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特開2024-66468リチウム硫黄二次電池用電解液およびリチウム硫黄二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066468
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウム硫黄二次電池用電解液およびリチウム硫黄二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20240508BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0567
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179079
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022175783
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/ecsj2023s/top 掲載日 令和5年3月17日 ・研究集会名 電気化学会 第90回大会 開催場所 東北工業大学 八木山キャンパス(仙台市太白区八木山香澄町35-1) 開催日 令和5年3月27日 ・ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/ecsj2023s/top 掲載日 令和5年3月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発(ALCA)特別重点技術領域「次世代蓄電池」、「正極不溶型リチウム硫黄電池」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石川 正司
(72)【発明者】
【氏名】殿納屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】松井 由紀子
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
(57)【要約】
【課題】硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が理論容量(1672mAhg-1)により近い値となるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能な、リチウム硫黄二次電池用電解液を提供する。
【解決手段】リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはヘキサフルオロリン酸リチウムである電解質と、2種類以上のエーテル系溶媒とを含む、リチウム硫黄二次電池用電解液。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質および溶媒を含むリチウム硫黄二次電池用電解液であって、
前記電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはヘキサフルオロリン酸リチウムであり、
前記溶媒は、2種類以上のエーテル系溶媒を含む、リチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項2】
前記電解質の濃度は、前記溶媒1.0Lに対して4.0mol以下である、請求項1に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項3】
前記溶媒が、高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒とを含み、
前記高溶解性エーテル系溶媒:前記低溶解性エーテル系溶媒の体積比率が、5:5~7:3である、請求項1に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項4】
前記電解質および前記溶媒以外に、ハロゲンを含むリチウム塩を含む添加剤aをさらに含む、請求項1に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項5】
前記電解質および前記溶媒以外に、以下の構造式(1)で表される化合物および以下の構造式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む添加剤bをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【化1】
(構造式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
【化2】
(構造式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
【請求項6】
前記添加剤bが、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートおよびクロロエチレンカーボネートからなる群から1種以上選択される化合物を含む、請求項5に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項7】
前記溶媒が、1,2-ジメトキシエタンと、ハイドロフルオロエーテルとを含む、請求項1に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【請求項8】
請求項1に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液を備える、リチウム硫黄二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム硫黄二次電池用電解液およびリチウム硫黄二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン、デジタルカメラ等に用いる二次電池として、現在、リチウムイオン電池が広く用いられているが、エネルギー密度の更なる向上、コストの低減等が求められている。
【0003】
そこで注目されているのがリチウム硫黄二次電池である。リチウム硫黄二次電池は、正極活物質として硫黄、負極活物質としてリチウム金属を使用し、リチウムイオン(Li)が正極と負極との間を移動することによって充放電を行う二次電池である。リチウム硫黄二次電池では、放電時に負極からLiイオンが溶出し、正極で硫黄と反応して、LiSを生成するとともに、外部回路へ電流が流れる。
【0004】
硫黄原子は、重量あたりの酸化還元反応に関する電子数が多く、従来のリチウムイオン電池に比して、理論上、5倍以上の高いエネルギー密度を有することが見込まれている。また、硫黄は安価で確保も容易であるため、材料のコストを削減することも可能である。このため、リチウム硫黄二次電池は、次世代型の二次電池として盛んに研究が行われている。
【0005】
最近、硫黄の担持量(含有量)が多い正極を備えるリチウム硫黄二次電池の研究が進められている。リチウム硫黄二次電池用非水電解液としては、例えば、以下に示すものが知られている。
・電解質としてのLiTFSIと、FECとHFEとの混合溶媒とを含む非水電解液(特許文献1)。なお、LiTFSIはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、FECはフルオロエチレンカーボネート、HFEはハイドロフルオロエーテルを、それぞれ意味する。
・電解質としてのLiTFSIと、テトラグラムとHFEとの混合溶媒とを含む非水電解液、および、電解質としてのヘキサフルオロリン酸リチウム(以下、「LiPF」とも称する)と、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒とを含む非水電解液(非特許文献1および非特許文献2)。
・電解質としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、「LiFSI」とも称する)と、1,2-ジメトキシエタン(以下、「DME」とも称する)とを含む非水電解液(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO 2018/163778 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Progress in Natural Science: Materials International, 25(6), P612-621(2015)
【非特許文献2】Electrochemistry, 85,650-655(2017)
【非特許文献3】Nat. Commun. 6 6362 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの非水電解液を、硫黄の担持量が多い正極を備えるリチウム硫黄二次電池に採用した場合、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が理論容量(1672mAhg-1)よりも大幅に低くなるという問題があった。すなわち、これらの非水電解液を用いた前記リチウム硫黄二次電池では、硫黄の理論容量を活かしきれておらず、容量維持率に改善の余地があった。
【0009】
本発明の一態様は、硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、充放電サイクル後の放電容量が理論容量により近い値となるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能な、リチウム硫黄二次電池用電解液を提供することを課題とする。
【0010】
また、従来のリチウム硫黄二次電池は、常温(室温)における放電容量等の電池性能が評価対象となっており、低温または高温の環境下における電池性能は評価されていなかった。一方、実際にリチウム硫黄二次電池を使用する環境には、低温および高温の環境が含まれ得る。よって、当該環境下でも性能が優れるリチウム硫黄二次電池に対する需要が存在する。本発明の一態様は、前記需要を満たすために、低温および高温の環境下での放電容量にも優れるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能な非水電解液を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、LiFSIおよび/またはLiPFである電解質を、2種類以上のエーテル系溶媒を含む溶媒に溶解させて調製した電解液を使用することに想到した。そして、これにより、硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が理論容量により近い値となるリチウム硫黄二次電池を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明には以下の構成が含まれる。
電解質および溶媒を含むリチウム硫黄二次電池用電解液であって、
前記電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはヘキサフルオロリン酸リチウムであり、
前記溶媒は、2種類以上のエーテル系溶媒を含む、リチウム硫黄二次電池用電解液。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様は、リチウム硫黄二次電池における充放電サイクルを繰り返した際の放電容量を向上させることができる。特に、本発明の一態様によれば、硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、放電容量が理論容量により近い値となるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能なリチウム硫黄二次電池用電解液を提供することができる。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、従来は評価の対象になっていなかった、低温および高温の環境下での放電容量にも優れるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能なリチウム硫黄二次電池用電解液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のカーボネート系溶媒を含む電解液を備えるリチウム硫黄二次電池中の正極活物質の態様を示す模式図(左側の図)、および、本発明の一実施形態に係る電解液を備えるリチウム硫黄二次電池中の正極活物質の態様の一例を示す模式図(右側の図)である。
図2】本願の実施例1~3、並びに、比較例1および2で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図3】本願の実施例4および5、並びに、比較例1および2で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図4】本願の実施例6~10および比較例1で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図5】本願の実施例11~13および比較例1で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図6】本願の実施例13および14、並びに、比較例1で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図7】本願の実施例13、並びに、比較例1および3~5で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図8】本願の実施例13~16および比較例1で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図9】本願の実施例17~20で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図10】本願の実施例17および21~23で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図11】本願の実施例17および24~26で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図12】本願の実施例17で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、インピーダンス測定の結果を表す図である。
図13】本願の実施例19で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、インピーダンス測定の結果を表す図である。
図14】本願の実施例17および19で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、F1s、すなわちフッ素原子(F)の1s電子に関するXPSによる測定の結果を表す図である。
図15】本願の実施例17および19で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、C1s、すなわち炭素原子(C)の1s電子に関するXPSによる測定の結果を表す図である。
図16】本願の実施例27~39で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、高レート(0.3/0.3C)で充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図17】本願の実施例30および31で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、低温環境下(0℃)で充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
図18】本願の実施例32~34で製造したリチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池につき、高温環境下(60℃)で充放電サイクルを繰り返した際の放電容量およびクーロン効率の測定結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能である。例えば、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0017】
〔1.リチウム硫黄二次電池用電解液〕
本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄二次電池用電解液(以下、「本発明の電解液」とも称する)は、電解質および溶媒を含むリチウム硫黄二次電池用電解液であって、前記電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはヘキサフルオロリン酸リチウムであり、前記溶媒は、2種類以上のエーテル系溶媒を含む。
【0018】
リチウム硫黄二次電池において、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量を、理論容量に近い値とするためには、正極に十分な電荷が供給される必要がある。リチウム硫黄二次電池において、電荷担体は、リチウムイオン(Li)である。ここで、カーボネート系溶媒を含む電解液(例えば特許文献1、非特許文献1および2)を備える従来のリチウム硫黄二次電池では、図1の左側の図に示すように、正極活物質の周囲に被膜(図1の左側の図中の斜線部分)が形成される。そのことにより、当該正極活物質を含む正極上に前記被膜が形成される。
【0019】
前記被膜は、例えば、前記従来のリチウム硫黄二次電池の正極(正極活物質)から流出する硫黄等の流出物と、前記カーボネート系溶媒の分子との間に生ずる副反応の結果、正極上に形成される。前記被膜が形成されることにより、前記正極に対してのLiの移動が阻害される。よって、正極に供給されるLiの量が減少する。
【0020】
また、前記被膜の形成のために、前記正極に担持されている硫黄の一部が消費される。その結果、前記正極に担持されている硫黄の含有量が減少する。そのため、正極容量が低下してしまう。
【0021】
一方、2種類以上のエーテル系溶媒を含む、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池では、図1の右側の図に示すように、正極上に前記被膜が形成されないか、あるいは、前記被膜が形成される場合でも当該被膜は極めて薄くなる。その場合、前記Liの移動は阻害されない。その結果、前記電解液を使用することにより、放電容量を理論容量に近い値にすることができると考えられる。
【0022】
また、本発明の電解液が後述の高溶解性エーテル系溶媒を含む場合、当該電解液における電解質(LiFSIおよび/またはLiPF)の濃度を高濃度(後述の溶媒1.0Lに対し数モル)とすることができる。ここで、前記電解液に前記電解質が高濃度で溶解されている場合、後述のとおり、当該高濃度の電解質のために、硫黄の移動・溶出が抑えられるので、正極活物質からの硫黄の損失がなく、放電容量がより良好に維持される。その結果、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池の放電容量は、理論容量により近い値となるものと考えられる。また、同様の理由から、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、低温および高温の環境下でも優れた放電容量を達成できると考えられる。
【0023】
(電解質)
本発明の一実施形態における電解質は、LiFSIおよび/またはLiPFである。LiFSIおよびLiPFは共に、後述の溶媒に同程度溶解し、同程度のLiを生成する。よって、LiFSIおよびLiPFを共に、本発明の電解液を構成する電解質とすることができる。
【0024】
前記LiPFは、後述の添加剤としてのフッ素を含むリチウム塩と同様に、リチウム硫黄二次電池の作動中、フッ化リチウムを生成する機能を有する。前記フッ化リチウムにより、前記リチウム硫黄二次電池の負極上にSEI(Solid Electrolyte Interface)膜が良好に形成される。その結果、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量をより向上させることができるため、前記放電容量は、理論容量により近い値となる。
【0025】
よって、前記SEI膜を良好に形成する観点から、前記電解質は、LiPFを含むことが好ましい。また、LiPFの濃度は、後述の溶媒1.0Lに対して、0.05mol以上であることがより好ましく、0.07mol以上であることがさらに好ましく、0.1mol以上であることが特に好ましい。
【0026】
前記電解質の濃度は、本発明の電解液におけるLiが多くなり、前記正極に供給される電荷の量が多くなるため、高いほど好ましい。
【0027】
本発明の電解液に含まれるLiの濃度、言い換えると、前記電解質濃度が高い場合、化学平衡の観点から、Liの電解液への移動・流出が防止され、同様に硫黄(S)の電解液への移動・流出も併せて防止される。
【0028】
従って、前記電解質濃度が高い電解液によれば、正極活物質からの硫黄の損失が少なく、放電容量がより良好に維持される。その結果、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池の放電容量は、理論容量により近い値となるものと考えられる。
【0029】
前述の観点から、前記濃度は、後述の溶媒1.0Lに対して、1.0mol以上であることが好ましく、2.0mol以上であることがより好ましく、3.0mol以上であることがさらに好ましい。
【0030】
一方、本発明の電解液において、当該電解質が後述の溶媒に対する溶解度を超える量存在すると、前記電解液の粘度が高くなる。粘度が高い電解液中では、電荷担体であるイオンが移動し難くなる。その結果、前記正極に供給される電荷の量がかえって低下し、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が低下するおそれがある。そのため、前記電解質の濃度は、後述の溶媒に対する溶解度を超えない量であることが好ましい。
【0031】
具体的には、前記電解質の濃度は、後述の溶媒1.0Lに対して、5.0mol以下であることが好ましく、4.0mol以下であることがより好ましい。
【0032】
(溶媒)
本発明の一実施形態における溶媒は、2種類以上のエーテル系溶媒を含み、好ましくは2種類以上のエーテル系溶媒のみから構成される。前記溶媒は、前記電解質を好適な量溶解させることができる。また、当該溶媒中では、正極上に前記被膜が形成されないか、あるいは、前記被膜が形成される場合でも当該被膜が極めて薄くなる。
【0033】
そのため、前記溶媒を含む電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、充分な量のLiが正極へ移動することを確保することができ、その結果、当該リチウム硫黄二次電池の放電容量を理論容量に近い値となるように制御できる。よって、前記溶媒を、本発明の電解液を構成する溶媒とすることができる。
【0034】
前記溶媒は、高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒とを含むことが好ましい。本明細書において、「高溶解性エーテル系溶媒」とは、前記高溶解性エーテル系溶媒1.0Lに対する前記電解質の溶解度が、1.0mol/L以上となる溶媒である。また、「低溶解性エーテル系溶媒」とは、前記低溶解性エーテル系溶媒1.0Lに対する前記電解質の溶解度が、1.0mol/L未満となる溶媒である。
【0035】
前記溶媒が高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒とを含む場合、前記高溶解性エーテル系溶媒:前記低溶解性エーテル系溶媒の体積比率は、5:5~7:3であることがより好ましく、5:5~6:4であることがさらに好ましく、5:5であることが特に好ましい。
【0036】
前記溶媒が、高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒とを前記体積比率で含む場合、当該溶媒は、前記電解質をより好適な量溶解させることができる。
【0037】
その結果、リチウム硫黄二次電地の充放電サイクルを繰り返した際の放電容量を、より向上させ、理論容量により近い値に制御することができる。また、前記体積比率を前述のより好ましい範囲内に調整することにより、クーロン効率を100%に近い値とし、充放電の効率を向上させることもできる。
【0038】
前記高溶解性エーテル系溶媒としては、例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、ジオキソラン、ジエトキシエタン、トリグライム、テトラグライムおよびジブチルエーテル等を挙げることができる。前記高溶解性エーテル系溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0039】
前記低溶解性エーテル系溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)と称される化合物を挙げることができる。HFEと称される具体的な化合物としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロ-3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパン、2-メチル-1-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパン、1,1,1-トリフルオロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、フルオロベンゼンおよびジフルオロベンゼンを挙げることができる。前記低溶解性エーテル系溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0040】
前述の高溶解性エーテル系溶媒の具体例のうち、DMEは、前記電解質に対する溶解度が特に高いことが知られている。よって、前記溶媒がDMEを含むことにより、前記リチウム硫黄二次電池用電解液が、高い濃度で前記電解質を溶解することができる。そのため、前記リチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、硫黄を担持した正極から電解液への硫黄の移動・溶出を防止でき、理論容量により近い放電容量を維持することができる。よって、前記高溶解性エーテル系溶媒は、前述の化合物のうち、DMEであることが好ましい。
【0041】
また、前記低溶解性エーテル系溶媒は、前述の化合物のうち、DMEと組み合わせた場合は、前記リチウム硫黄二次電池用電解液における正極上への前記被膜の形成をより容易に防止することができる。そのため、前記リチウム硫黄二次電池用電解液を備えるリチウム硫黄二次電池では、Liの正極への移動の阻害が、より少なくなる。その結果、より高く、理論容量により近い値の放電容量が得られる。このような観点から、前記低溶解性エーテル系溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロ-3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパンであることが好ましい。
【0042】
以上のことから、前記リチウム硫黄二次電池の充放電サイクルを繰り返した際の放電容量をより向上させ、理論容量により近い値とする観点から、前記溶媒は、DMEと、HFEとを含むことがより好ましく、DMEと、1,1,2,2-テトラフルオロ-3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパンとを含むことが特に好ましい。
【0043】
(添加剤)
本発明の電解液は、前記電解質および前記溶媒以外に添加剤aをさらに含み得る。前記添加剤aは、ハロゲンを含むリチウム塩を含む。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素などを挙げることができる。前記ハロゲンを含むリチウム塩としては、フッ素を含むリチウム塩が特に好ましい。
【0044】
本発明の電解液が、前記添加剤aを含む場合、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池の作動中、前記ハロゲンを含むリチウム塩から、リチウムのハロゲン化物が生成する。前記リチウムのハロゲン化物により、前記リチウム硫黄二次電池の負極上にSEI膜が良好に形成される。その結果、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量をより向上させることができるため、前記放電容量を、理論容量により近い値とすることができる。なお、例えば、前記ハロゲンを含むリチウム塩が、フッ素を含むリチウム塩である場合には、前記リチウムのハロゲン化物として、フッ化リチウムが生成する。
【0045】
前記放電容量を向上させる観点から、前記ハロゲンを含むリチウム塩の含有量は、前記溶媒1.0Lに対して、0.05mol以上であることが好ましく、0.07mol以上であることがより好ましい。また、前記観点から、前記含有量は、前記溶媒1.0Lに対して、1mol以下であることが好ましく、0.7mol以下であることがより好ましく、0.5mol以下であることがさらに好ましく、0.2mol以下であることが特に好ましい。
【0046】
前記ハロゲンを含むリチウム塩は、特に限定されない。例えば、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(以下、「LiDFOB」と称する)、LiPF等のフッ素を含むリチウム塩、および過塩素酸リチウム(LiClO)等の塩素を含むリチウム塩を挙げることができる。前記ハロゲンを含むリチウム塩は、一種類を使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0047】
前記電解液は、前記電解質および前記溶媒以外に、以下の構造式(1)で表される化合物および以下の構造式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む添加剤bをさらに含むことができる。以下、構造式(1)で表される化合物を化合物(1)と称し、構造式(2)で表される化合物を化合物(2)と称する。
【0048】
【化1】
【0049】
(構造式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
【0050】
【化2】
【0051】
(構造式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
前記構造式(1)および構造式(2)中のRおよびRは、水素、フッ素および塩素からなる群から選択される基であることが好ましい。また、化合物(1)は、より好ましくは、ビニレンカーボネート(VC)である。化合物(2)は、より好ましくは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)および/またはクロロエチレンカーボネート(CLEC)である。言い換えると、前記添加剤bは、VC、FECおよびCLECからなる群から選択される1種以上の化合物を含むことがより好ましい。
【0052】
リチウム硫黄二次電池の充放電サイクルを繰り返すと、正極からポリスルフィドが溶出することにより、急激な放電容量の低下が発生する場合があることが知られている。また、高レートおよび/または高温環境の条件下では、前記ポリスルフィドが正極から溶出し易くなり、前述の急激な放電容量の低下が発生し易いことが知られている。
【0053】
一方、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、作動中、正極付近で当該化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物の還元分解生成物が生成し、当該還元分解生成物を含む被膜が当該正極の表面に形成される。このとき、前記被膜により、前記正極からのポリスルフィドの溶出が防止される。そのため、急激な放電容量の低下が発生し難くなる。
【0054】
よって、本発明の電解液は、前記添加剤bを含むことにより、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池のサイクル特性、特に、高レートおよび/または高温環境の条件下におけるサイクル特性を向上させることができる。言い換えると、前記添加剤bを含む本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、充放電サイクルを繰り返した際に、その放電容量を長期間(多くのサイクル)にわたって良好な範囲に維持することができる。
【0055】
本発明の電解液は、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を特定量以上含有させることにより、前記正極の表面上に前記被膜を良好に形成することができ、本発明の電解液を備えるリチウム硫黄二次電池のサイクル特性をより向上させることができる。この観点からは、前記化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量は、本発明の電解液全体の重量を100重量%とする場合に、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。
【0056】
一方、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量を過多にしないことにより、前記被膜が必要以上に厚くなり、前記正極に対してのLiの移動が阻害されることを防止することができる。その結果、リチウム硫黄二次電池のサイクル特性を向上させつつ、放電容量を理論容量により近い範囲に調節することができる。この観点からは、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量は、本発明の電解液全体の重量を100重量%とする場合に、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明の電解液は、前記添加剤aおよび添加剤b以外の添加剤として、リチウム硫黄二次電池用電解液に一般に含まれ得る添加剤を、本発明の効果を損なわない程度の量、含有していてもよい。
【0058】
〔2.リチウム硫黄二次電池〕
本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄二次電池は、本発明の電解液を備える。より詳細には、前記リチウム硫黄二次電池は、正極と負極とがセパレータを介して対向してなる構造体に前記電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を備える。前記リチウム硫黄二次電池は、本発明の電解液を備えるため、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が向上し、当該放電容量が理論容量により近い値となるという効果を奏する。
【0059】
(正極)
前記正極は、リチウム硫黄二次電池用正極材料を含む。より詳細には、前記正極は、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料を含むリチウム硫黄二次電池用正極合剤(以下、単に「正極合剤」と称する)が、集電体上に担持された構成を備える。
【0060】
前記リチウム硫黄二次電池用正極材料は、リチウム硫黄二次電池において一般に使用される正極材料であり得、特に限定されない。前記リチウム硫黄二次電池用正極材料としては、例えば、硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質を含む正極材料を挙げることができる。前記「硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質」は、硫黄が担持されている炭素質材料である。
【0061】
前記炭素質材料としては、例えば、活性炭、カーボンナノチューブおよびグラフェン等を挙げることができる。前記炭素質材料は、1種類の物質であってもよく、2種類以上の物質の混合物であってもよい。
【0062】
炭素質材料への硫黄の担持は、物理吸着によるものであってもよく、化学吸着によるものであってもよい。炭素質材料への硫黄の担持は、例えば、前記炭素質材料と硫黄とを乳鉢等を用いて混合した後、得られた混合物をマッフル炉内で加熱することによって行うことができる。前記硫黄としては、市販の硫黄華等を使用することができる。
【0063】
前記炭素質材料は、細孔を備えることが好ましい。この場合、当該細孔の内部において、当該硫黄が拡散し吸着する。従って、前記細孔を備える前記炭素質材料は、前記硫黄を、より強く担持することができる。
【0064】
後述するように、前記「硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質」は、当該正極活物質の重量に対して60重量%以上の硫黄を担持していることが好ましい。前記正極活物質における硫黄の重量割合(重量%)を所望の値にするための方法としては、例えば、前述した炭素質材料に硫黄を担持させる方法において、以下の(A)および(B)に示すように条件を調整する方法を挙げることができる。
【0065】
(A)前記硫黄の使用量を、前記正極活物質における硫黄の重量割合の所望の値よりも1~4重量%多くなるように調整する。
【0066】
(B)加熱処理の条件を、後述する製造例1および2に示す条件とする。
【0067】
本明細書において、硫黄の形態は特に限定されない。例えば、α硫黄(斜方硫黄)、β硫黄(単斜硫黄)、γ硫黄(単斜硫黄)、ゴム状硫黄、およびプラスチック硫黄からなる群より選択される1以上の硫黄を用いることができる。
【0068】
前記炭素質材料が細孔を備える場合、比表面積および当該細孔の体積が大きいほど、当該炭素質材料は、硫黄を多く担持する上で好適な構造を備えている。従って、硫黄を多く担持する好適な構造を備える観点から、前記炭素質材料としては、樹脂、化石資源材料等を炭化後、水酸化カリウム等のアルカリによって賦活することによって得られた活性炭等を好ましく用いることができる。
【0069】
前記炭素質材料の比表面積は、硫黄を多く担持する観点から、1500cm-1~2900cm-1であることが好ましく、2200cm-1~2900cm-1であることがより好ましい。
【0070】
なお、比表面積は、BET法によって測定した値である。比表面積の測定は、例えば、Quantachrome社のAUTOSORB iQを用いて行うことができる。
【0071】
また、炭素質材料が細孔を備える場合、当該細孔の体積は、硫黄を多く担持する観点から、0.6cc・g-1~1.2cc・g-1であることが好ましく、0.9cc・g-1~1.2cc・g-1であることがより好ましい。
【0072】
なお、細孔の体積は、例えば、Quantachrome社のAUTOSORB iQを用いて測定することができる。
【0073】
前記「硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質」は、当該正極活物質全体の重量に対して60重量%以上の硫黄を担持することが好ましい。つまり、当該正極活物質を構成する硫黄の重量と炭素質材料の重量との合計に対する硫黄の重量の割合が60重量%以上であることが好ましい。
【0074】
前記硫黄の重量の割合が60重量%以上である場合、硫黄の担持量が多いため、正極材料への硫黄含有量の増加という近年の要望に沿ったリチウム硫黄電池を提供することができる。
【0075】
前記硫黄の重量の割合は、70重量%以上であることがより好ましく、高い方がより好ましいが、上限値は、炭素質材料の担持能力等によって決定され得る。例えば、前記炭素質材料が活性炭である場合には、前記上限値は、60~66重量%程度である。なお、硫黄の担持量は、実施例に後述する方法によって確認することができる。
【0076】
以下、本発明の一実施形態における「硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質」は、硫黄が担持されていない炭素質材料と対比する場合、「硫黄が担持されている炭素質材料」とも称する。ここで、リチウム硫黄二次電池では、作動時に、前記硫黄が正極の膨張等によってポリスルフィドとして溶出することにより、電池性能が低下する場合がある。前記リチウム硫黄二次電池用正極材料が、前記「その他の成分」として、硫黄が担持されていない炭素質材料を含む場合、当該硫黄がポリスルフィドとして溶出した場合であっても、前記炭素質材料が、当該ポリスルフィドを効率よく吸着することができる。その結果、前述の電池性能の低下を防止し、優れたサイクル特性等を示すリチウム硫黄二次電池をより容易に提供することができる。
【0077】
前述の観点から、前記硫黄が担持されている炭素質材料の含有量は、前記硫黄が担持されている炭素質材料と前記硫黄が担持されていない炭素質材料との合計を100重量とした場合、50重量%以上98重量%以下であることが好ましく、60重量%以上90重量%以下であることがより好ましい。また、前記硫黄を担持していない炭素質材料の含有量は、前記硫黄が担持されている炭素質材料と前記硫黄が担持されていない炭素質材料との合計を100重量とした場合、2重量%以上50重量%以下であることが好ましく、10重量%以上40重量%以下であることがより好ましい。
【0078】
前記「硫黄を担持していない炭素質材料」とは、硫黄が担持(吸着)されていない炭素質材料を意味する。よって、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」の調製には、前記「硫黄が担持されている炭素質材料」の調製のように、正極活物質に硫黄を担持(吸着)させる工程を経る必要はない。前記「硫黄を担持していない炭素質材料」としては、例えば市販の炭素質材料をそのまま用いることができる。
【0079】
前記「硫黄を担持していない炭素質材料」は、前記「硫黄を担持している炭素質材料」を構成する炭素質材料と同種の炭素質材料であってもよいし、異種の炭素質材料であってもよい。一方、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」を構成する炭素質材料は、前述の溶出したポリスルフィドを吸着させる観点からは、同種の炭素質材料であることが好ましい。例えば、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」として、前述した樹脂、化石資源材料等を炭化後、アルカリ賦活することによって得られた活性炭を好ましく用いることができる。
【0080】
前記リチウム硫黄二次電池用正極材料が、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」を含む場合、当該リチウム硫黄二次電池用正極材料は、前記「硫黄を担持している炭素質材料」と、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」とを含む混合物である。前記混合物の調製は、前記「硫黄を担持している炭素質材料」と、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」とが均質となるように、当該リチウム硫黄二次電池用正極材料の構成物質を混合して行う。混合方法としては、例えば、乳鉢等を用いて、前記「硫黄を担持している炭素質材料」、前記「硫黄を担持していない炭素質材料」に加えて、後述の電極合剤におけるその他の成分である導電助剤、水系バインダ等の前記正極合剤の構成物質を混合し、得られた混合物を、更に自転・公転ミキサーを用いて撹拌することにより、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料を含む前記電極合剤を調製する方法を挙げることができる。
【0081】
前記正極合剤は、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料以外にその他の成分を含みうる。前記その他の成分としては、例えば、導電助剤、水系バインダ等を挙げることができる。
【0082】
導電助剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば使用することができる。通常、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックが使用されるが、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維粉末、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を使用してもよい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として用いることもできる。
【0083】
水系バインダは、前記正極活物質粒子と前記導電助剤等を結着させることができるものであれば特に限定されない。前記水系バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンラバー(SBR)水分散液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸塩等を1種または2種以上用いることができる。
【0084】
前記正極合剤は、当該正極合剤全体の重量に対して、前記正極材料を90重量%以上95重量%以下含有し、前記その他の成分を5重量%以上10重量%以下含有することが好ましい。
【0085】
前記正極合剤は、従来公知の方法により調製することができる。前記正極合剤の調製方法としては、例えば、前記正極材料と、前記その他の成分とを、均質に混合する方法を挙げることができる。
【0086】
前記リチウム硫黄二次電池用正極は、従来公知の方法により作製することができる。例えば、前記正極合剤および溶媒を含む正極作製用の塗工液(スラリー)を調製し、当該塗工液を、集電体に塗布もしくは充填(塗工)し、乾燥させた後、加圧成形し、さらに真空乾燥する方法によって作製することができる。
【0087】
集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体を使用可能である。例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等を挙げることができる。接着性、導電性、耐酸化性等の向上の目的で、表面をカーボン、ニッケル、チタンまたは銀等で処理した集電体を用いてもよい。
【0088】
集電体の形状については、フォイル状、フィルム状、シート状、ネット状等のいずれであってもよい。中でも、より多くの前記塗工液を充填することができ、大容量化が可能となるため、例えばハニカム状等の三次元構造を有する集電体が好ましい。
【0089】
(負極)
前記負極は、活物質としての金属リチウム、前述した導電助剤および水系バインダ等を含有するリチウム硫黄二次電池用負極合剤を、例えば前述したリチウム硫黄二次電池用正極を作製する方法と同様の方法で、集電体上に担持することによって作製することができる。前記集電体としては、前記リチウム硫黄二次電池用正極における集電体と同様のものを使用することができる。
【0090】
(製造方法)
本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄二次電池は、正極、負極、本発明の電解液、セパレータ、筐体等を用いて、従来公知の方法によって組み立てることにより、製造することができる。
【0091】
〔まとめ〕
本発明には、以下の態様が含まれる。
〈1〉電解質および溶媒を含むリチウム硫黄二次電池用電解液であって、
前記電解質は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはヘキサフルオロリン酸リチウムであり、
前記溶媒は、2種類以上のエーテル系溶媒を含む、リチウム硫黄二次電池用電解液。
〈2〉前記電解質の濃度は、前記溶媒1.0Lに対して4.0mol以下である、〈1〉に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
〈3〉前記溶媒が、高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒とを含み、
前記高溶解性エーテル系溶媒:前記低溶解性エーテル系溶媒の体積比率が、5:5~7:3である、〈1〉または〈2〉に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
〈4〉前記電解質および前記溶媒以外に、ハロゲンを含むリチウム塩を含む添加剤aをさらに含む、〈1〉から〈3〉のいずれか1つに記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
〈5〉前記電解質および前記溶媒以外に、以下の構造式(1)で表される化合物および以下の構造式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む添加剤bをさらに含む、〈1〉~〈4〉の何れか1項に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
【0092】
【化3】
【0093】
(構造式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
【0094】
【化4】
【0095】
(構造式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルコキシからなる群より選択される基である。)
〈6〉前記添加剤bが、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートおよびクロロエチレンカーボネートからなる群から1種以上選択される化合物を含む、〈5〉に記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
〈7〉前記溶媒が、1,2-ジメトキシエタンと、ハイドロフルオロエーテルとを含む、〈1〉から〈6〉のいずれか1つに記載のリチウム硫黄二次電池用電解液。
〈8〉〈1〉から〈7〉のいずれか1つに記載のリチウム硫黄二次電池用電解液を備える、リチウム硫黄二次電池。
【実施例0096】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
[測定方法]
以下に示す方法によって、製造例で製造されたリチウム硫黄二次電池用正極材料の物性、並びに、実施例1~34および比較例1~5で製造されたリチウム硫黄二次電池の性能の測定・算出を行った。
【0098】
<硫黄担時量>
前記リチウム硫黄二次電池用正極材料をアルミナセルに入れ、島津製作所社製、DTG-60AHを用いて、熱重量分析(TGA)を行った。測定は、測定ガスAr、ガス流量50ml/min、昇温速度5℃/min、および上限温度600℃の条件下で行った。得られたTGAの結果から、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料全体の重量に対する、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料が担持していた硫黄の重量の割合(硫黄担持量、単位:重量%)を算出した。
【0099】
<充放電試験(サイクル特性試験)>
後述する実施例1~16、および比較例1~5で製造したリチウム硫黄二次電池の正極を作用極とし、BTS2400W(Nagano社製)を用いて、定電流充放電試験Aを行った。また、実施例17~26で製造したリチウム硫黄二次電池の正極を作用極とし、ABE1028-0505S(Electrofield社製)を用いて、定電流充放電試験Bを行った。本項の以下の記載事項は、定電流充放電試験Aおよび定電流充放電試験Bの双方に共通である。
【0100】
充電時のモードはC.C.法(「C.C.」はconstant currentの略称である。)とし、放電時のモードはC.C.モードとした。設定電流密度は167.2mA/gとした(電流密度1672mA/gを1Cと定義する。以下、167.2mA/gを0.1Cと示す。)。カットオフ電圧は、下限値を1.0V、上限値を3.4Vとした。試験は25℃の環境にて行った。すなわち、充放電のレートを0.1/0.1Cとし、サイクルの充放電を行い、特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量を測定した。
【0101】
なお、充電容量および放電容量は、硫黄の重量を基準とし、単位をmA・h(g sulfur)-1と定義した。
【0102】
測定された特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量の値を使用して、以下の式(1)および(2)に基づき、容量維持率およびクーロン効率を算出した。
容量維持率(%)={(放電容量[mAhg-1])/(理論容量=1672mAhg-1)}×100 (1)
クーロン効率={(放電容量[mAhg-1])/(充電容量[mAhg-1])}×100 (2)
<高レートの充放電試験(サイクル特性試験)>
後述する実施例27~29で製造したリチウム硫黄二次電池を使用し、設定電流密度を501.6mA/g、すなわち充放電のレートを0.3/0.3Cに変更した。これらのこと以外は、前記<充放電試験(サイクル特性試験)>の欄に記載の方法と同一の方法によってサイクルの充放電を行い、特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量を測定した。また、当該充電容量および放電容量に基づき、前記欄に記載の方法と同一の方法により、容量維持率を算出した。
【0103】
<低温での充放電試験(サイクル特性試験)>
後述する実施例30および31で製造したリチウム硫黄二次電池を使用し、試験を行う環境の温度を25℃から0℃に変更した。これらのこと以外は、前記<充放電試験(サイクル特性試験)>の欄に記載の方法と同一の方法によってサイクルの充放電を行い、特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量を測定した。また、当該充電容量および放電容量に基づき、前記欄に記載の方法と同一の方法により、容量維持率およびクーロン効率を算出した。
【0104】
<高温かつ低レートでの充放電試験(サイクル特性試験)>
後述する実施例32および33で製造したリチウム硫黄二次電池を使用し、試験を行う環境の温度を25℃から60℃に変更した。これらのこと以外は、前記<充放電試験(サイクル特性試験)>の欄に記載の方法と同一の方法によってサイクルの充放電を行い、特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量を測定した。また、当該充電容量および放電容量に基づき、前記欄に記載の方法と同一の方法により、容量維持率およびクーロン効率を算出した。
【0105】
<高温かつ高レートの充放電試験(サイクル特性試験)>
後述する実施例34で製造したリチウム硫黄二次電池を使用し、試験を行う環境の温度を25℃から60℃に変更し、かつ、設定電流密度を501.6mA/g、すなわち充放電のレートを0.3/0.3Cに変更した。これらのこと以外は、前記<充放電試験(サイクル特性試験)>の欄に記載の方法と同一の方法によってサイクルの充放電を行い、特定の充放電サイクルにおける充電容量および放電容量を測定した。また、当該充電容量および放電容量に基づき、前記欄に記載の方法と同一の方法より、容量維持率およびクーロン効率を算出した。
【0106】
[インピーダンスの測定]
実施例17および19で製造したリチウム硫黄二次電池を使用した前記充放電試験の実施と同時に、製造会社:Bio-Logic Science Instruments Itd.、製品名:VMP-300の測定装置を用いて、以下に示す測定条件で、1サイクル目、5サイクル目および10サイクル目のインピーダンスの測定を実施した。
【0107】
(測定条件)
・周波数範囲:1MHz~1mHz
・振幅幅:10mV
・充電:3.4V
[X線光電子分光法(XPS)による測定]
実施例17および19で製造したリチウム硫黄二次電池17’および19’を使用したこと以外は、前記<充放電試験(サイクル特性試験)>の欄に記載の方法と同一の方法で充放電を行った。前記充放電は、5サイクルの充電が終了するまで実施した。続いて、当該充電後のリチウム硫黄二次電池17’および19’から正極を取り出した。次に、当該正極を、前記DMEと1,1,2,2-テトラフルオロ-3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパン(以下、「HFE1」と称する)とを、5:5の体積比率で混合してなる混合液を用いて、洗浄した。前記洗浄は、具体的には、前記正極および前記混合液0.5mLを、スクリュー管瓶(容積:10mL)の内部に入れた後、攪拌し、その後、前記スクリュー管瓶から前記正極を取り出す操作であった。前記洗浄操作は、連続して2回実施した。2回目の前記洗浄操作を経た前記正極を、室温(25℃)の温度下で12時間放置することによって、自然乾燥させた。当該正極を対象として、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ製 製品名PHI 5000 VersaProbe 3)を用い、以下の測定条件で、XPSによる測定を実施した。
【0108】
(測定条件)
・X線源:単色化ALKα線(1486.6eV)
・X線ビーム径:100μm
・光電子取出角度:サンプル(試料)の法線に対して45°
・中和:有
[製造例1:正極の製造]
(リチウム硫黄二次電池用正極材料の調製)
活性炭0.34gと、硫黄華(Wako pure chemical社製、純度99%超)0.66gとを、メノウ乳鉢を用いて混合し、混合物を得た。前記混合物を耐熱性金属容器に移し、これをマッフル炉に投入して、大気中で加熱処理を行った。
【0109】
前記活性炭の細孔の体積は1.2cm/gであり、比表面積は2863cm/gであった。また、前記活性炭が備える細孔において、マクロ孔:メソ孔:ミクロ孔の数の比率は0:5:95であった。
【0110】
具体的には、前記混合物を入れた前記耐熱性金属容器を前記マッフル炉の内部に投入した後、当該内部の温度を155℃まで昇温させ、この温度を5時間保持し、前記硫黄華を融解させた。次いで、前記内部の温度を、5℃/minの速度で300℃に達するまで昇温させた後、この温度を2時間保持した。その後、前記内部を十分に空冷して、当該内部から前記耐熱性金属容器を取り出した。前記耐熱性金属容器から、硫黄が担持されている活性炭、すなわち硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質を得た。得られた硫黄と炭素質材料とが複合化されている正極活物質をリチウム硫黄二次電池用正極材料とした。
【0111】
前述の方法により、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料が担持していた硫黄の重量の割合(硫黄担持量)を測定した。その結果、前記硫黄担持量は、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料全体の重量に対して、64重量%であった。
【0112】
(リチウム硫黄二次電池用正極合剤および正極の作製)
前記リチウム硫黄二次電池用正極材料、硫黄を担持していない活性炭、導電助剤であるカーボンナノチューブ、および結着剤である水系バインダ(ポリペプチド系結着剤)を、重量比で75:19:1:5となるように測り取り、リチウム硫黄二次電池用正極合剤の材料とした。前記硫黄を担持していない活性炭としては、前記リチウム硫黄二次電池用正極材料の調製に使用した活性炭と同じ活性炭を使用した。
【0113】
測り取った前記材料を、メノウ乳鉢を用いて混合し、得られた混合物を軟膏ケースに移した。次いで、前記混合物を、自転・公転ミキサーを用い、回転数2000rpmで合計25分間攪拌し、リチウム硫黄二次電池用正極合剤を得た。
【0114】
次に、前記リチウム硫黄二次電池用正極合剤を3Dアルミニウム集電体(住友電工社製)に単位面積当たり5mg/cmとなるように充填し、ホットプレートを用いて40℃で1時間乾燥させた。乾燥した集電体を、ロールプレス機を用いて圧延した後、φ12mmサイズに打ち抜きポンチを用いて切り出し、成形体を得た後、50℃の真空ベルジャーを用いて、さらに12時間乾燥させて、正極を製造した。
【0115】
[製造例2:ラージスケールの正極の製造]
製造例1と同一の方法によって、リチウム硫黄二次電池用正極合剤を得た。次に、以下の点以外は製造例1と同一の方法によって、ラージスケールの正極を製造した。
・前記リチウム硫黄二次電池用正極合剤を、3Dアルミニウム集電体(住友電工社製)に、単位面積当たり7.5mg/cmとなるように充填したこと;
・乾燥した集電体を切り出す形状を、φ12mmサイズから、縦23mm×横25mmの長方形に変更したこと。
【0116】
[実施例1]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
DMEと、HFE1とを、体積比率が5:5となるように混合し、混合溶媒(1)を得た。混合溶媒(1)1.0Lに対して2.0molのLiFSIを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(1)とする。
【0117】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
セルの形状としては、円筒金属缶型、コイン型、ラミネート型等があるが、本試験ではコイン型セルに近い2極式フラットセルを用いた。製造例1にて製造した正極、リチウム硫黄二次電池用電解液(1)、負極としてのリチウム箔(本庄金属社製)、およびセパレータとしてのポリエチレン系微多孔膜を用いて、露点-70℃以下のアルゴン雰囲気中において以下の手順でリチウム硫黄電池を作製した。
【0118】
すなわち、前記リチウム箔を、φ13mmの大きさとなるように、ポンチを用いて打ち抜き、負極を調製した。また、前記ポリエチレン系微多孔膜を、φ16mmの大きさとなるように、ポンチを用いて打ち抜き、セパレータを調製した。さらに、前記正極を、φ12mmの大きさとなるように、ポンチを用いて打ち抜いた。前記負極、前記セパレータおよび前記打ち抜かれた正極をこの順で2極式フラットセル内に積層させ、リチウム硫黄二次電池用電解液(1)を80μL加え、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(1)とする。
【0119】
リチウム硫黄二次電池(1)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図2に示す。
【0120】
[実施例2]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を3.0molに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(2)とする。
【0121】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(2)とする。
【0122】
リチウム硫黄二次電池(2)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図2に示す。
【0123】
[実施例3]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を4.0molに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(3)とする。
【0124】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(3)とする。
【0125】
リチウム硫黄二次電池(3)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、30サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図2に示す。
【0126】
[実施例4]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例1と同様の方法により、混合溶媒(1)を調製した。混合溶媒(1)1.0Lに対して1.0molのLiFSIおよび1.0molのLiDFOBを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(4)とする。なお、LiDFOBは、前述した添加剤aに該当する。
【0127】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(4)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(4)とする。
【0128】
リチウム硫黄二次電池(4)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図3に示す。
【0129】
[実施例5]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を1.5molに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(5)とする。
【0130】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(5)とする。
【0131】
リチウム硫黄二次電池(5)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図3に示す。
【0132】
[実施例6]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiDFOBの使用量を0.2molに変更したこと以外は、実施例5と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(6)とする。
【0133】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(6)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(6)とする。
【0134】
リチウム硫黄二次電池(6)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図4に示す。
【0135】
[実施例7]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を2.0molに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(7)とする。
【0136】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(7)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(7)とする。
【0137】
リチウム硫黄二次電池(7)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図4に示す。
【0138】
[実施例8]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を2.5molに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(8)とする。
【0139】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(8)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(8)とする。
【0140】
リチウム硫黄二次電池(8)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図4に示す。
【0141】
[実施例9]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を2.75molに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(9)とする。
【0142】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(9)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(9)とする。
【0143】
リチウム硫黄二次電池(9)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図4に示す。
【0144】
[実施例10]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を3.0molに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(10)とする。
【0145】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(10)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(10)とする。
【0146】
リチウム硫黄二次電池(10)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図4に示す。
【0147】
[実施例11]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を2.8molに変更したこと、および、LiDFOBの使用量を0.1molに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(11)とする。
【0148】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(11)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(11)とする。
【0149】
リチウム硫黄二次電池(11)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図5に示す。
【0150】
[実施例12]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を2.9molに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(12)とする。
【0151】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(12)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(12)とする。
【0152】
リチウム硫黄二次電池(12)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図5に示す。
【0153】
[実施例13]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiFSIの使用量を3.0molに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(13)とする。
【0154】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(13)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(13)とする。
【0155】
リチウム硫黄二次電池(13)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図5~8に示す。
【0156】
[実施例14]
実施例1と同様の方法により、混合溶媒(1)を調製した。混合溶媒(1)1.0Lに対して3.0molのLiFSIおよび0.1molのLiPFを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(14)とする。なお、LiPFは、前述した添加剤aに該当する。
【0157】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(14)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(14)とする。
【0158】
リチウム硫黄二次電池(14)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1、並びに、図6および8に示す。
【0159】
[実施例15]
DMEと、HFE1とを、体積比率が6:4となるように混合し、混合溶媒(2)を得た。混合溶媒(2)1.0Lに対して3.0molのLiFSIおよび0.1molのLiDFOBを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(15)とする。
【0160】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(15)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(15)とする。
【0161】
リチウム硫黄二次電池(15)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図8に示す。
【0162】
[実施例16]
DMEと、HFE1とを、体積比率が7:3となるように混合し、混合溶媒(3)を得た。混合溶媒(3)1.0Lに対して3.0molのLiFSIおよび0.1molのLiDFOBを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(16)とする。
【0163】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(15)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(16)とする。
【0164】
リチウム硫黄二次電池(16)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図8に示す。
【0165】
[比較例1]
FECと、HFE1とを、体積比率が5:5となるように混合し、混合溶媒(4)を得た。混合溶媒(4)1.0Lに対して1.0molのLiTFSIを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(1)とする。
【0166】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりに比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(1)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池を比較用リチウム硫黄二次電池(1)とする。
【0167】
比較用リチウム硫黄二次電池(1)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図2~8に示す。
【0168】
[比較例2]
DME1.0Lに対して2.0molのLiFSIを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(2)とする。
【0169】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりに比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池を比較用リチウム硫黄二次電池(2)とする。
【0170】
比較用リチウム硫黄二次電池(2)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、充放電サイクルを行った。その結果、10サイクルに達する前に短絡が発生した。各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図2、3に示す。
【0171】
[比較例3]
実施例1と同様の方法により、混合溶媒(1)を調製した。混合溶媒(1)1.0Lに対して2.0molのLiTFSIおよび0.1molのLiDFOBを溶解させ、電解液を調製した。当該電解液を、比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(3)とする。
【0172】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりに比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池を比較用リチウム硫黄二次電池(3)とする。
【0173】
比較用リチウム硫黄二次電池(3)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図7に示す。
【0174】
[比較例4]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiTFSIの使用量を2.5molに変更したこと以外は、比較例3と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(4)とする。
【0175】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりに比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(4)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池を比較用リチウム硫黄二次電池(4)とする。
【0176】
比較用リチウム硫黄二次電池(4)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、充放電サイクルを行った。その結果、10サイクルを超え、30サイクルに達する前に短絡が発生した。各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図7に示す。
【0177】
[比較例5]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
LiTFSIの使用量を2.75molに変更したこと以外は、比較例3と同様の方法により、電解液を調製した。当該電解液を、比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(5)とする。
【0178】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりに比較用リチウム硫黄二次電池用電解液(5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池を比較用リチウム硫黄二次電池(5)とする。
【0179】
比較用リチウム硫黄二次電池(5)を対象として、前述の充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて、充放電サイクルを行った。その結果、10サイクルに達する前に短絡が発生した。各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表1および図7に示す。
【0180】
[実施例17]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法でリチウム硫黄二次電池用電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(17)とする。
【0181】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
以下の点以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(17)とする。
・リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(17)を使用したこと;
・製造例1で製造した正極の代わりに、製造例2で製造したラージスケールの正極を使用したこと;
・φ13mmの大きさとなるように打ち抜かれた前記リチウム箔の代わりに、縦30mm×横30mmの大きさとなるように打ち抜かれた前記リチウム箔を負極として2枚用い、前記正極の両面を当該2枚のリチウム箔(負極)で挟んだ構造として、使用したこと。
【0182】
リチウム硫黄二次電池(17)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図9~11に示す。また、同時に、前述したインピーダンスの測定を実施した。その結果を図12に示す。
【0183】
(別のリチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(17)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、別のリチウム硫黄二次電池を作製した。当該別のリチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(17’)とする。
【0184】
リチウム硫黄二次電池(17’)を対象として、前述したXPSによる測定を実施した。その結果を図14および15に示す。
【0185】
[実施例18]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で電解液を調製し、続いて、当該電解液に対して、添加剤bとしてのビニレンカーボネート(VC)を、当該VCの含有量が1重量%となるように添加して、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(18)とする。
【0186】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(18)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(18)とする。
【0187】
リチウム硫黄二次電池(18)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図9に示す。
【0188】
[実施例19]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で電解液を調製し、続いて、当該電解液に対して、添加剤bとしてのフルオロエチレンカーボネート(FEC)を、当該FECの含有量が1重量%となるように添加して、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(19)とする。
【0189】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(19)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(19)とする。
【0190】
リチウム硫黄二次電池(19)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図9に示す。また、同時に、前述したインピーダンスの測定を実施した。その結果を図13に示す。
【0191】
(別のリチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(19)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、別のリチウム硫黄二次電池を作製した。当該別のリチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(19’)とする。
【0192】
リチウム硫黄二次電池(19’)を対象として、前述したXPSによる測定を実施した。その結果を図14および15に示す。
【0193】
[実施例20]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で電解液を調製し、続いて、当該電解液に対して、クロロエチレンカーボネート(CLEC)を、当該CLECの含有量が1重量%となるように添加して、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(20)とする。
【0194】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(20)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(20)とする。
【0195】
リチウム硫黄二次電池(20)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図9に示す。
【0196】
[実施例21]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、VCを、当該VCの含有量が3重量%となるように添加したこと以外は、実施例18と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(21)とする。
【0197】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(21)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(21)とする。
【0198】
リチウム硫黄二次電池(21)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図10に示す。
【0199】
[実施例22]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、FECを、当該FECの含有量が3重量%となるように添加したこと以外は、実施例19と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(22)とする。
【0200】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(22)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(22)とする。
【0201】
リチウム硫黄二次電池(22)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図10に示す。
【0202】
[実施例23]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、CLECを、当該CLECの含有量が3重量%となるように添加したこと以外は、実施例20と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(23)とする。
【0203】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(23)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(23)とする。
【0204】
リチウム硫黄二次電池(23)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図10に示す。
【0205】
[実施例24]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、VCを、当該VCの含有量が5重量%となるように添加したこと以外は、実施例18と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(24)とする。
【0206】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(24)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(24)とする。
【0207】
リチウム硫黄二次電池(24)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図11に示す。
【0208】
[実施例25]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、FECを、当該FECの含有量が5重量%となるように添加したこと以外は、実施例19と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(25)とする。
【0209】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(25)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(25)とする。
【0210】
リチウム硫黄二次電池(25)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図11に示す。
【0211】
[実施例26]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例13と同一の方法で調製した電解液に対して、CLECを、当該CLECの含有量が5重量%となるように添加したこと以外は、実施例20と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を得た。当該リチウム硫黄二次電池用電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(26)とする。
【0212】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(17)の代わりに、リチウム硫黄二次電池用電解液(26)を使用したこと以外は、実施例17と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(26)とする。
【0213】
リチウム硫黄二次電池(26)を対象として、前述した充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図11に示す。
【0214】
[実施例27]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、リチウム硫黄二次電池の製造)
実施例17と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、および、当該リチウム硫黄二次電池用電解液を用いたリチウム硫黄二次電池の作製を実施し、リチウム硫黄二次電池を得た。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(27)とする。
【0215】
リチウム硫黄二次電池(27)を対象として、前述した高レートの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率を算出した。その結果を表2および図16に示す。
【0216】
[実施例28]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、リチウム硫黄二次電池の製造)
実施例19と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、および、当該リチウム硫黄二次電池用電解液を用いたリチウム硫黄二次電池の作製を実施し、リチウム硫黄二次電池を得た。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(28)とする。
【0217】
リチウム硫黄二次電池(28)を対象として、前述した高レートの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率を算出した。その結果を表2および図16に示す。
【0218】
[実施例29]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、リチウム硫黄二次電池の製造)
実施例20と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、および、当該リチウム硫黄二次電池用電解液を用いたリチウム硫黄二次電池の作製を実施し、リチウム硫黄二次電池を得た。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(29)とする。
【0219】
リチウム硫黄二次電池(29)を対象として、前述した高レートの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて50サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率を算出した。その結果を表2および図16に示す。
【0220】
[実施例30]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例17と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(30)とする。
【0221】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(30)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(30)とする。
【0222】
リチウム硫黄二次電池(30)を対象として、前述した低温での充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図17に示す。
【0223】
[実施例31]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例19と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(31)とする。
【0224】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(31)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(31)とする。
【0225】
リチウム硫黄二次電池(31)を対象として、前述した低温での充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて100サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図17に示す。
【0226】
[実施例32]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例17と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(32)とする。
【0227】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(32)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(32)とする。
【0228】
リチウム硫黄二次電池(32)を対象として、前述した高温かつ低レートでの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて30サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図18に示す。
【0229】
[実施例33]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製)
実施例25と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液を調製した。当該電解液を、リチウム硫黄二次電池用電解液(33)とする。
【0230】
(リチウム硫黄二次電池の製造)
リチウム硫黄二次電池用電解液(1)の代わりにリチウム硫黄二次電池用電解液(33)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム硫黄二次電池を作製した。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(33)とする。
【0231】
リチウム硫黄二次電池(33)を対象として、前述した高温かつ低レートでの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて30サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図18に示す。
【0232】
[実施例34]
(リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、リチウム硫黄二次電池の製造)
実施例33と同一の方法により、リチウム硫黄二次電池用電解液の調製、および、当該リチウム硫黄二次電池用電解液を用いたリチウム硫黄二次電池の作製を実施し、リチウム硫黄二次電池を得た。当該リチウム硫黄二次電池をリチウム硫黄二次電池(34)とする。
【0233】
リチウム硫黄二次電池(34)を対象として、前述した高温かつ高レートでの充放電試験(サイクル特性試験)の方法を用いて30サイクルの充放電を行い、各サイクルにおける放電容量および充電容量を測定し、容量維持率およびクーロン効率を算出した。その結果を表2および図18に示す。
【0234】
[結果]
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
表1および図1~7に示すとおり、実施例1~5および7~16で作製したリチウム硫黄二次電池は、少なくとも30サイクルまでは短絡は発生せず、かつ、10サイクル目の容量維持率が、比較例1および3で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。また、実施例6で作製したリチウム硫黄二次電池は、少なくとも50サイクルまでは短絡は発生せず、かつ、10サイクル目の容量維持率が、比較例1で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。なお、比較例2および5で作製したリチウム硫黄二次電池は、10サイクルに達する前に短絡が発生したため、リチウム硫黄二次電池として不適である。また、比較例4で作製したリチウム硫黄二次電池は、10サイクルの容量維持率は98.8%と高いものの、30サイクルに達する前に短絡が発生したため、リチウム硫黄二次電池として不適である。
【0238】
実施例1~14および16で作製したリチウム硫黄二次電池は、30サイクル目の容量維持率が、比較例1および3で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。
【0239】
また、実施例1、4、5、7~10、13および14で作製したリチウム硫黄二次電池は、50サイクル目の容量維持率が、比較例1および3で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。
【0240】
さらに、実施例2、6および11で作製したリチウム硫黄二次電池は、50サイクル目の容量維持率が、比較例3で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。
【0241】
また、実施例7~9、13および14で作製したリチウム硫黄二次電池は、100サイクル目の容量維持率が、比較例1で作製したリチウム硫黄二次電池よりも高い。
【0242】
従って、本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、従来の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池と比較して、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が向上し、理論容量により近い値となることが分かった。
【0243】
また、実施例7~13と、実施例1~3との比較から、本発明の電解液における電解質の濃度が同程度である場合、LiDFOB等のハロゲンを含むリチウム塩を添加剤aとしてさらに含有することにより、前記放電容量をより向上させることができることが分かった。さらに、実施例14から、添加剤aとしてLiPFを含有する電解液が、ハロゲンを含むリチウム塩を含有する電解液と同様に、前記放電容量をより向上させることができることが分かった。
【0244】
加えて、図7を参照すると、実施例15および16で作製したリチウム硫黄二次電池は、実施例13で作製したリチウム硫黄二次電池と比較して、クーロン効率は低く、充放電の効率が低い。また、30サイクルの容量維持率も、実施例13の方が、実施例15および16よりも高い。
【0245】
よって、本発明の電解液が高溶解性エーテル系溶媒と、低溶解性エーテル系溶媒の混合溶媒である場合、前記高溶解性エーテル系溶媒:前記低溶解性エーテル系溶媒の体積比率が5:5であることが特に好ましいことが分かった。
【0246】
表2および図9~11に示す通り、実施例17~26で作製したリチウム硫黄二次電池は、少なくとも30サイクルまでは短絡は発生せず、かつ、約25サイクル程度までは、その容量維持率が、良好な範囲を維持している。
【0247】
化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を添加物bとして使用した実施例18~26で作製したリチウム硫黄二次電池は、実施例17で作製したリチウム硫黄二次電池と比較して、その容量維持率を良好な範囲に維持できる期間(サイクル数)がより長い傾向がある。
【0248】
図12および図13に示す通り、化合物(2)に該当するFECを添加物bとして使用した実施例19で作製したリチウム硫黄二次電池は、実施例17で作製したリチウム硫黄二次電池と比較して、充放電サイクルを繰り返した際の抵抗の増加がより低減されている。
【0249】
図14および図15の記載から、化合物(2)に該当するFECを添加物bとして使用した実施例19で作製したリチウム硫黄二次電池には、充放電サイクルを繰り返した際に、正極表面に、FECの還元生成物を含む被膜が形成されていることが理解できる。
【0250】
従って、本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、従来の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池と比較して、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量を、良好な範囲に長期間維持することができると言える。また、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を添加剤bとして含む本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、正極表面に形成される前記被膜により、充放電サイクルを繰り返す際の抵抗の増大が低減される。そのことから、前記添加剤bを含む前記リチウム硫黄二次電池は、前記放電容量を良好な範囲に維持できる期間をより長期間とすることができ、サイクル特性により優れることが分かった。
【0251】
表2および図16に示す通り、実施例27~29で作製したリチウム硫黄二次電池は、高レート(0.3/0.3C)で充放電サイクルを繰り返した場合でも、少なくとも30サイクルまでは、短絡は発生せず、かつ、その容量維持率が、良好な範囲を維持している。また、化合物(2)を添加物bとした実施例28および29で作製したリチウム硫黄二次電池は、実施例27で作製したリチウム硫黄二次電池と比較して、その容量維持率を良好な範囲に維持できる期間(サイクル数)がより長い。
【0252】
従って、本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、高レートで充放電サイクルを繰り返した場合でも、従来の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池と比較して、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量を良好な範囲に長期間維持することができると言える。また、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を添加剤bとして含む本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、高レートで充放電サイクルを繰り返した場合でも、前記放電容量を良好な範囲に維持できる期間をより長期間とすることができ、サイクル特性により優れることが分かった。
【0253】
表2および図17に示す通り、実施例30および31で作製したリチウム硫黄二次電池は、低温(0℃)の環境下で充放電サイクルを100サイクル繰り返した場合でも、短絡は発生せず、かつ、その容量維持率が、良好な範囲を維持している。
【0254】
従って、本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、低温環境下で充放電サイクルを繰り返す場合でも、従来の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池と比較して、放電容量を良好な範囲に長期間維持することができると言える。
【0255】
表2および図18に示す通り、実施例32~34で作製したリチウム硫黄二次電池は、高温(60℃)の環境下で充放電サイクルを繰り返した場合でも、約20サイクルまでは、短絡は発生せず、かつ、その容量維持率が、良好な範囲を維持している。また、化合物(2)を添加物bとした実施例33および34で作製したリチウム硫黄二次電池は、実施例32で作製したリチウム硫黄二次電池と比較して、その容量維持率を良好な範囲に維持できる期間(サイクル数)がより長い。
【0256】
従って、本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、高温環境下で充放電サイクルを繰り返す場合でも、従来の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池と比較して、放電容量を良好な範囲に長期間維持することができると言える。また、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を添加剤bとして含む本発明の非水電解液を備えるリチウム硫黄二次電池は、高温環境下で充放電サイクルを繰り返した場合でも、前記放電容量を良好な範囲に維持できる期間をより長期間とすることができ、サイクル特性により優れると言える。
【0257】
以上のことから、本発明の非水電解液は、硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、放電容量が理論容量により近い値となるリチウム硫黄二次電池の製造に利用可能であるという効果を奏することが分かった。
【0258】
また、本発明の非水電解液は、低温および高温の環境下であっても放電容量に優れるリチウム硫黄二次電池の製造に利用することができる。
【0259】
さらに、化合物(1)および化合物(2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を添加剤bとして含む本発明の非水電解液は、放電容量を良好な範囲により長期間維持でき、サイクル特性により優れるリチウム硫黄二次電池の製造に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0260】
本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄二次電池用電解液は、硫黄の担持量が多い正極を備え、かつ、充放電サイクルを繰り返した際の放電容量が理論容量(1672mAhg-1)により近い値となるリチウム硫黄二次電池の製造に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18