(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066472
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】位置決め治具および位置決め治具を使用するガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05B 15/68 20180101AFI20240508BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20240508BHJP
C03C 17/32 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B05B15/68
B05B13/04
C03C17/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179841
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022175704
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 充司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸二
【テーマコード(参考)】
4D073
4F035
4G059
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CB03
4D073CB20
4F035AA03
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB03
4F035CB13
4F035CD06
4F035CD18
4G059AA01
4G059AB13
4G059AB19
4G059AC18
4G059AC22
4G059FA05
4G059FA07
(57)【要約】
【課題】被塗布物に塗布液を噴出するノズルの高さ調整工程および水平位置調節工程の時間を短縮して、取付時間を短縮することができる位置決め治具および位置決め治具を使用するガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】スプレーコーティング用のスプレーノズル11の位置決め治具30は、載置台33にスプレーコーティング用のスプレーノズル11と嵌め合う溝33cが形成されている。また、位置決め治具30は、土台31と、土台31から立設し載置台33が接続するブラケット32A・32Bを有し、ブラケット32A・32Bには、載置台33の高さを調整する高さ調整機構である高さ調整ネジ44および高さ調整ネジ固定台32fを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台にスプレーコーティング用のスプレーノズルと嵌め合う凹部が形成されている、
ことを特徴とするスプレーコーティング用のスプレーノズルの位置決め治具。
【請求項2】
前記凹部は樹脂により構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項3】
土台と、
前記土台から立設し前記載置台が接続するブラケットを有し、
前記ブラケットには、前記載置台の高さを調整する高さ調整機構を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項4】
複数の載置台を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項5】
前記土台と前記ブラケットの間に、
ノズル間隔調整機構を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の位置決め治具。
【請求項6】
スプレーコーティングされたガラス基板の製造方法であって、
スプレーコーティング用のスプレーノズルを準備する準備工程と、
準備工程後に塗布液をガラス基板に塗布する塗布工程を有し、
前記準備工程では、前記請求項1から5のいずれか一項に記載の位置決め治具を使用する、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記準備工程では、複数のスプレーコーティング用のスプレーノズルの高さ方向の位置決めをした
後に、前記複数のスプレーコーティング用のスプレーノズルの間隔を位置決めする、
ことを特徴とする請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記準備工程では、ダミー基板の上に、位置決め治具を載置する、
ことを特徴とする請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め治具および位置決め治具を使用するガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板をカバー部材として用いる場合、ガラス基板には、アンチグレア膜が設けられる場合がある。アンチグレア膜の例としては、シリカ前駆体から形成されるシリカ膜が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
アンチグレア膜をガラス基板上に付着させる工程としては、アンチグレア膜形成用のコーティング剤をガラス基板上に塗布した後、乾燥(加熱)する。このコーティング剤を塗布する方法は、スプレー塗布法であることが好ましく、スプレー塗布には、周知の二流体ノズルや一流体ノズル等のノズルを用いることができる。
例えば、二流体ノズルを用いる場合、スプレー圧力が高くなるほど液滴は小さくなり、また、液量が多くなるほど液滴は大きくなるが、液滴の粒径を調整するために、ノズルとガラス基板上の塗布表面との上下方向の距離を調整する必要がある。従来において、成膜工程を行う場合には、被塗布物であるガラス基板のサンプルを成膜室(チャンバ)に配置して、ノズルを取り付けて、ノズル高さを調整していた。また、ノズルの水平方向の調整も行っていた。
また、被塗布物であるガラス基板の種類によってはノズルの変更の必要があるが、ノズルを変更する際に高さ方向の確認工程では、ノズルの仮取付を行い、目視により高さ方向のずれの確認を行い、再度高さ調整を行っていた。そして、高さが調整された状態において、ノズルの本取付を行い固定していた。また、水平方向の位置確認においても、同様の工程が必要となっていた。したがって、従来の高さ調節工程および水平位置調節工程においては、作業者の手間も多く準備工程に時間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、斯かる現状の課題に鑑みてなされたものであり、被塗布物、特にガラス基板などの板状の被塗布物にアンチグレア(Antiglare)膜や耐指紋性(Antifingerprint)膜を形成するための塗布液を噴出するノズルの高さおよび水平位置を調整し、取付する時間を短縮することができる位置決め治具および位置決め治具を使用するガラス基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明の態様1に係るスプレーコーティング用のスプレーノズルの位置決め治具では、載置台にスプレーコーティング用のスプレーノズルと嵌め合う凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、スプレーコーティング用のスプレーノズルを凹部に嵌め合わせることにより、スプレーノズルの高さ方向の位置調整および水平方向の位置調整を容易に行うことができ、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0009】
また、態様2の位置決め治具では、態様1において、前記凹部は樹脂により構成されることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、スプレーノズルの先端を凹部に嵌め合わせた際に、スプレーノズルの先端に傷がつくことを防止することができる。
【0011】
また、態様3の位置決め治具では、態様1または態様2において、土台と、前記土台から立設し前記載置台が接続するブラケットを有し、前記ブラケットには、載置台の高さを調整する高さ調整機構を有することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、土台を基準として載置台の高さ位置を調節することが容易となり、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0013】
また、態様4の位置決め治具では、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、複数の載置台を有することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、複数のスプレーノズルの高さ方向の位置決めを同時に行うことができるので、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0015】
また、態様5の位置決め治具では、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、前記土台と前記ブラケットの間に、ノズル間隔調整機構を有することが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、複数のスプレーノズルの位置決めを行う場合において、スプレーノズル同士の間隔を容易に調整することができるので、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明の態様6のスプレーコーティングされたガラス基板の製造方法において、スプレーコーティング用のスプレーノズルを準備する準備工程と、準備工程後に塗布液をガラス基板に塗布する塗布工程を有し、前記準備工程では、態様1から5のいずれか一項に記載の位置決め治具を使用することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、準備工程において、位置決め治具を使用することにより、スプレーノズルの高さ方向の位置調整および水平方向の位置調整を容易に行うことができ、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0019】
また、態様7のガラス基板の製造方法では、態様6において、複数のスプレーコーティング用のスプレーノズルの高さ方向の位置決めをした後に、前記複数のスプレーコーティング用のスプレーノズルの間隔を位置決めすることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、高さ方向の位置調整を終えた後に、載置台の間隔を位置決めすることで水平方向の位置調整を行うことができる。
【0021】
また、態様8のガラス基板の製造方法では、態様6または態様7において、前記準備工程では、ダミー基板の上に、位置決め治具を載置することが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、ガラス基板を用意することなく準備工程を行うことができるので、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
本発明に係る位置決め治具によれば、スプレーコーティング用のスプレーノズルを凹部に嵌め合わせることにより、スプレーノズルの高さ方向の位置調整および水平方向の位置調整を容易に行うことができ、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0025】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法によれば、準備工程において、位置決め治具を使用することにより、スプレーノズルの位置決めを容易に行うことができ、スプレーノズルを交換する際の取付時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造装置の全体構成を示す模式的正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造装置を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制御部を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る位置決め治具を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る位置決め治具を示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る準備工程を示す正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る塗布工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、発明の実施の形態を説明する。実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。
【0028】
図1は、本実施形態に係るガラス基板の製造装置1を示す側面図である。また、
図2は、ガラス基板の製造装置1を示す平面図である。
【0029】
図1および
図2に示すガラス基板の製造装置1は、上流から流れるガラス基板Gの上にスプレーコート法によりアンチグレア膜や耐指紋性膜を形成した、膜付きガラス基板を製造するための装置である。ガラス基板Gは、板状の部材であり、表面にスプレーコーティングが施される部材である。なお、スプレーコート法に用いられる塗布液として、シリコンアルコキシド等のアンチグレアコーティング剤や耐指紋性コーティング剤や撥水コーティング剤等が用いられる。また、被塗布物としてガラス基板Gが用いられているがこれに限定するものではなく、例えば、セラミック板、樹脂板等を用いてもよい。
【0030】
製造装置1は、スプレーノズル11を備える。スプレーノズル11は、スプレーコーティング用のスプレーノズルであり、塗布液を広範囲に噴霧するノズルである。
【0031】
スプレーノズル11には、
図1に示される、塗布液供給機構12が接続されている。前記塗布液供給機構12には、膜を形成するための塗布液が溜められている。塗布液は、塗布液供給機構12からスプレーノズル11に塗布液が供給される。塗布液は、スプレーノズル11からガラス基板Gに向けて吐出される。スプレーノズル11は、塗布液を霧化し、霧化した塗布液をガラス基板Gの上に供給できることが好ましい。
【0032】
製造装置1は、スプレーノズル11に対してガラス基板GをX軸方向に沿って相対的に移動させる移動機構13を備えている。例えば、移動機構13は、
図1に示すように、ガラス基板GをX軸方向に沿って移動できるように、複数の搬送ロールにより構成されている。移動機構13は、ガラス基板Gをスプレーノズル11に対してX軸方向のx1側からx2側に向けて一定速度で相対的移動させる。
【0033】
スプレーノズル11は、
図2に示される走査機構14に接続されている。この走査機構14により、X軸方向に対して直交するY軸方向に沿ってガラス基板Gを横切るようにスプレーノズル11が往復走査する。具体的には、走査機構14により、ガラス基板Gのy1側端部よりもy1側の位置と、y2側端部よりもy2側の位置との間をスプレーノズル11が往復走査することによりガラス基板G全面に霧化した塗布液を塗布することができる。
【0034】
すなわち、走査機構14は、ガラス基板Gよりもy1側までスプレーノズル11を移動させた後に、移動方向を反転させて、ガラス基板Gよりもy2側までスプレーノズル11を移動させて、当該往復動を繰り返す装置である。
【0035】
図3に示すように、塗布液供給機構12、移動機構13、および走査機構14は制御部15に接続されており、制御部15によって制御される。具体的には、制御部15は、塗布液供給機構12からスプレーノズル11に供給される塗布液の流量を調整する。制御部15による塗布液の流量調整により、ガラス基板Gに塗布される塗布液の量が制御される。制御部15は、移動機構13によるガラス基板Gの移動速度を制御する。制御部15は、走査機構14によるスプレーノズル11の走査方向および走査速度を制御する。
【0036】
次に、スプレーコーティング用のスプレーノズル11を走査機構14に取付ける準備工程S01について
図4から
図6を用いて説明する。
一般的に、スプレーコート法では、移動機構13上に配置されたガラス基板Gの表面に対するスプレーノズル11の噴射位置は、塗布液の種類、およびスプレーノズル11の種類によって一義的に定められる。ガラス基板Gの表面に対するスプレーノズル11の噴射位置が、所定の位置に無い場合、塗布ムラや未塗布面の生成などの問題が発生する。
【0037】
そこで、従来の準備工程S01においては、まず、移動機構13の上に実際のガラス基板Gを配置して、スプレーノズル11との距離を測定していた。スプレーノズル11の走査機構14への取付は、作業者が目視によっておおよその位置を確認して仮取付を行い、スプレーノズル11のY軸方向の位置決めを行っていた。そして、スプレーノズル11の高さ方向の調整については、実際のガラス基板Gに対する高さ位置を確認し微差について調整していた。
【0038】
これに対し、本発明においては、準備工程S01において、位置決め治具30を使用するものである。位置決め治具30を使用して、スプレーノズル11の位置を固定した状態でスプレーノズル11を走査機構14へ取り付けることができるので、取付時間を短縮することができる。
【0039】
次に、位置決め治具30の詳細について
図4および
図5を用いて説明する。
位置決め治具30は、土台31と、土台31から立設するブラケット32A・32Bと、ブラケット32A・32Bにそれぞれ接続される複数の載置台33・33と、を有する。また、本実施形態においては、土台31に、二つのブラケット32A・32Bを設けているが、ブラケットの数は一つでもよく、三つ以上でもよい。
【0040】
土台31は、直方体状の部材であり、底面は、ダミー基板100の表面と平行になるように形成されている。土台31の上面には、ブラケット32A・32Bを嵌めて位置合わせするための凹部31a・31bが設けられている。本実施形態においては、第一のブラケット32Aの位置合わせを行うための第一の凹部31aと、第二のブラケット32Bの位置合わせを行うための第二の凹部31bと、が設けられている。第一の凹部31aのX軸方向の幅は、第一のブラケット32AのX軸方向の長さとほぼ同一である。また、第一の凹部31aのY軸方向の長さは、土台31のY軸方向の長さとほぼ同一である。第二の凹部31bのX軸方向の幅は、第二のブラケット32BのX軸方向の長さよりも大きい。また、第二の凹部31bのY軸方向の幅は、土台31のY軸方向の長さよりも短い。
【0041】
また、土台31のX軸方向の端部であって、第二の凹部31b側の端部には水平調整ネジ固定台31cが設けられている。水平調整ネジ固定台31cは、土台31の上面から高さ方向に突出しており、水平調整ネジ固定台31cには、水平調整ネジ41を挿通するための図示せぬ挿入孔が設けられている。
【0042】
ブラケット32A・32Bは土台31の底面に対して直交する高さ方向に立設する部材である。第一のブラケット32Aは、直方体状の部材である。第二のブラケット32Bは直方体状の立設部材32Baと、直方体状の立設部材32BaからX軸方向に突出した支持台部32Bbとを備えている。支持台部32Bbは、X軸調節用の固定部材42を挿入する固定部材用長孔32Bcが設けられている。また、第二のブラケットの立設部材32Baの支持台部32Bbと反対側の端面には、水平調整ネジ41を挿通するための図示せぬ挿入孔が設けられている。
【0043】
第一のブラケット32Aおよび第二のブラケット32Bには、複数の長孔が設けられている。ブラケット32A・32BのY軸方向中央部の長孔は、載置台33の根本部33aを挿入するための第一の長孔32dであり、Y軸方向端部側の長孔は、固定部材43を挿入する固定部材用長孔である。
【0044】
第一のブラケット32Aおよび第二のブラケット32Bの上端には、高さ調整ネジ44を固定するための高さ調整ネジ固定台32fが設けられている。高さ調整ネジ固定台32fは、ブラケット32A・32Bの上端からX軸方向に突出しており、高さ調整ネジ固定台32fには、高さ調整ネジ44を挿通するための図示せぬ挿入孔が設けられている。
【0045】
載置台33は、樹脂により構成され、X軸方向へ突出するノズル把持部33bを備えている。ノズル把持部33bには、スプレーノズル11と嵌め合う凹部が形成されている。本実施形態においては、凹部は溝33cによって形成されている。溝33cはY軸方向と平行に設けられている。なお、載置台33は、溝33cが形成されている部分が樹脂により構成されていればよく、それ以外の部分は金属により構成されてもよい。なお、凹部は、溝33cで構成されているが、これに限定するものではない。例えば、凹部は、長孔で形成されていてもよい。長孔は、スプレーノズル11と嵌め合わせた際に、スプレーノズル11がY軸方向と平行に移動可能な形状を有していることが好ましい。
【0046】
また、上述したように、載置台33の根本部33aは第一の長孔32dに挿通されている。根本部33aには、高さ調整ネジ44を挿入するための図示せぬ挿入調整孔が設けられている。高さ調整ネジ44を回転させることにより、高さ調整ネジ固定台32fに対して根本部33aが上下方向に移動可能に構成されている。
【0047】
次に、準備工程S01における位置決め治具30を用いたスプレーノズル11の取り付け手順について
図6を用いて説明する。
まず、ダミー基板100を移動機構13の上に配置する。ダミー基板100は厚さがガラス基板Gと同じ厚さとなるように構成され、密度がガラス基板Gよりも低く靭性の高い部材によって形成されている。すなわち、実際のガラス基板Gよりも扱いやすく移動機構13に配置しやすい素材で形成されている。なお、ダミー基板100は、繰り返し使用による変形を少なくするために、密度がガラス基板Gよりも高く靭性の低い部材によって形成されていてもよいし、ガラス基板Gを用いてもよい。また、取り扱いを容易にする観点では、ダミー基板100の面積は実際のガラス基板Gよりも小さくてもよい。
【0048】
ダミー基板100を配置する一方で、位置決め治具30の載置台33の高さを所定の位置に合わせて固定する。すなわち、高さ調整ネジ44を回転することにより、載置台33の根本部33aと、高さ調整ネジ固定台32fとの距離を調整する。第一のブラケット32Aに固定された載置台33および第二のブラケット32Bに固定された載置台33の高さは個別に調整することができる。これにより、スプレーノズル11の種類や形状に合わせて、スプレーノズル11の位置を所望の高さに合わせることが可能となる。
【0049】
また、第二のブラケット32Bの水平調整ネジ41を回転させることにより、第一のブラケット32Aと第二のブラケット32Bとの距離を調節することができる。このように構成することより、複数のスプレーノズル11のX軸方向の配置関係を調整することができる。
【0050】
次に、位置関係を固定した位置決め治具30を用いて、スプレーノズル11を支持する。スプレーノズル11は、位置決め治具30の載置台33の溝33cに載置される。載置台33の溝33cはY軸方向と平行に構成されており、スプレーノズル11の端を嵌め合わせることにより、スプレーノズル11が、自立するように載置される。
【0051】
次に、スプレーノズル11が載置台33に載置された状態で、位置決め治具30をダミー基板100上に配置する。位置決め治具30をダミー基板100上に載置することにより、ガラス基板Gに対するスプレーノズル11の位置が位置決めされる。そして、スプレーノズル11を走査機構14に取り付ける。走査機構14へのスプレーノズル11の取り付けにおいて、スプレーノズル11は、位置決め治具30による高さ調整をした後に、走査機構14に設置されているT型の固定治具35のスプレーノズル固定用の長孔35aに対して、側方から固定部材36で位置決めをすることで取り付ける。このようにすると、位置決め治具30において、スプレーノズル11が自立しているため、走査機構14に対して固定する際の取付作業が容易となる。
【0052】
そして、準備工程S01を終えると、
図7に示すように、位置決め治具30を外し、ガラス基板Gの上にスプレーコート法により膜を製造する塗布工程S02を行う。
【0053】
このように構成することにより、作業者は、準備工程S01において、スプレーノズル11の位置決めを容易に行うことができる。また、スプレーノズル11の位置決めを正確に行うことができる。さらに、位置決め治具30の高さ調整ネジ44および水平調整ネジ41を回転することで、高さおよび水平方向の位置調整が容易となるため、スプレーノズル11の形状に合わせて位置調整条件を設定することが容易となる。
【0054】
以上のように、本発明のスプレーコーティング用のスプレーノズル11の位置決め治具30は、載置台33にスプレーコーティング用のスプレーノズル11と嵌め合う溝33cが形成されていることを特徴する。
【0055】
このように構成することにより、スプレーコーティング用のスプレーノズル11を溝33c(凹部)に嵌め合わせることにより、スプレーノズル11の高さ方向の位置調整および水平方向の位置調整を容易に行うことができ、スプレーノズル11を交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0056】
また、本発明の位置決め治具30は、土台31と、土台31から立設し載置台33が接続するブラケット32A・32Bを有し、ブラケット32A・32Bには、載置台33の高さを調整する高さ調整機構である高さ調整ネジ44および高さ調整ネジ固定台32fを有するものである。
このように構成することにより、土台31を基準として載置台33の高さ位置を調節することが容易となり、スプレーノズル11を交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0057】
また、本発明の位置決め治具30においては、載置台33は樹脂である。
このように構成することにより、スプレーノズル11の先端を溝33cに嵌め合わせた際に、スプレーノズル11の先端に傷がつくことを防止することができる。なお、樹脂としては、例えば、モノマーキャストナイロン・UPE(超高分子量ポリエチレン)等のエンプラを用いることができる。
【0058】
また、本発明の位置決め治具30においては、複数の載置台33を有する。
このように構成することにより、複数のスプレーノズル11の高さ方向の位置決めを同時に行うことができるので、スプレーノズル11を交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0059】
また、本発明の位置決め治具30においては、土台31のブラケット32B側に、ノズル間隔調整機構である水平調整ネジ41および水平調整ネジ固定台31cを有する。
このように構成することにより、複数のスプレーノズル11の位置決めを行う場合において、スプレーノズル11同士の間隔を容易に調整することができるので、スプレーノズル11を交換するの際の取付時間を短縮することができる。
【0060】
また、本発明におけるスプレーコーティングされたガラス基板Gの製造方法において、スプレーコーティング用のスプレーノズル11を準備する準備工程S01と、準備工程S01後に塗布液をガラス基板に塗布する塗布工程S02を有し、準備工程S01では、位置決め治具30を使用する。
このように構成することにより、準備工程S01において、位置決め治具30を使用することにより、スプレーノズル11の高さ方向の位置調整および水平方向の位置調整を容易に行うことができ、スプレーノズル11を交換する際の取付時間を短縮することができる。
【0061】
また、本発明のガラス基板Gの製造方法において、複数のスプレーコーティング用のスプレーノズル11の高さ方向の位置決めをした後に、複数のスプレーコーティング用のスプレーノズル11の間隔を位置決めすることが好ましい。
このように構成することにより、高さ方向の位置調整を終えた後に、複数のスプレーコーティング用のスプレーノズル11間隔を位置決めすることで水平方向の位置調整を行うことができる。
【0062】
また、本発明のガラス基板Gの製造方法において、準備工程S01では、ダミー基板100の上に、位置決め治具30を載置することが好ましい。
このように構成することにより、ガラス基板Gを用意することなく準備工程S01を行うことができるので、スプレーノズル11を交換する際の取付時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 製造装置
11 スプレーノズル
12 塗布液供給機構
13 移動機構
14 走査機構
30 位置決め治具
31 土台
32A・32B ブラケット
33 載置台
33c 溝(凹部)