(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066489
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】自動車及び路面の表面状態に関連するパラメータを検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240508BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20240508BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240508BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20240508BHJP
【FI】
G01N21/17 F
G01N21/21 Z
B60W40/06
B60W40/068
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183775
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】102022000022356
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ サルトーニ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ モンティロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ウーゴ シッタ
【テーマコード(参考)】
2G059
3D241
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA10
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE05
2G059GG01
2G059JJ19
2G059KK01
2G059MM01
3D241BA50
3D241BB03
3D241CD12
3D241DC46
3D241DC46A
3D241DC46B
3D241DC46Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車の低速走行時、又は自動車の駐車時にも、路面の状態を正確かつ迅速に検出すること。
【解決手段】車室(3)を画定する本体(2)、複数の車輪(4、5)、及び、路面(16)の表面状態に関するパラメータを検出するように設計されたセンサを備え、センサは、路面(16)に向かって第1のレーザ信号を放射するように構成されたエミッタ(15)、並びに、路面(16)に対する第1のレーザ信号の反射に相当する、第2のレーザ信号を検出するように構成された、1つ又はそれ以上の単一光子アバランシェダイオードを更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)であって、
車室(3)を画定する本体(2)と、
複数の車輪(4、5)と、
路面(16)の表面状態に関するパラメータを検出するように設計された、センサ(10)と、を備え、
前記センサ(10)が、
前記路面(16)に向かって、第1のレーザ信号(R)を放射するように構成された、エミッタ(15)と、
使用時に、前記路面(16)に対する前記第1のレーザ信号(R)の反射に相当する、第2のレーザ信号(S、T、U)を検出するように構成された、1つ又はそれ以上の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)(11a、11b、11c)と、
前記第2のレーザ信号(S、T)の強度の数値に基づいて、前記路面(16)の表面状態に関するパラメータ(PC)を処理するようにプログラムされた、制御ユニット(20)と、を更に備え、
前記強度が、使用時に前記光検出器(11a、11b、11c)によって検出された、光子の数に関連付けられ、
前記パラメータが、乾燥した、部分的に濡れた、完全に濡れた、又は凍結した路面(16)の、前記表面状態に関連付けられ、
前記センサ(10)が、
前記路面(16)上の、前記第1のレーザ信号(R)の反射によって決定され、第1の平面(P)内で偏光された第1の成分、及び、第2の平面(Q)内で偏光された第2の成分を含む、第2のレーザ信号(S)が当たるように構成された、複数の偏光フィルタ(25a、25b)と、
前記第1又は第2の偏光成分を検出するように、前記偏光フィルタ(25a、25b)に対して連続して配置され、それぞれの前記偏光フィルタ(25a、25b)に関連付けられた、複数の第1の光検出器(11a、11b)を更に備え、
前記制御ユニット(20)が、前記第1の成分の第1の強度(ITM)、及び、前記第2の成分の第2の強度(ITE)に基づいて、前記路面(16)の前記表面状態に関連する、前記パラメータ(PC)を処理するようにプログラムされており、
前記第1の平面(P)が、使用時に、前記路面(16)に平行であり、前記第2の平面(Q)が、使用時に、前記路面(16)に直交する、自動車(1)。
【請求項2】
前記エミッタ(16)が、使用時に、前記路面(16)上に前記第1のレーザ信号(R)が入射する点(H)における、前記路面(16)に対する垂線(N)との角度(θ)を画定する方向に沿って、前記第1のレーザ信号(R)を放射するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記第1の光検出器(11a、11b)が、使用時に、前記垂線(N)に対して同じ角度(θ)を画定する方向に沿って、前記第2の信号(S)を検出するように構成され、
前記エミッタ(16)及び前記第1の光検出器(11a、11b)が、前記垂線(N)の両側で対称に配置され、
前記第2の信号(S)が、使用時に、前記路面(16)上での、前記第1の信号(R)の鏡面状反射によって生成されることを特徴とする、請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記エミッタ(16)及び前記第1の光検出器(11a、11b)が、前記垂線(N)の同じ側に配置され、
前記第2の信号(U)が、使用時に、前記路面(16)上での、前記第1の信号(R)の拡散放射による反射によって生成されることを特徴とする、請求項2に記載の自動車。
【請求項5】
前記センサ(10)が、第2の光検出器(11c)を更に備え、前記第2の光検出器(11c)が、使用時に、前記路面(16)上での、前記第1の信号(R)の拡散放射による反射によって生成される、第3の非偏光レーザ信号(T)の強度(SC)を検出するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の自動車。
【請求項6】
前記制御ユニット(20)が、
【数1】
に等しい偏光コントラスト値(PC)を処理するようにプログラムされ、ここで、ITEは前記第2の成分(ITE)の強度であり、ITMは前記第1の成分(ITM)の強度であり、前記制御ユニット(20)が、
前記角度(θ)の、第1の値、及び/又は、前記第1及び第2の成分(ITE、ITM)の合計と関連付けられた、第2の値、及び/又は、前記第3の非偏光レーザ信号(T)の前記強度(SC)と関連付けられた、第3の値を取得し、
前記偏光コントラスト(PC)の前記値を、前記第1の値、前記第2の値、及び前記第3の値の少なくとも1つ、又はそれらの範囲と比較し、
前記比較に基づいて、前記パラメータを処理することを特徴とする、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
前記本体(2)を含むばね上質量と、
前記車輪(4、5)を含み、前記ばね上質量に弾性的に接続された、ばね下質量を含むことを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項8】
路面(16)の表面状態に関するパラメータを検出する方法であって、
i)第1のレーザ信号(R)を放射するステップと、
ii)第2の反射レーザ信号(S、T)を生成するように、前記第1のレーザ信号(R)を前記路面(16)上で反射させるステップと、
iii)前記第2のレーザ信号(S、T)を検出するように構成された、1つ又はそれ以上の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)(11a、11b、11c)によって、前記第2の反射レーザ信号(S、T)を検出するステップと、
iv)前記第2のレーザ信号(S、T)の強度に基づいて、前記路面(16)の表面状態に関するパラメータ(SC)を処理するステップであって、前記強度が、使用時に、前記光検出器(11a、11b、11c)によって検出された光子の数に関連付けられており、前記パラメータが、乾燥した、部分的に濡れた、完全に濡れた、又は凍結した路面(16)の、前記状態に関連付けられている、ステップと、
v)複数の偏光フィルタ(25a、25b)によって、前記路面(16)上での、前記第1のレーザ信号(R)の反射によって決定される、前記第2のレーザ信号(S、U)を選別するステップであって、前記第2のレーザ(S、U)が、第1の平面(P)内で偏光された第1の成分と、第2の平面(Q)内で偏光された第2の成分を含む、ステップと、
vi)前記第1の光検出器(11a、11b)によって、前記第1の偏光成分、又は、前記第2の偏光成分を検出するステップと、
vii)前記第1の成分の第1の強度(ITM)、及び、前記第2の成分の第2の強度(ITE)に基づいて、前記路面(16)の前記表面状態に関する前記パラメータを処理するステップであって、前記第1の平面(P)が、使用時に、前記路面(16)に平行であり、前記第2の平面(Q)が、使用時に、前記路面(16)に垂直である、ステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記ステップvi)が、
viii)前記路面(16)からの鏡面状反射による、前記第2の反射レーザ信号(S)を検出するステップ、及び/又は、
ix)前記路面(16)から戻る拡散放射による、前記第2の反射レーザ信号(S)を検出するステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
x)使用時に、前記路面(16)上での、前記第1の信号(R)の拡散放射による反射によって生成された、第3の非偏光レーザ信号(T)の強度(SC)を検出するステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップxi)であって、
【数2】
に等しい、偏光コントラスト値(PC)を処理するステップであって、ここで、ITEが前記第2の成分(ITE)の強度であり、ITMが前記第1の成分(ITM)の強度である、ステップと、
前記路面(16)上への、前記第1のレーザ信号(R)の入射角(θ)である第1の値、及び/又は、前記第1及び第2の成分(ITE、ITM)の合計に関連する第2の値、及び/又は前記第3の非偏光レーザ信号(T)の前記強度(SC)に関連する、第3の値を取得するステップと、
前記偏光コントラスト(PC)の前記値を、前記第1、第2、及び第3の値の少なくとも1つ、又はそれらの範囲と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記パラメータを処理するステップからなる、ステップxi)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
制御ユニット(20)にロードすることができ、それを実行することで、請求項8に記載の方法の各ステップが実施されるように設計された、コンピュータ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、及び、路面の表面状態に関するパラメータを検出する方法に関する。
【0002】
より具体的には、路面の表面状態、例えば、凍結、又は、部分的に若しくは完全に濡れたアスファルトがあることによって、路面上のタイヤのグリップ力が決定付けられ、運転の安全性は大きく影響される。
[関連出願の相互参照]
【0003】
本特許出願は、2022年10月31日に出願されたイタリア特許出願第102022000022356号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
路面上のタイヤのグリップ力を推定することができるシステムを備える、自動車が知られている。
【0005】
このシステムは、公知の方式で、
自動車が走行する路面を取り巻く領域内の、温度及び/又は湿度の測定値を採り入れることができる、1つ又はそれ以上の、静電容量式、圧電式、又は光学式のセンサ、
その測定値を処理し、路面上のタイヤのグリップ係数値を推定し、その信号に基づいて、結果として生じる、潜在的に危険な状態を特定するようにプログラムされた制御ユニット
を備える。
【0006】
公知の解決手段では、グリップ係数は、グリップ限界に近い、自動車の特に高い走行速度でのみ推定される。
【0007】
その結果、低速走行時に、前述したシステムでは、潜在的に危険な状態を検出するのが遅すぎるか、又は、路面の実際のグリップ状態と一致しない危険性がある。
【0008】
自動車産業では、自動車の安全度を高めるために、自動車の低速走行時、又は自動車の駐車時にも、路面の状態を正確かつ迅速に検出することが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
前述した目的は、請求項1に記載の自動車に関するものとして、本発明によって達成される。
【0010】
本発明はまた、請求項8に記載の、路面の表面状態に関するパラメータを検出する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な実施例として提供される、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を検討することによって、最もよく理解されるであろう。
【0012】
【
図2】より明瞭にするために部品を取り除いた、自動車1に組み込まれたセンサ及び制御ユニットの機能図である。
【
図3】より明瞭にするために部品を取り除いた、
図1のセンサの、第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4】より明瞭にするために部品を取り除いた、
図1のセンサの、第2の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】
図1から
図4のセンサの制御ユニットに記憶された各テーブルの値を、グラフで示す図である。
【
図6】
図1から
図4のセンサの制御ユニットに記憶された各テーブルの値を、グラフで示す図である。
【
図7】
図2から
図6のセンサの、更なる構成要素を大幅に拡大して、概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照すると、番号1は、車室3を画定する本体2、及び複数の車輪4、5を備える、自動車を示す。
【0014】
特に、自動車1は、公知の方法で、本体2を備えるばね上質量、並びに、車輪4、5を備え、サスペンションを介してばね上質量に弾性的に接続された、ばね下質量を備える。
【0015】
以下、「上部に」、「下部に」、「前部に」、「後部に」といった表現、及びそれらに類似する表現は、自動車1の通常の前進状態を基準として使用される。
【0016】
更に、
使用時に水平であり、自動車1の通常の走行方向に平行である、自動車1と一体の長手方向の軸線X、
使用時に水平であり、軸線Xに直交する、自動車1と一体の横方向の軸線Y、
使用時に、軸線X、Yに垂直かつ直交する、自動車1と一体の軸線Z
を定義することができる。
【0017】
自動車1は、自動車1の動作状態に関するパラメータを検出するように設計された、センサ10を更に備える。
【0018】
本明細書に示す特定の事例では、センサ10は光学センサである。
【0019】
この動作状態は、路面16の状態、及び/又は、各車輪4、5の、それぞれの移動速度を表すものである。
【0020】
具体的には、「路面状況を表す状態」とは、例えば、路面16が部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結している状態を指す。
【0021】
センサ10は、有利には、
レーザ信号Rを放射するように構成された、エミッタ15、
鏡面状反射又は拡散放射を介して、路面16によって反射された、レーザ信号S、T、Uを受信するように構成された、1つ又はそれ以上の、(Single Photon Avalanche Diode:SPADとしても知られている)単一光子アバランシェダイオード、11a、11b、11c
を備える。
【0022】
より詳細には、センサ10及びエミッタ15は、両方とも本体3に取り付けられる。
【0023】
エミッタ15は、路面16に向かって、レーザ信号Rを放射するように構成される(
図3及び
図4)。
【0024】
路面16との相互作用に続いて、レーザ信号Rは、
鏡面状反射又はフレネル反射を介した、レーザ信号S、
拡散放射による反射を介した、複数のレーザビームT、U
として反射される。
【0025】
「拡散放射」とは、路面16に入射したレーザ信号Rが、複数の方向へ拡散することを意味する。
【0026】
より正確には、レーザ信号R、Sは、信号Rが路面16に入射する点における、路面16に垂直な方向Nに対して、それぞれ反対側に伝播する。
【0027】
レーザ信号R、Sは、垂線Nに対して、同一の角度θを画定する。
【0028】
具体的には、垂線方向Nは、軸線Zに平行である。
【0029】
レーザ信号Uは、垂線方向Nに平行である。
【0030】
レーザ信号R、Tは、方向Nに対してそれぞれ反対側を伝播し、方向Nに対して同一の角度θを画定する。
【0031】
言い換えれば、レーザ信号Tは、戻り拡散放射、すなわちレーザ信号Rと平行に反射された、拡散放射による反射の成分に相当するものである。
【0032】
具体的には、レーザ信号R、S、Tは、パルス信号である。
【0033】
単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、以下でより詳細に説明するように、レーザビームS、Tを受信するように構成される。
【0034】
より具体的には、単一光子アバランシェダイオード11a、11b、及びエミッタ15は、路面16の方向を向いており、正確には、レーザ放射に対して不透明な表面を介在させることなく、路面16に面している。
【0035】
特に、エミッタ15は、自動車1の瞬間位置に対して、前方領域に向かってレーザビームRを放射するように構成される。
【0036】
路面16に対する反射に続いて、レーザ信号S、Tは、平面P及び平面Qにおいて偏光される(
図7)。
【0037】
レーザ信号Uは、路面16による拡散放射によって反射された、非偏光成分に相当するものである。
【0038】
平面Pは、路面16に平行であり、したがって軸線X、Yに平行である。
【0039】
平面Qは、路面16に垂直であり、したがって平面Pに直交し、かつ軸線X、Yに平行である。
【0040】
レーザ信号S、Tは、平面Pにおいて強度ITMを有し、平面Qにおいて強度ITEを有する。
【0041】
強度ITM及びITEは、路面16の状態、すなわち路面16が部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結している、という事実によって定まるものである。
【0042】
センサ10は、特に、レーザ信号S、T、Uの強度及び偏光に基づいて、路面16の状態を検出するように設計される。
【0043】
自動車1は、単一光子アバランシェダイオード11a、11bに動作可能に接続され、レーザ信号S、Tの強度である、ITM、ITEに基づいて、前記路面16の表面状態に関するパラメータを処理するようにプログラムされた、制御ユニット20(
図2)を更に備える。
【0044】
更に、自動車1は、レーザ信号S、Tが当たるように構成された、複数の偏光フィルタ25a、25bを更に備える(
図7)。
【0045】
単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、それぞれの偏光フィルタ25a、25bに関連付けられ、それぞれの偏光フィルタ25a、25bによって選別されたレーザ信号S、Tが、当たるように設計される。
【0046】
より詳細には、偏光フィルタ25a、25bによって、それぞれの平面P、Qにおいて偏光されたレーザ信号S、Tのそれぞれの成分の、通路がもたらされる。
【0047】
偏光フィルタ25a、25bに関連付けられた単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、それぞれの平面P、Q内で偏光された、レーザ信号S、Tの成分の光子数、すなわち強度ITE、ITMの値を検出し、それらの強度ITE、ITMに関連付けられた、それぞれの電流i1、i2を生成する(
図2)。
【0048】
各偏光フィルタ25a、25bは、路面16と、関連する単一光子アバランシェダイオード11a、11bとの間に、光学的に介在する。
【0049】
偏光フィルタ25a、25bによって、構造体31が形成され、単一光子アバランシェダイオード11a、11bによって、構造体30が形成される。
【0050】
構造体30、31は、軸線Xに平行に延在し、軸線Zに平行に、互いに重なり合う。
【0051】
構造体31は、路面16と構造体30との間に、光学的に介在する。
【0052】
第1の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、鏡面状反射、すなわちフレネル反射によって反射された、信号Sを検出する。
【0053】
図3に示す、第1の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bはそれぞれ、路面16の垂線Nに平行な軸線Zに対して、反対側に配置される。
【0054】
そうすることにより、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、業界でθ-2θ構成として知られている構成を形成する。
【0055】
図3の第1の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11cは、いかなる偏光フィルタ25a、25bとも関連付けられず、レーザ信号Uを検出する。
【0056】
単一光子アバランシェダイオード11cは、本明細書に示される特定の事例において、方向Nに平行な方向に向けられる。
【0057】
第2の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、戻り拡散反射によって反射された、信号Tを検出する。
【0058】
図4に示す、前述した実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、垂線Nに対して同じ側に配置される。
【0059】
レーザビームR、Tは、路面16へのレーザビームRの入射点Hにおける垂線Nに対して、同一の角度θを画定する。
【0060】
そうすることにより、単一光子アバランシェダイオード11a、11bによって、後方散乱構成として業界で知られている構成が形成される。
【0061】
第2の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11cは存在しなくてもよい。
【0062】
制御ユニット20は、
センサ10から、それぞれの平面P、Q内の、強度の値ITE、ITMを取得し、
単一光子アバランシェダイオード11cから、拡散放射を介して路面16によって反射された、レーザ信号Uの非偏光成分の強度に関連する、信号SCを受信し、
強度の値ITE、ITM、及びSCにも基づいて、
【数1】
に等しい、偏光コントラスト値を処理し、
部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結している、路面16の状態に関するパラメータを処理する、
ようにプログラムされている。
【0063】
特に
図5を参照すると、制御ユニット20は、
乾燥した路面16の状態を表す、非偏光レーザ信号Uの総強度値SCの区間SC1に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC1、
部分的に濡れた路面16の状態を表す、非偏光レーザ信号Uの強度値SCの区間SC2に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC2、
完全に濡れた路面16の状態を表す、非偏光レーザ信号Uの強度値SCの区間SC3に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC3、
凍結した路面16の状態を表す、非偏光レーザ信号Uの強度値SCの区間SC4に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC4
を記憶する、記憶段21を備える。
【0064】
記憶段21は更に、
乾燥した路面16の状態を表す、それぞれの平面P、Qにおける強度、ITE、ITMの合計値の区間SC5に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC5、
部分的に濡れた路面16の状態を表す、それぞれの平面P、Qにおける強度、ITE、ITMの合計値の区間SC6に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC6、
完全に濡れた路面16の状態を表す、それぞれの平面P、Qにおける強度、ITE、ITMの合計値の区間SC7に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC7、
凍結した路面16の状態を表す、それぞれの平面P、Qにおける強度、ITE、ITMの合計値の区間SC8に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC8
を記憶する(
図6)。
【0065】
記憶段21は更に、
乾燥した路面16の状態を表す、エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと路面16との間の、角度θの値の区間θ1に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC9、
部分的に濡れた路面16の状態を表す、エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと路面16との間の、角度θの値の区間θ2に関連付する、偏光コントラスト値PCの区間PC10、
完全に濡れた路面16の状態を表す、エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと路面16との間の、角度θの値の区間θ3に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC11、
凍結した路面16の状態を表す、エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと路面16との間の、角度θの値の区間θ4に関連する、偏光コントラスト値PCの区間PC12
を記憶する。
【0066】
区間PC9、PC10、PC11、PC12、θ1、θ2、θ3、θ4は、添付の図面には示されていない。
【0067】
第2の実施形態では、偏光コントラスト値PCの区間PC1、PC2、PC3、PC4、及び、非偏光レーザ信号Uの、強度SCのそれぞれの区間SC1、SC2、SC3、SC4は、存在しなくてもよい。
【0068】
本明細書に示す特定の事例において、自動車1は、
エミッタ15の前面に、例えば光学的に結合された、例えば第1のコリメータレンズである、光学系50、
対応する単一光子アバランシェダイオード11a、11bに、例えば前方で光学的に結合された、例えばそれぞれの第2のレンズである、複数の光学系51a、51b
を備える(
図2)。
【0069】
制御ユニット20は更に、
単一光子アバランシェダイオード11a、11bによって生成されたそれぞれの電流信号i1、i2を、対応する電圧信号V1、V2に変換するように設計された、本明細書に示す特定の事例ではトランスインピーダンスアンプである、一対の電流電圧変換器26、
前述した入力電圧信号V1、V1を、相対強度ITE、ITMに関連する、それぞれの出力電圧信号VTE、VTMに増幅するように設計された、増幅器27
を備える。
【0070】
各単一光子アバランシェダイオード11a、11b、11cは、SPAD/CMOSチップの形態で製造されることが好ましい。このようにして、単一光子アバランシェダイオード11a、11b、11cは、エミッタ15によって放射された情報の、非常に高速な読み取りを統御する。
【0071】
本明細書に示す特定の場合では、エミッタ15は、垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)源、すなわち垂直キャビティを有する、面発光レーザ源である。
【0072】
使用時に、エミッタ15は、路面16に向けられたレーザ信号Rを放射する(
図3及び
図4)。
【0073】
路面16では、レーザ信号Rが鏡面状放射によって反射されることで、レーザ信号Sが形成され、かつ、拡散放射によって反射されることで、レーザビームT、Uが形成される。
【0074】
レーザビームS、Tは、平面P、Q内で偏光される。
【0075】
平面P、Qにおける、レーザ信号S、Tの強度であるITE、ITMは、路面16の状態、特に部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結しているという事実によって決まる。
【0076】
第1の実施形態では、レーザ信号Sは、先ず偏光フィルタ25a、25bを通過し、続いて、それぞれの単一光子アバランシェダイオード11a、11bを通過する(
図3)。
【0077】
単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、それぞれの平面P、Qで偏光されたレーザ信号Sの成分の光子数、すなわち強度の値、ITE、ITMを検出し、対応する強度のそれぞれの電流i1、i2を生成する。
【0078】
第1の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11cは、非偏光成分Uの光子数を検出し、拡散放射により路面16で反射された、非偏光レーザ信号Sの強度に関連付けられた、信号SCを生成する。
【0079】
第2の実施形態では、レーザ信号Rに平行に拡散されたレーザ信号Tは、先ず偏光フィルタ25a、25bを通過し、続いて、それぞれの単一光子アバランシェダイオード11a、11bを通過する(
図4)。
【0080】
単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、第1の実施形態と同様に、それぞれの面P、Qで偏光された、レーザ信号Tの成分の光子数、すなわち強度の値、ITE、ITMを検出し、対応する強度のそれぞれの電流i1、i2を生成する。
【0081】
両方の実施形態において、制御ユニット20は、センサ10から、それぞれの平面P、Qにおける強度の値ITE、ITMを取得し、
【数2】
に等しい、偏光コントラスト値PCを処理し、かつ、部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結している、路面16の状態に関連するパラメータを処理する。
【0082】
より具体的には、変換器26は、単一光子アバランシェダイオード11a、11bによって生成された電流i1、i2を、それぞれの電圧V1、V2に変換し、増幅器27は、電圧V1、V2を対応する強度ITE、ITMに関連する、それぞれの信号VTE、VTMに増幅する(
図2)。
【0083】
制御ユニット20は、偏光コントラストPCの処理された値を含む、偏光コントラスト値、PC1、PC2、PC3、PC4、PC5、PC6、PC7、PC8、PC9、PC10、PC11、PC12の区間を、
非偏光レーザ信号Uの、全強度の値、SC1、SC2、SC3、SC4、
記憶段21に含まれる、平面P、Q内の強度、ITE、ITMの合計の値、SC5、SC6、SC7、SC8、及び/又は、
エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと、路面16との間の角度θの値
と比較する。
【0084】
この比較に続いて、制御ユニット20は、結果として、乾燥した、部分的に濡れた、完全に濡れた、又は凍結した、路面16の状態を特定する。
【0085】
例えば、制御ユニット20は、偏光コントラスト値PCが値SC4の区間に含まれ、かつ/又は、非偏光レーザ信号Tの強度SCが値SC4に含まれ、かつ/又は、角度θが値θ4の区間に含まれる場合に、凍結した路面16の状態を処理する。
【0086】
第2の実施形態では、制御ユニット20は、偏光コントラスト値PCを含む偏光コントラスト値、PC5、PC6、PC7、PC8、PC9、PC10、PC11、PC12の区間を、
記憶段21に含まれる、平面P、Qにおける強度、ITE、ITMの合計の値、SC5、SC6、SC7、SC8、及び/又は、
エミッタ15によって放射されたレーザ信号Rと、路面16との間の角度θの値
と比較する。
【0087】
結果として、制御ユニット20は、この比較に続いて、部分的に濡れている、完全に濡れている、積雪している、又は凍結している、路面16の状態を特定する。
【0088】
上記の開示によって、本発明で得ることのできる、明白な利点が示される。
【0089】
具体的には、エミッタ15は、路面16に向かってレーザ信号Rを放射し、単一光子アバランシェダイオード11a、11b、11cは、路面16によって反射されたレーザ信号S、T、Uを検出する。
【0090】
反射レーザ信号S、T、Uの強度及び偏光特性は、路面16の状態に依存するため、路面16の状態を正確かつ迅速に検出することができ、低速時、又は自動車1が駐車しているときでも、自動車1の運転安全性に関して、明らかな利点がある。
【0091】
センサ10は、平面P、Q内でそれぞれ偏光された、レーザ信号S、Uの第1の成分及び第2の成分を選別し、それぞれを単一光子アバランシェダイオード11a、11bで利用可能にするように設計された、複数の偏光フィルタ25a、25bを備える。
【0092】
このようにして、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、強度ITE、ITMに関連付けられ、したがって路面16の状態に応じた電流i1、i2を、制御ユニット20に供給する。
【0093】
そうすることにより、制御ユニット20は、強度ITE、ITMに基づいて、偏光コントラスト値PCを処理し、かつ、偏光コントラスト値PCを、非偏光レーザビームTの強度SCの値、及び/又は、角度θの値、及び/又は、強度ITM、ITEの合計の値と比較することによって、路面16の状態を特定することができる。
【0094】
第1の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、鏡面状反射によって反射された、レーザ信号Sを検出する。そうすることにより、単一光子アバランシェダイオード11a、11bによって検出される、強度ITM、ITEの値を、最大化することができる。
【0095】
第2の実施形態では、単一光子アバランシェダイオード11a、11bは、戻り拡散放射によって路面16で反射されたレーザ信号Tを検出し、かつ、垂線Nに対して同じ側に配置される。
【0096】
そうすることにより、センサ10の寸法が最小化される。
【0097】
加えて、第2の実施形態では、制御ユニット20が、偏光コントラスト値PCを、角度θ、及び/又は、強度ITEとITMとの合計と比較する場合、センサ10には、単一光子アバランシェダイオード11cが不要となる。
【0098】
最後に、本発明にかかる自動車1及び方法には、添付の特許請求の範囲に記載された保護の範囲を超えることなく、変形及び変更を施すことができる。
【外国語明細書】