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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066392
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ドローン傾斜着陸装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 60/20 20230101AFI20240508BHJP
   B64U 60/50 20230101ALI20240508BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
B64U60/20
B64U60/50
B64U10/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034735
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2022174695の分割
【原出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】522426641
【氏名又は名称】堀井 樹
(71)【出願人】
【識別番号】522426652
【氏名又は名称】株式会社ROBOTIX JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】堀井 樹
(57)【要約】
【課題】ドローンを傾斜面に着陸させるにあたり、脚部の負荷を低減することの可能なドローン傾斜着陸装置を提供する。
【解決手段】複数のプロペラ15を有し、かつ、着陸場所21への着陸が可能なドローン本体13と、ドローン本体13から下方へ突出された複数の脚部17,18と、を有するドローン傾斜着陸装置10であって、複数の脚部17,18は、ドローン本体13に対する突出量をそれぞれ変更でき、ドローン本体13が着陸する前に、着陸場所21の傾斜角度θ1を判断する角度判断部と、ドローン本体13が着陸した場合におけるドローン本体13の水平度を保持するため、ドローン本体13が着陸する前に、ドローン本体13に対する複数の脚部17,18の突出量を、傾斜角度θ1に応じて制御する脚部制御部と、を有する、ドローン傾斜着陸装置10を構成した。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロペラを有し、かつ、飛行及び着陸場所への着陸が可能なドローン本体と、
前記ドローン本体から下方へ突出され、かつ、前記着陸場所に接触される複数の脚部と、
を有するドローン傾斜着陸装置であって、
複数の前記脚部は、前記ドローン本体に対する突出量をそれぞれ変更できる構成であり、
前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記ドローン本体が着陸する前に、前記着陸場所の傾斜角度を判断する角度判断部と、
前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記ドローン本体が着陸した場合における前記ドローン本体の水平度を保持するため、前記ドローン本体が着陸する前に、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の前記突出量を、前記傾斜角度に応じて制御する脚部制御部と、
を有する、ドローン傾斜着陸装置。
【請求項2】
請求項1記載のドローン傾斜着陸装置において、
前記ドローン本体の前記水平度を保持は、前記ドローン本体の高さ方向における中心線と、水平な仮想線とが平行に保持されていることを含む、ドローン傾斜着陸装置。
【請求項3】
請求項1記載のドローン傾斜着陸装置において、
前記傾斜角度は、水平な仮想線と前記着陸場所の表面との間の角度、または、鉛直線と前記着陸場所の表面との角度を含む、ドローン傾斜着陸装置。
【請求項4】
請求項1記載のドローン傾斜着陸装置において、
前記ドローン本体には、前記ドローン本体が着陸する前に、前記ドローン本体から前記着陸場所までの高さ方向の距離を検出する距離センサが設けられ、
前記角度判断部は、前記距離センサにより検出される前記距離に基づいて、前記傾斜角度を判断する、ドローン傾斜着陸装置。
【請求項5】
請求項1記載のドローン傾斜着陸装置において、
前記脚部制御部は、前記ドローン本体の支点を中心として複数の前記脚部を作動及び停止させることにより、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の前記突出量をそれぞれ制御するアクチュエータを含む、ドローン傾斜着陸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドローンの姿勢を制御することができるドローン傾斜着陸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンの姿勢を制御する技術の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された回転翼航空機は、揚力を得るための複数のロータと、複数のロータと連結される胴体と、胴体を支持する少なくとも3本の複数のロッド(脚部)と、各ロッドに負荷される荷重を検出する荷重センサと、荷重センサにより検出された荷重の実測値が目標値となるようにロータを自動制御する制御装置と、を備えている。
【0003】
さらに、特許文献1に記載された回転翼航空機は、胴体の水平方向に対する傾斜角度を検出する角度センサと、複数のロッドをそれぞれ伸縮させる伸縮機構(アクチュエータ)と、角度センサで検出された傾斜角度が許容範囲外である場合には、伸縮機構を制御することによって、角度センサで検出された傾斜角度が許容範囲内となるように複数のロッドの少なくとも1つを伸縮させるロッド制御装置と、を更に備えている。
【0004】
そして、特許文献1には、回転翼航空機が水平方向に対して傾斜する傾斜面から離陸しようとすると、各ロータで発生する揚力が鉛直方向とならないため、姿勢が不安定となる恐れがある、と記載されている。そこで、特許文献1には、角度センサで回転翼航空機の傾きを検出し、回転翼航空機が傾いている場合には、必要なロッドを伸縮機構で伸縮させることによって、回転翼航空機の姿勢を水平にすることができる、と記載されている。なお、凹凸のある場所に着陸したマルチコプター(ドローン)を円滑に離陸させることができる技術は、特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-131779号公報
【特許文献2】特開2021-3915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、特許文献1及び特許文献2に記載されている技術は、何れもドローンが傾斜面に着陸した状態において、アクチュエータにより脚部を作動させてドローンの姿勢を制御するため、脚部の負荷が増加する、という課題を認識した。
【0007】
本開示の目的は、ドローンを傾斜面に着陸させるにあたり、脚部の負荷を低減することの可能な、ドローン傾斜着陸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、複数のプロペラを有し、かつ、飛行及び着陸場所への着陸が可能なドローン本体と、前記ドローン本体から下方へ突出され、かつ、前記着陸場所に接触される複数の脚部と、を有するドローン傾斜着陸装置であって、複数の前記脚部は、前記ドローン本体に対する突出量をそれぞれ変更できる構成であり、前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記ドローン本体が着陸する前に、前記着陸場所の傾斜角度を判断する角度判断部と、前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記ドローン本体が着陸した場合における前記ドローン本体の水平度を保持するため、前記ドローン本体が着陸する前に、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の前記突出量を、前記傾斜角度に応じて制御する脚部制御部と、を有する、ドローン傾斜着陸装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ドローン本体が着陸場所へ着陸する前に、ドローン本体に対する脚部の突出量を制御する。したがって、脚部の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示におけるドローン傾斜着陸装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】ドローンが空中に居る状態の模式的な正面図である。
図3図2に示すドローンの模式的な左側面図である。
図4】ドローンの模式的な平面図である。
図5】ドローンが傾斜面に着陸する直前の状態を示す模式的な正面図である。
図6】ドローンが傾斜面に着陸した状態を示す模式的な正面図である。
図7】ドローン本体に設けられた制御部が行う処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(概要)
本開示のドローン傾斜着陸装置は、ドローンを傾斜面に着陸させるにあたり、ドローン本体の姿勢を安定させることのできる装置である。本開示のドローン傾斜着陸装置に含まれるいくつかの実施形態を図面に基づいて説明する。ドローン傾斜着陸装置の実施形態を説明するための図面において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(構成)
図1に示すドローン傾斜着陸装置10は、ドローン11及び送信機(プロポーショナル・システム)12を含む。送信機12は、操作者により操作される。図2及び図3には、ドローン11が示されており、ドローン11は、ドローン本体13、アーム14、プロペラ15、アンテナ16、2つの脚部17,18、アクチュエータ22,37を有する。ドローン本体13は、一例として、金属製または合成樹脂製であり、ドローン本体13は、内部が中空のケーシングである。アンテナ16は、ドローン本体13の外面に設けられており、アンテナ16と、送信機12との間で信号の送信及び受信が行われる。
【0013】
アーム14は、ドローン本体13の外面から突出して設けられている。アーム14は、複数本、例えば、3本以上設けられている。本実施形態では、アーム14が4本設けられている例を説明する。4本のアーム14は、一例として、金属製または合成樹脂製である。図4のようにドローン11を平面視すると、4本のアーム14は、ドローン本体13の中心Q1を基準として所定角度おきに放射状に配置されている。
【0014】
4本のアーム14の先端には、電動モータ19がそれぞれ設けられている。各電動モータ19は、一例としてブラシレスモータである。図1に示すように、各電動モータ19は、回転速度制御部38を介して、それぞれ電源27に接続されている。回転速度制御部38が設けられている数は、電動モータ19の数と同じである。回転速度制御部38が有するスイッチング素子のオン及びオフを制御することにより、各電動モータ19の出力軸の回転、停止、及び回転速度を、それぞれ別々に変更できる。プロペラ15は、各電動モータ19の出力軸にそれぞれ固定されている。
【0015】
各アーム14には、距離センサ20がそれぞれ設けられている。距離センサ20は、ドローン11と着陸場所21との距離を検出して信号を出力する。着陸場所21は、地表、建築物の屋根、建築物の屋上、車両のボデー外面、等の何れであってもよい。地表は、山地、台地、丘陵、土手、堤防、岩、等を含む。距離センサ20は、例えば、レーザー光線を着陸場所21へ向けて照射し、反射したレーザー光線を受光することにより、ドローン11と着陸場所21との距離を測定して信号を出力する。なお、距離センサ20は、複数設けられていればよく、全てのアーム14に設けられていなくてもよい。
【0016】
脚部17,18及びアクチュエータ22,37は、ドローン本体13の下面に複数設けられている。各脚部17,18は、一例として金属製である。図2のようにドローン11を正面視すると、各脚部17,18は、支点A1を中心とする所定角度の範囲内でそれぞれ作動可能である。各脚部17,18の下端(先端)には、滑り止め部材、例えば、合成ゴム、スポンジ等がそれぞれ取り付けられている。アクチュエータ22は、脚部17作動及び停止させる機構であり、アクチュエータ37は、脚部18作動及び停止させる機構である。
【0017】
図1は、ドローン傾斜着陸装置10の制御系統を示すブロック図である。ドローン本体13には、前述した脚部17,18、アンテナ16、電動モータ19、アクチュエータ22,37の他に、電源スイッチ23、制御部24、カメラ25、障害物検出センサ26、電源27、記憶部28等が設けられている。電源スイッチ23は、ドローン11を起動及び停止させるためのものであり、利用者により操作される。カメラ25は、ドローン11の周囲の映像を撮影して信号を出力する。障害物検出センサ26は、一例として、可視光線、赤外線、超音波のうちの少なくとも一つを利用してドローン11の周囲の障害物を検出して信号を出力する。
【0018】
記憶部28には、制御部24が行う判断、処理、制御等に用いられるプログラム、アプリケーション、情報及びデータが記憶されている。制御部24は、入力ポート及び出力ポート、演算処理回路を有するコンピュータである。制御部24は、距離センサ20の信号、障害物検出センサ26の信号、カメラ25の信号、アンテナ16が送信機12から受信する信号、アンテナ16から送信機12へ送信する信号を処理する。制御部24は、各種の信号、記憶部28に記憶されている情報及びデータに基づいて、アクチュエータ22,37、回転速度制御部38、カメラ25を制御する。
【0019】
具体的に説明すると、制御部24は、送信機12から受信する操作信号を処理して、電動モータ19の回転、停止及び回転速度を制御することにより、ドローン11の状態を制御する。また、距離センサ20の信号に基づいて、アクチュエータ22,37を制御する。電源27は、充電及び放電を行うことのできる二次電池である。電源27は、一例としてリチウム・イオン電池、ニッケル・カドミウム電池が用いられる。電源27の電力は、制御部24、アクチュエータ22,37、電動モータ19、カメラ25、距離センサ20、障害物検出センサ26に供給される。障害物検出センサ26が検出した障害物、カメラ25で撮影される映像は、記憶部28に記憶される。
【0020】
ドローン11を制御する送信機12は、電源スイッチ29、アンテナ30、コントロールスティック31、モニタ32、電源33、記憶部34、制御部35を有する。電源スイッチ29は、送信機12を起動・停止するために利用者により操作される。アンテナ30は、ドローン11のアンテナ16との間で信号の送信及び受信を行う。コントロールスティック31はドローン11を制御するために2本設けられており、コントロールスティック31は、利用者により操作される。利用者がコントロールスティック31を操作すると、制御部35は、アンテナ30を介してドローン11へ送る操作信号を生成する。操作信号は、ドローン11を水平な平面内で回転させる信号(ラダー)、ドローン11を前後方向へ移動させる信号(エレベータ)、ドローン11を左右方向へ移動させる信号(エルロン)、ドローン11を上昇及び下降させる信号(スロットル)、ドローン11を空中で静止させる信号を含む。
【0021】
制御部35は、入力ポート及び出力ポート、演算処理回路を有するコンピュータである。モニタ32は、カメラ25により撮影される映像を表示できる。モニタ32としては、液晶モニタが用いられる。記憶部34には、制御部35が行う判断、処理、制御等に用いられるプログラム、アプリケーション、情報及びデータが記憶されている。制御部35は、コントロールスティック31の操作信号、アンテナ30がドローン11から受信した信号を処理し、アンテナ30からドローン11へ送信する信号を生成する。制御部35は、入力される信号、記憶部34に記憶されている情報及びデータに基づいて、モニタ32の表示内容、アンテナ30からドローン11へ送信する信号等を処理する。電源33は、前述した電源27と同様の構成を有する。電源33の電力は、制御部35、モニタ32、コントロールスティック31等に供給される。
【0022】
アクチュエータ22,37は、一例として、電動モータ及び歯車機構等によりそれぞれ構成される。アクチュエータ22が有する電動モータは、インバータ回路39を介して電源27に接続され、アクチュエータ37が有する電動モータは、インバータ回路40を介して電源27に接続されている。インバータ回路39,40は、それぞれ複数のスイッチング素子を有する。インバータ回路39が制御されることにより、アクチュエータ22が有する電動モータの回転方向及び回転角度を制御できる。つまり、図2及び図5に示す脚部17の作動方向及び作動角度を制御できる。インバータ回路40が制御されることにより、アクチュエータ37が有する電動モータの回転方向及び回転角度を制御できる。つまり、図2及び図5に示す脚部18の作動方向及び作動角度を制御できる。
【0023】
(使用例)
利用者が、ドローン傾斜着陸装置10を操作する例は、次の通りである。利用者は、まず、送信機12の電源スイッチ29をオンさせる。すると、電源33の電力が制御部35、コントロールスティック31、モニタ32等に供給され、送信機12が起動される。次に、利用者は、ドローン11が地表に着陸している状態で、ドローン11の電源スイッチ23をオンさせる。すると、電源27の電力が制御部24、カメラ25、障害物検出センサ26、距離センサ20等に供給され、ドローン11が起動される。
【0024】
利用者が送信機12のコントロールスティック31を操作することにより、電動モータ19が回転し、かつ、プロペラ15が回転されてドローン11が離陸し、空中で飛行する。例えば、図4に示す4つのプロペラ15のうち、ドローン本体13を隔てて対角に位置するプロペラ15A,15Bは、時計回りに回転され、ドローン本体13を隔てて対角に位置するプロペラ15C,15Dは、反時計回りに回転される。ドローン11が空中で飛行中、または、空中で静止中において、障害物検出センサ26は、ドローン11の周囲の障害物を検出できる。カメラ25は、ドローン11の周囲及び地表の映像を撮影できる。カメラ25で撮影された映像は、記憶部28に記憶され、かつ、送信機12へ送られる。
【0025】
制御部24が行う処理例を説明する。制御部24が行う処理の一部は、図7のフローチャートに示されている。制御部24は、ドローン11が空中を飛行中、または、ドローン11が空中で静止中において、距離センサ20の信号を処理することにより、ドローン11から着陸場所21までの距離(高さ)を検出する。具体的には、ドローン本体13から着陸場所21までの距離を検出する。また、制御部24は、ドローン本体13から着陸場所21までの距離に基いて、各脚部17,18の下端から着陸場所21までの距離を求めることができる。つまり、各脚部17,18の長さが一定であるため、各脚部17,18の停止位置及び各脚部17,18の長さに基づいて、各脚部17,18の下端から着陸場所21までの距離を求めることができる。
【0026】
また、制御部24は、複数の距離センサ20の信号を処理することにより、ドローン11の下方の着陸場所21の状態を検出できる。具体的には、図5のように、着陸場所21の傾斜面36の傾斜の向き、及び傾斜面36の傾斜角度θ1を検出できる。傾斜角度θ1は、仮想線B1と傾斜面36との間の鋭角の角度で表すことができる。制御部24は、複数の距離センサ20で検出される距離L1と距離L2との差から、仮想線B1と着陸場所21の表面との間の角度を求めることができる。制御部24は、複数の距離センサ20により検出される距離L1,L2が異なる場合、着陸場所21において、短い距離L2に相当する第1位置P1から、長い距離L1に相当する第2位置P2に近づくことに伴い、低位となる向きで傾斜面36が傾斜していることを判断できる。着陸場所21の表面が傾斜面36である場合、傾斜角度θ1を求めることができる。このように、制御部24は、図7のステップS10において、傾斜面36の傾斜角度θ1を判断する。
【0027】
ドローン11から着陸場所21までの距離が所定距離以上であると、制御部24は、脚部17,18を共に初期位置で停止させている。図2のように、脚部17,18が初期位置で停止されていると、ドローン本体13の高さ方向の中心を示す中心線C1と、脚部17,18の中心線との間の角度α1は、全ての脚部17,18について同じである。ドローン本体13の高さ方向は、ドローン11が空中に居る場合に、重力の作用方向に相当する。このため、中心線C1から脚部17の下端までの突出量L3と、中心線C1から脚部18の下端までの突出量L4とが同じである。突出量L3,L4は、ドローン本体13の高さ方向における長さである。そして、2つの脚部17,18の下端が、ドローン本体13の左右方向で間隔をおいて停止されている。また、制御部24は、ドローン11から着陸場所21までの距離L1,L2と、脚部17,18の作動範囲内における停止位置とに基づいて、脚部17,18のそれぞれの下端と、着陸場所21との距離L5,L6を判断できる。
【0028】
ドローン11から送信機12へ送られる映像は記憶部34へ記憶され、かつ、モニタ32に表示される。利用者は、モニタ32に表示される映像を目視できる。利用者がドローン11を着陸場所21へ着陸させる場合、コントロールスティック31を操作することにより、ドローン11を下降させる指示を出す。すると、制御部35は、指示に応じた操作信号を生成し、操作信号が送信機12からドローン11へ送信される。ドローン11の制御部24が、受信した操作信号に応じて各電動モータ19の回転速度を制御すると、ドローン11が下降する。
【0029】
そして、制御部24は、ドローン11が着陸する前、つまり、脚部17,18の下端が着陸場所21に接触する前に、着陸場所21の傾斜面36の傾斜角度θ1に応じて脚部17,18の停止位置を調整する制御を行う。制御部24は、距離センサ20の信号、脚部17,18の停止位置に基いて、脚部17,18の下端が着陸場所21に接触したか否かを判断できる。図5には、傾斜面36に間隔をおいて第1位置P1及び第2位置P2が示されている。傾斜面36は、第1位置P1から第2位置P2に近づくことに伴い低位となる向きに傾斜されている。ここでは、図4のように、ドローン11を平面視した場合において、第1位置P1と第2位置P2とを結ぶ仮想線D1と、ドローン本体13の中心Q1を通る仮想線D2とが、略90度の角度で交差する状態で、ドローン11が下降するものとする。仮想線D2は、ドローン11を平面視した場合において、脚部17と脚部18との間に位置するものとして、便宜上、示してある。
【0030】
制御部24は、脚部17の停止位置を初期位置に保持し、かつ、脚部18を初期位置から移動させ、かつ、変更位置で停止させる制御を行う。具体的には、アクチュエータ37により脚部18を図5において反時計回りに作動させた、かつ、脚部18を変更位置で停止させる。制御部24は、脚部18の変更位置を、傾斜面36の傾斜角度θ1と、脚部18の初期位置とに基づいて調整する。つまり、傾斜面36と、脚部17,18の先端同士を結ぶ仮想線E1とが平行になるように、脚部18の変更位置を定める。
【0031】
制御部24は、脚部18の停止位置を変更する制御を、脚部17,18の下端が傾斜面36に接触する前に完了させる。このため、制御部24は、脚部17の下端から傾斜面36までの距離L5、及び脚部18の下端から傾斜面36までの距離L6と、ドローン11の下降速度と、脚部18の作動速度及び角度変更量と、に基づいて、脚部18の停止位置を変更する制御の開始時期を決定する。
【0032】
そして、制御部24が、脚部18の停止位置を変更する制御を完了後、図6のように、2つの脚部17,18の下端が共に傾斜面36に接触し、ドローン11の着陸が完了する。ドローン11の着陸が完了した状態において、ドローン本体13の水平度を保持できる。ここでは、仮想線B1と中心線C1とが略水平であることをもって、ドローン本体13の水平度が保持されているものとする。このため、ドローン11の姿勢が安定した状態から、ドローン11を離陸させることができる。ドローン11が離陸した後、制御部24は、脚部18を作動させて初期位置で停止させる。制御部24が脚部18の停止位置を変更する制御は、図7のステップS11で実行される。
【0033】
また、傾斜面36の傾斜の向きが、図5と逆である状況でドローン11を下降させる場合、制御部24は、アクチュエータ22により脚部17を初期位置から作動させて角度α1を変更し、脚部17の停止位置を変更する制御を行う。制御部24が脚部17の停止位置を変更する制御は、図7のステップS11で実行される。
【0034】
さらに、着陸場所21の傾斜角度は、図5に示す鉛直線B3と傾斜面36と間の傾斜角度θ2として把握してもよい。鉛直線B3は、重力の作用方向を示す仮想線である。この場合、制御部24は、図7のステップS10において、複数の距離センサ20で検出される距離L1と距離L2との差から、仮想線B1と傾斜面36との間の傾斜角度θ2を判断する。
【0035】
(効果)
本実施形態では、ドローン11が着陸場所21へ着陸する前に、アクチュエータ37により脚部17,18の停止位置を制御する。このため、アクチュエータ22,37及び脚部17,18は、ドローン11を構成する他の部品の荷重を受けずに作動できる。アクチュエータ22,37及び脚部17,18は、ドローン11を構成する他の部品の荷重を受けずに作動できる。他の部品は、ドローン本体13、アーム14、プロペラ15、電動モータ19等を含む。したがって、アクチュエータ22,37及び脚部17,18が受ける負荷を低減できる。
【0036】
(補足説明)
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。ドローン本体13は、ドローン本体の一例である。プロペラ15は、プロペラの一例である。脚部17,18は、脚部の一例である。突出量L3,L4は、脚部の突出量の一例である。アクチュエータ22,37は、アクチュエータの一例である。制御部24は、角度判断部の一例である。制御部24、アクチュエータ22,37、インバータ回路39,40は、脚部制御部の一例である。距離センサ20は、距離センサの一例である。傾斜面36は、着陸場所の表面の一例である。傾斜角度θ1,θ2は、傾斜角度の一例である。仮想線B1は、水平線の一例である。
【0037】
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図7のステップS10を参照して説明した着陸場所の傾斜角度の判断方法は一例であり、角度判断部は、距離センサ20の信号を用いて、他の処理を行って着陸場所の傾斜角度を判断してもよい。また、ドローン本体に対する脚部の突出量は、ドローン本体の高さ方向において、ドローン本体の下面から、脚部の下端までの突出量として把握してもよい。
【0038】
さらに、複数のプロペラの上端を結ぶ仮想線と、水平な仮想線とが略平行であることをもって、ドローン本体の水平度が保持されている、と把握してもよい。さらに、ドローン本体の上面が平坦であれば、ドローン本体の上面と、水平な仮想線とが略平行であることをもって、ドローン本体の水平度が保持されている、と把握してもよい。さらに、ドローン本体の下面が平坦であれば、ドローン本体の下面と、水平な仮想線とが略平行であることをもって、ドローン本体の水平度が保持されている、と把握してもよい。
【0039】
さらに、脚部は、3以上設けられ、脚部のそれぞれを別々に作動させるアクチュエータが設けられていてもよい。脚部の下端に設けられる滑り止めは、凹凸部であってもよい。プロペラの数は、5以上設けられ、かつ、プロペラの数に応じたアームが設けられ、プロペラの数に応じた電動モータが設けられていてもよい。また、距離センサは、ドローン本体の下面、または、電動モータの下面に設けられていてもよい。
【0040】
さらに、脚部が直線状に作動させることにより、本体の高さ方向における脚部の突出量を変更できる構成でもよい。この場合、脚部を作動させるアクチュエータは、電動モータと、電動モータの回転力を、脚部の直線状に往復作動させる力に変換するラック・アンド・ピニオン機構と、を備えることができる。なお、脚部が直線状に作動する構成であるため、ドローン本体に対する脚部の角度は変更されない。
【0041】
本実施形態には、次のドローン制御方法が開示されている。複数のプロペラを有し、かつ、飛行及び着陸場所への着陸が可能なドローン本体と、前記ドローン本体から下方へ突出され、かつ、前記着陸場所に接触される複数の脚部と、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の突出量を制御する制御部と、を有するドローンを制御する制御方法であって、前記制御部は、前記ドローン本体が着陸する前に、前記着陸場所の傾斜角度を判断する第1ステップと、前記第1ステップに次いで行われ、かつ、前記ドローン本体が着陸した場合における前記ドローン本体の水平度を保持するため、前記ドローン本体が着陸する前に、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の前記突出量を、前記傾斜角度に応じて制御する第2ステップと、を実行する、ドローン制御方法である。ドローン制御方法の概要は、図7のフローチャートに示されている。図7のステップS10は、第1ステップに相当し、ステップS11は、第2ステップに相当する。
【0042】
また、本実施形態には、次のドローン制御プログラムが開示されている。複数のプロペラを有し、かつ、飛行及び着陸場所への着陸が可能なドローン本体と、前記ドローン本体から下方へ突出され、かつ、前記着陸場所に接触される複数の脚部と、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の突出量を制御する制御部と、を有するドローンを制御する、ドローン制御プログラムであって、前記制御部を、前記ドローン本体が着陸する前に、前記着陸場所の傾斜角度を判断する角度判断器、前記ドローン本体が着陸した場合における前記ドローン本体の水平度を保持するため、前記ドローン本体が着陸する前に、前記ドローン本体に対する複数の前記脚部の前記突出量を、前記傾斜角度に応じて制御する脚部制御器、として機能させるドローン制御プログラムである。ドローン制御プログラムは、図1の記憶部28に記憶されている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、ドローン本体が着陸する前に、ドローン本体の水平度を制御することができるドローン傾斜着陸装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…ドローン傾斜着陸装置、13…ドローン本体、15…プロペラ、17,18…脚部、20…距離センサ、22,37…アクチュエータ、24…制御部、39,40…インバータ回路、B1…仮想線、L3,L4…突出量、θ1,θ2…傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7