(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066411
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウム複合酸化物及びこれを含む二次電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240508BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240508BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089361
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0143043
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523204477
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キュスク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジェフン
(72)【発明者】
【氏名】リ,スルギ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AA06
4G048AB02
4G048AB04
4G048AB05
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE06
5H050AA07
5H050AA10
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB12
5H050FA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池の寿命を延ばし、高温保存の際にガス発生を著しく抑制する正極活物質を提供する。
【解決手段】本発明の正極活物質は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含むリチウムニッケル系複合酸化物を含み、前記リチウムニッケル系複合酸化物内の一部の陽イオン及び一部の陰イオンがフッ素系化合物に含まれる陽イオンM’及びフッ素陰イオン(F
-)によって置換される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含むリチウムニッケル系複合酸化物を含み、
前記リチウムニッケル系複合酸化物内の一部の陽イオン及び一部の陰イオンがフッ素系化合物に含まれる陽イオンM’及びフッ素陰イオン(F-)によって置換された、正極活物質。
【請求項2】
前記フッ素系化合物は、LiF、CaF2、MgF2、AlF3及びZrF4のうちから選択されるいずれか1種以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記2次粒子は、表面部及び内部を含み、
前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均サイズは前記内部の1次粒子の平均サイズより大きい、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記2次粒子の内部でサイズが200nm以上500nm未満の1次粒子が前記2次粒子の内部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%である、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記2次粒子の表面部でサイズが500nm~10.0μmの1次粒子が前記2次粒子の表面部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%である、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記2次粒子の表面部の1次粒子平均アスペクト比(aspect ratio)は前記内部の1次粒子平均アスペクト比(aspect ratio)より大きい、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子の長軸方向が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成される、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子内に形成されたリチウムイオン拡散経路が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成される、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記2次粒子は、XPS(X-ray Photoelectron Spectrometer)測定によって得られたFluorine 1s結合エネルギー分析の結果、684.3eV~685.0eVで最大ピーク強度を示す、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記2次粒子の表面、前記1次粒子間の粒界、及び前記1次粒子の表面のうちの少なくとも一つ以上の少なくとも一部を占有するコーティング酸化物をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
請求項1に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム複合酸化物及びこれを含む二次電池用正極活物質に関するものであり、多結晶タイプのリチウムニッケル系複合酸化物内の結晶構造において陽イオン及び陰イオンがフッ素系化合物に同時に置換された正極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、MP3プレーヤー、タブレット型PCのような携帯用モバイル電子機器の発展に伴い、電気エネルギーを貯蔵することができる二次電池に対する需要が爆発的に増加している。特に、電気自動車、中大型エネルギー貯蔵システム、及び高エネルギー密度が要求される携帯機器の登場によって、リチウム二次電池に対する需要が増加している実情である。
【0003】
正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物として、最近一番脚光を浴びている物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物Li(NixCoyMnz)O2(ここで、前記x、y、zはそれぞれ独立的な酸化物組成元素の原子分率であり、0<x=1、0<y=1、0<z=1、及び0<x+y+z=1)である。この正極活物質の材料はその間に正極活物質として活発に研究されて使用されて来たLiCoO2よりも高容量を有する利点があり、Co含量が相対的に少ないので安価という利点がある。
【0004】
しかし、このようなリチウム複合酸化物は、充放電の際、リチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションによって容積変化を伴う。充放電の際、リチウム複合酸化物の1次粒子が急激に容積変化するか、繰り返された充放電によって2次粒子内にクラック(crack)が発生するか、または結晶構造の崩壊または結晶構造の相転移が発生する問題がある。
【0005】
このような欠点を補完するために、二次電池正極活物質として、Ni含量が60%以上のニッケルに富んだシステム(Ni rich system)-ハイニッケル系の需要が増加し始めた。しかし、このようなニッケルに富んだシステムの活物質は高容量を有する優れた利点を有している一方で、Ni含量が増加するのに伴い、Li/Ni陽イオン混合による構造不安定性の増加、微小クラック(microcrack)による内部粒子の物理的断絶及び電解質枯渇の深化などによって常温及び高温での寿命特性が急激に劣化する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リチウムニッケル系複合酸化物内の陽イオン及び陰イオンをフッ素系化合物に含まれる陽イオンM’及びフッ素陰イオン(F-)によって同時に置換させることで、陽イオン混合(cation mixing)抑制効果及び酸素を代替したフッ素による構造強化効果が同時に現れる正極活物質を提供しようとする。
【0007】
また、本発明は、2次粒子の内部及び表面部で1次粒子の成長が調節された正極活物質を提供しようとする。
【0008】
また、本発明は、2次粒子の内部と区別される表面部で1次粒子の成長が特定方向に制御された正極活物質を提供しようとする。
【0009】
また、本発明は、高温反応の際に発生する格子欠陥及び残留リチウムが著しく減少した正極活物質を提供しようとする。
【0010】
また、本発明は、電池の寿命を延ばし、高温保存の際にガス発生を著しく抑制させる正極活物質を提供しようとする。
【0011】
また、本発明は、電池の容量/効率及びc-rateなどの電池特性を著しく改善させる正極活物質を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の正極活物質は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含むリチウムニッケル系複合酸化物を含み、前記リチウムニッケル系複合酸化物内の一部の陽イオン及び一部の陰イオンがフッ素系化合物に含まれる陽イオンM’及びフッ素陰イオン(F-)によって置換される。
【0013】
一態様として、前記フッ素系化合物は、LiF、CaF2、MgF2、AlF3及びZrF4のうちから選択されるいずれか1種以上であり得る。
【0014】
一態様として、前記2次粒子は、表面部及び内部を含み、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均サイズは前記内部の1次粒子の平均サイズより大きくてもよい。
【0015】
一態様として、前記2次粒子の内部でサイズが200nm以上500nm未満の1次粒子が前記2次粒子の内部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%であり得る。
【0016】
一態様として、前記2次粒子の表面部でサイズが500nm~10.0μmの1次粒子が前記2次粒子の表面部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%であり得る。
【0017】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子平均アスペクト比(aspect ratio)は前記内部の1次粒子平均アスペクト比(aspect ratio)より大きくてもよい。
【0018】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子の長軸方向が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成できる。
【0019】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子内に形成されたリチウムイオン拡散経路が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成できる。
【0020】
一態様として、前記2次粒子は、XPS(X-ray Photoelectron Spectrometer)測定によって得られたFluorine 1s結合エネルギー分析の結果、684.3eV~685.0eVで最大ピーク強度を示すことができる。
一態様として、前記正極活物質は、前記2次粒子の表面、前記1次粒子間の粒界、及び前記1次粒子の表面のうちの少なくとも一つ以上の少なくとも一部を占有するコーティング酸化物をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の正極は前記正極活物質を含む。
【0022】
本発明の二次電池は前記正極を含む。
【発明の効果】
【0023】
一効果として、本発明は、陽イオン混合(cation mixing)抑制効果及び酸素を代替したフッ素による構造強化効果が同時に現れる正極活物質を提供する。
【0024】
一効果として、本発明は、特にハイニッケル(Hi-nickel)正極活物質において高温反応の際に発生する格子欠陥及び残留リチウムが著しく減少した正極活物質を提供する。
【0025】
一効果として、本発明は、電池の寿命を延ばし、高温保存の際にガス発生を著しく抑制させる正極活物質を提供する。
【0026】
一効果として、本発明は、電池の容量/効率及びc-rateなどの電池特性を著しく改善させる正極活物質を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の比較例及び実施例による正極活物質に対する断面SEMイメージである。
【
図2】本発明の比較例及び実施例による正極活物質に対する結晶子サイズ分析結果を示すグラフである。
【
図3】本発明の比較例及び実施例による正極活物質に対するXPS分析結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の比較例及び実施例による正極活物質製造時の反応開始温度分析結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の比較例及び実施例による電池の90℃貯蔵ガス発生分析結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の比較例及び実施例による電池のc-rate分析結果を示すグラフである。
【
図7】本発明の比較例及び実施例による正極活物質に対するLiOH含量分析結果を示すグラフである。
【
図8】本発明の比較例及び実施例による正極活物質に対するLi
2CO
3含量分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される「含む」のような表現は、他の構成を含む可能性を有する限定のない用語(open-ended terms)と理解されなければならない。
【0029】
本明細書で使用される「好ましい」及び「好ましく」は所定の環境の下で所定の利点を提供することができる本発明の実施形態を示す。しかし、本発明の範疇から他の実施形態を排除しようとするものではない。
【0030】
また、明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数の形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数の形態も含むものと理解されなければならない。
【0031】
一方、後述する技術的特徴は前述した本発明が目的とする効果を得るための一態様に関するものである。
【0032】
すなわち、本発明の一態様による正極活物質は後述する一態様による技術的特徴を含むことで、電池の特性を著しく改善させることができる。
【0033】
本発明の一態様による正極活物質は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含む。
【0034】
一態様として、前記1次粒子は1個以上の結晶子(crystallite)を含むことができる。
【0035】
前記2次粒子は、二つ以上の1次粒子を含む多粒子の形態または多結晶の形態を有することができる。より好ましくは、前記2次粒子は、20個以上の1次粒子が凝集した多粒子の形態または多結晶の形態を有することができる。
【0036】
より好ましい一態様として、前記2次粒子は、粒界密度が0.85以上、または0.90以上であり得る。
【0037】
本発明で、「粒界密度」は、2次粒子を断面加工処理した後、走査電子顕微鏡(SEM)を使用してリチウム複合酸化物の断面を撮影して得たSEMイメージにおいて、前記2次粒子の中心を短軸方向に横切る直線上に置かれた1次粒子に対して下記の式1によって計算する。
(式1)
粒界密度=前記直線上に置かれた1次粒子間の粒界の数/前記直線上に置かれた1次粒子の数
【0038】
一例を挙げて説明すると、単一の1次粒子からなる凝集していない単粒子の場合は、前記式1によって計算された粒界密度は0であろう。また、2個の1次粒子が凝集した場合は、前記式1によって計算された粒界密度は0.5であろう。
【0039】
ここで、前記粒界密度は、任意に10本の直線を引いたとき、当該直線に対する平均的な値を意味する。
【0040】
一態様として、前記2次粒子の平均粒子サイズは1~30μm、より好ましくは8~20μmであり得る。
【0041】
一方、本発明で、「平均粒子サイズ」は、粒子が球形の場合は平均直径(D50)を示し、粒子が非球形の場合は平均長軸の長さを示す。本発明で、2次粒子のサイズは、粒度分析機(cilas)及びSEMを用いて平均値を測定した。また、1次粒子サイズは、SEMイメージにおいて、棒状の場合、1次粒子の長軸の長さを測定して平均値を計算し、球形の場合、直径平均値を計算した。また、結晶子サイズは、XRD分析によって得た半値全幅及びθ値からシェラーの式(scherrer equation)によって測定した。
【0042】
本発明はユニモーダルタイプの正極活物質であり得る。また、さらに他の一態様として、前記正極活物質は、前記2次粒子サイズと平均粒子サイズとが異なる7μm以下のリチウム複合酸化物2次粒子をさらに含むバイモーダルタイプの正極活物質であり得る。
本発明の一態様による正極活物質は、リチウム、ニッケル、及び酸素を含むリチウムニッケル系複合酸化物を含む。
【0043】
一態様として、前記リチウムニッケル系複合酸化物は、コバルトをさらに含むことができる。
【0044】
一態様として、前記リチウムニッケル系複合酸化物は、リチウム、ニッケル、及びアルミニウムを含むことができる。
【0045】
一態様として、前記リチウムニッケル系複合酸化物は、リチウム、ニッケル、及びマンガンを含むことができる。
【0046】
一態様として、前記ニッケルは、遷移金属の総モル含量に対して、0.5モル%以上、0.6モル%以上、0.7モル%以上、0.8モル%以上または0.9モル%以上含まれるハイニッケル系リチウム複合酸化物であり得る。
【0047】
本発明の一態様によるリチウムニッケル系複合酸化物内の一部の陽イオン及び一部の陰イオンがフッ素系化合物に含まれる陽イオンM’及びフッ素陰イオンによって同時に置換される。フッ素系化合物の陽イオンM’及びフッ素陰イオンが同時にリチウムニッケル系複合酸化物粒子内に含まれる1次粒子の格子構造内に存在することができる。これをフッ素系化合物がドーピングされたと表現することができ、前記フッ素系化合物がドーパントとして作用したと表現することができる。
【0048】
本発明は、フッ素系化合物がリチウムニッケル系複合酸化物の陽イオン及び陰イオンのサイトを同時に置換することで、寿命及び高温保存などの電池特性を極大化することができる。より具体的には、フッ素は酸素に比べて電気陰性度が高いので、Niなどの遷移金属との結合力が一層強化して構造安全性を高めることで電池特性を一層極大化することができ、フッ素系化合物の陽イオンは陽イオン混合(cation mixing)抑制効果がある。本発明は、その効果を同時に得ることで、寿命及び高温保存などの電池特性を極大化することができる。
【0049】
一態様として、前記フッ素系化合物の陽イオンM’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及び希土類系金属の陽イオンのうちから選択されるいずれか一つ以上であり得る。
【0050】
より好ましくは、前記フッ素系化合物は、LiF、CaF2、MgF2、AlF3またはZrF4であり得る。
【0051】
最も好ましくは、前記フッ素系化合物は、LiFまたはCaF2であり得る。LiFの場合、過剰のLiによる陽イオン混合(cation mixing)抑制効果と酸素を代替したフッ素による構造強化効果とが高く、高温保存の際、ガス発生を抑制することができる。CaF2の場合、Caはイオン半径が大きくて主にリチウムサイトに入って熱的安全性を強化する効果がある。
【0052】
このような効果にはフッ素系化合物のドーピング含量も非常に重要な影響を及ぼし、本発明者らは本発明の特定の工程、ドーピング物質、及びドーピング含量を全部制御することで、寿命及び高温保存特性を画期的に改善することができた。
【0053】
本発明の一態様によるリチウムニッケル系複合酸化物は、フッ素系化合物がドーピングされることで、下記の化学式1で表示することができる。
(化1)
LiaNixCoyMzM’1-x-y-zO2-qFq
【0054】
前記化学式1で、MはAl、Mn、B、Ba、Ce、Cr、F、Mg、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr及びこれらの組合せからなる群から選択され、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類系金属の陽イオンのうちから選択されるいずれか一つ以上であり、0.9≦a≦1.3、0.5≦x<1.0、0.0≦y≦0.2、0.0≦z≦0.2、0.0<q≦0.1である。
【0055】
一態様として、前記ニッケル系リチウム複合酸化物は下記の化学式2で表示することができる。
(化2)
Lia’Nix’Coy’M1z’M2t’M’1-x’-y’-z’-t’O2-q’Fq’
【0056】
前記化学式2で、M1はAlまたはMnであり、M2はB、Ba、Ce、Cr、F、Mg、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr及びこれらの組合せからなる群から選択され、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類系金属の陽イオンのうちから選択されるいずれか一つ以上であり、0.9≦a’≦1.3、0.5≦x’≦1.0、0.0≦y’≦0.2、0.0≦z’≦0.2、0.0≦t’≦0.2、0.0<q’≦0.1である。
【0057】
一態様として、前記a及び/またはa’は0.9~1.2または0.9~1.1であり得る。
【0058】
より好ましくは、前記M及び/またはM’は、Li、Ca、Mg、Al及びZrのうちから選択されるいずれか1種以上であり得る。
【0059】
より好ましくは、前記q及び/またはq’は、0.001以上、0.002以上、0.003以上、0.004以上、0.005以上、0.05以下、0.04以下、0.03以下または0.02以下であり得、0.003~0.03、0.005~0.02、または0.01~0.02であり得る。
【0060】
より好ましくは、フッ素系化合物は、リチウムを除いた金属全体のモル%に対して、0.1モル%以上、0.2モル%以上、0.3モル%以上、0.4モル%以上、0.5モル%以上、5モル%以下、4モル%以下、3モル%以下、2モル%以下で含まれることができ、0.3モル%以上~3モル%以下、0.5モル%以上~2モル%以下、または1モル%以上~2モル%以下で含まれることができる。
【0061】
本発明は、特定の工程及び特定のドーピング物質とともに、ドーピング含量を前記含量に制御することで、陽イオン混合(cation mixing)抑制及び酸素を代替したフッ素による構造強化及び高温保存時のガス発生の抑制の著しく改善された効果があることを確認した。
【0062】
一態様として、前記リチウムニッケル系複合酸化物内の結晶子の平均サイズは、40nm以上、41nm以上、42nm以上、43nm以上、または50nm以下であり得る。本発明は、特定の工程及び特定のドーピング物質とともに、ドーピング含量を前記含量に制御することで、結晶子サイズを成長させることにより、体積当たりのエネルギー密度を増加させ、寿命などの電池特性を向上させることができる。
【0063】
一態様として、前記2次粒子は、表面部及び内部を含む。本発明は、特定の工程及び特定のドーピング物質とともに、ドーピング含量を特定の含量に制御することで、2次粒子の表面部と内部とが後述する技術的特徴によって区分されるリチウムニッケル系複合酸化物を得ることができた。特定のドーピング化合物を特定の含量で特定の熱処理温度及び反応時間でドーピングさせる場合、2次粒子の表面部でフッ素系化合物が主にドーピングできる。
【0064】
ここで、前記2次粒子の表面部は2次粒子の最外郭から2μm~3μmの区間を意味し、2次粒子の内部は前記2次粒子の表面部を除いた区間を意味する。
【0065】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均サイズは前記内部の1次粒子の平均サイズより大きくなることができる。
【0066】
一態様として、前記2次粒子の内部でサイズが200nm以上500nm未満の1次粒子が前記2次粒子の内部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%、70~100容積%、または100容積%であり得る。
【0067】
一態様として、前記2次粒子の内部でサイズが200nm以上300nm未満の1次粒子が前記2次粒子の内部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%、70~100容積%、または100容積%であり得る。
【0068】
一態様として、前記2次粒子の内部で1次粒子の平均サイズは、200~500nm、200~300nm、または200~250nmであり得る。
【0069】
また、一態様として、前記2次粒子の表面部でサイズが500nm~10μmの1次粒子が前記2次粒子の表面部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%、70~100容積%、または100容積%であり得る。
【0070】
また、一態様として、前記2次粒子の表面部でサイズが1μm~10μmの1次粒子が前記2次粒子の表面部を構成する1次粒子のうちの50~100容積%、70~100容積%、または100容積%であり得る。
【0071】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均サイズは、500nm以上2μm以下、800nm以上1.5μm以下、または1.0μm以上1.2μm以下であり得る。
【0072】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均サイズは前記内部の1次粒子の平均サイズより1.2倍、1.5倍、2.0倍または3.0倍以上に大きくなることができる。
【0073】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均アスペクト比(aspect ratio)は前記内部の1次粒子の平均アスペクト比(aspect ratio)より大きくなることができる。
【0074】
本明細書で、アスペクト比は最長軸の長さ/最短軸の長さを意味する。
【0075】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均アスペクト比(aspect ratio)は、2.0以上、2.4以上、2.7以上、3.0以上、または20.0以下であり得る。
【0076】
一態様として、前記2次粒子の内部の1次粒子の平均アスペクト比(aspect ratio)は、1.0以上、1.0超過、1.2以上、1.2超過、2.0未満、1.5以下、または1.5未満であり得る。
【0077】
一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子の平均アスペクト比は、2次粒子の内部の1次粒子の平均アスペクト比の2.0倍以上、2.4倍以上、または10.0倍以下であり得る。
【0078】
本発明の一態様によるリチウムニッケル系複合酸化物は、2次粒子の表面部でドーピングされたフッ素陰イオンの濃度が勾配を有することができる。
【0079】
また、一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子の長軸方向が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成できる。
【0080】
また、一態様として、前記2次粒子の表面部の1次粒子のうちの50%以上の1次粒子は、1次粒子内に形成されたリチウムイオン拡散経路が前記2次粒子の表面と中心とを連結する線に対して±30°以下の角度を有するように形成できる。
【0081】
本発明は、リチウムニッケル系複合酸化物の1次粒子内に形成されたリチウムイオン拡散経路が1次粒子の長軸方向に平行に形成されることで、前記リチウムニッケル系複合酸化物を媒介とする前記リチウムイオンの拡散能を向上させることができる。
【0082】
一態様として、前記2次粒子は、XPS(X-ray Photoelectron Spectrometer)測定によって得られたFluorine 1s結合エネルギー分析の結果、684.3eV~685.0eVで最大のピーク強度を有することができる。前記XPS分析結果から、Fが2次粒子の表面部に主に存在することを確認することができる。特に、結合エネルギー分析結果、FがOのサイトに適切に置換したことを確認することができる。
【0083】
一方、寿命が蓮加するかまたは高温保存の際に電池特性が劣化する原因は、ニッケル系正極活物質、特にハイニッケル正極活物質から酸素が脱離する現象と直接的に関連する。前記XPS分析結果は、本発明が、寿命の劣化または高温保存の際に酸素の脱離を抑制するのに効率的であることを意味する。
【0084】
一方、正極活物質の主原料物質であるリチウムは高温で揮発性が高い。よって、正極活物質を製造するために高温で長時間反応させる場合、リチウム/遷移金属の化学量論比が変わって種々の格子欠陷を引き起こし、その結果として容量/寿命などの特性が低下することがある。特に、高容量のためにNi量が多いハイニッケルでは、このような高温焼成によって欠陷が多く発生する。焼成中に構造内のLi量が変わると、Niの酸化価状態が+3から+2に還元することに関連がある。よって、これを解決するためには、できるだけ焼成維持温度を低めなければならなく、できるだけリチウムの反応開始温度を低めなければならない。リチウムの反応開始温度が低くなれば、残留リチウム含量も低くなることがある。
【0085】
本発明は、特定のフッ素系化合物が特定の範囲内の含量を有するように調節してリチウム反応開始温度を低めることで、LiOH及びLi2CO3の形態として存在する残留リチウム(Li)含量を低めた。
【0086】
一態様として、前記2次粒子の表面にLiOHの形態として存在する残留リチウム(Li)含量が11,300ppm以下、または11,000ppm以下であり得る。
また、一態様として、前記2次粒子の表面にLi2CO3の形態として存在する残留リチウム(Li)含量は6000ppm以下、5000ppm以下、または3000ppm以下であり得る。
【0087】
一態様として、前記正極活物質は、前記2次粒子の表面、前記1次粒子間の粒界、及び前記1次粒子の表面のうちの少なくとも一つ以上の少なくとも一部を占有するコーティング酸化物をさらに含むことができる。
【0088】
一態様として、前記コーティング酸化物は下記の化学式3で表示することができる。
(化3)
LipM3qOr
【0089】
前記化学式3で、M3はNi、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Gd及びNdから選択されるいずれか1種以上であり、0≦p≦10、0<q≦8、2≦r≦13である。
【0090】
一例として、前記化学式3でM3はコーティング元素を意味し、前記コーティング酸化物はリチウムとM3で表示される元素とが複合化した酸化物であるか、またはM3の酸化物であり得る。
【0091】
一例として、前記コーティング酸化物は、LipCoqOr、LipWqOr、LipZrqOr、LipTiqOr、LipNiqOr、LipAlqOr、LipMoqOr、CoqOr、AlqOr、WqOr、ZrqOr、TiqOr、BqOr、Lip(W/Ti)qOr、Lip(W/Zr)qOr、Lip(W/Ti/Zr)qOr、またはLip(W/Ti/B)qOrであり得るが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記コーティング酸化物は、コーティング酸化物内に含まれる元素のモル濃度が変わる濃度勾配部を含むことができる。一例として、前記コーティング酸化物がリチウムを含む場合は、リチウムのモル濃度が変わることができる。また、一例として、前記コーティング酸化物に含まれるM3のうちのいずれか一つ以上のモル濃度が変わることができる。
【0093】
一態様として、前記コーティング酸化物が前記2次粒子の最外郭を成す1次粒子の表面領域の少なくとも一部を占有する場合、前記濃度勾配部は、前記2次粒子の最外郭を成す1次粒子の表面から2次粒子の中心に向かう方向に減少するか、増加するか、または増加してから減少することができる。
【0094】
また、前記濃度勾配部は、前記2次粒子の最外郭を成す1次粒子の表面から前記1次粒子の中心に向かう方向に減少するか、増加するか、または増加してから減少することができる。
【0095】
一態様として、前記コーティング酸化物が前記2次粒子の最外郭を成さない1次粒子の表面領域の少なくとも一部を占有する場合、前記1次粒子の表面から前記1次粒子の中心に向かう方向に減少するか、増加するか、または増加してから減少することができる。
【0096】
一方、前述したリチウムニッケル系複合酸化物の1次粒子または2次粒子に対する技術的特徴は複数の粒子に対する平均的な特徴に関するものであり得る。
【0097】
また、本発明で記載した「≦」、「以上」または「以下」の意味は、「<」、「超過」または「未満」の意味に代替することができる。
【0098】
本発明の一態様による正極は前記正極活物質を含む。
【0099】
前記前述した正極活物質を用いることを除き、前記正極は公知の構造を有し、公知の製造方法によって製造することができる。バインダー、導電材、及び溶媒は二次電池の正極集電体上に使用可能なものであれば、これに特に限定されない。
【0100】
本発明の一態様による二次電池は前記正極活物質を含む。
【0101】
前記二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する陰極、及び前記正極と前記陰極との間の電解質を含むことができるが、二次電池として使用可能なものであれば、これに特に限定されない。
【0102】
以下、本発明の実施例についてより具体的に説明する。
【0103】
正極活物質の製造
<実施例1>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを準備し、共沈反応を実行することで、NiCoMn(OH)2水酸化物前駆体(Ni:Co:Mn=90:8:2(at%))を合成した。
【0104】
前記合成された前駆体に、LiOH(Li/(Ni+Co+Mn)モル比=1.04)及びフッ素系化合物を多様な含量で添加してから焼成することで、リチウム複合酸化物を製造した。この場合、前駆体にLiOH及びフッ素系化合物を混合した後、焼成炉でO2雰囲気を維持しながら分当たり2℃で昇温し、665℃で10時間熱処理した後、自然冷却させた。
【0105】
ここで、前記実施例で添加したフッ素系化合物はLiF、CaF2、AlF3、MgF2、NH4F、ZrF4であり、それぞれを、リチウムを除いた金属全体のモル含量に対して、0.2モル%、0.5モル%、1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%の多様な含量で添加した。
【0106】
<実施例2>
前記実施例1で製造された正極活物質にTiO2、Al2O3、ZrO2をそれぞれ0.6、0.6、0.1mol%ずつ混合した後、焼成炉でO2雰囲気を維持しながら分当たり4.4℃で昇温し、675℃で8時間熱処理した後、自然冷却させることで、リチウム複合酸化物を得た。
【0107】
前記得られたリチウム複合酸化物に蒸留水を投入した後、1時間水洗し、水洗されたリチウム複合酸化物を濾過してから乾燥させた。
【0108】
その後、ミキサーを用いて前記乾燥したリチウム複合酸化物とB含有原料物質(H3BO3)とを一緒に混合した。B含有原料物質(H3BO3)は、前記リチウム複合酸化物の総重量に対して0.235重量%になるように混合した。同じ焼成炉でO2雰囲気を維持しながら、分当たり4.4℃で昇温し、300℃で8時間熱処理した後、自然冷却させた。
【0109】
<比較例1>
フッ素系化合物を添加しないことを除き、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0110】
<比較例2>
フッ素系化合物を添加しなかった比較例1で製造された正極活物質にTiO2、Al2O3、ZrO2を混合したことを除き、実施例2と同様に正極活物質を製造した。
【0111】
リチウム二次電池の製造
前記実施例及び比較例によって製造された正極活物質94wt%、人造黒鉛3wt%、PVDFバインダー3wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)3.5gに分散させて正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布及び乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施することで、正極を製造した。正極のローディングレベルは7mg/cm2であり、電極密度は3.2g/cm3であった。
【0112】
前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネート及びエチレンカーボネートが3:7の容積比で混合された溶媒にLiPF6が1.5M濃度で存在する液体電解液を使用し、通常的に知られている製造工程によってコイン電池を製造した。
【0113】
<実験例>
(1)断面SEMイメージ
前記実施例1及び比較例1による正極活物質に対して、断面ポリッシャー(cross section polisher)を介して380μAの電流で1時間30分間実行することによって断面を得た。FE-SEMは、JSM-7610FPlus(JEOL)を使用し、2kVの電圧でリチウム複合酸化物の断面SEMイメージを得た後、これを
図1に示した。
【0114】
(2)結晶子平均サイズ
前記実施例1及び比較例1による正極活物質に対して、結晶子平均サイズを測定して
図2に示した。前記結晶子サイズを測定するために、X線回折(XRD)分析を実行することで、前記正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物の結晶面によるピークを検出した。XRD分析は、Cu-Kαラジエーション(1.540598Å)を用いたBruker D8 Advance回折計(diffractometer)によって2θが10-80°(2θ)の範囲で0.02°ステップの間隔で測定し、下記の関係式によって補正されたFWHM
補正(104)を得た後、シェラーの式(scherrer equation)によって結晶子サイズに換算し、これを
図2に示した。
【0115】
(関係式1)
FWHM補正(104)=FWHM測定(104)-FWHMSi 粉末(220)
ここで、FWHM(104)は、R-3m空間群を有する六方格子によって定義されるXRDピークにおける(104)ピークの半値全幅(FWHM;deg.,2θ)を意味する。
【0116】
前記関係式1で、FWHM測定(104)は、前記リチウムニッケル系複合酸化物のXRD分析の際、44.5±1.0°(2θ)で観測される(104)ピーク(peak)の半値全幅を意味し、前記FWHMSi粉末(220)は、Si粉末のXRD測定値で47.3±1.0°(2θ)付近で観測される(220)ピーク(peak)の半値全幅を意味する。
【0117】
本発明によるリチウムニッケル系複合酸化物の半値全幅(FWHM)は、XRD分析の際、半値全幅(FWHM)に対する測定値が分析装備のコンディション、X線ソース、測定条件などの多様な変数によって偏差及び誤差が発生するので、前記関係式1のように、リチウムニッケル系複合酸化物の半値全幅(FWHM)は標準試料としてSi粉末の半値全幅(FWHM)で補正した。FWHM(104)及びSi粉末に対するFWHM(220)の測定はガウス(Gaussian)関数のフィッティングによって計算し、FWHM測定のためのガウス関数のフィッティングは当業者に知られた多様な学問的/公開/商業ソフトウェアを用いて実行することができる。
【0118】
一方、Si粉末としては、Sigma-Aldrich社のSi粉末(製品番号215619)を使用した。
【0119】
(3)XPS分析
前記実施例1及び比較例1による正極活物質に対してXPS分析を実行した。XPS分析は、Al-Kαラジエーションを用いたNexsa(Thermo fisher)(最小分析領域:10~200μm)によってリチウム複合酸化物に含まれたFluorine 1s結合エネルギーを測定し、これを
図3に示した。
【0120】
(4)反応開始温度分析
前記実施例1及び比較例1による正極活物質に対して、リチウムの反応開始温度を分析し、これを
図4に示した。
【0121】
(5)ガス発生量分析
前記実施例2及び比較例2によるリチウム二次電池に対して、定電流0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で80時間まで保管することで、リチウム二次電池内のガス発生によるリチウム二次電池の体積変化を測定することにより、ガス発生の指標である容積増加率を測定し、これを
図5に示した。
【0122】
(6)c-rate効率分析
前記実施例2及び比較例2によるリチウム二次電池に対して、電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を用い、25℃で、電圧範囲3.0V~4.3V、0.1C~5.0Cの放電率を適用して5.0C/0.1CのC-rate効率を測定し、これを
図6に示した。
【0123】
(7)残留リチウム分析
残留リチウムの測定は、pH滴定によってpH4になるまで使用された0.1M HClの量で測定した。まず、前記実施例1及び比較例1による正極活物質5gをDIW100mlに入れ、15分間撹拌した後、フィルタリングし、フィルタリングされた溶液50mlを取った後、これに0.1M HClを加え、pH変化によるHCl消耗量を測定してQ1及びQ2を決定し、下記の式によって未反応LiOH及びLi
2CO
3を計算し、これを
図7及び
図8に示した。
【0124】
M1=23.95(LiOH分子量)
M2=73.89(Li2CO3分子量)
SPLサイズ=(サンプル重量×溶液重量)/水重量
LiOH(wt%)=[(Q1-Q2)×C×M1×100]/(SPLサイズ×1000)
Li2CO3(wt%)=[2×Q2×C×M2/2×100]/(SPLサイズ×1000)