(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066364
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】回転機構
(51)【国際特許分類】
F16D 11/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
F16D11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022184468
(22)【出願日】2022-11-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】523169338
【氏名又は名称】河合 隆晟
(72)【発明者】
【氏名】河合 隆晟
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA07
3J056AA62
3J056AA70
3J056BB21
3J056BE07
3J056CA02
3J056CA13
3J056DA04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で安定的に被回転体の回転をロックする。
【解決手段】 回転機構は、駆動ギヤと、前記駆動ギヤと同心の被回転体と、前記被回転体に重畳して設けられ、前記駆動ギヤの歯部に対向する歯部と、前記被回転体の外周寄りに回動中心とを有する扇形ギヤと、前記被回転体の半径方向にスライドし、端部が当該被回転体から前進して前記被回転体の外部構造に嵌合し、又は後退して当該嵌合が解除されるように、当該被回転体に設けられるスライド部と、基準位置から前記駆動ギヤに従動して回動する前記扇形ギヤにその回動経路上で当接して当該扇形ギヤの回動を制約するように前記被回転体に設けられ、当接した前記扇形ギヤを介して前記駆動ギヤの回転を前記被回転体に伝えて当該被回転体を回転させる、ストッパと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ギヤと、
前記駆動ギヤと同心の被回転体と、
前記被回転体に重畳して設けられ、前記駆動ギヤの歯部に対向する歯部と、前記被回転体の外周寄りに回動中心とを有する扇形ギヤと、
前記被回転体の半径方向にスライドし、端部が当該被回転体から前進して前記被回転体の外部構造に嵌合し、又は後退して当該嵌合が解除されるように、当該被回転体に設けられるスライド部と、
基準位置から前記駆動ギヤに従動して回動する前記扇形ギヤにその回動経路上で当接して当該扇形ギヤの回動を制約するように前記被回転体に設けられ、当接した前記扇形ギヤを介して前記駆動ギヤの回転を前記被回転体に伝えて当該被回転体を回転させる、ストッパと、
を有する回転機構であって、
前記扇形ギヤは、前記スライド部からスライド方向と交差する方向に突出するピンと遊嵌して前記扇形ギヤの回動に伴って当該ピンを前記スライド部の前記端部が前進又は後退するように湾曲したスリットを有し、当該スリットは、前記駆動ギヤが回転することで前記扇形ギヤが前記ストッパに当接するときには前記スライド部の前記端部を後退させ前記外部構造との嵌合を解除することで前記被回転体を回転可能にし、前記駆動ギヤが停止して前記被回転体が回転を継続し、前記扇形ギヤが前記基準位置まで回動するときには前記スライド部の前記端部を前進させ前記外部構造と嵌合させることで前記被回転体の回転をロックする、
回転機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム等の作業機械における動力伝達系では、モータ等の動力源による回転駆動が種々のギヤを介して伝達されることで、アームの種々の動作が実現される。例えば、アームの関節部分には、駆動軸の回転により被回転体を任意の角度で回転及び停止させる回転機構が設けられ、駆動軸側のアーム部材に対し、被回転体に接合されるアーム部材が回動することで、アームの屈曲及び伸展が行われる。被回転体のロック手段には、磁気を用いるものや、ウォームギヤ、スプリング等の機械的構造によるものが知られている。特許文献1には、スプリングにより回転抵抗を付与する機構が開示される。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被回転体のロックに磁気を用いる場合、磁気を生成するために電力が消費されたり、磁気の制御のための追加的回路構成が必要となったりする。また、機械的構造としてウォームギヤによるセルフロック機能を用いる場合、一方で回転開始時に必要なトルクを得るために時間を要する。さらに、スプリングを用いた機構は、スプリングの劣化に伴い性能が不安定化するおそれがある。
【0006】
上記に鑑みてなされた本発明は、簡易な構成で安定的に被回転体の回転をロックすることが可能な回転機構に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面における回転機構は、駆動ギヤと、前記駆動ギヤと同心の被回転体と、前記被回転体に重畳して設けられ、前記駆動ギヤの歯部に対向する歯部と、前記被回転体の外周寄りに回動中心とを有する扇形ギヤと、前記被回転体の半径方向にスライドし、端部が当該被回転体から前進して前記被回転体の外部構造に嵌合し、又は後退して当該嵌合が解除されるように、当該被回転体に設けられるスライド部と、基準位置から前記駆動ギヤに従動して回動する前記扇形ギヤにその回動経路上で当接して当該扇形ギヤの回動を制約するように前記被回転体に設けられ、当接した前記扇形ギヤを介して前記駆動ギヤの回転を前記被回転体に伝えて当該被回転体を回転させる、ストッパと、を有する回転機構であって、前記扇形ギヤは、前記スライド部からスライド方向と交差する方向に突出するピンと遊嵌して前記扇形ギヤの回動に伴って当該ピンを前記スライド部の前記端部が前進又は後退するように湾曲したスリットを有し、当該スリットは、前記駆動ギヤが回転することで前記扇形ギヤが前記ストッパに当接するときには前記スライド部の前記端部を後退させ前記外部構造との嵌合を解除することで前記被回転体を回転可能にし、前記駆動ギヤが停止して前記被回転体が回転を継続し、前記扇形ギヤが前記基準位置まで回動するときには前記スライド部の前記端部を前進させ前記外部構造と嵌合させることで前記被回転体の回転をロックする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成により被回転体の回転をロックする回転機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】回転機構の断面における動作例を示す図である。
【
図8】第1変形例における回転機構の構成を示す図である。
【
図9】第1変形例における回転機構の動作例を示す図である。
【
図10】第2変形例における回転機構の構成を示す図である。
【
図11】第3変形例における回転機構の構成を示す図である。
【
図12】第3変形例における回転機構の断面図である。
【
図13】第3変形例における回転機構の動作例を示す図である。
【
図14】第3変形例における回転機構の動作例を示す図である。
【
図16】スライド部と外部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における回転機構の実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1、
図2は、本実施形態における回転機構の構成を示す。
図1は、回転機構の平面視における構成を示し、
図2は
図1の回転機構のA-A´における断面の構成を示す。回転機構1は、駆動ギヤ10と、駆動ギヤ10と同心の被回転体11と、被回転体11に重畳して設けられ被回転体11の外周寄りに回動中心12を有する扇形ギヤ13と、被回転体11に設けられ被回転体11の半径方向にスライドするスライド部14と、被回転体11に設けられて扇形ギヤ13に当接するストッパ15R、15Lと、を有する。
【0012】
駆動ギヤ10は、回転軸16においてモータ等任意の動力の回転出力を受けることで、回転軸16を中心に回転可能に構成される。駆動ギヤ10は、外周に歯部17を有する。なお、
図1以下において、歯部17その他の歯部における歯の図示は省略する。
【0013】
扇形ギヤ13は、駆動ギヤ10の歯部17に対向し歯部17と係合する歯部18を円周部分に有する。扇形ギヤ13は、駆動ギヤ10の回転に従動して回動中心12を中心に回動可能に構成される。また扇形ギヤ13は、弦方向に延在しその中心部で回動中心12に接近するように湾曲するスリット19を有する。
【0014】
スライド部14は、例えば、
図2、及び扇形ギヤ13を省略した被回転体11の一部にかかる
図3に示すように、被回転体11に設けられる空洞部20に収容されることで、被回転体11に設けられる。空洞部20は、被回転体11の半径方向に延在し被回転体11の外周部分で外部に連通する。スライド部14は、空洞部20の延伸方向に沿ってスライド可能に構成される棒状の部材である。スライド部14と空洞部20はそれぞれ、スライド部14が前進方向Fへスライドすることでその端部14aが被回転体11の外周へ突出して被回転体11の外部構造100に設けられる孔に篏合し、後退方向Bへスライドすることで端部14aが後退して外部構造100との篏合が解除されるような寸法に構成される。スライド部14は、被回転体11の中心寄りの端部に、スライド方向、すなわち前進方向Fまたは後退方向Bに交差する方向に突出するピン21を有する。ピン21は、被回転体11に空洞部20の延伸方向に沿って設けられるガイド孔30を介して扇形ギヤ13のスリット19に遊嵌するよう突出する。ガイド孔30は長手形状を呈し、その長手方向の距離はスライド部14がスライドする距離以上である。
【0015】
ストッパ15R、15Lは、扇形ギヤ13が重畳する被回転体11の面において、扇形ギヤ13の回動経路に干渉するよう突出する凸部であり、回動範囲の端部を画定する位置に設けられる。ストッパ15R、15Lは、扇形ギヤ13の半径方向に延在する長手形状の部材であって、被回転体11と一体的に形成され、又は被回転体11に接合される。
【0016】
図1、
図2に示すように、扇形ギヤ13がその円弧に沿った歯部18の中心において駆動ギヤ10の歯部17と係合するような基準位置に位置するとき、スライド部14のピン21は、扇形ギヤ13のスリット19における回動中心12寄りに位置する。このとき、スライド部14の端部14aは、外部構造100の孔に篏合する。これにより、被回転体11は固定され回転がロックされる。
【0017】
扇形ギヤ13が基準位置に位置する状態で、駆動ギヤ10が回転方向Dへ回転すると、扇形ギヤ13が駆動ギヤ10に従動して回動方向Rへ回動し、ストッパ15Rに当接して回動が妨げられるまで回動を続ける。このとき、扇形ギヤ13の回動に伴ってスリット19が回動方向Rへ回動するので、スリット19に遊嵌するピン21がスリット19の湾曲に沿ってスリット19における図面上の左側へ、つまり扇形ギヤ13の回動中心12から遠ざかるように誘導され、スライド部14を後退方向Bへスライドさせる。
【0018】
図4、
図5は、それぞれ
図1、
図2に示す回転機構1において、扇形ギヤ13がストッパ15Rに当接する位置まで回動した状態を示す。
【0019】
図4に示すように、扇形ギヤ13は、ストッパ15Rに当接する位置まで回動すると、ストッパ15Rによって回動が阻まれる。このとき、扇形ギヤ13は、歯部18の図面上の左端部において駆動ギヤ10の歯部17に係合しており、駆動ギヤ10とストッパ15Rとを連結させた状態とする。その状態で、駆動ギヤ10が、回転方向Dへの回転を継続すると、その回転が扇形ギヤ13を介し被回転体11に伝わる。一方で、
図4、
図5に示すように、スライド部14が後退方向Bへスライドした状態にあることで端部14aと外部構造の孔100との篏合が解除されて被回転体11は回転可能に解放される。よって、被回転体11が、駆動ギヤ10の回転に伴って、回転方向Dへ回転する。
【0020】
回転方向Dへ回転する被回転体11の回転を任意の回転角で停止させるべく駆動ギヤ10の回転を停止させたにも関わらず、被回転体11に対し回転方向Dへの外力が加わり、被回転体11の回転方向Dへの回転が継続する場合がある。仮に、被回転体11が
図4、
図5に示す回転角のときに駆動ギヤ10を停止させ、被回転体11が回転方向Dへ回転を継続すると、
図4、
図5の状態は、それぞれ
図6、
図7の状態へ遷移する。
【0021】
図6に示すように、駆動ギヤ10の回転が停止した状態で被回転体11が
図4の状態から回転方向Dへ回転角θ回転すると、扇形ギヤ13の回動中心12も、扇形ギヤ13と停止した駆動ギヤ10との係合を維持しつつ回転角θ回転するので、扇形ギヤ13は被回転体11に対し回動中心12を中心として回動方向Lへ、ストッパ15Rから離れて回動する。これにより、扇形ギヤ13は基準位置まで戻る。その際、スリット19によりピン21がスリット19の中心部へ、つまり回動中心12に近づくように誘導され、これに伴いスライド部14が前進方向Fへスライドするので、
図6、
図7に示すように、端部14aが回転角θに対応する位置に設けられる外部構造100の孔と篏合する。外部構造100における孔は、例えば、被回転体11の外周全域に亘って任意の間隔で設けられる。このようにして、被回転体11は、回転角θで回転がロックされ、回転を停止する。
【0022】
回転機構1によれば、駆動ギヤ10の動力源の出力を停止させた場合に、略所望の回転角で被回転体11の回転をロックすることが可能となる。その際、動力源の回転軸に無用の負荷をかけることなく、被回転体11の回転をロックすることが可能となる。
【0023】
図1~
図7において、駆動ギヤ10が回転方向Wへ回転する場合には、扇形ギヤ13は回動方向Lへ回動してストッパ15Lに当接し、被回転体11は回転方向Wへ回転する。被回転体11が回転方向Wへ回転する場合において、駆動ギヤ10の回転を停止したときに被回転体11の回転方向Wへの回転が継続する場合にも、同様にして扇形ギヤ13が被回転体11に対し回動中心12を中心として回動方向Rへ、ストッパ15Lから離れて回動して基準位置まで戻る。これに伴いスライド部14が前進方向Fへスライドするので、端部14aが外部構造に篏合することで、被回転体11の回転がロックされる。
【0024】
<第1変形例>
回転機構1は、扇形ギヤ13、ストッパ15L、15R及びスライド部14の複数の組合せを備えることが可能である。
図8、
図9は、回転機構1が3つの組合せを備える変形例を示す。
図8の回転機構1は、扇形ギヤ13、ストッパ15L、15R及びスライド部14の3つの組合せを、回転中心12について回転対称の位置に備える。
図8の回転機構1において、駆動ギヤ10が回転方向Dへ回転することで各扇形ギヤ13が回動方向Rへ、それぞれ対応するストッパ15Rに当接する位置まで回動し、これに伴いスライド部14が後退して外部構造100との篏合が解除される。そして、
図9に示すように、駆動ギヤ10の回転方向Dへの回転が各扇形ギヤ13を介して被回転体11に伝わり、被回転体11が回転方向Dへ回転する。扇形ギヤ13、ストッパ15L、15R及びスライド部14の複数の組合せを備えることで、各部位にかかる負荷が分散される。駆動ギヤ10の回転を停止したときに被回転体11の回転方向Dへの回転が継続する場合に、各扇形ギヤ13が被回転体11に対し回動中心12を中心として回動方向Lへ、ストッパ15Rから離れて回動して基準位置まで戻る。これに伴いスライド部14が前進して外部構造100に篏合することで、被回転体11の回転がロックされる。駆動ギヤ10が回転方向Dと反対の回転方向Wへ回転する場合には、上述における扇形ギヤ13及び被回転体11はそれぞれ反対方向に回動又は回転する。
【0025】
<第2変形例>
図10は、別の変形例を示す。この変形例における回転機構1は、駆動ギヤ10と各扇形ギヤ13の間に、駆動ギヤ10と各扇形ギヤ13のそれぞれの歯部と係合する歯部を有し駆動ギヤ10に従動して回転することで各扇形ギヤ13を回動させる従動ギヤ110を有する。すなわち、駆動ギヤ10の歯部と各扇形ギヤ13の歯部が従動ギヤ110を介して対向する。
図10の回転機構1において、駆動ギヤ10が回転方向Dへ回転することで各従動ギヤ110が回転方向Dの反対方向へ回転する。すると、従動ギヤ110の回転により各扇形ギヤ13が回動方向Lへ、それぞれ対応するストッパ15Lに当接する位置まで回動し、各扇形ギヤ13が駆動ギヤ10、従動ギヤ110及びストッパ15Lを連結した状態にする。これに伴いスライド部14が後退して外部構造100との篏合が解除される。そして、駆動ギヤ10の回転方向Dへの回転が従動ギヤ110、扇形ギヤ13を介して被回転体11に伝わり、被回転体11が回転方向Dへ回転する。駆動ギヤ10の回転を停止したときに被回転体11に対し回転方向Dと反対の回転方向Wへ外力が作用し、被回転体11が回転方向Wへ回転しようとする場合に、各扇形ギヤ13が被回転体11に対し回動中心12を中心として回動方向Rへ、ストッパ15Lから離れて回動して基準位置まで戻る。これに伴いスライド部14が前進して外部構造100に篏合することで、被回転体11の回転がロックされる。駆動ギヤ10が回転方向Dと反対の回転方向へ回転する場合には、上述における扇形ギヤ13及び被回転体11はそれぞれ反対方向に回動又は回転する。
【0026】
上記のように動作する変形例では、駆動ギヤ10が停止したときに被回転体11に対し回転方向と反対向きの外力が作用した場合に、被回転体11の回転をロックすることが可能となる。
【0027】
<第3変形例>
図11~
図14は、さらに別の変形例を示す。
図11及び
図12は、それぞれ
図1及び
図2の変形例に対応する。この変形例における回転機構1は、被回転体11におけるスライド部14の位置と、前進・後退方向が
図1、
図2の場合と異なる。
【0028】
図11、
図12に示すように、被回転体11には、駆動ギヤ10が重畳する面とは反対側の面に、回転軸16を中心とする円筒状の凹部102が設けられ、空洞部20が凹部102に連通するように設けられる。凹部102内には、円柱状の外部構造103が配置される。スライド部14は、空洞部20の延伸方向に沿ってスライド可能に構成される。スライド部14と空洞部20はそれぞれ、スライド部14が前進方向F´へスライドすることでその端部14bが被回転体11の中心へ向け凹部102内に突出し、外部構造103の円周に任意の間隔で設けられる孔に篏合する。また、スライド部14が後退方向B´へスライドすることで端部14bが後退して外部構造103との篏合が解除される。
【0029】
扇形ギヤ13のスリット19は、弦方向に延在しその中心部で回動中心12から遠ざかるように湾曲する。スリット19は、その曲率が扇形ギヤ13の円周の曲率より大きくなるような形状を呈することが好適である。扇形ギヤ13の基準位置では、スリット19の中心部にピン21が位置するので、ピン21が回動中心12から遠ざかるように誘導されて、スライド部14が回転中心16に向けて前進し外部構造103と篏合する。
【0030】
図13、
図14は、それぞれ
図11、
図12に示す回転機構1において、扇形ギヤ13がストッパ15Rに当接する位置まで回動した状態を示す。
【0031】
図13に示すように、扇形ギヤ13は、ストッパ15Rに当接する位置まで回動すると、ストッパ15Rによって回動が阻まれる。このとき、駆動ギヤ10が、回転方向Dへの回転を継続すると、その回転が扇形ギヤ13を介し被回転体11に伝わる。一方で、
図13、
図14に示すように、スライド部14のピン21が扇形ギヤ13のスリット19に誘導されて後退方向B´へスライドし、これに伴いスライド部14が後退して端部14bと外部構造103との篏合が解除されるので、被回転体11は回転可能に解放される。よって、被回転体11が、駆動ギヤ10の回転に伴って、回転方向Dへ回転する。
【0032】
回転方向Dへ回転する被回転体11の回転を任意の回転角で停止させるべく駆動ギヤ10の回転を停止させたにも関わらず、被回転体11の回転方向Dへの回転が継続する場合には、扇形ギヤ13は被回転体11に対し回動中心12を中心として回動方向Lへ、ストッパ15Rから離れて回動する。これにより、扇形ギヤ13は基準位置まで戻る。その際、スリット19によりピン21が回転軸16に近づくように誘導され、これに伴いスライド部14が前進方向F´へスライドするので、端部14bが外部構造103と篏合する。このようにして、被回転体11は、回転がロックされ、回転を停止する。
【0033】
<第4変形例>
図15は、扇形ギヤ13のスリット19、190に関する変形例を示す。
図15(a)、(b)は、
図1~
図7で示した扇形ギヤ13における、中心部が回動中心12に近づくような形状のスリット19の例を示す。スリット19は、
図1~
図7で示したように湾曲した形状のほか、
図15(a)のように逆V字形状であってもよいし、
図15(b)のように両端が屈折した矩形状であってもよい。また、
図15(c)、(d)は、
図11~
図14で示した扇形ギヤ13における、中心部が回動中心12から遠ざかるような形状のスリット190の例を示す。スリット190は、
図11~
図14で示したように湾曲した形状のほか、
図15(c)のようにV字形状であってもよいし、
図15(d)のように両端が屈折した矩形状であってもよい。なお、スリット19、190とピン21の間には、潤滑剤、又はベアリング等を設けて、スリット19、190とピン21の遊嵌を円滑にしてもよい。
【0034】
<第5変形例>
図16は、スライド部14と外部構造100に関する変形例を示す。スライド部14の端部14aの形状は、被回転体11の回転軸16に直交する断面において放物線形状を呈する。端部14aは、例えば、凸形状の放物面である。外部構造100は、被回転体11の外周に沿って交互に凹部121と凸部122とを有する。凹部121と凸部122は、被回転体11の回転軸16に直交する断面において交互に反転する放物線形状を呈する。スライド部14の端部14aと外部構造100の凹部121及び凸部122がかかる形状を有することで、スライド部14が前進したときに端部14aが外部構造100の凸部122に接触した場合であっても、端部14aと凸部122の接点における摩擦が抑えられて、端部14aが凹部121に向けて誘導され易くなる。よって、端部14aが円滑かつ確実に凹部121に篏合することが可能となる。
図11及び
図12に示す外部構造102と端部14bも同様の構造としてもよい。
【実施例0035】
図17、
図18は、回転機構1の実施例を示す。
図17は、回転機構1が利用されるロボットアーム160の概略構成を示し、
図18は、
図17のB-B´における断面図を示す。ロボットアーム160は、本体側の上腕部2と回転機構1を介して連結される前腕部3とを有し、上腕部2に対し前腕部3が回動可能に構成される。上腕部2は、モータ4と外部構造100を有する。前腕部3は、回転機構1を有し、被回転体11と連結される。モータ4の駆動軸5が回転機構1の駆動ギヤ10を駆動すると、駆動ギヤ10に従動する扇形ギヤ13の作用により被回転体11が回転する。なお、ここでは、ストッパの図示は省略してある。そして、回転体11の回転に伴って前腕部3は、上腕部2に対し回動方向UP又はDNへ回動する。また、前腕部3は、回転体11のスライド部14が上腕部2側の外部構造100に篏合することで、回転をロックする。例えば、前腕部3が鉛直方向下向きに対応する回動方向DNへ回動するときにモータ4の駆動が停止されると、前腕部3が自重により回動方向DNへ回動を継続する。すると、扇形ギヤ13の作用によりスライド部14が前進して外部構造100に篏合することで、前腕部2の回動がロックされる。なお、第2変形例における回転機構1が適用される場合、前腕部2の回動方向と反対方向の外力が作用する場合に、前腕部2の回動がロックされる。