(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066508
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ハウス用遮光ネット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/22 20060101AFI20240508BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20240508BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A01G9/22
A01G9/24
A01G13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186333
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022174306
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392002918
【氏名又は名称】日本ワイドクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 泰三
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
【Fターム(参考)】
2B024DA03
2B024DB04
2B024DB07
2B024DC03
2B029BB03
2B029BB06
2B029EB01
2B029EB03
2B029EB08
2B029EB22
2B029LA01
2B029RA01
2B029RA02
2B029RB06
(57)【要約】
【課題】棟木の位置にフィルム押さえのような固定部分がない既存のパイプハウスに対してもハウス用遮光ネットを後付けできるようにする。
【解決手段】アーチ型のパイプハウス12で遮光を行うシート状のハウス用遮光ネット11において、幅方向の中間点に長手方向の中間点が固定された線状体15を設ける。線状体15は複数設け、ハウス用遮光ネット11の幅方向と直交する長手方向に一定間隔で一直線に配設する。ハウス用遮光ネット11のパイプハウス12に対する装着に際しては、線状体15が表に出る向きにしてハウス用遮光ネット11をパイプハウス12の上にかぶせる。その後、幅方向の中間点がパイプハウス12の頂部に対応することになるように、左右に延びる線状体15を左右双方に引っ張って位置調整してその先端部をパイプハウス12の基礎部分に固定し、ハウス用遮光ネット11の幅方向中間点が位置決めされた装着状態を得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ型のハウスで遮光を行うシート状のハウス用遮光ネットであって、
ハウスの幅方向の中間点に対応する位置に固定される柔軟な線状体が設けられ、
前記線状体がハウスの幅方向に対応する両側に左右対称に延び得るものであるとともに、ハウスの奥行き方向に対応する方向に複数離間配置された
ハウス用遮光ネット。
【請求項2】
前記線状体の長手方向の中間点が固定された
請求項1に記載のハウス用遮光ネット。
【請求項3】
前記線状体が縫着によって固定された
請求項1または請求項2に記載のハウス用遮光ネット。
【請求項4】
前記線状体が、当該ハウス用遮光ネットに一体で帯状をなし、長手方向に沿って複数の挿通穴を有するシート材を介して固定された
請求項1または請求項2に記載のハウス用遮光ネット。
【請求項5】
目ずれ防止がなされたものである
請求項1または請求項2に記載のハウス用遮光ネット。
【請求項6】
アーチ型のハウスで遮光を行うシート状のハウス用遮光ネットであって、
ハウスの幅方向の中間点に対応する位置に、ハウスの幅方向に対応する両側に左右対称に延び得る柔軟な線状体が固定される固定部が設けられ、
前記固定部がハウスの奥行き方向に対応する方向に複数離間配置された
ハウス用遮光ネット。
【請求項7】
前記固定部が、当該ハウス用遮光ネットに一体に固定されて帯状をなすシート材にその長手方向に沿って配設された複数の挿通穴で構成された
請求項6に記載のハウス用遮光ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば農業用のビニルハウスに適用されるハウス用遮光ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーチ型をなすハウス、いわゆるパイプハウスに外張りの遮光ネットを巻き上げ可能に装着する場合は、遮光ネットの幅方向の中間点をハウスの幅方向の中間点(頂部)に固定し、幅方向の両端を巻き上げパイプに固定していた(例えば下記特許文献1、2)。
【0003】
ハウスの頂部に対応する遮光ネットの固定は、ハウスの頂部である棟木の位置においてビニルフィルムを押さえているフィルム押さえを利用しておこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5-43842号公報
【特許文献2】実開平4-92931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、必要な位置にフィルム押さえをもたないハウスが多い。このようなハウスの場合には、巻き上げ式の外張り遮光ネットを後付けできないので、ハウスの改造が必要であった。
【0006】
この発明は、棟木の位置にフィルム押さえがないハウスに対しても遮光ネットを後付けできるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段は、ハウスの幅方向の中間点に対応する位置に固定される柔軟な線状体が設けられ、線状体がハウスの幅方向に対応する両側に左右対称に延び得るものであるとともに、ハウスの奥行き方向に対応する方向に複数離間配置されたハウス用遮光ネットである。
【0008】
この構成では、ハウスのビニルフィルム上にハウス用遮光ネットを被せて、線状体をハウス用遮光ネットの上でハウスの幅方向両側に延ばして下方に引っ張る。線状体を左右双方で互いに引っ張って均衡を保ち、線状体を固定している部分がハウスの頂部で一直線に並ぶようにして、線状体の端部を固定する。ハウス用遮光ネットの幅方向の両端は巻き上げパイプに固定する。線状体はハウス用遮光ネットを位置決めするとともに、ハウス用遮光ネットと巻き上げパイプを上から押さえる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、複数の線状体が左右対称に延び得るように離間配置されているので、ハウスの頂部にフィルム押さえのような部材がない場合でも、所望の位置決めができる。このため、ハウスを改造せずともハウス用遮光ネットの後付けができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】ハウス用遮光ネットの他の使用例を示す断面図。
【
図6】ハウス用遮光ネットを連棟ハウスに使用する場合の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0012】
図1にハウス用遮光ネット11(以下、「遮光ネット」という。)の平面図を示す。遮光ネット11は、
図2に示したようにアーチ型のパイプハウス12で遮光をおこなうために巻き上げ可能に外張りされるものであって、パイプハウス12の構造にかかわりなく後付けできる構成である。なお、
図2において遮光ネット11の本体部分は便宜上、実線と同じ太さの破線であらわしている。
【0013】
遮光ネット11の本体部分は、
図1に示したように平面視長方形をなすシート状であり、経糸と緯糸を平織や絡み織りで織って構成されている。経糸と緯糸には、たとえばポリエチレンなどからなる合成樹脂製のフラットヤーンやモノフィラメント、マルチフィラメントなどが用いられ、所望の遮光率を有する網状に形成される。
【0014】
この遮光ネット11は目ずれ防止がなされている。具体的には、経糸と緯糸の少なくともいずれか一方に熱融着性の材料を使用して、織成後に熱融着して経糸と緯糸の交差部分を互いに融合させている。
【0015】
好ましくは
図3に示したように経糸13をフラットヤーン、緯糸14をモノフィラメントで構成した織物として、緯糸14には外周面に熱融着層(図示せず)を有する芯鞘構造のモノフィラメントを使用し、経糸13には熱融着性でないフラットヤーンを使用する。このように構成すると、フラットヤーンとして表両面に熱融着層を有するものを使用しなくてもよく、熱融着性の糸の使用量を低減できる。また、複数の遮光ネット11を溶着によってつなぐこともできる。
【0016】
遮光ネット11の大きさは、幅方向の長さWが、パイプハウス12の幅方向における被覆に必要な長さに設定され、長手方向の長さLが、パイプハウス12の奥行き方向の長さに対応する長さに設定される。
【0017】
そして、このような遮光ネット11には、パイプハウス12の幅方向の中間点に対応する位置に固定される柔軟な線状体15が設けられている。パイプハウス12の幅方向の中間点とは、アーチ型の頂部であって、換言すれば、備えられていれば棟木となる部材があるべき位置である。図示例の遮光ネット11は、左右均等に張設する構成としているので、線状体15の固定は遮光ネット11の幅方向の中間点になされる。図中、16が、線状体15を固定する固定部である。
【0018】
線状体15は、所望の引張強度があり結束もできるものであればよく、適宜のロープ等で構成できる。好ましくは、ある程度の幅を有する平紐状のものがよい。一例をあげれば、マイカ線(登録商標)が好適に使用できる。
【0019】
線状体15の長さは、遮光ネット11の幅方向の長さWよりも長く、パイプハウス12に被せたときに両端がパイプハウス12の基礎部分に達する長さに設定されている。そして線状体15の長手方向の中間点が遮光ネット11の幅方向の中間点に固定される。このため線状体15は、固定部16から幅方向両側に左右対称に延びることになる。固定部16での固定は、
図4の(a)に示したように縫着でおこなう。
【0020】
このような線状体15は複数備えられ、パイプハウス12の奥行き方向に対応する長手方向に一直線に並ぶように離間配置されている。線状体15の配設間隔は、パイプハウス12のアームパイプ12aの間隔に相当する一定間隔であるとよい。これは、パイプハウス12に対する装着時に線状体15がアームパイプ12aの間に位置することになるからである。
【0021】
図4の(b)には、線状体15の他の固定態様を例示している。すなわち、線状体15は、遮光ネット11の本体部分に一体で一定幅の帯状をなすシート材17を介して固定されている。シート材17は、合成樹脂製のモノフィラメントなどからなる織物で構成され、長手方向に沿って複数の挿通穴18を有している。挿通穴18は、シート材17の幅方向の中心線を挟む左右両側に左右一対ずつ形成され、長手方向に一定間隔で設けられている。
【0022】
このシート材17は、左右両側部が遮光ネット11の幅方向に中間点にその長手方向に沿って縫着される。線状体15は、左右一対の挿通穴18に挿通されて、長手方向で位置ずれしないようにシート材17に結び付けられる。
図4の(b)では、便宜上、結び目を×印を描いて図示を簡略化した。この例ではシート材17における左右一対の挿通穴18の間に対応する部分が固定部16となる。
【0023】
このような固定態様では、注文に応じて、また現場において、所望の間隔で線状体15を固定することができる。つまり、遮光ネット11に適宜の線状体15を後付けして遮光ネット11として使用に供するようにできる。換言すれば、シート材17が固定されているものの線状体15のない遮光ネット11を商流にのせて、必要時に線状体15を固定して使用してもらうことが可能である。
【0024】
以上のように構成された遮光ネット11は、次のようにしてパイプハウス12に取り付けられる。
【0025】
図1に示したように線状体15が表面に位置する姿勢にしたのち、遮光ネット11の長手方向をパイプハウス12の奥行き方向に対応させて、パイプハウス12のビニルフィルム12bの上にかぶせる。このとき、
図3に示したように幅方向の中間点、つまり固定部16をパイプハウス12の頂部に対応させて、頂部において奥行き方向に一直線に並べる。
【0026】
遮光ネット11の幅方向の両端を巻き上げ装置(図示せず)の巻き上げパイプ19に固定する一方で、自ずと左右両側に垂れる複数の線状体15を左右で互いに引っ張る。左右で均衡を得るように張力をかけて、遮光ネット11の幅方向の中間点にある固定部16がパイプハウス12の頂部で一直線に並ぶように調整しながら線状体15の先端部をパイプハウス12の基礎部分に固定する。これによって、遮光ネット11の幅方向の中間点はパイプハウス12の頂部に位置決めされる。線状体15は長手方向の中間点が遮光ネット11の本体部分に固定されているので、線状体15が引っ張られても遮光ネット11の本体部分に過大な張力がかかることはない。
【0027】
線状体15の固定は、線状体15ごとに設置面である地面に行うほか、パイプハウス12の基礎部分で奥行き方向に張ったワイヤやパイプに行うこともできる。
【0028】
遮光ネット11の位置決めをする線状体15は、一方で遮光ネット11と巻き上げパイプ19を上から押さえてこれらを規制するので、押さえのための手段を別途に設ける必要はない。
【0029】
このようにして装着できるので遮光ネット11は、幅方向の中間点を固定する部分がないパイプハウス12に対しても、パイプハウス12を改造することなく遮光ネット11を取り付けることができる。もちろん、遮光ネット11の幅方向の中間点を固定する部分が存在するパイプハウス12に対して適用させることもできる。
【0030】
遮光ネット11は目ずれ防止がなされているので、巻き上げたり広げたりしても引っ掛かりによる目ずれが軽減され、所定の遮光率を維持でき、良好な装着状態を維持できる。巻き上げ時のかさばりもなく開閉操作は円滑に行える。
【0031】
また線状体15は長手方向の中間点が固定される構造であるので、長手方向に配設される線状体は各1本でよく、効率よく製造できる。しかも、線状体15ははじめから遮光ネット11の幅方向に延びる構造であるので、パイプハウス12に対する装着に対しての位置調整が円滑である。
【0032】
線状体15は縫着によって固定されているので、充分な強度をもたせることができるとともに、様々な線状体15を使用できるという利点がある。
【0033】
線状体15が
図4の(b)に示したように、遮光ネット11に一体のシート材17を介して結束により固定される構成とした場合には、線状体15の無い状態で遮光ネット11の搬送や管理が行えるので、取扱い性がよいという利点がある。
【0034】
図5に、遮光ネット11の他の使用例を示す。先の例においては、線状体15が表面に位置する姿勢にしたのち(
図1参照)、遮光ネット11の長手方向をパイプハウス12の奥行き方向に対応させて、パイプハウス12のビニルフィルム12bの上にかぶせた(
図2参照)。これに対して
図5の例では、遮光ネット11を裏返して、つまり線状体15を内側にしてビニルフィルム12bの上に被覆する。固定部16をパイプハウス12の頂部に対応させて一直線に並べること、遮光ネット11の幅方向の両端を巻き上げ装置(図示せず)の巻き上げパイプ19に固定すること、左右両側に垂れる線状体15を左右で互いに引っ張って均衡をとることなどは、前述例と同じである。ただし、遮光ネット11を押さえるために、巻き上げ押さえバンド20を遮光ネット11の上から固定している。巻き上げ押さえバンド20には、線状体15に利用したマイカ線(登録商標)よりも幅広で柔らかいものが好適に使用される。
【0035】
このような使用例では、線状体15に至便なマイカ線(登録商標)を用いた場合でも、遮光ネット11の巻き上げ時における巻き上げ押さえバンド20のビニルフィルム12bに対する当たりを柔らかくできる。このため、遮光ネット11の開閉作業でビニルフィルム12bがパイプハウス12の肩部分において擦られて破れたりするのを抑制できる。
【0036】
図6は、パイプハウス12としての連棟ハウス22に対して使用する場合の線状体15の固定例を示す。
【0037】
前述例では、単棟ハウス(パイプハウス12)に遮光ネット11を適用することを説明し、線状体15の先端を設置面や基礎部分に固定することを示したが、連棟ハウス22の場合はハウス部分が谷部23を介して連続しているので、設置面や基礎部分がない。
【0038】
このような場合には、連棟ハウス22の谷部に備えられる谷樋24や谷樋24に固定された部材(金具)に線状体15の先端が固定される。谷樋24は谷部23に溜まる雨水やハウスのフィルム裏面に付着した結露水を流すための部材である。
【0039】
図6中、(a)は、谷樋24の斜面下部に設置したリングボルト(アイボルト)25に線状体15を固定した例である。(b)は、谷樋24に設置のリングボルト25に挿通保持した直管パイプ26に線状体15を固定した例である。(c)は、谷樋24の幅方向中間位置にUボルト27で保持した直管パイプ26に線状体15を固定した例である。これら以外の部材を用いたり、谷樋24の構造によっては谷樋24に直接固定したりすることも適宜おこなえる。
【0040】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、その他の構成を採用することもできる。
【0041】
たとえば、固定部16は遮光ネット11の幅方向の中間点に左右一対ずつ設けてもよく、線状体15の長手方向の端部を固定するものであってもよい。目ずれ防止された遮光ネット11は、引っ張られても所望の遮光率を維持できる。
【0042】
また線状体15は、はじめから遮光ネット11の幅方向に延びているものではなく、取付け時に左右方向に延びる態様になるものであってもよい。
【0043】
遮光ネット11が左右不均等に張設される場合には、遮光ネット11における固定部16の位置は、遮光ネット11の幅方向の中間点から一方に寄った位置となる。
【0044】
遮光ネット11は、適宜構成され、たとえばモノフィラメントやフラットヤーンからなる織物でも、熱融着性のフラットヤーンのみで構成された織物でもよい。
【符号の説明】
【0045】
11…ハウス用遮光ネット
12…パイプハウス
15…線状体
16…固定部
17…シート材
18…挿通穴