IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タツフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066512
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】カテーテル固定具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186904
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022175014
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513101685
【氏名又は名称】株式会社タツフト
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 隆文
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA33
4C267BB24
4C267BB31
4C267CC01
4C267HH08
4C267HH10
(57)【要約】
【課題】良好な固定状態を長く維持することができ、取付・交換が容易であって、かつ、固定した状態でカテーテルを身体の動きに追従させることのできるカテーテル固定具。
【解決手段】カテーテル固定具1は、肌に止着される基部60と、カテーテル2を挿通可能な縦方向Yへ延びる保持部70とを有するベース本体50を含み、基部60と保持部70とは一体に形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向と、横方向及び厚さ方向を有し、肌に止着される基部と、カテーテルを挿通可能な前記縦方向へ延びる保持部とを有するベース本体を含み、前記基部と前記保持部とは一体に形成されるカテーテル固定具。
【請求項2】
前記基部は、略円形状である請求項1に記載のカテーテル固定具。
【請求項3】
前記ベース本体に抗菌剤が練り込まれることで抗菌性が付与されている請求項1又は2に記載のカテーテル固定具。
【請求項4】
前記保持部は、前記縦方向へ延びる中空円筒状の第1及び第2筒状部材を有し、前記第1及び第2筒状部材は、前記縦方向に沿って延びるスリットを有する請求項1又は2に記載のカテーテル固定具。
【請求項5】
請求項ベース本体の外面に装飾要素が施されている請求項1又は2に記載のカテーテル固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを皮膚に固定するためのカテーテル固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカテーテル固定具としては、次のようなものも提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、体外へ露出する部分の医療チューブを被覆するための外装体であって、長手方向全長にわたって内部まで貫通する切れ目を有する筒状体から構成される医療用チューブの外装体(固定具)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、カテーテルを挟着する片面に接着剤層を有する一対の挟着フィルムと、この挟着フィルムにて挟着されるカテーテルの出口部周囲と皮膚に接着する止着テープとを備えたカテーテル固定具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3215585号公報
【特許文献2】特開平9-313615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の医療用チューブの外装体では、カテーテルの折り返し部分について医療用チューブを腹部からの出口近傍の皮膚に止着テープを使用して固定するため、止着テープの摩耗や貼着時間により良好な固定状態を長く維持できない場合がある。
【0007】
また、特許文献2のカテーテル固定ホルダでは、カテーテルを一対の挟着フィルムにて挟着し、腹部の出口部周囲と皮膚に止着テープにて接着するため、取付けや取替えを簡単に行うことができない。
【0008】
図27に示すとおり、特許文献1及び2に開示の発明においては、例えば、腹膜透析等、医療行為を行う際、止着テープ101でカテーテル102を固定した場合、患者の腹部の収縮・拡張したときに、止着テープ101の面積が比較的に小さい(止着力が比較的に小さい)場合には、カテーテル102の固定が外れたり、破損するおそれがあった。一方、止着テープ101の面積が比較的に大きい(止着力が比較的に大きい)場合には、カテーテル102が強く固定され、結果として身体の動きに追従することができず、固定が外れたり、破損するおそれがあった。また、カテーテル102を適正な位置に固定するために、止着を何度も繰り返すことで、皮膚の炎症やかぶれを引き起こす原因となっていた。そのために、止着テープ101による固定の場合には、カテーテル102の良好な固定状態を長時間維持することができなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、良好な固定状態を長く維持することができ、取付・交換が容易であって、かつ、固定した状態でカテーテルを身体の動きに追従させることのできるカテーテル固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るカテーテル固定具は、縦方向と、横方向及び厚さ方向を有し、肌に止着される基部と、カテーテルを挿通可能な前記縦方向へ延びる保持部とを有するベース本体を含み、前記基部と前記保持部とは一体に形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカテーテル固定具によれば、カテーテルを患者の身体の動きに追従させることができ、患者に対して良好な状態で腹膜透析を含めた医療行為を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテル固定具の装着状態を示す斜視図。
図2】カテーテル固定具の正面図。
図3】(a),(b)使用状態におけるカテーテル固定具を上方から視た図。
図4】カテーテルを折り返して使用した状態における図。
図5】第2実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図6】第3実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図7】第4実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図8】第5実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図9】第6実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図10】第7実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図11】第7実施形態における、粘着ベース部の上面が露出した状態における斜視図及びカテーテル固定具の正面図。
図12】(a),(b)第7実施形態における、使用状態におけるカテーテル固定具の拡大図。
図13】第7実施形態における、カテーテルを折り返して使用した状態における図。
図14】第8実施形態における、粘着ベース部の上面が露出した状態における斜視図及びカテーテル固定具の正面図。
図15】第9実施形態における、粘着ベース部の上面が露出した状態における斜視図及びカテーテル固定具の正面図。
図16】第10実施形態に係るカテーテル固定具の正面図。
図17】第11実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図18】第12実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図19】第13実施形態に係るカテーテル固定具の斜視図。
図20】第14実施形態における、粘着ベース部の上面が露出した状態における斜視図及びカテーテル固定具の正面図。
図21】第15実施形態における、粘着ベース部の上面が露出した状態における斜視図及びカテーテル固定具の正面図。
図22】(a)第16実施形態における、カテーテル固定具の斜視図、(b)カテーテル固定具の正面図。
図23】第16実施形態における、カテーテルを使用した状態における図。
図24】第16実施形態における、カテーテルを折り返して使用した状態における図。
図25】(a)~(c)第16実施形態の実施例の一例における、カテーテル固定具の平面図。
図26】(a),(b)第16実施形態の他の実施例の一例における、カテーテル固定具の平面図。
図27】従来技術におけるカテーテルの固定状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1及び2を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具(固定具)1は、カテーテル2のうちの患者の身体の外部に露出する部分を身体(腹部)Bの皮膚に固定するもので、身体から外部へ露出するカテーテルの出口D近傍の皮膚に止着される粘着ベース部11と、粘着ベース部11の上面11aに止着されたカテーテル2の中途部2a及び粘着ベース部11を被覆するためのカバー部3とを含む。
【0015】
粘着ベース部11は、皮膚に直接止着される粘着性を有し、例えば、シリコーン樹脂又はウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ハイドロゲル、熱可塑性樹脂等の柔軟(軟質)材料から形成することができる。また、粘着ベース部11は、図示例において、矩形状であるが、円形、楕円形、ひし形等の各種の形状を有していてもよい。
【0016】
シリコーン樹脂が皮膚に対する粘着性を有するか否かは、シリコーン樹脂を構成するポリマーの重合構造の違いにより生じるものであり、このようなシリコーン樹脂を選択的に製造する技術は公知であるためここでは詳述しない。なお、このシリコーン樹脂には、粘着性を著しく低下させない程度に増量剤を添加したシリコーン樹脂も含まれる。また、粘着ベース部11には、オプションとして、例えば、アミノ酸やコラーゲンやハーブ類の粉末等の美肌用添加剤や香料、防カビ剤等を使用し、粘着層を衛生的にすることができる。
【0017】
使用前の状態において、粘着ベース部11のうちの皮膚に止着される下面11bには、粘着ベース部よりもひと回り大きな外形を有する被覆フィルム15によって被覆されている。
【0018】
カバー部3は、天然又は合成ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂や熱可塑性合成樹脂等からなる柔軟(軟質)材料から形成することができる。なお、カバー部3のうちの粘着ベース部11を被覆する面が、粘着性を有していてもよい。
【0019】
カテーテル固定具1を皮膚Sに固定する場合には、まず、粘着ベース部11の下面11bから被覆フィルム15を剥がして皮膚Sの表面の所定位置に配置する。次に、カテーテル2の中途部2aを粘着ベース部11の上面11aに取り付ける。最後に、中途部2aが止着された粘着ベース部11の上面11aを覆うようにカバー部3で被覆する。
【0020】
このように、接着剤を用いることなく、粘着ベース部11の粘着性を利用して、皮膚Sにカテーテル固定具1を取り付けることができ、かつ、カテーテル2の中途部2aを粘着ベース部11に取り付けることができるので、取り付け操作が容易である。また、カバー部3も粘着ベース部11の粘着性を利用してその側面11cに取り付けることができ、かかる場合には、簡易にカバー部3と粘着ベース部11とを分離することができるので、部材の収納、洗浄や交換も容易である。ただし、カバー部3と粘着ベース部11とは、接着又は溶着によって互いに固定されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0021】
また、粘着ベース部11の上面11a全体がカバー部3で被覆されていることによって、カテーテル2が粘着ベース部11に安定的に固定されるとともに、患者が服を着た状態でカテーテル固定具1を使用する際、粘着性のある粘着ベース部11の上面11aに服の解れた繊維や粉塵が付着するのを抑制することができる。
【0022】
図27に示すとおり、従来、例えば、腹膜透析等、医療行為を行う際、止着テープ101でカテーテル102を固定した場合、患者の腹部の収縮・拡張したときに、止着テープ101の面積が比較的に小さい(止着力が比較的に小さい)場合には、カテーテル102の固定が外れたり、破損するおそれがあった。一方、止着テープ101の面積が比較的に大きい(止着力が比較的に大きい)場合には、カテーテル102が強く固定され、結果として身体の動きに追従することができず、固定が外れたり、破損するおそれがあった。また、カテーテル102を適正な位置に固定するために、止着を何度も繰り返すことで、皮膚の炎症やかぶれを引き起こす原因となっていた。そのために、止着テープ101による固定の場合には、長時間良好なカテーテル102の固定状態を維持することができなかった。
【0023】
かかる事態が発生すると、カテーテルの出口近傍が膿んでしまって感染症を引き起こす原因ともなっていた。そのため、患者は家庭における腹膜透析を諦めて、病院等の医療機関で提供される血液透析に切り替えることがあり、わざわざ医療機関に通うことによる時間的及び身体的、心理的な負担がかかっていた。
【0024】
図3(a),(b)を参照すると、実施形態に係るカテール固定具1を比較的に大きく膨らんだ腹部を有する患者使用した場合、腹部が収縮・拡張を繰り返したときに、粘着ベース部11の上面11aに止着されたカテーテル2の中途部2aは、土台となる粘着ベース部11が柔軟性を有することから、その向きを変えることができ、上下方向Y及び横方向Xに追従することができる。具体的には、図3(b)を参照すると、図3(a)に示した態様からカテーテル2が矢印P1に示すように、粘着ベース部11の柔軟性によってカテーテル2が身体の動きに追従することができる。
【0025】
したがって、従来のように止着テープを介してカテールがしっかりと固定された場合のようにカテーテルが無理に引っ張られることはなく、無理なく身体の動きに追従させることができる。また、土台となる粘着ベース部11が粘着性を有する柔軟材料から形成されていることによって、身体の動きを吸収するように変形することができるので、カテーテル2に加わる力を低減することができる。
【0026】
本発明に係るカテーテル固定具1によれば、カテーテル2に無理な力が掛かって、その固定が解除されることはないことから、止着テープのように、何度も止着を繰り返して行う必要はなく、皮膚が炎症を起こしかぶれてしまうのを抑制することができる。
【0027】
図4を参照すると、カテーテル2の長さが比較的に長い場合には、カテーテル2を折り返して、横方向において互いに並ぶ中途部2aと中途部2bとを粘着ベース部11の上面11aに止着させることができる。かかる場合には、身体の動きに合わせて中途部2a,2bが互いに上下方向Y及び横方向Xへ移動することから、中途部2aが止着される場合と同様に、カテーテル2に加わる力を低減することができる。
【0028】
なお、図示していないが、衛生上の観点から、腹部の出口近傍をガーゼで覆い、止着テープで止着してもよい。かかる場合であっても、止着テープによって、カテーテル2の移動が拘束されることがないので、身体の動きに合わせて移動させるという本願発明の効果は発揮しうる。
【0029】
<第2実施形態>
図5を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1には、粘着ベース部11の上面11aにカテーテル2の中途部2a,2bが配置される凹部31が設けられている。このように、凹部31が設けられていることによって、中途部2a,2bがより安定的に粘着ベース部11に配置される。
【0030】
また、凹部31によってカテーテル2の中途部2a,2bが安定的に配置される限りにおいて、凹部31は粘着性を有していなくてもよい。
【0031】
<第3実施形態>
図6を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1では、粘着ベース部11の下面11bに所定間隔を空けて並行して延びる複数条のリブ32が配置されている。このように、下面11bに複数条のリブ32が配置されていることによって、皮膚Sに止着された下面11bと皮膚Sとの間に隙間が生じ、蒸れが生じるのを抑制することができる。
【0032】
<第4実施形態>
図7を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1では、粘着ベース部11の下面11bに所定間隔を空けて並行して延びる複数条のスリット33が配置されている。このように、下面11bに複数条のスリット33が配置されていることによって、皮膚Sに止着された下面11bと皮膚Sとの間に隙間が生じ、蒸れが生じるのを抑制することができる。なお、図示例において、スリット33は有底であるが、粘着ベース部11を厚さ方向に貫通する開孔であってもよい。
【0033】
<第5実施形態>
図8を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1では、粘着ベース部11全体が複数の網目を有するハニカム構造36を有する。かかる場合には、使用状態において、通気性が向上するとともに、粘着ベース部11自体が全方位的に屈曲しやすくなるので、身体の動きに合わせてよりカテーテル2を移動させることができる。
【0034】
<第6実施形態>
図9を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1では、粘着ベース部11が複層構造を有する。具体的には、上面11aを形成する上層41と、下面11bを形成する下層42と、上下層41,42間に介在された中間層43とを有する。上下層41,42及び中間層43は、天然又は合成ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂や熱可塑性合成樹脂等からなる柔軟(軟質)材料からなり、公知の接着又は溶着手段において互いに接合されている。
【0035】
上下層41,42は、粘着性を有し、下層42が上層41よりも高い粘着性を有していることが好ましい。かかる場合には、粘着ベース部11を比較的に肌に安定して止着することができる。また、中間層43の剛性値が上下層41,42の剛性値よりも高いことが好ましい。かかる場合には、中間層43が芯となって、粘着ベース部11がより安定して皮膚Sに止着されうる。なお、各層41-43の剛性は、JIS L 1096の測定方法に準拠したガーレー剛性値によって測定することができる。
【0036】
また、図示していないが、中間層43を弾性材料で形成し、かつ、その厚さをカテーテル2の中途部2a,2bが配置される中央部分のみ厚くなるように形成して、中間層43が中央部分からなる高弾性域と、それ以外の部分からなる低弾性域とを有していてもよい。かかる場合には、中途部2a,2bは高弾性域の弾性力を利用して、より身体の動きに合わせて移動しやすくなるといえる。さらに、中間層43を弾性伸縮性の材料から形成し、中間層43に蛇腹状の上下層41,42を接合することで、上下層41,42を横方向X又は上下方向Yへ伸長させてもよい。かかる場合には、身体の動きに合わせて、一方向へ粘着ベース部11全体を伸長させることができる。
【0037】
<第7実施形態>
本実施形態に係るカテーテル固定具1は、カテーテル2を保持するための保持部4をさらに有する。
【0038】
保持部4は、カテーテル2の中途部2aを挿通可能な中空円筒状であって、天然又は合成ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂や熱可塑性合成樹脂等からなる柔軟(軟質)材料から形成することができる。保持部4は、互いに並行して延びる第1及び第2筒状部材7,8を有し、第1及び第2筒状部材7,8には、それぞれ、スリット9,10が軸方向に沿って形成されている。第1筒状部材7のスリット9は第2筒状部材8と反対側に形成され、第2筒状部材8のスリット10は第1筒状部材7と反対側に形成されている。
【0039】
カテーテル2の中途部2a,2bをスリット9,10から保持部4の内部に挿入することによって、中途部2a,2bを保持部4の第1及び第2筒状部材7,8に挿通させることができ、また、スリット9,10を介して、中途部2a,2bを第1及び第2筒状部材7,8の内部から退出させることもできる。
【0040】
第1筒状部材7と第2筒状部材8とは、一体に成形されている。それらが別体に形成される場合に比べて、粘着ベース部11にカテーテル2を安定的に配置することができる。ただし、第1筒状部材7と第2筒状部材8とは別体から形成されていてもよいし、保持部4が図示例のように2つの円筒状部分を有するものではなく、断面楕円形状のパネルであって、カテーテル2が貫通可能な2つの貫通孔を有するものであってもよい。
【0041】
保持部4は、粘着ベース部11の上面11aに粘着ベース部11の粘着性によって取り付けられていて、皮膚Sへの固定状態において筒軸方向が皮膚の表面に沿うように構成されている。カバー部3は、粘着ベース部11の側面11cに粘着ベース部11の粘着性によって取り付けられている。
【0042】
したがって、それぞれ別体の粘着ベース部11、保持部4及びカバー部3とを皮膚Sに固定する場合には、まず、粘着ベース部11の下面から被覆フィルム15を剥がして皮膚Sの表面の所定位置に配置する。次に、カテーテル2の中途部2aを保持部4に挿通させた状態で保持部4を粘着ベース部11の上面11aに取り付ける。最後に、保持部4が配置された状態における粘着ベース部11の上面11aを覆うようにカバー部3で被覆する。
【0043】
このように、接着剤を用いることなく各部材を粘着ベース部11の粘着性を利用して取り付けることができるので、取り付け操作が容易である。また、簡易に各部材を分離することができるので、部材の収納、洗浄や交換も容易である。ただし、カバー部3と粘着ベース部11とは、接着又は溶着によって互いに固定されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0044】
図11を参照すると、カテーテル2の中途部2aとそれに対向して位置する中途部2bとは、カバー部3に被覆された状態で粘着ベース部11に取り付けられている。カテーテル2の外径よりも保持部4の内径はひと回り大きくなっており、それらの間には遊びとなる離間スペースRが形成されている。具体的には、保持部4の内径D1はカテーテルの外径D2の1.1~2.0倍であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係るカテール固定具1においては、腹部が収縮・拡張を繰り返したときに、カテーテル2の中途部2aが離間スペースRのある保持部4内において、身体の動きに合わせて上下方向Y及び横方向Xにおいて移動することができる。具体的には、具体的には、図12(b)を参照すると、図12(a)に示した態様からカテーテル2の中途部2aが矢印P1に示すように、横方向Xへ移動している。
【0046】
したがって、従来のように止着テープを介してカテーテルがしっかりと固定された場合のようにカテーテルが無理に引っ張られることはなく、無理なく身体の動きに追従させることができる。
【0047】
また、保持部4自体が柔軟材料で形成されていることから、離間スペースRによる遊びと相俟って、カテーテル2の中途部2aの向きを固定した状態でより変え易くなるといえる。加えて、土台となる粘着ベース部11が粘着性を有する柔軟材料から形成されていることによって、身体の動きを吸収するように変形することができるので、カテーテル2に加わる力を低減することができる。
【0048】
このように、i)保持部4内においてカテーテル2との間に離間スペースRがあること、ii)保持部4が柔軟材料から形成されていること、iii)粘着ベース部11が粘着性を有する柔軟材料から形成されていること、という条件を備えることによって、患者の腹部が収縮・拡張を繰り返した際に、カテーテル2は身体の動きに追従して向きを変えることができ、固定が外れたり、それ自体が破損することを避けることができる。
【0049】
本発明に係るカテーテル固定具1によれば、カテーテル2の出口D近傍が膿んで感染症を引き起こすことを抑制することができるので、患者は腹膜透析を離脱することなく継続することができ、患者にとって時間的及び身体的、心理的な負担となる血液透析へ移行するのを避けることができる。
【0050】
また、仮に粘着ベース部11の位置を変えるために、皮膚に対する止着と分離を繰り返し行う場合であっても、比較的に剛性の高く、かつ、粘着性の高い止着テープを繰り返し取り外して止着する場合に比べて、皮膚に対する負担が軽減されて、炎症やかぶれが生じるのを抑制することができる。
【0051】
図13を参照すると、カテーテル2が長い場合には、カテーテル2を折り返して、中途部2aを第1筒状部材7,中途部2bを第2筒状部材8に挿通している。かかる場合には、カテーテル2の中途部2aとそれに対向して位置する中途部2bとがそれぞれ第1及び第2筒状部材7,8によって被覆されることから、中途部2a,2bはその内部において向きを変えることができ、カテーテル2全体が身体の動きにより追従するように移動させることができる。
【0052】
なお、図示していないが、スリット9,10は、第1筒状部材7と第2筒状部材8の一方のみに設けるようにしてもよい。また、第1筒状部材7と第2筒状部材8は、長さや内径、外径が異なってもよい。
【0053】
<第8実施形態>
本実施形態では、図14に示すように、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8の上方に摘み16,17が一体的に突設されている。このような構成によれば、摘み16,17を摘むことにより、スリット9,10を広げることができるので、カテーテル2の挿抜を容易に行うことができる。
【0054】
<第9実施形態>
本実施形態では、図15に示すとおり、粘着ベース部11の上面11aに、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8が載る凹凸部18,19が一体的に設けられ、この凹凸部18,19の凹部19に第1及び第2筒状部材7,8が固定されるようになっている。このような構成によれば、粘着ベース部11の上面11aに保持部4を容易かつ安定して固定することができる。
【0055】
<第10実施形態>
本実施形態では、図16に示すように、保持部4と粘着ベース部11とが一体的に形成されている。このような構成によれば、構造の簡略化が図れるとともに、粘着ベース部11の粘着性が比較的に低い場合であっても、使用中に保持部4が粘着ベース部11から分離されることはない。
【0056】
<第11実施形態>
本実施形態では、図17に示すように、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8のスリット9,10が緩やかな螺旋状に形成されている。かかる場合には、カテーテル2がスリット9,10から退出され難くなり、例えば、カテーテル固定具1が外部衝撃を受けた場合であっても、不意に保持部4からカテーテル2が外れるのを抑制することができる。
【0057】
<第12実施形態>
本実施形態では、図18に示すように、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8のスリット9,10が波状に形成されている。本実施形態の構成の場合においても、第11実施形態と同様の技術的効果を奏する。
【0058】
<第13実施形態>
本実施形態では、図19に示すように、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8のスリット9,10が凹凸状に形成されている。本実施形態の構成の場合においても、第11実施形態と同様の技術的効果を奏する。
【0059】
<第14実施形態>
本実施形態では、図20に示すように、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8のスリット9,10が上側に形成されている。かかる構成を有することによって、U字状に保持されるカテーテル2が弾性により広がろうとしても、スリット9,10はカテーテル2の広がる方向に無いため、使用中にカテーテル2が退出するのを効果的に防止することができる。
【0060】
<第15実施形態>
本実施形態では、図21に示すように、粘着ベース部11の上面11aに突起部20が一体的に設けられている。この突起部20の上部には先端が拡径した複数の頭部21が一体的に設けられている。また、保持部4の第1及び第2筒状部材7,8の間には連結部22が位置し、連結部22には頭部21が弾性的に嵌合する複数の穴23が設けられている。
【0061】
このような構成によれば、粘着ベース部11の粘着性に加えて、頭部21と連結部22との篏合によって、保持部4を安定的に粘着ベース部11に固定することができる。
【0062】
<第16実施形態>
図22(a),(b)を参照すると、本実施形態に係るカテーテル固定具1は、縦方向Y,幅方向X及び厚さ方向Zを有し、略円形の基部60と、カテーテル2の中途部2aを挿通可能な保持部70とを有するベース本体50を含む。ベース本体50は、粘着層80を介して皮膚に止着される。粘着層80は、被覆フィルム(図示せず)によって被覆されている。
【0063】
保持部70は、基部60の幅方向Xの中央において、互いに並行して縦方向Yへ延びる第1及び第2筒状部材71,72を有する。
【0064】
ベース本体50は、合成ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂や熱可塑性合成樹脂等からなる難燃性かつ柔軟(軟質)性のある材料から形成することができる。このように、柔軟性材料から形成されることによって、保持部70において、カテーテル2の差し込み口が硬くなって挿入しづらいという事態を生じることはない。
【0065】
ベース本体50を構成する基部60と保持部70とは、射出成形等によって、上記の材料によって一体に形成(成形)されている。基部60と保持部70とが一体に形成されていることによって、別体に形成される場合に生産コストを抑えることができるともに、使用しているときに互いに分離してしまうことはない。また、ベース本体50に練り込むことによって、出口近傍の感染予防につなげることもできる。
【0066】
第1及び第2筒状部材71,72は、カテーテル2の中途部2aを挿通可能な中空円筒状であって、それぞれ縦方向Yへ延びるスリット71a、72aを有する。
【0067】
カテーテル2の中途部2a,2bをスリット71a,72aから保持部70の内部に挿入することによって、中途部2a,2bを保持部70の第1及び第2筒状部材71,72に挿通させることができ、また、スリット71a,72aを介して、中途部2a,2bを第1及び第2筒状部材71,72の内部から退出させることもできる。また、第1及び第2筒状部材71,72は、スリット71a,72aに沿って縦方向Yへ延びる摘み部71b,72bを有する。摘み部71b,72bを有することによって、スリット71a,72aを拡げ易くなり、カテーテル2の挿抜を容易に行うことができる。
【0068】
ベース本体50の粘着層80は、皮膚に直接止着される粘着性を有し、例えば、シリコーン樹脂又はウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ハイドロゲル、熱可塑性樹脂等の柔軟(軟質)材料から形成することができる。また、ベース本体50の基部60は、保持部70が位置する中央部分が隆起していて、外周縁に向かって次第に肉薄になる形状を有している。かかる形状を有することによって、粘着層80を被覆する被覆フィルムを使用者が指先で剥がしやすくなるといえる。ベース本体50の基部60は、図示例において、略円形状であるが、矩形状、楕円形、ひし形等の各種の形状を有していてもよい。ただし、略円形状の場合には、粘着ベース部60の周縁が肌に触れても刺激を与えるようなことはないというメリットがある。
【0069】
粘着層80は上記の材料のうち、繰り返し身体に粘着可能な再粘着性を有し、シリコーン系粘着剤又は高機能粘着性ゲルから形成することが好ましい。高機能粘着性ゲルとしては、たとえば、市販されている積水化成品工業株式会社製の「テクノゲル」(登録商標)等のように、ポリマーマトリックスの中に、水や保湿剤等の溶液や電解質を保持させた、肌に優しく安全性に優れたゲル素材を用いることが好ましい。かかるゲル素材であれば、肌がかぶれ難く、汗によって再粘着性が低下することもないといえる。
【0070】
また、水洗いは、30回程度使用するごとに行うことを想定しており、再粘着性を低下させることなく、10回程度の水洗いを可能としている。
【0071】
ベース本体50の各種寸法についていえば、例えば、保持部の内径D1は、5.0~7.0mm、基部60の厚さ寸法T1は、0.1~1.5mm、第1及び第2筒状部材71,72の厚さ寸法T2は、8.0~15.0mm、基部60の直径は、35.0~60.0mm、第1及び第2筒状部材71,72の縦寸法L1は、25.0~50.0mmである。
【0072】
また、カテーテル2の外径よりも保持部4の内径はひと回り大きくなっており、それらの間には遊びとなる離間スペースRが形成されている。具体的には、保持部4の内径D1はカテーテルの外径D2の1.1~2.0倍であることが好ましい。
【0073】
図23に示すとおり、本実施形態に係るカテール固定具1においては、第7実施形態で説明したとおり、腹部が収縮・拡張を繰り返したときに、カテーテル2の中途部2aが離間スペースRのある第1及び第2筒状部材71,72内において、身体の動きに合わせて上下方向Y及び横方向Xにおいて移動することができる。なお、図示したように、カテーテル2は、身体に対して斜めではなく、出口部から出ているカテーテル2の向きと同じ配置にすることが好ましい。
【0074】
したがって、従来のように止着テープを介してカテーテルがしっかりと固定された場合のようにカテーテルが無理に引っ張られることはなく、無理なく身体の動きに追従させることができる。
【0075】
また、保持部70自体が柔軟材料で形成されていることから、離間スペースRによる遊びと相俟って、カテーテル2の中途部2aの向きを固定した状態でより変え易くなるといえる。加えて、土台となる基部60が粘着性を有する柔軟材料から形成されていることによって、身体の動きを吸収するように変形することができるので、カテーテル2に加わる力を低減することができる。
【0076】
このように、i)保持部70内においてカテーテル2との間に離間スペースRがあること、ii)保持部70が柔軟材料から形成されていること、iii)基部60が粘着性を有する柔軟材料から形成されていること、という条件を備えることによって、患者の腹部が収縮・拡張を繰り返した際に、カテーテル2は身体の動きに追従して向きを変えることができ、固定が外れたり、それ自体が破損することを避けることができる。
【0077】
本発明に係るカテーテル固定具1によれば、カテーテル2の出口D近傍が膿んで感染症を引き起こすことを抑制することができるので、患者は腹膜透析を離脱することなく継続することができ、患者にとって時間的及び身体的、心理的な負担となる血液透析へ移行するのを避けることができる。
【0078】
また、仮にカテーテル固定具1の位置を変えるために、皮膚に対する止着と分離を繰り返し行う場合であっても、比較的に剛性の高く、かつ、粘着性の高い止着テープを繰り返し取り外して止着する場合に比べて、皮膚に対する負担が軽減されて、炎症やかぶれが生じるのを抑制することができる。
【0079】
図24を参照すると、カテーテル2が長い場合には、カテーテル2を折り返して、中途部2aを第1筒状部材71,中途部2bを第2筒状部材72に挿通している。かかる場合には、カテーテル2の中途部2aとそれに対向して位置する中途部2bとがそれぞれ第1及び第2筒状部材71,72によって被覆されることから、中途部2a,2bはその内部において向きを変えることができ、カテーテル2全体が身体の動きにより追従するように移動させることができる。
【0080】
ベース本体50に対して、抗菌剤を練り込んで抗菌性を付与してもよい。抗菌剤としては、銀イオン、銀イオン、銀イオンを担持した銀ゼオライト等の化合物やカテキンやヒノキチオール等の天然抗菌剤を好適に用いることができる。ベース本体50は、かかる抗菌性を有することによって、広範囲の細菌,黴類、例えば、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌、黒麹カビ、MRSA等に対して抗菌力が確認されており、安全で、しかも、抗菌効果の持続性がある。
【0081】
かかる出口近傍は、ベース本体50のなかでも高い抗菌性を有するように抗菌処理を施すことが好ましい。
【0082】
図25(a)~(c)は、本実施形態における実施例に係るカテーテル固定具1の一例を示すものであって、図25(a)では、ベース本体50全体に着色からなる装飾要素90が施されている。かかる装飾要素90が施されていることによって、使用者は、すぐにベース本体50の位置を把握することができる。
【0083】
また、図25(b)では、ベース本体50のうちの保持部70にのみ着色による装飾要素90が施されている。かかる場合には、保持部70から延出しているカテーテルの位置が保持部70と並行しているのか容易に視認することができ、装飾要素90はそのためのガイドとして機能しうる。
【0084】
図25(c)は、ベース本体50全体に、縦方向Yへ延びる複数条のライン91からなる縞模様の装飾要素90が施されている。このように、着色以外の模様を装飾要素として施すことによって、使用者が高齢者の場合であっても、ベース本体50及び/又は保持部70が目立ち、その位置を容易に把握することができる。また、装飾要素は、文字、模様、記号、絵図等で表示していてもよい。
【0085】
図26(a)を参照すると、本実施例においては、保持部70において第1筒状部材71と第2筒状部材72とが中央連通部73を介して互いに連通している。かかる場合には、比較的に大きな外径を有するカテーテル2であっても第1筒状部材71の内部と第2筒状部材72の内部とを跨ぐように挿通させることができる。
【0086】
図26(b)を参照すると、本実施例においては、保持部70の第1及び第2筒状部材71,72がそれぞれ分離していて、巻回された部分の先端71c,72cが先鋭状になっている。かかる場合には、第1及び第2筒状部材71,72でカテーテル2の上面を抑えるようにして保持することができ、挿抜操作がより容易になる。また、巻回された部分の先鋭状の先端71c,72cがカテーテル2に当接されることで、カテーテル2の移動のガイドとなり、かつ、第1及び第2筒状部材71,72の内部から不意に離脱するのを抑制することができる。
【0087】
なお、図示していないが、保持部70の第1及び第2筒状部材71,72の内周面に縦方向Yへ延びる複数条のリブを設けていてもよいし、複数のドット状の突起を設けていてもよい。かかる場合には、リブや突起がカテーテルに当接されて、カテーテルを内部において安定的に保持することができる。
【0088】
また、図示してないが、第16実施形態に係るカテーテル固定具1に対し、第1~第15実施形態に係る特徴を適用することができ、これらの特徴の一部又は複数の特徴を組み合わせて適用することも可能である。
【0089】
上記本発明は、少なくとも下記実施形態を含むことができる。実施形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
(1)前記基部は、略円形状である。
(2)前記ベース本体に抗菌剤が練り込まれることで抗菌性が付与されている。
(3)前記保持部は、前記縦方向へ延びる中空円筒状の第1及び第2筒状部材を有し、前記第1及び第2筒状部材は、前記縦方向に沿って延びるスリットを有する。
(4)請求項ベース本体の外面に装飾要素が施されている。
【符号の説明】
【0090】
1 カテーテル固定具
2 カテーテル
3 カバー部
4 保持部
7 第1筒状部材
8 第2筒状部材
9 スリット
10 スリット
11 粘着ベース部
B 身体
D 出口
R 離間スペース
S 皮膚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27