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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066465
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】避雷ワイヤー断線位置測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20240508BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20240508BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20240508BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20240508BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01R31/08
G01S13/88
F03D80/50
F03D80/30
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176928
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2022175176の分割
【原出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】520470213
【氏名又は名称】鈴木 勇祐
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【テーマコード(参考)】
2G033
3H178
5J070
【Fターム(参考)】
2G033AA05
2G033AB01
2G033AC01
2G033AD10
2G033AE05
2G033AF01
2G033AF04
2G033AG09
2G033AG14
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178BB79
3H178CC02
3H178DD70X
5J070AB17
5J070AC02
(57)【要約】
【課題】 高ノイズ環境下であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することのできる避雷ワイヤー断線位置測定システムを提供する。
【解決手段】 避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、搬送波信号を出力するとともに、搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて連続的に周波数が変化するノイズ除去用信号を出力する。搬送波信号に含まれる各変調フレームに対してノイズ除去用信号で変調を行って、避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成し、避雷ワイヤーの端部から測定用信号を入力する。避雷ワイヤーからの反射信号を復調して復調信号を生成し、復調信号とノイズ除去用信号との相関を検出し、相関が最小の周波数fminに基づいて、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離Ldを算出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避雷ワイヤーの断線位置を測定する避雷ワイヤー断線位置測定システムであって、
所定の計測周期においてステップ状に周波数が遷移する搬送波信号であって、各ステップでは一定の周波数が持続する搬送波信号を出力する搬送波信号出力部と、
前記搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて連続的に周波数が変化するノイズ除去用信号を出力するノイズ除去用信号出力部と、
前記搬送波信号に含まれる各変調フレームに対して前記ノイズ除去用信号で変調を行って、前記避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成する測定用信号生成部と、
前記避雷ワイヤーの端部から前記測定用信号を入力する測定用信号入力部と、
前記避雷ワイヤーからの反射信号を取得する反射信号取得部と、
前記反射信号を復調して復調信号を生成する復調信号生成部と、
前記復調信号と前記ノイズ除去用信号との相関を検出する相関処理を行う相関処理部と、
前記相関処理により検出された相関が最小の周波数に基づいて、前記避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離を算出する断線位置算出部と、
を備える、避雷ワイヤー断線位置測定システム。
【請求項2】
前記ノイズ除去用信号は、チャープ信号または疑似ランダム信号である、請求項1に記載の避雷ワイヤー断線位置測定システム。
【請求項3】
避雷ワイヤーの断線位置を測定する避雷ワイヤー断線位置測定システムで実行される方法であって、
前記方法は、
所定の計測周期においてステップ状に周波数が遷移する搬送波信号であって、各ステップでは一定の周波数が持続する搬送波信号を出力する搬送波信号出力ステップと、
前記搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて連続的に周波数が変化するノイズ除去用信号を出力するノイズ除去用信号出力ステップと、
前記搬送波信号に含まれる各変調フレームに対して前記ノイズ除去用信号で変調を行って、前記避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成する測定用信号生成ステップと、
前記避雷ワイヤーの端部から前記測定用信号を入力する測定用信号入力ステップと、
前記避雷ワイヤーからの反射信号を取得する反射信号取得ステップと、
前記反射信号を復調して復調信号を生成する復調信号生成ステップと、
前記復調信号と前記ノイズ除去用信号との相関を検出する相関処理を行う相関処理ステップと、
前記相関処理により検出された相関が最小の周波数に基づいて、前記避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離を算出する断線位置算出ステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷ワイヤーの断線位置を測定する機能を備えた避雷ワイヤー断線位置測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風力発電機のブレード内に設けられている避雷導線(避雷ワイヤー)に断線が生じているか否かを検査する方法が提案されている。例えば、従来の方法では、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射率測定)法を用いて避雷ワイヤーの断線の
有無を検査することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-150324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、TDR法を用いているため、避雷ワイヤーに誘起する外来電磁波ノイズに対して脆弱であるという問題がある。また、TDR法では、原理的に広い周波数帯域を対象とするため、高いノイズフロアとなってしまう。この場合、外来電磁波ノイズで誘起する電圧は外部要因であり、高いノイズフロアは装置の内部要因であるが、これらはともにS/N(シグナルノイズ比)を悪化させるため、計測用信号源(短パルス波)は高い出力を必要とする。ところが、高い出力のパルスを生成する場合には、短パルスを発生させることが難しくなり、測定分解能を低下させる結果となる。
【0005】
また、風力発電機は、その目的上、周囲に障害物がない山上や海上など、比較的、外来電磁波ノイズ(例えば放送波、レーダー波など)を受けやすい場所に設置される。通常、風車のブレードの長さは30~80m程度であり、避雷ワイヤーが健全な場合に効率良く誘起する周波数帯は1~6MHzであるが、この周波数帯には中波放送や短波放送が割り当てられている。電界強度は、送信局の出力・送信局からの距離・大地導電率などによって変動するが、数mV/mから数百mV/mとなる。
【0006】
例えば、「送信周波数:1MHz、送信電力:300kW、送信アンテナ:0.53λ垂直設置アンテナ、大地比誘電率:10、大地低効率100Ω・m、送信局からの距離30km」という条件を仮定して、測定装置の入力端に生じる電圧を算出すると、2.68Vとなる。このように放送波の1つのみを考慮しても、大きな電圧が測定装置に印加される。実際の環境では、さらに多くの人口ノイズ、自然ノイズが加わることが想定されるため、それらを考慮するとS/Nの良い測定を行うのは困難である。
【0007】
なお、断線個所までの距離は、ブレード長よりも短いので、影響を受ける周波数は高い方にシフトする。仮に、断線個所までの距離が10mであった場合、15MHz~40MHzの周波数帯で影響を強く受ける。また、避雷ワイヤーに誘起する電圧は、断線長に基づく共振周波数以外でも生じる。一般に、避雷ワイヤーはシールド構造にもなっておらず、外来電磁波に常に曝露され、常時、何らかの電圧が誘起しているため、精度の高い測定を行うのは困難である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、高ノイズ環境下であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することのできる避雷ワイヤー断線位置測定システムを提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の避雷ワイヤー断線位置測定システムは、避雷ワイヤーの断線位置を測定する避雷ワイヤー断線位置測定システムであって、所定の計測周期においてステップ状に周波数が遷移する搬送波信号であって、各ステップでは一定の周波数が持続する搬送波信号を出力する搬送波信号出力部と、前記搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて連続的に周波数が変化するノイズ除去用信号を出力するノイズ除去用信号出力部と、前記搬送波信号に含まれる各変調フレームに対して前記ノイズ除去用信号で変調を行って、前記避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成する測定用信号生成部と、前記避雷ワイヤーの端部から前記測定用信号を入力する測定用信号入力部と、前記避雷ワイヤーからの反射信号を取得する反射信号取得部と、前記反射信号を復調して復調信号を生成する復調信号生成部と、前記復調信号と前記ノイズ除去用信号との相関を検出する相関処理を行う相関処理部と、前記相関処理により検出された相関が最小の周波数に基づいて、前記避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離を算出する断線位置算出部と、を備えている。
【0010】
この構成によれば、避雷ワイヤーからの反射信号に外来電磁波ノイズが混入している場合でも、反射信号を復調した復調信号に対してノイズ除去用信号を用いた相関処理を行うことにより、相関が最小の周波数を検出するときに外来電磁波ノイズの影響を軽減することができる。このように検出された相関が最小の周波数に基づいて、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離(避雷ワイヤーの断線位置)が算出されるので、高ノイズ環境下(例えば、外来電磁波ノイズを受けやすい場所に設置される風力発電用のブレード内に設けられる避雷ワイヤー)であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することが可能になる。
【0011】
また、本発明の避雷ワイヤー断線位置測定システムでは、前記ノイズ除去用信号は、チャープ信号または疑似ランダム信号であってもよい。
【0012】
この構成によれば、反射信号を復調した復調信号に対してチャープ信号または疑似ランダム信号を用いた相関処理を行うことにより、相関が最小の周波数を検出するときに外来電磁波ノイズの影響を軽減することができる。
【0013】
本発明の方法は、避雷ワイヤーの断線位置を測定する避雷ワイヤー断線位置測定システムで実行される方法であって、前記方法は、所定の計測周期においてステップ状に周波数が遷移する搬送波信号であって、各ステップでは一定の周波数が持続する搬送波信号を出力する搬送波信号出力ステップと、前記搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて連続的に周波数が変化するノイズ除去用信号を出力するノイズ除去用信号出力ステップと、前記搬送波信号に含まれる各変調フレームに対して前記ノイズ除去用信号で変調を行って、前記避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成する測定用信号生成ステップと、前記避雷ワイヤーの端部から前記測定用信号を入力する測定用信号入力ステップと、前記避雷ワイヤーからの反射信号を取得する反射信号取得ステップと、前記反射信号を復調して復調信号を生成する復調信号生成ステップと、前記復調信号と前記ノイズ除去用信号との相関を検出する相関処理を行う相関処理ステップと、前記相関処理により検出された相関が最小の周波数に基づいて、前記避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離を算出する断線位置算出ステップと、を含んでいる。
【0014】
この方法によっても、上記のシステムと同様に、雷ワイヤーからの反射信号に外来電磁波ノイズが混入している場合でも、反射信号を復調した復調信号に対してノイズ除去用信号を用いた相関処理を行うことにより、相関が最小の周波数を検出するときに外来電磁波
ノイズの影響を軽減することができる。このように検出された相関が最小の周波数に基づいて、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離(避雷ワイヤーの断線位置)が算出されるので、高ノイズ環境下(例えば、外来電磁波ノイズを受けやすい場所に設置される風力発電用のブレード内に設けられる避雷ワイヤー)であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高ノイズ環境下であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における避雷ワイヤー断線位置測定システムのブロック図である。
図2】本発明の実施の形態における搬送波信号とノイズ除去用信号(チャープ信号)の説明図である。
図3】本発明の実施の形態におけるノイズ除去用信号(チャープ信号)の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における測定用信号の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における反射信号(外来電磁波ノイズがない場合)の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における相関処理の結果(外来電磁波ノイズがない場合)の一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における反射信号(外来電磁波ノイズがある場合)の一例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における相関処理の結果(外来電磁波ノイズがある場合)の一例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の避雷ワイヤー断線位置測定システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、風力発電機のメンテナンスシステム等に用いられる避雷ワイヤー断線位置測定システムの場合を例示する。
【0018】
本発明の実施の形態の避雷ワイヤー断線位置測定システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の避雷ワイヤー断線位置測定システムの構成を示すブロック図である。この避雷ワイヤー断線位置測定システムは、風力発電機のブレード内に設けられている避雷ワイヤーの断線位置を測定する機能を備えている。
【0019】
図1に示すように、避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、基準タイミング信号を生成する基準タイミング生成部2と、計測周期を生成する計測周期生成部3と、変調フレームタイミングを生成する変調フレームタイミング生成部4を備えている。図2に示すように、基準タイミングは、計測周期と変調フレームの同期のためのクロック信号として用いられる基準タイミング信号(例えば10Hzのパルス信号)を生成する。計測周期生成部3は、基準タイミング生成部2から出力される基準タイミング信号に基づいて、所定の計測周期のタイミング(例えば、搬送波信号が1~600MHzの1MHzステップを0.1秒の持続時間で出力する場合には、計測周期が60秒となる)を生成する。変調フレームタイミング生成部4は、基準タイミング生成部2から出力される基準タイミング信号に基づいて、各変調フレームのタイミング(各1MHzステップで変調信号(1~100KHz)を出力する場合には、0.1秒毎のタイミングとなる)を生成する。
【0020】
避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、計測周期生成部3から出力される計測周期に基づいて搬送波信号を発振する掃引発振器5と、変調フレームタイミング生成部4から出力される変調フレームのタイミングに基づいて、ノイズ除去用信号としてのチャープ信号を生成するチャープ信号を発振するチャープ信号発振器6を備えている。搬送波信号は、図2に示すように、計測周期においてステップ状に周波数が遷移し、各ステップでは一定の周波数が持続する信号である。また、チャープ信号は、図2および図3に示すように、搬送波信号の各ステップに対応する変調フレームにおいて、連続的に周波数が変化する信号である。ここでは、掃引発振器5が、本発明の搬送波信号出力部に相当し、チャープ信号発振器6が、本発明のノイズ除去用信号出力部に相当する。なお、掃引発振器5は、周波数をステップ状に掃引するものに限られず、周波数を連続的に掃引してもよい。また、ノイズ除去用信号は、チャープ信号に限られず、疑似ランダム信号が用いられてもよい。
【0021】
また、避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、搬送波信号に含まれる各変調フレームに対してノイズ除去用信号で変調を行って、避雷ワイヤーの断線位置を測定するための測定用信号を生成する変調器7を備えている。図4には、このようにして生成された測定用信号の一例が示されている。ここでは、変調器7が、本発明の測定用信号生成部に相当する。なお、変調器7は、測定用信号として、FMCW(Frequency Modulated Continuous
Wave:周波数連続変調波)を生成するように構成されていてもよい。
【0022】
避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、変調器7から出力された測定用信号を増幅するための広帯域アンプ8と、広帯域アンプ8で増幅された測定用信号が入力される方向性結合器9と、方向性結合器9から出力される測定用信号を避雷ワイヤーの端部に入力するためのプローブ10を備えている。プローブ10から避雷ワイヤーに測定用信号を入力すると、避雷ワイヤーから反射信号(反射波)が返ってくる。このとき、例えば、図9に示すように、ブレードBの内部に設けられる避雷ワイヤーWのある位置Qで断線が発生している場合には、避雷ワイヤーWの端部Pからプローブ10を介して測定用信号が入力されると、断線位置Qに応じた反射信号が反射波として得られ、方向性結合器9に入力される。図5には、外来電磁波ノイズがない場合の反射信号の例が示される。ここでは、プローブ10が、本発明の測定用信号入力部に相当し、方向性結合器9が、本発明の反射信号取得部に相当する。
【0023】
避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、方向性結合器9から出力された反射信号を増幅するための広帯域アンプ11と、広帯域アンプ11で増幅された反射信号が入力される復調器12を備えている。復調器12は、反射信号を復調して復調信号を生成する。ここでは、復調器12が、本発明の復調信号生成部に相当する。なお、変調器7が、測定用信号としてFMCWを生成するように構成されている場合には、復調器12は、FMCWを復調するように構成することができる。
【0024】
避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、復調器12から出力される復調信号とチャープ信号発振器6から出力されるチャープ信号との相関を検出する相関処理を行う相関処理器13と、相関処理により検出された相関が最小の周波数fmimに基づいて、避雷ワイヤ
ーの端部から断線位置までの距離Ldを算出する計測処理器14を備えている。図6には、外来電磁波ノイズがない場合の反射信号の例が示される。図6の例では、相関が最小の周波数fmimが1.5MHzである。この場合、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの
距離Ldは、40mと算出される。また、相関が最小の周波数fmimが5MHzの場合に
は、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離Ldは、12mと算出される。ここでは、相関処理器13が、本発明の相関処理部に相当し、計測処理部が、本発明の断線位置算出部に相当する。
【0025】
このような本実施の形態の避雷ワイヤー断線位置測定システム1によれば、避雷ワイヤーからの反射信号に外来電磁波ノイズが混入している場合でも、反射信号を復調した復調信号に対してノイズ除去用信号を用いた相関処理を行うことにより、相関が最小の周波数を検出するときに外来電磁波ノイズの影響を軽減することができる。このように検出された相関が最小の周波数に基づいて、避雷ワイヤーの端部から断線位置までの距離(避雷ワイヤーの断線位置)が算出されるので、高ノイズ環境下(例えば、外来電磁波ノイズを受けやすい場所に設置される風力発電用のブレード内に設けられる避雷ワイヤー)であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することが可能になる。
【0026】
例えば、図7には、外来電磁波ノイズがある場合の反射信号の例が示される。このような外来電磁波ノイズがある場合であっても、反射信号を復調した復調信号に対してノイズ除去用信号を用いた相関処理を行うことにより、図8に示すように、相関が最小の周波数fmimを検出するときに外来電磁波ノイズの影響を軽減することができ、避雷ワイヤーの
端部から断線位置までの距離Ld(避雷ワイヤーの断線位置)を精度よく測定することができる。
【0027】
本実施の形態では、反射信号を復調した復調信号に対してチャープ信号(または疑似ランダム信号)を用いた相関処理を行うことにより、相関が最小の周波数を検出するときに外来電磁波ノイズの影響を軽減することができる。
【0028】
従来のようにTDR法を用いた測定方法は、原理的に広帯域信号処理系を有する必要があり、より種々のノイズの影響を受けやすくなるだけでなく、広帯域信号処理系自体のノイズフロアが高いのでS/Nの良い計測を行うことは困難である。これに対し、本実施の形態では、変調フレーム(図2参照)分の狭い帯域幅の信号処理系でよいため、ノイズフロアは大幅に低くなる。例えば、TDR法を用いた測定方法で必要とされる帯域幅が1GHzであるとすると、本実施の形態で必要とされる帯域幅は1MHz程度でよいので、約30dBの大幅な改善(ノイズ除去効果)が見込まれる。そのうえ、チャープ信号(または疑似ランダム信号)により処理利得が約10dB得られるので、全体として約40dBのノイズ除去効果が得られる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0030】
例えば、本発明の避雷ワイヤー断線位置測定システム1は、1つの装置として構成することも可能であるが、複数の装置に分割して構成されてもよい。例えば、避雷ワイヤー断線位置測定システム1の一部の機能をドローンに搭載し、避雷ワイヤー断線位置測定システム1の残りの機能を地上装置に搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる避雷ワイヤー断線位置測定システムは、高ノイズ環境下であっても、避雷ワイヤーの断線位置を精度よく測定することができるという効果を有し、風力発電機のメンテナンスシステム等に適用され、有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 避雷ワイヤー断線位置測定システム
2 基準タイミング生成部
3 計測周期生成部
4 変調フレームタイミング生成部
5 掃引発振器(搬送波信号出力部)
6 チャープ信号発振器(ノイズ除去用信号出力部)
7 変調器(測定用信号生成部)
8 広帯域アンプ
9 方向性結合器(反射信号取得部)
10 プローブ(測定用信号入力部)
11 広帯域アンプ
12 復調器(復調信号生成部)
13 相関処理器(相関処理部)
14 計測処理器(断線位置算出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9