心位置から幅方向の端縁に向けて下り傾斜する傾斜面22で形成されている。覆い部21の先端側Fには、傾斜面22に沿って排水させる水切り壁25を設けられている。これにより、降雨降雪時に覆い部21の上面に受けた水は傾斜面22に沿って覆い部21の幅方向の側方から排出され、カメラ30の前面のレンズ側には落下しないため、降雨降雪時に覆い部21の上面の排水によって視界や撮影が妨げられるのが防止される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に向かって延設された覆い部を備え、設置されたカメラを上方から覆うように前記覆い部の基端側が固定されるカメラ用屋根部材であって、
前記覆い部の上面は、前記延設された方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面が形成され、
前記覆い部の先端側には、上方へと立設し、前記傾斜面に沿って排水させる水切り壁が設けられていることを特徴とするカメラ用屋根部材。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記覆い部の延設方向に直交する幅方向の中心位置からそれぞれ当該幅方向の端縁に向けて下り傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用屋根部材。
【請求項3】
前記固定される固定部を有する固定基台と、前記覆い部及び前記固定基台の被組付け部に組付けられる組付け部を有する覆い部材と、からなり、
前記被組付け部と前記組付け部とは、前記覆い部材の、上下方向及び水平方向の少なくとも一方への延設方向の角度を変更して組付け可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカメラ用屋根部材。
【請求項4】
前記固定基台は、前記覆い部材の基端側の上方に重合して位置する上壁部と、前記覆い部材の基端側を幅方向に挟むように間隔をあけて前記上壁部の両端から垂下する一対の側壁部と、を備え、前記上壁部と前記一対の側壁部とで囲まれた内部側に前記固定部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用屋根部材。
【請求項5】
前記固定される固定部を有する固定基台と、前記覆い部及び前記固定基台の被組付け部に組付けられる組付け部を有する覆い部材と、からなり、
前記被組付け部と前記組付け部とは、前記覆い部材の上下方向への延設方向の角度を変更して組付け可能であり、
前記覆い部材の先端側を最も上げた角度が水平となるように前記固定基台を固定した状態で、前記覆い部材の先端側を最も下げた角度に変更した場合でも、前記水切り壁の立設方向の先端は水平よりも上方を向くことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカメラ用屋根部材。
【請求項6】
先端側に向けて延設された覆い部を有するカメラ用屋根部材が、設置されたカメラの上方に位置するように、前記覆い部の基端側に設けられた固定部で固定されており、
前記覆い部の上面には、前記延設された方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面が形成されており、
前記覆い部における前記カメラの撮影方向に位置する端縁には、上方へと立設する水切り壁が設けられていることを特徴とするカメラと屋根部材の設置構造。
【請求項7】
内部にケーブルが配線される箱状の配線ボックスが構造物に固定され、カメラが前記配線ボックスの一の外面に固定され、前記カメラの上方は、前記配線ボックスの一の外面に基端側が固定されるとともに当該一の外面から離れる方向に延設された覆い部で覆われており、
前記覆い部における前記カメラの撮影方向に位置する端縁には、上方へと立設する水切り壁が設けられていることを特徴とするカメラと屋根部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外等の構造物に設置された監視カメラや防犯カメラなどのカメラを上方から覆って降雨降雪時の雨水、融雪水から保護するカメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される監視カメラは比較的高い位置に設置され、レンズ側を下方に下げるように設置されることが多い。そのように設置されるカメラは、例えば特許文献1にも記載されているように、降雨時に雨水から守るためにカメラの上方に上面全体を覆うサンシェード等の屋根部材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6504487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のカメラの筐体の上面側に取り付けられたサンシェードは、中間の大部分が平面で形成され、平面部におけるレンズ側に向かう延設方向と交差する幅方向の両端縁からは下方に向かう湾曲面が形成されたものとなっている。一方、カメラは、比較的高いところに設置され、レンズ側を下げるように設置されることが多く、また、それに伴ってサンシェードも撮影方向先端側が下がっている。このように設置されたカメラは、降雨時に、サンシェードの上面で受けた雨水がまとまって先端から流れるため、サンシェードの先端から滝のように流れ落り、視界や撮影の妨げになることがあった。また、サンシェードの上面に着雪した雪によってサンシェードの先端に生じるつららがレンズの正面にでき易く、問題であった。
【0005】
そこで、本発明は、下向きに設置されたカメラを上方から覆うものであって、降雨降雪時に上面で受けた雨水等がその先端から前方に流れ落ちることによりカメラの視界や撮影が妨げられるのを防止できるカメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のカメラ用屋根部材は、先端側に向かって延設された覆い部を備え、設置されたカメラを上方から覆うように前記覆い部の基端側が固定されるものであって、
前記覆い部の上面は、前記延設された方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面が形成され、
前記覆い部の先端側には、上方へと立設し、前記傾斜面に沿って排水させる水切り壁が設けられている。
【0007】
請求項2のカメラ用屋根部材は、特に、傾斜面が、覆い部の延設方向に直交する幅方向の中心位置からそれぞれ当該幅方向の端縁に向けて下り傾斜している。
これにより、降雨降雪時に覆い部の上面に受けた雨水は、覆い部の幅方向の中心位置から両側方に分散して傾斜面から排水されるので、排水効率が良い。
請求項3のカメラ用屋根部材は、特に、固定部を有する固定基台と、覆い部及び固定基台の被組付け部に組付けられる組付け部を有する覆い部材と、からなり、
前記被組付け部と前記組付け部とは、前記覆い部材の、上下方向及び水平方向の少なくとも一方への延設方向の角度を変更して組付け可能である。
これにより、カメラに対する屋根部材の相対角度を変更することができ、設置環境に合わせた角度で屋根部材を設置できる。
【0008】
請求項4のカメラ用屋根部材は、固定基台が、覆い部材の基端側の上方に重合して位置する上壁部と、前記覆い部材の基端側を挟むように間隔をあけて前記上壁部の両端から垂下する一対の側壁部と、を備え、前記上壁部と前記一対の側壁部とで囲まれた内部側に前記固定部が設けられている。
これにより、屋根部材の固定部がカメラ及び覆い部材に隠れて見栄えが良い。
請求項5のカメラ用屋根部材は、固定部を有する固定基台と、覆い部及び前記固定基台の被組付け部に組付けられる組付け部を有する覆い部材と、からなり、
前記被組付け部と前記組付け部とは、前記覆い部材の上下方向への延設方向の角度を変更して組付け可能であり、
前記覆い部材の先端側を最も上げた角度が水平となるように前記固定基台を固定した状態で、前記覆い部材の先端側を最も下げた角度に変更した場合でも、水切り壁の立設方向の先端は水平よりも上方を向く。
このように、覆い部材は、水切り壁が水平以下とならないように上下角度の幅が設定されているので、上下角度を設定、調整する際、水切り壁の角度に注意を払う必要がない。
【0009】
請求項6のカメラと屋根部材の設置構造は、先端側に向けて延設された覆い部を有するカメラ用屋根部材が、設置されたカメラの上方に位置するように、前記覆い部の基端側に設けられた固定部で固定されており、
前記覆い部の上面には、前記延設された方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面が形成されており、
前記覆い部における前記カメラの撮影方向に位置する端縁には、上方へと立設する水切り壁が設けられている。
請求項7のカメラと屋根部材の設置構造は、内部にケーブルが配線される箱状の配線ボックスが構造物に固定され、カメラが前記配線ボックスの一の外面に固定され、前記カメラの上方は、前記配線ボックスの一の外面に基端側が固定されるとともに当該一の外面から離れる方向に延設された覆い部で覆われており、
前記覆い部における前記カメラの撮影方向に位置する端縁には、上方へと立設する水切り壁が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、屋根部材の覆い部の先端側に上方へと立設する水切り壁が設けられているので、降雨降雪時に、下向きの屋根部材に降った雨水等は水切り壁によってカメラのレンズの前方に落下するのが防止される。これにより、カメラの視界や撮影が妨げられるのを防止することができる。
【0011】
そして、特に、屋根部材は、覆い部の上面が、延設方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面に形成されているので、降雨降雪時に、斜め下方向きの屋根部材で受けた雨水等は、覆い部の先端側に向けて流れるより前に、大半が覆い部の上面を傾斜面に沿って覆い部の延設方向と交差する側方に流れ落ちる。このため、雨水等がカメラのレンズの前方に落下するのが防止される。これにより、雨水等によってカメラの視界や撮影が妨げられるのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のカメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造を示す斜視図である。
図2図1の配線ボックスの斜視図である。
図3図1の屋根部材を示し、(a)は先端側斜め上方から見た斜視図、(b)は基端側斜め下方から見た斜視図である。
図4図1の固定基台を示し、(a)は先端側斜め上方から見た斜視図、(b)は基端側斜め下方から見た斜視図である。
図5図1の覆い部材を示し、(a)は先端側斜め上方から見た斜視図、(b)は基端側斜め下方から見た斜視図である。
図6図1の屋根部材の覆い部材を固定する前の状態を示し、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)は正面図である。
図7図1において覆い部材が水平姿勢の場合を示す側面図である。
図8図1において覆い部材が斜め下向き姿勢の場合を示し、(a)は側面図、(b)は斜め上方から見た斜視図である。
図9】本実施形態の水切り壁の水平面に対する立設角度を示す拡大図である。
図10】従来の屋根部材における覆い部の上面の水の排出状態を説明する説明図であり、(a)は屋根部材の側面図、(b)は覆い部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のカメラ用屋根部材、及びカメラと屋根部材の設置構造を図に基づいて説明する。
本実施形態のカメラと屋根部材の設置構造は、先端側に向けて延設された覆い部を有するカメラ用屋根部材(以下、単に「屋根部材」という。)が、設置されたカメラの上方に位置するように、覆い部の基端側に設けられた固定部で固定されたものである。カメラは、防犯、監視用カメラであり、建物の壁面やポール等の構造物に直接あるいは配線ボックス等のカメラ設置台座を介して間接的に固定設置される。本実施形態においては、カメラが建物の構造物に固定された配線ボックスに設置された例を示す。以下、各構成部材について説明する。
【0014】
図1において、カメラ30は配線ボックス40における一の外面に固定されていて、カメラ30を覆う屋根部材1は、配線ボックス40の一の外面から離れる方向に延設された覆い部材20が基端側において配線ボックス40の一の外面に固定されている。
【0015】
カメラ30は、図6に示すように、その取付部である取付フランジ31の取付孔にタッピングビスを通して配線ボックス40の外面にねじ込むことにより配線ボックス40に固定されている。カメラ30は、先端のレンズを撮影方向に合わせて上下方向に所定角度の範囲で回動させることができるようになっている。
【0016】
配線ボックス40は、図2に示すように、内部にケーブルが配線される箱状をなし、有底箱状の箱本体41と蓋体45とからなる。箱本体41は、矩形板状の底壁42の周縁から一定高さの周壁43が立設されてなり、箱本体41と蓋体45とにより形成された内部にはケーブルの接続部分やケーブルの余長が収納される。周壁43には複数の貫通孔が形成され、その孔開口は平時は着脱自在なキャップ44で閉じられており、使用時にはキャップ44を外しここから内部にケーブルを導入することができる。キャップ44は、ドーナツ状の防水リングを配線ボックス40の周壁43とともに挟み込んでいる。
【0017】
蓋体45は、矩形板状をなし、4隅に取付孔が形成されていて、図示しないが、箱本体41の周壁43の前面開口側端部に開口面側に向けて屈曲して設けられた4隅のフランジの中央のねじ孔に蓋体45の取付孔を貫通したタッピングビスをねじ込むことによって取り付けることにより、箱本体41の前面開口の全体を着脱自在に塞ぐ。蓋体45の前面はカメラ30の据付面となっている。蓋体45の前面には凹設された貫通していない下孔としての小さい窪み46が複数形成されており、いずれかの窪み46にはカメラ30を固定するためのタッピングビス50がねじ込まれる。また、いずれかの窪み46には後述するように屋根部材1の固定基台10を固定するためのタッピングビス50がねじ込まれる。
【0018】
屋根部材1は、図3に示すように、配線ボックス40の蓋体45に固定される固定部14を有する固定基台10と、カメラ30を上方から覆う覆い部材20と、からなる。更に、覆い部材20は、先端側Fに向けて延設された覆い部21と、固定基台10に形成された被組付け部13に組付けられる組付け部24とからなる。
【0019】
固定基台10は、図4に示すように、覆い部材20の基端側Bの上方に重合して位置する山形板状の上壁部11と、覆い部材20の基端側Bを挟むように間隔をあけて上壁部11の両側の下端から垂下する一対の平板状の側壁部12,12と、を備えている。
【0020】
固定基台10の上壁部11及び一対の側壁部12,12にはこれらで囲まれた内部側に向けて配線ボックス40の蓋体45に固定するための固定部14が設けられている。上壁部11の固定部14には、上壁部11の配線ボックス40に固定される側の端縁に下方に向けて直角に屈曲するフランジ14aが設けられ、フランジ14aの中央には長孔14bが形成されている。また、一対の側壁部12,12の固定部14には、各側壁部12,12の配線ボックス40に固定される側の端縁に互いに向かい合う方向に向けて直角に屈曲する一対のフランジ14a,14aが設けられ、各フランジ14aの中央には長孔14bが形成されている。
【0021】
固定基台10の両側壁部12にはそれぞれ被組付け部13が形成されている。各被組付け部13は上側に位置する上側被組付け部13aと間隔をあけてその下側に位置する下側被組付け部13bとで構成されている。上側被組付け部13aは、一定幅の切欠きからなり、切欠きは、側壁部12の前方側すなわち固定部14とは反対側から後方側すなわち固定部14が設けられている側に向けて水平方向に切欠かれるとともにその奥部から更に斜め下方に向けて切欠かれている。上側被組付け部13aには覆い部材20の組付け部24にねじ込まれるタッピングビス50が取着され、その切欠きは、タッピングビス50のねじ部が挿通可能であってその頭部の直径より小さい幅に形成されている。
【0022】
下側被組付け部13bは、同じく一定幅の切欠きからなり、切欠きは、側壁部12の前方側から後方側に向けて水平方向に形成され、更に斜め下方に向けて形成されている。下側被組付け部13bの水平方向の切欠きは上側被組付け部13aの水平方向の切欠きより短く、斜め下方に向かう切欠きの長さは上側被組付け部13aの斜め下方の切欠きより長く形成されている。下側被組付け部13bには覆い部材20の組付け部24にねじ込まれるタッピングビス50が取着され、この切欠きも、タッピングビス50のねじ部が挿通可能であって頭部の直径より小さい幅に形成されている。下側被組付け部13bの斜め下方に向かう切欠きは、固定基台10に覆い部材20が組付けられた状態で、覆い部材20が固定基台10の上側被組付け部13aのタッピングビス50の取着位置を軸に上下方向に回動したときに、下側被組付け部13bの切欠きに取着されたタッピングビス50が相対的に切欠き内を移動できるよう一定の曲率で湾曲する通路になっている。
【0023】
固定基台10の側壁部12の下部には、落下防止用の紐やワイヤ等が通される落下防止用穴15が設けられている。落下防止用穴15は、これに紐等を挿通しカメラ30のいずれかの箇所に巻き付けておくことにより、カメラ30の万一の落下を防止することができる。また、落下防止用穴15は、ここと後述する覆い部材20の落下防止用穴26とに紐等を通して固定基台10と覆い部材20とを結び付けておくことにより、風圧等を受け易い覆い部材20が万一固定基台10から落下するのを防止することもできる。
【0024】
次に、覆い部材20は、図5に示すように、1枚の板材を加工して形成され、組付け部24を介して固定基台10に組付けられる。覆い部材20の覆い部21は、上面が、基部側Bから延設された方向と交差する方向へと下り傾斜する平面状の傾斜面22に形成されている。この傾斜面22は、覆い部21の延設方向に直交する幅方向の中心位置からそれぞれ幅方向の下端縁に向けて下り傾斜している。すなわち、傾斜面22は、この幅方向の中間位置を中心に左右対称に形成されている。
【0025】
両傾斜面22の下端縁からはそれぞれ垂直下方に屈曲する側壁部23が延設されている。各側壁部23の基端側Bには固定基台10に組付けるための組付け部24が設けられており、各組付け部24は、上方に位置する上側ねじ孔24aと下方に位置する下側ねじ孔24bとで構成されている。上側ねじ孔24aには、固定基台10の上側被組付け部13aに挿通されたタッピングビス50がねじ込まれ、下側ねじ孔24bには、固定基台10の下側被組付け部13bに挿通されたタッピングビス50がねじ込まれる。
【0026】
覆い部材20は、固定基台10に対して所定角度上下方向に回動可能に組付けられている。本実施形態の場合、下側ねじ孔24bに取り付けられたタッピングビス50が固定基台10の下側被組付け部13bの斜め下方の切欠きの上端部に挿通され取着されたときは、図7に示すように、ほぼ水平姿勢になる。また、下側ねじ孔24bにねじ込まれたタッピングビス50が固定基台10の下側被組付け部13bの斜め下方の切欠きの下端奥部に挿通され取着されたときは、図8に示すように、先端側Fが水平面Hから下がった斜め姿勢になり、本実施形態では、水平面Hと覆い部21の頂部稜線21aとの角度θ1は約30度になっている。これにより、覆い部材20は、傾斜面22の頂部稜線21aが水平面Hとここから下方に約30度下がった位置までの角度の範囲内で回動自在に組み付けることができる。覆い部21における先端側Fの先端縁21bは、幅方向中心から側方に向かうに従って僅かに基端側Bの方向に傾斜している。
【0027】
覆い部21の先端縁21bには、上方へと立設し、覆い部21の上面に降った雨を傾斜面22に沿って排出させる水切り壁25が設けられている。水切り壁25は、覆い部21の先端側Fを傾斜面22に対して所定長さほぼ垂直上方に屈曲されて立設されている。水切り壁25の立設方向の先端は、図7に示すように、覆い部材20の先端側Fを最も上げた姿勢で頂部稜線21aが水平になるように覆い部材20を固定した状態から、図8に示すように、覆い部材20の先端側Fを最も下げた姿勢に変更した場合でも、図9に示すように、常に水平面Hより上方を向くように、すなわち水切り壁25の立設方向と水平面Hとの角度θ2が常にプラスになるように設定されている。なお、本実施形態において、水切り壁25は、覆い部21の先端側Fを傾斜面22に対してほぼ垂直上方に屈曲して立設されているが、上記設定が維持されるのであれば、その立設方向の角度はこれに限られるものではない。覆い部材20の側壁部23の基端側Bには、固定基台10と同様の、落下防止用の紐やワイヤ等が通される落下防止用穴26が設けられている。
【0028】
次に、このように構成された本実施形態の屋根部材1の設置について説明する。
まず、建物の壁面やポール等の構造物にカメラ設置台座としての配線ボックス40を設置する。配線ボックス40には、周壁43のキャップ44を外して空いた開口からケーブルを挿入し、内部にケーブルの接続部分やケーブルの余長を収納し、その後、箱本体41の開口に蓋体45を取り付けて塞ぐ。
【0029】
次いで、カメラ30の取付フランジ31の取付孔にタッピングビス50を挿通し、配線ボックス40の一の外面である蓋体45の前面に凹設された窪み46にねじ込んでカメラ30を設置する。カメラ30は、通常、建物の壁面やポール等の高い位置に設置されて高所から地上の状態を監視、撮影するために先端のレンズ側を下方に向けて設置される。
【0030】
次に、図6に示すように、固定基台10の4箇所の固定部14のフランジ14aの長孔14bにタッピングビス50を挿通し、配線ボックス40の蓋体45の窪み46にねじ込んで固定基台10を固定する。
【0031】
その後、図7に示すように、固定基台10の上壁部11の内側に覆い部21の基端側Bの組付け部24の一部を重ね合わせ、固定基台10の上側被組付け部13aにおける斜め下方の切欠きの奥部に外側からタッピングビス50を挿通し、覆い部材20の側壁部23の組付け部24の上側ねじ孔24aにねじ込むとともに、固定基台10の下側被組付け部13bにおける斜め下方の切欠きの上端部に外側からタッピングビス50を挿通し、覆い部材20の側壁部23の組付け部24の下側ねじ孔24bに弛めにねじ込んで仮固定する。
【0032】
そして、覆い部材20をカメラ30の向きに合わせて上側ねじ孔24aに取着されているタッピングビス50の位置を軸に下方に所定角度回動して、図8に示すように先端側Fを所定角度下げる。このとき、覆い部材20の下側ねじ孔24bに取着されているタッピングビス50は相対的に固定基台10の下側被組付け部13bの斜め下方の切欠き内を下方に移動する。覆い部材20が最適な角度に下げられたら、固定基台10の2つのタッピングビス50を締めて本固定する。
【0033】
これにより、屋根部材1を設置したら、固定基台10の側壁部12の落下防止用穴15及び覆い部材20の側壁部23の落下防止用穴26の双方あるいはいずれかに紐やワイヤ等を挿通し、カメラ30のいずれかの箇所に巻き付けておく。また、これらの落下防止用穴15と落下防止用穴26とに紐等を挿通して固定基台10と覆い部材20とを結び付けておく。これらの結束は必ずしも要するものでもないが、結束により、万一のカメラ30の落下や固定基台10からの覆い部材20の落下を確実に防止できる。なお、覆い部材20は、一旦図7に示すように水平状態にしてから所定角度下方に下げているが、最初から図8に示すように固定基台10に対して所定角度下げて固定してもよい。以上により、屋根部材1の設置が完了する。
【0034】
次に、本実施形態の屋根部材1、及びカメラ30と屋根部材1の設置構造の作用を説明する。
まず、屋根部材1は、覆い部21の先端縁21bに上方へと立設する水切り壁25が設けられているので、降雨時に屋根部材1の上面に降った雨水や降雪時に屋根部材1の上面に積もった雪から溶け出した水は堰として機能する水切り壁25によってカメラ30のレンズの前方に落下するのが防止される。このため、カメラ30の視界や撮影が妨げられるのが防止される。
【0035】
そして、特に、屋根部材1は、覆い部21の上面が、延設方向と交差する方向へと下り傾斜する傾斜面22に形成されている。このため、降雨降雪時に覆い部21の上面に受けた雨水等によってカメラ30の視界や撮影が妨げられるのを防止する効果がより高められる。すなわち、カメラ30は通常高所に設置され斜め下方に向けて設置されるところ、仮に、屋根部材1の覆い部21の上面が、全体的に同一平面で形成されているとすると、すなわち、図10に示すように、屋根部材60における覆い部材61が、同一平面で形成された覆い部62とこの幅方向両端から垂直下方に屈曲した側壁部63とで形成されているとすると、カメラ30の向きに合わせて覆い部62も先端側Fが下がった傾斜姿勢になっているから、覆い部62の上面に降った雨水は当然上面を傾斜方向に沿って先端側Fに流れ落ちる一方、その水流の勢いから覆い部62の延設方向と交差する幅方向にはほとんど流れない。ここで、覆い部62の傾斜が急である程当然水の流れは速くなり、勢いよく先端側Fに真直ぐに流れ落ちる。このため、たとえ覆い部62の先端側Fに水切り壁64が設けられていても、覆い部62の傾斜が急であったり降雨降雪量が多いときには、図10の白抜き矢印の水の流れWのように、覆い部62の上面を多くの水が勢いよく真直ぐに流れ落ちるので、水切り壁64のみで全量をせき止めることは困難であり、一部は水切り壁64をそのまま乗り越えてカメラ30の前面側に落下してしまうおそれがある。
【0036】
これに対して、本発明の屋根部材1は、覆い部21の上面が覆い部21の幅方向に下り傾斜しているので、図8に示すように、覆い部21の上面で受けた降雨降雪等の水は、覆い部21の先端側Fに向けて流れるより前に、大半が図8の水の流れWで示すように覆い部21の上面をほぼ均等に分散しながら傾斜面22に沿って幅方向の両側方に流れ落ちる。このため、覆い部21の先端まで流れる水は少なく、更に水切り壁25が設けられているので、水はカメラ30の前面側を横切って真下に流れ落ちることはほとんどない。したがって、降雨降雪時に雨水等によってカメラ30の視界や撮影が妨げられるのを防止する効果がより高められる。
【0037】
そして、屋根部材1は、傾斜面22が、覆い部21の延設方向に直交する幅方向の中心位置からそれぞれ幅方向の端縁に向けて下り傾斜していることにより、降雨降雪時に覆い部21の上面に受けた雨水や融雪水は、覆い部21の幅方向の中心位置から両側方に分散して傾斜面22から排水されるため、排水効率が良い。
【0038】
また、固定基台10の被組付け部13と覆い部材20の組付け部24とは、覆い部材20の上下方向への延設方向の角度を変更して組付けることができることにより、カメラ30に対する屋根部材1の相対角度を任意に変更することができ、設置環境に合わせた角度で屋根部材1を設置することが可能である。
【0039】
加えて、固定基台10は、固定部14が上壁部11と一対の側壁部12,12とで囲まれた内部側に設けられているので、固定部14がカメラ30及び覆い部材20に隠されて外側からの見栄えが良い。
【0040】
更に、覆い部材20の先端側Fを最も上げた角度が水平となるように固定基台10を固定した状態で、覆い部材20の先端側Fを最も下げた角度に変更した場合でも、水切り壁25の立設方向の先端は水平よりも上方を向いているので、上下角度を設定、調整する際に水切り壁25の角度に注意を払う必要はなく、作業性が良い。
【0041】
ところで、上記実施形態の覆い部材20は、固定基台10に対して上下方向のみにおいて延設方向の角度を変更することができるが、本発明を実施する場合には、水平方向や斜め方向においてもあるいはこれらの方向のみに延設方向の角度を変更することができるものとしてもよい。
【0042】
また、覆い部材20は、傾斜面22が、覆い部21の延設方向に直交する幅方向の中心位置からそれぞれ幅方向の端縁に向けて下り傾斜しているが、幅方向の中心位置ではなく、カメラ30の設置環境に合わせて、頂部稜線21aが幅方向のいずれか側に片寄った位置から幅方向の端縁に向けて傾斜するものとしてもよい。あるいは、傾斜面22は、幅方向の両側に傾斜するものではなく、設置環境に応じて一方側のみに傾斜する片屋根構造のものとすることを妨げない。
【0043】
加えて、覆い部材20の傾斜面22は、上面の部位によって傾斜角度を変えてもよい。また、傾斜面22は、平面形状に限らず、曲面形状、波板形状等に形成してもよい。あるいは、傾斜面22は、幅方向の両端縁から排水され易くするための排水溝あるいは凸条を幅方向中央から側方にかけて形成してもよい。この場合、これらの排水溝、凸条も水流を遮断する堰として機能したり、延設方向に流れ落ちる勢いを弱めるよう機能する。更には、傾斜面22の表面は、粗面として水流に抵抗を付けて覆い部21の先端側Fへの流れの勢いを弱めるようにしてもよい。
【0044】
また、固定基台10は、配線ボックス40の蓋体45に複数の窪み46を形成し、固定基台10に設けた固定部14の長孔14bにタッピングビス50を通して蓋体45の窪み46に取着する構造としているが、配線ボックス40等のカメラ設置台座への固定基台10の固定は、この構造に限られるものではない。
【0045】
そして、上記実施形態の屋根部材1は、固定基台10と覆い部材20とを、タッピングビス50を被組付け部13と組付け部24とに取着して組み付ける構成としているが、固定基台10と覆い部材20との組み付けはこの構成に限られるものではない。
【0046】
加えて、上記実施形態の覆い部21の先端は、幅方向中間位置から側方に向かうに従って僅かに基端側Bの方向に傾斜しているが、これに限られるものではない。
【0047】
なお、本実施形態では、カメラ30及び屋根部材1は、建物の構造物に固定された配線ボックス40を介して設置されたものを示しているが、本発明は、建物の壁面やポール等の構造物に直接設置する場合にも同様に適用することがことができる。
【符号の説明】
【0048】
1;屋根部材、10;固定基台、11;上壁部、12;側壁部、13;被組付け部、14;固定部、20;覆い部材、21;覆い部、22;傾斜面、24;組付け部、25;水切り壁、B;基端側、F;先端側、H;水平面、W;水の流れ、θ1;水平面と頂部稜線との角度、θ2;水平面と水切り壁の立設方向との角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10