(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006648
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】圧電素子ユニット及び共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20240110BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20240110BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240110BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/079 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/076 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
B81B3/00
H01L41/047
H01L41/053
H01L41/09
H01L41/187
H01L41/319
H01L41/316
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107737
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】下地 規之
【テーマコード(参考)】
3C081
5J108
【Fターム(参考)】
3C081AA11
3C081BA22
3C081BA55
3C081CA29
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA08
3C081DA27
3C081DA29
3C081EA22
5J108AA07
5J108BB07
5J108BB08
5J108CC04
5J108CC11
5J108EE02
5J108EE07
5J108EE13
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG18
5J108JJ01
(57)【要約】
【課題】小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを提供する。また、当該圧電素子ユニットを備えた共振器を提供する。
【解決手段】主面101Aを有する基板101と、基板101上に配置され、かつ、側面103A、側面103Aと反対側の側面103B、及び主面101Aと対向し、側面103A及び側面103Bと接続している底面103Cを有する圧電膜103と、基板101上に配置され、かつ、圧電膜103の側面103Aと接している電極104aと、基板101上に配置され、圧電膜103の側面103A及び側面103Bの少なくともいずれかと接し、かつ、電極104aと離隔している電極104bと、を備える圧電素子ユニット100。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基板と、
前記基板上に配置され、かつ、第1の側面、前記第1の側面と反対側の第2の側面、及び前記主面と対向し、前記第1の側面及び前記第2の側面と接続している底面を有する圧電膜と、
前記基板上に配置され、かつ、前記圧電膜の前記第1の側面と接している第1の電極と、
前記基板上に配置され、前記圧電膜の前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくともいずれかと接し、かつ、前記第1の電極と離隔している第2の電極と、を備える圧電素子ユニット。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記第1の側面のみで前記圧電膜と接し、
前記第2の電極は、前記第2の側面のみで前記圧電膜と接している、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項3】
前記基板上に前記圧電膜を挟んで配置され、前記圧電膜と離隔している第1のスペーサー及び第2のスペーサーをさらに備え、
前記第1の電極は、前記圧電膜と前記第1のスペーサーとの間に配置され、
前記第2の電極は、前記圧電膜と前記第2のスペーサーとの間に配置され、
前記第1のスペーサー及び前記第2のスペーサーは、前記圧電膜と同一材料からなる、請求項2に記載の圧電素子ユニット。
【請求項4】
前記圧電膜上に配置されている保護膜をさらに備え、
前記圧電膜と前記第1のスペーサーとの間の領域において、前記保護膜と前記第1の電極との間には空間が存在し、
前記圧電膜と前記第2のスペーサーとの間の領域において、前記保護膜と前記第2の電極との間には空間が存在している、請求項3に記載の圧電素子ユニット。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、
複数の前記第1の電極のそれぞれは、前記圧電膜の前記第1の側面から前記圧電膜の上面を介して前記第2の側面まで連続的に接し、
複数の前記第2の電極のそれぞれは、前記圧電膜の前記第2の側面から前記圧電膜の上面を介して前記第1の側面まで連続的に接し、
前記主面の法線方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向に、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が交互に配置されている、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項6】
前記第1の側面のみと接している前記第1の電極及び前記第1の側面のみと接している前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、
前記主面の法線方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向に、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が交互に配置されている、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項7】
前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、
前記圧電膜の膜厚方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向において、前記第1の電極の第1の側面と前記第1の電極の前記第1の側面と同一方向を向いている前記第2の電極の第2の側面との距離は、前記第1の電極のピッチ間隔の1/2である、請求項2に記載の圧電素子ユニット。
【請求項8】
前記主面の法線方向からみたとき、前記圧電膜は、閉環状であり、
前記圧電膜の外周に沿って前記第1の電極が配置され、前記圧電膜の内周に沿って前記第2の電極が配置されている、請求項3に記載の圧電素子ユニット。
【請求項9】
前記圧電膜は、第1の領域、及び前記第1の領域の上部に配置され、前記第1の領域より結晶欠陥が少ない第2の領域を有し、
前記第1の領域における前記第1の側面及び前記第2の側面のそれぞれを覆う側壁絶縁膜をさらに備える、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項10】
前記圧電膜の側面は、無極性面が表出しており、
前記無極性面に前記第1の電極及び前記第2の電極が接している、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項11】
前記圧電膜は、前記基板に対してC軸に配向し、かつ、前記C軸方向に対して垂直方向に延在している、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項12】
前記圧電膜の上面に配置されている絶縁膜をさらに備える、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項13】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、アルミニウム、モリブデン、チタン、タングステン、ルテニウム、金からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項14】
前記基板は、スカンジウム、イッテルビウム、マグネシウム、ニオブ、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種が添加された、又は無添加の窒化アルミニウムからなる、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項15】
前記基板は、酸化ニオブリチウム及び酸化タンタルリチウムからなる群から選択される1種の単結晶又は多結晶からなる、請求項1に記載の圧電素子ユニット。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、
複数の前記圧電素子ユニットのうち隣り合う2つの圧電素子ユニットにおいて、一方の圧電素子ユニットの第2電極と、他方の圧電素子ユニットの第1電極とを共通化させて、複数の前記圧電素子ユニットを互いに直列接続している、共振器。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、
複数の前記圧電素子ユニットは互いに並列接続しており、
複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第1電極を相互に電気的に接続し、
複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第2電極を相互に電気的に接続している、共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、圧電素子ユニット及び共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化及び省電力化が強く求められているスマートフォンなどの携帯用機器において、その使用が急速に拡大しており、携帯用機器の無線通信システムにおいては、GHz帯の高周波数を利用するデバイスの開発が盛んに行われている。これらの無線通信システムに用いられる高周波回路では、アナログ回路部分にIF(Intermediate Frequency)フィルタ及びRF(Radio Frequency)フィルタが使用されている。
【0003】
上述のフィルタは、所望の周波数帯の信号のみを通過させて、その他の周波数の信号を遮断するためのものであり、例えば、RFフィルタは複数の共振素子から構成され、梯子状に共振素子が接続されたラダー回路によって所望のフィルタ帯域を形成している。
【0004】
フィルタの具体例としては、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)素子を用いたSAWフィルタが挙げられる。また、SAWフィルタの代替として、圧電薄膜共振(Bulk Acoustic Wave:BAW)素子を用いたBAWフィルタが挙げられ、これらフィルタの開発が進められている。
【0005】
スマートフォンなどの携帯用機器が進化するにつれ、機器内で処理しなければならない周波数帯の信号は増大し、例えば、5G対応のスマートフォンには50以上のフィルタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのフィルタに含まれる圧電素子は、基板の主面と平行に電極と圧電膜が積層されているため、素子の占有面積が大きくなり、進化した携帯用機器の製造にはコストが増大している。限られた機器内に必要数のフィルタを実装するため、フィルタの小型化及び高実装密度化が求められる。共振子の周波数が高くなると、フィルタの小型化及び高実装密度化に伴う機器の薄膜化により、圧電素子の共振周波数を高めていく必要がある。しかしながら、薄膜化に伴い、圧電膜の結晶化度が低下し、また、圧電性を有する基板をスマートカット法又は研削・研磨法等により薄膜化すると表面に結晶欠陥が生じ、バルクや厚膜で得られていた圧電性能が得られなくなるおそれがある。
【0008】
本実施形態の一態様は、小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを提供することを目的の一とする。また、当該圧電素子ユニットを備えた共振器を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の一態様は、主面を有する基板と、前記基板上に配置され、かつ、第1の側面、前記第1の側面と反対側の第2の側面、及び前記主面と対向し、前記第1の側面及び前記第2の側面と接続している底面を有する圧電膜と、前記基板上に配置され、かつ、前記圧電膜の前記第1の側面と接している第1の電極と、前記基板上に配置され、前記圧電膜の前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくともいずれかと接し、かつ、前記第1の電極と離隔している第2の電極と、を備える圧電素子ユニットである。
【0010】
また、本実施形態の他の一態様は、上記圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、複数の前記圧電素子ユニットのうち隣り合う2つの圧電素子ユニットにおいて、一方の圧電素子ユニットの第2電極と、他方の圧電素子ユニットの第1電極とを共通化させて、複数の前記圧電素子ユニットを互いに直列接続している、共振器である。
【0011】
また、本実施形態の他の一態様は、上記圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、複数の前記圧電素子ユニットは互いに並列接続しており、複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第1電極を相互に電気的に接続し、複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第2電極を相互に電気的に接続している、共振器である。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを提供することができる。また、当該圧電素子ユニットを備えた共振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態の第1の変形例に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態の第2の変形例に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図4A】
図4Aは、第2の実施形態に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図5A】
図5Aは、第2の実施形態の第1の変形例に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態の第2の変形例に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図7A】
図7Aは、第2の実施形態の第3の変形例に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図8A】
図8Aは、第3の実施形態に係る共振器を説明する部分上面図である。
【
図9A】
図9Aは、第3の実施形態の変形例に係る共振器を説明する部分上面図である。
【
図10A】
図10Aは、第4の実施形態に係る圧電素子ユニットを説明する部分上面図である。
【
図12】
図12は、側壁絶縁膜を備える圧電素子ユニットを説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0017】
<1> 主面を有する基板と、前記基板上に配置され、かつ、第1の側面、前記第1の側面と反対側の第2の側面、及び前記主面と対向し、前記第1の側面及び前記第2の側面と接続している底面を有する圧電膜と、前記基板上に配置され、かつ、前記圧電膜の前記第1の側面と接している第1の電極と、前記基板上に配置され、前記圧電膜の前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくともいずれかと接し、かつ、前記第1の電極と離隔している第2の電極と、を備える圧電素子ユニット。
【0018】
<1>によれば、効率よく弾性表面波又はバルク弾性波を電極間に伝搬させるために圧電膜、第1の電極及び第2の電極を含む圧電素子において、圧電膜の第1の側面及び第2の側面を広く形成し、かつ、基板の主面における圧電素子の占有面積を小さくすることが可能となる。したがって、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを得ることができる。
【0019】
<2> 前記第1の電極は、前記第1の側面のみで前記圧電膜と接し、前記第2の電極は、前記第2の側面のみで前記圧電膜と接している、<1>に記載の圧電素子ユニット。
【0020】
<2>によれば、圧電膜内部において、基板の主面に対して平行な方向にバルク弾性波が伝わるため、圧電膜、第1の電極及び第2の電極を含む圧電素子において、圧電膜の膜厚方向の厚さを大きくすると、高密度化が可能になり、基板の主面における圧電素子の占有面積を小さくすることが可能となる。したがって、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを得ることができる。
【0021】
<3> 前記基板上に前記圧電膜を挟んで配置され、前記圧電膜と離隔している第1のスペーサー及び第2のスペーサーをさらに備え、前記第1の電極は、前記圧電膜と前記第1のスペーサーとの間に配置され、前記第2の電極は、前記圧電膜と前記第2のスペーサーとの間に配置され、前記第1のスペーサー及び前記第2のスペーサーは、前記圧電膜と同一材料からなる、<1>又は<2>に記載の圧電素子ユニット。
【0022】
<3>によれば、第1のスペーサー及び第2のスペーサーを圧電膜と同一工程によって形成することができるため、製造工程を新たに追加する必要がない。第1のスペーサー及び第2のスペーサーを設けることにより、バルク弾性波が基板等に伝搬するのを遮断する空間を確保でき、圧電素子の振動を減衰させることを抑制することができる。
【0023】
<4> 前記圧電膜上に配置されている保護膜をさらに備え、前記圧電膜と前記第1のスペーサーとの間の領域において、前記保護膜と前記第1の電極との間には空間が存在し、前記圧電膜と前記第2のスペーサーとの間の領域において、前記保護膜と前記第2の電極との間には空間が存在している、<3>に記載の圧電素子ユニット。
【0024】
<4>によれば、空間は、弾性波を遮断する作用があり、空間により圧電素子ユニットを備えた共振器をパッケージ化する際に圧電素子ユニットに与える影響を抑制することができる。
【0025】
<5> 前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、複数の前記第1の電極のそれぞれは、前記圧電膜の前記第1の側面から前記圧電膜の上面を介して前記第2の側面まで連続的に接し、複数の前記第2の電極のそれぞれは、前記圧電膜の前記第2の側面から前記圧電膜の上面を介して前記第1の側面まで連続的に接し、前記主面の法線方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向に、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が交互に配置されている、<1>に記載の圧電素子ユニット。
【0026】
<5>によれば、第1の電極及び第2の電極のそれぞれが圧電膜の第1の側面、上面及び第2の側面と接していることにより、効率よく弾性波を電極間に伝搬させることができる。
【0027】
<6> 前記第1の側面のみと接している前記第1の電極及び前記第1の側面のみと接している前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、前記主面の法線方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向に、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が交互に配置されている、<1>に記載の圧電素子ユニット。
【0028】
<6>によれば、第1の側面側のみに第1の電極及び第2の電極(さらには、配線106a及び配線106b)が配置されるため、基板の主面における圧電素子の占有面積をより小さくすることが可能となる。
【0029】
<7> 前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ複数備えられ、前記圧電膜の膜厚方向に垂直な方向、かつ、前記第1の側面と平行な方向において、前記第1の電極の第1の側面と前記第1の電極の前記第1の側面と同一方向を向いている前記第2の電極の第2の側面との距離は、前記第1の電極のピッチ間隔の1/2である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0030】
<7>によれば、第1の電極と第2の電極の配置を調整することにより、効率よく弾性表面波を電極間に伝搬させることができる。
【0031】
<8> 前記主面の法線方向からみたとき、前記圧電膜は、閉環状であり、前記圧電膜の外周に沿って前記第1の電極が配置され、前記圧電膜の内周に沿って前記第2の電極が配置されている、<1>~<7>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0032】
<8>によれば、電極端で励起されたバルク弾性波が圧電膜の両側面に伝播すること、及び圧電膜の端で反射する不要な波であるスプリアスが発生することなどを抑制することができ、圧電素子を効率よく励振させることができる。
【0033】
<9> 前記圧電膜は、第1の領域、及び前記第1の領域の上部に配置され、前記第1の領域より結晶欠陥が少ない第2の領域を有し、前記第1の領域における前記第1の側面及び前記第2の側面のそれぞれを覆う側壁絶縁膜をさらに備える、<1>~<8>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0034】
<9>によれば、圧電膜の結晶欠陥が少ない領域のみを圧電素子に使用することができる。結果として、高周波数及び高電気機械結合係数を得ることができる。
【0035】
<10> 前記圧電膜の側面は、無極性面が表出しており、前記無極性面に前記第1の電極及び前記第2の電極が接している、<1>~<9>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0036】
<10>によれば、無極性面方向に対し第1の電極及び第2の電極を形成することが可能になり、大きな電気機械結合係数を得ることができる。
【0037】
<11> 前記圧電膜は、前記基板に対してC軸に配向し、かつ、前記C軸方向に対して垂直方向に延在している、<1>~<10>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0038】
<11>によれば、結晶欠陥及び結晶粒界によるバルク弾性波の減衰を抑制でき、高周波領域において安定に動作し、低損失、広帯域幅、及び高伝搬速度等の高い圧電性を備え、かつ、温度依存性が小さい、圧電素子ユニットを得ることができる。
【0039】
<12> 前記圧電膜の上面に配置されている絶縁膜をさらに備える、<1>~<11>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0040】
<12>によれば、第1の電極及び第2の電極を形成する際に受ける圧電膜のオーバーエッチングによるダメージを抑制することができる。
【0041】
<13> 前記第1の電極及び前記第2の電極は、アルミニウム、モリブデン、チタン、タングステン、ルテニウム、金からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<12>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0042】
<13>によれば、安定であり、圧電膜の材料と反応しにくい第1の電極及び第2の電極を得ることができる。
【0043】
<14> 前記基板は、スカンジウム、イッテルビウム、マグネシウム、ニオブ、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種が添加された、又は無添加の窒化アルミニウムからなる、<1>~<13>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0044】
<15> 前記基板は、酸化ニオブリチウム及び酸化タンタルリチウムからなる群から選択される1種の単結晶又は多結晶からなる、<1>~<12>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニット。
【0045】
<14>及び<15>によれば、基板自体が優れた圧電特性を有するため、基板を加工して形成される圧電膜を備える圧電素子も優れた圧電特性を有することができる。
【0046】
<16> <1>~<15>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、複数の前記圧電素子ユニットのうち隣り合う2つの圧電素子ユニットにおいて、一方の圧電素子ユニットの第2電極と、他方の圧電素子ユニットの第1電極とを共通化させて、複数の前記圧電素子ユニットを互いに直列接続している、共振器。
【0047】
<17> <1>~<15>のいずれか1項に記載の圧電素子ユニットを複数備える共振器であって、複数の前記圧電素子ユニットは互いに並列接続しており、複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第1電極を相互に電気的に接続し、複数の前記圧電素子ユニットのそれぞれの第2電極を相互に電気的に接続している、共振器。
【0048】
<16>及び<17>によれば、小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを複数備えているため、上記圧電素子ユニットを複数備える共振器も小型化及び高実装密度化が可能となる。また、共振器の小型化及び高実装密度化に伴い、共振器1つのあたりの製造コストを低減できる。
【0049】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る圧電素子ユニット100について図面を用いて説明する。
【0050】
図1Aは、圧電素子ユニット100を示す部分上面図である。
図1Bは、
図1AのA-A線に沿う部分断面図である。
図1Cは、
図1AのB-B線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100は、圧電薄膜共振素子(BAW素子)の一例である。圧電素子ユニット100は、基板101と、基板101上の絶縁膜102と、絶縁膜102上の圧電膜103と、絶縁膜102上の電極104a及び電極104bと、圧電膜103上面の絶縁膜105と、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、を備える。
【0051】
基板101は主面101Aを有する。圧電膜103は、側面103A、側面103Aと反対側の側面103B、及び絶縁膜102を介して主面101Aと対向し、側面103A及び側面103Bと接続している底面103Cを有する。電極104aは側面103Aのみで圧電膜103と接し、電極104bは側面103Bのみで圧電膜103と接している。つまり、電極104aは圧電膜103を介して電極104bと離隔している。圧電膜103、電極104a、及び電極104bをまとめて圧電素子ともいう。圧電素子は、入力される高周波信号に対して、圧電膜103が横振動を起こし、その振動が圧電膜103のX方向において共振を起こして生じる共振振動(バルク弾性波)を利用している。
【0052】
本実施形態において、圧電膜103が直線状に延びる方向をY方向、Y方向に対して垂直で、かつ、基板101の主面101Aに対して平行な方向をX方向、基板101の厚さに対応する方向をZ方向とする。言い換えれば、Z方向は、X方向及びY方向のそれぞれに対して垂直な方向である。また、基板101からみて圧電膜103が位置している方向を上方向、圧電膜103からみて基板101が位置している方向を下方向とする。
【0053】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0054】
本実施形態における圧電膜103の形状は、ピラー状であると好ましく、圧電膜103が電極104a及び電極104bで挟まれている。圧電膜103の形状は、圧電膜103が共振振動すれば特に限定されないが、例えば、X方向及びY方向におけるアスペクト比(X:Y)が1:10~200であってもよく、1:10~50であってもよく、また、X方向及びZ方向におけるアスペクト比(X:Z)が1:5~100であってもよく、1:5~10であってもよい。なお、X方向の圧電膜103の長さは高周波信号の波長によって決められる。
【0055】
圧電膜103は、切り出し方により、自由に弾性波の伝達方向を選ぶことができる。例えば、圧電膜103の側面103A及び側面103Bは、それぞれ無極性面が表出している。これにより、大きな電気機械結合係数を得ることができる。なお、圧電膜103の側面103A及び側面103Bは、無極性m面を選んで切り出してもよい。また、無極性面上においては、ピエゾ電界の影響を抑制することができる。
【0056】
また、圧電膜103を側面103Aのみで圧電膜103と接している電極104aと側面103Bのみで圧電膜103と接している電極104bで挟むことにより、圧電膜103内部において、X方向にバルク弾性波が伝わる。このため、圧電素子において、バルク弾性波の伝搬方向の垂直な面(YZ面)の面積を大きく形成でき、XY面における圧電素子の占有面積を小さくすることが可能となる。したがって、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを得ることができる。
【0057】
また、従来構造の圧電素子はZ方向に電極と圧電膜を積層するため、圧電膜内部において、バルク弾性波がZ方向に伝わり、圧電素子がZ方向に振動する。この振動の衰退を抑制するために圧電素子を支持する基板に空間(中空部)を形成する必要があるが、本実施形態では、圧電膜103内部において、バルク弾性波はX方向に伝わり、圧電素子がX方向に振動する。圧電素子の側面にはバルク弾性波が基板等に伝搬するのを遮断する空間が存在し、この空間によって、X方向における圧電素子の振動を減衰させることを抑制している。この空間は、従来構造のような加工プロセスを追加せずに形成することができるため、製造コストを低減することができる。
【0058】
圧電膜103は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブリチウム(LiNbO3)、酸化タンタルリチウム(LiTaO3)及びチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3;PZT)の単結晶又は多結晶からなる。高周波帯域におけるフィルタは、広い帯域幅、高い伝搬速度、及び温度安定性が求められており、圧電膜103の材料としては、高い圧電定数、高い伝搬速度、温度係数が小さい窒化アルミニウムが好ましい。
【0059】
圧電膜103は、基板に対してC軸に配向し、かつ、C軸方向(Z方向)に対して垂直方向に延在していてもよい。特に、高結晶性である単結晶のC軸に高配向した結晶領域を有する窒化アルミニウム膜は結晶欠陥及び結晶粒界が少ないため、圧電膜103がC軸に高配向する結晶領域を有する窒化アルミニウム膜を含むことにより、結晶欠陥及び結晶粒界によるバルク弾性波の減衰を抑制でき、高周波領域において安定に動作し、低損失、広帯域幅、及び高伝搬速度等の高い圧電性を備え、かつ、温度依存性が小さい、圧電素子ユニットを得ることができる。
【0060】
なお、窒化アルミニウム膜の(002)回折ピークにおける半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)は、小さいほど配向性が高いことを意味しており、例えば、本実施形態において、「C軸に高配向」とは、FWHMが1.00°未満であることを指す。
【0061】
圧電膜103の膜厚は、高配向性の観点から、例えば、70nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
【0062】
C軸に配向する圧電膜103は、CVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)法又は及びMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法を用いて形成することができ、結晶をよりC軸に高配向させる観点から、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法を用いて形成することがより好ましい。
【0063】
また、圧電膜103の形成面の結晶性は、圧電膜103の結晶性に寄与するため、高結晶性を有する基板101又は絶縁膜102を用いる。これらは、窒化アルミニウム膜の種結晶として機能し、当該種結晶を核として結晶成長させてC軸に高配向する結晶領域を有する圧電膜103を形成することができる。
【0064】
基板101は、圧電素子(圧電膜103、電極104a、及び電極104b)等を支持するためのものである。基板101としては、例えば、シリコン基板、SOI基板、SiC基板、及びサファイア基板等が挙げられる。基板101の主面101Aに微細な凹凸を有すると圧電膜103の結晶成長を阻害する要因となるうるため、基板101の主面101AをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理するとよい。
【0065】
また、基板101上に絶縁膜102を設け、主面101Aの微細な凹凸の影響を絶縁膜102により低減してもよい。絶縁膜102としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などの無機絶縁膜が挙げられる。圧電膜103の結晶成長の観点から、絶縁膜102は高結晶性を有する酸化ジルコニウム及び酸化タンタルを用いることが好ましい。
【0066】
電極104a及び電極104bは、圧電膜103に電界を加えるための電極である。電極104a及び電極104bは、無極性面である圧電膜103の側面103A及び側面103Bにそれぞれ接しており、ピエゾ電界の影響を抑制することができる。電極104a及び電極104bの材料としては、例えば、アルミニウム、モリブデン、チタン、タングステン、ルテニウム、及び金の少なくとも1種を含むことができる。これらは、圧電膜103の材料と反応しにくく、安定な材料である。
【0067】
電極104a及び電極104bの抵抗値が高く、寄生インピーダンスが高い場合は、配線106a及び配線106bを設けてもよい。配線106a及び配線106bの材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。また、寄生インピーダンス低減の観点から、配線106a及び配線106bを厚く形成することが好ましい。
【0068】
絶縁膜105は、圧電膜103上に設けられている。絶縁膜105により、Z方向のエッチングによって電極104a及び電極104bを形成する際に受ける圧電膜103のオーバーエッチングによるダメージを抑制することができる。圧電膜103に対するダメージが小さいエッチング方法を用いて電極104a及び電極104bを形成する際は、絶縁膜105を設けなくてもよい。
【0069】
本実施形態によれば、圧電膜内部において、基板101の主面101Aに対して平行な方向(X方向)にバルク弾性波が伝わるため、圧電膜103、電極104a及び電極104bを含む圧電素子において、圧電膜103の掘り込み量(Z方向の厚さ)を大きくすると、高密度化が可能になり、基板101の主面101A(XY面)における圧電素子の占有面積を小さくすることが可能となる。したがって、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100を得ることができる。
【0070】
<第1の変形例>
本変形例に係る圧電素子ユニット100Aの構成を説明する。
【0071】
図2Aは、圧電素子ユニット100Aを示す部分上面図である。
図2Bは、
図2AのA-A線に沿う部分断面図である。
図2Cは、
図2AのB-B線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Aは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Aは、基板101と、基板101上の圧電膜103と、基板101上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板101上の電極104a及び電極104bと、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。電極104aは、圧電膜103とスペーサー107aとの間に配置され、電極104bは、圧電膜103とスペーサー107bとの間に配置されている。
図2Aは、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。スペーサー107a及びスペーサー107bは、圧電膜103と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Aが上述の
図1A~
図1Cに示す圧電素子ユニット100と異なる点は、スペーサー107a、スペーサー107b、及び保護膜108を設ける点である。本変形例において
図1A~
図1Cに示す圧電素子ユニット100と共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0072】
圧電素子ユニット100では、圧電素子領域の圧電膜のみを残し、残りの部分はすべて除去するのに対し、本変形例の圧電素子ユニット100Aでは、圧電素子領域の周辺の領域のみ圧電膜を除去し、圧電素子領域以外の圧電膜(スペーサー107a及びスペーサー107b)を基板101と保護膜108との間のスペーサーとして機能させることができる。また、スペーサー107a及びスペーサー107bは、バルク弾性波が伝搬しない方向において、圧電膜103と接続(一体化)してもよい。
【0073】
本変形例によれば、上述の圧電素子ユニット100と同様に小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Aを得ることができるだけでなく、スペーサー107a及びスペーサー107bは、圧電膜103と同一材料からなり、圧電膜103と同一工程によって形成することができるため、製造工程を新たに追加せずにスペーサー107a及びスペーサー107bを形成することができる。スペーサー107a及びスペーサー107bを設けることにより、バルク弾性波が基板101等に伝搬するのを遮断する空間を確保でき、圧電素子の振動を減衰させることを抑制することができる。
【0074】
<第2の変形例>
本変形例に係る圧電素子ユニット100Bの構成を説明する。
【0075】
図3Aは、圧電素子ユニット100Bを示す部分上面図である。
図3Bは、
図3AのA-A線に沿う部分断面図である。
図3Cは、
図3AのB-B線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Bは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Bは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板121上の電極104a及び電極104bと、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。電極104aは、圧電膜103とスペーサー107aとの間に配置され、電極104bは、圧電膜103とスペーサー107bとの間に配置されている。
図3Aは、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bは、基板121と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Bが上述の
図2A~
図2Cに示す圧電素子ユニット100Aと異なる点は、基板101の代わりに基板121を設ける点である。本変形例において
図2A~
図2Cに示す圧電素子ユニット100Aと共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0076】
圧電素子ユニット100Aでは、基板とは別の材料を用いて圧電膜を形成するのに対し、本変形例の圧電素子ユニット100Bでは、基板121を加工することにより、圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bを形成している。また、スペーサー107a及びスペーサー107bは、バルク弾性波が伝搬しない方向において、圧電膜103と接続(一体化)してもよい。
【0077】
基板121は主面121Aを有する。基板121としては、例えば、酸化ニオブリチウム及び酸化タンタルリチウム等の単結晶又は多結晶からなる。これらは優れた圧電特性を有するため、基板121を加工して形成される圧電膜103を備える圧電素子も優れた圧電特性を有する。
【0078】
また、基板121としては、スカンジウム、イッテルビウム、マグネシウム、ニオブ、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種が添加された、又は無添加の窒化アルミニウムからなってもよい。これらは優れた圧電特性を有するため、基板121を加工して形成される圧電膜103を備える圧電素子も優れた圧電特性を有する。
【0079】
本変形例によれば、上述の圧電素子ユニット100と同様に小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Bを得ることができるだけでなく、圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bは、基板121と同一材料からなり、基板121を同一工程によって加工することにより圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bを形成することができるため、第1変形例と比較して圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bとなる膜を成膜する工程が不要となり、圧電素子ユニットの製造工程を削減することができる。第1変形例と同様、スペーサー107a及びスペーサー107bを設けることにより、バルク弾性波が基板101等に伝搬するのを遮断する空間を確保でき、圧電素子の振動を減衰させることを抑制することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る圧電素子ユニット100Cについて図面を用いて説明する。
【0081】
図4Aは、圧電素子ユニット100Cを示す部分上面図である。
図4Bは、
図4AのA-A線に沿う部分断面図である。
図4Cは、
図4AのB-B線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Cは、弾性表面波素子(SAW素子)の一例である。圧電素子ユニット100Cは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板121上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、各電極104aと電気的に接続している配線106aと、各電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。各電極104aは、圧電膜103の側面103Aから圧電膜103の上面を介して側面103Bまで連続的に接し、各電極104bは、圧電膜103の側面103Bから圧電膜103の上面を介して側面103Aまで連続的に接している。基板121の主面121Aの法線方向に垂直な方向、かつ、側面103Aと平行な方向(つまり、Y方向)に、各電極104a及び各電極104bが交互に配置されている。
図4Aは、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bは、基板121と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Cが上述の
図3A~
図3Cに示す圧電素子ユニット100Bと異なる点は、電極104a及び電極104bが複数備えられている点、電極104a及び電極104bのそれぞれが圧電膜103の側面103A及び側面103Bと接している点である。本変形例において
図3A~
図3Cに示す圧電素子ユニット100Bと共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0082】
本実施形態における圧電素子(圧電膜103、電極104a、及び電極104b)は、電極104a及び電極104bにより励起された弾性表面波の共振特性を利用している。電極104aに配線106aを介して外部から信号が入力されると、電極104aにより励起された表面弾性波が圧電膜103の側面103A及び側面103Bを伝搬し、配線106bを介して信号が外部へ出力される。電極104a及び電極104bは、櫛形電極(Interdigital Transducer:IDT)であると効率よく弾性表面波を励起できるため好ましい。
【0083】
電極104a及び電極104bのそれぞれが圧電膜103の側面103A、圧電膜103の上面、及び側面103Bと接していることにより、効率よく弾性表面波を電極間に伝搬させることができる。さらに効率よく弾性表面波を電極間に伝搬させるためには、圧電膜103の側面103A及び側面103Bを広くする、つまり圧電素子において、弾性表面波の伝搬方向の垂直な面の面積を大きく形成すればよく、これによりXY面における圧電素子の占有面積を小さくすることが可能となる。したがって、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Cを得ることができる。
【0084】
<第1の変形例>
本変形例に係る圧電素子ユニット100Dの構成を説明する。
【0085】
図5Aは、圧電素子ユニット100Dを示す部分上面図である。
図5Bは、
図5AのA1-A1線に沿う部分断面図である。
図5Cは、
図5AのA2-A2線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Dは、SAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Dは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板121上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、各電極104aと電気的に接続している配線106aと、各電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。各電極104aは、圧電膜103の側面103Aのみで接し、各電極104bは、圧電膜103の側面103Bのみで接している。圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bは、基板121と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Dが上述の
図4A~
図4Cに示す圧電素子ユニット100Cと異なる点は、電極104aが圧電膜103の側面103Aのみで接し、電極104bが圧電膜103の側面103Bのみで接している点である。
【0086】
本変形例によれば、圧電素子ユニット100Cと同様、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Dを得ることができる。
【0087】
<第2の変形例>
本変形例に係る圧電素子ユニット100Eの構成を説明する。
【0088】
図6は、圧電素子ユニット100Eを示す部分上面図である。圧電素子ユニット100Eは、SAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Eは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107aと、基板121上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、各電極104aと電気的に接続している配線106aと、各電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。各電極104a及び各電極104bは、圧電膜103の側面103Aから側面103Bまで連続的に接している。基板121の主面121Aの法線方向に垂直な方向、かつ、側面103Aと平行な方向(つまり、Y方向)に、各電極104a及び各電極104bが交互に配置されている。
図6は、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。圧電膜103及びスペーサー107aは、基板121と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Eが上述の
図4A~
図4Cに示す圧電素子ユニット100Cと異なる点は、配線106a及び配線106bが側面103A側のみに配置されている点である。
【0089】
本変形例によれば、側面103A側のみに配線106a及び配線106bが配置されているため、XY面における圧電素子の占有面積をより小さくすることが可能となり、圧電素子ユニット100Cと同様、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Eを得ることができる。
【0090】
<第3の変形例>
本変形例に係る圧電素子ユニット100Fの構成を説明する。
【0091】
図7Aは、圧電素子ユニット100Fを示す部分上面図である。
図7Bは、
図7AのA-A線に沿う部分断面図である。
図7Cは、
図7AのB-B線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Fは、SAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Fは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板121上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、各電極104aと電気的に接続している配線106aと、各電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103上面の絶縁膜105と、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。各電極104aは、圧電膜103の側面103Aのみで接し、各電極104bは、圧電膜103の側面103Bのみで接している。基板121の主面121Aの法線方向に垂直な方向、かつ、側面103Aと平行な方向(つまり、Y方向)に、各電極104a及び各電極104bが交互に配置されている。さらに、圧電膜103の膜厚方向に垂直な方向、かつ、側面103Aと平行な方向、つまり、Y方向において、電極104aの側面104Aと側面104Aと同一方向を向いている電極104bの側面104Bとの距離Dは、電極104aのピッチ間隔Pの1/2である。圧電膜103、スペーサー107a及びスペーサー107bは、基板121と同一材料からなる。本変形例に係る圧電素子ユニット100Fが上述の
図5に示す圧電素子ユニット100Dと異なる点は、電極104aと電極104bの配置及び絶縁膜105を備える点である。
【0092】
電極104a及び電極104bが同じピッチ周期である場合、電極104aの配置位置は、電極104aのピッチ周期λの1/2、つまり、距離Dを電極104bのピッチ間隔Pの1/2に調整することにより、圧電膜103の側面103A及び側面103Bから効率よく弾性表面波を電極間に伝搬させることができる。
【0093】
本変形例によれば、上述のように、電極104aと電極104bの配置をすることにより、効率よく弾性表面波を電極間に伝搬させることができ、また、圧電素子ユニット100Cと同様、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Fを得ることができる。
【0094】
[共振器]
次に、本実施形態に係る圧電素子ユニットを複数備える共振器100Gの構成を説明する。
【0095】
図8Aは、共振器100Gを示す部分上面図である。
図8Bは、
図8AのA-A線に沿う部分断面図である。
図8Cは、
図8のB-B線に沿う部分断面図である。共振器100Gは、上述の複数の圧電素子ユニット100Aが互いに直列接続している。具体的には、共振器100Gは、基板101と、基板101上の複数の圧電膜103と、基板101上のスペーサー107と、基板101上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、最もスペーサー107側の電極104aと電気的に接続している配線106aと、最もスペーサー107側の電極104bと電気的に接続している配線106bと、隣り合う2つの圧電膜103の間の電極104a及び電極104bと電気的に接続している複数の配線106cと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。なお、圧電素子ユニット100Aの圧電膜103上面には、絶縁膜105が設けられている。
図8Aは、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。
【0096】
共振器100Gは、複数の圧電素子ユニット100Aのうち隣り合う2つの圧電素子ユニットにおいて、一方の圧電素子ユニット100Aの電極104bを、配線106cを介して他方の圧電素子ユニット100Aの電極104aと共通化させている。
【0097】
また、複数の圧電素子ユニット100Aを互いに並列接続させてもよい。
図9Aは、共振器100Hを示す部分上面図である。
図9Bは、
図9AのA-A線に沿う部分断面図である。
図9Cは、
図9のB-B線に沿う部分断面図である。共振器100Hは、基板101と、基板101上の複数の圧電膜103と、基板101上のスペーサー107と、基板101上の複数の電極104a及び複数の電極104bと、最もスペーサー107側の電極104aと電気的に接続している配線106aと、配線106aと電気的に接続している電極104aとは異なり、かつ、X方向において最も離れている他の電極104aと電気的に接続している配線106bと、隣り合う2つの圧電膜103の間の2つの電極104bと電気的に接続している複数の配線106cと、圧電膜103、配線106a、配線106b、及び配線106c等を覆う保護膜108と、を備える。なお、圧電素子ユニット100Aの圧電膜103上には、絶縁膜105が設けられている。
図9Aは、理解を容易にするため、保護膜108の図示を省略している。
【0098】
共振器100Hは、複数の圧電素子ユニット100Aのそれぞれの電極104aを配線106a及び配線106bを介して相互に電気的に接続し、複数の圧電素子ユニット100Aのそれぞれの電極104bを配線106cを介して相互に電気的に接続している。ここでは、共振器に圧電素子ユニット100Aを用いた例を示したがこれに限られず、小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットであればよい。
【0099】
共振器100G及び共振器100Hは、小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニットを複数備えているため、これら圧電素子ユニットを複数備える共振器100G及び共振器100Hも小型化及び高実装密度化が可能となる。また、共振器100G及び共振器100Hの小型化及び高実装密度化に伴い、共振器1つのあたりの製造コストを低減できる。
【0100】
[閉環状圧電素子ユニット]
次に、閉環状圧電素子ユニットである圧電素子ユニット100Iの構成を説明する。
【0101】
図10Aは、圧電素子ユニット100Iを示す部分上面図である。
図10Bは、
図10AのA-A線に沿う部分断面図である。圧電素子ユニット100Iは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Iは、基板121と、基板121上の圧電膜103と、基板121上のスペーサー107と、基板121上の電極104a及び電極104bと、電極104aと電気的に接続している配線109aと、電極104bと電気的に接続している配線109bと、圧電膜103上面の絶縁膜105と、配線109aと電気的に接続している配線106aと、配線109bと電気的に接続している配線106bと、を備える。圧電素子ユニット100Iが上述の
図3A~
図3Cに示す圧電素子ユニット100Bと異なる点は、圧電膜103が閉環状である点等である。本構成において
図3A~
図3Cに示す圧電素子ユニット100Bと共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0102】
圧電膜103は、基板121の主面121Aの法線方向(Z方向)からみたときに閉環状である。ここで、「閉環状」とは、環状であり、かつ、端がない連続した外周及び内周を有していることを指す。
図10Aでは、円の閉環状の圧電膜103を示しているがこれに限られず、例えば、円の他に、楕円、三角形及び四角形などの多角形等であってもよい。
【0103】
電極104aは閉環状である圧電膜103の外周に沿って配置され、電極104bは圧電膜103の内周に沿って配置されている。圧電膜103の外周及び内周には端がないため、電極端で励起されたバルク弾性波が圧電膜103の両側面に伝播すること、及び圧電膜103の端で反射する不要な波であるスプリアスが発生することなどを抑制することができ、圧電素子を効率よく励振させることができる。
【0104】
BAW素子の一例として圧電素子ユニット100Iを示したがこれに限られず、SAW素子である閉環状圧電素子ユニットであってもよい。SAW素子の場合、常に弾性表面波が電極間を伝播するため、圧電素子を効率よく励振させることができる。
【0105】
閉環状圧電素子ユニットである圧電素子ユニット100Iは、上述のように電素子を効率よく励振させることができる。また、圧電素子ユニット100Cと同様、圧電素子を小型化及び高実装密度化でき、結果として小型化及び高実装密度化に適した圧電素子ユニット100Iを得ることができる。
【0106】
〔空間〕
次に、圧電素子ユニットにおける保護膜と電極との間に存在する空間について説明する。
【0107】
図11Aは、圧電素子ユニット100Jを示す部分断面図である。圧電素子ユニット100Jは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Jは、基板101と、基板101上の圧電膜103と、基板101上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、基板101上の電極104a及び電極104bと、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。電極104aは、圧電膜103とスペーサー107aとの間に配置され、電極104bは、圧電膜103とスペーサー107bとの間に配置されている。圧電膜103とスペーサー107aとの間の領域において、保護膜108と電極104aとの間には空間111が存在し、圧電膜103とスペーサー107bとの間の領域において、保護膜108と電極104bとの間には空間111が存在している。
【0108】
図11Bは、圧電素子ユニット100Kを示す部分断面図である。圧電素子ユニット100Kは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Kは、基板101と、基板101上の絶縁膜102と、絶縁膜102上の圧電膜103と、絶縁膜102上の、圧電膜103と離隔しているスペーサー107a及びスペーサー107bと、絶縁膜102上の電極104a及び電極104bと、圧電膜103上、スペーサー107a上、及びスペーサー107b上の絶縁膜105と、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、圧電膜103、配線106a及び配線106b等を覆う保護膜108と、を備える。電極104aは、圧電膜103とスペーサー107aとの間に配置され、電極104bは、圧電膜103とスペーサー107bとの間に配置されている。圧電膜103とスペーサー107aとの間の領域において、保護膜108と電極104aとの間には空間111が存在し、圧電膜103とスペーサー107bとの間の領域において、保護膜108と電極104bとの間には空間111が存在している。スペーサー107a上、及びスペーサー107b上の絶縁膜105においても、スペーサーとしての機能を有する。
【0109】
圧電素子がZ方向に大きく形成され、XY面における圧電素子の占有面積が小さいため、CVD法又はスパッタリング法を用いて保護膜108を形成する際に、空間111が保護膜108によって埋まることがない。空間111は、弾性波(ここではバルク弾性波)が基板101等に伝搬するのを遮断する作用があり、空間111により圧電素子ユニットを備えた共振器をパッケージ化する際に圧電素子ユニットに与える影響を抑制することができる。
【0110】
〔側壁絶縁膜〕
次に、側壁絶縁膜を備える圧電素子ユニットについて説明する。
【0111】
図12は、圧電素子ユニット100Lを示す部分断面図である。圧電素子ユニット100Lは、BAW素子の一例である。圧電素子ユニット100Lは、基板101と、基板101上の絶縁膜102と、絶縁膜102上の圧電膜103と、絶縁膜102上の側壁絶縁膜112a及び側壁絶縁膜112bと、絶縁膜102上及び側壁絶縁膜112a上の電極104aと、絶縁膜102上及び側壁絶縁膜112b上の電極104bと、圧電膜103上面の絶縁膜105と、電極104aと電気的に接続している配線106aと、電極104bと電気的に接続している配線106bと、を備える。
【0112】
圧電膜103は、領域103aと、領域103aの上部に配置され、領域103aより結晶欠陥が少ない領域103bと、を有する。結晶性の膜を絶縁膜等の他の材料の上に成膜すると、成膜初期には結晶が乱れやすく、膜が成長するにつれて、徐々に結晶が揃う。このため、成膜初期である圧電膜103の領域103aは結晶が乱れやすく、結晶欠陥(結晶粒界)が多く存在する。結晶欠陥(結晶粒界)は、薄膜の中に存在している多数の結晶(多結晶)の境界であり原子が不連続に並ぶ格子欠陥の1つであり、その特異な原子配列から材料の多様な機能の起源となる粒界は、幅が数ナノメートルという極めて微小な領域にしか存在しないにも関わらず、材料や素子等の総合的性能を決定付けることも少なくない。例えば、結晶欠陥(結晶粒界)は材料の熱伝導性や振動の伝搬性を大きく低下させてしまう。
【0113】
上述のような理由から領域103aを圧電素子に使用することは好ましくないため、領域103aにおける側面103A及び側面103Bのそれぞれを覆う側壁絶縁膜112a及び側壁絶縁膜112bを設けることにより、結晶欠陥が少ない領域103bのみを圧電素子に使用することができる。圧電膜103の結晶欠陥が少ない領域103bのみを圧電素子に使用するにより、高周波数及び高電気機械結合係数を得ることができる。
【0114】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【0115】
例えば、圧電素子ユニット100において、圧電素子ユニット100Kに示すように圧電膜103近傍の電極104a及び電極104bの厚さ(Z方向の寸法)が圧電膜103の厚さ(Z方向の寸法)より厚くてもよい。また、圧電素子ユニット100において、配線106a及び配線106bの厚さ(Z方向の寸法)が電極104a及び電極104bの厚さ(Z方向の寸法)より厚くてもよい。
【符号の説明】
【0116】
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100I、100J、100K、100L 圧電素子ユニット
100G、100H 共振器
101、121 基板
101A、121A 主面
102、105 絶縁膜
103 圧電膜
103a、103b 領域
103A、103B、104A、104B 側面
103C 底面
104a、104b 電極
106a、106b、106c、109a、109b 配線
107、107a、107b スペーサー
108 保護膜
111 空間
112a、112b 側壁絶縁膜