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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066467
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】クレアチン化合物含有剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20240508BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61K31/197
A61P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178051
(22)【出願日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2022175723
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】森戸 暁久
(72)【発明者】
【氏名】下益田 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】井草 大地
(72)【発明者】
【氏名】稲見 崇孝
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】神武 直彦
(72)【発明者】
【氏名】永田 直也
(72)【発明者】
【氏名】村山 光義
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA32
4C206KA11
4C206KA14
4C206KA15
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA94
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筋の硬さ軽減作用を有する医薬品、医薬部外品、飲食品等を提供すること。
【解決手段】クレアチン化合物を含有することを特徴とする、筋の硬さ軽減剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレアチン化合物を含有することを特徴とする、筋の硬さ軽減剤。
【請求項2】
クレアチン化合物を含有することを特徴とする、筋のハリ緩和剤。
【請求項3】
クレアチン化合物を含有することを特徴とする、運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進剤。
【請求項4】
1日あたり、クレアチン化合物を0.001~20g投与又は摂取する、請求項1~3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
クレアチン化合物が、クレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン無水物、クレアチンリン酸塩、クレアチンクエン酸塩、クレアチン塩酸塩、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、クレアチンオロト酸塩、クレアチンピルビン酸塩、クレアチンマレイン酸塩、クレアチンリン酸エステル、クレアチン硝酸エステル、クレアチンマレイン酸エステル、クレアチンメチルエステル、クレアチンエチルエステル、クレアチン硫酸エステル、クレアチンロイシナート、グルコン酸クレアチン、シクロクレアチン、ポリエチレングリコシレートクレアチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋の硬さ軽減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉は、横紋筋と平滑筋に分けられ、横紋筋には心筋と骨格筋がある。骨格筋の連続的な収縮負荷を行った後や不慣れな運動にチャレンジした後には、筋の硬さが上昇する。筋の硬さ上昇が起きるシチュエーションとして、具体的には、スポーツ競技における踏み込み動作や、階段を下る動作等が挙げられる。骨格筋の柔軟性が低下している状態で更に運動を継続することは、関節や筋組織への負荷を高め、肉離れ等の障害受傷リスクになるとともに、本来の運動パフォーマンスを発揮するためのフォームを崩す原因にもなりうる。
【0003】
その他の筋の硬さ上昇の要因として、電解質バランスの不均衡や、筋疾患、スタチン等の薬剤の服用が挙げられる。腰痛や肩こりの原因として近年問題となる、姿勢の悪さや長時間のPC作業による身体不活動もまた、筋の硬さ上昇の要因の一つとなりうる(非特許文献1)。これを支持する情報として、僧帽筋の肩こり自覚症状と、超音波エラストグラフィにより評価される筋の硬さに有意な関連性があったことが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
筋が硬い状態を改善するために、従来、静的ストレッチング、アイスパックによる冷却、冷水浴、マッサージが用いられている。静的マッサージは、一般に関節可動域を広げるために実施され、筋の硬さを軽減するとの報告があるが、十分な効果を発揮するためには一定の時間を要する(非特許文献3)。セルフマッサージは、筋の硬さを軽減する効果が小さい上に、持続時間が短いとされている(非特許文献4)。また、筋肉の硬さを改善するための手法の一つとして内服剤がある。筋弛緩剤として、チザニジンやメトカルバモール、エピリゾン、クロルゾキサゾンなどが用いられているが、これらは医薬品であるため手軽に服用できず、また、発現頻度は低いものの副作用の報告もある。
【0005】
筋の硬さを軽減するため、マツ科モミ属の植物の圧搾液、抽出物または蒸留物を有効成分として含有することを特徴とするゲル状外用剤(特許文献1)やグルコシルヘスペリジンを有効成分とする食品組成物(特許文献2)が提案されているが、なお安全に使用可能かつ、筋の硬さを軽減ないし筋の柔軟性を向上させる物質が求められている。
【0006】
クレアチン化合物は、アスリートやトレーニング愛好者によりパフォーマンス向上のため又は筋肉量の増大のために安全に使用できる食品として多用されてきた。食品から摂取されたクレアチンモノハイドレートは、骨格筋を含む多様な臓器に取り込まれ、組織中でクレアチンリン酸として貯蔵され、その後、アデノシン二リン酸(ADP)と反応し、アデノシン三リン酸(ATP)量を回復させることで、筋活動のためのエネルギー源を供給する。クレアチン化合物を定期的に摂取することにより、アスリートに限らず一般の人でも、組織中のクレアチン量を高め、高い筋活動を維持することができ、筋肉量の増大や筋力の向上等の効果が期待されることが知られている(非特許文献5)。しかしながら、クレアチン化合物に関し筋肉の柔軟性に関した報告はない。
【0007】
体内におけるクレアチン化合物は食品からの摂取により増加するだけではなく、腎臓、肝臓、膵臓等の組織中において合成することができ、全身に分布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-46377号公報
【特許文献2】特許第6787944号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Appl Ergon. 2020;82:102947.
【非特許文献2】香川県立保健医療大学雑誌 2021;12:27-31.
【非特許文献3】J Physiol. 2008;586:97-106.
【非特許文献4】Scand J Med Sci Sports. 2015;25(5):e490-6.
【非特許文献5】Nutrients. 2021;13(6):1915.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、一実施態様として、筋の硬さ軽減剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、意外にもクレアチン化合物が筋の硬さ軽減作用や筋のハリ緩和作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)クレアチン化合物を含有することを特徴とする、筋の硬さ軽減剤、
(2)クレアチン化合物を含有することを特徴とする、筋のハリ緩和剤、
(3)クレアチン化合物を含有することを特徴とする、運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進剤、
(4)1日あたり、クレアチン化合物を0.001~20g投与又は摂取する、(1)~(3)のいずれかに記載の剤、
(5)クレアチン化合物が、クレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン無水物、クレアチンリン酸塩、クレアチンクエン酸塩、クレアチン塩酸塩、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、クレアチンオロト酸塩、クレアチンピルビン酸塩、クレアチンマレイン酸塩、クレアチンリン酸エステル、クレアチン硝酸エステル、クレアチンマレイン酸エステル、クレアチンメチルエステル、クレアチンエチルエステル、クレアチン硫酸エステル、クレアチンロイシナート、グルコン酸クレアチン、シクロクレアチン、ポリエチレングリコシレートクレアチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)~(4)のいずれかに記載の剤、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、筋の硬さ軽減剤或いは筋の柔軟性向上剤を提供することが可能となった。本発明の剤は、正しい姿勢(フォーム)でのスポーツ動作を助けたり、スポーツ障害の受傷リスクを軽減したり、肩こりや腰痛を予防・改善したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】上腕二頭筋の、筋の硬さの経時的変化を示すグラフである(各群10例、ベースライン(Pre)からの変化率の平均値±標準偏差を表示。Preの点はクレアチン化合物またはプラセボの28日間摂取後の筋の硬さを示す。*p<0.05、**p<0.01 vs.プラセボ群(二元配置分散分析後、Bonferroni法にて事後検定を行い、危険率は5%未満とした))
図2】上腕の、筋の周径囲の経時的変化を示すグラフである(各群10例、ベースライン(Pre)からの変化率の平均値±標準偏差を表示。Preの点はクレアチン化合物またはプラセボの28日間摂取後の筋の周径囲を示す。*p<0.05、**p<0.01 vs.プラセボ群(二元配置分散分析後、Bonferroni法にて事後検定を行い、危険率は5%未満とした))
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の剤は、クレアチン化合物を含有することを特徴とする。
【0015】
「クレアチン化合物」とは、クレアチン若しくはその誘導体又はそれらの塩、又はそれらの水和物を示す。クレアチンの誘導体とは、エステル化されたクレアチン、アミノ酸が付加されたクレアチン、グルコン酸が付加されたクレアチン、糖類が付加されたクレアチン、環状化されたクレアチン等を示す。好ましくは、クレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン無水物、クレアチンリン酸塩、クレアチンクエン酸塩、クレアチン塩酸塩、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、クレアチンオロト酸塩、クレアチンピルビン酸塩、クレアチンマレイン酸塩、クレアチンリン酸エステル、クレアチン硝酸エステル、クレアチンマレイン酸エステル、クレアチンメチルエステル、クレアチンエチルエステル、クレアチン硫酸エステル、クレアチンロイシナート、グルコン酸クレアチン、シクロクレアチン、ポリエチレングリコシレートクレアチンであり、より好ましくはクレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン塩酸塩、クレアチンエチルエステル、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、さらに好ましくは、クレアチンモノハイドレートである。
【0016】
これらのクレアチン化合物は、食品または化学合成品として市販のものを入手可能であるが、アルギニン、グリシン、メチオニン、グアニジノ酢酸、サルコシン酸やシアナミドなどから合成してもよく、また、クレアチン化合物を含有する天然物からの抽出物でも良い。本発明に用いるクレアチン化合物は、抽出物や分離生成物をそのまま用いても良く、適宜溶媒で希釈した希釈液として用いても良く、濃縮抽出物や乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したりするものでもよい。
【0017】
本発明に使用されるクレアチン化合物の純度は特に限定されるものではないが、各種食品用組成物及び薬剤の特性、嗜好性、摂取量、安全性等を考慮すれば、高純度のものが好ましい。高純度とは、純度99.9%以上をいう。
【0018】
本発明のクレアチン化合物は、動物に投与又は摂取させることができ、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。ヒトが摂取する場合、1日あたりのクレアチン化合物の摂取量(クレアチン化合物を複数含む場合は、その合計量、以下同じ)としては、年齢、性別、体重などを考慮して適宜増減できるが、1mgから30gが好ましく、0.5gから20gがより好ましく、3gから20gがさらに好ましい。1度に摂取する際、30gを超えると、摂取時の舌触りの悪さや口腔の不快感が生じる場合がある。
【0019】
本発明のクレアチン化合物は、7日以上摂取することが好ましく、より好ましくは14日以上で、さらに好ましくは28日間以上である。なお、摂取し続けることで筋の硬さ軽減や筋のハリ緩和等、筋肉の好ましい状態を保つことができ、長期間、安全に摂取し続けることができる。
【0020】
本発明において、「筋の硬さ軽減」とは、筋の硬さが軽減、減少することを言い、筋の硬さ軽減には、筋の柔軟性向上が含まれ、本発明の剤は、筋の持つ、軟らかく、しなやかな性質が向上する作用を有する。
【0021】
筋が一定の方向に持続的に繰り返し引き延ばされること、筋を一定時間(一定期間)動かさないこと、運動のし過ぎや神経筋疾患等により、筋の硬さは上昇するが、筋の硬さの上昇は、筋のハリや筋のこわばり等をもたらしうる。筋の硬さが減少すると、筋の本来有する作用、例えば、運動、姿勢の維持、関節の安定化、骨や関節を守る等の作用を、より発揮することができる。
【0022】
一実施態様では、「筋の硬さ」は筋が伸張される際の抵抗、又は外部からの圧力に対して筋が提供する抵抗や筋の発揮する抵抗、としても表現できる。
【0023】
筋の硬さは、体表面からの触診や押し込み式筋硬度計によって評価することができ、また、超音波装置を用いたエラストグラフィを用いて測定することもできる(エラストグラフィ法)。押し込み式筋硬度計は、hardnessを測定でき、エラストグラフィ法の一つであるせん断波法(shear wave法)ではstiffnessを測定できる。hardnessとは体表面など外部からの垂直圧力に対し筋によって提供される抵抗力であり、また、stiffnessとは筋の長軸方向に沿って変化する長さに対する抵抗力である。筋の硬さはhardness及び/又はstiffnessであって良い。
【0024】
エラストグラフィ法の一つであるせん断波法により評価されるstiffnessは、例えば、超音波装置の超音波プローブから組織に照射されたせん断波の伝播速度の組織的差異から各組織の圧力・応力を絶対値(単位kPa)で評価することができる。筋が硬い場合はせん断波の伝播が速く、軟らかい場合はせん断波の伝播が遅くなる。押し込み式筋硬度計で測定されるhardnessは、皮膚組織の硬さなどの影響を受けることが知られており、一方、せん断波法で測定されるstiffnessは、筋組織そのものの硬さを客観的に評価することができる。
【0025】
本発明において、「筋のハリ緩和」とは、筋のハリを軽減、緩和することをいい、例えば、筋のこわばり、筋の拘縮、筋硬直、筋の腫脹を軽減、緩和することである。一定姿勢の維持等によって筋肉が引き延ばされ硬くなった状態が続くと筋が張った状態となり、そのような状態を緩和することや筋肉が持続的に強く固縮した状態を緩和することであり得る。
【0026】
一実施態様では、「筋のハリ」は身体を伸展・屈曲しようとした際の抵抗、としても表現でき、筋が張ると、例えば、動かし難さ、ぎこちなさ、動きがスムーズでないことといった症状としても現れる。筋のハリや筋のこわばりが軽減、緩和すると、身体の伸展・屈曲がしやすくなり、上記症状が改善し得る。
【0027】
筋のハリは、筋のそれぞれの部位における周径囲を測り評価することができ、筋のハリが大きくなると筋の周径囲も増加する。
【0028】
一実施態様では、筋の硬さが上昇すると筋のハリやこわばりが増加し、筋の硬さが軽減される(筋の柔軟性が高まる)と筋の引き延ばしが弱まり、ハリやこわばりが軽減される。
【0029】
本発明において、「運動」とは、例えば、筋力トレーニング、有酸素運動、スポーツ競技等の狭義の運動に加え、歩行、労働、日常の動作等を含む広義の身体運動を含む。本発明の剤は、上記運動に伴い筋の硬さが上昇、或いは筋のハリが増加した際、通常状態に戻るまでの時間を短縮することができる。
【0030】
本発明の筋の硬さ軽減剤、筋のハリ緩和剤、運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進剤には、筋の硬さが上昇することへの予防、筋のハリが生じることや増加することへの予防、を含む。
【0031】
筋の硬さ又は筋のハリが関わる生理機能や組織機能が低下した状態としては、例えば、肩こり、首筋のコリ、背中のはり、腰のはり、腰痛、スポーツ障害、運動パフォーマンスの低下、筋肉の疲労等が挙げられ、さらに低下した状態としては骨格筋の損傷、拘縮、浮腫、痙攣、神経筋疾患などが挙げられる。従って、本願発明の剤は、肩こり、首筋のコリ、背中のはり、腰のはり、腰痛、スポーツ障害、運動パフォーマンスの低下、筋肉の疲労などの予防又は改善剤として使用することが可能である。また、骨格筋の損傷、拘縮、浮腫、痙攣、神経筋疾患などの予防又は改善剤としても使用することができる。
【0032】
本発明の剤は、クレアチン化合物の他、本発明の効果を損なわない範囲で、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、生薬及びその抽出物等を配合することができる。そして、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤などを配合し、さらに必要に応じてpH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、界面活性剤、香料などを配合して、常法により、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤などの経口用固形製剤又はドリンク剤、飲料、濃縮飲料、固形発泡飲料、粉末飲料などの内服液剤として提供することができる。なお、内服液剤中におけるクレアチン化合物の状態としては、溶解状態であっても、分散状態であっても良く、その存在状態は問わない。
【0033】
本発明の剤の投与形態としては、特に限定されず、経口又は非経口であってよく、経口が好ましい。経口で適用する場合の剤形としては、錠剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、ゼリー剤等が挙げられる。非経口で適用する場合は、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、貼付剤等の外用剤や注射剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の剤を飲食品として用いる場合、具体例としては、粉末、穎粒、ドリンク類、スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状食品;食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンなどの油分を含む製品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ、インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、上記の形状に調製された健康飲食品も挙げられる。これらは、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。
【0035】
本発明の筋の硬さ軽減剤、筋のハリ緩和剤、又は運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進剤(医薬品、医薬部外品、飲食品等)やその説明書は、筋の硬さ軽減のために用いられる旨の表示、筋のハリ緩和のために用いられる旨の表示、運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進のために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで、「表示を付した」とは、筋の硬さ軽減剤、筋のハリ緩和剤、又は運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進剤を含む製品の本体、容器、包装などに記載すること、あるいは製品情報を開示する説明書、添付文書、パンフレット、その他の印刷物などの書類に記載すること、及び各種チラシ、インターネットを含む宣伝のために用いられる広告に記載することを含む。また、他の機能がある旨を表示したもの、又は、機能に関する表示がないものであっても、筋の硬さ軽減作用、筋のハリ緩和作用、運動に伴う筋の硬さ上昇又は運動に伴う筋のハリからの回復促進作用を実質的に有するものが本発明の範囲に含まれる。
【実施例0036】
以下に本発明の代表的な実施例を示し、詳細に説明する。
(実施例1)
【0037】
ヒトにおける伸張性筋収縮負荷を用いた1)筋の硬さ及び2)筋周径囲の評価
健常成人男性20名を対象とし、二重盲検並行群間比較試験を実施した。被験者をクレアチン群とプラセボ群の2つに群分けし、クレアチン群にはクレアチンモノハイドレート(クレアピュア(商標)、AlzChem Trostberg GmbH)3gを、プラセボ群には結晶セルロース3gを28日間摂取させた。
その後、被験者は、股関節が85度屈曲する高さのアームカールベンチに座り、ダンベルを用いた伸張性筋収縮負荷(運動負荷)を実施した。運動負荷としては、徒手筋力計(Mobie、酒井医療株式会社)を用いて測定された肘関節屈曲筋群の最大等尺性筋力(100%)を基準に、最大等尺性筋力の50%の筋力となる負荷(ダンベルの重さを調節)×10回を1セットとし、計5セット(セット間のインターバルは2分間)を実施する方法とした。負荷のかけ方は、ダンベルを持って肘関節を90°から180°まで5秒間かけて伸展させ、ダンベルを持たずに2秒間かけて90°に屈曲させるという方法とした(伸展及び屈曲で1回とカウント)。
測定ポイント(タイムポイント)は、試験日の運動負荷前(Pre)、運動負荷直後(Post)、1時間経過後、24時間経過後、48時間経過後、72時間経過後、96時間経過後、168時間経過後とした。肩甲骨の肩峰突起から上腕骨外側上顆までの上腕の長さの50%程度の場所にマーキングし、当該箇所における、1)筋の硬さ及び2)筋周径囲を測定した。
【0038】
1)筋の硬さ測定
超音波画像診断装置(Aplio 300、キヤノン株式会社製)を用いて、各タイムポイントでマーキング箇所の筋の硬さを計測した。伸張性筋収縮負荷(運動負荷)前の筋の硬さに対する各タイムポイントにおける筋の硬さの変化率を以下の(式1)により算出した。結果を図1(筋の硬さの変化率)に示す。
【0039】
(式1)
筋の硬さ変化率(%)=各タイムポイントの筋の硬さ/運動負荷前の筋の硬さ×100
【0040】
プラセボを摂取した場合は、運動負荷直後から筋の硬さが上昇し、さらに経時的に上昇していく傾向が認められたのに対し、クレアチンモノハイドレートを摂取した場合は、筋の硬さの上昇が抑えられ、96時間経過後、168時間経過後ではプラセボ群と比べ有意に筋の硬さが低いことが明らかとなった。本発明品を適用することによって、運動後の筋肉の柔軟性を向上させ、運動後において経時的な筋の硬さの上昇を抑制または柔軟性を維持できることが確認された。
【0041】
2)筋周径囲測定
メジャーを用いて、各タイムポイントでマーキング箇所の筋の周径囲を計測した。伸張性筋収縮負荷(運動負荷)前の筋の周径囲に対する各タイムポイントにおける筋の周径囲の変化率を以下の(式2)により算出した。結果を図2(筋の周径囲の変化率)に示す。
【0042】
(式2)
筋の周径囲変化率(%)=各タイムポイントの筋の周径囲/運動負荷前の筋の周径囲×100
【0043】
プラセボを摂取した場合は、運動負荷直後に筋の周径囲が増加し、24時間後から再び経時的に増加していく傾向が認められたのに対し、クレアチンモノハイドレートを摂取した場合は、筋の周径囲の増加が抑えられ、96時間経過後、168時間経過後ではプラセボ群と比べ有意に筋の周径囲が低いことが明らかとなった。本発明品を適用することによって、運動後の筋肉のハリを緩和させ、運動後において経時的な筋のハリの増加を抑制できることが確認された。
【0044】
従って、クレアチン化合物は、筋の硬さ軽減又は筋のハリ緩和のために用いることができ、筋の硬さ又は筋のハリが関わる身体の生理機能や組織機能に対して、これらの機能を良好に維持したり、低下した機能を改善したり、機能の低下を予防する効果を有していることが明らかとなった。
【0045】
(製剤例1~11)
以下の製剤を製造した。表中、クレアチンモノハイドレートはクレアチンモノハイドレート以外のクレアチン化合物であって良い。
[製剤例1]
表1に記載の処方1の原料を粉末混合し、粉末剤を製した。
[製剤例2]
表1に記載の処方1の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製した。
[製剤例3]
表2に記載の処方2の原料を粉末混合し、粉末剤を製した。
[製剤例4]
表2に記載の処方3の原料を粉末混合し、粉末剤を製した。
[製剤例5]
表2に記載の処方4の原料を粉末混合し、粉末剤を製した。
[製剤例6]
表2に記載の処方5の原料を粉末混合し、粉末剤を製した。
[製剤例7]
表2に記載の処方2の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製した。
[製剤例8]
表2に記載の処方3の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製した。
[製剤例9]
表2に記載の処方4の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製した。
[製剤例10]
表2に記載の処方5の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製した。
[製剤例11]
表2に記載の処方4の原料を粉末混合し、湿式造粒により顆粒剤を製し、打錠して錠剤を製した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、安全性が高く長期間摂取可能な筋の硬さ軽減作用等を有する医薬品、医薬部外品、飲食品等を提供できる。本発明の剤は、筋の硬さを軽減することで、肩こり、腰痛、スポーツ障害、その他筋の損傷などの予防・改善をすることや、運動パフォーマンスの発揮を助けることを目的とした医薬品、医薬部外品、飲食品等として有効に利用できるものである。また、筋の硬さが関わる身体の生理機能や組織機能に対して、これらの機能を良好に維持すること、低下した機能を改善すること、機能の低下を予防することを目的として用いることができる。
図1
図2