(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066437
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電子機器組立装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B25J15/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130677
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2022174856の分割
【原出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】国崎 晃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS08
3C707BS12
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU17
3C707EV10
3C707HS12
3C707KT02
3C707KT05
3C707NS17
(57)【要約】
【課題】ケーブルの保持力を飛躍的に増大させると共に、幅寸法の異なる複数種類のケーブルの接続作業を行うことができる電子機器組立装置を提供する。
【解決手段】 平坦かつ柔軟なケーブル162、166の先端を回路基板160上のコネクタ164、168に挿入する電子機器組立装置において、把持装置200は、ケーブルの一方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第1把持機構210と、ケーブルの他方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第2把持機構212と、回転機構260と、第1把持機構と第2把持機構をケーブル幅方向に開閉する幅方向開閉機構240とを備え、幅方向開閉機構240は、第1把持機構と第2把持機構をケーブルの側辺に対して進退する方向に把持移動させる第1シリンダ244と、第1シリンダと同じ方向に幅調節移動させる第2シリンダ270とを含み、第2シリンダは所定位置で固定するロック機能を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦かつ柔軟なケーブルの先端を回路基板上のコネクタに挿入する電子機器組立装置において、
前記ケーブルを把持する把持装置と、
前記把持装置を移動させるロボットアームと、
を備え、
前記把持装置は、
ケーブルの一方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第1把持機構と、
ケーブルの他方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第2把持機構と、
前記第1把持機構と前記第2把持機構とをケーブル幅方向に開閉する幅方向開閉機構と、
前記把持装置のうち前記第1把持機構及び前記第2把持機構を前記ケーブルの屈曲方向に回転させる回転機構とを備え、
前記幅方向開閉機構は、
前記第1把持機構と前記第2把持機構との少なくとも一方を、前記ケーブルの側辺に対して進退する方向に、把持と開放のための把持移動させる第1シリンダと、
前記第1把持機構と前記第2把持機構との少なくとも一方を、前記第1シリンダと同じ方向に、ケーブルの幅の違いに前記把持移動のストローク範囲を合わせるための幅調節移動させる第2シリンダとを含み、
前記第2シリンダは所定位置で固定するロック機能を有していることを特徴とする電子機器組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の回路基板などに接続されたケーブルを把持する電子機器組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器組立装置は、例えば工場などの生産現場で用いられる装置であり、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)などのケーブルの先端を回路基板上のコネクタに接続する。FPCのようなケーブルは、薄く、平坦であり、かつ可撓性がある。このようなケーブルは通常のハンド(フィンガー)で把持することができない。例えば特許文献1に記載の電子機器組立装置は、ケーブル先端の幅方向の位置を決めるチャックと、ケーブル先端の表面を吸引して吸着保持するケーブル吸着部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸引では保持する力が不足する場合がある。そのためケーブル先端をコネクタに突き当てたときにケーブルが後退してしまったり、斜めに傾いてしまったりするおそれがある。
【0005】
また従来の電子機器組立装置では同一幅のコネクタにしか対応できなかった。このため複数種類のケーブルの配線作業を行う場合には、ロボットに複数のハンドを搭載するか、またはハンド交換装置等を用いてハンドを交換する必要が発生する。
【0006】
ロボットに複数ハンドを搭載する場合、ハンド重量が重くなって、より可搬質量の大きなロボットを使わざるを得ず、スペースやコストが大きくなるという問題がある。ハンドを交換して対応する場合、ハンドを交換するための時間や、別の種類のハンドを置いておくスペースが必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ケーブルの保持力を飛躍的に増大させると共に、幅寸法の異なる複数種類のケーブルの接続作業を行うことができる電子機器組立装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、平坦かつ柔軟なケーブルの先端を回路基板上のコネクタに挿入する電子機器組立装置において、ケーブルを把持する把持装置と、把持装置を移動させるロボットアームと、を備え、把持装置は、ケーブルの一方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第1把持機構と、ケーブルの他方の側辺を厚み方向に把持する一対の爪を有する第2把持機構と、第1把持機構と第2把持機構とをケーブル幅方向に開閉する幅方向開閉機構と、把持装置のうち第1把持機構及び第2把持機構をケーブルの屈曲方向に回転させる回転機構とを備え、幅方向開閉機構は、第1把持機構と第2把持機構との少なくとも一方を、ケーブルの側辺に対して進退する方向に、把持と開放のための把持移動させる第1シリンダと、第1把持機構と第2把持機構との少なくとも一方を、第1シリンダと同じ方向に、ケーブルの幅の違いに把持移動のストローク範囲を合わせるための幅調節移動させる第2シリンダとを含み、第2シリンダは所定位置で固定するロック機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルの保持力を飛躍的に増大させると共に、幅寸法の異なる複数種類のケーブルの接続作業を行うことができる電子機器組立装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における電子機器組立装置の全体の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の把持装置の正面図および側面図である。
【
図3】
図2の第1把持機構を説明する部分拡大図である。
【
図5】
図2の第1把持機構、第2把持機構の幅方向開閉機構を説明する図である。
【
図6】
図2の第1把持機構、第2把持機構の回転機構を説明する図である。
【
図7】他の実施形態にかかる把持装置の正面図および側面図である。
【
図8】さらに他の実施形態にかかる把持装置の正面図および平面図である。
【
図9】
図8に示した把持装置の把持機構を説明する図である。
【
図11】
図6に示した把持装置の他の実施形態を説明する図である。
【
図12】
図6に示した把持装置の他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態における電子機器組立装置100の全体の構成を示す斜視図である。電子機器組立装置100は、例えば工場などの生産現場で用いられる装置であり、幅寸法の異なる複数種類のケーブル162、166を把持装置200によって把持し、接続先となる回路基板160のコネクタ164、168に接続(挿入)する。ケーブル162、166は、FPCやFFCなどの平坦かつ柔軟性がある長尺状のものである。
【0013】
電子機器組立装置100は、
図1に示すロボット本体110と、ロボット本体110に接続されたロボット制御装置120とを備える。ロボット本体110は、ベース部112と、ベース部112に支持されたロボットアーム114と、マニピュレータとして把持装置200を備える。ロボットアーム114は、例えば6軸や5軸の垂直多関節型ロボットであってもよいし、水平多関節型ロボットであってもよい。
【0014】
ロボット制御装置120に、入力装置122、状態通知装置124、および上位制御システム130が接続されている。入力装置122は、ロボット制御装置120にコマンドやパラメータなどを入力する装置である。状態通知装置124は、ロボット制御装置120から送信されるロボット本体110の動作状態や接続作業の状態を受信し表示する装置である。
【0015】
上位制御システム130は、例えばシーケンサ(PLC)や監視制御システム(SCADA)、プロセスコンピュータ(プロコン)、パーソナルコンピュータ、各種サーバもしくはこれらの組み合わせからなり、ロボット制御装置120と有線または無線で接続されている。そして上位制御システム130は、ロボット制御装置120を含む生産ラインを構成する各装置の動作状況に基づいて指示を出力して生産ラインを統括的に管理する。
【0016】
図2は
図1の把持装置200の正面図および側面図である。把持装置200は、カメラ140と、照明150と、ケーブル162、166の先端を把持する第1把持機構210、第2把持機構212とを備える。カメラ140で撮影した映像に基づいて、ロボット制御装置120がビジュアルフィードバック制御を行い、ケーブル162、166の先端を把持し、これをコネクタ164、168に挿入する。カメラ140は少なくとも1台以上必要だが、2台以上であるとさらに撮像精度が向上するため好ましい。さらにカメラ140は、カラー画像またはモノクロ画像を取得するものであってもよい。尚、把持装置200の動作制御は、ロボット制御装置120に代えて、システム制御装置(PLCを使用したもの等)を用いて動作を制御してもよい。
【0017】
後述するように、第1把持機構210はケーブルの先端近傍の一方の側辺を厚み方向に把持し、第2把持機構212はケーブルの先端近傍の他方の側辺を厚み方向に把持する。
【0018】
図3は
図2の第1把持機構210を説明する部分拡大図である。第2把持機構212は第1把持機構210と左右対称であるため
図3では記載を省略する。
【0019】
第1把持機構210は、ケーブル162の側辺を厚み方向Dに把持する一対の爪として、第1爪220(図示下側の爪)、第2爪222(図示上側の爪)を有する。第1爪220は、ケーブル162を把持してコネクタ164に挿入する際に、回路基板160側に位置する。第2爪222は、把持したケーブル162に対して回路基板160と反対側に配置されている。
【0020】
第1爪220はブラケット226に固定されている。これに対し第2爪222は、把持用エアシリンダ230によって第1爪220に向かって進退する。把持用エアシリンダ230はエアチューブ232によって前進用と後退用のエアが供給される。これにより、第1爪220と第2爪222でケーブル162の側辺を挟持する。
図3(a)は第2爪222が開いている状態(後退している状態)を示し、
図3(b)は第2爪222が閉じている状態(前進している状態)を示している。
【0021】
図4は
図3の第1爪220を説明する斜視図である。第1爪220は金属(バネ鋼材)の板材で形成されていて、弾性と高い剛性を有している。本実施形態では第1爪220は挟持面220a、起立面220b、ボルト穴221を設けた固定面220cの三つにクランク状に屈曲して形成されている。これにより挟持面220aに荷重がかかったときの変形に対する弾性領域を増大させている。
【0022】
第1把持機構210、第2把持機構212は、ケーブル162、166を厚み方向Dに把持することにより、従来のようにケーブル162、166を幅方向Wで把持してエアで吸引する場合に比して、保持力を飛躍的に増大させることができる。また第1爪220の第2爪222側の面である挟持面220a(
図4のハッチング部分)に摩擦係数の高いコーティング処理または表面処理を施すことにより、さらに保持力を増大させることができる。コーティング処理としては、ゴムライニング、ポリウレタンコーティング、シリコンコーティング、金属溶射などが挙げられる。その他の表面処理としては、サンドブラストやケミカル処理で表面粗度を粗くすることが挙げられる。
【0023】
また上記構成によれば、ケーブル162、166をコネクタ164、168に挿入する際に、ケーブル162、166より回路基板160側に必要なスペースを第1爪220の厚みのみにすることができる。したがってケーブル162、166を回路基板160に近接させることができ、近年の背の低いコネクタ164、168に対しても容易にケーブル162、166の先端を挿入することができる。
【0024】
図5は
図2の第1把持機構210、第2把持機構212の幅方向開閉機構240を説明する図である。幅方向開閉機構240は2つの種類の移動を行う。1つ目は、ケーブル162、166の把持と開放のための移動(第1爪220が把持位置からケーブル162、166の側辺を回避するに足る幅の移動)である。以下の説明において1つ目の移動を「把持移動」と称する。2つ目は、ケーブル162、166の幅の違いに把持移動のストローク範囲を合わせるための移動である。以下の説明において2つ目の移動を「幅調節移動」と称する。一般的には把持移動の方が小ストローク、幅調節移動の方が大ストロークであるが、設計思想によってどちらのストロークが大きくてもよい。
【0025】
図5(a)に示すように、本実施形態の幅方向開閉機構240は、第1直動ガイド242、第1シリンダ244、第2直動ガイド246で構成されている。第1把持機構210、第2把持機構212はそれぞれサイドプレート214に支持されている。サイドプレート214は第1直動ガイド242によって摺動可能に支持されていて、第1把持機構210、第2把持機構212をケーブルの側辺に向かって進退する方向に移動させる第1シリンダ244(エアシリンダ)によって移動可能となっている。この第1直動ガイド242、第1シリンダ244によって、
図5(b)に示すように、把持移動が行われる。
【0026】
なお本実施形態では2つの第1シリンダ244を備えていて、第1把持機構210、第2把持機構212をそれぞれ移動させる構成となっている。しかし第1把持機構210、第2把持機構212のいずれか一方のみを幅方向に移動させて把持してもよい。その場合は、1つの第1シリンダによって第1把持機構210、第2把持機構212のいずれか一方を移動させればよい。
【0027】
さらに第1直動ガイド242は、把持装置200のベース202に取り付けられた第2直動ガイド246に摺動可能に支持されていて、ロック機構248によって任意の位置で固定可能となっている。ロック機構248は種々のものを用いることができるが、例えば通常時はばねでクランプされ、エアの供給でクランプが解除される常時閉のリニアクランプを使用することができる。なお、第1直動ガイド242は、把持装置200のベース202に取り付けられた第2直動ガイド246リンク機構250によって左右の移動量が一致するように構成されている。この第2直動ガイド246、248によって、
図5(c)に示すように、幅調節移動が行われる。これにより把持装置200は、幅寸法が異なる複数種類のケーブル162、166を保持対象とすることができる。
【0028】
図6は
図2の第1把持機構210、第2把持機構212の回転機構260を説明する図である。
図6では第1把持機構210を例に用いて説明する。第2把持機構212は第1把持機構210と左右対称であるため
図6では記載を省略する。
【0029】
第1把持機構210のブラケット226は、回転軸262によってサイドプレート214に接続されている(
図2、
図3も参照)。サイドプレート214は回転用シリンダ264を備えている。回転用シリンダ264はリンク266を介して回転軸262に接続されている。この構成により回転用シリンダ264が伸縮すると、リンク266、回転軸262を介して第1把持機構210がケーブル162、166の屈曲方向に回転する。したがってケーブル162、166を把持する際に、その角度に応じて第1爪220、第2爪222の角度を変更することができ、円滑に把持することができる。
【0030】
図7は他の実施形態にかかる把持装置200Aの正面図および側面図である。上記説明と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。また
図7ではカメラ140、照明150の記載を省略している。
【0031】
図7に示す構成では、幅方向開閉機構240として、把持移動を行う第1シリンダ244に加えて、幅調節移動を行う第2シリンダ270を備えている。第2シリンダ270は第1シリンダ244と同じ方向に、第2直動ガイド246に沿って、2つの第1直動ガイド242を(間接的に第1把持機構210と第2把持機構212を)移動させる。
図7では1つしか第2シリンダ270を備えていないが、リンク機構250によって左右の第1直動ガイド242が逆方向に連動する。第2シリンダ270はケーブル162、166の幅に合わせて第1把持機構210と第2把持機構212の間隔を調節する。一般的には把持移動の方が小ストローク、幅調節移動の方が大ストロークであるが、設計思想によってどちらのストロークが大きくてもよい。
【0032】
なお本実施形態ではリンク機構250によって左右の第1直動ガイド242を(すなわち第1把持機構210と第2把持機構212を)両方とも移動させているが、いずれか一方のみを幅方向に移動させて幅調節移動してもよい。
【0033】
幅調節移動のための第2シリンダ270は、所定位置で固定するロック機能を内蔵している。これにより第1シリンダ244が動作する時に第1直動ガイド242がずれてしまうことを防止することができる。なお把持移動のための第1シリンダ244にもロック機構を設けてもよい。これにより、把持力をさらに強固にすることができる。
【0034】
図8はさらに他の実施形態にかかる把持装置200Bの正面図および平面図である。上記説明と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図8(a)に示すように、把持装置200Bは幅方向開閉機構240として、第1シリンダ244や第2シリンダ270(
図7参照)に代えて、開閉用サーボモータ280とターンバックルシャフト282とを備えている。ターンバックルシャフト282は一端に右ねじ282a(正ねじ)、他端に左ねじ282b(逆ねじ)が形成された軸である。開閉用サーボモータ280とターンバックルシャフト282はタイミングベルト284で接続されている。なおタイミングベルト284に代えて、軸継手やギヤ列その他の既知の駆動伝達機構を用いることができる。
【0036】
図8(b)に示すように、把持装置200Bは、1つの直動ガイド286を備えている。第1把持機構350を支持する第1ブロック300と、第2把持機構352を支持する第2ブロック302は、スライダ304によって直動ガイド286に摺動可能に取り付けられている。また第1ブロック300および第2ブロック302は、ターンバックルシャフト282と螺合する軸受306を備えている。したがって開閉用サーボモータ280によってターンバックルシャフト282を回転させると、第1ブロック300と第2ブロック302がそれぞれ逆方向に移動するため、第1把持機構350と第2把持機構352の間を開閉することができる。この幅方向開閉機構240は、把持移動と幅調節移動を両方行うことができる。
【0037】
また回転機構として、回転用シリンダ264(
図6参照)に代えて、回転用サーボモータ290を備えている。回転用サーボモータ290は減速機292およびタイミングベルト294を介してスプライン軸296に駆動が伝達される。第1ブロック300および第2ブロック302のスリーブ308はスプライン軸296に嵌合されていて(ボールスプライン)、摺動可能かつ回転駆動可能である。スリーブ308のはすば歯車308aから、第1把持機構350および第2把持機構352の回転軸320のはすば歯車322に、ギヤ列301によって駆動が伝達される。したがって回転用サーボモータ290によってスプライン軸296を回転させると、第1把持機構350と第2把持機構352をケーブル162、166の屈曲方向に回転させることができる。
【0038】
図9は
図8の把持装置200Bの把持機構を説明する図である。
図9では第1把持機構350を例に用いて説明する。第2把持機構352は第1把持機構350と左右対称であるため
図9では記載を省略する。
【0039】
図9に示すように、第1把持機構350は把持用エアシリンダ356を備えている。把持用エアシリンダ356は外出しのエアチューブを備えておらず(
図3のエアチューブ232参照)、把持用エアシリンダ356にエアを供給する流路が回転軸320の内部に形成されている。
【0040】
詳しくは、第1ブロック300にエアチューブ(不図示)を接続するポート360を備え、第1ブロック300内の第1流路362、回転軸320内の第2流路364、第1把持機構350のブラケット354内の第3流路366を通って、把持用エアシリンダ356にエアが供給される。
【0041】
図10は
図9の回転軸320近傍を示す拡大図であり、
図10(a)が
図9の構成と対応している。回転軸320はブラケット354に固定されていて、一体として回転する。したがって、回転しない第1ブロック300内の第1流路362から、回転する回転軸320内の第2流路364にエアを流す必要がある。
【0042】
そこで
図10(a)の構成では、回転軸320の外周に第2流路364に連通する穴365を形成する。そして回転軸320の外周の穴365の位置に外周溝321を形成する。また第1ブロック300には、穴365と対向する位置に内周溝363を形成する。これにより外周溝321と内周溝363によって円周状の流路が形成され、回転軸320の回転位相に関わらず外周溝321にエアを流すことが可能となる。
【0043】
図10(b)の構成は、外周溝321のみを設け、内周溝363を設けない例である。
図10(c)の構成は、内周溝363のみを設け、外周溝321を設けない例である。
【0044】
図10(a)~(c)の構成は1系統しかエアを供給しないので、把持用エアシリンダ356はリターンスプリングを利用する必要がある。これに対し
図10(d)の構成は、回転軸320の中に往路と復路の2系統の流路を形成している。詳しくは、第1流路362a、第2流路364a、第3流路366aからなる系統と、第1流路362b、第2流路364b、第3流路366bからなる系統である。回転軸320の外周には、それぞれ穴365a、365bと、外周溝321a、321bが形成されている。
【0045】
上記のように、回転軸320の内部に把持用エアシリンダ356にエアを供給する流路を形成したことにより、外付けのエアチューブが不要となることから、第1把持機構350および第2把持機構352の小型化を図ることができる。したがってケーブル162、166を接続する際に、把持装置200Bが周辺装置と干渉する範囲を減少させることができる。
【0046】
また上記構成によれば、第1把持機構350および第2把持機構352の回転が、エアチューブによる制約を受けない。このため第1把持機構350および第2把持機構352はいかなる角度の姿勢も取ることができ、360°以上回転させることもできる。したがって、水平に延びたケーブル162、166の先端を把持して、180°屈曲させてコネクタ164、168に挿入することも可能である。
【0047】
図11は
図6に示した把持装置の他の実施形態を説明する図である。
図1-
図6を用いてした説明と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。特に
図6と対比して参照されたい。
【0048】
図11に示す把持装置200Cは、カメラ140の光軸Vをほぼ垂直とし、第1爪220およびケーブル162をほぼ水平とした姿勢において、把持用エアシリンダ230を光軸Vから離隔する方向に所定角α傾けている。これによりカメラ140の視野に把持用エアシリンダ230が入り込む面積を減少させ、ケーブル162の先端を見やすくすることができる。特にケーブル162の幅が狭い場合には把持用エアシリンダ230の影に隠れがちになるので、把持用エアシリンダ230を傾斜させることの利益が大きい。
【0049】
ただし、把持用エアシリンダ230を所定角α傾けているため、第1爪220の挟持面220a(
図4参照)に対して第2爪222を所定角α傾けて押圧することになる。所定角αが大きいとケーブルを把持したときにすべりを生じてしまうため、所定角αは10°以下であることが好ましい。
【0050】
図12は
図6に示した把持装置の他の実施形態を説明する図である。
図1-
図6を用いてした説明と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。特に
図2(a)と対比して参照されたい。
【0051】
図12に示す把持装置200Dは、第1把持機構210および第2把持機構212に、照明150の照射光Lをケーブル162の側面に向かって反射する反射材370を備えている。これにより、ケーブル162の先端をコネクタ164に挿入する際に、ケーブル162の側辺およびコネクタ164の側面に光を当てることができる。
【0052】
ケーブル162の直上にある照明150からの光のみを当てた状態では、回路基板160の上にケーブル162の影が落ちて、影の輪郭をケーブル162の輪郭であると誤認識してしまうおそれがある。コネクタ164についても同様に、影の輪郭をコネクタ164の輪郭と誤認識するおそれがある。しかし反射材370によって側方からも光を当てることによって影を消すことができるため、誤認識を防止し、より正確なビジュアルフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電子機器の回路基板などに接続されたケーブルを把持する電子機器組立装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100…電子機器組立装置、110…ロボット本体、112…ベース部、114…ロボットアーム、120…ロボット制御装置、122…入力装置、124…状態通知装置、130…上位制御システム、140…カメラ、150…照明、160…回路基板、162…ケーブル、164…コネクタ、166…ケーブル、168…コネクタ、200…把持装置、202…ベース、210…第1把持機構、212…第2把持機構、214…サイドプレート、220…第1爪、220a…挟持面、220b…起立面、220c…固定面、221…ボルト穴、222…第2爪、226…ブラケット、230…把持用エアシリンダ、232…エアチューブ、240…幅方向開閉機構、242…第1直動ガイド、244…第1シリンダ、246…第2直動ガイド、248…ロック機構、250…リンク機構、260…回転機構、262…回転軸、264…回転用シリンダ、266…リンク、270…第2シリンダ、280…開閉用サーボモータ、282…ターンバックルシャフト、282a…右ねじ、282b…左ねじ、284…タイミングベルト、286…直動ガイド、290…回転用サーボモータ、292…減速機、296…スプライン軸、300…第1ブロック、301…ギヤ列、302…第2ブロック、304…スライダ、306…ソケット、308…スリーブ、308a…歯車、320…回転軸、321…外周溝、322…歯車、350…第1把持機構、352…第2把持機構、354…ブラケット、356…把持用エアシリンダ、360…ポート、362…第1流路、363…内周溝、364…第2流路、365…穴、366…第3流路、370…反射材、D…厚み方向、L…照射光、V…光軸、W…幅方向