(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066395
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240508BHJP
【FI】
A61M25/10 502
A61M25/10 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047526
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022175356
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼根 群
(72)【発明者】
【氏名】河井 花奈美
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 壮
(72)【発明者】
【氏名】荻堂 盛貴
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB12
4C267BB28
4C267CC09
4C267GG01
4C267GG21
(57)【要約】
【課題】金属線と樹脂部材との接合強度に優れた医療機器を提供することを目的とする。
【解決手段】医療機器であって、体内に挿入される長尺部材と、長尺部材の先端側に固定される1つまたは複数の金属線であって、先端と基端のうち少なくとも一方を含んだ表面が樹脂膜で被覆されている1つまたは複数の金属線と、1つまたは複数の金属線の先端と基端のうちの少なくとも被覆されている一方を長尺部材に固定する樹脂製の固定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器であって、
体内に挿入される長尺部材と、
前記長尺部材の先端側に固定される1つまたは複数の金属線であって、先端と基端のうち少なくとも一方を含んだ表面が樹脂膜で被覆されている1つまたは複数の金属線と、
前記1つまたは複数の金属線の先端と基端のうちの少なくとも被覆されている一方を前記長尺部材に固定する樹脂製の固定部と、を備える、医療機器。
【請求項2】
請求項1に記載の医療機器であって、
前記金属線は、
前記金属線が1つの場合、コイル形状を有しており、前記金属線が複数の場合、コイル形状を有している場合と、有していない場合とがあり、
前記金属線がコイル形状を有している場合、コイルの内側に空間部が形成されており、1つのコイルの互いに隣接する部分の一方の表面の前記樹脂膜が他方の表面の前記樹脂膜と少なくとも一部において分離しており、
前記金属線が複数の場合、前記複数の金属線が取り囲むことによって内側に前記空間部が形成されており、前記複数の金属線のうちの互いに異なる2つの金属線の一方の表面の前記樹脂膜が他方の表面の前記樹脂膜と少なくとも一部において分離している、医療機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の医療機器であって、
前記1つまたは複数の金属線は、前記先端と前記基端との間の中間部の形状が変化することによって、前記空間部の大きさを変更可能であり、
前記医療機器は、さらに
前記1つまたは複数の金属線の前記中間部と接する前記樹脂製の膜部材を備える、医療機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の医療機器であって、
前記金属線は、横断面において、前記横断面に沿った第1の方向における前記金属線の中心点から前記金属線の表面までの距離が、前記第1の方向とは異なる第2の方向における前記中心点から前記金属線の表面までの距離と異なる形状を有しており、
前記樹脂膜は、前記金属線の表面と接する内層と、前記内層を覆う外層とを含んでいる、医療機器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の医療機器であって、
前記樹脂膜の最大厚さは、2μm以上11μm以下である、医療機器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の医療機器であって、
前記金属線と前記樹脂膜との接合強度は、前記金属線の破断強度よりも低い、医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の血管などを治療するために用いられる医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管などを治療するために人体内に挿入される医療機器であって、金属部材と樹脂部材により構成された医療機器が知られている(特許文献1、2)。特許文献2には、樹脂製のバルーンにより拡縮する金属線を備えたカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-9998号公報
【特許文献2】特表2007-530158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属線を備えた医療機器では、金属線が樹脂部材に接合されることがある。このとき、金属線と樹脂部材との間の接合強度を確保することは容易ではなかった。上記の先行技術によってもなお、従来の医療機器には、金属線と、金属線と接合される他の樹脂部材との接合強度の確保という点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、金属線と樹脂部材との接合強度に優れた医療機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態は、医療機器であって、体内に挿入される長尺部材と、長尺部材の先端側に固定される1つまたは複数の金属線であって、先端と基端のうち少なくとも一方を含んだ表面が樹脂膜で被覆されている1つまたは複数の金属線と、1つまたは複数の金属線の先端と基端のうちの少なくとも被覆されている一方を前記長尺部材に固定する樹脂製の固定部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、金属線を被覆する樹脂膜が樹脂製の固定部と接合することで金属線と固定部との接合強度が向上する。
【0009】
(2)上記形態の医療機器において、金属線は、金属線が1つの場合、コイル形状を有しており、金属線が複数の場合、コイル形状を有している場合と、有していない場合とがあり、金属線がコイル形状を有している場合、コイルの内側に空間部が形成されており、1つのコイルの互いに隣接する部分の一方の表面の樹脂膜が他方の表面の樹脂膜と少なくとも一部において分離しており、金属線が複数の場合、複数の金属線が取り囲むことによって内側に空間部が形成されており、複数の金属線のうちの互いに異なる2つの金属線の一方の表面の樹脂膜が他方の表面の樹脂膜と少なくとも一部において分離していてもよい。
【0010】
この構成によれば、金属線を覆う樹脂膜は、少なくとも一部において分離している。このため、樹脂膜同士の接合によって金属線の軸方向の伸縮や、径方向の拡縮などの変形が阻害されることを抑制することができる。
【0011】
(3)上記形態の医療機器において、1つまたは複数の金属線は、先端と基端との間の中間部の形状が変化することによって、空間部の大きさを変更可能であり、医療機器は、さらに1つまたは複数の金属線の中間部と接する樹脂製の膜部材を備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、空間部の大きさが変更可能であることにより、例えば血管の狭窄部の拡張などに医療機器を用いることができる。
【0013】
(4)上記形態の医療機器において、金属線は、横断面において、横断面に沿った第1の方向における金属線の中心点から金属線の表面までの距離が、第1の方向とは異なる第2の方向における中心点から金属線の表面までの距離と異なる形状を有しており、樹脂膜は、金属線の表面と接する内層と、内層を覆う外層とを含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、金属線の横断面は例えば長方形などの多角形などである。これにより、例えば本実施形態の金属線により血管内の硬度化した病変部を押圧する場合には、病変部に亀裂を入れることが容易となる。
【0015】
(5)上記形態の医療機器において、樹脂膜の最大厚さは、2μm以上11μm以下であってもよい。
【0016】
(6)上記形態の医療機器において、金属線と樹脂膜との接合強度は、金属線の破断強度よりも低くてもよい。
【0017】
この構成によれば、金属線が引っ張られた際に、金属線が破断するより先に樹脂膜から金属線を分離しやすくすることができる。このため、金属線の破断を抑制できることから、金属線の破断による金属片の発生および金属線の破断部分による血管壁等の傷付けを抑制することができる。
【0018】
この構成によれば、樹脂膜が2μm以上であることから金属線が外部に露出してしまうおそれを低減することができる。また、樹脂膜が11μm以下であることにより、医療機器の外径が不要に増大することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の医療機器の全体構成を例示した説明図である。
【
図2】第1実施形態の医療機器の先端部の縦断面を例示した説明図である。
【
図4】金属線とバルーンの接合部を例示した説明図である。
【
図6】金属線の先端の縦断面を例示した説明図である。
【
図7】金属線の基端の縦断面を例示した説明図である。
【
図9】第2実施形態の医療機器の先端部を例示した説明図である。
【
図10】
図9のB-B断面を例示した説明図である。
【
図11】
図9の交差部Xの拡大図を例示した説明図である。
【
図12】
図9の交差部Xの断面図を例示した説明図である。
【
図13】
図9の交差部Xの断面図を例示した説明図である。
【
図14】金属線が先端固定部から分離された状態を例示した説明図である。
【
図15】金属線が破断した状態を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態の医療機器1Aについて
図1から
図8を用いて説明する。
図1から
図8で示されている医療機器1Aの各構成部材の大きさは例示であり、実際とは異なる尺度で表されている場合がある。以下では、医療機器1Aの各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から基端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、各構成部材の、基端側に位置する端部を「基端」と記載し、「基端」を含み基端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「基端部」と記載する。
【0021】
医療機器1Aは、血管の狭窄部の治療などに用いられるカテーテルである。
【0022】
図1は、医療機器1Aの全体構成を例示した説明図である。
図2は、医療機器1Aの先端部の縦断面を例示した説明図である。医療機器1Aは、金属線10A、インナーシャフト20、先端側アウターシャフト30、基端側アウターシャフト32、バルーン40、先端固定部50A、基端固定部51A、コネクタ60を有する。
【0023】
金属線10Aは医療機器1Aの長軸方向に沿ってらせん状に巻かれることによりコイル形状を形成している。金属線10Aの詳細については後述する。
【0024】
インナーシャフト20は、バルーン40と先端側アウターシャフト30の内側に配置され医療機器1Aの長軸方向に延びる円筒状の部材である。インナーシャフト20の先端部は先端固定部50Aに接合され、基端部は先端側アウターシャフト30の側壁に接合されガイドワイヤポート32を形成している。インナーシャフト20の内側にはインナールーメン21が形成されており、医師等の医療機器1Aの使用者は、あらかじめ体内に挿入された図示されていないガイドワイヤをインナールーメン21に通すことで、医療機器1Aをガイドワイヤに沿って体内に挿入することができる。インナーシャフト20は長尺部材の一例である。
【0025】
インナーシャフト20の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等を用いることができる。
【0026】
先端側アウターシャフト30はインナーシャフト20の外側に配置され、医療機器1Aの長軸方向に延びる円筒状の部材である。先端側アウターシャフト30の先端部はバルーン40の基端部および基端固定部51Aに接合され、基端部は基端側アウターシャフト32に接合されている。先端側アウターシャフト30と基端側アウターシャフト32の内側にはアウタールーメン31が形成されている。医師等の医療機器1Aの使用者は、コネクタ60に接続された図示しないインデフレータなどによりアウタールーメン31を通じてバルーン40の内側に造影剤や生理食塩水などの流体を流入させることができる。
【0027】
先端側アウターシャフト30の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等を用いることができる。また、基端側アウターシャフト32の材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304)やNi-Ti合金などの超弾性合金を用いることができる。
【0028】
バルーン40は、樹脂の薄膜により形成された筒形状の部材である。バルーン40の先端部は先端固定部50Aに接合され、基端部は先端側アウターシャフト30の先端部および基端固定部51Aに接合されている。バルーン40の内側の空間に流体が流入されることでバルーン40は医療機器1Aの径方向外側に向かって膨張される。バルーン40は収縮した形態で血管内などに挿入され、バルーン40が治療部に運搬された後に膨張される。バルーン40は、樹脂製の膜部材の一例である。
【0029】
バルーン40の材料は特に限定されないが、例えば、樹脂やゴムを用いることができ、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン- プロピレン共重合体、エチレン- 酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0030】
先端固定部50Aは、医療機器1Aの先端を構成する筒形状の部材である。先端固定部50Aにはインナールーメン21と連通する貫通孔が形成されているため、先端固定部50Aの貫通孔を通じてインナールーメン21にガイドワイヤを挿入することができる。先端固定部50Aは、金属線10Aの先端12Aとインナーシャフト20の先端を固定する固定部として機能する。
【0031】
基端固定部51Aは、先端側アウターシャフト30の先端部の外周を覆う筒形状の部材である。基端固定部51Aは、金属線10Aの基端13Aと先端側アウターシャフト30の先端を固定する固定部として機能する。
【0032】
先端固定部50Aおよび基端固定部51Aの材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の柔軟な樹脂を用いることができる。
【0033】
コネクタ60は、基端側アウターシャフト32の基端部に取り付けられた医療機器1Aと図示されていない他の医療機器との接続を可能にするための部材である。
【0034】
金属線10Aの詳細について説明する。
図3は、金属線10Aを例示した説明図である。
図3に示すような側面視において、金属線10Aはらせん状に巻かれたコイル形状を有しており、内側に略円筒形状の空間部15Aが形成されている。金属線10Aはコイルを伸縮させることによって空間部15Aの大きさを変更させることができる。空間部15Aにはバルーン40が配置されている。これにより、バルーン40が拡縮されると、バルーン40の拡縮に応じて金属線10Aも拡縮される。金属線10Aの先端12Aと基端13Aの間に中間部14Aが形成されており、中間部14Aの形状が変化することにより空間部15Aの大きさが変化する。本実施形態においては金属線10Aは1つの素線をらせん状に巻いて形成されたコイル形状を有しているが、金属線10Aは複数の素線をらせん状に巻いて形成されたコイル形状を有していてもよい。
【0035】
図4は、金属線10Aとバルーン40の接合部を例示した説明図である。金属線10Aは、先端12A、中間部14Aおよび基端13Aを含む全体の外周面が樹脂膜16Aによって覆われている。そのため、金属線10Aの外周面は外部に露出していない。樹脂膜16Aは、金属線10Aの表面と接触する内層17Aと、内層17Aの表面と接触する外層18Aとの2層構造を有している。金属線10Aは、外層18Aがバルーン40の表面に接合される。外層18Aとバルーン40はいずれも樹脂であるため良好に接合することができる。一方、金属線10Aは、疎巻きのコイルであるため、隣り合う金属線10A同士の間には隙間11Aが形成される。そのため、隣り合う金属線10Aのそれぞれの表面に形成される樹脂膜16Aは互いに接合されていない。つまり、隣り合う金属線10Aのそれぞれの表面に形成される樹脂膜16Aは分離されている。
【0036】
図5は、
図2のA-A断面を例示した説明図である。上述のように、金属線10Aは、外層18Aがバルーン40の表面に接合される。ここでは、金属線10Aの中間部14Aの全体がバルーン40の外周に接合されているが、中間部14Aの一部だけがバルーン40に接合されていてもよい。
【0037】
図6は、金属線10Aの先端12Aの縦断面を例示した説明図である。
図6に示すように、金属線10Aの先端12Aは樹脂膜16Aに被覆されている。これにより、金属線10Aの先端12Aの外周面と先端固定部50Aの間には樹脂膜16Aが設けられ、金属線10Aの先端12Aの外周面とバルーン40の先端の間にも樹脂膜16Aが設けられる。従って、金属線10Aと先端固定部50Aやバルーン40などの他の部材は、主に樹脂膜16Aにより接合されている。
【0038】
図7は、金属線10Aの基端13Aの縦断面を例示した説明図である。
図7に示すように、金属線10Aの基端13Aも樹脂膜16Aに被覆されている。これにより、金属線10Aの基端13Aの外周面と基端固定部51Aの間には樹脂膜16Aが設けられ、金属線10Aの基端13Aの外周面とバルーン40の基端の間にも樹脂膜16Aが設けられる。従って、金属線10Aと基端固定部51Aやバルーン40などの他の部材は、主に樹脂膜16Aにより接合されている。
【0039】
図8は、金属線10Aの横断面を例示した説明図である。金属線10Aは横断面が長方形である。そのため、金属線10Aの横断面において、対向する2辺(長辺と長辺、または、短辺と短辺)の長さは略同一であり、略直交する2辺(長辺と短辺)の長さは異なる。
図8の「第1距離La」は金属線10Aの横断面に沿った第1の方向Daにおける金属線10Aの中心点Cから金属線10Aの表面までの距離を表している。ここでは、第1距離Laは長方形の幅方向に平行な方向の長さを示している。また「第2距離Lb」は、第1の方向Daとは異なる第2の方向Dbにおける金属線10Aの中心点Cから金属線10Aの表面までの距離を表している。ここでは、第2距離Lbは長方形の厚さ方向に平行な方向の長さを示している。金属線10Aの横断面は、第1距離Laと第2距離Lbが異なるような形状を有しており、本実施形態においては第1距離Laは第2距離Lbよりも大きい。
【0040】
図8においては、第1の方向Daと第2の方向Dbが直交するように描いているが、第1の方向Daと第2の方向Dbは直交していなくてもよい。第1の方向Daに対する第2の方向Dbの角度は。0度から180度の間の任意の角度とすることができ、例えば、第1の方向Daと第2の方向Dbのなす角度が30度や60度でもよい。第1距離Laと第2距離Lbが異なる形状には、三角形や五角形などの多角形が含まれる。金属線10Aの横断面が多角形である場合には、金属線10Aの角の部分が硬度化した病変部を押圧することで、病変部に亀裂を加えることが容易となる。
【0041】
金属線10Aの材料は特に限定されないが、例えば、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、白金、金、またはこれらの合金などが用いられる。
【0042】
既述のように、樹脂膜16Aは、金属線10Aの表面と接触する内層17Aを有している。また、樹脂膜16Aは、内層17Aの表面と接触する外層18Aを有している。内層17Aと外層18Aは薄膜であるため、金属線10Aの横断面の形状は金属線10Aの横断面の形状に近い形状となり、本実施形態においては長方形である。樹脂膜16Aの最大厚さは2μm以上11μm以下である。樹脂膜16Aの最大厚さは好ましくは3μm以上11μm以下であり、より好ましくは3μm以上10μm以下である。本実施形態のように、金属線10Aが直方体などの複数の平面から形成される形状である場合には、各平面を覆う樹脂膜16Aの膜厚が異なってもよい。例えば、金属線10Aの横断面が長方形である場合の樹脂膜16Aの幅方向の膜厚Taを3μm以上4μm以下とし、厚さ方向の膜厚Tbを7μm以上10μm以下とすることができる。
【0043】
樹脂膜16Aの材料は特に限定されないが、例えば、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ナイロン等を用いることができる。また、樹脂膜16Aには、インナーシャフト20、先端側アウターシャフト30、バルーン40、先端固定部50Aまたは基端固定部51Aなどの樹脂膜16Aと接合される他の部材に用いられる材料と同じ材料を用いてもよい。また、内層17Aと外層18Aは同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0044】
図14は、金属線10Aが先端固定部50Aから分離された状態を例示した説明図である。本実施形態においては、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度(
図6,7参照)は、金属線10Aの破断強度よりも低い。より具体的には、金属線10Aと内層17A(
図6,7参照)との接合強度が金属線10Aの破断強度よりも低いことから、金属線10Aが引っ張られた際に、金属線10Aが破断するより先に金属線10Aが内層17Aから分離しやすい。ここでいう接合強度および破断強度は、ともにN/mm
2で表される強度であり、接合強度と比較される破断強度は、金属線10Aのみの破断強度であり、金属線10Aを覆う樹脂膜16Aの破断強度は含まないものとする。また、本実施形態では、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接触面のいずれに位置においても略等しいことから、金属線10Aの先端12Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aの基端13Aと樹脂膜16Aとの接合強度と略等しいものとする。
図14では、先端固定部50Aから金属線10Aが引き抜かれた状態が示されている。詳細には、内層17Aから分離されたのち先端12Aを覆っていた樹脂膜16Aが剥離された金属線10Aが示されている。
図14に示す状態においては、先端固定部50A内には、金属線10Aの先端12Aを覆っていた樹脂膜16A(
図6参照)が残存している可能性が高い。
【0045】
図15は、比較例の医療機器において、金属線10Aが破断した状態を例示した説明図である。比較例の医療機器は、本実施形態の医療機器1Aと比べて、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度が金属線10Aの破断強度よりも高い点を除いて、本実施形態の医療機器1Aと同じ構成である。そのため、比較例の医療機器では、金属線10Aが引っ張られた際に、内層17A(
図6,7参照)から金属線10Aが分離するより先に金属線10Aが破断しやすい。金属線10Aの破断時には、金属線10Aの破断部分10R1,10R2から金属片が発生するおそれがある。また、破断部分10R1,10R2は金属線10Aが引っ張られて破断した部分であるため、その先端は鋭利になっている可能性が高いことから、血管壁等を傷付けるおそれがある。本実施形態の医療機器1Aでは、金属線10Aが引っ張られた際に金属線10Aが破断するより先に内層17A(樹脂膜16A)から金属線10Aを分離しやすくすることによって金属線10Aの破断を抑制していることから、金属線10Aの破断による金属片の発生および金属線10Aの破断部分による血管壁等の傷付けを抑制している。
【0046】
金属線10Aは例えば次のような方法により作製することができる。まず、横断面の寸法が厚さ50μm、幅120μmの金属線10Aを作製する。次に、ダイスを用いたコーティングにより金属線10Aの外周に樹脂膜16Aを形成する。このときのダイスには、例えば、ダイスの孔の大きさが縦60μm、横150μmの寸法や縦70μm、横150μmの寸法のダイスを用いることができる。コーティング工程においては、まず金属線10Aをダイスに通し金属線10Aの外周に内層17Aを被覆する。その後、内層17Aを最高温度250度で焼成する。次に、内層17Aに覆われた金属線10Aを再度ダイスに通し内層17Aの外周に外層18Aを被覆する。その後、外層18Aを最高温度300度で焼成する。1回目のコーティングではポリイミド層が析出する300度より低い温度で内層17Aの焼成を行うことで内層17Aにポリイミド層が析出せず、これにより内層17Aと外層18Aの密着性を向上させることができる。また、2回目のコーティングでは300度以上で外層18Aの焼成を行うことでポリイミド層が析出し、これにより樹脂膜16Aの硬度を向上させることができる。
【0047】
医療機器1Aの使用方法について例示する。医療機器1Aは、例えば血管内に形成された石灰化病変の治療などに用いられる。まず医療機器1Aは、バルーン40が収縮した状態で、血管内に配置されたガイドワイヤに沿って挿入される。バルーン40が病変部に到達した状態でバルーン40を拡張するための流体がバルーン40の内側に流入される。流体がバルーン40を押し広げることによってバルーン40は膨張し、病変部を押圧する。このとき、バルーン40の外周に設けられた金属線10Aが病変部に押し当てられることで病変部に亀裂を入れることができ、病変部の拡張を容易に行うことができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の医療機器1Aによれば、金属線10Aの表面は先端12Aから基端13Aにわたって樹脂膜16Aによって被覆されている。例えば金属線10Aと他の樹脂部材とを直接接合させる接合形態においては、接合界面においてアンカー効果が十分に発揮されないことがあった。しかし、本実施形態の医療機器1Aは金属線10Aと医療機器1Aを構成する樹脂部材であるバルーン40、先端固定部50Aおよび基端固定部51Aの間には樹脂膜16Aが設けられている。これにより、樹脂膜16Aと樹脂部材の間においてアンカー効果が発揮され、金属線10Aと樹脂部材との接合強度が向上する。また、樹脂膜16Aと医療機器1Aを構成する他の樹脂部材を熱などにより溶着することにより、樹脂膜16Aと樹脂部材が相溶することで接合強度が向上する。さらに、金属線10Aが血管壁などに直接接触することを抑制することで、金属線10Aが血管壁などを傷つけるおそれを低減することができる。
【0049】
コイル形状の金属線10Aにおいて隣接する金属線10Aの樹脂膜16A同士は接合されておらず、互いに分離されている。これにより、バルーン40の拡縮による金属線10Aの拡縮を、樹脂膜16Aの接合により阻害されるおそれを低減することができる。例えば、バルーン40が収縮時に折り畳まれるように変形する場合に、金属線10Aはコイル形状から変形してバルーン40の外周に沿う形状に変化することができる。
【0050】
金属線10Aは、中間部14Aの形状が変化することによって、空間部15Aの大きさを変化させることができる。本実施形態においては、バルーン40の拡縮に応じて中間部14Aの形状は変化する。例えば、中間部14Aは、バルーン40が収縮した状態においては中間部14Aは外径が小さくピッチが密なコイル形状である。または、中間部14Aは、バルーン40の外周部が折り畳まれる場合にはバルーン40の折り畳まれた外周部同士の間に配置されるような形状である。バルーン40が拡張されると、中間部14Aも径方向外側に向かって拡張し、収縮状態よりも外径が大きいコイル形状に変化することができる。これにより、医療機器1Aを血管の狭窄部の治療など、管腔を拡張させるような治療に用いることができる。また、医療機器1Aはバルーン40のような径方向に拡縮可能な膜部材を備えていることにより、金属線10Aの形状変化を容易にすることができる。
【0051】
金属線10Aは、横断面に沿った第1の方向Daにおける金属線10Aの中心点Cから金属線10Aの表面までの第1距離Laが、第1の方向Daとは異なる第2の方向Dbにおける金属線10Aの中心点Cから金属線10Aの表面までの第2距離Lbと異なる形状を有している。本実施形態においては、金属線10Aの横断面は長方形であることにより第1距離Laと第2距離Lbが異なる。これにより、病変部を拡張するときに長方形の角部が病変部を局所的に押圧することができ、病変部に亀裂を加えることが容易となる。また、バルーン40が収縮した状態においては、金属線10Aの横断面が真円に近い円形である場合と比較して、同じ断面積でも医療機器1Aの径方向の厚みを小さくできるため、医療機器1Aの外径を小さく保つことができる。これにより、医療機器1Aを病変部に通過させることが容易となる。また、例えばバルーン40の径方向と金属線10Aのより厚さが大きい方向が一致するように金属線10Aを設ける場合は、手術中に照射されるX線の照射方向に対する金属線10Aの厚みが増加することで、X線下での視認性が向上する。
【0052】
樹脂膜16Aは内層17Aと外層18Aの二層により形成されている。例えば横断面が多角形であって樹脂膜16Aが一つの膜により形成されている場合は、多角形の角の部分の膜厚を十分に厚くすることが困難であり、金属線10Aが外部に露出してしまうおそれがある。本実施形態においては、金属線10Aが内層17Aと外層18Aの二つの膜が金属線10Aの角に形成されることで、金属線10Aの角が外部に露出してしまうおそれを低減することができる。これにより、金属線10Aの角と他の樹脂部材との接合強度が小さくなることを抑制することができる。また、金属線10Aが直接血管壁などに接触して血管壁などを傷付けるおそれを低減することができる。
【0053】
樹脂膜16Aの最大厚さは2μmから11μmである。膜厚が2μm以上であることにより、金属線10Aの外周と他の樹脂部材が直接接合する可能性を低減することができる。また、樹脂膜16Aと他の樹脂部材との接合部における樹脂の相溶量を増加させることができる。これらにより、金属線10Aと樹脂部材との接合強度を向上することができる。また、金属線10Aが直接血管壁などに接触することを抑制することで、金属線10Aが血管壁などを傷付けるおそれを低減することができる。また、膜厚が11μm以下であることにより、金属線10Aの外径を小さく保つことができ、医療機器1Aを病変部に通過させることなどが容易となる。
【0054】
金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aの破断強度よりも低い。これにより、金属線10Aが引っ張られた際に、金属線10Aが破断するより先に樹脂膜16Aから金属線10Aを分離しやすくすることができる。このため、金属線10Aの破断を抑制できることから、金属線10Aの破断による金属片の発生、金属線10Aの破断部分(
図15参照)による血管壁等の傷付けを抑制することができる。
【0055】
<第2実施形態>
第2実施形態の医療機器1Bについて
図9から
図13を用いて説明する。
【0056】
医療機器1Bは、血管内の血栓などを回収するために用いられる血栓回収機器である。
【0057】
図9は、医療機器1Bの先端部を例示した説明図である。医療機器1Bは、金属線10B、シャフト70、先端固定部50B、基端固定部51B、操作ワイヤ80を有する。
【0058】
第1実施形態の金属線10Aと第2実施形態の金属線10Bを比較すると、金属線10Aがコイル形状に形成されていたことに対し、金属線10Bは網状に形成されているという点で異なる。金属線10Aと金属線10Bにおいて共通する点については説明を省略する。金属線10Bの詳細については後述する。
【0059】
シャフト70は長尺の円筒状の部材であり、内側にルーメン71を有している。
【0060】
先端固定部50Bは、各金属線10Bの先端を一纏めにして固定する樹脂製の部材である。
【0061】
基端固定部51Bは、各金属線10Bの基端を一纏めにして固定する樹脂製の部材である。基端固定部51Bの一部は金属線10Bの基端に接合されており、他の一部は操作ワイヤ80に接合されている。基端固定部51Bは、操作ワイヤ80に金属線10Bを固定する固定部として機能する。操作ワイヤ80の外周は樹脂部81により覆われているため、基端固定部51Bの一部は樹脂部81に固定され、他の一部は金属線10Bの樹脂膜16Bに固定される。
【0062】
操作ワイヤ80は、先端部が基端固定部51Bに接合され、ルーメン71を通じて医療機器1Bの基端側まで延びる長尺部材である。医師等の医療機器1Bの使用者は操作ワイヤ80を用いて金属線10Bを軸方向に移動することができる。
【0063】
金属線10Bの詳細について説明する。金属線10Bには、複数の金属線10Bが取り囲むことによって内側に空間部15Bが形成される。複数の金属線10Bは、少なくとも一部分における互いの距離を変更することによって、空間部15Bの大きさを変更させることができる。複数の金属線10Bは互いに交差することで網を形成しており、血栓などを空間部15Bに捕えて体外まで運搬することができる。金属線10Bの先端側においては複数の金属線10Bが交差しており、金属線10Bの交差により形成される網目は空間部15Bに捕えられた血栓が外部に漏れない程度の大きさに形成されている。また金属線10Bの基端側においては金属線10B同士の間隔が、空間部15Bに血栓を収容可能な程度の大きさに形成されている。医療機器1Bを体内に挿入するときは金属線10Bは収縮した状態でルーメン71に収容されており、血栓近傍にシャフト70が配置された後にルーメン71の先端から外部に移動される。
【0064】
図10は
図9のB-B断面を例示した説明図である。金属線10Bの先端と基端の間には中間部14Bが形成されている。中間部14Bには、空間部15Bを形成するような拡張形状が記憶されているため、シャフト70の内部から外部へ金属線10Bが移動すると、金属線10Bは径方向外側に拡張される。
【0065】
図11は、
図9に記載の金属線10Bの交差部Xの拡大図を例示した説明図である。金属線10Bの外周は樹脂膜16Bにより覆われている。また、
図11においては省略されているが、樹脂膜16Bは金属線10Bの全長にわたって形成されている。樹脂膜16Bは、金属線10Bの表面を覆う内層17Bと、内層17Bの表面を覆う外層18Bを有している。
【0066】
図12および
図13は、
図9に記載の金属線10Bの交差部Xの断面図を例示した説明図である。
図12および
図13に示すように金属線10Bの横断面は長方形である。ここで
図12は、交差部Xにおいて交差する各金属線10Bの樹脂膜16Bが接合されていない形態を例示している。つまり、金属線10Bを覆う各樹脂膜16Bは交差部Xにおいて互いに分離している。交差部Xにおいては金属線10B同士の隙間11Bが形成されている。樹脂膜16B同士は接合されていないため、各金属線10Bが互いに独立して移動や変形が可能である。さらに交差部Xの近傍の区間Sにも、複数の金属線10B同士を互いに接合するような樹脂膜16Bは設けられていない。このため、交差部Xおよび交差部X以外の部分において金属線10B同士は分離している。また、
図13は、交差部Xにおいて交差する各金属線10Bの樹脂膜16Bが接合された形態を例示している。この場合は、樹脂膜16Bのうちの外層18Bのみが接合されていてもよく、内層17Bを含む樹脂膜16B全体が互いに相溶して接合していてもよい。交差部Xの近傍の区間Sにおいては、複数の金属線10B同士を互いに接合するような樹脂膜16Bは設けられていない。このため、交差部Xにおいては金属線10B同士は接合されているが、交差部X以外の部分において金属線10B同士は分離している。
【0067】
第2実施形態の医療機器1Bの使用方法について説明する。まず、医療機器1Bを血管内に挿入する。シャフト70の先端を血栓よりも末端側に配置した状態で金属線10Bをシャフト70の先端から外部に移動させ、金属線10Bを拡張させる。シャフト70を血栓よりも基端側に移動させた後に金属線10Bを基端側に移動させ、空間部15Bに血栓を収容する。その後、金属線10Bおよびシャフト70を手元側に引き体外に血栓を運ぶ。
【0068】
以上説明した医療機器1Bによれば、金属線10Bの表面は樹脂膜16Bにより覆われているため、金属線10Bと樹脂製の基端固定部51Bとの接合力が向上する。また、
図13に示すように金属線10B同士の交差部Xにおいて金属線10B同士が接合されるような場合は、樹脂膜16Bが接合されることにより交差部Xにおける金属線10B同士の接合強度が向上する。また、金属線10Bが樹脂膜16Bに覆われていることにより、金属線10Bが直接血管壁などに接触し、血管壁などを傷付けるおそれを低減することができる。また、金属線10Bが直接シャフト70の内壁と接触しないことにより金属線10Bとシャフト70との滑り性を向上させることができる。
【0069】
各金属線10Bを覆う樹脂膜16Bは、少なくとも一部において分離されている。例えば、
図12に示すように交差部Xを含む中間部14Bの全体において樹脂膜16Bは分離されていてもよい。または、
図13に示すように交差部Xにおいては樹脂膜16B同士が接合し、交差部X以外の中間部14Bが分離していてもよい。樹脂膜16Bの少なくとも一部が分離されていることにより、金属線10Bの径方向への拡張を樹脂膜16Bの接合が阻害するおそれを低減することができる。
【0070】
金属線10Bの中間部14Bの形状が変化することにより、空間部15Bの大きさを変化させることができる。これにより、例えば金属線10Bを血管壁近くに配置することで、血管壁に沿って形成された血栓などを回収することができる。
【0071】
金属線10Bは横断面の形状が長方形である。これにより、空間部15Bの内側に収容した血栓などが金属線10Bの先端側に移動したときに、金属線10Bの比較的幅の広い平面で血栓を受け止めることができ、血栓が空間部15Bから外部に漏れることを抑制することができる。また、例えば金属線10Bの拡縮方向と金属線10Bのより厚さが大きい方向が一致するように金属線10Bを設ける場合は、術中に照射されるX線の照射方向に対する金属線10Bの厚みが増加し、X線下での視認性が向上する。
【0072】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0073】
<変形例1>
第1実施形態において金属線(10A、10B)は長方形であったが、金属線(10A、10B)の横断面の形状は長方形に限られず、例えば円形、楕円形などの円形状や、正方形、台形、三角形などの多角形などに形成することができる。また、金属線(10A、10B)の横断面の形状は線対称や点対称の形状に限られない。
【0074】
<変形例2>
第1実施形態においては金属線10Aの先端12Aおよび基端13Aの端面は樹脂膜16Aに覆われていないが、先端12Aおよび基端13Aの端面が樹脂膜16Aにより覆われていてもよい。
【0075】
<変形例3>
金属線(10A、10B)が、横断面に沿った第1の方向Daにおける金属線(10A、10B)の中心点Cから金属線(10A、10B)の表面までの第1距離Laが、第1の方向Daとは異なる第2の方向Dbにおける中心点Cから金属線(10A、10B)の表面までの第2距離Lbと異なる形状を有している場合とは、第1距離Laと第2距離Lbが異なる組合せが少なくとも一つ存在することを示している。つまり、金属線(10A、10B)の横断面の形状において、第1距離Laと第2距離Lbが同じになる組合せが存在することを否定しない。例えば、金属線(10A、10B)の横断面が長方形である場合には、第1の方向Daの距離と、180度反対の方向に向かって延びる第2の方向Dbの距離は略同一となるが、少なくとも
図8の第1距離Laと第2距離Lbの組み合わせにおいては第1距離Laと第2距離Lbは異なる。一方で、第1距離Laと第2距離Lbが異なる組合せが存在しない場合とは、例えば真円形状である。
【0076】
<変形例4>
第1実施形態および第2実施形態において、樹脂膜(16A、16B)は内層(17A、17B)と外層(18A、18B)を有するものとしたが、樹脂膜(16A、16B)は内層(17A、17B)と外層(18A、18B)を有していなくてもよい。例えば樹脂膜(16A、16B)は一つの樹脂材料により形成された一つの膜でもよい。または、樹脂膜(16A、16B)は三層以上の層により形成されていてもよい。
【0077】
<変形例5>
第1実施形態の医療機器1Aの金属線10Aにおいて、コイル形状に巻かれた金属線10Aのうち、隣接する金属線10Aの樹脂膜16A同士は全ての部分において分離していたが、全ての部分において分離せずに一部のみが分離していてもよい。例えば、隣接する二つの金属線10Aの周方向の一部が接合され、他の一部が分離していてもよい。また、第2実施形態1Bの金属線10Bにおいて、金属線10Bの全ての交差部Xの樹脂膜16B同士が分離していてもよい。または、交差部Xの樹脂膜16B同士の一部が分離し、別の一部の樹脂膜16Bが接合していてもよい。
【0078】
<変形例6>
長尺部材とは、インナーシャフト20、先端側アウターシャフト30、シャフト70または操作ワイヤ80に限られない。長尺部材とは医療機器(1A、1B)の長手方向に延びて設けられる部材を示している。長尺部材は医療機器(1A、1B)の全長にわたって設けられていなくてもよく、医療機器(1A、1B)の一部に設けられていてもよい。
【0079】
<変形例7>
第1実施形態において金属線10Aは1本の素線をらせん状に巻いてコイル形状を形成したものとしていたが、金属線10Aは複数本の素線をらせん状に巻いてコイル形状を形成したものであってもよい。例えば、金属線10Aは複数の素線を束ねて形成したストランドを、さらにらせん状に巻いてコイル形状に形成したものであってもよい。
【0080】
<変形例8>
第1実施形態の医療機器1Aは、先端固定部50Aと基端固定部51Aがいずれも樹脂によって形成されているものとした。しかし、先端固定部50Aと基端固定部51Aの一方は樹脂によって形成されていなくてもよい。この場合であっても樹脂によって形成されている他方の固定部と金属線10Aとの接合強度の向上を図ることができる。第2実施形態の医療機器1Bの先端固定部50Bと基端固定部51Bについても同様である。また、第1実施形態の医療機器1Aは、先端固定部50Aと基端固定部51Aのいずれか一方を備えていなくてもよい。この場合であっても、備えられている他方の固定部が樹脂によって形成されていれば、金属線10Aとの接合強度の向上を図ることができる。第2実施形態の医療機器1Bも同様である。
【0081】
<変形例9>
実施形態としてカテーテルである医療機器1Aと、血栓回収機器である医療機器1Bを示したが、実施形態はこれらの医療機器に限られない。例えば、本発明はガイドワイヤなどにも適用することができる。
【0082】
<変形例10>
第1実施形態では、金属線10Aは全体の外周面が樹脂膜16Aによって覆われており、第2実施形態では、金属線10Bの外周は金属線10Bの全長にわたって形成された樹脂膜16Bにより覆われていたが、これに限られない。金属線は、先端と基端のうち少なくとも一方を含んだ表面が樹脂膜で被覆されていればよく、金属線の先端と基端のうちの少なくとも被覆されている一方が先端固定部もしくは基端固定部によって固定されていればよい。
【0083】
<変形例11>
第1実施形態では、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aの破断強度よりも低かったが、第2実施形態においても、金属線10Bと樹脂膜16Bとの接合強度は、金属線10Bの破断強度より低くてもよい。また、第1実施形態では、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aと樹脂膜16Aとの接触面のいずれに位置においても略等しいことから、金属線10Aの先端12Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aの基端13Aと樹脂膜16Aとの接合強度と略等しかったが、これに限られない。当該接触面の位置によって接合強度は異なっていてもよく、例えば、金属線10Aの先端12Aと樹脂膜16Aとの接合強度は、金属線10Aの基端13Aと樹脂膜16Aとの接合強度より低くてもよい。このような場合、金属線10Aのうち基端13Aよりも先端12Aの方が樹脂膜16Aから分離しやすい。
【符号の説明】
【0084】
1A、1B…医療機器
10A、10B…金属線
11A、11B…隙間
12A…金属線の先端
13A…金属線の基端
14A、14B…中間部
15A、15B…空間部
16A、16B…樹脂膜
17A、17B…内層
18A、18B…外層
20…インナーシャフト
21…インナールーメン
30…先端側アウターシャフト
31…アウタールーメン
32…基端側アウターシャフト
40…バルーン
50A、50B…先端固定部
51A、51B…基端固定部
60…コネクタ
70…シャフト
80…操作ワイヤ
81…樹脂部
C…金属線の中心点
Da…第1の方向
Db…第2の方向
La…第1距離
Lb…第2距離
Ta…幅方向の膜厚
Tb…厚さ方向の膜厚