(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006649
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】超音波撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/13 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61B8/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107739
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 啓純
(72)【発明者】
【氏名】田中 智彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 美咲
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE16
4C601EE07
4C601EE11
4C601FF11
4C601GA20
4C601GA26
4C601GA28
4C601JB01
4C601JB45
4C601JB48
4C601KK24
(57)【要約】
【課題】光音響波発生源から発生した光音響波の受信時間を増大させることなく、受信した光音響波の強度を増大させることを目的とする。
【解決手段】光音響撮像における超音波の受信時間t8内に、レーザ光が光音響波発生源に複数回照射される。これにより、受信時間t8内に複数の光音響波が光音響波発生源から発生し、超音波撮像装置12の受信部32によって受信される。複数の光音響波の時間軸上の位置が調整されて、複数の光音響波が加算平均される。加算平均によって得られた信号に基づいて光音響像が生成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送受信することで超音波画像を生成する撮像手段と、
前記被検体の内部に挿入された光音響波発生源から発生した光音響波を受信することで、前記光音響波発生源の位置を画像化する光音響撮像手段と、
前記光音響波発生源から発生した光音響波の受信時間であって光音響波による撮像の領域に基づいて定められる受信時間よりも短い周期で、前記光音響波発生源から光音響波を発生させる制御手段と、
を含むことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記制御手段は、前記受信時間内に複数回、前記光音響波発生源から光音響波を発生させ、
その回数は、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるために前記光音響波発生源に照射される光の強度の制限値に基づいて定められる、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波撮像装置において、
前記制御手段は、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるために前記光音響波発生源に照射される光の発光回数とその発光の間隔に応じて、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるための光の強度とその発光時間とを変更する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記制御手段は、前記受信時間内に複数回、前記光音響波発生源から光音響波を発生させ、
前記光音響撮像手段は、前記受信時間内に受信した複数の光音響波に基づいて、前記光音響波発生源の位置を画像化する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波撮像装置において、
前記光音響撮像手段は、更に、前記複数の光音響波によって生じるアーティファクトを除去する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波撮像装置において、
前記光音響撮像手段は、前記複数の光音響波を整相処理し、その整相後に、前記複数の光音響波の時間軸上の位置を調整して加算平均する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項4に記載の超音波撮像装置において、
前記光音響撮像手段は、整相前に、前記複数の光音響波の時間軸上の位置を調整して加算平均する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波撮像装置において、
前記光音響撮像手段は、整相処理が施される前の光音響波を、整相処理が施された結果から逆整相処理によって推測する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像装置に関し、特に、被検体の内部に挿入された超音波発生源からの超音波を受信して画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療は、一般的に、開胸等の手術と比較して患者の負担が少ない術式である。そのため、カテーテル治療は、主に血管狭窄等の病気を治療するために用いられる。カテーテル治療では、治療対象となる領域とカテーテルとの位置関係を把握することが重要である。その位置関係の把握を支援する撮像方法として、X線透視が用いられることがある。また、特許文献1に記載されているように、超音波画像を支援画像として用いる技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、ガイドワイヤに搭載された超音波発生源からの超音波を受信して超音波画像を生成する装置が記載されている。具体的には、超音波プローブを構成する振動子アレイに到達する超音波(超音波発生源からの超音波)の到達時間差又は撮像領域からの距離に依存する超音波発生源の画像を用いて、ガイドワイヤの先端位置が推定される。また、この推定結果を用いて撮像結果とガイドワイヤの先端との相対的な位置関係を把握する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、導光部材からの光を吸収して光音響波を発生させる光吸収部材が、挿入物の先端に設けられ、光音響波を受信することで挿入物の先端を可視化する技術が記載されている。また、複数回のパルス光を光吸収部材に照射し、光吸収部材から発生して超音波プローブによって複数回受信された光音響波の検出信号を加算平均することで、1つの画像を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-213680号公報
【特許文献2】特許第6317847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光音響波の強度は弱いため、光音響波を用いて挿入物の先端位置を把握することが困難なことがある。これに対処するために、複数のパルス光を照射して複数の光音響波を受信し、複数の光音響波を加算することで強度を高めることが考えられる。しかし、着目する領域の深さに応じた超音波の伝搬時間によりパルス光の繰り返し周期が制限されるため、複数の光音響波を受信するための受信時間が増大し、その結果、超音波画像の更新速度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、光音響波発生源から発生した光音響波の受信時間を増大させることなく、受信した光音響波の強度を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、被検体に対して超音波を送受信することで超音波画像を生成する撮像手段と、前記被検体の内部に挿入された光音響波発生源から発生した光音響波を受信することで、前記光音響波発生源の位置を画像化する光音響撮像手段と、前記光音響波発生源から発生した光音響波の受信時間であって光音響波による撮像の領域に基づいて定められる受信時間よりも短い周期で、前記光音響波発生源から光音響波を発生させる制御手段と、を含むことを特徴とする超音波撮像装置である。
【0009】
前記制御手段は、前記受信時間内に複数回、前記光音響波発生源から光音響波を発生させ、その回数は、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるために前記光音響波発生源に照射される光の強度の制限値に基づいて定められてもよい。
【0010】
前記制御手段は、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるために前記光音響波発生源に照射される光の発光回数とその発光の間隔に応じて、前記光音響波発生源から光音響波を発生させるための光の強度とその発光時間とを変更してもよい。
【0011】
前記制御手段は、前記受信時間内に複数回、前記光音響波発生源から光音響波を発生させ、前記光音響撮像手段は、前記受信時間内に受信した複数の光音響波に基づいて、前記光音響波発生源の位置を画像化してもよい。
【0012】
前記光音響撮像手段は、更に、前記複数の光音響波によって生じるアーティファクトを除去してもよい。
【0013】
前記光音響撮像手段は、前記複数の光音響波を整相処理し、その整相後に、前記複数の光音響波の時間軸上の位置を調整して加算平均等の処理を加えてもよい。
【0014】
前記光音響撮像手段は、整相前に、前記複数の光音響波の時間軸上の位置を調整して加算平均してもよい。
【0015】
前記光音響撮像手段は、整相処理が施される前の光音響波を、整相処理が施された結果から逆整相処理によって推測してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光音響波発生源から発生した光音響波の受信時間を増大させることなく、受信した光音響波の強度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る医療支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】被検体内に挿入された生体挿入具と超音波発生源とを示す図である。
【
図3】実施形態に係る超音波撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】医療支援システムの動作の概略を示すフローチャートである。
【
図5】参考例に係る撮像のタイミングを示すシーケンス図である。
【
図6】実施形態に係る撮像のタイミングを示すシーケンス図である。
【
図7】実施形態に係る撮像のタイミングを示すシーケンス図である。
【
図8】実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】光音響撮像によって得られた受信信号及び画像を示す図である。
【
図11】フィルタを含む処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】変形例に係る撮像のタイミングを示すシーケンス図である。
【
図13】変形例に係る撮像のタイミングを示すシーケンス図である。
【
図14】変形例に係る信号処理方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、実施形態に係る医療支援システムについて説明する。
図1には、実施形態に係る医療支援システムの構成が示されている。実施形態に係る医療支援システム10は、一例として、カテーテルを用いた治療を支援するシステムである。この例は一例に過ぎず、医療支援システム10が支援する治療は、カテーテルを用いた治療に限定されるものではなく、被検体に挿入される器具を用いた治療であればよい。
【0019】
医療支援システム10は、一例として、超音波撮像装置12と超音波発生装置14と生体挿入具16とを含む。
【0020】
超音波撮像装置12は、超音波プローブ18と装置本体20とを含み、超音波プローブ18を用いた超音波の送受信によって画像データを生成する。例えば、超音波撮像装置12は、被検体26内に超音波を送信し、被検体26の内部にて反射した超音波を受信することで、被検体26の内部の組織を表す画像データを生成する。また、後述するように、超音波撮像装置12は、超音波発生源22から発生した超音波を受信することで画像データを生成する。
【0021】
超音波発生装置14は、超音波発生源22と駆動装置24とを含み、超音波を発生させる装置である。超音波発生装置14は、生体挿入具16に搭載される。
【0022】
生体挿入具16は、細長い管状の器具であり、例えば、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル又は栄養カテーテル等の治療用器具や、このような治療用器具を目的の部位に運ぶためのガイドワイヤ等である。以下では一例として、生体挿入具16がガイドワイヤであるものとする。
【0023】
超音波発生源22は、一例として、光音響(Photo Acoustic)効果によって超音波を発生させる。超音波発生源22は、光音響効果以外の原理によって超音波を発生させてもよい。例えば、超音波発生源22が圧電素子等の超音波振動子によって構成されてもよい。この場合、駆動装置24は、圧電素子駆動回路として機能して超音波発生源22から超音波を発生させる。以下では、超音波発生源22は、光音響効果によって超音波を発生させるものとする。なお、超音波発生源22は、光音響波発生源の一例に相当する。
【0024】
以下、
図1及び
図2を参照して、超音波発生装置14について詳しく説明する。
図2は、被検体26内に挿入された生体挿入具16と超音波発生源22とを示す図である。
【0025】
超音波発生装置14は、図示しない光ファイバを含む。生体挿入具16は、一例として、フレキシブルな中空のガイドワイヤであり、光ファイバは、その生体挿入具16に沿って設けられる。光ファイバの一方端(被検体26内に挿入される側の端部)には、超音波発生源22が設けられている。光ファイバの他方端(超音波発生源22が設けられている端部とは反対側の端部)には、駆動装置24が設けられている。駆動装置24は、一例として、レーザ光を発生させる光源を含む。光ファイバは、光を導く導光部材として機能し、駆動装置24が発光したレーザ光を光ファイバの一方端に設けられている超音波発生源22に導く。超音波発生装置14とガイドワイヤとしての生体挿入具16とを含む装置が、光音響源搭載ワイヤと呼ばれることがある。
【0026】
図2に示す例では、ガイドワイヤとしての生体挿入具16が、被検体26内に存在する血管28内に挿入されている。光ファイバの一方端が、生体挿入具16の一方端(被検体26内に挿入される側の端部)に設けられることで、光ファイバの一方端に設けられている超音波発生源22は、生体挿入具16の一方端に設けられることになる。なお、
図2に示す例では、1つの超音波発生源22が生体挿入具16の一方端に設けられているが、超音波発生源22の設置個所は、生体挿入具16の一方端に限定されるものではない。複数の超音波発生源22が設けられてもよい。
【0027】
超音波発生源22は、駆動装置24からのレーザ光を受けることで、超音波である光音響波を発生させる。例えば、超音波発生源22は、公知の色素(例えば光増感剤)、金属ナノ粒子又は炭素ベース化合物体等によって構成されている。光ファイバの一方端とその一方端に設けられている超音波発生源22は、樹脂製の封止部材等によって覆われている。
【0028】
超音波発生源22から発生した光音響波は、被検体26の体表に設けられている超音波プローブ18によって受信される。装置本体20は、超音波プローブ18が受信した光音響波に基づいて、超音波発生源22を表す画像データを生成する。また、超音波プローブ18は、被検体26内に超音波を送信し、被検体26内で反射された超音波を受信し、装置本体20は、その受信した超音波に基づいて、被検体26内の組織(例えば血管28を含む組織)を表す画像データ(例えば断面画像データ)を生成する。被検体26内の組織を表す断面画像に、超音波発生源22を表す画像が重畳されて、これらの画像がディスプレイに表示される。これにより、術者は、被検体26内(例えば血管28内)における生体挿入具16の一方端の位置を把握することができる。
【0029】
以下、
図3を参照して、超音波撮像装置12の構成について説明する。
図3は、超音波撮像装置12の構成を示すブロック図である。
【0030】
超音波プローブ18は、超音波を送受信する装置である。超音波プローブ18は、例えば1Dアレイ振動子を含む。1Dアレイ振動子は、複数の超音波振動子が一次元的に配列されることで構成される。1Dアレイ振動子によって超音波ビームが形成され、超音波ビームが繰り返し電子走査される。これにより、電子走査毎に生体内に走査面が形成される。走査面は、二次元エコーデータ取込空間に相当する。超音波プローブ18は、1Dアレイ振動子でなく、複数の振動素子が二次元的に配列されて形成された2Dアレイ振動子を含んでもよい。2Dアレイ振動子によって超音波ビームが形成され、超音波ビームが繰り返し電子走査されると、電子走査毎に二次元エコーデータ取込空間としての走査面が形成される。超音波ビームが二次元的に走査されると、三次元エコーデータ取込空間としての三次元空間が形成される。走査方式として、セクタ走査、リニア走査又はコンベックス走査等が用いられる。体表に設置される超音波プローブに限られず、血管内超音波(IVUS)等に用いられる超音波プローブのように、体表以外に設置される超音波プローブが用いられてもよい。
【0031】
装置本体20は、送信部30と、受信部32と、制御部34と、入力部36と、表示部38と、記憶部40とを含む。
【0032】
送信部30は、送信ビームフォーマとして機能する。受信部32は、受信ビームフォーマとして機能する。送信時において、送信部30は、超音波プローブ18に含まれる複数の超音波振動子に対して一定の遅延関係をもった複数の送信信号を供給する。これにより、超音波の送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波(RF信号)が超音波プローブ18により受信され、これにより超音波プローブ18から受信部32へ複数の受信信号が出力される。受信部32は、複数の受信信号に対して整相加算処理を適用することで、受信ビームを形成する。そのビームデータが制御部34の信号処理部42に出力される。すなわち、受信部32は、各超音波振動子から得られる受信信号に対して、各超音波振動子に対する遅延処理条件に従って遅延処理を施し、複数の超音波振動子から得られる複数の受信信号を加算処理することで受信ビームを形成する。遅延処理条件は、遅延時間を示す受信遅延データによって規定される。複数の超音波振動子に対応する受信遅延データセット(つまり遅延時間のセット)は制御部34から供給される。
【0033】
送信部30と受信部32の作用によって、超音波ビーム(つまり送信ビーム及び受信ビーム)が電子的に走査され、これによって、走査面が形成される。走査面は複数のビームデータに相当し、それらは受信フレームデータ(具体的にはRF信号フレームデータ)を構成する。なお、各ビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。超音波ビームの電子走査を繰り返すことで、時間軸上に並ぶ複数の受信フレームデータが受信部32から出力される。それらが受信フレーム列を構成する。
【0034】
2Dアレイ振動子等によりボリューム撮像を行う場合には、上記処理に加えて、送信部30と受信部32の作用によって超音波ビームが二次元的に電子走査されると、三次元エコーデータ取込空間が形成され、その三次元エコーデータ取込空間からエコーデータ集合体としてのボリュームデータが取得される。超音波ビームの電子走査を繰り返すことにより、時間軸上に並ぶ複数のボリュームデータが受信部32から出力される。それらがボリュームデータ列を構成する。
【0035】
制御部34は、信号処理部42と撮像制御部44と表示画像生成部46とを含み、超音波プローブ18による超音波の送受信を制御し、受信した超音波に基づいて画像データを生成する。また、制御部34は、超音波発生装置14を制御する。具体的には、制御部34は、駆動装置24によるレーザ光の発光を制御し、超音波発生源22からの超音波に基づいて画像データを生成する。
【0036】
信号処理部42は、受信部32から出力されるビームデータに対して、検波、対数圧縮及びコンバート機能(DSC(デジタルスキャンコンバータ)による座標変換機能及び補間処理機能等)等の信号処理を適用することで、画像データ(例えばBモード画像)を生成する装置である。
【0037】
撮像制御部44は、反射超音波像の撮像のタイミングと光音響像の撮像のタイミングを制御する。また、撮像制御部44は、反射超音波像の撮像の回数と光音響像の撮像の回数を制御する。
【0038】
反射超音波像は、超音波プローブ18から送信されて被検体26内で反射された超音波(つまり反射波)に基づいて生成される画像データである。つまり、反射超音波像は、反射超音波を受信した受信部32から出力された反射超音波信号に基づいて生成される画像データである。反射超音波像の撮像は、超音波プローブ18から超音波を送信し、その送信した超音波の反射波を受信することで、反射超音波像を生成することである。以下では、反射超音波像の撮像を「反射超音波撮像」と称する。
【0039】
光音響像は、超音波発生源22からの光音響波に基づいて生成される画像データである。つまり、光音響像は、光音響波を受信した受信部32から出力された光音響信号に基づいて生成される画像データである。光音響像の撮像は、超音波発生源22からの光音響波に基づいて光音響像を生成することである。以下では、光音響像の撮像を「光音響撮像」と称することとする。
【0040】
撮像制御部44は、後述する条件に従って、反射超音波撮像及び光音響撮像のそれぞれの撮像回数、撮像の周期及びタイミングを計算する。撮像制御部44は、その計算結果に基づいて、反射超音波撮像を行うために、送信部30による超音波の送信及び受信部32による超音波の受信を制御する。これにより、反射超音波信号が生成され、その反射超音波信号に基づいて反射超音波像が生成される。また、撮像制御部44は、光音響撮像を行うために、駆動装置24によるレーザ光の発光及び受信部32による光音響波の受信を制御する。これにより、光音響信号が生成され、その光音響信号に基づいて光音響像が生成される。なお、撮像制御部44は、制御手段の一例に相当する。
【0041】
信号処理部42は、反射超音波信号処理部48と、反射像フィルタ部50と、光音響像処理部52と、光音響像フィルタ部54とを含む。
【0042】
反射超音波信号処理部48は、反射超音波撮像を行うことで受信部32から出力された反射超音波信号(RF信号)に対して信号処理を適用することで、Bモード画像等の反射超音波像を生成する。つまり、反射超音波信号処理部48は、反射超音波信号を画像化することで反射超音波像を生成する。なお、送信部30、受信部32及び反射超音波信号処理部48が、撮像手段の一例に相当する。
【0043】
反射像フィルタ部50は、反射超音波信号処理部48から出力された反射超音波像に対してフィルタ処理を適用する。
【0044】
光音響像処理部52は、光音響撮像を行うことで受信部32から出力された光音響信号に対して信号処理を適用することで、光音響像を生成する。つまり、光音響像処理部52は、光音響信号を画像化することで光音響像を生成する。なお、送信部30、受信部32及び光音響像処理部52が、光音響撮像手段の一例に相当する。
【0045】
光音響像フィルタ部54は、光音響像処理部52から出力された光音響像に対してフィルタ処理を適用する。
【0046】
表示画像生成部46は、信号処理部42によって生成された画像に基づいて、表示部38に表示される表示画像を生成する。例えば、表示画像生成部46は、反射超音波像に光音響像を重畳させることで表示画像を生成する。表示画像生成部46は、表示画像を表示部38に表示させる。
【0047】
なお、撮像制御部44、光音響像処理部52及び光音響像フィルタ部54以外の構成は、公知の超音波撮像装置が有する構成と同じであってもよい。
【0048】
入力部36は、ユーザが撮像に必要な条件や命令等を装置本体20に入力するための装置である。例えば、入力部36、操作パネル、スイッチ、ボタン、キーボード、マウス又はジョイスティック等である。
【0049】
表示部38は、液晶ディスプレイやELディスプレイ等のディスプレイである。表示部38には、反射超音波像や光音響像が表示される。また、反射超音波像上に光音響像が重畳された状態で、反射超音波像と光音響像が表示部38に表示されてもよい。表示部38は、ディスプレイと入力部36とを兼ね備えた装置であってもよい。例えば、GUI(Graphic User Interface)が、表示部38によって実現されてもよい。また、タッチパネル等のユーザインターフェースが、表示部38によって実現されてもよい。
【0050】
記憶部40は、データを記憶する1又は複数の記憶領域を構成する装置である。記憶部40は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、各種のメモリ(例えばRAM、DRAM、ROM等)、その他の記憶装置(例えば光ディスク等)、又は、それらの組み合わせである。例えば、反射超音波像や光音響像が、記憶部40に記憶される。
【0051】
制御部34は、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェア資源を利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、制御部34は、例えばコンピュータによって実現されてもよい。つまり、コンピュータが備えるCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェア資源と、CPU等の動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により、制御部34の全部又は一部が実現されてもよい。当該プログラムは、CDやDVD等の記録媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信経路を経由して、記憶部40又はその他の記憶装置に記憶される。別の例として、制御部34は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現されてもよい。もちろん、GPU(Graphics Processing Unit)等が用いられてもよい。制御部34は、単一の装置によって実現されてもよいし、制御部34が有する各機能が、1又は複数の装置によって実現されてもよい。
【0052】
以下、
図4を参照して、医療支援システム10の動作の概略について説明する。
図4は、医療支援システム10の動作の概略を示すフローチャートを示す図である。ここでは一例として、超音波撮像装置12は、1Dアレイ振動子を含む超音波プローブ18を用いて反射超音波撮像を行う。また、術者は、超音波発生源22が搭載された生体挿入具16を被検体26内に挿入する。駆動装置24は、制御部34からの指示に従って、光ファイバを介して超音波発生源22に対してレーザ光を照射する。これにより、超音波発生源22から光音響波が発生し、超音波撮像装置12は、光音響撮像を行う。このように、反射超音波撮像と光音響撮像とが行われ、反射超音波像と光音響像とが表示部38に表示される。生体挿入具16と超音波プローブ18は、術者等によって手動で操作される。
【0053】
図4に示すように、超音波撮像装置12は、反射超音波撮像(S01)と、光音響撮像(S02)と、表示画像の生成(S03)とを、予め定められた周期で繰り返す。なお、その繰り返しの方法(例えば順番等)は、
図4に示されている方法に限定されない。例えば、超音波撮像装置12は、反射波超音波撮像を4回実行し、次に光音響撮像を1回実行し、表示画像を生成するという動作を繰り返してもよいし、反射波超音波撮像と光音響撮像とをそれぞれ1回ずつ実行し、表示画像の生成を各撮像と並行して実行する動作を繰り返してもよい。
【0054】
反射波超音波撮像(S01)においては、送信部30によって超音波プローブ18から被検体26内に超音波が送信され、被検体26内の組織で反射した反射波が超音波プローブ18によって受信される。受信部32は、受信信号に対して整相等の処理を適用し、その処理が適用された信号を反射超音波信号処理部48に出力する。反射超音波信号処理部48は、受信部32から出力された信号に基づいて、Bモード画像等の反射超音波像を生成する。反射像フィルタ部50は、反射超音波像に対してフィルタ処理を適用し、フィルタ処理が適用された反射超音波像を表示画像生成部46に出力する。超音波ビームが走査される走査面を表す二次元の反射超音波像が生成されてもよいし、三次元の反射超音波像(ボリュームデータ)が生成されてもよい。
【0055】
光音響撮像(S02)においては、生体挿入具16を被検体26内(例えば血管28内)に挿入しながら撮像が行われる。具体的には、撮像制御部44は、送信部30による超音波の送信を一時的に停止し、駆動装置24からパルス状のレーザ光を発光させる(つまり、駆動装置24から間欠的にレーザ光を発光させる)。駆動装置24から発光したレーザ光は、生体挿入具16に沿って設けられている光ファイバを介して超音波発生源22に照射される。これにより、超音波発生源22から超音波である光音響波が発生し、発生した光音響波は、超音波プローブ18によって受信される。受信部32は、駆動装置24からのレーザ光の発光と同期して、超音波プローブ18によって受信された光音響信号を受信し、光音響信号に対して整相等の処理を適用し、その処理が適用された光音響信号を光音響像処理部52に出力する。光音響像処理部52は、光音響信号を画像化することで光音響像を生成する。光音響像フィルタ部54は、その光音響像に対してフィルタ処理を適用し、フィルタ処理が適用された光音響像を表示画像生成部46に出力する。なお、受信部32は、駆動装置24がレーザ光を発光したときに光音響像処理部52に出力するトリガー信号に基づいて、レーザ光の発光タイミングを認識してもよいし、超音波プローブ18が受信した光音響波に基づいて、レーザ光の発光タイミングを推測してもよい。
【0056】
以下、反射超音波撮像と光音響撮像のそれぞれのタイミングについて説明する。
図5には、参考例に係るタイミングが示されている。参考例は、実施形態に係る動作を用いない例である。
図5中の横軸は時間tを示している。
【0057】
図5中の符号56は、受信部32による超音波の受信のタイミングを指し示している。符号58は、送信部30による超音波の送信のタイミングを指し示している。符号60は、駆動装置24によるレーザ光の発光のタイミングを指し示している。
【0058】
図5に示す例では、反射超音波撮像が撮像周期t
2秒毎にn
1回繰り返され、光音響撮像が撮像周期t
4秒毎にn
2回繰り返される。1つの超音波画像の生成に要する撮像周期は、以下の式(1)で表される。
n
1×t
2+n
2×t
4・・・(1)
【0059】
反射超音波撮像は、送信部30と超音波プローブ18とによる超音波送信と、その超音波送信に同期した受信時間t1秒間の超音波受信(受信部32と超音波プローブ18とによる超音波受信)と、から構成される。受信時間t1秒は、一般的に、撮像対象(つまり撮像領域)の深さ(つまり、被検体26の体表と撮影対象との間の距離(より正確には、超音波プローブ18を構成する各超音波振動子と撮影対象との間の距離))によって定められる。例えば、着目している領域(つまり撮影対象)の深さがd[mm]である場合、音速c[mm/s]を有する音波が超音波プローブ18と撮影対象との間を往復する時間を考慮して、受信時間t1は、以下の式(2)で表される条件に従って定められる。
t1>2×d/c・・・(2)
【0060】
撮像周期t2は、受信時間t1よりも長い必要があるため、以下の式(3)で表される条件に従って定められる。
t2>t1・・・(3)
【0061】
一方で、光音響撮像においては、音速c[mm/s]を有する音波が超音波発生源22から超音波プローブ18に到達する時間を考慮して、受信時間t3は、以下の式(4)で表される条件に従って定められる。
t3>d/c・・・(4)
【0062】
撮像周期t4は、受信時間t3よりも長い必要があるため、以下の式(5)で表される条件に従って定められる。
t4>t3・・・(5)
【0063】
撮像回数n1,n2は、要求される画像の繊細さとSN(Signal to Noise)比とによって定められる。画像の繊細さが一定である場合、撮像回数が多いほど多くの受信信号を加算平均等の後処理に利用できるため、SN比の高い画像が得られる。そのため、撮像回数n1,n2を増やすことで、SN比の高い撮像結果が得られる。一方で、1つの超音波画像の生成に要する撮像周期が増大し、得られる超音波画像の更新周期が長くなるという問題が生じる。つまり、超音波撮像のフレームレートが低下する。
【0064】
以下、
図6を参照して、実施形態に係る動作について説明する。
図6には、実施形態に係るタイミングが示されている。実施形態に係るタイミングは、参考例で生じた課題を解決することができるタイミングである。
図6中の横軸は時間を示している。
【0065】
図6中の符号62は、受信部32による超音波の受信のタイミングを指し示している。符号64は、送信部30による超音波の送信のタイミングを指し示している。符号66は、駆動装置24によるレーザ光の発光のタイミングを指し示している。
【0066】
図6に示す例では、反射超音波撮像が撮像周期t
5秒毎にn
3回繰り返され、光音響撮像が撮像周期t
7秒毎にn
4回繰り返される。1つの超音波画像の生成に要する撮像周期は、以下の式(6)で表される。
n
3×t
5+n
4×t
7・・・(6)
【0067】
反射超音波撮像のタイミングは、参考例(
図5参照)に係る反射超音波撮像のタイミングと同等である。具体的には、反射超音波撮像は、送信部30と超音波プローブ18とによる超音波送信と、その超音波送信に同期した受信時間t
6秒間の超音波受信(受信部32と超音波プローブ18とによる超音波受信)と、から構成される。受信時間t
6秒は、上述したように、撮像対象の深さによって定められる。受信時間t
6は、上述した式(2)と同様の理由によって、以下の式(7)で表される条件に従って定められる。
t
6>2×d/c・・・(7)
【0068】
撮像周期t5は、受信時間t6よりも長い必要があるため、以下の式(8)で表される条件に従って定められる。
t5>t6・・・(8)
【0069】
光音響撮像の受信時間t8は、上述した式(4)と同様に、以下の式(9)で表される条件に従って定められる。
t8>d/c・・・(9)
【0070】
撮像周期t7は、受信時間t8よりも長い必要があるため、以下の式(10)で表される条件に従って定められる。
t7>t8・・・(10)
【0071】
実施形態に係る光音響撮像においては、撮像制御部44は、1回の受信で複数回レーザ光を駆動装置24に発光させる。つまり、撮像制御部44は、受信時間t8中に複数回レーザ光を駆動装置24に発光させる。これにより、受信時間t8中に複数回レーザ光が超音波発生源22に照射され、その受信時間t8中に複数の光音響波が超音波発生源22から発生する。1回の受信当たりのレーザ光の発光回数を回数n5と定義する(n5≧2)。1回の受信で複数回レーザ光を超音波発生源22に照射することで、着目している撮像対象(つまり着目している領域)の深さで定められる受信時間t8によってレーザ光の発光回数が制限されない。
【0072】
図6に示す例では、n
5=3であり、撮像制御部44は、1回の受信中に(つまり受信時間t
8中に)3回レーザ光を駆動装置24に発光させている。これにより、1つの受信信号に3つの光音響波が含まれることになる。光音響像処理部52は、3つの光音響波を加算する。光音響像処理部52は、受信部32から出力された3つの光音響信号を加算してもよいし、信号処理を適用することで生成された3つの光音響波像を加算してもよい。この加算によって、高いSN比を実現することができる。
【0073】
図6に示す例では、撮像制御部44は、受信の開始時点とレーザ光の発光時点とを同期させて、レーザ光を駆動装置24に発光させている。具体的には、撮像制御部44は、受信の開始時点(つまり受信時間t
8の開始時点)と同じタイミングで1回目のレーザ光を駆動装置24に発光させている。撮像制御部44は、1回目のレーザ光の発光時点から時間t
9秒後に2回目のレーザ光を駆動装置24に発光させている。撮像制御部44は、2回目のレーザ光の発光時点から時間t
10秒後に3回目のレーザ光を駆動装置24に発光させている。時間t
9と時間t
10は、同じ長さの時間であってもよいし、異なる長さの時間であってもよい。また、時間t
9,t
10は、受信時間t
8よりも短い時間であり、時間t
9と時間t
10の合計も、受信時間t
8よりも短い時間である。例えば、時間t
7,t
8(時間t
5,t
6も同様)は、マイクロ秒(μs)オーダーの時間であり、時間t
9,t
10は、ナノ秒(ns)オーダーの時間である。
【0074】
図7には、実施形態の別の例に係るタイミングが示されている。
図7中の符号68は、駆動装置24によるレーザ光の発光のタイミングを指し示している。
【0075】
図7に示す例では、レーザ光の発光時点は、受信の開始時点よりも早い。つまり、撮像制御部44は、受信の開始時点よりも前の時点でレーザ光を駆動装置24に発光させている。例えば、撮像制御部44は、1回目のレーザ光を受信の開始時点(つまり受信時間t
8の開始時点)よりも前の時点で駆動装置24に発光させ、2回目のレーザ光を受信の開始時点と同じタイミングで駆動装置24に発光させ、その後、3回目のレーザ光を駆動装置24に発光させている。1回目のレーザ光の発光に応じて超音波発生源22から発生する光音響波が受信時間t
8内に受信部32によって受信されるように、撮像制御部44は、1回目のレーザ光の発光タイミングを制御する。なお、受信の開始時点と各レーザ光の発光時点との差は、一定であってもよいし、一定でなく予め定められた値であってもよい。
【0076】
以下、
図8を参照して、実施形態に係る処理の一例について説明する。
図8は、実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
【0077】
受信部32は、光音響撮像毎に光音響波を受信する(S11)。
図6に示す例では、受信部32は、受信時間t
8毎に3つの光音響波を受信する。光音響像処理部52は、受信部32が受信した整相前の各光音響信号を調整し(S12)、調整後の複数の光音響信号を加算する(S13)。次に、光音響像処理部52は、加算後の光音響信号を整相し(S14)、検波する(S15)。これにより、光音響像が生成され、表示部38に表示される(S16)。
【0078】
図9には、実施形態に係る処理方法の別の例が示されている。
【0079】
受信部32は、光音響撮像毎に光音響波を受信する(S21)。光音響像処理部52は、受信部32が受信した各光音響信号を整相し(S22)、検波する(S23)。次に、光音響像処理部52は、整相後の各光音響信号を調整し(S24)、調整後の複数の光音響信号を加算する(S25)。生成された光音響像は、表示部38に表示される(S26)。
【0080】
以下、
図10を参照して、上述した調整方法(S12,S24)の具体例について説明する。
図10は、光音響撮像によって得られた受信信号及び画像を示す図である。
図10には、被検体26の体表からの深さに対応する時間軸が示されている。ここでは一例として、
図6又は
図7に示すように、1回の受信中に(つまり受信時間t
8内に)3回レーザ光が超音波発生源22に照射されているものとする。
【0081】
受信信号70は、光音響撮像を行うことで受信時間t
8内に受信部32によって受信された信号である。受信信号70は、整相前の信号である。受信信号70は、1回の受信で受信された3つの光音響波信号を含む。つまり、1回の受信中に(つまり受信時間t
8内に)3回レーザ光が超音波発生源22に照射されて、3回光音響波が超音波発生源22から発生している。そのため、受信信号70は、受信時間t
8内に受信された3つの光音響信号を含む。例えば、受信信号70は、光音響信号70a,70b,70cを含む。光音響信号70aは、3回の発光のうち1回目のレーザ光の発光に応じて受信された光音響信号である。光音響信号70bは、3回の発光のうち2回目のレーザ光の発光に応じて受信された光音響信号である。光音響信号70cは、3回の発光のうち3回目のレーザ光の発光に応じて受信された光音響信号である。光音響信号70aと光音響信号70bとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)は、
図6に示されている時間t
9に相当する。光音響信号70bと光音響信号70cとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)は、
図6に示されている時間t
10に相当する。ここでは一例として、時間t
9と時間t
10は同じである。したがって、光音響信号70aと光音響信号70bとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)と、光音響信号70bと光音響信号70cとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)は、同じである。もちろん、時間t
9と時間t
10は異なってもよい。この場合、光音響信号70aと光音響信号70bとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)と、光音響信号70bと光音響信号70cとの間の時間間隔(時間軸上の時間間隔)は、異なることになる。
【0082】
受信信号72は、2つ目の光音響信号70bの時間軸上の位置を基準として、時間軸上における受信信号70の位置を時間方向にずらすことで生成された信号である。受信信号72は、整相前の信号である。例えば、光音響像処理部52は、受信信号70の送信遅延を補正することで、時間軸上における光音響信号70bの位置を基準として、時間軸上における受信信号70の位置を時間方向にずらす。これにより、受信信号72が生成される。具体的には、光音響像処理部52は、時間軸上における受信信号70の位置を時間t9だけ時間方向にずらすことで受信信号72を生成する。これにより、受信信号70に含まれる光音響信号70a,70b,70cの時間軸上の位置は、時間t9だけ時間方向にずれる。受信信号72は光音響信号72a,72b,72cを含む。光音響信号72aは、時間軸上における光音響信号70aの位置を時間t9だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号72bは、時間軸上における光音響信号70bの位置を時間t9だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号72cは、時間軸上における光音響信号70cを時間t9だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号70aと光音響信号70bとの間の時間間隔は時間t9に相当する。したがって、2つ目の光音響信号70bが1つめの光音響信号70aに重なる方向に、時間軸上における受信信号70の位置を時間t9だけずらすことで、移動後の光音響信号72bの位置は、移動前の光音響信号70aの位置と同じ位置になる。これにより、後述するように、同じ位置にある光音響信号72bと光音響信号70aとが加算されることになる。
【0083】
受信信号74は、3つ目の光音響信号70cの時間軸上の位置を基準として、時間軸上における受信信号70の位置を時間方向にずらすことで生成された信号である。受信信号74は、整相前の信号である。例えば、光音響像処理部52は、受信信号70の送信遅延を補正することで、時間軸上における光音響信号70cの位置を基準として、時間軸上における受信信号70の位置を時間方向にずらす。これにより、受信信号74が生成される。具体的には、光音響像処理部52は、時間軸上における受信信号70を時間t9と時間t10との合計だけ時間方向にずらすことで受信信号72を生成する。これにより、受信信号70に含まれる光音響信号70a,70b,70cの時間軸上の位置は、時間t9と時間t10との合計だけ時間方向にずれる。換言すると、光音響像処理部52は、時間軸上における受信信号72の位置を時間t10だけ時間方向にずらすことで受信信号74を生成する。受信信号74は光音響信号74a,74b,74cを含む。光音響信号74aは、時間軸上における光音響信号70aの位置を時間t9と時間t10との合計だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号74bは、時間軸上における光音響信号70bの位置を時間t9と時間t10との合計だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号74cは、時間軸上における光音響信号70cの位置を時間t9と時間t10との合計だけ時間方向にずらすことで生成された信号である。光音響信号70aと光音響信号70cとの間の時間間隔は時間t9と時間t10の合計に相当する。したがって、3つ目の光音響信号70cが1つ目の光音響信号70aに重なる方向に、時間軸上における受信信号70の位置を時間t9と時間t10の合計だけずらすことで、移動後の光音響信号74cの位置は、移動前の光音響信号70aの位置と同じ位置になる。これにより、後述するように、同じ位置にある光音響信号74cと光音響信号70aとが加算されることになる。また、光音響信号72bの位置もこれらの位置と同じであるため、光音響信号70aと光音響信号72bと光音響信号74cとが加算されることになる。
【0084】
受信信号76は、受信信号70,72,74を加算平均することで生成された信号である。受信信号76は、整相前の信号である。例えば、光音響像処理部52は、受信信号70,72,74を加算平均することで受信信号76を生成する。受信信号76は、加算平均の結果としての光音響信号76a~76eを含む。光音響信号76aは、同じ位置にある光音響信号70a,72b,74cを加算平均することで生成された信号である。光音響信号76bは、同じ位置にある光音響信号72a,74bを加算平均することで生成された信号である。光音響信号76cは、光音響信号74aと同じ信号である。光音響信号76dは、同じ位置にある光音響信号70b,72cを加算平均することで生成された信号である。光音響信号76eは、光音響信号70cと同じ信号である。
【0085】
光音響像78は、受信信号76を整相し画像化することで生成された画像である。その整相及び画像化の処理は、光音響像処理部52によって行われる。光音響像78は、像78a~78eを含む。像78aは、受信信号76中の光音響信号76aに基づいて生成される画像である。像78bは、光音響信号76bに基づいて生成される画像である。像78cは、光音響信号76cに基づいて生成される画像である。像78dは、光音響信号76dに基づいて生成される画像である。像78eは、光音響信号76eに基づいて生成される画像である。
【0086】
上述したように、3つの光音響信号の時間軸上の位置を揃えて3つの光音響信号を加算平均することで、像78aが生成される。このように複数の光音響信号を加算平均することで、SN比が向上した像78aが生成される。像78aは、超音波発生源22を表す画像である。術者等は、SN比が向上した像78aを参照することができるので、術者等にとって生体挿入具16の先端位置を認識することが容易となる。
【0087】
光音響像78は、超音波発生源22を表す像78a以外に像78b~78eを含む。像78b~78eは、超音波発生源22の無い位置に現れるアーティファクトである。
【0088】
図11には、そのアーティファクトの除去を含む処理の一例が示されている。
図11中のステップS31~S35は、
図8中のステップS11~S15と同じである。また、
図11中のステップS37は、
図8中のステップS16と同じである。
図11に示す例では、光音響像フィルタ部54は、画像表示の前に、光音響像78に含まれる像78b~78eを除去する(S36)。像78b~78eが除去された光音響像78が、表示部38に表示される(S37)。
【0089】
アーティファクトを除去するためのフィルタは、例えば、最も輝度の高い像(例えば像78a)以外の像を除去するフィルタ、画像の統計情報を用いたフィルタ、又は、機械学習を用いたフィルタ等である。もちろん、これら以外のフィルタが用いられてもよい。
【0090】
光音響像フィルタ部54は、加算処理が行われる前の光音響信号にフィルタ処理を適用してもよいし、加算処理が行われた後の光音響信号又は光音響像にフィルタ処理を適用してもよい。加算処理によってSN比が改善された信号に対してフィルタ処理を適用することで、加算処理を行う前にフィルタ処理を適用する場合と比べて、精度や安定性の面で有利である。
【0091】
なお、光音響像78にフィルタが適用されずに、アーティストである像78b~78eを含む光音響像78が表示部38に表示されてもよい。この場合であっても、術者等は、超音波発生源22(つまり生体挿入具16の先端)のおおよその位置を把握することができる。
【0092】
以下、変形例について説明する。
【0093】
各種規制や、光音響波を発生させる超音波発生源22の色素の耐久性等を考慮すると、駆動装置24が発光するレーザ光の出力(例えば平均出力)は、予め定められた制限値以下であってもよい。その制限値は、各種規制や色素の耐久性等に基づいて定められる。一方で、レーザ光の強度が高いほど、光音響信号のSN比は向上する。これらを考慮すると、撮像制御部44は、レーザ光の出力(例えば平均出力)が制限値以下であり、かつ、レーザ光の出力と上限値との差が閾値以下となるように、1回の発光当たりのレーザ光の強度や発光時間を変更してもよい。例えば、撮像制御部44は、レーザ光の発光回数や発光の間隔に応じて、1回の発光当たりのレーザ光の強度や発光時間を変えてもよい。具体的には、1回の受信における発光回数は2~5回程度であるが、もちろん、レーザ光の出力が制限値以下であれば、発光回数は6回以上であってもよい。
【0094】
以下、
図12及び
図13を参照して、変形例に係る処理について詳しく説明する。
図12及び
図13は、変形例に係る反射超音波撮像と光音響撮像のシーケンスを示す図である。
図12及び
図13中の横軸は時間を示している。
【0095】
図12において、符号80は、反射超音波撮像のタイミングを示している。符号82は、光音響撮像のタイミングを示している。符号84は、送信部30による超音波の送信のタイミングを指し示している。符号86は、駆動装置24によるレーザ光の発光のタイミングを指し示している。
【0096】
図13において、符号88は、反射超音波撮像のタイミングを示している。符号90は、光音響撮像のタイミングを示している。符号92は、送信部30による超音波の送信のタイミングを指し示している。符号94は、駆動装置24によるレーザ光の発光のタイミングを指し示している。
【0097】
図12に示す例では、反射超音波撮像の所要時間t
11であり、
図13に示す例では、反射超音波撮像の所要時間はt
11’である。ここでは一例として、t
11>t
11’である。例えば、画像調整等に起因して所要時間が変更される。例えば、所要時間が長ければ、詳細な反射超音波像が生成される。画像調整等は、例えば、術者等によって設定される。例えば、撮像制御部44は、設定された画像調整の値に応じた長さを有する所要時間を設定する。術者が、所要時間を直接設定してもよい。もちろん、別の原因によって所要時間が変更されておよい。
【0098】
図12及び
図13に示す例では共に、光音響撮像の所要時間はt
12であり、反射超音波撮像と光音響撮像とが交互に繰り返し実行される。つまり、
図12に示す例では、所要時間t
11の間、反射超音波撮像が実行され、その後、所要時間t
12の間、光音響撮像が実行され、以降、反射超音波撮像と光音響撮像とが交互に繰り返し実行される。
図13に示す例では、所要時間t
11’の間、反射超音波撮像が実行され、その後、所要時間t
12の間、光音響撮像が実行され、以降、反射超音波撮像と光音響撮像とが交互に繰り返し実行される。
【0099】
図12に示す例では、1回の発光当たりのレーザ光の発光強度は、発光強度P[W]であり、1回の発光当たりのレーザ光の発光時間は、発光時間t
13[ns]である。
【0100】
図13に示す例では、1回の発光当たりのレーザ光の発光強度は、発光強度P’[W]であり、1回の発光当たりのレーザ光の発光時間は、発光時間t
13[ns]である。
【0101】
発光強度の違いは、反射超音波撮像の所要時間の差に起因するものである。発光強度Pは、時間t
11,t
12,t
13とレーザ光の平均出力の制限値P
limit[W]とに基づいて定められる。同様に、発光強度P’は、時間t
11’,t
12,t
13とレーザ光の平均出力の制限値P
limit[W]とに基づいて定められる。具体的には、発光強度P,P’は、以下の式(11)に従って定められる。
【数1】
【0102】
上記の例では、撮像制御部44は、反射超音波撮像の所要時間に応じてレーザ光の発光強度を変更する。レーザ光の発光強度や発光時間を変更する方法は上記の例に限定されない。例えば、撮像制御部44は、撮像時間や撮像回数等の他のパラメータに応じて、レーザ光の発光強度や発光時間を変更してもよい。
【0103】
以下、
図14を参照して、信号処理方法の変形例について説明する。
図14は、その変形例に係る信号処理方法の流れを示すフローチャートである。
【0104】
受信部32は、光音響撮像毎に光音響波を受信する(S41)。光音響像処理部52は、受信部32が受信した各光音響信号を整相し(S42)、検波する(S43)。次に、光音響像処理部52は、検波後の信号から逆整相処理によって整相前の信号を推測する(S44)。次に、光音響像処理部52は、推測した整相前の各信号を調整し(S45)、調整後の複数の信号を加算する(S46)。次に、光音響像処理部52は、加算後の信号を整相し(S47)、検波する(S48)。これにより、光音響像が生成され、表示部38に表示される(S49)。逆整相処理は、機械学習やフーリエ整相に基づいた処理を用いて実現することができる。信号の全体に逆整相処理を適用してもよいし、光音響波信号が含まれる一部の信号に逆整相処理を適用してもよい。
【0105】
本実施形態に係る処理は、上述した処理に限定されない。受信信号に含まれる複数の光音響信号の時間軸上の位置を変更して当該複数の光音響信号を加算する処理を含む、様々な実施形態が想定される。
【符号の説明】
【0106】
10 医療支援システム、12 超音波撮像装置、14 超音波発生装置、16 生体挿入具、18 超音波プローブ、20 装置本体、22 超音波発生源、24 駆動装置。