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特開2024-66509熱処理不要のダイカストアルミニウム合金、その製造方法及び自動車車体構造部品
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  • 特開-熱処理不要のダイカストアルミニウム合金、その製造方法及び自動車車体構造部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066509
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】熱処理不要のダイカストアルミニウム合金、その製造方法及び自動車車体構造部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20240508BHJP
   C22F 1/043 20060101ALI20240508BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240508BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20240508BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
C22C21/02
C22F1/043
B22D17/32 A
B22D17/32 B
B22D17/22 D
C22F1/00 611
C22F1/00 630A
C22F1/00 630B
C22F1/00 630K
C22F1/00 631A
C22F1/00 681
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186392
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】202211350885.9
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522381085
【氏名又は名称】小米汽車科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ウ, シンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ドン
(72)【発明者】
【氏名】バイ, ヨンチャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は熱処理不要のダイカストアルミニウム合金、製造方法及びその応用を提供する。
【解決手段】ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~1.2重量%のMg、0.4~0.58重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.6~0.75重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれる。本開示によって提供される熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の極限引張強度、降伏強度及び伸張破断率は、従来の自動車構造部品合金と比較して顕著に向上し、新エネルギー電気自動車車体の大型構造薄壁部品の生産に適合している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理不要のダイカストアルミニウム合金であって、
該ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、
6.0~8.0重量%のSi、
0.3~1.2重量%のMg、
0.4~0.58重量%のCu、
0.1~0.3重量%のFe、
0.6~0.8重量%のMn、
0.05~0.20重量%のTi、
0.03~0.07重量%のSr、
0.03~0.07重量%のCe、
0.01~0.04重量%のLa、
0.01~0.1重量%のZr、
0.01重量%以下の他の不純物元素、及び残部のAlが含まれる、ことを特徴とする熱処理不要のダイカストアルミニウム合金。
【請求項2】
前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、
6.0~8.0重量%のSi、
0.3~0.9重量%のMg、
0.4~0.58重量%のCu、
0.1~0.3重量%のFe、
0.65~0.75重量%のMn、
0.05~0.20重量%のTi、
0.03~0.07重量%のSr、
0.03~0.07重量%のCe、
0.01~0.04重量%のLa、
0.01~0.1重量%のZr、
0.01重量%以下の他の不純物元素、及び残部のAlが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項3】
前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、
6.0~8.0重量%のSi、
0.3~1.2重量%のMg、
0.4~0.58重量%のCu、
0.1~0.3重量%のFe、
0.6~0.75重量%のMn、
0.05~0.20重量%のTi、
0.03~0.07重量%のSr、
0.03~0.07重量%のCe、
0.01~0.04重量%のLa、
0.01~0.1重量%のZr、
0.01重量%以下の他の不純物元素、及び残部のAlが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項4】
前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、
6.0~8.0重量%のSi、
0.3~0.9重量%のMg、
0.4~0.58重量%のCu、
0.1~0.3重量%のFe、
0.65~0.69重量%のMn、
0.05~0.20重量%のTi、
0.03~0.07重量%のSr、
0.03~0.07重量%のCe、
0.01~0.04重量%のLa、
0.01~0.1重量%のZr、
0.01重量%以下の他の不純物元素、及び残部のAlが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項5】
前記ダイカストアルミニウム合金はSn元素をさらに含有し、
前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金に0.05~0.15重量%のSnが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項6】
前記ダイカストアルミニウム合金において、Sn元素とFe元素との質量比は1.0以下であり、Mn元素とFe元素との質量比は3.0以上であり、Ce元素とLa元素との質量比は2.0以上である、ことを特徴とする請求項5に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項7】
前記ダイカストアルミニウム合金の極限引張強度は300~350MPaであり、降伏強度は150~180MPaであり、伸張破断率は11.0~16.0%であり、3.2mm断面厚さの場合の屈曲角度は23.0~27.0°である、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミニウム合金。
【請求項8】
請求項1に記載の熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金に適用される製造方法であって、
アルミニウムを溶錬炉に入れて溶融し且つシリコン、マグネシウム、Cu原料、Fe原料及びMn原料を加えて第1溶錬を行って、第1溶融体を取得するステップと、
前記第1溶融体を冷却した後に中継炉に移し、第1材料を前記第1溶融体の底部に入れて第2溶錬と第1脱気精製スラグ除去を行って、第2溶融体を取得するステップと、
前記第2溶融体を冷却した後に保温炉に移して成分検出を行って、成分検出に合格した後に高圧ダイカストを行って熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金を取得するステップと、を含み、
前記第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料、Zr原料及びSn原料からなり、又は前記第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料及びZr原料からなる、ことを特徴とする熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造方法。
【請求項9】
前記Cu原料はAl-Cu系合金であり、前記Fe原料はAl-Fe系合金であり、前記Mn原料はAl-Mn系合金であり、前記Ti原料はAl-Ti系合金であり、前記Sr原料はAl-Sr系合金であり、前記Ce原料はAl-Ce系合金であり、前記La原料はAl-La系合金であり、前記Zr原料はAl-Zr系合金であり、前記Sn原料はAl-Sn系合金である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記Al-Cu系合金はAl-50Cu中間合金であり、前記Al-Fe系合金はAl-5Fe中間合金であり、前記Al-Mn系合金はAl-20Mn中間合金であり、前記Al-Ti系合金はAl-5Ti中間合金であり、前記Al-Sr系合金はAl-5Sr中間合金であり、前記Al-Ce系合金はAl-10Ce中間合金であり、前記Al-La系合金はAl-10La中間合金であり、前記Al-Zr系合金はAl-5Zr中間合金であり、前記Al-Sn系合金はAl-12Sn中間合金である、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記溶錬炉の溶錬温度は740~760℃であり、前記中継炉の中継温度は710~730℃であり、前記保温炉の保温温度は690~710℃である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1脱気精製スラグ除去は、不活性ガス雰囲気又は窒素ガス下で、前記中継炉の炉体内に精製剤粉末を加えるステップを含み、
前記不活性ガス雰囲気はアルゴンガスである、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記高圧ダイカストの条件は、圧力が26~70MPa、射出速度が5.5~7.0m/s、ダイカスト温度が690~710℃である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記アルミニウム、前記シリコン、前記マグネシウム、前記Cu原料、前記Fe原料、前記Mn原料、前記Ti原料、前記Sr原料、前記Ce原料、前記La原料、前記Zr原料及び前記Sn原料を乾燥処理した後に後続の溶融又は溶錬を行うステップをさらに含み、
前記乾燥処理の温度は150~200℃である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
自動車車体構造部品であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金又は請求項8~14のいずれか一項に記載の製造方法で製造された熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金を含む、ことを特徴とする自動車車体構造部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミニウム合金技術分野に関し、具体的に、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金、その製造方法及び自動車車体構造部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化は省エネ・排出削減を推進し、「ダブルカーボン」目標を実現することに対して重要な意義がある。アルミニウム合金は強度が高く、自動車軽量化を実現する理想的な材料である。自動車のアルミニウム合金の使用量の増加につれて、車体構造部品のスプライシング工程の難易度が上昇し、効率が低下する。高性能ダイカストアルミニウム合金を開発し且つ車体構造部品の一体化ダイカストを実現することは、ボトルネックを突破することが期待されている。
【0003】
自動車車体構造部品用のダイカストアルミニウム合金に対して、後続の熱処理により自動車構造部品の寸法の変形及び表面の欠陥が発生しやすいため、現在の一体化ダイカストの大型構造部品は依然として従来の熱処理不要のAl-Si系合金を主としている。しかし、従来のAl-Si系合金は総合力学性能が低いため、高性能自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金に対する開発が切望されている。
【0004】
現在、複数の生産企業や研究機関は、合金化/マイクロ合金化により合金の流動性、強度及び靭性を確保するダイカストアルミニウム合金をいくつか開示している。例えば真空ダイカスト工程を用いる特許CN105316542A及びCN110079712A、後熱処理を加えるCN104471090B及びCN110257675A、低温時効処理を加えるCN114717455Aが挙げられる。しかしながら、真空ダイカスト工程も後熱処理も合金生産コストを増やし、エネルギー消費を増加させる。一方、大気ダイカスト条件下で、後処理を行わない特許CN11647785Aは、合金強度が非常に高いが、合金伸張破断率が2.1~3.9%に留まり、自動車業界の構造部品伸張破断率6%という性能要件を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金を提供することで、アルミニウム合金強度を強化し、アルミニウム合金の塑性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本開示の第1態様は、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金を提供し、該ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~1.2重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.6~0.8重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれる。
【0007】
上記態様においては、、前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~0.9重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.65~0.75重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれていてもよい。
また、上記態様においては、前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~0.9重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.6~0.75重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれていてもよい。
また、上記態様においては、前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、前記ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~0.9重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.65~0.69重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれていてもよい。
【0008】
また、上記態様においては、前記ダイカストアルミニウム合金はSn元素をさらに含有し、前記ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、該ダイカストアルミニウム合金に0.05~0.15重量%のSnが含まれていてもよい。
【0009】
また、上記態様においては、前記ダイカストアルミニウム合金において、Sn元素とFe元素との質量比は1.0以下であり、Mn元素とFe元素との質量比は3.0以上であり、Ce元素とLa元素との質量比は2.0以上であってもよい。
【0010】
また、上記態様においては、前記ダイカストアルミニウム合金の極限引張強度は300~350MPa、降伏強度は150~180MPa、伸張破断率は11.0~16.0%、3.2mm断面厚さの場合の屈曲角度は23.0~27.0°であってもよい。
【0011】
本開示の第2態様は、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造方法を提供し、該方法は、アルミニウムを溶錬炉に入れて溶融し且つシリコン、マグネシウム、Cu原料、Fe原料及びMn原料を加えて第1溶錬を行って、第1溶融体を取得するステップと、前記第1溶融体を冷却した後に中継炉に移し、第1材料を前記第1溶融体の底部に入れて第2溶錬と第1脱気精製スラグ除去を行って、第2溶融体を取得するステップと、前記第2溶融体を冷却して保温炉に移してから成分検出を行って、成分検出に合格した後に高圧ダイカストを行って熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金を取得するステップと、を含み、ここで、前記第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料、Zr原料及びSn原料からなり、又は前記第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料及びZr原料からなる。
【0012】
上記態様においては、前記Cu原料はAl-Cu系合金であり、前記Fe原料はAl-Fe系合金であり、前記Mn原料はAl-Mn系合金であり、前記Ti原料はAl-Ti系合金であり、前記Sr原料はAl-Sr系合金であり、前記Ce原料はAl-Ce系合金であり、前記La原料はAl-La系合金であり、前記Zr原料はAl-Zr系合金であり、前記Sn原料はAl-Sn系合金であってもよい。
【0013】
また、上記態様においては、前記Al-Cu系合金はAl-50Cu中間合金であり、前記Al-Fe系合金はAl-5Fe中間合金であり、前記Al-Mn系合金はAl-20Mn中間合金であり、前記Al-Ti系合金はAl-5Ti中間合金であり、前記Al-Sr系合金はAl-5Sr中間合金であり、前記Al-Ce系合金はAl-10Ce中間合金であり、前記Al-La系合金はAl-10La中間合金であり、前記Al-Zr系合金はAl-5Zr中間合金であり、前記Al-Sn系合金はAl-12Sn中間合金であってもよい。
【0014】
また、上記態様においては、前記溶錬炉の溶錬温度は740~760℃であり、前記中継炉の中継温度は710~730℃であり、前記保温炉の保温温度は690~710℃であってもよい。
【0015】
また、上記態様においては、前記第1脱気精製スラグ除去は、不活性ガス雰囲気又は窒素ガスで、前記中継炉の炉体内に精製剤粉末を加えるステップを含み、前記不活性ガス雰囲気はアルゴンガスであり、前記保温炉の保温温度は690~710℃であってもよい。
【0016】
また、上記態様においては、前記高圧ダイカストの条件は、圧力が26~70MPa、射出速度が5.5~7.0m/s、ダイカスト温度が690~710℃であってもよい。
【0017】
また、上記態様においては、前記アルミニウム、前記シリコン、前記マグネシウム、前記Cu原料、前記Fe原料、前記Mn原料、前記Ti原料、前記Sr原料、前記Ce原料、前記La原料、前記Zr原料及び前記Sn原料を乾燥処理した後に後続の溶融又は溶錬を行うステップをさらに含み、前記乾燥処理の温度は150~200℃であってもよい。
【0018】
本開示の第3態様は、ダイカストアルミニウム合金を含む自動車車体構造部品を提供し、上記の熱処理不要の前記ダイカストアルミニウム合金又は上記の製造方法で得られた熱処理不要のダイカストアルミニウム合金を含む。
【発明の効果】
【0019】
上記技術案によると、本開示によって提供される熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の極限引張強度、降伏強度及び伸張破断率は、従来の自動車構造部品合金と比較して顕著に向上し、新エネルギー電気自動車車体の大型構造薄壁部品の生産に適合している。
【0020】
なお、以上の一般的な説明と以下の詳しい説明は例示的と解釈的なものに過ぎず、本開示を制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面は本開示をさらに理解するためのものであり、明細書の一部であり、以下の具体的な実施形態とともに本開示を説明するが、本開示を制限するものではない。
図1】本開示の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造方法を示す工程のフローチャートである。
図2】本開示の実施例1及び実施例2で製造されるアルミニウム合金鋳物のミクロ組織を示す観察図である。ここで、図2の(a)、図2の(c)及び図2の(e)は実施例1で製造されるアルミニウム合金鋳物のミクロ組織観察図であり、図2の(b)、図2の(d)及び図2の(f)は実施例2で製造されるアルミニウム合金鋳物のミクロ組織観察図であり、具体的に、図2の(a)と図2の(b)は光学顕微鏡写真であり、図2の(c)と図2の(d)は電子顕微鏡写真でありであり、図2の(e)と図2の(f)が破面形態である。
図3】本開示の実施例1と実施例2で製造されるアルミニウム合金鋳物の応力-ひずみ曲線を示す図である。
図4】本開示の実施例の平板金型サンプルを示す図である。
図5】本開示の実施形態における鉄除去メカニズムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の具体的な実施形態を詳しく説明する。なお、ここで説明される具体的な実施形態は本開示を説明するためのものであり、本開示を制限するものではない。
【0023】
本開示の第1態様は、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金を提供する。ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~1.2重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.6~0.8重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれる。
【0024】
本開示によって提供される熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の極限引張強度、降伏強度及び伸張破断率は、従来の自動車構造部品合金と比較して顕著に向上し、新エネルギー電気自動車車体の大型構造薄壁部品の生産に適合している。
【0025】
本開示の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金にSi元素を添加することは、合金強度を向上させるだけではなく、合金の鋳造流動性を確保することもできる。Mg及びCu元素を加える場合、ダイカスト条件下では、一部はマトリックスに固溶してマトリックスの強度を向上させ、その他の部分は共晶領域において中間相を析出させ、共晶組織の結合強度を高める。Mn元素の添加はFe元素を置換することができ、Feリッチ相の弊害をある程度軽減し、そして適量の大きなMn元素は合金の離型性能の向上に役立つ。本開示の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金に添加されるTi元素及びZr元素は、異質核生成質点の役割を果たし、初晶(Al)結晶粒の核生成を増大させ、結晶粒の微細化を実現し、一方、含有量が多すぎると、核生成質点が粗大化し、微細化効果が弱まり、性能が低下する。Sr元素は共晶Siを層状から微細な粒子状に変質させることで、合金の塑性を向上させる。希土類金属Ce元素とLa元素はアルミニウム合金の中で主に結晶粒界位置に富化し、不純物元素による損害作用を除去する効果を奏し、他の合金元素と相互作用して化合物を形成して、合金組織構造を変える。Al-Si系合金にCe元素を添加すると硬いAlCeSi2相を形成することができ、これによって合金強度をさらに向上さることができる。
【0026】
本開示の1つの例示的な実施形態によると、ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、ダイカストアルミニウム合金には、6.0~8.0重量%のSi、0.3~0.9重量%のMg、0.4~0.8重量%のCu、0.1~0.3重量%のFe、0.65~0.75重量%のMn、0.05~0.20重量%のTi、0.03~0.07重量%のSr、0.03~0.07重量%のCe、0.01~0.04重量%のLa、0.01~0.1重量%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlが含まれる。上記配合の比率は結晶粒の微細化/組織改質により合金塑性を向上させ且つ合金強度を高めることができる。
【0027】
本開示の発明者は、Sn元素が合金内でβ-AlFeSiに結合することができ、合金溶錬過程においてスラグとして沈降することで溶融体を浄化し、また、微小な質点は結晶過程では異質核生成の晶核として結晶粒を微細化することが分かった。本開示の1つの例示的な実施形態によると、ダイカストアルミニウム合金はSn元素をさらに含有し、ダイカストアルミニウム合金の総重量を基準とすると、ダイカストアルミニウム合金には、0.05~0.15重量%のSnが含まれる。合金内のβ-Sn相とβ-AlFeSi相との間にコヒーレント界面関係が存在し、溶融体内のβ-Sn相とβ-AlFeSi相とは高密度(β-Sn+β-AlFeSi)結合体を形成し、新結合体はアルミニウム溶融体よりも大きな原子質量を有するため、溶錬過程において溶融体底部に沈降し、これによって溶融体を浄化する効果を達成し、ひいてはダイカスト鋳物内の針状β-AlFeSi相の含有量を減少させて合金性能を向上させる。選択可能に、前記ダイカストアルミニウム合金において、Sn元素とFe元素との質量比は1.0以下であり、Mn元素とFe元素との質量は3.0以上であり、Ce元素とLa元素との質量比は2.0以上である。
【0028】
図5はSnを添加する鉄除去メカニズムを示す概略図である。合金にAl-12Sn中間合金を添加すると、溶融体内にβ-Sn粒子が現れ、β-Snとβ-AlFeSiとの界面にコヒーレント関係が存在するため、β-Snとβ-AlFeSiは優先的に接合されて新しい結合体が結合される。新しい結合体はアルミニウム溶融体よりも大きな質量を有するので、溶融体底部に沈降し、溶融体内のβ-AlFeSi含有量を減少させるという効果を達成する。高圧ダイカスト後、ダイカスト鋳物内の針状β-AlFeSi相の含有量は大幅に減少し、ダイカスト鋳物の使用過程における応力集中を低下させ、合金性能を向上させる目的を達成する。
【0029】
本開示によると、ダイカストアルミニウム合金の極限引張強度は300~350MPaであってもよく、降伏強度は150~180MPaであってもよく、伸張破断率は11.0~16.0%であってもよく、3.2mm断面厚さの場合の屈曲角度は23.0~27.0°であってもよい。本開示の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、自動車業界の構造部品に対する性能要件を満たし、自動車車体の大型構造薄壁部品の生産に適合している。
【0030】
本開示の第2態様は、熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造方法を提供する。本製造方法は、アルミニウムを溶錬炉に入れて溶融し且つシリコン、マグネシウム、Cu原料、Fe原料及びMn原料を加えて第1溶錬を行って、第1溶融体を取得するステップと、第1溶融体を冷却した後に中継炉に移し、第1材料を前記第1溶融体の底部に入れて第2溶錬と第1脱気精製スラグ除去を行って、第2溶融体を取得するステップと、第2溶融体を冷却した後に保温炉に移して成分検出を行って、成分検出に合格した後に高圧ダイカストを行って熱処理不要のダイカストアルミニウム合金を取得するステップと、を含む。ここで、第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料、Zr原料及びSn原料からなり、又は第1材料はTi原料、Sr原料、Ce原料、La原料及びZr原料からなる。
【0031】
本開示の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造方法は、熱処理プロセスを行わずに優れた性能を取得することができるので、熱処理により鋳物に変形及び泡が発生するという問題を解決できるだけではなく、一体化ダイカスト工程の簡素化に役立ち、歩留まりを上げる。
【0032】
本開示によると、Cu原料はAl-Cu系合金であってもよく、Fe原料はAl-Fe系合金であってもよく、Mn原料はAl-Mn系合金であってもよく、Ti原料はAl-Ti系合金であってもよく、Sr原料はAl-Sr系合金であってもよく、Ce原料はAl-Ce系合金であってもよく、La原料はAl-La系合金であってもよく、Zr原料はAl-Zr系合金であってもよく、Sn原料はAl-Sn系合金であってもよい。
【0033】
本開示の1つの例示的な実施形態によると、Al-Cu系合金はAl-50Cu中間合金であり、Al-Fe系合金はAl-5Fe中間合金であり、Al-Mn系合金はAl-20Mn中間合金であり、Al-Ti系合金はAl-5Ti中間合金であり、Al-Sr系合金はAl-5Sr中間合金であり、Al-Ce系合金はAl-10Ce中間合金であり、Al-La系合金はAl-10La中間合金であり、Al-Zr系合金はAl-5Zr中間合金であり、Al-Sn系合金はAl-12Sn中間合金である。
【0034】
本開示によると、溶錬炉の溶錬温度は740~760℃であってもよく、中継炉の中継温度は710~730℃であってもよく、保温炉の保温温度は690~710℃であってもよい。
【0035】
本開示によると、第1脱気精製スラグ除去は、不活性ガス雰囲気又は窒素ガス下で、中継炉の炉体内に精製剤粉末を加えるステップを含み、不活性ガス雰囲気はアルゴンガスである。
【0036】
本開示によると、高圧ダイカストの条件は、圧力が26~70MPa、射出速度が5.5~7.0m/s、ダイカスト温度が690~710℃であることを含むことができる。
【0037】
本開示の1つの例示的な実施形態によると、本製造方法は、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、Cu原料、Fe原料、Mn原料、Ti原料、Sr原料、Ce原料、La原料、Zr原料及びSn原料を乾燥処理した後に後続の溶融又は溶錬を行うステップをさらに含み、乾燥処理の温度は150~200℃である。
【0038】
本開示の第3態様は、ダイカストアルミニウム合金を含む自動車車体構造部品を提供する。ダイカストアルミニウム合金は前述した熱処理不要のダイカストアルミニウム合金又は前述の製造方法により製造された熱処理不要のダイカストアルミニウム合金である。
【0039】
以下、実施例により本開示をさらに詳しく説明する。実施例で使用される原材料はいずれも市販されている。
【実施例0040】
本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0041】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は以下のステップを含む。
【0042】
1)材料の用意:合金成分に応じて合金原料を秤量し、原料乾燥処理を行う。使用する原料はAl、Si、Mg、Al-50Cu中間合金、Al-5Fe中間合金、Al-20Mn中間合金、Al-5Ti中間合金、Al-5Sr中間合金、Al-10Ce中間合金、Al-10La中間合金及びAl-5Zr中間合金を含む。
2)溶錬:溶錬炉を750℃に昇温してAlを溶融し、その後、Si、Mg、Al-50Cu中間合金、Al-5Fe中間合金及びAl-20Mn中間合金を添加し、中間合金溶融後に溶融液を恒温730℃の中継炉に移してから、Al-5Ti中間合金、Al-5Sr中間合金、Al-10Ce中間合金、Al-10La中間合金及びAl-5Zr中間合金を加え、中間合金溶融後に溶融体に高純度窒素ガスを通気し、精製剤粉末を持ち込み、15min通気した後にガス及びスラグを除去する。その後に12min静置し、溶融体を恒温690℃の保温炉に移して炉前成分分析テストを行う。
3)ダイカスト:成分検出に合格した後、温度690℃の溶融体を力勁LK630T横型冷室ダイカスト機に移して高圧ダイカストを行う。鋳造圧力は30MPa、射出速度は6.5m/s、金型温度は200℃であり、使用する金型は長さが30センチ、幅が20センチである平板金型である。
【実施例0043】
本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.11wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0044】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びダイカスト工程は以下のステップを含む。
【0045】
1)材料の用意:合金成分によって合金原料を秤量し、原料乾燥処理を行う。使用する原料はAl、Si、Mg、Al-50Cu中間合金、Al-5Fe中間合金、Al-20Mn中間合金、Al-5Ti中間合金、Al-5Sr中間合金、Al-10Ce中間合金、Al-10La中間合金、Al-5Zr中間合金和Al-12Sn中間合金を含む。
2)溶錬:溶錬炉を750℃に昇温してAlを溶融し、その後、Si、Mg、Al-50Cu中間合金、Al-5Fe中間合金及びAl-20Mn中間合金を添加し、中間合金溶融後に溶融液を恒温730℃の中継炉に移してから、Al-5Ti中間合金、Al-5Sr中間合金、Al-10Ce中間合金、Al-10La中間合金、Al-5Zr中間合金及びAl-12Sn中間合金を添加し、中間合金溶融後に溶融体に高純度窒素ガスを通気し、精製剤粉末を持ち込み、15min通気した後にガスとスラグを除去する。その後に12min静置し、溶融体を恒温690℃の保温炉に移して炉前成分分析テストを行う。
3)ダイカスト:成分検出に合格した後、温度690℃の溶融体を力勁LK630T横型冷室ダイカスト機に移して高圧ダイカストを行う。鋳造圧力は30MPa、射出速度は6.5m/s、金型温度は200℃であり、使用する金型は長さが30センチ、幅が20センチである平板金型である。
【実施例0046】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が、6.21wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0047】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例2と同様であり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が7.92wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.11wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0048】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例2と同様であり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が7.32wt.%のSi、0.35wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.11wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0049】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例2と同様であり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.40wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.11wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0050】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例2と同じであり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.40wt.%のCu、0.28wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.15wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0051】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例2と同じであり、異なるのは、本実施例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の化学成分が7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.20wt.%のSn、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlであることである。
【実施例0052】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、本実施例で使用されるダイカスト機が海天金属HDC8800T超大型インテリジェントダイカスト機であり、使用する金型が横梁長2.0メートル、縦梁長1.4メートルである新エネルギー自動車一体化ダイカスト後の床金型であり、横梁部を選択して引張試験と屈曲試験を行うことである。
【実施例0053】
本実施例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びダイカスト工程は実施例2と同様であり、異なるのは、本実施例で使用されるダイカスト機が海天金属HDC8800T超大型インテリジェントダイカスト機であり、使用する金型が横梁長2.0メートル、横梁長1.4メートルである新エネルギー自動車一体化ダイカスト後の地板金型であり、横梁部を選択して引張試験と屈曲試験を行うことである。
【比較例1】
【0054】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、製造過程においてAl-5Ti中間合金とAl-5Zr中間合金を添加しないことである。
【比較例2】
【0055】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0056】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、製造過程においてAl-5Sr中間合金とAl-5Zr中間合金を添加しないことである。
【比較例3】
【0057】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0058】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、製造過程においてAl-10Ce中間合金、Al-10La中間合金及びAl-5Zr中間合金を添加しないことである。
【比較例4】
【0059】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0060】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様であり、異なるのは、製造過程においてAl-5Zr中間合金を添加しないことである。
【比較例5】
【0061】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.12wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0062】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様である。
【比較例6】
【0063】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.25wt.%のMg、0.25wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0064】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様である。
【比較例7】
【0065】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、7.32wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.4wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0066】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様である。
【比較例8】
【0067】
本比較例で製造される自動車車体構造部品用の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金は、その化学成分が、5.65wt.%のSi、0.49wt.%のMg、0.58wt.%のCu、0.18wt.%のFe、0.69wt.%のMn、0.15wt.%のTi、0.05wt.%のSr、0.05wt.%のCe、0.02wt.%のLa、0.04wt.%のZr、0.01重量%以下の他の不純物元素及び残部のAlである。
【0068】
本比較例の熱処理不要のダイカストアルミニウム合金の製造及びそのダイカスト工程は実施例1と同様である。
【0069】
表1は実施例1~10と比較例1~8で製造されるダイカストアルミニウム合金の成分を示す。
【0070】
【表1】
【試験例1】
【0071】
実施例1~10と比較例1~8で製造されるアルミニウム合金鋳物に対して力学的性能試験を行い、実施例9~10で製造されるアルミニウム合金鋳物に対して屈曲試験テストを行い、具体的な結果は表2に示すとおりである。
【0072】
【表2】
【0073】
表2から分かるように、本実施例で製造されたアルミニウム合金鋳物は圧縮強度と降伏強度が顕著に増加し、特に、他の各成分の添加量が同じである前提に、Zr及びSnが同時に添加されるダイカストアルミニウム合金は、引張強度が顕著に増加し、降伏強度が顕著に向上し、伸長率が顕著に向上する。
【試験例2】
【0074】
実施例1と2で製造されるアルミニウム合金鋳物に対してミクロ組織観察を行い、具体的な結果は図2に示すとおりである。
【0075】
光学顕微鏡写真(図2の(a)及び図2の(b))から分かるように、合金にSnを添加することにより形成された微小異質核生成質点が結晶粒を微細化する効果を奏するので、Snの添加は合金内の初晶α-Alの寸法をさらに微細化することができる。電子顕微鏡写真(図2の(c)及び図2の(d))から分かるように、Snが添加されていない場合、合金に粗大な針状β-AlFeSi相が存在し、Snが合金に添加されると、合金内の針状β-AlFeSi相はほとんど消える。さらに、破面電子顕微鏡写真(図2の(e)及び図2の(f))から分かるように、Snが添加されていない場合、合金の破断はほとんど脆性破断であり、Snが添加されると、合金破断形態に微細なディンプル(dimple)が存在する。
【0076】
当業者は明細書を考慮し且つ本開示を実践した後、本開示の他の実施形態を容易に想到し取得する。本出願は、本開示のいかなる変形、用途又は適応的変化をカバーしようとしており、これらの変形、用途又は適応的変化は本開示の一般的な原理に従い且つ本開示で開示されていない当技術分野の技術常識又は慣用されている技術手段を含む。明細書と実施例は例示的なものに過ぎず、本開示の真の範囲と精神は以下の特許請求の範囲によって指示される。
【0077】
なお、本開示は上記説明され且つ図面に示される正確な構造に限らず、その範囲から逸脱しない限り、様々な修正と変更を行うことができることを理解されたい。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5