(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066387
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】反応結合炭化ケイ素部品を接合するためのダイヤモンド含有粘着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20240508BHJP
C04B 37/00 20060101ALI20240508BHJP
C04B 35/573 20060101ALI20240508BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240508BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240508BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240508BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C09J163/00
C04B37/00 A
C04B35/573
C09J11/04
C09J11/06
C09J5/00
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011911
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】18/051,756
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519180286
【氏名又は名称】トゥー-シックス デラウェア,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サム・サラモン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・マカナニー
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エヴァンズ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G026
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA16A
4F100AA37A
4F100AK53A
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4F100BA03
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4G026BA14
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4J040EC001
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4J040JB09
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4J040KA17
4J040KA42
4J040MA04
4J040MB05
4J040MB09
4J040PA41
4J040PB11
(57)【要約】
【課題】反応結合炭化ケイ素部品を接合するためのダイヤモンド含有粘着剤を提供する。
【解決手段】エポキシ系接着剤は、エポキシ材料と、ダイヤモンド粉末及び炭化ケイ素粒子を含む固形成分とを含む。粘着剤材料は、反応結合炭化ケイ素部品同士を結合する、反応結合炭化ケイ素を形成するために使用され得る。本開示は、プリフォームから製品をアセンブルする方法であって、ダイヤモンド粉末を含有する粘着剤層を、対向するプリフォーム表面間に配置することと、層を炭化することと、プリフォーム及び炭化層に溶融シリコンを浸透させて、プリフォームを、対応する反応結合炭化ケイ素部品に変換し、炭化層を、低減した量の残留シリコンを含む反応結合炭化ケイ素結合領域に変換することとを含む方法にも関する。ダイヤモンド含有粘着剤を処理することによって結合された、少なくとも2つの反応結合炭化ケイ素部品を含む、アセンブルされた製品も開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ材料を含む液状成分と、
ダイヤモンド粉末及び炭化ケイ素粒子を含む固形成分と
を含むエポキシ系接着剤。
【請求項2】
前記エポキシ材料が、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ダイヤモンド粉末が、前記固形成分の約1重量%以上であり、前記固形成分の約10重量%以下である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
前記ダイヤモンド粉末がダイヤモンド粒子からなり、前記ダイヤモンド粒子のサイズが約1μm~約5μmの範囲内である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
前記固形成分が、前記ダイヤモンド粉末よりも多くの前記炭化ケイ素粒子を含有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
少なくとも2つのプリフォームから製品をアセンブルする方法であって、
前記プリフォームの対向表面間に粘着剤層を配置することであって、前記粘着剤層がエポキシ材料及びダイヤモンド粉末を含む、前記配置することと、
その後、前記粘着剤層を炭化させて炭化層を生成することと、
その後、前記プリフォーム及び前記炭化層に溶融シリコンを浸透させて、前記プリフォームを、反応結合炭化ケイ素を含む対応する部品に変換し、前記炭化層を、前記部品同士を結合し且つ反応結合炭化ケイ素を含む接合領域に変換することとを含む前記方法。
【請求項7】
前記粘着剤層が炭化ケイ素粒子を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粘着剤層の前記炭化が、前記粘着剤層の温度を約560℃~約840℃の範囲内の温度に上昇させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記粘着剤層の前記炭化が、不活性ガスを使用して前記粘着剤層の周囲の雰囲気を置換することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記浸透が、真空または不活性雰囲気中で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融シリコンが、前記部品及び前記接合領域において凝固する際に膨張する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
アセンブルされた製品であって、
プリフォームの対向表面間に粘着剤層を配置することであって、前記粘着剤層がエポキシ材料及びダイヤモンド粉末を含む、前記配置することと、
その後、前記粘着剤層を炭化させて炭化層を生成することと、
その後、前記プリフォーム及び前記炭化層に溶融シリコンを浸透させて、前記プリフォームを、反応結合炭化ケイ素を含む対応する部品に変換し、前記炭化層を、前記部品同士を結合し且つ反応結合炭化ケイ素を含む接合領域に変換することとを含む方法によって作製された、前記アセンブルされた製品。
【請求項13】
前記エポキシ材料が、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を含む、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記粘着剤層が、固形成分を有し、前記ダイヤモンド粉末が、前記固形成分の約1重量%以上であり、前記固形成分の約10重量%以下である、請求項12に記載の製品。
【請求項15】
前記ダイヤモンド粉末がダイヤモンド粒子からなり、前記ダイヤモンド粒子のサイズが約1μm~約5μmの範囲内である、請求項12に記載の製品。
【請求項16】
前記固形成分が、前記ダイヤモンド粉末よりも多くの前記炭化ケイ素粒子を含有する、請求項12に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
反応結合炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)は、溶融した元素シリコン(Si)を炭化ケイ素(SiC)粒子及び炭素(C)の多孔質塊と真空または不活性雰囲気中で接触させる反応浸透によって形成される多相材料である。溶融シリコンが毛管作用によって炭化ケイ素粒子及び炭素の塊に引き込まれるような浸潤条件が作り出され、塊の中の炭素とシリコンが反応して更なる炭化ケイ素を形成する。得られる反応結合炭化ケイ素材料は、主に炭化ケイ素を含有するが、未反応の相互接続したシリコンも含有する。
【背景技術】
【0002】
この浸透プロセスは
図1及び2に例示されている。
図1は、炭化ケイ素粒子22及び炭素24を含有する多孔質塊(またはプリフォーム)20の概略断面図である。
図2は、溶融シリコンを浸透させ、その後に冷却した後の反応結合炭化ケイ素材料(セラミック材料)26の概略断面図である。浸透は、真空または不活性雰囲気中で行われ得る。
【0003】
例示されているプロセスでは、溶融シリコンがプリフォーム20に反応的に浸透し(
図1)、その結果、反応結合炭化ケイ素材料26(
図2)は、(1)元の炭化ケイ素粒子22、(2)反応により生じた炭化ケイ素(Si+C→SiC)28、及び(3)残留(未反応)元素シリコン30の、3つの要素の微細構造を有する。シリコン30は、その液体状態から凝固する際に膨張する(水(H
2O)及びガリウム(Ga)と同様)。結果として、反応し、凝固した3成分微細構造22、28、30は非常に密である。
【0004】
反応結合炭化ケイ素材料は、本明細書でこの用語が使用される場合、連続的なシリコンマトリクスにおける炭化ケイ素粒子の非常に密な二相複合体である。反応結合炭化ケイ素材料については、米国特許出願公開第2022/0227676号(2022年7月21日公開)、同第2021/0331985号(2021年10月28日公開)、同第2018/0099379号(2018年4月12日公開)、同第2017/0291279号(2017年10月12日公開)、及び同第2014/0109756号(2014年4月24日公開)において言及されている。米国特許出願公開第2022/0227676号、同第2021/0331985号、同第2018/0099379号、同第2017/0291279号、及び同第2014/0109756号の全開示内容は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、エポキシ材料を含む液状成分と、ダイヤモンド粉末及び炭化ケイ素粒子を含む固形成分とを含む、エポキシ系接着剤に関する。接着剤は、必要に応じて、反応結合炭化ケイ素から形成された少なくとも2つの部品を接続する、反応結合炭化ケイ素から形成された接合領域を形成するために使用され得る。
【0006】
本開示は、少なくとも2つのプリフォームから製品をアセンブルする方法にも関する。本方法は、プリフォームの対向表面間に粘着剤層を配置することであって、粘着剤層がエポキシ材料及びダイヤモンド粉末を含む、配置することと、粘着剤層を炭化させて炭化層を生成することと、プリフォーム及び炭化層に溶融シリコンを浸透させて、プリフォームを、反応結合炭化ケイ素を含む対応する部品に変換し、炭化層を、該部品同士を結合し且つ反応結合炭化ケイ素を含む接合領域に変換することとを含む。
【0007】
本開示は、反応結合炭化ケイ素部品同士が反応結合炭化ケイ素接合領域によって結合されている、アセンブルされた製品を作製する方法にも関する。接合領域は、低減した量の残留シリコンを有するように、ダイヤモンド含有エポキシ系粘着剤から形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る反応結合炭化ケイ素セラミック基板を生成するためのプリフォーム材料の一例の概略断面図である。
【
図2】
図1のプリフォーム材料から作製された反応結合炭化ケイ素材料の概略断面図である。
【
図3】本開示に従って構築されたプリフォームアセンブリの一例の側面図であり、液状粘着剤が2つのプリフォーム間に配置されている。
【
図4】
図3に例示されているプリフォームアセンブリからアセンブルされた製品の一例の断面の顕微鏡写真であり、接合領域が2つの部品の間に配置されており、接合領域及び2つの部品は、反応結合炭化ケイ素を含有する。
【
図5】
図4に例示されているアセンブルされた製品を作製する方法の一例のフローチャートである。
【
図6】本開示に従ってアセンブルされた別の製品の断面の顕微鏡写真である。
【
図7】本開示に従ってアセンブルされた更に別の製品の断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を通して、同様の要素は、同様の参照番号及び他の記号によって指定されている。図面は、本開示の例示及び説明を目的とした非限定的な例を示しており、縮尺どおりに描かれたものではない。
【0010】
ここで
図3を参照すると、例示されているプリフォームアセンブリ40は、第1及び第2のプリフォーム42、44、ならびにプリフォーム42、44の間に配置された粘着剤層46を含む。プリフォーム42、44の各々は、
図1に例示されている種類の炭化ケイ素粒子及び炭素の多孔質塊を含む。粘着剤層46は、流動性液状粘着剤(本明細書では接着剤と呼ばれることもある)であり、プリフォーム42、44の対向面48、50に接触する。示されている例において、粘着剤層46の厚みは、対向面48、52間の距離とほぼ等しく、約200μmであり得る。しかし、本開示は、本明細書で言及される数値範囲及び値に限定されるべきではない。ただし、そのような特徴が添付の特許請求の範囲において言及される場合はこの限りではない。例示されている構成では、第1のプリフォーム42は、第2のプリフォーム44に、粘着剤層46によって接着されている。
【0011】
以下により詳細に記載するように、粘着剤層46は、液状成分52及び固形成分54、56を有する。液状成分52は、好適なエポキシ樹脂及び好適なエポキシ硬化剤を含み得る。固形成分54、56は、ダイヤモンド粒子54及び他の粉末56を含み得る。必要に応じて、ダイヤモンド粒子54は、細粒のダイヤモンド粉末(粒径は約1μm~約5μmの範囲内、好ましくは約3μm)であり得る。他の粉末56は、以下により詳細に記述するように、主に炭化ケイ素粒子であり得る。浸透処理中、以下により詳細に記載するように、ダイヤモンド粒子54は、溶融シリコンと十分に反応して、残留(元素)シリコンを少量しか含まない反応結合接合領域60(
図4)を作り出す。
【0012】
本開示の別の態様に関連して、粘着剤層は、必要に応じて、細粒のダイヤモンド粒子54に加えて、より大きなダイヤモンド粒子(粒径が例えば約10μmを超えるもの)を含有してもよい。本開示のこの態様によれば、より大きなダイヤモンド粒子は、溶融シリコンと完全には反応せず、最終的な接合化合物中にダイヤモンド粒子として存在し得る。
【0013】
プリフォームアセンブリ40(
図3)は、必要に応じて、
図4に例として示されている製品62を生成するために使用され得る。例示されている製品62は、接合領域60によって接合された第1及び第2の部品64、66を含む。第1及び第2の部品64、66は、それぞれのプリフォーム42、44(
図3)に溶融シリコンを真空または不活性雰囲気中で浸透させることによって生成される。第1及び第2の部品64、66の各々は、
図2に例示されている、(1)プリフォーム42、44中にあった元の炭化ケイ素粒子、(2)反応により生じた炭化ケイ素(Si+C→SiC)、及び(3)残留(未反応)元素シリコンの、3つの要素の微細構造を含む。
【0014】
接合領域60は、硬化したエポキシ材料(粘着剤層46のエポキシ樹脂の重合によって形成される)を少なくとも部分的に炭素に変換する炭化プロセスに続いて、炭化した残留物に溶融シリコンを真空または不活性雰囲気中で浸透させる浸透プロセスによって生成され得る。浸透プロセス後、接合領域60は、(1)液状粘着剤46中にあった炭化ケイ素粒子56、(2)反応により生じた炭化ケイ素で、(a)炭化プロセス中に形成された炭素粒子と(b)浸透性シリコンとの間の反応から生成されたもの、(3)反応により生じた炭化ケイ素で、(a)液状粘着剤46中にあったダイヤモンド粒子54と(b)浸透性シリコンとの間の反応から生成されたもの、及び少量の残留(元素)シリコンの、4つの要素の微細構造を含む。
【0015】
アセンブルされた製品62を作製する方法の一例が
図5に例示されている。予備ステップ102では、プリフォーム42、44の面48、50の一方または両方を液状粘着剤で被覆し、粘着剤層46を形成する。この予備ステップ102の間、液状粘着剤は流動性であり、プリフォーム42、44の面48、50に被覆するのに十分に低い粘度を有する。後続ステップ104では、粘着剤層46のエポキシ樹脂が重合し硬化するまで、プリフォーム42、44を押し合わせる。
【0016】
後続ステップ106では、粘着剤層46及びプリフォーム42、44の少なくとも一部の周りの雰囲気を窒素または別の好適な不活性ガスによって置換し、硬化した粘着剤層46の温度を560℃~840℃の範囲内の炭化温度まで上げる。炭化温度は、粘着剤層46のエポキシ材料のすべてを、または少なくともかなりの量を元素炭素に変換するのに十分に高く、十分に長く適用されるべきである。必要に応じて、炭化温度は約700℃であり得る。炭化ステップ106の後、プリフォーム表面48、50間に残存する材料は、ダイヤモンド粒子54、他の粉末(主に炭化ケイ素粒子)56、及び高温炭化により生成された炭素を含み、エポキシ材料を本質的に含まない。
【0017】
次に、後続ステップ108において、プリフォーム42、44と、プリフォーム42、44の表面48、50間に残存する材料とに、真空または不活性ガス中で溶融シリコンを同時に浸透させる。シリコンの浸透により、プリフォーム42、44の多孔質塊が反応結合炭化ケイ素に変換され、それにより、部品64、66がプリフォーム42、44から生成される。同時に(すなわち、ステップ108中に)、シリコンの浸透により、表面48、50間に残存する材料が反応結合接合領域60に変換され、この接合領域は、上記のように、(1)液状粘着剤46中にあった炭化ケイ素粒子56、(2)反応により生じた炭化ケイ素で、(a)炭化プロセス中に形成された炭素粒子と(b)浸透性シリコンとの間の反応により生成されたもの、(3)反応により生じた炭化ケイ素で、(a)ダイヤモンド粒子54と(b)浸透性シリコンとの間の反応により生成されたもの、及び(4)少量の残留(未反応)元素シリコンの、4要素微細構造を有する。
【0018】
浸透プロセス中(すなわち、ステップ108中)、浸透性シリコンは、表面48、50をいずれかの方向で(すなわち、プリフォーム42、44の中または外に)通過し得る。溶融シリコンは、湿潤/毛管作用を原動力として使用し、炭化した領域の縁から炭化した領域内に入るか、または表面48、50を通過する。浸透プロセスの最後に、反応結合炭化ケイ素部品64、66は、反応結合接合領域60によって互いに結合される。
【0019】
粘着剤層46(
図3)を構成する液状粘着剤の液状成分は、液状粘着剤の18重量%~28重量%の範囲内であり得る。液状粘着剤の固形成分は、液状粘着剤の72重量%~82重量%の範囲内であり得る。本開示の好ましい態様によれば、液状粘着剤の固形成分の重量で割った液状成分の重量は約0.30、すなわち、0.27~0.33の範囲であり得る。しかし、繰り返すが、本開示は、本明細書で言及される数値範囲及び値に限定されるべきではない。ただし、そのような特徴が添付の特許請求の範囲において言及される場合はこの限りではない。
【0020】
上記のように、液状粘着剤の液状成分は、好適なエポキシ樹脂及び好適なエポキシ硬化剤を含有する。樹脂は、液状成分の83重量%~90重量%の範囲内であり得る。硬化剤は、液状成分の18重量%~28重量%の範囲内であり得る。施行中、液状粘着剤は、ステップ104中に、プリフォーム42、44が押し合わされている間に、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤の混合物の重合の結果として硬化する。本開示に関連して用いることのできるエポキシ材料は、ステップ106の前に、アセンブルされたプリフォーム42、44の互いに対する十分な粘着をもたらすべきである。
【0021】
また上記のように、液状粘着剤46の固形成分は、ダイヤモンド粒子54及び他の粉末56を含む。ダイヤモンド粒子54は、固形成分の約1重量%~約10重量%の範囲内であり得る。他の粉末56は、固形成分の約90重量%~約99重量%の範囲内であり得る。他の粉末56は、被覆ステップ102中に好適な粘度、嵩、及び他の望ましい特徴を有する液状粘着剤をもたらすように選択され得る。他の粉末56は、様々な粒度の炭化ケイ素粒子を主として、少量添加された他のセラミック種と組み合わせたものであり得る。
【0022】
接合領域60には残留シリコンが少量しか存在しないため、接合領域60は、特に高温用途のために、反応結合炭化ケイ素部品64、66間の強力な結合をもたらす。粘着剤層46は、少量の細粒(3μm)ダイヤモンド粉末54を含有する。シリコン浸透プロセス(ステップ108)中、ダイヤモンド粉末54は、接合領域60がシリコンを少量しか有しないように、溶融シリコンと十分に反応する。ダイヤモンド粉末54を液状粘着剤46に含めることは、浸透プロセス後に接合領域60に残存する未反応(元素)シリコンの量を低減するのに役立つ。概して、接合領域60の、特に高温用途のための結合強度は、接合領域60の体積に対する、凝固した接合領域60内の未反応(元素)シリコンの量に反比例する。
【0023】
炭化ケイ素形成反応(Si+C→SiC)は体積膨張性であるため、概して、炭素レベルの高いプリフォームは、残留シリコンをほとんど含まない反応結合セラミックをもたらす。炭化したエポキシ材料は比較的低密度の炭素源であるため、不都合なことに、浸透後の接合領域内の残留シリコン含量は自然と高くなる。ダイヤモンドの出発密度は高いため、ダイヤモンド粒子から炭化ケイ素への変換は、有利なことに、きわめて大きな体積膨張をもたらし、完成製品中のシリコン含量が低くなる。換言すれば、ダイヤモンド粉末54を粘着剤層46に組み込むことは、高温用途に有利である反応結合接合領域60を確立するのに役立つ。
【0024】
異なる炭素源の密度、及びこれらの炭素源が浸透性シリコンとの反応時に体積増加をもたらす程度を、表1に記載する。異なる炭素源のうち、ダイヤモンドが最も高い密度を有し、シリコンとの反応時に最大の体積増加をもたらす。
【0025】
【0026】
図3及び4に示した例において、液状粘着剤46の固形部分は、約5重量%のダイヤモンド粉末54を含有する。
図6及び7に例示した他の製品72、74では、アセンブルされた製品72、74の接合領域76、78を作製するために使用した液状粘着剤の固形部分は、それぞれ約1重量%及び約10重量%のダイヤモンド粉末54を含有する。
図4に例示した接合領域60と比較すると、
図6及び7に例示した接合領域76、78は、より多くの残留シリコン及びより少ない残留シリコンをそれぞれ含有する。示されている例において、残留シリコンの相対量は、ダイヤモンド粉末含量の増加と共に減少する。
【0027】
粘着剤層46におけるダイヤモンド粉末54の含量と、接合領域60、76、78における残留シリコンの量との間に反比例関係があるのは、他の炭素源と比較すると、ダイヤモンドが高い密度を有し、したがって、反応により生じる体積増加をより大きくし、したがって、さもなければ未反応シリコンを含有する空間をより多く飽和させるためであると考えられる。
図4、6、及び7において、明るい領域及び暗い領域は、未反応シリコン及び炭化ケイ素をそれぞれ表す。アセンブルされた製品を作製するために使用される液状粘着剤の固形部分が10重量%のダイヤモンド粉末を含有する場合、反応結合接合領域78(
図7)は、ごくわずかな未反応シリコンしか含有せず、高温用途にきわめて望ましい。
【0028】
所望の接合領域60、76、78が完全に形成された(硬化した/浸透後に冷却された)後、完成製品62、72、74を、半導体機器及び光学基板ならびにハウジングを含むがこれらに限定されない様々な精密用途で使用するためにさらに処理してもよい。そのようなさらなる処理は、機械加工及び表面仕上げならびに1つまたは複数のシステムへのアセンブリを含み得る。接合された部品及び接合領域における反応結合材料は、有利なことに、低い熱膨張、高い熱伝導性、低い密度、及び高い剛性を呈し得る。アセンブルされた製品62、72、74は、より大きな材料ブロックから所望の形状を有する製品を機械加工または別法によって生成するよりも、2つ以上の小さな部品同士を接合して所望の形状にする方がより効率的または経済的である場合に特に有利であり得る。
【0029】
まとめると、本開示は、エポキシ系流動性接着剤46が炭化ケイ素56及びダイヤモンド粉末54を含有する組成物に関する。本開示の一態様によれば、ダイヤモンド粉末54は、サイズが1μm~5μmの範囲のダイヤモンド粒子を含み、粘着剤層46の固形成分の総重量に対するダイヤモンド粉末の重量は、約1%~約10%の範囲内である。
【0030】
したがって、必要に応じて、反応結合炭化ケイ素で作製された2つ以上のボディ64、66を、シリコン含量の低い反応結合炭化ケイ素材料で作製された結合層60、76、78によって互いに粘着させることができる。ボディ64、66は、ダイヤモンド粒子54及び炭化ケイ素粒子56を含むエポキシ化合物を硬化してから炭化させ、次に炭化後の材料にシリコンを浸透させることにより、接合することができる。得られる製品62、72、74は、シリコン含量の低い結合層60、76、78を含む反応結合炭化ケイ素ボディとみなすことができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「約」という言葉は、関連付けられた値をプラスまたはマイナス10%だけ修飾する。例えば、本開示において、「約」100単位は、90単位以上且つ110単位以下を意味する。
【0032】
新規であると主張され、米国特許証により保護されることが望まれるものは、次のとおりである。
【符号の説明】
【0033】
40 プリフォームアセンブリ
42 第1のプリフォーム
44 第2のプリフォーム
46 粘着剤層
52 液状成分
54 ダイヤモンド粒子
56 他の粉末(主に炭化ケイ素粒子)
60、76、78 接合領域
62、72、74 製品
64 第1の部品
66 第2の部品