(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066503
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】カーブチー果皮抽出物を含む抗酸化用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/752 20060101AFI20240508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240508BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240508BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240508BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240508BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
A61K36/752
A61P43/00 111
A61P39/06
A61K31/353
A61K31/352
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185857
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2022174444
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(71)【出願人】
【識別番号】510010182
【氏名又は名称】恵比須化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】仲眞 浩美
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 豊展
(72)【発明者】
【氏名】森 菜月
(72)【発明者】
【氏名】浦川 雅満
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC02
4C086ZC52
4C088AB62
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA08
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZC02
4C088ZC52
(57)【要約】
【課題】カーブチー果皮の有効な機能性及び用途を提案する。
【解決手段】カーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として有する抗酸化用組成物を提供する。カーブチー果皮抽出物は、ポリメトキシフラボノイドとして、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、タンゲレチン及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。抗酸化用組成物は、抗老化剤、活性酸素阻害剤、ラジカル消去剤、又はエラスターゼ活性阻害剤として用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として有する抗酸化用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗酸化用組成物であって、
前記カーブチー果皮抽出物は、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチン、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む
抗酸化用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の抗酸化用組成物であって、
前記カーブチー果皮抽出物は、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチン及びそれらの薬学的に許容される塩を、合計して0.01wt%以上1wt%以下で含む
抗酸化用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の抗酸化用組成物であって、抗老化剤である、
抗酸化用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の抗酸化用組成物であって、
活性酸素阻害剤、ラジカル消去剤、又はエラスターゼ活性阻害剤である、
抗酸化用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の抗酸化用組成物であって、
溶媒として、エタノール又はブチレングリコールを含む、
抗酸化用組成物。
【請求項7】
カーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として有する抗酸化用組成物の製造方法であって、
カーブチー果皮を、エタノール又はブチレングリコールを含む溶液で抽出する抽出工程を含む、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の抗酸化用組成物の製造方法であって、前記カーブチー果皮を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥した前記カーブチー果皮を粉砕する粉砕工程をさらに含み、前記粉砕工程後に前記抽出工程が行われる
方法。
【請求項9】
請求項7に記載の抗酸化用組成物の製造方法であって、前記抽出工程により得られた抽出成分を、目の大きさが0.05μm以上0.22μm以下のろ紙又はろ過用フィルターを用いて2度以上ろ過する工程をさらに含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブチーの果皮に含まれる成分を用いた抗酸化用組成物とその製造方法に関する。このような抗酸化用組成物は、例えば化粧品や医薬部外品に配合できる。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)の果皮又は陳皮から抽出される成分に人体にとって有益な機能性が存在することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ミカン科植物の果皮若しくは葉又はそれらの抽出物からなる脂肪分解促進剤が開示されている。特許文献1には、ミカン科植物の果皮抽出物が、脂肪組織において明らかな脂肪分解促進作用を有し、肥満の抑制、防止および改善に優れた効果を有することが示されている。また、特許文献1において有効性が示されたミカン科植物は、オオベニミカン(Citrus tangerina Tanaka)、ダイダイ(Citrus aurantium L. var daidai Makino)、ゴシュユ(Evodia rutaecarpa Hook. fil etThoms.)、及びユズ(Citrus Junos Tanaka)である。
【0004】
また、特許文献2には、柑橘類の果皮抽出物に含まれるノビレチンを有効成分として含む脂肪酸結合タンパク質(FABP)5産生抑制用組成物が開示されている。FABP5は、粥状動脈硬化や糖尿病を発症させたり、バリア機能低下や炎症など肌状態を悪化させたりするが、特許文献2には、柑橘類の果皮抽出物にこれらを抑制する効果があると示されている。特許文献2では、ノビレチンを含む抽出物としてタチバナ果皮エキスの有効性が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-326947号公報
【特許文献2】特開2019-156743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ミカン科ミカン属の植物の一種に、カーブチー(Citrus keraji var.kabuchii hort.ex Tanaka)がある。カーブチーは、沖縄県原産の固有種であり、果皮が厚い反面、果肉の可食部が小さいという特徴がある。また、カーブチーの果皮は浮皮となっているため比較的剥きやすいとされている。このように、カーブチーからは果皮が比較的多く取れるものの、その大部分は廃棄又は肥料に用いられることとされており、現時点では有効な活用方法は見出されていない。
【0007】
前述のとおり、ミカン科ミカン属の果皮又は陳皮の抽出物には有益な機能性があることが知られているが、カーブチー果皮由来の成分については、その機能性や、安全性、安定性の担保がなされておらず、その有効な利用用途が明らかにされていないという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、カーブチー果皮の有効な機能性及び用途を提案することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題の解決手段について鋭意検討した結果、カーブチー果皮は他の柑橘類とは成分組成が異なるものの、ポリメトキシフラボノイド類が多く含まれていることを見出した。そして、カーブチー果皮抽出物の機能性、安全性及び安定性について検証したところ、カーブチー果皮抽出物は主に抗酸化作用を持ち、化粧品や医薬部外品に配合できる程度に十分な安全性と安定性を有するという知見を得た。
【0010】
具体的に説明すると、本発明の第1の側面は、抗酸化用組成物に関する。本発明に係る抗酸化用組成物は、カーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として含む。
【0011】
本発明に係る抗酸化用組成物において、カーブチー果皮抽出物は、ポリメトキシフラボノイドとして、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチン、又はそれらの薬学的に許容される塩を含むことが好ましい。特に、カーブチー果皮抽出物は、ポリメトキシフラボノイドとして、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、タンゲレチン及びそれらの薬学的に許容される塩を、合計して0.01wt%(重量%)以上、1wt%(重量%)以下で含むことが好ましい。なお、残余は、水やアルコール、その他化粧品又は医薬部外品で一般的に用いられる成分とすればよい。
【0012】
本発明に係る抗酸化用組成物は、抗老化剤として用いることができる。
【0013】
本発明に係る抗酸化用組成物は、活性酸素阻害剤(SOD様作用剤)、ラジカル消去剤、又はエラスターゼ活性阻害剤として用いることができる。
【0014】
本発明に係る抗酸化用組成物は、溶媒としてエタノール又はブチレングリコールを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の第2の側面は、抗酸化用組成物の製造方法に関する。本発明の第2の側面に係る製造方法は、基本的に前述した第1の側面に係る抗酸化用組成物、すなわちカーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として有する抗酸化用組成物の製造する方法に関する。本発明に係る製造方法は、カーブチー果皮をエタノール又はブチレングリコールを含む溶液で抽出する抽出工程を含む。
【0016】
本発明に係る製造方法は、乾燥工程と粉砕工程をさらに含むことが好ましい。乾燥工程は、カーブチー果皮を乾燥させる工程である。粉砕工程は、乾燥したカーブチー果皮を粉砕する工程である。この場合、抽出工程は粉砕工程後に行われる。
【0017】
本発明に係る製造方法は、ろ過工程をさらに含むことが好ましい。ろ過工程は、抽出工程により得られた抽出成分を、目の大きさが0.05μm以上0.22μm以下のろ紙又はろ過用フィルターを用いて2度以上ろ過する工程である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来は主に廃棄されていたカーブチー果皮の有効な機能性及び用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係るカーブチー陳皮エキスの製造方法の一実施形態を示したフロー図である。
【
図2】
図2は、カーブチー陳皮エキスの抽出率とポリメトキシフラボノイド類の含有量の測定結果を示している。
【
図3】
図3は、カーブチー陳皮抽出における抽出率の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図4】
図4は、カーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図5】
図5は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図6】
図6は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図7】
図7は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図8】
図8は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図9】
図9は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図10】
図10は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の溶媒濃度依存性の測定結果を示している。
【
図11】
図11は、カーブチー陳皮抽出における抽出率の温度依存性の測定結果を示している。
【
図12】
図12は、カーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の温度依存性の測定結果を示している。
【
図13】
図13は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図14】
図14は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図15】
図15は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図16】
図16は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図17】
図17は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図18】
図18は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図19】
図19は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図20】
図20は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図21】
図21は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図22】
図22は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図23】
図23は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図24】
図24は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の温度依存性の測定結果を示している。
【
図25】
図25は、カーブチー陳皮抽出における抽出率の時間依存性の測定結果を示している。
【
図26】
図26は、カーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の測定結果を示している。
【
図27】
図27は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図28】
図28は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図29】
図29は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図30】
図30は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図31】
図31は、カーブチー陳皮エキスのABTSラジカル消去活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図32】
図32は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図33】
図33は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図34】
図34は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図35】
図35は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図36】
図36は、カーブチー陳皮エキスのSOD阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図37】
図37は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図38】
図38は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図39】
図39は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図40】
図40は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図41】
図41は、カーブチー陳皮エキスのエラスターゼ阻害活性の時間依存性の測定結果を示している。
【
図42】
図42は、カーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類(PMFs)の含有量、各種機能性の溶媒濃度依存性、温度依存性、時間依存性の優位性を示している。
【
図43】
図43は、ポリメトキシフラボノイド標準品のSOD阻害活性、ABTSラジカル消去活性、及びエラスターゼ阻害活性の測定結果を示している。
【
図44】
図44は、カーブチー陳皮エキスの安全性試験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0021】
なお、本願明細書において、数値範囲を表す「A~B」とは「A以上B以下」であることを意味する。
【0022】
[1.抗酸化用組成物]
本発明は、抗酸化用組成物に関する。抗酸化用組成物とは、抗酸化活性を有する物質を含む組成物である。本発明に係る抗酸化用組成物は、カーブチー果皮抽出物であるポリメトキシフラボノイドを有効成分として有する。カーブチー果皮から抽出されたポリメトキシフラボノイドには、主に以下の成分が含まれる。
(A)シネンセチン (又はその薬学的に許容される塩)
(B)イソシネンセチン (又はその薬学的に許容される塩)
(C)ノビレチン (又はその薬学的に許容される塩)
(D)ヘプタメトキシフラボン (又はその薬学的に許容される塩)
(E)ナツダイダイン (又はその薬学的に許容される塩)
(F)タンゲレチン (又はその薬学的に許容される塩)
本発明に係る抗酸化用組成物は、上記成分(A)~(F)及びこれらの薬学的に許容される塩が、0.01~1wt%で含まれていればよい。抗酸化用組成物には、抗酸化作用が失われない範囲において他の成分を添加することが可能である。これらの各成分が全てバランス良く含有されていることがカーブチー果皮の特徴の一つである。
【0023】
上記成分(A)~(F)は、いずれも柑橘類フラボノイドの一種であり、カーブチー果皮から抽出又は単離することができる。化粧品又は医薬部外品に用いることができるエタノール又はブチレングリコールを抽出溶媒としてカーブチー果皮の抽出を行うと、後述する実施例で示されるように、その抽出物中における各成分の含有量は通常以下の順で多く含まれる。
1.タンゲレチン
2.ノビレチン
3.ヘプタメトキシフラボン
4.ナツダイダイン
5.シネンセチン
6.イソシネンセチン
なお、ナツダイダインとシネンセチン、イソシネンセチンの抽出物における含有量の差は微差であり、その順位は逆転することもある。タンゲレチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボンの順位
は基本的には上記のとおりである。
【0024】
より具体的に説明すると、上記成分(A)~(F)の総量を100%とした場合に、各成分の比率(重量比)は以下の通りである。
タンゲレチン: 40~60% 又は 50~60%
ノビレチン: 25~50% 又は 30~40%
ヘプタメトキシフラボン: 3~12% 又は 5~10%
ナツダイダイン: 0.5~8% 又は 1~5%
シネンセチン: 0.5~8% 又は 1~5%
イソシネンセチン: 0.5~8% 又は 1~5%
【0025】
また、最も含有量が多いタンゲレチンの含有量を基準(100%)とした場合に、タンゲレチンに対するその他の成分の比率(重量比)は以下の通りである。
ノビレチン: 55~99% 又は 60~75%
ヘプタメトキシフラボン: 8~25% 又は 10~20%
ナツダイダイン: 1~10% 又は 2~8%
シネンセチン: 1~10% 又は 2~8%
イソシネンセチン: 1~10% 又は 2~8%
【0026】
なお、カーブチー果皮抽出物には、上記成分(A)~(F)に加えて、それらの薬学的に許容される塩が含まれていてもよい。薬学的に許容される塩の例は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、塩酸塩、及び硫酸塩である。
【0027】
抗酸化用組成物は、カーブチー果皮抽出物の他に溶媒を含んでもよい。溶媒の例は、水、アルコール、及びアルコール水溶液である。アルコールの好ましい例は、エタノール及びブチレングリコールである。ブチレングリコールとしては、特に1,3-ブチレングリコールを用いることが好ましい。その他、溶媒としては、化粧品等において保湿剤として持ちられる多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールの例は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン-3、ポリグリセリン-10、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、及びトレハロース等である。溶媒は、上記した1種のみを単独で使用してもよいし、
2種以上を組み合わせて使用してもよい。抗酸化用組成物における溶媒の含有量は適宜調整することができるが、例えば10~99%、30~99%、又は50~99%とすればよい。あるいは、抗酸化用組成物は、カーブチー果皮抽出物及び溶媒のみからなるものとし、カーブチー果皮抽出物の残余を溶媒とすることとしてもよい。
【0028】
抗酸化用組成物は、抗老化剤として用いることができる。抗老化剤とは、主に皮膚の老化を予防、防止、又は改善する作用を有する製剤である。より具体的には、抗酸化用組成物の抗酸化作用によって皮膚の老化を予防、防止、又は改善する。このため、抗老化剤は、皮膚老化防止用の化粧料又は医薬部外品として好適に用いられる。
【0029】
また、本発明に係る抗酸化用組成物は、後述の実施例で示されるように、SOD活性作用能、ラジカル消去能、及びエラスターゼ阻害能を有する。従って、抗酸化用組成物は、活性酸素阻害剤、ラジカル消去剤、及びエラスターゼ活性阻害剤として用いることができる。活性酸素阻害剤は、SOD(Superoxide dismutase)活性作用を持ち、皮膚又は体内に発生した活性酸素を除去し、シミやシワの改善を促す。ラジカル消去剤は、皮膚又は体内に発生した高い酸化力を持つフリーラジカルを消去する。消去し得るラジカルの例は、ABTSラジカル及びDPPHラジカルである。エラスターゼ活性阻害剤は、皮膚又は体内に発生したエラスチン分解酵素(エラスターゼ)を除去し、シワやたるみなど老化を防止する。
【0030】
抗酸化用組成物は、カーブチー果皮抽出物をそのまま使用してもよいが、カーブチー果皮抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品や医薬部外品に用いられる成分を適宜添加することができる。このような成分の例は、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、及び皮膜剤である。
【0031】
本発明に係る抗酸化用組成物は、主に皮膚外用剤の用途において、化粧品又は医薬部外品に配合することができる。化粧品と医薬部外品の剤型の例は、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、及びパップ剤である。その他、本発明に係る抗酸化用組成物は、例えば、石鹸、ボディーソープ、洗顔剤、シャンプー、リンス、トリートメント、及び歯磨き粉にも配合可能である。
【0032】
[2.抗酸化用組成物の製造方法]
続いて、
図1を参照して、抗酸化用組成物の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る製造方法は、洗浄・乾燥工程(ステップS1)、粉砕工程(ステップS2)、抽出工程(ステップS3)、溶媒置換工程(ステップS
4)、澱出し工程(ステップS5)、濃度調整工程(ステップS6)、及び滅菌ろ過工程(ステップS7)をこの順で含む。以下、各工程について説明する。
【0033】
洗浄・乾燥工程(ステップS1)は、原料素材であるカーブチー果実から取り出した果皮を洗浄し、その後に乾燥させる工程である。洗浄や乾燥の方法は問わないが、果皮の成分を劣化させない方法であることが好ましく、例えば超音波や熱を与えない方法を採用するとよい。例えば、原料素材であるカーブチー果実をそのまま搾汁して残渣を得て、この残渣からカーブチー果皮を分離する。分離したカーブチー果皮を水や次亜塩素酸水で洗浄し、その後、例えば真空乾燥機を用いて30~50℃(好ましくは40℃)で低温減圧乾燥することでカーブチー乾燥果皮を得ることができる。また、例えば、カーブチー果実から果皮を剥離し、この果皮を水や次亜塩素酸水で洗浄した後、ザルや干網の上に置いて2
~3日間天日干しにすることとしてもよい。本願明細書においては、乾燥させた果皮を「陳皮」ともいう。
【0034】
粉砕工程(ステップS2)は、カーブチー陳皮(乾燥果皮)を粉砕する工程である。粉砕方法は問わないが、果皮の成分を劣化させないよう短時間で粉末化できる方法を採用することが好ましい。例えば、カーブチー陳皮の粉砕には、食料品の粉砕加工で用いられている公知の粉砕機を用いればよい。また、粉砕後の陳皮は、1.0mm以下にふるい分けすると良い。ふるい分けとは、粉砕された陳皮の粒子を網の目開きより大きい粒子と小さい粒子に分離する操作である。陳皮粒子を1.0mm以下にふるい分けするには、目開きが1.0mmの網を用いて、この網を通過した陳皮粒子を回収すればよい。なお、回収した陳皮粒子は、その平均粒子径が1.0mm以下となる。平均粒子径の測定方法は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD-2200)にて測定し、個数%により割合を算出する。カーブチー陳皮の粉砕及びふるい分けは、酸化や光による劣化を避けるために後述する抽出工程の直前(具体的には1時間以内)に行うことが好ましい。また、カーブチー陳皮の粉砕後、1時間以上保管が必要となる場合には、酸化や光による劣化が生じないように密封遮光容器にて保管すればよい。
【0035】
抽出工程(ステップS3)は、抽出溶媒を用いてカーブチー陳皮粒子からポリメトキシフラボノイドを含む成分を抽出する工程である。抽出溶媒としては、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又はそれらの水溶液を用いることが好ましい。特に、30~100vol%(体積%)のエタノール水溶液又は30~100vol%の1,3-ブチレングリコール水溶液を用いることが好ましい。抽出条件としては、例えば、カーブチー陳皮粒子を15~85℃の抽出溶媒に浸漬させた後、緩やかに撹拌しながら、大気圧下(約1013hPa)にて2~24時間抽出すればよい。抽出後の溶液をろ過して抽出残渣を分離することにより、抽出溶媒とカーブチー陳皮粒子からの抽出物を含む抽出液が得られる。抽出工程後の一度目のろ過は、例えば目の大きさが1~10μmのろ紙又はろ過用フィルターを用いて行えばよい。
【0036】
溶媒置換工程(ステップS4)は、抽出工程で得られた抽出液に含まれる抽出溶媒を別の溶媒に置換する工程である。具体的には、まず、エバポレータ等を用いて抽出工程で得られた抽出液を減圧蒸留し、この抽出液から抽出溶媒を除去する。このようにして抽出液から抽出溶媒を取り除くと、カーブチー陳皮エキスの構成成分が残る。このカーブチー陳皮エキスの構成成分を乾固させた後、この構成成分を溶媒によって再度溶解させる。このとき用いられる溶媒は、前述した抽出溶媒と同様に、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又はそれらの水溶液を用いることが好ましい。特に、30~100vol%のエタノール水溶液又は30~100vol%の1,3-ブチレングリコール水溶液を用いることが好ましい。これにより、溶媒置換溶液が得られる。
【0037】
澱出し工程(ステップS5)は、上記の溶媒置換溶液から不溶成分(澱)を取り除く工程である。具体的には、まず、溶媒置換溶液を、1~10℃、より好ましくは1~5℃に冷却し、6~10時間静置して、不溶成分を析出させる。その後、このカーブチー陳皮エキスを第1のメンブレンフィルタにて吸引ろ過し、不溶成分を取り除いたろ液を得る。また、このろ液を、再度、1~10℃、より好ましくは1~5℃で6~10時間静置して、不溶成分を析出させる。その後、このろ液を第2のメンブレンフィルタにて吸引ろ過し、さらに不溶成分を取り除く。この第2のメンブレンフィルタによるろ過処理は、2回以上行うことが好ましい。ここで、第2のメンブレンフィルタは、第1のメンブレンフィルタよりも目が細かいものが用いられる。例えば、第2のメンブレンフィルタの目は、第1のメンブレンフィルタの半分以下であることが好ましい。具体的には、第1のメンブレンフィルタとしては、例えば目の大きさが0.3~0.6μmのものを用いると良い。また、第2のメンブレンフィルタとしては、例えば目の大きさが0.15~0.3μmのものを用いると良い。
【0038】
濃度調整工程(ステップS6)は、澱出し処理後の溶液の固形分濃度が所定量となるように調整する工程である。具体的には、澱出し処理後の溶液の固形分濃度を測定し、その固形分濃度が所定量となるように、溶媒置換工程(ステップS4)にて用いた溶媒と同じ溶媒を添加すればよい。例えば、溶媒置換工程にて、30vol%の1,3-ブチレングリコール水溶液を用いた場合、同じ水溶液にて溶媒置換溶液の固形分の濃度調整を行えばよい。ここにいう固形分とは、カーブチー果皮由来のポリメトキシフラボノイドであり、より具体的には、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチンである。このようにして、カーブチー陳皮エキスが得られる。ただし、カーブチー陳皮エキスの固形分濃度を調整するにあたり、必ずしも溶媒置換工程と同じ溶媒を用いる必要はなく、別種の溶媒にてカーブチー陳皮エキスを調整することもできる。また、固形分濃度の所定量は、特に限定されないが、カーブチー果皮の抗酸化作用や、抗老化作用、活性酸素阻害作用、ラジカル消去作用、エラスターゼ活性阻害作用が適切に発揮され、かつ安定性及び安全性を担保できる濃度に設定すればよい。具体的には、カーブチー陳皮エキスおける固形分濃度は、0.01wt%以上であることが好ましく、0.0
3wt%以上又は0.05wt%以上であることが特に好ましい。また、カーブチー陳皮エキスおける固形分濃度の上限値は、2wt%以下とすることが好ましく、1wt%以下とすることが特に好ましい。
【0039】
滅菌ろ過工程(ステップS7)は、前述の濃度調整工程を経たカーブチー陳皮エキスを滅菌ろ過して、滅菌済み容器に充填する工程である。例えば、カーブチー陳皮エキスは、目の大きさが0.22um以下のメンブレンフィルタで滅菌ろ過処理を行い、滅菌済み容器に充填すればよい。滅菌ろ過工程は、クリーンルームやクリーンベンチ内など清潔な環境下で行われる。
【実施例0040】
続いて、実施例及び比較例を参照して、本発明に係るカーブチー陳皮エキス及びその製造方法についてより具体的に説明を行う。
【0041】
[実施例1]
実施例1では、カーブチー果実を搾汁し、その搾汁残渣から分離した果皮を原料素材として用いた。このカーブチー果皮を次亜塩素酸水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて40℃で低温減圧乾燥することでカーブチー乾燥果皮(陳皮)を得た。カーブチー乾燥果皮は破砕機で粉砕し、1.0mm以下でふるい分けした粉末を用いた。原料素材の劣化を防ぐため上記粉砕は抽出の直前に行った。カーブチー乾燥果皮粉末10gに50vol%エタノール水溶液を100mLを加え、攪拌しながら20℃の室温(液温15℃)で24時間の抽出を行った。その後、7μmろ紙を用いて吸引ろ過し、抽出液と抽出残渣を分離した。次に、抽出液をエバポレータを用いて40℃で蒸発乾固させた。さらに真空乾燥器を用いて、抽出液を40℃、一晩(12時間)で減圧乾燥し、エタノール水溶液を完全に揮発させ、カーブチー陳皮エキスの構成成分を得た。この構成成分に30wt%1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて再溶解し、構成成分の濃度が重量比で1.6wt%になるように調整した。その後、この水溶液を4℃で、一晩(12時間)静置して不溶性分を析出・沈殿させ、0.45μmメンブレンフィルタにて吸引ろ過して分離した。ここで得られたろ液に対しては、4℃で、一晩(12時間)静置した後に0.22μmメンブレンフィルタで吸引ろ過する処理を2回繰り返し行った。最終的に固形分濃度が1.0wt%になるように30wt%1,3-ブチレングリコール水溶液で濃度を調整した後、クリーンベンチ内で滅菌ろ過を行い、滅菌済み容器に充填した。このようにしてカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0042】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の抽出時間を24時間から2時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0043】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の抽出時間を24時間から4時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0044】
[実施例4]
実施例4では、実施例1の抽出時間を24時間から48時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0045】
[実施例5]
実施例5では、実施例1の抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から1時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0046】
[実施例6]
実施例6では、実施例1の抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0047】
[実施例7]
実施例7では、実施例1の抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から4時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0048】
[実施例8]
実施例8では、実施例1の抽出温度を室温(液温15℃)から80℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0049】
[実施例9]
実施例9では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を30vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0050】
[実施例10]
実施例10では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出時間を24時間から2時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0051】
[実施例11]
実施例11では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から1時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0052】
[実施例12]
実施例12では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0053】
[実施例13]
実施例13では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から4時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0054】
[実施例14]
実施例14では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から78℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0055】
[実施例15]
実施例15では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出時間を24時間から2時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0056】
[実施例16]
実施例16では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から1時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0057】
[実施例17]
実施例17では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0058】
[実施例18]
実施例18では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から4時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0059】
[実施例19]
実施例19では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%エタノール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から77℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0060】
[実施例20]
実施例20では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を30vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0061】
[実施例21]
実施例21では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を50vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0062】
[実施例22]
実施例22では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を75vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0063】
[実施例23]
実施例23では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出時間を24時間から2時間に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0064】
[実施例24]
実施例24では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0065】
[実施例25]
実施例25では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から80℃、抽出時間を24時間から1時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0066】
[実施例26]
実施例26では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から80℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0067】
[実施例27]
実施例27では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を100vol%1,3-ブチレングリコール水溶液に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から80℃、抽出時間を24時間から4時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0068】
[実施例28]
実施例28では、実施例1の抽出溶媒(50vol%エタノール水溶液)を純水に変更するとともに、抽出温度を室温(液温15℃)から50℃、抽出時間を24時間から2時間にそれぞれ変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。
【0069】
[実施例29]
実施例29では、実施例1における0.22μmメンブレンフィルタによる吸引ろ過の処理回数を2回から1回に変更し、それ以外は実施例1と同じ手順でカーブチー陳皮エキスを製造した。なお、実施例29の抽出率とポリメトキシフラボノイド類の含有量は実施例1と同じある。
【0070】
[比較例1]
比較例1では、温州ミカン果皮由来の陳皮エキスとして市販のウンシュウミカンエキス(丸善製薬株式会社:チンピ抽出液BG)を用いた。
【0071】
[比較例2]
比較例2では、シークワーサー果皮由来の陳皮エキスとして市販のシークワーサーエキス(日油株式会社:シークワーサーエキスBG)を用いた。
【0072】
[試験方法]
上記した実施例及び比較例について、以下に示す方法にて、成分分析、機能性試験、安定性試験、及び安全性試験を行った。
【0073】
[1.抽出率]
実施例1~28及び比較例1、2に係る各エキス中の固形分を、以下の手順で重量測定した。蒸発皿にエキスを2g入れ、105℃のホットプレート上で乾固した後、真空乾燥器を用いて105℃で減圧乾燥した後、精密天秤で重量測定を行った。重量変化がなくなるまで測定を繰り返し、固形分量を決定した。この固形分量から次式を用いて抽出率を決定した。
【0074】
[2.成分分析方法]
(ポリメトキシフラボノイド類の定量分析)
実施例1~27及び比較例1、2に係る各エキス中のポリメトキシフラボノイド類の総量を、高速液体クロマトグラフィ法(HPLC法)により、以下の測定条件にて測定した。ポリメトキシフラボノイドとしては、シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチンの定量を行った。
<測定条件>
・HPLC装置:NexeraX2(株式会社島津製作所)
・カラム:YMC-PackODS-AM(Φ4.6×150mm,5μm)
・カラム温度:30℃
・グラジエント条件:
0-10min;MeOH:水=50:50
10-35min;MeOH:水=50-98:50-2
35-40min;MeOH:水=98:2
40-50min;MeOH:水=50:50
・流速:1.0mL/min
・注入量:10μL
・検出:330nm(タンゲレチン以外)、367nm(タンゲレチン)
【0075】
[3.機能性試験方法]
カーブチー陳皮エキスおよびポリメトキシフラボノイド標準品(シネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、タンゲレチン)の抗酸化活性としてABTSラジカル消去活性及びSOD阻害活性を測定した。また抗老化活性としてエラスターゼ阻害活性を測定した。各機能性の測定方法は以下の通りである。
【0076】
(ABTSラジカル消去活性)
実施例及び比較例に係る各エキスとポリメトキシフラボノイド標準品のABTSラジカル消去活性をABTSラジカル消去試験によって測定した。検体とABTSラジカル溶液を反応(37℃,4min)させ、溶液の吸光度(734nm)をプレートリーダーにより測定した。ポリメトキシフラボノイド標準品についてはIC50(50%阻害濃度,50%Inhibitoryactivity)を決定した。
【0077】
(SOD阻害活性)
実施例及び比較例に係る各エキスとポリメトキシフラボノイド標準品のSOD阻害活性を「SODAssayKit-WST」(同仁化学研究所)を用いて測定した。検体と試薬を反応(37℃,20min)させ、溶液の吸光度(450nm)をプレートリーダーにより測定した。ポリメトキシフラボノイド標準品についてはIC50(50%阻害濃度,50%Inhibitoryactivity)を決定した。
【0078】
(エラスターゼ阻害活性)
実施例及び比較例に係る各エキスとポリメトキシフラボノイド標準品のエラスターゼ阻害活性をエラスターゼ阻害試験によって測定した。ヒト由来線維芽細胞の粗酵素液を検体および擬似エラスターゼ基質(Glutaryl-Ala-Phe-4-methoxy-β-nephthylamide)と反応させ、基質分解生成物(4-methoxy-β-nephthylamine)の蛍光を測定(励起波長340nm,蛍光波長425nm)し、エラスターゼ阻害活性を算出した。ポリメトキシフラボノイド標準品についてはIC50(50%阻害濃度,50%Inhibitoryactivity)を決定した。
【0079】
[4.安定性試験方法]
実施例1と実施例29に係るカーブチー陳皮エキスについて安定性試験を行った。各カーブチー陳皮エキスを30mLのガラス容器に入れ、温度が一定に保たれた室内(20℃)や恒温槽(5℃、40℃、50℃、-10℃~20℃サイクル、30℃で蛍光灯照射)に静置して、3か月間の経時変化を目視にて確認した。
【0080】
[5.安全性試験]
実施例1(50%EtOH,RT,24h)、実施例16(100%EtOH,50℃,2h)及び実施例25(100%BG、80℃、2h)に係るカーブチー陳皮エキスについて、皮膚への安全性を確認するために、in vitro皮膚感作性試験を行った。
【0081】
[結果及び考察]
実施例1~28及び比較例1,2に係る各エキスの抽出率とポリメトキシフラボノイド類の定量結果を
図2に示す。実施例1~28に係るカーブチー陳皮エキスは、いずれもポリメトキシフラボノイド類のナツダイダイン、ヘプタメトキシフラボン、イソシネンセチン、シネンセチン、ノビレチン、及びタンゲレチンが確認でき、その総量はおよそ150~1500mg/Lであった。既存品(比較例1、2)との比較において、比較例1に対しては優位性が確認できた。一方、比較例2のポリメトキシフラボノイド類の総量はおよそ500mg/Lと豊富に含まれていたが、ヘプタメトキシフラボンがほぼ検出されず、ヘプタメトキシフラボンが持つ薬理効果が発揮されない可能性が示唆された。
【0082】
これらの結果を用いてカーブチー陳皮エキスの抽出率、ポリメトキシフラボノイド類の含有量、機能性(ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性)のそれぞれについて、溶媒濃度、抽出温度、抽出時間の影響を考察した。また、本発明の実施例について安定性と安全性の試験も行った。
【0083】
1.溶媒濃度依存性
実施例6、9、12、17、20、21、22、24、28に係る各エキスの抽出率とポリメトキシフラボノイドの定量結果を使い、抽出率とポリメトキシフラボノド類の含有量、機能性(ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性)の溶媒濃度依存性を調べた。
【0084】
[1.抽出率]
図3にカーブチー陳皮抽出における抽出率の溶媒濃度依存性を示す。1,3-ブチレングリコールとエタノールのいずれの抽出溶媒においても溶媒濃度とともに抽出率は増加したが100vol%で大きく減少した。
【0085】
[2.ポリメトキシフラボノイド類の含有量]
図4にカーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の溶媒濃度依存性を示す。これは1,3-ブチレングリコールとエタノールのいずれの抽出溶媒においても溶媒濃度とともにポリメトキシフラボノイド類の含有量は増加し、100vol%が最大となった。既存品(比較例1、2)との比較において、比較例1に対してはいずれのエキスでも優位性が確認できた。一方、比較例2に対しては100vol%の1,3-ブチレングリコールとエタノールによるエキスに優位性があることが確認できた。
【0086】
[3.機能性試験結果]
(ABTSラジカル消去活性)
図5に1,3-ブチレングリコール抽出におけるABTSラジカル消去活性の溶媒濃度依存性を示す。50vol%と75vol%のエキスは既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。
【0087】
図6にエタノール抽出におけるABTSラジカル消去活性の溶媒濃度依存性を示す。既存品(比較例1,2)との比較において、比較例1に対してはいずれの濃度においても優位性が確認できた。一方、比較例2に対していずれのエキスも同様の傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられた。
【0088】
(SOD阻害活性)
図7に1,3-ブチレングリコール抽出におけるSOD阻害活性の溶媒濃度依存性を示す。溶媒濃度50~100vol%のエキスが既存品(比較例1、2)より急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。特に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出によるエキスは優れたSOD阻害活性を持っていた。
【0089】
図8にエタノール抽出におけるSOD阻害活性の溶媒濃度依存性を示す。溶媒濃度50~100vol%のエキスが既存品(比較例1、2)より急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。特に100vol%エタノール抽出によるエキスは優れたSOD阻害活性を持っていた。
【0090】
(エラスターゼ阻害活性)
図9に1,3-ブチレングリコール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の溶媒濃度依存性を示す。溶媒濃度100vol%のエキスが既存品(比較例1、2)より急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0091】
図10にエタノール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の溶媒濃度依存性を示す。溶媒濃度50~100vol%のエキスが既存品(比較例1、2)より急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。特に100vol%エタノール抽出によるエキスは優れたエラスターゼ阻害活性を持っていた。
【0092】
以上の結果より、1,3-ブチレングリコール抽出は、100vol%がポリメトキシフラボノイド類の含有量が高く、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性に優れていた。またエタノール抽出は、50~100vol%がポリメトキシフラボノイド類の含有量が高く、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性に優れていた。
【0093】
2.温度依存性
実施例2、6、8、10、12、14、15、17、19、23、24、26に係る各エキスの抽出率とポリメトキシフラボノイドの定量結果を使い、抽出率とポリメトキシフラボノド類の含有量、機能性(ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性)の温度依存性を調べた。
【0094】
[1.抽出率]
図11にカーブチー陳皮抽出における抽出率の温度依存性を示す。100vol%1,3-ブチレングリコールと100vol%エタノールはいずれも抽出温度とともに抽出率は増加し、80℃が最大となった。50vol%エタノールおよび75vol%エタノールは抽出温度による抽出率の変化はほぼなかった。
【0095】
[2.ポリメトキシフラボノイド類の含有量]
図12にカーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の温度依存性を示す。100vol%1,3-ブチレングリコールと100vol%エタノールはいずれも温度とともにポリメトキシフラボノイド類の含有量が減少した。これは温度とともに抽出率が増加したことで固形分あたりのポリメトキシフラボノイド類の割合が減少したためと考えられる。50vol%エタノール、75vol%エタノールはいずれも温度によるポリメトキシフラボノイド類の含有量の変化はほぼなかった。既存品(比較例1、2)との比較において、いずれのエキスでも比較例1に対しては優位性が確認できた。一方、比較例2に対しては100vol%1,3-ブチレングリコールと100vol%エタノールはいずれも50℃以下で抽出したエキスに優位性が確認できた。
【0096】
[3.機能性試験結果]
(ABTSラジカル消去活性)
図13に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出におけるABTSラジカル消去活性の温度依存性を示す。室温抽出のエキスが既存品(比較例1、2)より急な傾きを持った曲線であり、優位性が確認できた。他のエキスは既存品と同様の傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられた。
【0097】
図14に50vol%エタノール抽出におけるABTSラジカル消去活性の温度依存性を示す。比較例1に対してはいずれの濃度においても優位性が確認できた。一方、比較例2に対していずれのエキスも同様の傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられた。
【0098】
図15に75vol%エタノール抽出におけるABTSラジカル消去活性の温度依存性を示す。80℃抽出のエキスが既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。他のエキスは既存品と同様の傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられた。
【0099】
図16に100vol%エタノール抽出におけるABTSラジカル消去活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)に近い曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられる。
【0100】
(SOD阻害活性)
図17に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出におけるSOD阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。このことから100vol%1,3-ブチレングリコール抽出においては室温以上の抽出でSOD阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0101】
図18に50vol%エタノール抽出におけるSOD阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。このことから50vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でSOD阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0102】
図19に75vol%エタノール抽出におけるSOD阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。このことから75vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でSOD阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0103】
図20に100vol%エタノール抽出におけるSOD阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。このことから100vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でSOD阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0104】
(エラスターゼ阻害活性)
図21に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。このことから100vol%1,3-ブチレングリコール抽出においては室温以上の抽出でエラスターゼ阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0105】
図22に50vol%エタノール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。このことから50vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でエラスターゼ阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0106】
図23に75vol%エタノール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。このことから75vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でエラスターゼ活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0107】
図24に100vol%エタノール抽出におけるエラスターゼ阻害活性の温度依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。このことから100vol%エタノール抽出においては室温以上の抽出でエラスターゼ阻害活性に優れたエキスが得られることが分かった。
【0108】
以上の結果より、いずれのエキスにおいてもポリメトキシフラボノイド含有量、ABTSラジカル消去活性は比較例1よりも優れており、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性は比較例1,2よりも優位性が確認できた。また100vol%1,3―ブチレングリコール抽出と100vol%エタノール抽出はポリメトキシフラボノイド含有量が比較例1,2よりも優れていた。
【0109】
3.時間依存性
実施例1~7、11~13、16~18、25~27に係る各エキスの抽出率とポリメトキシフラボノイドの定量結果を使い、抽出率とポリメトキシフラボノド類の含有量、機能性(ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性)の時間依存性を調べた。
【0110】
[1.抽出率]
図25にカーブチー陳皮抽出における抽出率の時間依存性を示す。100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)、50vol%エタノール抽出(50℃)、75vol%エタノール抽出(50℃)および100vol%エタノール抽出(50℃)はいずれも抽出時間による抽出率の変化はわずかだった。また50vol%エタノール抽出(R.T.)では2時間から48時間にかけて抽出率の変化はほぼなかった。
【0111】
[2.ポリメトキシフラボノイド類の含有量]
図26にカーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類の含有量の時間依存性を示す。100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)、50vol%エタノール抽出(R.T.)、50vol%エタノール抽出(50℃)、75vol%エタノール抽出(50℃)および100vol%エタノール抽出(50℃)のいずれにおいても抽出時間によるポリメトキシフラボノイド類の含有量の変化はわずかであった。このことからカーブチー陳皮からのポリメトキシフラボノイド類の抽出は1~2時間程度で完了できると考えられる。
【0112】
[3.機能性試験結果]
(ABTSラジカル消去活性)
図27に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)におけるABTSラジカル消去活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)と同様の傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性は同等であると考えられた。
【0113】
図28に50vol%エタノール抽出(R.T.)におけるABTSラジカル消去活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。
【0114】
図29に50vol%エタノール抽出(50℃)におけるABTSラジカル消去活性の時間依存性を示す。抽出時間1時間のエキスが既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。
【0115】
図30に75vol%エタノール抽出(50℃)におけるABTSラジカル消去活性の時間依存性を示す。抽出時間1時間のエキスが既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。
【0116】
図31に100vol%エタノール抽出(50℃)におけるABTSラジカル消去活性の時間依存性を示す。抽出時間1時間のエキスが既存品(比較例1、2)よりも急な傾きを持った曲線であり、ABTSラジカル消去活性に優位性が確認できた。
【0117】
(SOD阻害活性)
図32に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)におけるSOD阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。
【0118】
図33に50vol%エタノール抽出(R.T.)におけるSOD阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも傾きの大きい曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。
【0119】
図34に50vol%エタノール抽出(50℃)におけるSOD阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。
【0120】
図35に75vol%エタノール抽出(50℃)におけるSOD阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。
【0121】
図36に100vol%エタノール抽出(50℃)におけるSOD阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも傾きの大きい曲線であり、SOD阻害活性に優位性が確認できた。
【0122】
(エラスターゼ阻害活性)
図37に100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)におけるエラスターゼ阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0123】
図38に50vol%エタノール抽出(R.T.)におけるエラスターゼ阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも傾きの大きい曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0124】
図39に50vol%エタノール抽出(50℃)におけるエラスターゼ阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0125】
図40に75vol%エタノール抽出(50℃)におけるエラスターゼ阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりもやや傾きの大きい曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0126】
図41に100vol%エタノール抽出(50℃)におけるエラスターゼ阻害活性の時間依存性を示す。いずれのエキスも既存品(比較例1、2)よりも傾きの大きい曲線であり、エラスターゼ阻害活性に優位性が確認できた。
【0127】
以上の結果より、100vol%1,3-ブチレングリコール抽出(80℃)は、抽出時間1時間以上でポリメトキシフラボノイド含有量、ABTSラジカル消去活性が比較例2よりも優れており、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性は比較例1,2よりも優位性が確認できた。50vol%エタノール抽出(室温)は、抽出時間2時間以上でポリメトキシフラボノイド含有量、ABTSラジカル消去活性が比較例1よりも優れており、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性は比較例1,2よりも優位性が確認できた。また抽出率4時間以上ではABTSラジカル消去活性も比較例1,2よりも優れていた。50vol%および75vol%エタノール抽出(50℃)は、抽出時間1時間でポリメトキシフラボノイド含有量が比較例1よりも優れており、ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性は比較例1,2よりも優位性が確認できた。100vol%エタノール抽出(50℃)は、抽出時間1時間でポリメトキシフラボノイド含有量、ABTSラジカル消去活性、SOD阻害活性、エラスターゼ阻害活性がいずれも比較例1,2よりも優れていた。
【0128】
カーブチー陳皮エキスのポリメトキシフラボノイド類(PMFs)の含有量、各種機能性溶媒の濃度依存性、温度依存性、時間依存性における優位性結果一覧を
図42に示す。
【0129】
ポリメトキシフラボノイド類であるシネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチンの標準品を用いて機能性試験を行った。機能性試験の結果を
図43に示す。SOD阻害活性のIC50は、ヘプタメトキシフラボンとノビレチンが低く、活性が高いことから、これらのヘプタメトキシフラボンとノビレチンがSOD阻害活性寄与成分であると考えられる。なお、ナツダイダイン、タンゲレチンは試薬に溶解せず、SOD阻害活性を測定することができなかった。ABTSラジカル消去活性のIC50は、ナツダイダインが低く、活性が高いことから、このナツダイダインがABTSラジカル消去活性寄与成分であると考えられる。またエラスターゼ阻害活性のIC50は、シネンセチンとノビレチンが低く、活性が高いことから、これらのシネンセチンとノビレチンがエラスターゼ阻害活性の活性寄与成分であると考えられる。
【0130】
以上の結果から、カーブチー陳皮エキスは、カーブチー果皮に含有されるポリメトキシフラボノイド類のシネンセチン、イソシネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、ナツダイダイン、及びタンゲレチンといった成分を全て含有することによって、SOD阻害活性、ABTSラジカル消去活性、及びエラスターゼ阻害活性の機能性を有すると考えられる。従って、本発明に係るカーブチー陳皮エキスは、抗酸化用組成物の用途で用いることができる。より具体的には、カーブチー陳皮エキスは、抗老化剤、活性酸素阻害剤、ラジカル消去剤、及びエラスターゼ活性阻害剤の用途で用いることができる。
【0131】
4.安定性試験結果
実施例1と実施例29に係るカーブチー陳皮エキスについて安定性試験を行った。実施例1は0.22μmメンブレンフィルタによる吸引ろ過の処理回数を2回としたものであり、実施例29は0.22μmメンブレンフィルタによる吸引ろ過の処理回数を1回としたものである。それ以外の手順は実施例1と実施例13は同じである。実施例29はいずれの条件(5℃、室温、40℃、50℃、-10℃~20℃サイクル、30℃蛍光灯照射)においても1週間経過時点で白い結晶のような沈殿が生じた。一方で、実施例1は、2か月経過以降でも実施例29のような沈殿が生じることはなく、安定していた。したがって、抽出成分の分離・精製手段として、カーブチー抽出成分を0.22μm以下のメンブレンフィルタ又はろ紙を用いて少なくとも2回以上ろ過することによって、カーブチー陳皮エキスの安定性を確実に担保することができる。ただし、エキスの安定性は別の公知の方法でも担保可能であることから、実施例29についても本発明の一実施例として採用し得る。
【0132】
5.安全性試験結果
実施例1、16、25に係るカーブチー陳皮エキスについてin vitro皮膚感作性試験を行った。試験結果を
図44に示す。実施例1と実施例16は、カーブチー陳皮エキスをそれぞれ、原液、2倍希釈、10倍に希釈したものを用いた。それぞれの固形分濃度は、1.0wt%(原液)、0.5wt%(2倍希釈)、0.1wt%(10倍希釈)である。実施例25は、カーブチー陳皮エキスの固形分濃度を0.3wt%、0.1wt%に調整したものを用いた。実施例1のカーブチー陳皮エキスはいずれの濃度でも陰性であり、安全なカーブチー陳皮エキスであることが確認できた。実施例16と実施例25のカーブチー陳皮エキスは固形分濃度を0.1wt%に調整したものが陰性であり、濃度調整することにより安全なカーブチー陳皮エキスが得られることが確認できた。実施例16は100vol%エタノール水溶液を抽出溶媒として用いたものであり、実施例25は100vol%1,3-ブチレングリコールを抽出溶媒として用いたものであるが、これらの100%濃度の溶媒であっても濃度調整により安全性を確保できることから、その他の実施例についても、少なくとも濃度調整により安全性を確保できるといえる。また、実施例28は抽出溶媒として純水を用いていることから、試験を行うまでもなく安全であるといえる。これらの結果から、カーブチー陳皮エキスは、主に皮膚外用剤の用途において、化粧品又は医薬部外品に配合できる程度に十分な安全性を有しているものと認められる。