(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066477
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】半導体接着剤用エポキシ樹脂、その製造方法及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/06 20060101AFI20240508BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20240508BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240508BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240508BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240508BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08G59/06
C08G59/32
C09J7/30
C09J133/00
C09J11/06
C09J163/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181328
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0142830
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514019246
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ヒョン エ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,スク ヨン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA13
4J004AB05
4J004FA05
4J036AE05
4J036AF06
4J036AF08
4J036AF19
4J036AF36
4J036BA02
4J036CA03
4J036CA08
4J036CA09
4J036CC01
4J036DB06
4J036DB15
4J036DC01
4J036DC05
4J036DC40
4J036DC41
4J036DD07
4J036FA01
4J036FA02
4J036FA04
4J036FA05
4J036FB03
4J036FB07
4J036GA02
4J036HA12
4J036JA06
4J040DF002
4J040EC051
4J040HC23
4J040JB02
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA08
4J040NA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改質されたエポキシ樹脂によるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂間の相溶性の制御によって、改善された熱膨張特性を示す半導体接着剤用の改質されたエポキシ樹脂、その製造方法、それを含む組成物及びその用途を提供する。
【解決手段】本発明は、5,000~25,000の重量平均分子量、及び5.0~20.0の多分散指数を有し、(1)エポキシ由来単位と(2)改質剤由来単位とを含む改質されたエポキシ樹脂、その製造方法、それを含む組成物及び用途に関する。本発明の改質されたエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物は、硬化時に、エポキシ領域及びアクリル領域への相分離現象(モルフォロジー特性)により、低い熱膨張係数(CTE)、すなわち、熱膨張特性が改善される。このような、本発明の改質されたエポキシ及びそれを含むエポキシ組成物は半導体パッケージング用接着剤として好適である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量の範囲が5,000~25,000、そして多分散指数の範囲が5.0~20.0であり、
(1)下記化学式(AF)、化学式(BF)、及び化学式(CF)で構成される群から選択される1種のエポキシ由来単位;及び
(2)下記化学式(1F)、化学式(2F)、化学式(3F)、化学式(4F)、化学式(5F)及び化学式(6F)で構成される群から選択される少なくとも1種の改質剤由来単位を含み、
前記エポキシ由来単位と前記改質剤由来単位は、下記化学式(L)を媒介として連結される、改質されたエポキシ樹脂。
【化1】
(前記化学式(CF)においてSは
【化2】
であり、
(化学式(AF)~(CF)において、nは1~50の整数であり、
前記エポキシ樹脂は、下記化学式(7F)の構造を有するか又は有さず、
前記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)の構造を有する場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは下記化学式(7F)であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して下記化学式(L)の**に対する単一結合、下記化学式(7F)又は下記化学式(E)のグリシジル基であり、
前記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)を有さない場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して、下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結又は下記化学式(E)のグリシジル基である。)
【化3】
(前記化学式(1F)においてRはメチル基であり、化学式(3F)において、Xは-C
H
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5F)において、YはそれぞれH及びメチル基から独立して選択され、化学式(1F)~(6F)において*はそれぞれ下記化学式(L)の*に対する単一結合による連結である)
【化4】
(化学式(7F)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群からそれぞれ独立して選択され、n’は0~5の整数である。)
【化5】
(前記化学式(L)において、前記**は前記化学式(AF)、(BF)、又は(CF)のMに対する単一結合による連結であり、前記*は下記化学式(1F)、(2F)、(3F)、(4F)、(5F)、又は(6F)の*に対する単一結合による連結である。)
【請求項2】
前記改質されたエポキシ樹脂は、エポキシ当量(EEW、Epoxy Equivalent Weight)が150g/Eq~500g/Eqである、請求項1に記載の改質されたエポキシ樹脂。
【請求項3】
下記化学式(AS)~(CS)で構成される群から選択された1種のエポキシ樹脂と、下記化学式(1)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の改質剤とを、前記改質剤100重量部当たり1~10重量部のリン系触媒の存在下で混合した後、加熱する段階を含む、改質されたエポキシ樹脂の製造方法。
【化6】
(前記化学式(CS)においてSは
【化7】
であり、
(前記化学式(AS)~(CS)において、nは1~50の整数であり、Kは下記化学式(E)のグリシジル基である。)
【化8】
(前記化学式(1)においてRはメチル基であり、化学式(3)において、Xは-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5)において、YはH及びメチル基で構成される群から独立して選択される。)
【請求項4】
前記改質剤として、前記化学式(1)及び(2)で構成される群から選択された少なくとも1種の3官能性改質剤が使用される場合、3官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、3官能性改質剤のヒドロキシ基が5モル~20モルとなる量で使用される、請求項3に記載の改質されたエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記改質剤として、前記化学式(3)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の2官能性改質剤が使用される場合、2官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、2官能性改質剤のヒドロキシ基が10モル~30モルとなる量で使用される、請求項3に記載の改質されたエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記改質剤として、前記化学式(1)及び(2)で構成される群から選択された少なくとも1種の3官能性改質剤と、前記化学式(3)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の2官能性改質剤とが共に使用される場合、前記改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、2官能性改質剤と3官能性改質剤の総ヒドロキシ基が5モル~30モルとなる量で使用される、請求項3に記載の改質されたエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項7】
下記化学式(7)の1官能性改質剤が、前記化学式(1)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の改質剤と共に使用される、請求項3乃至6のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【化9】
(但し、前記化学式(7)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群から独立して選択され、n’は0~5の整数である。)
【請求項8】
前記1官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、1官能性改質剤のヒドロキシ基が30モル以下となる量で使用される、請求項7に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記加熱する段階は、80℃~140℃の温度で行われる、請求項3に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記加熱する段階は30分~10時間の間行われる、請求項3に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
エポキシ樹脂、アクリル樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含む組成物であって、前記エポキシ樹脂は、前記エポキシ樹脂の総重量を基準に、請求項1又は請求項2に記載の改質されたエポキシ樹脂10重量%~90重量%及び非改質のエポキシ樹脂90重量%~10重量%を含む、エポキシ組成物。
【請求項12】
前記アクリル樹脂の含量は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して20~1000重量部である、請求項11に記載のエポキシ組成物。
【請求項13】
前記組成物は無機フィラーをさらに含む、請求項11に記載のエポキシ組成物。
【請求項14】
前記組成物は接着剤として使用される、請求項11に記載のエポキシ組成物。
【請求項15】
請求項11に記載のエポキシ組成物を含む、半導体接着フィルム。
【請求項16】
請求項11に記載のエポキシ組成物の硬化物。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化物を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体接着剤用エポキシ樹脂、その製造方法、それを含む組成物及びその用途に関する。より詳細に、本発明は、改質されたエポキシ樹脂によるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂間の相溶性(compatibility)の制御によって、改善された熱膨張特性を示す半導体接着剤用の改質されたエポキシ樹脂、その製造方法、それを含む組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ素材は、優れた機械的特性、電気絶縁性、耐熱性、耐水性及び接着性などの物性により、塗料、プリント配線基板、IC封止材、電気部品、電子部品、接着剤などに広く用いられる。
【0003】
しかし、半導体パッケージングに適用すると、シリコンウエハと比べて、エポキシ素材の熱膨張係数(CTE、Coefficient of Thermal Expansion)が高く、部品の信頼性及び加工性が著しく制限される。よって、エポキシ素材の熱膨張係数を下げるための研究が持続的に進められてきた。一方、半導体パッケージングは、高集積化、薄膜化及び大面積化の傾向にある。このような半導体パッケージングの傾向に伴い、エポキシ素材の高いCTEによる半導体パッケージングにおいて、反り(warpage)や亀裂の発生も深刻化しており、これにより半導体パッケージング工程が不可能な場合が発生するだけでなく、製造された半導体パッケージング部品の信頼性確保も問題となっている。
【0004】
したがって、業界では、エポキシ素材の高いCTEによる半導体パッケージングにおける反り及び/又は亀裂の問題を解消し、半導体パッケージング工程における工程性及び部品の信頼性確保を可能にする熱膨張特性がより改善されたエポキシ素材が持続的に要求されている。これに関連し、本発明者は、エポキシ樹脂にアルコキシシリル基を導入することにより、熱膨張特性が向上(すなわち、CTEの減少)したアルコキシシリル基を有するエポキシ樹脂を開発して出願した(韓国特許出願10-2013-0111473及び10-2014-0021884など)。
【0005】
半導体パッケージング工程において、半導体チップを積層したり、半導体チップを基板に貼り付けるための接着素材としてエポキシ素材が使用される。このとき、脆い(brittle)エポキシ素材の応力緩和特性を改善し、粘着特性を付与するために、接着剤の製造時に、エポキシ樹脂にアクリル樹脂をブレンドして使用する。これにより、エポキシ接着剤は硬化反応が進行しながら、エポキシ領域及びアクリル領域への相分離現象(curing-induced phase separation)が発生する。
【0006】
本発明者は、特定の構造のノボラックエポキシ樹脂とアクリル樹脂との相分離特性(モルフォロジー特性)が、エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含む組成物の熱膨張特性に影響を与えることを見出した。すなわち、特定範囲の平均分子量、多分散指数(polydispersity index、PDI)、そして、さらに特定範囲のエポキシ当量(EEW、Epoxy Equivalent Weight)値を有するようにノボラックエポキシ樹脂を改質し、改質されたノボラックエポキシ樹脂を使用して、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂間の相分離特性を制御すると、エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含む組成物の熱膨張特性がより改善されることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願10-2013-0111473
【特許文献2】韓国特許出願10-2014-0021884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定範囲の重量平均分子量及び多分散指数を有するように改質されたノボラックエポキシ樹脂を用いると、より改善された熱膨張特性(すなわち、低いCTE)を有するエポキシ組成物、例えば、エポキシ接着剤が製造されるという発現に基づくものであって、改質されたノボラックエポキシ樹脂、その製造方法、それを含む組成物及びその用途を提供することである。本発明の改質されたエポキシ樹脂は、特に半導体用接着フィルムに有用に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1観点によれば、重量平均分子量の範囲が5,000~25,000、そして多分散指数の範囲が5.0~20.0であり、
(1)下記化学式(AF)、化学式(BF)、及び化学式(CF)で構成される群から選択される1種のエポキシ由来単位;及び
(2)下記化学式(1F)、化学式(2F)、化学式(3F)、化学式(4F)、化学式(5F)及び化学式(6F)で構成される群から選択される少なくとも1種の改質剤由来単位を含み、
上記エポキシ由来単位と上記改質剤由来単位は、下記化学式(L)を媒介として連結される、改質されたエポキシ樹脂が提供される:
【化1】
(上記化学式(CF)においてSは
【化2】
であり、
(化学式(AF)~(CF)において、nは1~50の整数であり、
上記エポキシ樹脂は下記化学式(7F)の構造を有するか又は有さず、
上記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)の構造を有する場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは下記化学式(7F)であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して下記化学式(L)の**に対する単一結合、下記化学式(7F)又は下記化学式(E)のグリシジル基であり、
上記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)を有さない場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結又は下記化学式(E)のグリシジル基である。)
【化3】
(上記化学式(1F)においてRはメチル基であり、化学式(3F)において、Xは-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5F)において、YはそれぞれH及びメチル基から独立して選択され、化学式(1F)~(6F)において*はそれぞれ下記化学式(L)の*に対する単一結合による連結である。)
【化4】
(化学式(7F)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群からそれぞれ独立して選択され、n’は0~5の整数である。)
【化5】
(上記化学式(L)において、上記**は上記化学式(AF)、(BF)、又は(CF)のMに対する単一結合による連結であり、上記*は下記化学式(1F)、(2F)、(3F)、(4F)、(5F)、又は(6F)の*に対する単一結合による連結である。)
【0010】
第2観点によれば、上記改質されたエポキシ樹脂は、エポキシ当量(EEW、Epoxy
Equivalent Weight)が150g/Eq~500g/Eqである第1観点に係る改質されたエポキシ樹脂が提供される。
【0011】
第3観点によれば、下記化学式(AS)~(CS)で構成される群から選択された1種のエポキシ樹脂と、下記化学式(1)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の改質剤とを、上記改質剤100重量部当たり1~10重量部のリン系触媒の存在下で混合した後に加熱する段階を含む改質されたエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0012】
【化6】
(上記化学式(CS)においてSは
【化7】
であり、
(上記化学式AS~CSにおいて、nは1~50の整数であり、Kは下記化学式(E)のグリシジル基である。)
【化8】
(上記化学式(1)においてRはメチル基であり、化学式(3)において、Xは-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5)において、YはH及びメチル基で構成される群から独立して選択される。)
【0013】
第4観点によれば、上記改質剤として上記化学式(1)及び(2)で構成される群から選択された少なくとも1種の3官能性改質剤が使用される場合、3官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して3官能性改質剤のヒドロキシ基が5モル~20モルとなる量で使用される第3観点に係る改質されたエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0014】
第5観点によれば、上記改質剤として上記化学式(3)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の2官能性改質剤が使用される場合、2官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して2官能性改質剤のヒドロキシ基が10モル~30モルとなる量で使用される第3観点又は第4観点に係る改質されたエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0015】
第6観点によれば、上記改質剤として、上記化学式(1)及び(2)で構成される群から選択された少なくとも1種の3官能性改質剤と、上記化学式(3)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の2官能性改質剤とが共に使用される場合、上記改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、2官能性改質剤と3官能性改質剤の総ヒドロキシ基が5モル~30モルとなる量で使用される第3~第5観点のうちいずれか一観点に係る改質されたエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0016】
第7観点によれば、下記化学式(7)の1官能性改質剤が、上記化学式(1)~(6)で構成される群から選択された少なくとも1種の改質剤と共に使用される第3観点~第6観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0017】
【化9】
(但し、上記化学式(7)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群から独立して選択され、n’は0~5の整数である。)
【0018】
第8観点によれば、上記1官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、1官能性改質剤のヒドロキシ基が30モル以下となる量で使用される第3観点~第7観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0019】
第9観点によれば、上記加熱する段階は、80℃~140℃の温度で行われる、第3観点~第8観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0020】
第10観点によれば、上記加熱する段階は30分~10時間の間行われる、第3観点~第9観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0021】
第11観点によれば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含む組成物であって、上記エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂の総重量を基準に、第1観点又は第2観点の改質されたエポキシ樹脂10重量%~90重量%及び非改質のエポキシ樹脂90重量%~10重量%を含むエポキシ組成物が提供される。
【0022】
第12観点によれば、上記アクリル樹脂の含量は、上記エポキシ樹脂100重量部に対して20~1000重量部である第11観点に係るエポキシ組成物が提供される。
【0023】
第13観点によれば、上記組成物は無機フィラーをさらに含む、第11観点又は第12観点に係るエポキシ組成物が提供される。
【0024】
第14観点によれば、上記組成物は、接着剤として使用される第11観点~第13観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ組成物が提供される。
【0025】
第15観点によれば、第11観点~第14観点のうちいずれか一観点に係るエポキシ組成物を含む半導体接着フィルムが提供される。
【0026】
第16観点によれば、第11観点に係るエポキシ組成物の硬化物が提供される。
【0027】
第17観点によれば、第16観点による硬化物を含む物品が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の改質されたエポキシ樹脂は、5,000~25,000の重量平均分子量(Mw)と5.0~20.0の多分散指数(PDI、polydispersity index)を有し、このように制御された重量平均分子量の分布及び多分散指数を有する本発明の改質されたノボラックエポキシ樹脂(以下、「改質されたエポキシ樹脂」という)を用いることにより、改質されたエポキシ樹脂及びアクリル樹脂を含む組成物の物性、例えば、熱膨張特性が改善(すなわち、より低い熱膨張係数(CTE))される。
【0029】
具体的に、エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含むエポキシ組成物が硬化する場合に、エポキ
シ領域及びアクリル領域への相分離現象(curing-induced phase separation)(モルフォロジー特性)が発生する。本発明の改質されたエポキシ樹脂をエポキシ組成物に使用することで現れるエポキシ組成物硬化時のモルフォロジー特性により、改質されたエポキシ樹脂とアクリル樹脂を含むエポキシ組成物は低い熱膨張係数(CTE)、つまり、熱膨張特性が改善される。すなわち、エポキシ樹脂とアクリル樹脂を含むエポキシ組成物に、本発明の5,000~25,000のMwと5.0~20.0のPDIを有する改質されたエポキシ樹脂、そして好ましくは5,000~25,000のMw、5.0~20.0のPDI、及び150~500g/EqのEEWを有する、改質されたエポキシ樹脂を使用することにより、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを含むエポキシ組成物はモルフォロジー特性によって改善された熱膨張特性を示す。
【0030】
したがって、本発明の改質されたエポキシ樹脂を含む組成物(以下、「エポキシ組成物」という)は、低CTEが要求されるエポキシ適用分野、例えば、半導体用接着フィルム、例えばDAF(Die Attach Film)、DDAF(Dicing Die Attach Film)などへの使用に好適である。
【0031】
また、本発明の改質されたエポキシ樹脂の製造方法では、特定の改質剤の使用及び/又はそれらの使用割合等を調節することにより、エポキシ組成物が優れた熱膨張特性を示すようにエポキシ組成物に配合される、特定範囲の重量平均分子量及び多分散指数の範囲、そしてさらに特定範囲のEEWを有する改質されたエポキシ樹脂が効果的に製造される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】クレゾールノボラックエポキシ樹脂を3官能性改質剤を使用して改質する本発明の方法で改質されたエポキシ樹脂を製造する反応メカニズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は上記のように、本発明による特定の範囲の重量平均分子量、多分散指数の範囲、そしてさらに特定の範囲のEEWを有する改質されたエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物は、より改善された熱膨張特性、すなわち、低いCTEを示すため、半導体パッケージング時、優れた工程性及び信頼性を有する接着剤技術の確保に好適である。
【0034】
以下、このような本発明の改質されたエポキシ樹脂、その製造方法、それを含むエポキシ組成物及びその用途についてそれぞれ詳細に記述する。
【0035】
イ.改質されたエポキシ樹脂
本発明の一実現例によれば、
重量平均分子量の範囲が5,000~25,000、そして多分散指数が5.0~20.0であり、
(1)下記化学式(AF)、化学式(BF)、及び化学式(CF)で構成される群から選択される1種のエポキシ由来単位;及び
(2)下記化学式(1F)、化学式(2F)、化学式(3F)、化学式(4F)、化学式(5F)及び式(6F)で構成される群から選択される少なくとも1種の改質剤由来単位を含み、
上記エポキシ由来単位と上記改質剤由来単位は、下記化学式(L)を媒介として連結される、改質されたエポキシ樹脂であって、
【化10】
上記化学式(CF)においてSは
【化11】
であり、
化学式(AF)~(CF)において、nは1~50の整数、より好ましくは1~30の整数であり、
上記エポキシ樹脂は下記化学式(7F)の構造を有するか又は有さず、
上記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)の構造を有する場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは
下記化学式(7F)であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して下記化学式(L)の**に対する単一結合、下記化学式(7F)又は下記化学式(E)のグリシジル基であり、
上記エポキシ樹脂が下記化学式(7F)を有さない場合に、複数のMのうち少なくとも一つは下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結であり、少なくとも一つは下記化学式(E)のグリシジル基であり、残りのMはそれぞれ独立して、下記化学式(L)の**に対する単一結合による連結又は下記化学式(E)のグリシジル基であり;
【化12】
上記化学式(1F)においてRはメチル基であり、化学式(3F)において、Xは-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5F)において、YはそれぞれH及びメチル基から独立して選択され、化学式(1F)~(6F)において*はそれぞれ下記化学式(L)の*に対する単一結合による連結であり;
【化13】
化学式(7F)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群からそれぞれ独立して選択され、n’は0~5の整数であり;
【化14】
上記化学式(L)において、上記**は上記化学式(AF)、(BF)、又は(CF)のMに対する単一結合による連結であり、上記*は下記化学式(1F)、(2F)、(3F)、(4F)、(5F)、又は(6F)の*に対する単一結合による連結である。
【0036】
また、上記改質されたエポキシ樹脂は、樹脂であるため、全体的に少なくとも2つのエポキシ基を有する。一方、例えば、上記エポキシ由来単位(例えば、化学式(AF))と改質剤由来単位(例えば、化学式(1F))とが式(L)により連結される場合に、改質剤由来単位の3つの*部分に化学式(L)を媒介として連結されたエポキシ由来単位のM部
分は、同じエポキシ由来単位の他のM部分であってもよく、又は他のエポキシ由来単位(すなわち、他の化学式(AF))のM部分であってもよい。
【0037】
本発明の改質されたエポキシ樹脂の重量平均分子量は5,000~25,000であり、好ましくは7,000~20,000である。重量平均分子量が上記範囲であると、後述する改質されたエポキシ樹脂を含む組成物は改善された熱膨張特性及び工程性を兼ね備えるものとして好ましい。重量平均分子量が5,000未満であると、エポキシ組成物の熱膨張特性が不足する点で好ましくなく、25,000を超えると、エポキシ組成物の工程性を減少させるという点で好ましくない。上記重量平均分子量は、テトラヒドロフランを用いたゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量である。
【0038】
また、本発明の改質されたエポキシ樹脂は、多分散指数の範囲が5.0~20.0、好ましくは7.0~20.0である。多分散指数は5.0以上であると、エポキシ組成物の工程性及び熱膨張特性を同時に向上するという点で好ましい。多分散指数が5.0未満であると、エポキシ組成物の熱膨張特性が不足する点で好ましくない。多分散指数が20.0を超えると、過度な高分子量化により、工程性など物性の観点から好ましくない。
【0039】
さらに、本発明の改質されたエポキシ樹脂は、エポキシ当量(EEW、Epoxy Equivalent Weight)が150g/Eq~500g/Eq、より好ましくは200g/Eq~350g/Eqであることが好ましい。上記改質されたエポキシ樹脂のEEWは、上記化学式(E)のグリシジル基の濃度(又は個数)により決定され、EEWが150g/Eq未満であると、十分に改質されたエポキシ樹脂を確保し難い点があり、EEWが500g/Eqを超えると、エポキシ樹脂に要求されるエポキシド基の濃度が不足する。
【0040】
上述した本発明の改質されたエポキシ樹脂は、アクリル樹脂と混合して使用することにより、改質されたエポキシ樹脂とアクリル樹脂を含む組成物の硬化時における相分離特性(モルフォロジー特性)によって、改善された熱膨張特性を示す。このような、改質されたエポキシ樹脂を含む組成物は、例えば、半導体パッケージング用、例えば、半導体パッケージング用接着フィルム、例えば、DAF、DDAFフィルム用への使用に好適である。
【0041】
ロ.エポキシ樹脂の製造方法
本発明の他の実現例によれば、上述した本発明による改質されたエポキシ樹脂の製造方法が提供され、上記改質されたエポキシ樹脂は、出発物質であるエポキシ樹脂の改質反応によって製造される。本発明の改質されたエポキシ樹脂の製造方法では、リン系触媒の存在下で出発物質であるエポキシ樹脂と改質剤のヒドロキシ基の反応により、上記の特定のMw、PDI及びさらにEEWの範囲を有する改質されたエポキシ樹脂が得られる。
【0042】
本発明の改質されたエポキシ樹脂の製造方法の概略的な概念は、
図1の反応スキームに示す。
図1の反応スキームは、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂を3官能性改質剤を使用して改質する場合を示す。
【0043】
具体的に、上記改質されたエポキシ樹脂の製造方法は、下記化学式(AS)~(CS)で構成される群から選択された1種のエポキシ樹脂と、下記化学式(1)~(6)から選択された少なくとも1種の改質剤とを、上記改質剤100重量部当たり1~10重量部のリン系触媒の存在下で混合した後に加熱する段階(以下、「改質反応」ともいう)を含む。
【0044】
出発物質であるエポキシ樹脂の改質反応は、マイルドなリン系触媒の存在下で、出発物質であるエポキシ樹脂と改質剤との反応(すなわち、改質反応)によって行われ、ここで反応は、出発物質であるエポキシ樹脂と改質剤とを混合し、加熱して行われる。
【0045】
出発物質としては、化学式(AS)~(CS)で構成される群から選択された1種のエポキシ樹脂が使用されることができる。
【0046】
【化15】
(上記化学式(CS)においてSは
【化16】
であり、
化学式(AS)~(CS)において、nは1~50の整数、より好ましくは1~30の整
数であり、Kは下記化学式(E)のグリシジル基である。
【0047】
【0048】
前記改質剤は芳香族アルコール化合物であって、改質剤内のヒドロキシ基の個数に応じて3官能性改質剤、2官能性改質剤、又は1官能性改質剤に分類される。エポキシ樹脂の改質反応の際、改質剤としては、3官能性改質剤及び2官能性改質剤で構成される群から選択される少なくとも1種が使用されることができる。また、必要に応じて、1官能性改質剤が3官能性改質剤及び2官能性改質剤で構成される群から選択された少なくとも1種の改質剤と共にさらに使用されることができる。例えば、改質剤は、3官能性改質剤、2官能性改質剤、3官能性改質剤+2官能性改質剤、3官能性改質剤+1官能性改質剤、2官能性改質剤+1官能性改質剤、又は3官能性改質剤+2官能性改質剤+1官能性改質剤の混合物として自由に使用されることができる。
【0049】
上記3官能性改質剤としては、下記化学式(1)及び式(2)で表される3官能性芳香族アルコールが使用されることができる。
【0050】
【化18】
(上記化学式(1)においてRはメチル基である)
【0051】
上記2官能性改質剤としては、下記化学式(3)~化学式(6)で表される2官能性芳香族アルコールが使用されることができる。
【0052】
【化19】
(化学式(3)において、Xは-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-S-又は-SO
2-であり、化学式(5)において、YはH及びメチル基で構成される群からそれぞれ独立して選択される。)
【0053】
上記1官能性改質剤としては、下記化学式(7)で表される1官能性芳香族アルコールが
使用されることができる。
【0054】
【化20】
(化学式(7)においてGはC1~C10のアルキル基、アリル基、及びC6又はC10のアリール基で構成される群からそれぞれ独立して選択され、n’は0~5の整数である。)
【0055】
3官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して3官能性改質剤のヒドロキシ基が5モル~20モル、好ましくは5~15モルとなる量で使用されることができる。
【0056】
出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モル濃度に対して3官能性改質剤のヒドロキシ基が5モル濃度未満となる量で使用されると、改質されたエポキシ樹脂の熱膨張特性が十分に向上しないという点で好ましくなく、20モル濃度を超える量で使用されると、改質されたエポキシ樹脂により組成物の工程性が減少するという点で好ましくない。
【0057】
2官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、2官能性改質剤のヒドロキシ基が10モル~30モル、好ましくは10~20モルとなる量で使用されることができる。出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モル濃度に対して2官能性改質剤のヒドロキシ基が10モル濃度未満となる量で使用されると、改質されたエポキシ樹脂の熱膨張特性が十分に向上しないという点で好ましくなく、30モル濃度を超える量で使用されると、改質されたエポキシ樹脂により組成物の工程性が減少するという点で好ましくない。
【0058】
上記改質剤として3官能性改質剤と2官能性改質剤とが共に使用される(3官能性改質剤と2官能性改質剤の混合改質剤であって、以下、「混合改質剤」という)される場合、上記混合改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、上記混合改質剤の総ヒドロキシ基が5モル~30モル、好ましくは5~20モルとなる量で使用されることができる。出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モル濃度に対して上記混合改質剤の総ヒドロキシ基が5モル濃度未満となる量で使用されると、改質されたエポキシ樹脂の熱膨張特性が十分に向上しないという点で好ましくなく、30モル濃度を超えると、改質されたエポキシ樹脂により組成物の工程性が減少するという点で好ましくない。
【0059】
1官能性改質剤は、3官能性改質剤及び/又は2官能性改質剤と共に必要に応じて追加で使用され、単独改質剤としては使用されない。1官能性改質剤は、出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モルに対して、1官能性改質剤のヒドロキシ基が30モル以下となる量で使用されることができる。出発物質であるエポキシ樹脂のエポキシ基100モル濃度に対して、1官能性改質剤の使用量が30モル濃度を超えると、多分散指数が5以上である改質されたエポキシ樹脂を得ることが難しい。1官能性改質剤は、必要に応じて添加され得る選択的な成分であって、下限量は限定されない。
【0060】
上記改質反応は、マイルドな触媒(mild catalyst)であるリン系触媒の存在下で行われる。リン系触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、ジフェニルプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンで構成される群から選択される1種以上が使用されることができる。
【0061】
上記リン系触媒は、改質剤100重量部当たり1~10重量部、好ましくは2~5重量部で使用されることができる。改質剤100重量部当たりのリン系触媒の使用量が1重量部未満であると、触媒の作用による改質反応速度が遅く、10重量部を超えても更なる反応速度の向上が観察されないため、10重量部を超えて使用することは好ましくない。
【0062】
上記リン系触媒は、改質反応で使用された改質剤が全て消費されると、酸化して触媒活性を失うため、(1)反応制御に容易であるだけでなく、(2)残留リン系触媒を除去する必要がないため、製造工程が単純化される。
【0063】
上記改質反応では、触媒としてNaOH、KOH、K2HCO3、又はK2CO3などのような塩基は使用されない。このような塩基を使用すると、5,000~25,000の範囲のMwが得られ難く、改質反応後にワークアップ(workup)のような精製過程を伴わなければならない。
【0064】
改質反応のための反応物の混合時に、溶媒は必要に応じて選択的に使用されることができる。例えば、改質反応において別途の溶媒がなくても反応温度での反応物の粘度が反応の進行に適していると、溶媒を使用しなくてもよい。すなわち、反応物の混合、撹拌などが溶媒なしで円滑に進行できる程度に反応物の粘度が低くなると、別途の溶媒を必要とせず、これは当業者が容易に判断することができる。溶媒を使用する場合、可能な溶媒としては、反応物をよく溶解することができ、反応に如何なる悪影響も及ぼすことなく反応後に容易に除去できる限り、如何なる有機溶媒(非プロトン性溶媒)でも使用することができる。このような溶媒としては、特にこれに限定するものではないが、例えば、アセトニトリル、THF(tetra hydro furan)、MEK(methyl ethyl ketone)、DMF(dimethyl formamide)、DMSO(dimethyl sulfoxide)、トルエン、又はキシレンなどが単独又は2つ以上が共に使用されることができる。溶媒の使用量は特に限定するものではなく、反応物が十分に溶解し、反応に好ましくない影響を及ぼさない範囲で、適切な量で使用されることができ、この技術分野の技術者はこれを考慮して適宜選択することができる。
【0065】
上記加熱段階の反応温度及び反応時間は反応物の種類によって異なるが、加熱段階は、例えば、80℃~140℃、好ましくは100℃~120℃で行うことができる。温度が80℃未満に低くなると、改質反応の速度が遅く、140℃を超えると、副反応が進行することがある。改質反応の反応時間は30分~10時間、好ましくは1時間~8時間であってもよい。最適な反応時間はエポキシ基の構造、開環度、溶媒、触媒の量等によって決定されるが、30分未満であると、反応が完了しない可能性があり、10時間を超えても好ましい更なる反応が進行しないため、10時間以上の反応は不要である。
【0066】
上記改質反応により重量平均分子量が5,000~25,000、好ましくは7,000~20,000、そして多分散指数が5.0~20.0、好ましくは7.0~20.0であり、そして好ましくはEEW値が150~500g/Eq、好ましくは200~350g/Eqである、改質されたエポキシ樹脂が製造される。一方、改質反応では、反応する置換基の位置、反応の程度などの変数に応じて様々な分子量及び/又は構造を有する様々なエポキシ樹脂が共に形成されることができ、これらは混在した状態で製造されることができ、これは、高分子樹脂の製造反応において一般的であることが当業者によく知られている。また、様々な分子量及び/又は構造を有する様々なエポキシ樹脂が混在した状態で製造された改質されたエポキシ樹脂は、混在したままで使用されることができる。
【0067】
ハ.エポキシ組成物
上記本発明の改質されたエポキシ樹脂は、従来、この技術においてエポキシ樹脂が用いら
れる如何なる分野、適用先及び用途でも使用されることができる。特に、好ましくは、上記本発明の改質されたエポキシ樹脂は半導体接着剤用として使用される。具体的に、上記本発明の改質されたエポキシ樹脂は、半導体パッケージの積層化、薄型化のための接着フィルム(例えば、DAF、DDAFなど)の素材として使用されることができる。より具体的に、上記本発明の改質されたエポキシ樹脂は、半導体パッケージングに使用される組成物において一成分として使用されることができる。
【0068】
本発明のさらに他の実現例において、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含む組成物(すなわち、エポキシ樹脂組成物、「エポキシ組成物」ともいう)であって、上記エポキシ組成物は、上記エポキシ樹脂の総重量を基準に、本発明の改質されたエポキシ樹脂10重量%~90重量%と一般のエポキシ樹脂90重量%~10重量%を含むエポキシ組成物が提供される。上記エポキシ組成物において、改質されたエポキシ樹脂10重量%~90重量%と一般のエポキシ樹脂90重量%~10重量%を含むことが、エポキシ組成物の硬化時にエポキシ領域及びアクリル領域への相分離現象(curing-induced phase separation)(モルフォロジー特性)によるエポキシ組成物の熱膨張特性の改善、工程性等の観点から好ましい。すなわち、本発明の上記実現例によるエポキシ組成物は、本発明の改質されたエポキシ樹脂及び一般のエポキシ樹脂を含む。本発明によるエポキシ組成物の工程性及び物性を調節するために、一般のエポキシ樹脂(すなわち、非改質エポキシ樹脂)が共に使用されることができる。
【0069】
上記「本発明の改質されたエポキシ樹脂」は、本発明の一実現例による「改質されたエポキシ樹脂」であって、上述した「イ.改質されたエポキシ樹脂」の項目に記載された内容が全て同様に適用される。
【0070】
上記一般のエポキシ樹脂とは、この技術分野で従来一般的に知られている任意のエポキシ樹脂であって、本発明による改質されたエポキシ樹脂ではないものをいい、便宜上、且つ本発明の改質されたエポキシ樹脂に照らして改質されなかったものとして、「非改質エポキシ樹脂」ともいう。
【0071】
一般のエポキシ樹脂の種類及び/又は物性は特に制限されるものではなく、これは、この技術分野で一般的に知られている事項であり、ここでは詳細に説明しない。
【0072】
一般的なエポキシ樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、ビスフェノール、ビフェニル、ナフタレン、ベンゼン、チオジフェノール、フルオレン(fluorene)、アントラセン、イソシアヌレート、トリフェニルメタン、1,1,2,2-テトラフェニルエタン、テトラフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、脂環族、脂肪族又はノボラックユニットを有するグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、及びグリシジルエステル系エポキシ樹脂で構成される群から選択されるグリシジル系エポキシ樹脂;及び脂環族系エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、このようなエポキシ樹脂から選択される1種以上が使用されることができる。上記一般のエポキシ樹脂には、液状及び固状エポキシ樹脂の両方が含まれる。
【0073】
上記一般のエポキシ樹脂としては、フィルム工程性の観点から液状エポキシ樹脂又は液状エポキシ樹脂と固状エポキシ樹脂との混合物が使用されることができる。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂、又は液状エポキシ樹脂と固状エポキシ樹脂の混合物を使用することは、エポキシ組成物を加工する後続工程における工程性、乾燥性、粘性などの物性を考慮して、この技術分野の技術者に適するように調節して使用するものであって、この技術分野における技術常識に該当し、本明細書では、これについて詳細に記述しない。
【0074】
アクリル樹脂は、エポキシ組成物の応力緩和能の向上及び工程性の観点から配合される。
上記エポキシ組成物において、アクリル樹脂は、エポキシ樹脂100重量部に対して20~1000重量部、好ましくは20~500重量部、より好ましくは20~200重量部で配合される。アクリル樹脂の含量が20重量部未満であると、応力緩和能力及び工程性が十分に確保され難く、1000重量部を超えると、十分な熱膨張特性を確保することが難しい。アクリル樹脂としては、当該技術分野で一般的に知られている任意のアクリル樹脂が使用されることができ、アクリル樹脂の物性は特に限定されない。
【0075】
上記本発明の実現例によるエポキシ組成物は、エポキシ組成物の硬化のために、硬化剤及び硬化触媒を含み、これはこの技術分野では一般的である。
【0076】
上記硬化剤としては、エポキシ樹脂に対する硬化剤として一般的に知られている任意の硬化剤が使用されることができ、特にこれに限定するものではないが、例えば、ポリフェノール系、酸無水物系、アミン系などが使用されることができ、このような硬化剤に関する事項は、この技術分野で一般的に知られている事項であり、ここでは詳細に記載しない。
【0077】
目的とする硬化度の範囲に応じて、エポキシ樹脂のエポキシド基の濃度を基準にして硬化剤の含量を調節することができる。これに限定するものではないが、例えば、硬化度、効率性等の観点から、硬化剤はエポキシド基当量:硬化剤のエポキシド基との反応官能基当量の比率が1:0.5~2.0、好ましくは1:0.8~1.5となるように硬化剤の含量を調節して使用することが好ましい。上記硬化剤のエポキシド基との反応官能基は、例えば、アミン系硬化剤ではアミン基、ポリフェノール系硬化剤ではフェノール性水酸基であり、この技術分野で一般的に知られている。
【0078】
硬化触媒としては、この技術分野でエポキシ組成物の硬化に一般的に使用されるものとして知られている如何なる硬化触媒が使用されることができる。 これに限定されるものではないが、例えば、イミダゾール系、リン系化合物、第3級アミン系、第4級アンモニウム系及び有機酸塩系等の硬化触媒が使用されることができ、このような硬化触媒に対する事項は、この技術分野で一般的に知られている事項であり、ここでは詳細に記載しない。
【0079】
硬化触媒は、この技術分野で一般的に使用される量で配合して使用することができる。これに限定するものではないが、例えば、上記エポキシ樹脂100重量部に対して0.1~10重量部、例えば、0.2~5重量部で使用されることができる。硬化触媒は、硬化反応の促進効果及び硬化反応の速度制御の観点から上記含量で使用されることが好ましい。上記硬化触媒を上記範囲の配合量で使用することで硬化が効果的に促進され、作業処理量の向上が期待できる。
【0080】
本発明の他の実現例によれば、上記本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機フィラーをさらに含むことができる。無機フィラーは、エポキシ組成物の物性を補強するために、この技術分野で一般的に使用される成分である。
【0081】
これに限定するものではないが、例えば、無機フィラーとしては、従来、エポキシ樹脂の物性を補強するために使用されるものとして知られている任意の無機フィラーが使用されることができる。これに限定するものではないが、例えば、無機フィラーは、シリカ(例えば、溶融シリカ及び結晶性シリカを含む)、ジルコニア、チタニア、アルミナなどのような金属酸化物、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム、並びにシルセスキオキサンで構成される群から選択される少なくとも一種が使用されることができる。上記無機フィラーは、単独又は2種以上の混合物として使用されることができる。無機フィラーは、この技術分野で一般的に知られている事項であり、ここでは詳細に記載しない。
【0082】
無機フィラーは、この技術分野で一般的に使用される範囲、例えば、エポキシ組成物の固
形分含量の総重量を基準に60wt%以下、そして好ましくは50wt%以下と、物性及び/又は工程性を考慮して配合することができるが、これに限定されない。60wt%を超えると、工程が困難になる可能性があり、無機フィラーは選択的に配合される成分であって下限値は限定されない。
【0083】
本発明において、「エポキシ組成物の固形分含量の総重量」とは、エポキシ組成物において、偶発的に存在し得る液体成分及び/又は溶媒等が使用される場合に、使用された溶媒など任意の液体成分が除去され硬化されるエポキシ組成物の固形分含量の総重量を意味する。例えば、本発明のエポキシ組成物の固形分含量の総重量を基準に、無機フィラーの含量を除いた残りの含量(例えば、エポキシ組成物の固形分含量の総重量を基準に、無機フィラーが60wt%であると、残りの含量は40wt%)はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、硬化剤、硬化触媒及び後述するその他の添加剤など、全ての有機成分の含量である。
【0084】
本発明の任意の実現例によるエポキシ組成物は、エポキシ組成物の物性を損なわない範囲で、エポキシ組成物の物性を調節するために、この技術分野においてエポキシ組成物に通常配合される難燃剤、可塑剤、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤、粘度調節剤、希釈剤、成形用製剤などのその他の添加剤がさらに、必要に応じて配合されてもよい。また、硬化前に配合が容易に分散できるように、必要に応じて溶媒を使用してエポキシ組成物を分散させることもできる。このようなその他の添加剤及び/又は溶媒の種類、配合、含量などは、この技術分野における技術者に一般的に知られている事項であり、本明細書では詳細に記述しない。
【0085】
上記本発明の一実現例による上記エポキシ組成物は、接着剤用、例えば、半導体接着剤用に使用されることができ、例えば、半導体接着フィルム(例えば、DAF、DDAFなど)の製造に使用するのに好適である。
【0086】
本発明の他の実現例によれば、上記のいずれかの実現例によるエポキシ組成物の硬化物が提供される。硬化物は、エポキシ組成物の硬化、例えば、熱硬化によって得られることができる。当業者は、当該技術分野で一般的に知られている任意の硬化方法及び硬化条件を適宜選択して上記エポキシ組成物を硬化することができ、硬化方法及び/又は硬化条件は特に限定されるものではない。また、エポキシ組成物の硬化方法及び硬化条件等は、この技術分野で一般的に知られている内容であり、ここでは詳細に記述しない。上記硬化物は複合体を含む意味として使用される。
【0087】
本発明のさらに他の実現例によれば、上記の本発明のいずれかのエポキシ組成物及び/又は硬化物を含む物品が提供される。上記物品は、半導体用接着剤、接着フィルム、DAF、DDAFなど;そして、半導体用接着剤、接着フィルム、DAF、DDAFなどを含む半導体部品であってもよい。
【0088】
上述したように、上記の本発明の改質されたエポキシ樹脂を含むエポキシ組成物は、熱膨張特性が改善されたものであって、上記エポキシ組成物を半導体用接着剤、具体的に、接着フィルム、例えばDAF、DDAFに適用することにより、半導体パッケージングにおける反り及び亀裂の問題が防止される。これにより、半導体パッケージングの工程性及び製品の信頼性が向上する。
【実施例0089】
以下、実施例により本発明についてより詳細に説明する。しかし、下記の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0090】
A.合成例
合成例1:
常温(20~25℃、以下、同じ)で2口フラスコに、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW 210g/Eq)65g、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン3.95g及びメチルエチルケトン(MEK)16.3gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.12gを上記フラスコに添加した後、100℃で5時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=261g/Eq、重量平均分子量(Mw)=22,000、多分散指数=13.5の改質されたエポキシ樹脂を得た。重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを用いたゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。多分散指数(PDI、Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを用いたゲル透過クロマトグラフィーにより重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、これらの値から得た。Mw及びPDI値を求める方法は合成例2~7においても同様である。
【0091】
合成例2:
常温で2口フラスコに、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW 210g/Eq)65g、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン2.64g、1,3-ベンゼンジオール2.15g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.14gを上記フラスコに添加した後、100℃で6時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=286g/Eq、重量平均分子量(Mw)=24,000、多分散指数=12.0の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0092】
合成例3:
常温で2口フラスコに、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW210g/Eq)65g、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン1.32g、ビスフェノールA2.95g、フェノール2.43g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.13gを上記フラスコに添加した後、110℃で3時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=295g/Eq、重量平均分子量(Mw)=15,000、多分散指数=7.0の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0093】
合成例4:
常温で2口フラスコに、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW210g/Eq)65g、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン1.32g、1,6-ジヒドロキシナフタレン4.13g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.11gを上記フラスコに添加した後、120℃で4時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=289g/Eq、重量平均分子量(Mw)=19,000、多分散指数=10.8の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0094】
合成例5:
常温で2口フラスコに、フェノールノボラックエポキシ樹脂(EEW180g/Eq)65g、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン1.27g、ビスフェノールA3.44g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.14gを上記フラスコに添加した後、110℃で4時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=235g/Eq、重量平均分子量(Mw)=18,000、多分散指数=9.8の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0095】
合成例6:
常温で2口フラスコに、オルソ-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(EEW 200g/Eq)65g、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン1.14g、フェノール3.83g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.10gを上記フラスコに添加した後、110℃で3.5時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=271g/Eq、重量平均分子量(Mw)=13,000、多分散指数=7.1の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0096】
合成例7:
常温で2口フラスコに、オルソ-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(EEW 200g/Eq)65g、4,4’-ビフェノール3.79g及びメチルエチルケトン(MEK)16gを添加し、均一な溶液が製造されるように30分間撹拌した。その後、トリフェニルホスフィン(TPP)0.11gを上記フラスコに添加した後、120℃で5時間の間加熱及び撹拌し、改質されたエポキシ樹脂を得た。反応完了後、EEW=247g/Eq、重量平均分子量(Mw)=13,500、多分散指数=8.0の改質されたエポキシ樹脂が合成された。
【0097】
ロ.複合体の製造及び熱膨張特性の評価
(1)エポキシフィラー複合体の製造
下記表1の組成で、フェノール硬化剤及びシリカをメチルエチルケトンに固形分含量が80wt%となるように溶かす。この混合液を10分間混合した後、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂を添加し、追加で30分間さらに混合した後、次いで硬化触媒を添加し、均一な溶液となるように10分間さらに混合した。上記混合物を離型紙の上にキャストした後、80℃のオーブンで30分間乾燥する。乾燥した試料を120℃で1時間、そして180℃で2時間硬化させた。物性測定用試験片を4mm×40mm×0.1mm(mm3)のサイズに製造して物性を評価した。
【0098】
(2)熱膨張特性の評価
下記表1の実施例及び比較例で得られた硬化物の温度による寸法変化を熱-機械分析器(Thermo-mechanical Analysizer)を用いて評価し、下記表1に示した。
【0099】
【0100】
上記表1に示すように、実施例1~7の本発明の改質されたエポキシ樹脂を含む本発明のエポキシ組成物は、本発明の改質されたエポキシ樹脂を含まない比較例1及び2のエポキシ組成物に比べて、著しく低いCTE(α1及びα2)を示した。さらに、実施例1~7の組成物は、比較例1及び2の組成物に比べて、高いガラス転移温度(Tg)を示した。このように、本発明の改質されたエポキシ樹脂とアクリル樹脂を含むエポキシ組成物は熱膨張特性が改善された。