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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066459
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174612
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022174907
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田垣 徹
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE06
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF04
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK04
2G059KK09
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM14
2G059PP04
(57)【要約】
【課題】簡素な構成要素によって、環境温度のような情報を、撮影部を有する測定デバイスで撮影することで特定することのできる測定システム。
【解決手段】測定対象物の測定に関連する情報である関連情報を取得する関連情報取得センサと、関連情報取得センサによって取得された関連情報に対応した光である表示光を発する表示光源と、を有するハウジングと、関連情報と表示光との対応関係をあらかじめ記憶した対応記憶部と、表示光を撮影して画像を取得する撮影部と、画像を解析して表示光を特定し、特定した表示光を対応記憶部に記憶された対応関係に当て嵌めて、関連情報を特定する情報特定部と、を有する測定デバイス、とを備える、測定システム。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定に関連する情報である関連情報を取得する関連情報取得センサと、
前記関連情報取得センサによって取得された前記関連情報に対応した光である表示光を発生させる表示光源と、
を有するハウジングと、
前記関連情報と前記表示光との対応関係をあらかじめ記憶した対応記憶部と、
前記表示光を撮影して画像を取得する撮影部と、
前記画像を解析して前記表示光を特定し、当該特定した表示光を前記対応記憶部に記憶された前記対応関係に当て嵌めて、前記関連情報を特定する情報特定部と、
を有する測定デバイス、とを備える、測定システム。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記表示光源による前記表示光の発生を制御する光源制御部を備える、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記表示光源は、前記表示光の強さの基準となる基準光量を有する基準光を発生させ、前記光源制御部は、前記表示光と前記基準光とを切り替えて前記表示光源を発光させる、請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記情報特定部は、前記撮影部が撮影した前記基準光を基に、前記撮影部が撮影した前記表示光の強さを特定する、請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記表示光源は複数の発光部を備え、前記光源制御部による制御を介して前記複数の発光部の位置及び前記表示光の組み合わせによって前記関連情報が表現される、請求項2に記載の測定システム。
【請求項6】
前記情報特定部は前記複数の発光部の位置を特定し、その特定した位置ごとに、前記表示光を特定する、請求項5に記載の測定システム。
【請求項7】
前記ハウジングには、前記測定対象物を適用する試験片を収容する収容部が設けられ、
前記測定デバイスは、前記収容部に収容された前記試験片に適用された測定対象物を測定して、測定値を取得する測定部と、前記測定部によって取得した測定値を、前記情報特定部が特定した前記関連情報に基づき補正する補正部と、を備える、請求項1に記載の測定システム。
【請求項8】
前記ハウジングには、測定窓が形成された装着部が設けられ、
前記測定デバイスは、前記測定窓に前記撮影部が対向するように前記装着部に装着される、請求項7に記載の測定システム。
【請求項9】
前記測定窓は、前記装着部に装着された前記撮影部が、前記試験片及び前記表示光源を同時に撮影可能となるような位置に形成される、請求項8に記載の測定システム。
【請求項10】
前記関連情報は環境温度であり、前記関連情報取得センサは温度センサである、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の測定に関連する情報を特定する測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数個の光源の各々に特定の温度を割り当て、特定の光源を点灯させることで対応する温度を表示する技術が開示されている。特許文献2には、装置のエラー状態をLEDの点灯パターン及び色で表現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-43142号公報
【特許文献2】特開2015-91089号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施態様は、簡素な構成要素によって、ハウジングが取得する環境温度のような測定に関連する情報を、撮影部を有する測定デバイスが特定することのできる測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の測定システムは、ハウジングと測定デバイスとを備える。ハウジングは、測定対象物の測定に関連する情報である関連情報を取得する関連情報取得センサと、関連情報取得センサによって取得された関連情報に対応した光である表示光を発する表示光源と、を有する。測定デバイスは、関連情報と表示光との対応関係をあらかじめ記憶した対応記憶部と、表示光を撮影して画像を取得する撮影部と、画像を解析して表示光を特定し、特定した表示光を対応記憶部に記憶された対応関係に当て嵌めて、関連情報を特定する情報特定部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施態様によれば、簡素な構成要素によって、ハウジングが取得する環境温度のような測定に関連する情報を、撮影部を有する測定デバイスが特定することのできる測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のハウジングの一部である保持部を上方斜視図で示す。
図2】保持部の挿入口付近を下方斜視図にて拡大して示す。
図3】実施形態で使用される試験片を平面視で示す。
図4】保持部に試験片が装着された状態を上方斜視図で示す。
図5図4の状態を平面視で示す。
図6】実施形態で使用される載置部を上方斜視図で示す。
図7】載置部を底面視で示す。
図8】実施形態のハウジングを上方斜視図で示す。
図9図8のハウジングに試験片が装着された状態を上方斜視図で示す。
図10】実施形態で使用される測定デバイスを底面視で示す。
図11】実施形態の測定システムを上方斜視図で示す。
図12図11の測定システムから外壁部の一部を除いた状態を上方斜視図で示す。
図13図12のXIII-XIII断面を示す。
図14】実施形態の測定システムの機能ブロック図である。
図15】制御部をブロック図で示す。
図16】実施形態の測定システムにおける関連情報の特定の概要を示すフローチャートである。
図17】実施形態の測定システムにおける測定対象物の測定方法の概要を示すフローチャートである。
図18】実施形態の測定システムにおける測定対象物の測定方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。各図において共通する符号は、特段の説明がなくとも同一の部分を指し示す。また、各図に現された各部材や各部位はあくまで模式的に描かれたものであって、実際の製品のサイズ及び位置関係は必ずしも正確には表現されていない。
【0009】
(1)保持部
図1は、本実施形態の測定システム10(図11参照)で用いられる保持部40を上方斜視図で示したものである。本開示の測定システム10においては、ハウジング20(図8参照)を構成する部材として、図1に示すような保持部40を含んでいてもよい。保持部40は箱形の形状を呈し、上面には測定用開口部43及び識別用開口部44の2つの開口が形成されている。測定用開口部43には光学フィルター45が嵌め込まれている。上面にはさらに光を感知する照明センサ47aと、2つの光源、すなわち、第一発光部49a及び第二発光部49bから構成される表示光源49と、が設けられている。保持部40の側面には、後述の試験片60(図3参照)が挿入される挿入口41が開口している。挿入口41の内部空間は、測定用開口部43及び識別用開口部44とも連通し、測定対象物を適用する試験片60の一部が収容される空間である、収容部46となっている。識別用開口部44における収容部46の側壁には、測定対象物の測定に関連する関連情報、具体的には環境温度、を取得する関連情報取得センサ47bが設けられている。この関連情報取得センサ47bは、非接触式の温度センサで構成されることが望ましい。関連情報取得センサ47bとしての温度センサが設けられる位置はこの位置に限られず、たとえば測定用開口部43の内側のような、試験片60が収容部46に収容された際に後述する測定領域61が位置する部位の近傍に設けることとしてもよい。
【0010】
なお、関連情報としては、温度情報の他に、湿度情報や、二酸化炭素濃度情報など、測定に影響を及ぼす可能性のある情報を挙げることができる。関連情報取得センサ47bは、取得しようとする情報に応じた構造及び性能のセンサにより構成することができる。また、関連情報取得センサ47bとしては、温度センサに限られず、試験片60の挿入回数を検知することもできる挿入検知センサであってもよく、このような挿入検知センサは挿入口41の近傍に設けられることが望ましい。このような挿入検知センサが挿入回数を検知することによって、後述する測定光源42の使用回数を推定できるようになるため、測定対象物の測定に関連する情報である測定光源42の消耗具合を間接的に取得できるようになる。また、関連情報取得センサ47bとして、測定光源42の光量を測定する光量測定センサを設けてもよい。このような光量測定センサによって、測定対象物の測定に関連する情報としての測定光源42の光量の消耗具合を取得できるようになる。
【0011】
図2は、保持部40の挿入口41付近を下方斜視図にて拡大して示したものである。収容部46の内部に設けられた測定光源42(図13参照)からは、測定領域61の撮影に適した波長の光線を含む光が照射される。そして、光学フィルター45は、その撮影に適した波長の光線のみを好適に透過させる光学特性を有する。
【0012】
(2)試験片
図3は、本実施形態の測定システム10(図11参照)で用いられる試験片60を平面視で示したものである。試験片60は平たい棒状の外形を呈する。試験片60の一端には上面側が窪んだ把持部65が形成され、ここを持って手指で試験片60を把持することができる。試験片60の内部には、試験片60の長手方向に沿った長尺形状の試験紙64が収容される。試験紙64は、試験片60の上面に形成された2箇所の開口において上方に露出している。これら2箇所の開口のうち、把持部65に近い方が試料点着部63であり、把持部65から遠い方が測定対象物の測定が行われる測定領域61である。さらに、試験片60の他端側、すなわち、把持部65から最も離れた箇所の上面には、試験片60に関する情報が記録された、識別領域62が形成されている。以下、試験片60について、把持部65に近い側を「上流側」と称し、識別領域62に近い側を「下流側」と称する。
【0013】
試験紙64は、濾紙のような吸水体、又は、合成樹脂製の基板の表面に吸水層が塗布されたものである。試験紙64には、測定対象物と反応して発色する試薬が含有されている。試料点着部63に、測定対象物が含有されると想定される試料が点着される。試料としては、生体から採取される液体検体、たとえば血液若しくは尿又はこれらを適当な溶媒で希釈した希釈液、あるいは、生体から採取された固形物若しくは粘液又はそれらを適当な溶媒に希釈若しくは懸濁した液体検体、等が挙げられる。測定対象物としては、液体検体に含まれる成分、又は、外来の微生物若しくはウイルスに由来する抗原等が挙げられる。
【0014】
図4は、保持部40に試験片60が装着された状態を上方斜視図で示すものである。また、図5は、この状態を平面視で示すものである。図4及び図5に示すように、試験片60は、下流側を先にして、挿入口41から収容部46の内部に挿入される。この状態で、図5に示すように、測定領域61は測定用開口部43と、また、識別領域62は識別用開口部44と、それぞれ同一の平面位置にある。
【0015】
この状態で、試料点着部63にたとえば液体検体が点着されると、試験紙64を毛細管現象にて下流側へ流動していき、測定領域61において液体検体の点着を示すコントロール反応帯が生ずることとなっている。さらに、液体検体中に測定対象物が含まれている場合、その濃度に応じた強さの対象反応帯が生ずる。この対象反応帯に、測定光源42から発する光を照射して、生じた光の強度を測定することによって、本実施形態の測定システム10は測定対象物の濃度を測定する。前記した識別領域62には、たとえば、この試験片60にはどのような種類の試験紙64が収容されているか、といった試験片60に関する情報である識別情報が記録されている。識別情報としては、バーコードやQRコード(登録商標)等が挙げられる。また、後述するように、試験片60が挿入された状態の収容部46内部の環境温度が、関連情報取得センサ47bにより取得される。
【0016】
(3)載置部
図6は、本実施形態の測定システム10(図11参照)で用いられる載置部30を上方斜視図で示すものである。また、図7は、この載置部30を底面視で示すものである。載置部30は、上面及び下面が開放した略直方体形状の紙箱として構成される。載置部30の4側面は垂直に立設された外壁部34となっている。載置部30の上面には、後述の測定デバイス50(図10参照)が載置される枠である装着部32が形成されている。装着部32の内部の一方側(以後、「前方側」と称する。)には、測定窓31を開口しつつ上面が閉塞し、かつ、下面が開放(図7参照)した箱状の遮光部33が形成される。
【0017】
ここで、外壁部34の4面のうち、遮光部33が位置している側の面を正面34a、その反対側の面を背面34b、正面34aから見て左側の面を左側面34c、及びその反対側の面を右側面34dとする。また、載置部30の内部は、正面34a及び背面34bと
平行な補強部35で仕切られている。さらに、左側面34cの前方側下縁には、矩形の切欠部36が形成されている。
【0018】
(4)ハウジング
図7に示すように、遮光部33の下縁と、外壁部34の下縁との間には間隙が生じていて、この間隙を高さとして、四方を正面34a、補強部35、左側面34c及び右側面34dで囲まれた空間を、収容領域37と称する。この収容領域37に、保持部40が装着されると、図8に示すハウジング20が構成される。この状態で、載置部30の切欠部36と、保持部40の挿入口41とが一致している。この状態の挿入口41に、図4及び図5に示すように試験片60が装着された状態は、図9に示す上方斜視図に示すとおりである。この状態で、ハウジング20は、測定対象物の測定に関連する情報である関連情報を取得する関連情報取得センサ47bと、関連情報取得センサ47bによって取得された関連情報に対応した光である表示光を発生させる表示光源49と、を有することとなる。
【0019】
(5)測定デバイス
図10は、本実施形態の測定システム10(図11参照)で用いられる測定デバイス50をハウジング20に載置された状態における底面視で示したものである。本実施形態では、測定デバイス50としてスマートフォンが充てられているが、カメラ機能付きのタブレット端末を測定デバイス50としてもよい。測定デバイス50の底面側(いわゆる裏面)には、カメラとして構成された撮影部51と、その脇の可視光を照射するフラッシュとして構成された照明部52とが設けられている。なお、測定デバイス50の天面側(いわゆる表面)は表示部53となっている。
【0020】
(6)測定システム
図9に示すハウジング20の装着部32の内側に、図10に示す測定デバイス50を、撮影部51及び照明部52を測定窓31に対向させつつ、表示部53を上向きにして載置させることで、図11の上方斜視図に示すような本実施形態の測定システム10が構成される。換言すると、ハウジング20には、測定窓31が形成された装着部32が設けられ、測定デバイス50は、測定窓31に撮影部51が対向するように装着部32に装着される。この状態から、外壁部34のうち正面34a、左側面34c及び右側面34dを除いた状態を示す図12の上方斜視図に示すように、保持部40の測定用開口部43及び識別用開口部44は遮光部33で覆われ、外界からの光の進入が妨げられている。
【0021】
また、図12をXIII-XIII断面で示す図13に示すように、試験片60の測定領域61の上方には測定用開口部43及び光学フィルター45が位置し、また、識別領域62の上方には識別用開口部44が位置している。さらに、識別用開口部44の下方のやや背面側には測定領域61を斜め上方から照射する測定光源42が設置されている。測定用開口部43の真上には、装着部32の測定窓31が位置しており、ここを通して、測定デバイス50の撮影部51が、測定領域61に加えて識別領域62も視野に収めている。すなわち、測定窓31は、装着部32に装着された撮影部51が、試験片60(具体的には測定領域61)及び表示光源49を同時に撮影可能となるような位置に形成される。
【0022】
関連情報取得センサ47bは、収容部46の関連情報としての環境温度を取得する。取得された環境温度は、後述する対応記憶部250(図14参照)によって、関連情報に対応した光量の表示光に対応づけられる。表示光源49を構成する第一発光部49a及び第二発光部49bはそれぞれ、光源制御部48による制御を介して対応づけられた表示光を発生させる。換言すると、表示光源49は複数の発光部を備え、複数の発光部の位置及び表示光の組み合わせによって関連情報が表現される。環境温度と表示光とは、たとえば、下記表1に示すように対応づけられる。
【0023】
【表1】
【0024】
上記表1に示すように、第一発光部49a及び第二発光部49bはそれぞれ、最大光量を100%としたとき、0%、25%、50%、75%及び100%の5段階に光量が調光される。なお、この光量の段階は5段階に限られず、任意の複数段階とすることができる。そして、第一発光部49a及び第二発光部49bのそれぞれの光量の組み合わせで、25通りの環境温度が表示される。ここで、上記表中の温度は、たとえば、関連情報取得センサ47bが取得した環境温度の小数第一位を四捨五入した温度としてもよく、又は、切り上げ若しくは切り捨てた温度としてもよい。また、表示光源49のうちの一方、たとえば第二発光部49bを0%から100%まで無段階に調光することが可能な光源で構成して、小数点以下の環境温度を表現可能とすることもできる。
【0025】
さらに、表示光源49は、上記のような光量の調整による発光のほか、たとえば、発光の点滅の周波数(Hz)(すなわち、単位時間当たりの点滅回数)又は点滅の回数(すなわち、連続して何回点滅したか)などで上記表1のような組み合わせによる環境温度を表示するように構成することも可能である。また、点灯の時間幅と消灯の時間幅とをそれぞれ変化させつつ所定回数点滅させ、このパターンにより環境温度を表示するように構成することとしてもよい。さらに、後述する撮影部51(図14参照)で表示光源49の点滅を動画で撮影し、撮影した動画を後述する制御部100(図14参照)で分析することで、環境温度を判定することとしてもよい。
【0026】
また、表示光源49は、表示光とは別に、表示光の強さの基準となる基準光量を有する基準光を発生させることが可能である。この基準光量は、上記した100%の最大光量であることが望ましいが、任意の光量を基準光量とすることもできる。
【0027】
なお、表示光源49は、上記のような2個の光源により構成されている必要はなく、1個の光源又は3個以上の光源で構成することも可能である。さらに、表示光源49で表示する関連情報は、上記のような収容部46の環境温度には限定されず、たとえば、収容部46の環境湿度又は二酸化炭素濃度でも、上述のような対応関係で表現することは可能であり、また関連情報だけではなく、前述の試験片60の挿入回数や測定光源42の消耗具合などの情報であっても、上述のような対応関係で表現することは可能である。
【0028】
図14は、本実施形態の測定システム10を機能ブロック図で表したものである。測定デバイス50には、図10に示す撮影部51及び照明部52並びに図11に示す表示部53、並びにこれらを制御する制御部100が設けられている。制御部100は、後述するCPU110、ROM120、RAM130及び記憶装置150をコンピュータのハードウェア資源として利用することで、以下の各部として機能する。
【0029】
すなわち、制御部100は、照明部52による照明のオン/オフ(点灯/消灯)を切り替える照明切替部200として機能する。照明切替部200は、具体的には測定デバイス50にインストールされたアプリケーションとして実現することができるが、他にも、保持部40との間の電気的又は光学的なセンシングを利用した部として、あるいは、保持部40との間の無線通信部(たとえば、Bluetooth(登録商標)等)として実現することもできる。また、制御部100は、撮影部51による撮影の条件が記憶される撮影条件記憶部210として機能する。撮影条件として規定される条件には、たとえば、測定対象物と試薬との反応に要する待機時間が含まれる。また、制御部100は、撮影部51を通じて、試験片60への試料の点着を検出する点着検出部220として機能する。また、制御部100は、待機時間を計測する待機時間計測部230として機能する。そして、制御部100は、撮影部51によって撮影された測定領域61の画像を記憶する情報記憶部240として機能する。
【0030】
さらに、制御部100は、関連情報と表示光との対応関係をあらかじめ記憶した対応記憶部250として機能する。また、制御部100は、撮影部51が撮影した表示光の画像を解析して表示光を特定し、特定した表示光を対応記憶部250に記憶された対応関係に当て嵌めて、関連情報を特定する情報特定部260として機能する。また、制御部100は、測定領域61に装着された試験片60に適用された測定対象物を、撮影部51が撮影した画像を基に測定して、測定値を取得する測定部270として機能する。換言すると、測定デバイス50は、収容部に収容された試験片60に適用された測定対象物を測定して、測定値を取得する測定部270を備える。さらに、制御部100は、測定部270によって取得した測定値を、情報特定部260が特定した関連情報に基づき補正する補正部280として機能する。
【0031】
制御部100は、図15のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130及び記憶装置150を有する。各構成は、バス190を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU110は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU110は、ROM120又は記憶装置150からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行する。CPU110は、ROM120又は記憶装置150に記録されているプログラムに従って、測定システム10の制御を行う。
【0033】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶装置150は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリによるストレージとして構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0034】
一方、ハウジング20の一部である保持部40は、測定領域61を照射する測定光源42と、照明部52のオン/オフ(点灯/消灯)を検出する照明センサ47aと、照明センサ47aからの信号が入力されると測定光源42を点灯させる光源制御部48とを備える。さらに、保持部40は、前記した関連情報取得センサ47bと、第一発光部49a及び第二発光部49bから構成される表示光源49とをさらに備える。そして、光源制御部48は、表示光源49による表示光の発生を制御するとともに、表示光と基準光とを切り替えて表示光源49を発光させる。すなわち、ハウジング20は、表示光源49による表示光の発生を制御する光源制御部48を備える。光源制御部48は、測定デバイス50の制御部100と同様に、コンピュータのハードウェア資源として構成される。なお、光源制御部48は、後述の測定領域61の撮影時に測定光源42を点灯させる制御を行うことができるものであれば、照明センサ47aからの信号の入力態様の如何(たとえば、有線又は無線)を問わずに測定光源42を点灯させることを実現できる。また、光源制御部48は測定光源42を消灯させる制御も行うことができる。光源制御部48には、対応記憶部250に記憶された対応関係と同じ対応関係が記憶されている。
【0035】
上述のとおり、本実施形態の測定システム10は、測定領域61及び識別領域62を有する試験片60が挿入される挿入口41と、挿入口41から挿入された試験片60を内部に収容する収容部46と、収容部46に収容された試験片60に対向する測定窓31を有するハウジング20と、収容部46に収容された試験片60の識別領域62を照明する照明部52及び測定領域61及び識別領域62を撮影する撮影部51を有する測定デバイス50と、で構成される。ハウジング20は、撮影部51及び照明部52を測定窓31に面する位置に配置した状態で測定デバイス50を外面に載置する載置部30と、収容部46に収容された試験片60を内部に保持する保持部40と、保持部40の内部において測定領域61を照射する位置に設けられた測定光源42と、を有する。そして、この測定システム10では、後述するように、撮影部51による測定領域61の撮影時には測定光源42を点灯しつつ照明部52を消灯し、撮影部51による識別領域62の撮影時には照明部52を点灯する。このように構成されていることで、本実施形態の測定システム10では、試験片60に複数の撮影領域(すなわち、測定領域61及び識別領域62)がある場合、撮影領域に応じて適切な光源を用いた撮影を行うことができる。
【0036】
さらに、本実施形態の測定システム10は、測定対象物の測定に関連する情報である関連情報を取得する関連情報取得センサ47bと、関連情報取得センサ47bによって取得された関連情報に対応した光である表示光を発生させる表示光源49と、を有するハウジング20を備えるとともに、関連情報と表示光との対応関係(たとえば、前記した表1に示すような対応関係)をあらかじめ記憶した対応記憶部250と、表示光を撮影して画像を取得する撮影部54と、画像を解析して表示光を特定し、特定した表示光を対応記憶部250に記憶された対応関係に当て嵌めて、関連情報を特定する情報特定部260と、を有する測定デバイス50も備える。そして、情報特定部260は、撮影部51が撮影した基準光を基に、撮影部51が撮影した表示光の強さを特定する。このとき、情報特定部260は、表示光源49を構成する複数の発光部の位置を特定し、その特定した位置ごとに、表示光を特定する。
【0037】
ここで、照明部52による照明のオン/オフ(点灯/消灯)を切り替える照明切替部200として機能する制御部100は、識別領域62の撮影時には照明部52を点灯させるとともに、測定領域61の撮影時には照明部52を消灯させるように制御することができる。また、光源制御部48は、測定領域61の撮影時には測定光源42を点灯させるように制御することができる。また、測定光源42の消耗を防ぐ観点から、光源制御部48は、識別領域62の撮影時には測定光源42を消灯するように制御することが好ましい。
【0038】
ここで前記したように、測定領域61は、試験片60での測定対象物を測定する領域であり、識別領域62は試験片60の識別情報が記録されている領域である。測定領域では、対象反応帯において測定対象物と特異的に反応する試薬による発色や、測定対象物と特異的に結合する試薬による測定対象物の捕捉等によって、試料中の測定対象物を検出する。識別領域としては、たとえば、バーコードやQRコード(登録商標)等が付された領域が挙げられる。識別領域に記録される識別情報としては、試験片60に収容される試験紙64の種類、試験片60に適した測定条件、試験片60のロット情報などが挙げられる。また、測定光源42は、測定領域としての測定領域61において測定対象物の検出に適した光源である。たとえば、測定領域61の対象反応帯において測定対象物と反応する物質が紫外光に吸収を持つ場合、測定光源42は紫外光とすることで適切な撮影を行うことができる。なお、これによって、測定領域61の撮影には、測定対象物に応じた波長の測定光源42を用い、識別領域62の撮影には測定デバイス50の照明部52を光源として用いることができる。
【0039】
照明部52は、一般的に可視光を照射する測定デバイス50のフラッシュであるため、識別領域62は可視光で測定することができる対象物を含む領域であることが好ましい。
【0040】
なお、撮影部51による識別領域62の撮影時には、照明部52を点灯しつつ測定光源42を消灯することが望ましい。これによって、測定光源42を測定領域61の撮影に必要な際にのみ点灯することができるので、測定光源42の消耗を防ぐことができる。
【0041】
(7)測定システムによる関連情報の特定方法
本実施形態の測定システム10による関連情報としての環境温度の特定方法の一例を、図16のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、このフローチャートでは、測定デバイス50が直接行う動作以外の操作を示す段階については、括弧書きでその概要を表示している。
【0042】
まず、図11に示すように、載置部30に保持部40を装着したハウジング20に、測定デバイス50を載置した測定システム10を準備し、挿入口41から試験片60を挿入する。この段階で、表示部53(図11及び図14参照)の画面が操作されると、測定デバイス50にインストール済の測定用のアプリケーションが起動され、測定に先立ち、環境温度の測定が開始される。
【0043】
最初に、S10に示す段階において、光源制御部48が、表示光源49の発光態様を切り替え、表示光源49(第一発光部49a及び第二発光部49b)から、前記した基準光量を有する基準光を発生させる。次いで、S20に示す段階において、撮影部51が、表示光源49から発生された基準光を撮影し、この基準光の光量を基準光量として情報記憶部240に画像データとして記憶させる。記憶された基準光量は表示光の最大光量である100%とされ、以下の段階で参照される。なお、これら2つの段階は任意であり、たとえば、一日のうち最初の測定のみに、基準光量の校正として実施し、その後の測定では、最初の測定で記憶された基準光量を使用するようにしてもよい。また、所定の測定回数を経た時点で、改めてS10に示す段階で基準光を発生させ、次いでS20に示す段階でこの基準光を基準光量として記憶させることで、基準光の校正を適宜やり直すこととしてもよい。
【0044】
一方、保持部40では、S30に示す段階において、関連情報取得センサ47bが、収容部46の環境温度を、関連情報として取得する。取得された環境温度は、S40に示す段階において、光源制御部48によって、前記した表1に示すような対応関係が参照され、第一発光部49a及び第二発光部49b各々の光量が決定される。次いで、S50に示す段階において、第一発光部49a及び第二発光部49bは各々、光源制御部48によって決定された光量で、表示光を発生させる。
【0045】
そして、S60に示す段階において、撮影部51が、表示光源49から発生された表示光を発光画像として撮影し、これを画像データとして取得する。次いで、S70に示す段階において、情報特定部260は、発光画像の画像データから、複数の発光部、すなわち、第一発光部49a及び第二発光部49bの位置を特定する。換言すると、画像データに2つ存在する発光画像のうち、どちらが第一発光部49aによるもので、どちらが第二発光部49bによるものかを特定する。
【0046】
次いで、S80に示す段階において、情報特定部260は、発光画像の光量を、S20に示す段階で情報記憶部240に記憶された基準光量で除して、第一発光部49a及び第二発光部49bのそれぞれについて表示光の光量を特定する。そして、S90に示す段階に進んで、情報特定部260は、対応記憶部250に記憶された対応関係に、特定された表示光の光量を当て嵌めて、関連情報としての温度情報を特定する。特定された温度情報は、情報記憶部240に記憶され、後述する測定値の補正に利用される。
【0047】
なお、上記の実施形態では、表示光源49に基準光を発生させ、次いで表示光を発生させることとしているが、これに限られず、表示光源49に表示光を発生させてから、基準光を発生させてもよい。具体的には、図16中のS10及びS20に示す段階を、S60に示す段階の後で実行することとしてもよい。
【0048】
(8)測定システムによる測定対象物の測定方法
本実施形態の測定システム10による測定対象物の測定方法の一例を、図17及び図18のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、これらのフローチャートでは、測定デバイス50が直接行う動作以外の操作を示す段階については、括弧書きでその概要を表示している。
【0049】
最初に、図17のS100に示す段階において、照明切替部200(図14参照)が、照明部52を点灯させる。この段階では、保持部40の測定光源42は消灯している。次いで、S110に示す段階において、撮影部51が、照明部52を光源として、識別領域62を撮影する。撮影が完了すると、S120に示す段階へ進む。
【0050】
S120に示す段階では、制御部100は、撮影された識別領域62の画像から、撮影条件記憶部210(図14参照)を参照して、当該試験片60による測定に際しての撮影条件を取得する。
【0051】
一方、この間に、測定者によって、試験片60の試料点着部63(図3参照)に、適量の試料が点着される。点着された試料は、試験片60の内部で試験紙64(図3参照)により下流側へ展開される。
【0052】
この間、制御部100の点着検出部220(図14参照)は、S140に示す段階において、撮影部51からの画像を通じて、測定領域61において、点着が完了したことを示す画像(たとえば、測定対象物との反応で生じたコントロール反応帯)が検出されたかどうかを監視し続ける。かかる画像が検出されると、S150に示す段階へ進む。
【0053】
S150に示す段階では、S140に示す段階における点着の完了の検出後、制御部100の待機時間計測部230(図14参照)が、S120に示す段階で取得した撮影条件のうち、試験紙64における測定対象物と試薬との反応に要する待機時間が経過したかどうかを監視し続ける。
【0054】
S150に示す段階において、待機時間計測部230によって、待機時間が経過したと判断されると、S160に示す段階で、照明切替部200が、照明部52を消灯させる。
【0055】
一方、S170に示す段階において、保持部40では、照明部52の消灯を照明センサ47a(図1及び図14参照)を通じて光源制御部48が検知すると、測定光源42を点灯させる。
【0056】
測定光源42が点灯すると、S180に示す段階において、撮影部51が、測定領域61において測定光源42の波長で可視化される対象反応帯を撮影する。撮影が完了すると、保持部40の光源制御部48は、測定光源42を消灯させる。なお、撮影された画像は情報記憶部240(図14参照)に記憶され、その後、図18のS200に示す段階における、測定部270による測定値(具体的には測定対象物の含有量)の取得に供される。
【0057】
S200に示す段階で取得された測定値は、S210に示す段階において、前記した図16のS90に示す段階で取得されて情報記憶部240に記憶されている関連情報としての環境温度を参照して、補正部280により必要な補正が施される。たとえば、環境温度以外を同一条件として測定対象物をあらかじめ測定しておき、環境温度と、測定値の環境温度による変化率との関係をあらかじめ検量線情報として情報記憶部240に記憶させておき、取得された測定値に、環境温度から得られる変化率を乗ずることで、測定値を補正することができる。
【0058】
(9)その他
上記の実施形態の測定システム10は、載置部30に別体の保持部40が組み合わされてハウジング20が形成されていたが、ハウジング20は、載置部30と保持部40とが一体となった構造であってもよい。その場合、ハウジング20に挿入口41が設けられ、その奥に設けられる空間が収容部46となる。そして、挿入口41から試験片60が挿入され、収容部46に収容された試験片60の測定領域61及び識別領域62が、上述の実施形態と同様に測定デバイス50の撮影部51による撮影に供されることになる。
【0059】
また、試験片60は、上記の実施形態で記述したような、内部に試験紙64を収容した構造となっているが、たとえば尿試験紙のような試験紙64そのものを試験片60としてもよい。この場合、試験片60としての試験紙64の上に、測定領域61のみならず識別領域62が設けられることになる。またこの場合、試験紙64の材質については、上記の実施形態でも記載したように、濾紙のような吸水体、又は、合成樹脂製の基板の表面に吸水層が塗布されたものを使用することができる。
【0060】
なお、上記の実施形態では、関連情報の特定は、測定対象物の測定に先立って実施されることとしたが、本開示はこれに限定されない。たとえば、測定対象物の測定の途中又は後で、関連情報の特定を行うこととしてもよい。たとえば、図17のS100からS190までの途中の段階で関連情報の特定を行ってもよい。その際、たとえば、S160に示す段階の照明部52の消灯を保持部40の照明センサ47aが検知することを契機として、光源制御部48が、S10に示すように表示光源49に基準光を発生させることとしてもよい。あるいは、図18のS200に示す段階の後で、関連情報の特定を行うこととしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、試料中の測定対象物を試験片で展開して光学的に検出する測定システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 測定システム
20 ハウジング
31 測定窓
32 装着部
46 収容部
47b 関連情報取得センサ
48 光源制御部
49 表示光源
49a 第一発光部
49b 第二発光部
50 測定デバイス
51 撮影部
60 試験片
61 測定領域
250 対応記憶部
260 情報特定部
270 測定部
280 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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