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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066487
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】蓄電システムを備える車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240508BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240508BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240508BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240508BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20240508BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/244 Z
H01M50/249
H01M50/262 P
H01M50/211
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183773
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】102022000022350
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ポッジョ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ リガブーエ
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ヴェントゥーリ
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB18
3D235BB20
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE14
3D235EE64
5H040AA01
5H040AA03
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC20
5H040CC57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓄電システムを備える車両であって、軽量であると同時に、製造が容易で経済的である車両を提供する。
【解決手段】下壁を有するフレームと、蓄電システムとを有する車両であって、蓄電システムは、フレームの下方に配置されて、フレームの下壁に固定されるとともに、下壁が設けられる容器と、容器の内部に収容される複数のバッテリモジュールと、容器の下壁に固定されて容器の下壁から垂直に突出するとともにバッテリモジュールと係合する複数のロックピンとを有する。各ロックピンは、フレームの下壁まで延在し、ねじ付きの第1の穴を上端に有する。フレームの下壁が複数の第2の穴を有し、それぞれの第2の穴は、貫通穴であるとともに、対応する第1の穴と位置合わせされる。複数の取り付けねじが設けられ、それぞれの取り付けねじは、フレームの下壁の第2の穴に挿通されるとともに、対応するロックピンの第1の穴にねじ込まれる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(7)の垂直方向最下部を構成する下壁(21)を有するフレーム(7)と、
前記フレーム(7)の下方に配置されて、前記フレーム(7)の前記下壁(21)に固定されるとともに、容器(8)の垂直方向最下部を構成する下壁(9)が設けられる容器(8)と、前記容器(8)の内部に収容される複数のバッテリモジュール(12)と、前記容器(8)の前記下壁(9)に固定されて前記容器(8)の前記下壁(9)から垂直に突出するとともに前記バッテリモジュール(12)と係合する複数のロックピン(19)とを備える蓄電システム(6)と、
を備える車両(1)であって、
各ロックピン(19)は、前記フレーム(7)の前記下壁(21)まで延在するとともに、ねじ付きの第1の穴(23)を上端に有し、
前記フレーム(7)の前記下壁(21)が複数の第2の穴(22)を有し、それぞれの第2の穴は、貫通穴であるとともに、対応する第1の穴(23)と位置合わせされ、
複数の取り付けねじ(24)が設けられ、それぞれの取り付けねじは、前記フレーム(7)の前記下壁(21)の第2の穴(22)に挿通されるとともに、対応するロックピン(19)の前記第1の穴(23)にねじ込まれる、
ことを特徴とする車両(1)。
【請求項2】
複数の長手方向公差補償要素(25)を備え、各長手方向公差補償要素は、前記フレーム(7)の前記下壁(21)とロックピン(19)との間に介在されて、取り付けねじ(24)によって横断される、請求項1に記載の車両(1)。
【請求項3】
各ロックピン(19)は、その上壁の領域に、第3の穴(27)を有し、前記第3の穴(27)は、ねじ付き貫通穴であり、前記第1の穴(23)の上方に配置され、前記第1の穴(23)の直径よりも大きい直径を有するとともに、補償要素(25)によって係合され、前記補償要素(25)は、前記対応する取り付けねじ(24)によって端から端まで横断される、請求項2に記載の車両(1)。
【請求項4】
各補償要素(25)は、前記第3の穴(27)にねじ込まれるとともに、ねじ付き貫通穴である第4の穴(26)を中心に有し、前記第4の穴(26)にねじ込まれる前記対応する取り付けねじ(24)によって係合される、請求項3に記載の車両(1)。
【請求項5】
前記容器(8)が上壁(10)を備え、前記上壁(10)は、前記容器(8)の垂直方向最上部を構成するとともに、複数の第5の穴(28)を有し、それぞれの第5の穴(28)は、貫通穴であるとともに、ロックピン(19)によって横断される、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項6】
各ロックピン(19)は、前記容器(8)の前記上壁(10)が載置されるブラケット(29)を有する、請求項5に記載の車両(1)。
【請求項7】
複数の環状ガスケット(30)が設けられ、各環状ガスケット(30)は、前記容器(8)の前記上壁(10)と前記対応するロックピン(19)の前記ブラケット(29)との間に介在される、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項8】
各ロックピン(19)の前記ブラケット(29)は、前記対応する環状ガスケット(30)を受け入れる座部を有する、請求項7に記載の車両(1)。
【請求項9】
各ロックピン(19)は、前記ブラケット(29)の上方に配置されるねじ付き外側部分(31)を有し、
複数のナット(32)が設けられ、各ナットは、前記対応するロックピン(19)の前記ねじ付き外側部分(31)にねじ込まれるとともに、前記容器(8)の前記上壁(10)を前記対応するロックピン(19)の前記ブラケット(29)に押し付ける、
請求項6に記載の車両(1)。
【請求項10】
複数の支持ブロック(35)が設けられ、各支持ブロック(35)は、前記容器(8)の前記下壁(9)に強固に固定されるとともに、ねじ付きである第6の穴(36)を中心に有し、前記第6の穴(36)にねじ込まれる対応するロックピン(19)の末端によって係合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項11】
各支持ブロック(35)が支持面(37)を有し、前記支持面(37)上には、対応するバッテリモジュール(12)が、該バッテリモジュール(12)が前記容器(8)の前記下壁(9)から持ち上げられるように載置される、請求項10に記載の車両(1)。
【請求項12】
前記容器(8)の前記下壁(9)と前記バッテリモジュール(12)との間を占める第1の空きスペース(38)を画定するために、前記バッテリモジュール(12)が前記容器(8)の前記下壁(9)から持ち上げられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項13】
前記容器(8)の上壁(10)と前記フレーム(7)の前記下壁(21)との間に第2の空きスペース(39)がある、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項14】
前記容器(8)の前記下壁(9)は、路面に直接面する前記車両(1)の底壁を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項15】
各バッテリモジュール(12)は、電気化学セル(13)のグループと、2つの収容壁(14)とを備え、前記収容壁は、前記容器(8)の前記下壁(9)に対して垂直であるとともに、その間で前記電気化学セル(13)のグループをクランプするように前記電気化学セル(13)のグループの両側に互いに平行に配置され、
各収容壁(14)は、ロックピン(19)によって係合される少なくとも1つの管状接続体(18)を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項16】
少なくとも2つの隣接するバッテリモジュール(12)が2つの対応する接続体(18)を有し、これらの接続体は、互いに位置合わせされて、いずれも同じロックピン(19)によって係合される、請求項15に記載の車両(1)。
【請求項17】
同じロックピン(19)が、バッテリモジュール(12)の接続体(18)と係合するとともに、更に別の隣接するバッテリモジュール(12)の接続体(18)と係合し、その結果、同じロックピン(19)によって係合される2つの接続体(18)が、前記ロックピン(19)に沿う異なる位置に配置され、すなわち、互いに同軸となり得るように垂直方向に互い違いに配置される、請求項16に記載の車両(1)。
【請求項18】
各ロックピン(19)が、少なくとも1つの対応する管状接続体(18)の内側に配置される、より小さい直径を有する下側部分(33)と、対応する管状接続体(18)を前記容器(8)の前記下壁(9)に向かって押すように前記対応する管状接続体(18)を押圧する、より大きい直径を有する上側部分(34)とを備える、請求項15に記載の車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
この特許出願は、その全開示が参照により本願に組み入れられる、2022年10月31日に出願されたイタリア特許出願第102,022,000,022,350号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、蓄電システムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0003】
車両には、単一の電気モータ、または数個の電気モータを設けることができ(その場合、全電気駆動となる)、あるいは、燃焼エンジンと組み合わされた、1つ以上の電気モータを設けることができる(その場合、全電気駆動、燃焼駆動、またはハイブリッド駆動となる)。
【0004】
電気モータ(または各電気モータ)は、駆動輪に機械的に接続されるとともに、電力変換器の介在により、蓄電システムに電気的に接続される。
【0005】
蓄電システムは、(総電圧を増大させるために)互いに直列に接続される(通常は、「ポーチ」構造またはプリズム構造を伴う)電気化学セルの2つのグループから成る。蓄電システムは、大きな寸法および大きな重量を有し得る(特に、蓄電システムが500kgを超える重量になり得る完全電気駆動の場合)。
【0006】
現代の車両において、蓄電システムは、それが車両の床板に組み込まれ得るように平坦で(比較的)薄い形態を有する。この構成において、蓄電システムは、(路面に面する車両の底部を構成する)下壁、上壁、および側壁を有する容器を備え、側壁は、下壁と上壁とに対して垂直であるとともに、下壁と上壁とを互いに接続する。容器の内側には、それぞれが対応するモジュールを形成する電気化学セルの異なるグループがある。
【0007】
この構成により、蓄電システムは、車両の床板の一体部分となり、したがって、床板に抵抗および剛性を与えるのに役立つべく設計される。
【0008】
米国特許出願公開第2018114961号明細書は、互いに隣接してベースプレートに取り付けられる複数のバッテリモジュールを備える、車両用蓄電システムを開示し、バッテリモジュールをベースプレートに結合するために、各バッテリモジュールには管状および中空の接続体が設けられ、これらの接続体には、ベースプレートに形成されるねじ穴にねじ込まれるそれぞれのねじが挿入される。
【0009】
欧州特許出願第21206804号明細書は、下壁が設けられる容器と、容器内に収容されて下壁に直接載置される複数のバッテリモジュールとを備える車両用の蓄電システムを開示する。各バッテリモジュールは、電気化学セルのグループと、2つの収容壁とを有し、2つの収容壁は、容器の下壁に対して垂直に方向付けられるとともに、それらの間で電気化学セルのグループをクランプするべく電気化学セルのグループの両側に互いに平行に配置され、各収容壁は少なくとも1つの管状接続体を有し、下壁には複数のロックピンが固定され、これらのロックピンは、下壁から垂直に突出して、接続体と係合する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、蓄電システムを備える車両であって、軽量であると同時に、製造が容易で経済的である車両を提供することである。
【0011】
本発明によれば、特許請求の範囲に記載される蓄電システムを備える車両が提供される。
【0012】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を記載し、説明の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して、本発明について説明する。
図1】電動車両であり、蓄電システムを備える本発明に係る道路車両の概略平面図である。
図2図1の車両の蓄電システムの、より明確にするために部品を取り除いた分解斜視図である。
図3図2の蓄電システムのバッテリモジュールの斜視図である。
図4図3のバッテリモジュールの、より明確にするために部品を取り除いた分解斜視図である。
図5図2の蓄電システムの断面図である。
図6図2の蓄電システムのロックピンの斜視図である。
図7図6のロックピンの側面図である。
図8図6のロックピンの断面線VIII-VIIIに沿う長手方向断面図である。
図9図2の蓄電システムの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、番号1は、全体として、4つの駆動輪2(2つの前駆動輪2および2つの後駆動輪2)を備えた電気道路車両(特に、電気自動車)を示す。
【0015】
道路車両1は、明らかに、その車輪2が路面上に載るように設計されており、したがって、垂直に対して常に所定の位置を維持するように設計される。したがって、道路車両1において、すなわち道路車両1の全ての構成要素において、上部(すなわち、垂直方向最上部)と、上部とは反対側の下部(すなわち、垂直方向最下部)とを識別することができる。
【0016】
車両1は、前方位置に配置される(すなわち、2つの前駆動輪2に接続される)電気駆動システム3と、後方位置に配置される(すなわち、2つの後駆動輪2に接続される)電気駆動システム3とを備え、後方位置に配置される電気駆動システム3は、構造的観点から前方位置に配置される電気駆動システム3と完全に同一であるとともに、機械的観点から前方位置に配置される電気駆動システム3とは完全に独立しており別個である。
【0017】
本明細書に示されない異なる実施形態によれば、車両1は、(前方位置に配置されるまたは後方位置に配置される)単一の電気駆動システム3を備え、したがって、2つの駆動輪2のみを有し、この実施形態において、車両1は、電気駆動システム3から動作を受けない駆動輪2に接続される燃焼駆動システムを備えることもできる。
【0018】
各電気駆動システム3は、それぞれのシャフトが設けられた一対の可逆電気機械4(すなわち、電気エネルギーを吸収して機械的トルクを生成する電気委モータとしておよび機械的エネルギーを吸収して電気エネルギーを生成する発電機としての両方として機能することができる)と、クラッチを介在させることなく電気機械4(すなわち、電気機械4のシャフト)を対応する駆動輪2に接続する一対のドライブトレイン5とを備える。
【0019】
各電気機械4は、化学バッテリを備えた蓄電システム6に接続される対応するAC/DC電子電力コンバータ(すなわち、「インバータ」)によって制御され、すなわち、各DC-AC電子電力コンバータは、双方向コンバータであり、蓄電システム6に接続されるDC側と、対応する電気機械4に接続される三相AC側とを備える。
【0020】
図2に示されるように、蓄電システム6は、車両1の床板に組み込まれ得るように、平坦で(比較的)薄い構造を有する。特に、蓄電システム6は、以下に説明する接続モードで車両1のフレーム7(図5に部分的に示される)に強固にしっかりと接続される。
【0021】
蓄電システム6は、下壁9(路面に面する車両1の底部を構成し、水平に向けられている)と、上壁10(図5に部分的に示されており、下壁9と平行であり、水平に向けられている)と、下壁9および上壁10に対して垂直であって下壁9と上壁10とを互いに接続する(垂直に向けられる)側壁11とを有する容器8を備える。言い換えると、容器8の下壁9は、容器8の上壁10よりも垂直下方に配置され、特に、容器8の下壁9は、容器8の垂直方向最下部を構成し、容器8の上壁10は、容器8の垂直方向最上部を構成する。
【0022】
蓄電システム6は、複数のバッテリモジュール12(特に、15個のバッテリモジュール12)を備え、各バッテリモジュールは、(最初は)他のバッテリモジュール12とは別個独立して容器8内に配置され、平行六面体形状を伴う(すなわち、「ポーチ」構造または角柱構造を有する)電気化学セル13のグループ(図4に示される)を内側に受け入れる。
【0023】
図3および図4によれば、各バッテリモジュール12は、分解可能なケーシング内に収容される平行六面体形状を有する電気化学セル13のグループを備える。各ケーシングは2つの収容壁14を備え、これらの収容壁14は、容器8の下壁9に対して垂直に向けられる(すなわち、垂直に向けられる)とともに、それらの間で電気化学セル13のグループをクランプするように電気化学セル13のグループの両側に互いに平行に配置される。更に、各ケーシングは、2つの収容壁14および容器8の下壁9の両方に対して垂直に配置される2つのヘッド壁15(すなわち、垂直に向けられる)を備える。最後に、各ケーシングは、下壁16および上壁17を備え、これらの壁は、2つの収容壁14に対して垂直に配置されるとともに、容器8の下壁9に対して平行である(すなわち、水平に向けられる)。
【0024】
各ケーシングにおいて、収容壁14は、機械的に最も頑丈な(最も耐性のある)構成要素であり、すなわち、収容壁14は、ヘッド壁15、下壁16、および上壁17の機械的頑丈さ(抵抗)よりも大きい機械的頑丈さ(抵抗)を有する。収容壁14のより大きな機械的頑丈さ(抵抗)は、図4からすぐに明らかであり、すなわち、壁15~17は、実質的に平坦でかなり薄い金属シートであるが、収容壁14は、より大きな厚さを有し、かなりの寸法を伴う補強リブも有する。
【0025】
好ましい実施形態によれば、各バッテリモジュール12はタイロッドを備え、これらのタイロッドは、2つの対応する収容壁14を互いに向けて押して収容壁間で所定のクランプ力(「ポーチ」電気化学セル13を扱う場合、電気化学セル13の良好な動作に必要である)により電気化学セル13をクランプする。
【0026】
想定し得る実施形態によれば、バッテリモジュール12の各ケーシングの下壁16および/または上壁17は、電気化学セル13のグループを調整(すなわち、冷却または加熱)するために使用される液体熱交換器に結合され得る。
【0027】
添付の図に示される好ましい実施形態によれば、蓄電システム6は、バッテリモジュール12の収容壁14が車両1(図1に示される)の進行方向Dに対して横方向の向きで配置されるように車両1に取り付けられるべく構成され、つまり、蓄電システム6が車両1に取り付けられるときに、バッテリモジュール12の全ての収容壁14は横向きとなっている(すなわち、車両1の進行方向Dに対して垂直である)。
【0028】
各収容壁14は、一連の管状接続体18、すなわち一連の接続体18を有し、各接続体18は、接続体18を左右に貫通する中央貫通キャビティを有する(言い換えれば、接続体18は中央で穿孔される)。添付の図に示される好ましい実施形態では、接続体18が円筒形状を有する(したがって、接続体の中央キャビティも円筒形状を有する)。
【0029】
図2によれば、蓄電システム6は、容器8の下壁9に固定されて下壁9から垂直に突出する複数のロックピン19(円筒対称性を有する)を備える(したがって、ロックピン19は垂直に向けられる)。ロックピン19は、対応する接続体18と係合するように、すなわち、対応する接続体18の中央キャビティと(かなりの隙間を伴うことなく)係合するように構成される。
【0030】
図3によれば、各収容壁14は、収容壁14の縁部領域および収容壁14の縁部間の両方に配置される幾つかの接続体18を有する。図5によれば、2つの隣接するバッテリモジュール12は、少なくとも2つの対応する接続体18を有し、これらの接続体18は、互いに重なり合って位置合わせされ、いずれも同じロックピン19によって係合され、すなわち、同じロックピン19が、バッテリモジュール12の接続体18と係合するとともに、隣接する別のバッテリモジュール12の接続体18とも係合する。結果として、同じロックピン19によって係合される2つの接続体18は、ロックピン19に沿う異なる位置に配置され、すなわち、2つの接続体は、互いに同軸であり得るように(ロックピン19が垂直であるため)垂直方向に互い違いに配置される。
【0031】
図3によれば、各収容壁14が2つの凹部20を有し、これらの凹部は、接続体18の形状をネガで再現するとともに、隣接する収容壁14の接続体18を受け入れ(図5に示されるように)、したがってインターロック結合を形成する
【0032】
言い換えれば、バッテリモジュール12の第1の収容壁14は、少なくとも1つの第1の接続体18(実際には、本明細書に示される実施形態では第1の接続体のうちの2つ)と、接続体18の形状をネガで再現して第1の接続体18と同軸の少なくとも1つの第1の凹部20とを有し、第1の収容壁14に隣り合って第1の収容壁14と当接する(別のバッテリモジュール12の)第2の収容壁14は、少なくとも1つの第2の接続体18(実際には、本明細書に示される実施形態では第2の接続体のうちの2つ)と、接続体18の形状をネガで再現して第2の接続体18と同軸の少なくとも1つの第2の凹部20とを有し、蓄電システム6が設置されると、第1の収容壁14のそれぞれの第1の接続体18は、第2の収容壁14の対応する第2の凹部20と係合し、同様に、第2の収容壁14のそれぞれの第2の接続体18は、第1の収容壁14の対応する第1の凹部20と係合し、したがって、(図5に示される)インターロック結合を形成する。明らかに、前述したように、第1の収容壁14の第1の接続体18は、第2の収容壁14の対応する第2の接続体18に対して垂直方向に互い違いになるように配置され、それにより、2つの接続体18は、互いに同軸であり、したがって同じロックピン19によって係合され得る。
【0033】
言い換えれば、各収容壁14は、収容壁14の縁部間に配置されるそれぞれの接続体18ごとに、接続体18の形状をネガで再現して接続体18と同軸である対応する凹部20を有する。
【0034】
図5によれば、車両1のフレーム7は、フレーム7の最下部(すなわち、路面に最も近い)を構成して複数の貫通穴22を有する下部21を有する。蓄電システム6の容器8は、フレーム7の下方に(フレーム7の下壁21から所定の距離を隔てて)配置され、フレーム7の下壁21に固定される。
【0035】
前述したように、蓄電システム6は複数のロックピン19を備え、これらのロックピン19は、容器8の下壁9に固定され、容器8の下壁9から垂直に突出するとともに、バッテリモジュール12と係合する。各ロックピン19は、フレーム7の下壁21まで延在し、ねじ付きの止まり穴23(図8により良く示される)を上端に有する。前述したように、フレーム7の下壁21は複数の穴22を有し、各穴22は、貫通穴であるとともに、対応するロックピン19の穴23と位置合わせされる。更に、複数の取り付けねじ24が設けられ、各取り付けねじ24は、フレーム7の下壁21の穴22に挿通されて、対応するロックピン19の穴23にねじ込まれる。
【0036】
好ましい実施形態によれば、複数の長手方向公差補償要素25が設けられ、各補償要素25は、フレーム7の下壁21と対応するロックピン19との間に介在され、取り付けねじ24によって横断される。特に、各補償要素25は穴26(図8により良く示される)を中心に有し、穴26は、貫通穴であり、取り付けねじ24によって横断されるとともに、(すなわち、ロックピン19の穴23の通常は右巻きであるねじ山とは反対の)左巻きのねじ山を伴うねじが切られ、取り付けねじ24が対応する補償要素25の穴26にねじ込まれると、補償要素25は、それがフレーム7の下壁21に衝突するまで押され、フレーム7の下壁21に衝突した時点で、補償要素25の脆弱部が破壊し、したがって、補償要素25の位置が確定的に固定される。そうすることによって、補償要素25は、それぞれのロックピン19ごとに、異なる(「カスタマイズされた」)態様で全ての長手方向公差を補償する。
【0037】
長手方向公差補償デバイス25は、例えば、国際公開第2020200776号パンフレットまたは米国特許第8066465号、第7025552号、第7891927号、第7241097号に開示される種類のものであり、ブランドFLEXITOL(登録商標)で市販されている。
【0038】
本明細書に示されない異なる実施形態によれば、補償要素25はなく、フレーム7の下壁21がロックピン19の上壁に直接当接する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、各ロックピン19は穴27を上端に有し、穴27は、ねじ付き貫通穴であり、穴23の上方に配置され、穴23の直径よりも大きい直径を有するとともに、対応する取り付けねじ24によって端から端まで横断される対応する補償要素25によって係合される。言い換えれば、各補償要素25は、対応するロックピン19の貫通穴27にねじ込まれるとともに、対応するロックピン19の止まり穴23にねじ込まれる取り付けねじ24(補償要素25の貫通穴26と係合する)によって内側で横断される。すなわち、各補償要素25は、対応するロックピン19の穴27にねじ込まれ、ねじ付き貫通穴である穴26を中心に有するとともに、穴26にねじ込まれる対応する取り付けねじ24によって係合される。
【0040】
容器8の上壁10は複数の穴28を有し、各穴28は、貫通穴であるとともに、対応するロックピン19によって横断される。各ロックピン19は、好ましくは、円形形状を伴うブラケット29(すなわち、ロックピン19を取り囲む丸い平坦な「カラー」である)を有し、ブラケット29上に容器8の上壁10が載置される。好ましくは、複数の環状ガスケット30(図8により良く示される)があり、各環状ガスケットは、容器8の上壁10と対応するロックピン19のブラケット29との間に介在されて、容器8の上壁10の対応する貫通穴28の周りに液圧および空気圧シールを確保する。各ロックピン19のブラケット29は、対応する環状ガスケット30を収容する座部を有し、したがって、ガスケットはロックピン19に予め取り付けられる。
【0041】
各ロックピン19はねじ付き外側部分31(図7および図8により良く示される)を有し、ねじ付き外側部分31は、ブラケット29の上方に配置されるとともに、容器8の上壁10をブラケット29に押し付けるためのナット32(必要に応じて、添付の図に示されるブッシングにも結合される)によって係合される。言い換えると、各ナット32は、対応するロックピン19のねじ付き外側部分31にねじ込まれ、容器8の上壁10を対応するロックピン19のブラケット29に押し付ける(必要に応じて、ブッシングを介在させて)。
【0042】
前述したように、隣接する2つのバッテリモジュール12は対応する2つの接続体18を有し、これらの接続体は、互いに位置合わせされて重なり合っており、いずれも同じロックピン19によって係合される。図6図7および図8により良く示されるように、各ロックピン19は、(図5に示されるように)少なくとも1つの対応する管状接続体18の内側に配置されて、容器8の下壁9の領域内で終端する、より小さい直径を有する下側部分33と、対応する管状接続体18を容器8の下壁9に向かって押すように(図5に示されるように)対応する管状接続体18を押圧する、より大きい直径を有する上側部分34とを備える。言い換えれば、各ロックピン19は、少なくとも1つの対応する管状接続体18の内側に配置されて容器8の下壁9に接続される下側部分33と、管状接続体18を容器8の下壁9に向かって押すように管状接続体18を押圧する上側部分34とを備え、下側部分33は上側部分34の直径よりも小さい直径を有し、それにより、下側部分33を対応する管状接続体18に挿入することができ、上側部分34は、対応する管状接続体18に挿入するには大きすぎ、したがって、対応する管状接続体18を押圧する。
【0043】
図6により良く示されるように、容器8は複数の支持ブロック35を備え、各支持ブロックは、容器8の下壁9に強固に固定され(例えば、溶接または接着によって)、ねじ付きの穴36(図5に示される)を中心に有するとともに、穴36にねじ込まれる対応するロックピン19のねじ付きの末端によって(すなわち、対応するロックピン19の下側部分33によって)係合される。換言すれば、ロックピン19の下側部分33の先端(末端)は、ねじが切られるとともに、容器8の下壁9から突出して下壁9の延在部を構成する対応する支持ブロック35の穴36にねじ込まれる。
【0044】
好ましい実施形態によれば、各支持ブロック35が支持面37(図6に示される)を有し、この支持面37上には、対応するバッテリモジュール12(すなわち、対応するバッテリモジュール12の下壁16)が、バッテリモジュール12が容器8の下壁9から持ち上げられるように載置される。そうすることによって、容器8の下壁9とバッテリモジュール12との間を占める空きスペース(容積)38を画定するようにバッテリモジュール12が容器8の下壁9から持ち上げられる。
【0045】
容器8の下壁9とバッテリモジュール12との間の空きスペース38は、主に、容器8の下壁9がバッテリモジュール12と(直接に)接触することなく上方に(すなわち、容器8の内側に向かって)変形できるようにする機能を有する。換言すれば、容器8の下壁9は、路面に直接に面する車両1の底壁を構成し、そのため、路面上に存在する障害物に対する衝撃によって、容器8の下壁9を内側に変形させることができ、空きスペース38の存在のおかげで、容器8の下壁9は、バッテリモジュール12と直接に接触することなく、したがって、バッテリモジュール12に直接に応力をかけることなく、内側に変形するいくらかの空間を有する。また、容器8の下壁9とバッテリモジュール12との間の空きスペース38は、バッテリモジュール12を冷却するために、すなわち、バッテリモジュール12のための冷却要素を収容するために、または調整流体(一般に、空気)が流通できるようにするために使用することもできる。
【0046】
同様に、容器8の上壁10とフレーム7の下壁21との間にも空きスペース39が存在し、この空きスペース39により、バッテリモジュール12は、フレーム7の下壁21と直接に接触することなく、容器8の下壁9の変形の推力に起因して上方に移動することができる。また、フレーム7の下壁21とバッテリモジュール12との間の空きスペース39は、バッテリモジュール12を冷却するために、すなわち、バッテリモジュール12のための冷却要素を収容するために、または調整流体(一般に、空気)が流通できるようにするために使用することもできる。
【0047】
換言すれば、蓄電システム6の容器8の上下(すなわち、バッテリモジュール12の上下)に配置される空きスペース38,39は、容器8をフレーム7の下壁21に対して直接に押し付けることなく、車両1の底部に当たる障害物の推力によって垂直方向に変形する機会を容器8に与え、したがって、バッテリモジュール12に収容された電気化学セル13は、しばしば(高すぎる)機械的応力を受ける。
【0048】
図9に示される変形例は、ブラケット29の寸法および形状のために基本的に異なり、この実施形態において、容器8の上壁10は、底部でブラケット29(より小さい寸法を伴う)に当接しかつ上部でナット32に当接する2つのブッシング間でクランプされる。
【0049】
異なる実施形態によれば、容器8の下壁9は、路面に直接面する車両1の底壁を構成せず、すなわち、容器8の下壁9とは異なり、別個であり、離間している車両1の底壁がある。
【0050】
本明細書に記載の実施形態は、互いに組み合わせることができ、そのために本発明の保護範囲を超えることはない。
【0051】
以上説明した蓄電システム6を備える車両1には、多くの利点がある。
【0052】
第1に、蓄電システム6は、車両1のフレーム7の機械的抵抗および剛性を高めるのに大きく役立ち、同時に、車両1のフレーム7は、蓄電システム6の機械的抵抗および剛性を高めるのに大きく役立つ。言い換えれば、容器8の下壁9、バッテリモジュール12の収容壁14、およびフレーム7の下壁21の直接的な接続のおかげで、「構造上の相乗効果」が得られ、これにより、たとえ単独で考えて(すなわち、それ自体が考慮され、残りの部分から分断されている場合)、フレーム7および蓄電システム6が比較的「弱く」、したがって比較的軽量であっても、特に剛性のフレーム7(蓄電システム6の存在によって補強されるため)および特に耐性のある蓄電システム6(フレーム7の存在によって補強されるため)の両方が可能になる。このようにして、全体的な構造性能を犠牲にすることなく、フレーム7および蓄電システム6の両方に関し、重量の点から見て大幅な節約が得られる。
【0053】
更に、多目的ロックピン19の使用は、単一の要素(ロックピン19)が幾つかの機能を果たすため、取り付けの困難さと全体的な重量の両方を低減する。実際には、各ロックピン19は、バッテリモジュール12を容器8の下壁9に接続し、バッテリモジュール12をフレーム7の下壁21に接続し、容器8の下壁9をフレーム7の下壁21に接続し、容器8の上壁10を正しい位置で支持およびロックし、補償要素25を支持する。
【0054】
最後に、上記で開示された車両1において、蓄電システム6は、それが交換または修理される必要がある場合に比較的迅速にフレーム7から取り外すことができる。これは、取り付けねじ24(および本明細書には示されておらず、容器8の周囲に沿って配置されている他のねじ)を取り外すことによって、車両1がリフトによって持ち上げられると、蓄電システム6を車両1から底部から引き出すことができるからである。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 車輪
3 駆動システム
4 電気機械
5 ドライブトレイン
6 蓄電システム
7 フレーム
8 容器
9 下壁
10 上壁
11 側壁
12 バッテリモジュール
13 電気化学セル
14 収容壁
15 ヘッド壁
16 下壁
17 上壁
18 接続体
19 ロック要素
20 凹部
21 下壁
22 穴
23 穴
24 取り付けねじ
25 補償要素
26 穴
27 穴
28 穴
29 ブラケット
30 環状ガスケット
31 外側部分
32 ナット
33 下側部分
34 上側部分
35 支持ブロック
36 穴
37 支持面
38 空きスペース
39 空きスペース
D 進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】