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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066515
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】空気酸化型染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240508BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q5/10
A61K8/34
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187087
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022174497
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真実
(72)【発明者】
【氏名】安永 芽生
(72)【発明者】
【氏名】水野 紗也
(72)【発明者】
【氏名】松林 潤
(72)【発明者】
【氏名】今井 陽介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB082
4C083AB312
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC542
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD642
4C083BB11
4C083BB12
4C083CC36
4C083DD08
4C083EE03
4C083EE05
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】エアゾール式の空気酸化型染毛剤において、メラニン前駆体の凝集抑制によりエアゾール容器の吐出不良を防止し、併せて使用前におけるメラニン前駆体の酸化重合の抑制により染毛力の劣化を防止する。
【解決手段】(A)成分:メラニン前駆体及び(B)成分:油性成分を含有し、(B)成分の使用時含有量が0.1~30質量%、総アルカリ度が5.0ml/g以下であり、エアゾール式で吐出して毛髪に塗布する空気酸化型染毛剤。
(A)メラニン前駆体
(B)油性成分
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を含有し、使用時において(B)成分の含有量が0.1~30質量%、総アルカリ度が5.0ml/g以下であり、エアゾール式で吐出して毛髪に塗布する空気酸化型染毛剤。
(A)メラニン前駆体
(B)油性成分
【請求項2】
更に下記(C)成分を含有する請求項1に記載の空気酸化型染毛剤。
(C)多価アルコール
【請求項3】
前記(B)成分がエステル油又はロウ類を含む請求項1又は請求項2に記載の空気酸化型染毛剤。
【請求項4】
前記ロウ類の融点が75℃以下であり又は針入度が5以上である請求項3に記載の空気酸化型染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪色素であるメラニンの前駆体を酸化染料として用い、これを空気酸化により重合・発色させる空気酸化型染毛剤に関し、より具体的には、1剤式又は複数剤式であって使用時にエアゾール式で吐出して塗布する空気酸化型染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
5,6-ジヒドロキシインドールや5,6-ジヒドロキシインドリン又はそれらの塩等はメラニン前駆体と呼ばれ、空気酸化により重合・発色してメラニンとなる。この点を利用して、酸化剤を配合しない空気酸化型染毛剤が提供されている。
【0003】
特許文献1は、所定の一般式で示すインドリン誘導体又はその塩及びアミン又はその塩を必須成分とする一剤式空気酸化型染毛剤組成物を開示する。組成物のpHを8.5~11の範囲内に調整することにより、染毛力に優れ赤味のない黒色に染毛できる一剤式の染毛剤組成物を提供できる、としている。
【0004】
特許文献2は、5,6-ジヒドロキシインドール又はその塩類、及びアスコルビン酸又はその塩類を含有するpH3~8のa剤と、アルカリ剤等を含有しpH8~11のb剤とを備えた空気酸化型の2剤型染毛剤を開示する。この2剤型染毛剤は使用時において、まずa剤を毛髪に適用してしばらく放置した後、これを拭き取ってb剤を毛髪に適用する「2度塗り」方式である。
【0005】
以上の特許文献1、2から示唆されるように、従来、メラニン前駆体の酸化重合反応には一定のpH依存性があるとされており、一般的にpH8~11程度の範囲が好ましいと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-322037号公報
【特許文献2】特開2018-52833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来はほとんど注目されていないが、空気酸化型染毛剤に含有させたメラニン前駆体は、当該空気酸化型染毛剤の組成等によっては凝集性を示すことが判明した。「凝集性」とは、メラニン前駆体が重合により高分子量のメラニンを形成することなく、メラニン前駆体のままで多数集合して凝集体(Aggregation)を形成することを言う。
【0008】
エアゾール式で吐出する空気酸化型染毛剤において、エアゾール容器の吐出路内面にメラニン前駆体の凝集が起こると、エアゾール容器からの吐出量が不安定化する恐れがある。また、エアゾール容器の吐出口部分にメラニン前駆体の凝集が起こると、この部分の空気酸化型染毛剤が固化し易くなり、吐出口の狭窄により不連続な吐出となったり、一時的に吐出できなくなる等の不具合を生じる恐れがある。
【0009】
一方、前記特許文献1に記載の空気酸化型染毛剤は1剤式であるが、メラニン前駆体がアルカリ性の剤に含有されているため、アスコルビン酸等の還元剤を併せ配合しても、使用前にメラニン前駆体の酸化重合がある程度進行する。重合により高分子化したメラニンは毛髪中へ浸透し難いため、染毛処理後の水洗い等により毛髪から脱落し易くなり、染毛力が劣る結果となる。
【0010】
前記特許文献2に記載の空気酸化型染毛剤のように2剤式に構成し、メラニン前駆体を酸性の剤に含有させれば、保管時におけるメラニン前駆体の重合反応を回避できる。そして使用時には、酸性の剤とは別途に準備したアルカリ性の剤を混合すれば、メラニン前駆体の空気酸化による重合反応を起こすことができる。
【0011】
しかし、特許文献2に記載の2剤型空気酸化型染毛剤は「2度塗り」であって、手間の点でも、所要時間の点でも、使用者にとって負担が大きい。特許文献2の発明が敢えて面倒な2度塗り方式を採用する理由として、以下の事情が推測される。
【0012】
即ち、特許文献2に記載のa剤とb剤とを予め混合して毛髪に同時塗りすると、メラニン前駆体が毛髪中へ十分に浸透する前に、その酸化重合反応による高分子化が進行し、毛髪中に十分に浸透した状態においてメラニンを形成することができない。そのため、染毛力が不十分となる。a剤とb剤とを予め混合せずに頭髪に順次適用し、頭髪上で混合する場合でも、結果的にa剤とb剤の同時塗りの状態となるので、上記同様の結果を来たすと考えられる。
【0013】
換言すれば、特許文献2に記載の2剤型空気酸化型染毛剤は特許文献1に記載の一剤式染毛剤における「使用前のメラニン前駆体の高分子化」と言う不具合を回避しているが、反面、十分な染毛力を得るために不便な2度塗りを余儀なくされている。
【0014】
そこで本発明は、エアゾール式の空気酸化型染毛剤において、メラニン前駆体の凝集を抑制して、エアゾール容器の吐出量の不安定化や吐出の困難を防止することを第1の課題とする。
【0015】
また本発明は、保管時にメラニン前駆体の酸化重合反応が進行し高分子化して染毛力が劣化したり、空気酸化型染毛剤の塗布によって染毛力が劣化したりする恐れがない空気酸化型染毛剤を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、下記の(A)成分及び(B)成分を含有し、使用時において(B)成分の含有量が0.1~30質量%、総アルカリ度が5.0ml/g以下であり、エアゾール式で吐出して毛髪に塗布する空気酸化型染毛剤である。
【0017】
(A)メラニン前駆体
(B)油性成分
上記の第1発明において「総アルカリ度」とは、試料中の酸消費成分量あるいは試料中のアルカリ由来の遊離[OH]量を意味するパラメーターである。具体的には試料である空気酸化型染毛剤1gを0.1Nの塩酸で中和滴定したときに要した塩酸のmL単位の量を言う。なお、空気酸化型染毛剤が、アルカリ剤の種類により、又は2種以上のアルカリ剤の配合により、複数の中和点を示す場合があるが、このような場合の総アルカリ度とは、最後の中和点までに消費した上記塩酸のmL単位の量を言う。
【0018】
第1発明の空気酸化型染毛剤は、好ましくは1剤式に構成されるが、酸性の剤とアルカリ性の剤との2剤式等の複数剤式として構成しても良い。
本明細書において、複数剤式の空気酸化型染毛剤においては、「使用時」とは使用時に混合すべき各剤の混合状態を意味し、「同時塗り」とは複数剤の各剤が一緒に毛髪に適用された状態とすることを言う。同時塗りのためには、複数剤の各剤を予め混合して毛髪に適用しても良く、混合せずに各剤を順次毛髪に適用しても良い。特許文献2に記載の発明との基本的な相違点は、アルカリ性の剤(b剤)の適用前に、既に適用した酸性の剤(a剤)を拭き取る必要がない点である。1剤式の空気酸化型染毛剤においては、「使用時」、「同時塗り」は単に文字通りの意味である。
【0019】
更に、複数剤式の空気酸化型染毛剤に関しては、第1に、(A)成分及び(B)成分は同一の剤、即ち酸性の剤に含有され、第2に、酸性の剤中の(B)成分含有量、及び使用時に混合すべき各剤の混合物中の(B)成分含有量が0.1~30質量%の範囲内である。
【0020】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明においては、前記第1発明に係る空気酸化型染毛剤が、更に下記(C)成分を含有する。
【0021】
(C)多価アルコール
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明においては、前記第1発明又は第2発明に係る空気酸化型染毛剤の(B)成分がエステル油又はロウ類を含む。
【0022】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明においては、第3発明に係る空気酸化型染毛剤の(B)成分であるロウ類の融点が75℃以下であり又は針入度が5以上である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メラニン前駆体の凝集抑制によりエアゾール容器の吐出不良を防止し、併せて使用前におけるメラニン前駆体の酸化重合の抑制により染毛力の劣化を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施形態によって限定されない。
〔エアゾール容器〕
本発明の空気酸化型染毛剤に用いるエアゾール容器の種類、構成等は特に限定されず、例えば空気酸化型染毛剤が1剤式であれば、充填した噴射剤の作用により単一のエアゾール缶から空気酸化型染毛剤が吐出される単缶式のエアゾール容器が用いられる。例えば空気酸化型染毛剤が2剤式であれば、結束された二つのエアゾール缶から空気酸化型染毛剤の二つの剤が吐出される連管式のエアゾール容器が用いられる。
【0025】
2剤式の空気酸化型染毛剤であれば、例えば、1対のエアゾール缶から噴射剤の作用により空気酸化型染毛剤の第1剤と第2剤がそれぞれ吐出される2連缶式のエアゾール容器や、噴射剤を充填した1個のエアゾール缶の内部に、第1剤と第2剤とをそれぞれ充填した2個の吐出用ステム付きの内袋を収容し、これらの内袋が常に同一の吐出圧下に吐出されるようにした分離充填同一加圧型の二重構造エアゾール容器等が用いられる。
【0026】
エアゾール容器としては、限定はされないが、吐出器付きの一般的なエアゾール容器を例示できる。即ち、金属製の堅牢な有底筒状のエアゾール容器の内部に空気酸化型染毛剤とLPG等である噴射剤を充填した内袋を収容している。内袋の上端部は開口していて、吐出路を経由して吐出器のステムに連通し、更に空気酸化型染毛剤の吐出口であるノズルに連通している。そして、吐出器に付設した吐出用レバーを押し下げると、ステムのバルブが開口し、噴射剤の圧力により、空気酸化型染毛剤がノズルから吐出される。
【0027】
〔噴射剤〕
エアゾール容器における噴射剤の充填形態としては、エアゾール容器の内側に内袋を設けて空気酸化型染毛剤を収納すると共に内袋の内部を除くエアゾール容器の内側空間に噴射剤を充填した形態や、エアゾール容器の内側に空気酸化型染毛剤と噴射剤を併せ充填した形態を例示できるが、これらの充填形態に限定されない。
【0028】
噴射剤としては、例えば、液化石油ガス、窒素ガス、炭酸ガス、代替フロン等、一般にエアゾール製品に用いられるものや、圧縮空気等を用いることが出来る。これらの中でも特に変質防止の面から、窒素ガスが好ましい。エアゾール容器内の圧力は、使用性の面から、25℃において0.2~1.2MPaの範囲内であることが好ましい。
【0029】
〔エアゾール容器からの吐出物の飛び散り〕
エアゾール容器に充填した空気酸化型染毛剤がエアゾール容器の内部(例えば吐出路や吐出口部分)で凝集や固化を起こすと、空気酸化型染毛剤の吐出量の変動や不連続な吐出が起こり得る。一方、そのような状態では、吐出路内部に空気酸化型染毛剤の凝集物や固化物が固着しているので、吐出を再開した際に、吐出路内部に固着していた上記凝集物や固化物が吐出圧によって急激に吐出口から吐出される。その結果、吐出の瞬間に吐出物が飛び散るという不具合を生じる。
【0030】
空気酸化型染毛剤における吐出物の飛び散りを防止するためには、以下に述べる空気酸化型染毛剤の組成や物性に関する特徴的な構成に加え、エアゾール容器に以下の構成を備えさせることが好ましい。
【0031】
1)エアゾール流路全体を通して最も狭いステムの内径を0.5mm前後とする。
2)エアゾール容器の吐出口は円形、横方向に広い楕円形又は長円形等の角部のない形状とする。
【0032】
3)前記吐出口の内径は短径部で3~6mm前後とする。
〔空気酸化型染毛剤〕
本発明の空気酸化型染毛剤は、毛髪色素であるメラニンの前駆体を用い、これを空気酸化により重合・発色させる。この染毛剤は少なくとも(A)成分であるメラニン前駆体と、(B)成分である油性成分を含有する。
【0033】
空気酸化型染毛剤は1剤式、酸性の剤とアルカリ性の剤との2剤式、あるいはこれらの剤に任意の組成を持つ付加的な剤を加えた複数剤式に構成できる。空気酸化型染毛剤を構成する各剤の剤型は限定されないが、水を基材とする液状の剤型が好ましい。各剤の内の一部の剤を粉末状又は顆粒状とすることもできる。液状の剤型としては、限定はされないが、可溶化物(溶液状)、乳化液状、ゲル状、クリーム状等が例示される。特に乳化液状、クリーム状が好ましい。
【0034】
〔乳化液状、クリーム状の空気酸化型染毛剤における乳化粒子径〕
空気酸化型染毛剤が乳化液状又はクリーム状である場合、その流動性向上により染毛剤の凝集・固化を抑制する見地から、それらの平均乳化粒子径は、例えば体積基準のメジアン径で50μm以下であることが好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。この測定は、例えば日機装株式会社製のレーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT3000II)あるいはこれと同質の装置を用いて測定することができる。
【0035】
〔pH及び総アルカリ度〕
空気酸化型染毛剤のpHは、使用時において、好ましくはpH8~11、より好ましくはpH8.5~10.5、特に好ましくはpH9~10.5の範囲内である。pHは、空気酸化型染毛剤を水で10%に希釈した直後に測定した値である。空気酸化型染毛剤の使用時のpHが8未満である場合にはpHが低いことにより染毛性能が低下する恐れがあり、pHが11を超える場合には毛髪のダメージが大きくなる恐れがある。
【0036】
〔空気酸化型染毛剤の粘度〕
空気酸化型染毛剤の粘度の測定は、例えばB型粘度計(東機産業社製 TV-10型)を用いて行う。測定条件は、例えば25℃に調温し、4号ローターを用いて回転速度12rpmで1分間の条件(r12)又は30rpmで1分間の条件(r30)で測定することができる。
【0037】
空気酸化型染毛剤の粘度について、チキソトロピー性を利用して流動性を向上させることにより、凝集・固化を抑制することができる。具体的には、上記したr12の測定条件での粘度に対するr30の測定条件での粘度の比〔r30/r12〕が0.1を超え、1.0未満であることが好ましく、0.2~0.9であることがより好ましく、0.3~0.8であることがさらに好ましく、0.4~0.7であることが特に好ましい。
【0038】
空気酸化型染毛剤がエアゾール容器から吐出される際、その吐出の前後における空気酸化型染毛剤の粘度比〔(吐出後粘度)/(吐出前粘度)〕は、特に制限はされないが、空気酸化型染毛剤の凝集・固化の抑制の見地から、0.1~10の範囲内であることが好ましく、0.3~5.0であることがより好ましく、0.5~3.0であることがさらに好ましく、0.8~1.5であることが特に好ましい。
【0039】
染毛剤は、高い染毛力及び吐出量の変動抑制を実現する見地から使用時において総アルカリ度を5.0ml/g以下とする必要があるが、より好ましくは4.5ml/g以下、特に好ましくは4.4ml/g以下である。空気酸化型染毛剤をpH8~11の範囲内とし、かつ総アルカリ度5.0ml/g以下とするための効果的な手段が、アルカリ剤として、アンモニアと共に、あるいはアンモニアに代えて、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等の炭酸塩、及び/又は炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)等の重炭酸塩を用いることである。この場合における炭酸塩及び/又は重炭酸塩の混合時の合計含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。一方、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。
【0040】
〔(A)成分〕
(A)成分であるメラニン前駆体の種類は限定されないが、例えば5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドリンが例示される。5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸その他の、メラニン前駆体の各種誘導体も例示される。更に、これらの誘導体の塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等の塩類も例示される。本発明では、このような(A)成分の1種以上を任意に選択して用いることができる。
【0041】
(A)成分の含有量は限定されないが、1剤式の空気酸化型染毛剤において、あるいは複数剤式の空気酸化型染毛剤における各剤混合時に、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。また、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。(A)成分の含有量が0.001質量%以上であると染毛力に優れ、2.0質量以下であると毛髪外で(A)成分が重合してしまう割合が低くなり、(A)成分の配合量に応じた染毛効果が得られ易くなり、また、メラニン前駆体の凝集を抑制しやすくなる。
【0042】
(A)成分を含有する剤は、pH調整剤、及び(A)成分の保存安定性を高めるための還元剤を含有することができる。pH調整剤としては、塩酸、オルトリン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等の各種の酸を使用できる。その他、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルキルアミン等のアルカリも適宜に使用することができる。これらの内、リン酸、乳酸、アンモニア、エタノールアミンが特に好ましい。還元剤としては、アスコルビン酸、亜硫酸塩、L-システイン、チオグリコール酸等を使用できる。これらの内、アスコルビン酸、亜硫酸塩が特に好ましい。還元剤の含有量は限定されないが、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0043】
〔(B)成分〕
(B)成分である油性成分の種類は限定されないが、高級アルコール、ロウ類、炭化水素、植物油、動物油、エステル油、脂肪酸、シリコーン類等が挙げられる。これらの内、ロウ類、エステル油、25℃で液状の炭化水素が特に好ましい。更に、ロウ類の内、融点が75℃以下のものが好ましく、72℃以下のものがとりわけ好ましい。これらの油性成分を使用することにより、メラニン前駆体の凝集をより有効に防止できる。
【0044】
また、ロウ類の内、針入度が5以上であるものが好ましく、針入度が30以上であるものがとりわけ好ましい。なお、針入度は、25±0.1℃に保ったワックスの試料に、規定の針(針の質量2.5±0.02g、針保持具の質量47.5±0.02g、おもりの質量50±0.05g)が、5秒間に針入する長さを測定し、その針入距離(mm)を10倍した値を針入度とするものであり、JISK-2235-5.4(1991年)に準じて測定した値である。
【0045】
エステル油としては、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル等が例示されるが、25℃で液状のエステル油が好ましく、その中でも特に分岐高級脂肪酸とアルコールとのエステル油が好ましい。とりわけ好ましくはオクタン酸セチルである。
【0046】
ロウ類としては、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバ油等の他にも、例えばイボタロウ、鯨ロウ等が例示されるが、これらの中でも、融点が75℃以下又は針入度が5以上のロウ類であるミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバ油等が特に好ましい。
【0047】
高級アルコールとしてはラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等が例示され、中でも分岐状の高級アルコールが好ましく、オレイルアルコールがとりわけ好ましい。炭化水素としてはパラフィン、ワセリン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン等が例示され、植物油としてはアボカド油、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ツバキ油、大豆油、ナタネ油、コメヌカ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等が例示され、動物油としてはミンク油、いわし油、たら肝油、羊脂、牛脂、豚脂、卵黄油等が例示され、脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸等が例示され、シリコーン類としてはジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が例示される。
【0048】
(B)成分の使用時含有量は0.1~30質量%の範囲内であるが、5~25質量%の範囲内であることがより好ましく、10~20質量%の範囲内であることが特に好ましい。(B)成分の使用時含有量が0.1質量%未満であると、(A)成分であるメラニン前駆体の凝集を有効に防止できない。また、(B)成分の使用時含有量が30質量%を超えると、空気酸化型染毛剤の染毛力を確保できない。
【0049】
〔(C)成分〕
(C)成分である多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類、脂環式ポリオール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が例示され、グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が例示され、脂環式ポリオールとしては、シクロペンタンのポリオールや、イノシトール等のシクロヘキサンのポリオールが例示される。なかでも、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG100, PEG200, PEG400, PEG600, PEG1000, PEG1540等)、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンが好ましく、それらの内、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールがとりわけ好ましい。
【0050】
(C)成分の使用時含有量は0.1~15質量%の範囲内であるが、0.5~12質量%の範囲内であることがより好ましく、1~10質量%の範囲内であることが特に好ましい。かかる範囲内の場合、メラニン前駆体の凝集をより抑制し、エアゾール容器の吐出不良をより防止することができる。
【0051】
〔空気酸化型染毛剤の任意成分〕
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、アンモニアの他に、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等の炭酸塩、更に炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)等の重炭酸塩を好ましく用いることができる。
【0052】
アルカリ剤の好ましい実施形態として、28%アンモニア水等のアンモニアと炭酸ナトリウムの併用、アンモニア、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)の併用、アンモニアと炭酸水素アンモニウムの併用、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの併用を例示できる。炭酸塩や重炭酸塩の含有量は限定されないが、各剤の混合時に0.001~2.5質量%の範囲内、より好ましくは0.01~1.5質量%の範囲内である。
【0053】
アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩以外のアルカリ剤として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミン等のアルカノールアミンが例示される。ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩も例示される。各種のメタケイ酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸、水酸化物等も例示される。
【0054】
(酸化剤)
空気酸化型染毛剤は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、過硫酸アンモニウム等の酸化剤を基本的に含有しない。もし酸化剤を含有するとしても、その含有量は空気酸化型染毛剤中の0.5質量%以下である。
【0055】
(後発泡剤)
空気酸化型染毛剤は、後発泡剤を含有し、空気酸化型染毛剤の使用環境下(通常、常温、大気圧下)で後発泡剤が気化して発泡する後発泡性組成物とすることもできる。後発泡剤は、エアゾール容器等の高圧環境下から常温、大気圧下などの空気酸化型染毛剤の使用環境下に吐出されると空気酸化型染毛剤を発泡させるような成分であればよく、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられる。特に、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタンが好ましい。
【0056】
空気酸化型染毛剤における後発泡剤の含有量は、0.5~20質量%が好ましい。後発泡剤を0.5質量%以上配合することにより、空気酸化型染毛剤の良好な泡が形成される。また、20質量%以下とすることにより、吐出後すぐに発泡することを抑制できるため、クリーム状やゲル状のまま毛髪へ適用することができる。
【0057】
また、後発泡剤の発泡を遅延させるため、後発泡剤の分散安定剤として多価アルコールを配合することが好ましい。多価アルコールとしては1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等が例示される。
【0058】
(直接染料)
空気酸化型染毛剤は、また、染毛効果を補強するための直接染料を含有することができる。直接染料の種類は限定されないが、酸性染料、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が例示される。直接染料の含有量は0.001~1質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.01~0.6質量%の範囲内である。
【0059】
酸性染料としては黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、青色1号、紫色401号、酸性橙3等が例示され、ニトロ染料としては2-ニトロパラフェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-ニトロオルトフェニレンジアミン、HC青2、HC橙1等が例示され、分散染料としては分散紫1、分散青1、分散黒9等が例示され、塩基性染料としては塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性赤51、塩基性黄57、塩基性黄87等が例示される。
【0060】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤を任意に含有することができる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と言う)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、モノオレイン酸POEソルビタン、POEメチルグルコシド等が例示され、カチオン界面活性剤としてはアルキルトリメチルアンモニウム又はその塩、ジアルキルジメチルアンモニウム又はその塩、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が例示され、アニオン界面活性剤としてはアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が例示され、両性界面活性剤としてはラウラミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が例示される。
【0061】
〔含有量比(高級アルコール)/(界面活性剤)〕
本発明の空気酸化型染毛剤における界面活性剤の含有量に対する高級アルコールの含有量比(高級アルコール)/(界面活性剤)が使用時に0.1~10.0の範囲内にあると、空気酸化型染毛剤の流動性が向上し、メラニン前駆体の凝集防止に有効であり、ひいては染毛性能の向上にもつながる。さらに空気酸化型染毛剤における界面活性剤の含有量に対する高級アルコールの含有量比(高級アルコール)/(界面活性剤)が使用時に、0.5~7.5であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.5~3.0であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の空気酸化型染毛剤には、上記の任意成分以外に、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、エタノール等の有機溶剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液、塩化ジアリルジメチルアンモニウム・ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化水溶性高分子、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液等のキレート剤、塩化ナトリウム等の無機塩、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤等を任意に含有できる。
【0063】
本実施形態の空気酸化型染毛剤の効果について説明する。
(1)第1発明の効果
第1発明の空気酸化型染毛剤は使用時に0.1~30質量%の(B)成分を含有するので、(A)成分であるメラニン前駆体の凝集が有効に抑制される。その結果、エアゾール容器の吐出路内面でメラニン前駆体が凝集してエアゾール容器の吐出量が不安定化したり、エアゾール容器の吐出口部分でメラニン前駆体が凝集して、空気酸化型染毛剤の固化に基づく吐出口の狭窄化により間欠的な吐出となったり、一時的に吐出できなくなる等の不具合が防止される。
【0064】
次に、空気酸化型染毛剤の総アルカリ度が5.0ml/g以下であるため、保管時(使用前)及び使用時におけるメラニン前駆体の酸化重合反応が遅延するので、メラニン前駆体の毛髪への浸透後に酸化重合反応が起こる。その結果、酸化重合したメラニンが染毛処理後の水洗い等により毛髪から脱落し難く、優れた染毛力が発揮される。
【0065】
(2)第2発明の効果
第2発明によれば、空気酸化型染毛剤が更に(C)成分である多価アルコールを含有するので、上記したメラニン前駆体の凝集や空気酸化型染毛剤の固化が一層良好に抑制される。
【0066】
(3)第3発明の効果
第3発明によれば、(B)成分がエステル油又はロウ類を含むので、上記した(B)成分によるメラニン前駆体の凝集抑制効果、空気酸化型染毛剤の固化抑制に基づくエアゾール容器の吐出不良の防止効果が一層高くなる。
【0067】
(4)第4発明の効果
第4発明によれば、(B)成分であるロウ類の融点が75℃以下又は針入度が5以上であるので、(B)成分によるメラニン前駆体の凝集抑制効果、空気酸化型染毛剤の固化抑制に基づくエアゾール容器の吐出不良の防止効果がとりわけ高くなる。
【実施例0068】
以下に本発明の実施例を、対応する比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例、比較例によって限定されない。
〔空気酸化型染毛剤の調製〕
末尾の表1に示す実施例1~8、表2に示す実施例9~16、表3に示す実施例17~21、表4に示す実施例22,23、及び表5に示す比較例1~4に係る1剤式又は2剤式の空気酸化型染毛剤を常法に従ってクリーム状に調製した。各実施例及び各比較例が含有する成分中、本発明の(A)、(B)、(C)成分に該当するものには成分名の左側欄外にそれぞれ「A」、「B」、「C」と表記した。
【0069】
なお、比較例1は空気酸化型染毛剤中の28%アンモニアを増量することで剤の総アルカリ度を本発明の規定範囲より高くしたものであり、比較例2は空気酸化型染毛剤中の炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを増量することで剤の総アルカリ度を本発明の規定範囲より高くしたものであり、比較例3は空気酸化型染毛剤中の(B)成分含有量を本発明の規定範囲より多くしたものであり、比較例4は空気酸化型染毛剤中の(B)成分を欠落させたものである。
【0070】
表中の成分名「ジヒドロキシインドリンHBr」はジヒドロキシインドリン臭化水素塩を、「ジヒドロキシインドールHBr」はジヒドロキシインドール臭化水素塩を、「PEG-8」はポリエチレングリコール-8を、「PG」はプロピレングリコールを表す。更に、(B)成分として用いたマイクロクリスタリンワックス及びキャンデリラロウについては、それぞれ融点と針入度の数値を表記した。「水」は精製水である。各実施例及び各比較例における成分の含有量は質量%単位の表記である。また、表3中の「高級アルコール/界面活性剤」は、空気酸化型染毛剤における界面活性剤の含有量に対する高級アルコールの含有量比を示す。
【0071】
〔空気酸化型染毛剤の評価〕
次に各実施例、比較例に係る空気酸化型染毛剤について吐出量の変動、吐出の連続性、染毛力、累積染毛力を、それぞれ下記の評価方法及び評価基準に基づき評価した。エアゾール容器として、充填した噴射剤の作用により単一のエアゾール缶から空気酸化型染毛剤が吐出される単缶式又はそれらを連結した2連缶式のエアゾール容器を用いた。
【0072】
(吐出量の変動)
各実施例及び比較例に係る空気酸化型染毛剤をそれぞれエアゾール容器に充填した後、50℃で2か月間保管した。その保管後、常温に戻してから専門パネリストにより吐出試験を行った。吐出試験は、5秒間の吐出を行ってその間の吐出量を測定しながら全量吐出が終わるまで5秒間吐出を繰り返し、各5秒間吐出に係る吐出量の測定値の全体としての変動幅(バラ付き)を以下の評価基準に基づきランク付けした。評価結果を表1~5の「吐出量の変動」の項に示す。
【0073】
5 変動幅が2%未満であった。
4 変動幅が2%以上で3%未満であった。
3 変動幅が3%以上で4%未満であった。
【0074】
2 変動幅が4%以上で5%未満であった。
1 変動幅が5%以上であった。
(吐出の連続性)
各実施例及び比較例に係る空気酸化型染毛剤を、それぞれエアゾール容器に充填して専門パネリストにより5秒間の吐出を行ってから、室温にて24時間静置した。その静置後、エアゾール容器からの空気酸化型染毛剤の吐出を10秒間継続し、以下の評価基準に基づき吐出の間欠性を評価した。評価結果を表1~5の「吐出の連続性」の項に示す。
【0075】
5 10秒の間、滑らかで連続的な吐出が続いた。
4 10秒の間、連続的な吐出が続いたが、吐出の勢いに僅かな変化があった。
3 10秒の間、連続的な吐出が続いたが、吐出の勢いに有意な変化があった。
【0076】
2 吐出が途切れそうな瞬間があり、連続的な吐出が続いたとは言えない。
1 吐出が一時的に途切れた。
(染毛力)
各実施例、各比較例に係る空気酸化型染毛剤1gを、刷毛を用いてビューラックス社製の長さ10cmの白色毛束サンプル1gに均一に塗布した。塗布後の毛束サンプルを30℃の恒温槽中で10分間放置した後、水洗いした。水洗い後の毛束サンプルを温風で乾燥し、評価用毛束サンプル(これを「1回処理サンプル」と呼ぶ)を得た。
【0077】
各実施例、各比較例に係る評価用毛束サンプルの染毛状態について、訓練を受けた専門のパネリスト10名が目視にて、以下5段階の評価基準のポイントに基づき、染毛力をポイントで評価した。各パネリストは評価に当たり、5段階の評価基準を具体的に示す染毛毛束サンプル見本を参照した。各実施例、各比較例ごとに10名のパネリストの評価点の平均値をとり、小数点以下の数値がある場合はこれを四捨五入して、評価点を決めた。評価結果を表1~5の「染毛力」の項に示す。
【0078】
5:染毛力が非常に高い。
4:染毛力が高い。
3:染毛力がやや高い。
【0079】
2:染毛力が低い。
1:染毛力が非常に低い。
(累積染毛力)
上記と同じ白色毛束サンプルを用い、各実施例、各比較例に係る空気酸化型染毛剤による上記の通りの染毛試験を3回繰り返して、各実施例、各比較例に係る評価用毛束サンプル(これを「3回処理サンプル」と呼ぶ)を得た。そして前記1回処理サンプルとの対比観察により、以下の評価基準に基づき、累積染毛力を評価した。評価結果を表1~5の「累積染毛力」の項に示す。
【0080】
5 1回処理サンプルよりも大幅に染まっている。
4 1回処理サンプルよりも有意に染まっている。
3 1回処理サンプルよりもやや染まっている。
【0081】
2 1回処理サンプルよりも僅かに染まっている。
1 1回処理サンプルと同等の染まりである。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、メラニン前駆体の凝集抑制によりエアゾール容器の吐出不良を防止し、併せて使用前におけるメラニン前駆体の酸化重合の抑制により染毛力の劣化を防止できるエアゾール式の空気酸化型染毛剤が提供される。