(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066520
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】スクロールコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
F04C18/02 311G
F04C18/02 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187202
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】202211347380.7
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】523413367
【氏名又は名称】マーレ オートモーティヴ テクノロジーズ (スーヂョウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAHLE Automotive Technologies (Suzhou) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.12 Mahle Road, New & Hi-tech Industrial Development Zone, Changshu 215500, Jiangsu Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニック リャン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー フアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ スー
(72)【発明者】
【氏名】ミア ファン
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB15
3H039BB28
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC24
3H039CC26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】渦巻き体の内部の圧縮室の漏れを減じ、これによりコンプレッサの性能を向上させることができるスクロールコンプレッサを提供する。
【解決手段】スクロールコンプレッサの固定渦巻き体は、ケーシング内に、ケーシングの軸線方向に沿って可動に配置されており、可動渦巻き体と協働し、可動渦巻き体と固定渦巻き体との間に圧縮室が形成されている。背圧板は、ケーシング内に配置されており、かつ固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対側に配置されており、固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対側の端面に第1の溝が設けられており、背圧板と第1の溝との間に背圧室が形成されており、背圧室が圧縮室に連通している。シーリングアセンブリは、背圧板および/または固定渦巻き体上に配置されている。これにより、シール効果を向上させることができ、渦巻き体の内部の圧縮室の漏れを低減することができ、ひいては性能が向上させられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロールコンプレッサであって、ケーシング、可動渦巻き体、固定渦巻き体、背圧板およびシーリングアセンブリを含み、
前記可動渦巻き体は、前記ケーシング内に回転可能に配置されており、前記固定渦巻き体は、前記ケーシング内に、該ケーシングの軸方向に沿って可動に配置されており、かつ前記可動渦巻き体と協働し、前記可動渦巻き体と前記固定渦巻き体との間に圧縮室が形成されており、
前記背圧板は、前記ケーシング内に配置されており、前記固定渦巻き体の、前記可動渦巻き体とは反対の側に配置されており、前記固定渦巻き体の、前記可動渦巻き体とは反対側の端面に、第1の溝が設けられており、前記背圧板と前記第1の溝との間に背圧室が形成されており、前記背圧室は、前記圧縮室に連通しており、
前記シーリングアセンブリは、前記背圧板および/または前記固定渦巻き体上に配置されていることを特徴とする、スクロールコンプレッサ。
【請求項2】
前記固定渦巻き体に、前記軸方向に沿って延びる第1のガス補給通路が設けられており、該第1のガス補給通路の一方の端部が、前記圧縮室に連通しており、前記第1のガス補給通路の他方の端部が、前記背圧室に連通していることを特徴とする、請求項1記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項3】
前記背圧板の、前記固定渦巻き体とは反対側の端面上に、第2の溝が設けられており、前記第2の溝と前記ケーシングの端部との間に高圧室が形成されており、該高圧室が前記背圧室に連通していることを特徴とする、請求項1記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項4】
前記背圧板に、前記軸方向に沿って延びる第2のガス補給通路が設けられており、前記第2のガス補給通路の一方の端部が、前記高圧室に連通しており、前記第2のガス補給通路の他方の端部が、前記背圧室に連通していることを特徴とする、請求項3記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項5】
前記ケーシングの前記端部に、端部カバーが設けられており、前記端部カバーに、第3の溝が設けられており、該第3の溝と前記第2の溝とが、前記高圧室を形成するために組み合わせられており、
前記端部カバーに、ガス取出し部が設けられており、該ガス取出し部は、前記高圧室に連通していることを特徴とする、請求項3記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項6】
前記固定渦巻き体に、第1の貫通孔が設けられており、前記背圧板に、第2の貫通孔が設けられており、前記圧縮室、前記第1の貫通孔、前記第2の貫通孔および前記ケーシングの前記ガス取出し部が連続的に接続されており、
前記第1の溝に、突出構造体が設けられており、前記第1の貫通孔は、前記突出構造体に開口しており、
前記シーリングアセンブリは、第1のシーリングリングおよび第2のシーリングリングを含み、前記第1のシーリングリングは、前記突出構造体に対向する位置に配置されており、前記第1のシーリングリングは、前記第1の貫通孔の周辺部に配置されており、これにより前記第1の貫通孔は、前記第1の溝から分離されており、
前記第2のシーリングリングは、前記第1の溝を前記スクロールコンプレッサの吸入通路から分離するために、前記第1の溝の周辺部に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項7】
前記背圧板の、前記固定渦巻き体に面した端面に、第1の保持タンクおよび第2の保持タンクが設けられており、前記第1の保持タンクは、前記突出構造体の端面に対向して配置されており、前記第2の保持タンクは、前記第1の溝の周辺領域に配置された端面に対向して配置されており、
前記第1のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第1の保持タンク上に配置されており、前記第2のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第2の保持タンク上に配置されていることを特徴とする、請求項6記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項8】
前記固定渦巻き体の、前記背圧板に面した端面に、第3の保持タンクおよび第4の保持タンクが設けられており、前記第3の保持タンクは、前記隆起構造体の端面に配置されており、前記第4の保持タンクは、前記第1の溝の周辺領域に配置されており、
前記第1のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第3の保持タンク上に配置されており、前記第2のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第4の保持タンク上に配置されていることを特徴とする、請求項6記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項9】
前記背圧板の、前記固定渦巻き体に面した端面に、第5の保持タンクが設けられており、該第5の保持タンクは、前記突出構造体の端面に対向して配置されており、前記第1のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第5の保持タンク上に配置されており、
前記固定渦巻き体の、前記背圧板に面した端面に、第6の保持タンクが設けられており、該第6の保持タンクは、前記第1の溝の周辺領域に配置されており、前記第2のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第6の保持タンク上に配置されていることを特徴とする、請求項6記載のスクロールコンプレッサ。
【請求項10】
前記背圧板の、前記固定渦巻き体に面した端面に、第7の保持タンクが設けられており、該保持タンクは、前記第1の溝の周辺領域に配置されており、前記第2のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第7の保持タンク上に配置されており、
前記固定渦巻き体の、前記背圧板に面した前記端面に、第8の保持タンクが設けられており、該第8の保持タンクは、前記隆起構造体の端面に対向して配置されており、前記第1のシーリングリングの少なくとも一部は、前記第8の保持タンク上に配置されていることを特徴とする、請求項6記載のスクロールコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コンプレッサの技術分野に属し、特にスクロールコンプレッサに関する。
【0002】
背景技術
近年、自動車、特に新エネルギ車両技術の継続的かつ急速な発展に伴い、新エネルギ車両の航続距離をどのように改善するかが常に産業界の焦点となっている。新エネルギ車両の航続時間に関して、空調システムのエネルギ消費はかなりの割合を占め、コンプレッサのエネルギ消費は最大である。現在、新エネルギ車両では電動のスクロールコンプレッサが一般的に使用されている。電動のスクロールコンプレッサの主要な圧縮構成要素は渦巻き体(vortex)であり、この渦巻き体は、固定渦巻きディスクと、この固定渦巻きディスクに対して相対的に旋回する可動渦巻きディスクとを含んでいる。効率を向上させるために、隣り合う圧縮室間での歯先の漏れを低減するために、2つの渦巻き部材の歯先を他方の渦巻き部材の歯底部に密着させることが必要である。
【0003】
効率を向上させ、漏れを低減するために、スクロールコンプレッサの渦巻き体の内部シールは、新エネルギ車両コンプレッサの内部シールの主要技術となった。現在、スクロールの内部シーリング法は、主に、「端部」シーリングと「背圧」シーリングの2つの方法を含んでいる。例えば、
図1aは、従来技術の端部シーリング法を提供する。
図1aに図示したように、電動のスクロールコンプレッサは、可動渦巻きディスク1と、固定渦巻きディスク2と、端部シール3とを含み、可動渦巻きディスク1と固定渦巻きディスク2とは、軸方向で所定の間隙を有し、この間隙は端部シール片3によってシールされる。しかし、このシーリング法の欠点は、渦巻き体の端面においてある程度の漏れが常に生じ、この漏れが渦巻き効率の低下をもたらすことである。スクロールプレート(可動渦巻きディスクおよび固定渦巻きディスク)の中央は加工される必要があり、端部シールを取り付けるためには溝が使用される。このことは、渦巻き体の機械加工の難易度を高め、高精度で渦巻き体を機械加工するために大きな課題が課せられている(
図1b参照)。端部シールが摩耗した場合に、渦巻き体の回復不能な内部の漏れが生じ、これにより、スクロールコンプレッサの全体的な性能は低下する。さらに、このシーリング法は、機械的な構造部品を位置固定することにより、可動渦巻きディスクと固定渦巻きディスクとの間のシールを達成する。シール力は固定であり、作動条件に応じて変化することはできない。幾つかの作動条件では、不十分または過剰なシール力がコンプレッサの性能を低下させる。
【0004】
発明の内容
本出願は、上述の技術的問題のうちの1つを少なくともある程度解決することを目的とする。
【0005】
このために、本出願は、少なくとも、背圧シーリング法を採用したスクロールコンプレッサであって、現在の端部シールにおける乏しいシール効果、漏れやすさ、およびスクロールの困難な加工の問題を解決し、シール効果を向上させ、スクロールの内部の圧縮室の漏れを低減し、したがって性能を向上させることができるスクロールコンプレッサを提案する。
【0006】
上述の技術的問題を解決するために、本出願は以下のように実施される。
【0007】
本出願の或る実施形態によれば、スクロールコンプレッサであって、ケーシング、可動渦巻き体、固定渦巻き体、背圧板およびシーリングアセンブリを含むスクロールコンプレッサが提供される。
【0008】
可動渦巻き体が、ケーシング内に回転可能に配置されており、固定渦巻き体が、ケーシング内に、このケーシングの軸方向に沿って可動に配置されており、かつ可動渦巻き体と協働し、可動渦巻き体と固定渦巻き体との間に圧縮室が形成されている。
【0009】
前記背圧板が、ケーシング内に配置されており、固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対の側に配置されており、固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対側の端面に、第1の溝が設けられており、背圧板と第1の溝との間に背圧室が形成されており、背圧室が圧縮室に連通している。
【0010】
シーリングアセンブリが、背圧板および/または固定渦巻き体上に配置されている。
【0011】
さらに、本出願のスクロールコンプレッサは、以下の付加的な技術的特徴を有していてもよい。
【0012】
本出願の幾つかの実施形態では、固定渦巻き体に、軸方向に沿って延びる第1のガス補給通路が設けられており、第1のガス補給通路の一方の端部が、圧縮室に連通しており、第1のガス補給通路の他方の端部が、背圧室に連通している。
【0013】
本出願の幾つかの実施形態では、背圧板の、固定渦巻き体とは反対側の端面上に、第2の溝が設けられており、第2の溝とケーシングの端部との間に高圧室が形成されており、高圧室が背圧室に連通している。
【0014】
本出願の幾つかの実施形態では、背圧板に、軸方向に沿って延びる第2のガス補給通路が設けられており、第2のガス補給通路の一方の端部が、高圧室に連通しており、第2のガス補給通路の他方の端部が、背圧室に連通している。
【0015】
本出願の幾つかの実施形態では、ケーシングの端部に、端部カバーが設けられており、端部カバーに、第3の溝が設けられており、第3の溝と第2の溝とが高圧室を形成するために組み合わせられている。
【0016】
端部カバーに、ガス取出し部が設けられており、ガス取出し部が、高圧室に連通している。
【0017】
本出願の幾つかの実施形態では、固定渦巻き体に、第1の貫通孔が設けられており、背圧板に、第2の貫通孔が設けられており、圧縮室、第1の貫通孔、第2の貫通孔およびケーシングのガス取出し部が連続的に接続されている。
【0018】
第1の溝に、突出構造体が設けられており、第1の貫通孔が、突出構造体に開口している。
【0019】
シーリングアセンブリが、第1のシーリングリングおよび第2のシーリングリングを含み、第1のシーリングリングが、突出構造体に対向する位置に配置されており、第1のシーリングリングが、第1の貫通孔の周辺部に配置されており、これにより第1の貫通孔が、第1の溝から分離されている。
【0020】
第2のシーリングリングは、第1の溝をスクロールコンプレッサの吸入通路から分離するために、第1の溝の周辺部に配置されている。
【0021】
本出願の幾つかの実施形態では、背圧板の、固定渦巻き体に面した端面に、第1の保持タンクおよび第2の保持タンクが設けられており、第1の保持タンクが、突出構造体の端面に対向して配置されており、第2の保持タンクが、第1の溝の周辺領域に配置された端面に対向して配置されている。
【0022】
第1のシーリングリングの少なくとも一部が、第1の保持タンク上に配置されており、第2のシーリングリングの少なくとも一部が、第2の保持タンク上に配置されている。
【0023】
本出願の幾つかの実施形態では、固定渦巻き体の、背圧板に面した端面に、第3の保持タンクおよび第4の保持タンクが設けられており、第3の保持タンクが、隆起構造体の端面に配置されており、第4の保持タンクが、第1の溝の周辺領域に配置されている。
【0024】
第1のシーリングリングの少なくとも一部が、第3の保持タンク上に配置されており、第2のシーリングリングの少なくとも一部が、第4の保持タンク上に配置されている。
【0025】
本出願の幾つかの実施形態では、背圧板の、固定渦巻き体に面した端面に、第5の保持タンクが設けられており、第5の保持タンクが、突出構造体の端面に対向して配置されており、第1のシーリングリングの少なくとも一部が、第5の保持タンク上に配置されている。
【0026】
固定渦巻き体の、背圧板に面した端面に、第6の保持タンクが設けられており、第6の保持タンクが、第1の溝の周辺領域に配置されており、第2のシーリングリングの少なくとも一部が、第6の保持タンク上に配置されている。
【0027】
本出願の幾つかの実施形態では、背圧板の、固定渦巻き体に面した端面に、第7の保持タンクが設けられており、この保持タンクが、第1の溝の周辺領域に配置されており、第2のシーリングリングの少なくとも一部が、第7の保持タンク上に配置されている。
【0028】
固定渦巻き体の、背圧板に面した端面に、第8の保持タンクが設けられており、第8の保持タンクが、隆起構造体の端面に対向して配置されており、第1のシーリングリングの少なくとも一部が、第8の保持タンク上に配置されている。
【0029】
本出願により提供されるスクロールコンプレッサであって、ケーシング、このケーシング内に配置された可動渦巻き体、固定渦巻き体、背圧板およびシーリングアセンブリを備えたスクロールコンプレッサによれば、固定渦巻き体が、ケーシング内に、ケーシングの軸方向に沿って可動に配置されており、つまり固定渦巻き体は浮動することができ、背圧板が、固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対の側に配置されており、固定渦巻き体の、可動渦巻き体とは反対側の端面と背圧板との間に所定の空間が形成され、この空間を背圧室として使用することができ、シーリングアセンブリを、背圧板と固定渦巻き体との間に設置することができ、シーリングアセンブリは、背圧板上に設置することができるか、または固定渦巻き体上に設置することができるか、または背圧板および固定渦巻き体上に設置することができる。したがって、スクロールコンプレッサは、固定渦巻き体の浮動設計スキームを採用し、固定渦巻き体と背圧板との間に背圧室が設置されており、背圧室と別の部材とは、シーリングアセンブリまたは別の端面シーリングリングを貫通して、シーリングを達成する。したがって、スクロールコンプレッサは、簡単な構造を有しており、背圧設計はシーリングアセンブリを介して実現され得る。すなわち、静止した渦巻きディスクの背圧シーリング構造を実現することができ、固定渦巻き体および可動渦巻き体の軸方向のシールを実現することができ、渦巻き体の内部の圧縮室の漏れを減じ、これによりコンプレッサの性能を向上させることができる。さらに、シール力を種々異なる作動条件下で調整することができ、すなわち、シール力は固定ではなく、種々異なる作動条件に応じて調整することができ、これにより、コンプレッサの性能を向上させることができる。
【0030】
本出願の付加的な態様および利点は、部分的に以下の説明に記載され、部分的にこの説明から明らかになるか、または本出願の実施によって知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1a】従来技術において開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図1b】
図1aに示したスクロールコンプレッサの部分的な構造概略図である。
【
図2】従来技術において開示されている別のスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図3】本出願にて開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図4】本出願において開示されているスクロールコンプレッサのシーリングアセンブリの構造的な概略図である。
【
図5】本出願の実施形態1において開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図6】本出願の実施形態2において開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図7】本出願の実施形態3において開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【
図8】本出願の実施形態4において開示されているスクロールコンプレッサの構造的な概略図である。
【0032】
特定の実施形態
以下に、本出願の実施形態における図面を参照して、本出願の実施形態における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。説明される実施形態は、本出願の実施形態の一部であり、全てではないことは明らかである。本出願の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労力なしで得た別の全ての実施形態は、本出願の保護範囲内にある。
【0033】
本出願の明細書および特許請求の範囲における「第1」「第2」のような用語は、類似の対象を区別するために使用され、特定の順序または順序を説明するために使用されるものではない。このように使用されたデータは、本出願の実施形態が本明細書において図示または説明される順序以外の順序で実施され得るように、適切な条件下で交換可能であり、「第1」「第2」等への言及は、対象物を概して1つの形式で区別するものであり、対象物の個数を限定しないことを理解されたい。例えば、1つまたは複数の第1の対象物が存在してもよい。さらに、本明細書および特許請求の範囲における「および/または」は、接続された対象物のうちの少なくとも1つを意味し、文字「/」は、一般に、関連する対象物が「または」の関係であることを意味する。
【0034】
添付の図面と組み合わせて、以下に、本出願の実施形態を、特定の実施形態および適用シナリオに関連して詳細に説明する。
【0035】
背景技術において述べたように、スクロールコンプレッサでは、渦巻き体の内部シールの「端部」シーリング法は依然として、多かれ少なかれ欠点を有し、さらに改善される必要がある。「端部」シールと比較して、「背圧」シールは、「端部」シールの欠点の幾つかを軽減することができる。「背圧」シールとは、渦巻き体が外力によって互いにシールされ、外力が、通常、可動渦巻きディスクまたは静止している渦巻きディスクにかかっていることを意味している。種々異なる位置によって、「背圧」シールは、2つのタイプ、すなわち「可動渦巻きディスク背圧」シールと、「静的な渦巻き(固定渦巻き体とも呼ばれる)ディスク背圧」シールとに分けることができる。例えば、
図2は、従来技術における背圧シーリング法を提供し、背圧シールは、可動渦巻きディスク1、固定渦巻きディスク2、中圧シールおよび低圧シール4、背圧室6および軸シール5を含む可動渦巻きディスクの背圧シール設計に属し、これにより、可動渦巻きディスク1は浮動することができる。しかしながら、この方法の欠点は、背圧設計が可動渦巻きディスク1側において行われる必要があり、低圧の吸込側と背圧室とを隔離するために、コンプレッサの低圧側において特別なシーリング法を使用することが必要であり、構造が比較的複雑であることである。可動渦巻きディスク1の背圧室6のシールは、軸シール5によりシールされる必要があり、コストが高くなる。コンプレッサが正常に作動している場合、可動渦巻きディスク自体が並進運動を行っているので、この設計は漏れを引き起こす可能性があり、圧縮が繰り返され、これによりコンプレッサの性能は低下する。
【0036】
さらに、幾つかの関連技術は、例えば、中国特許出願公開第1103932号明細書に開示されている渦流体機械および中国特許出願公開第1154156号明細書に開示されているスクロールコンプレッサの軸方向のシール装置のような、「静的な渦巻きディスク背圧」シーリング法も提案している。これらは両方とも内部シーリングリングおよび外部シーリングリングによってシールされている。しかし、従来技術において提供される静止された渦巻きディスク背圧シーリング法の主な欠点は、シーリングリングの取付け溝が、一方の側では可動渦巻きディスク上に配置され、他方の側では(背圧板のような)別の部分に配置されており、このことは、溝の幅を制御することをより困難にし、加工の困難さを高める。シーリングリングの取付け溝が2つの部分の組立てによって保証されるので、組立てプロセスは、溝幅の均一性に影響を与え、これによりシーリング効果に影響を与える。
【0037】
少なくとも従来技術に対する上記の洞察に基づいて、かつスクロールコンプレッサにおける渦巻きシールの重要な役割を考慮して、本出願は、渦巻き体および渦巻き体の内部のシールに関してさらにたくさんの研究を重ね、従来の端部シールの、引き起こされる種々異なる欠陥を回避し、既存の背圧シール設計(可動渦巻きディスク背圧および静的な渦巻きディスク背圧を含む)の複雑な構造、高いコスト、シール効果に影響を与え易い、またはコンプレッサの性能に影響を与え易いという問題を改善する一方で、構造を簡素化し、シール効果を向上させることができ、これによりコンプレッサの性能を向上させることができる。特定の技術的な解決手段を以下に説明する。
【0038】
実施形態1
図3~
図5を参照されたい。図示のように、幾つかの実施形態では、ケーシング100、可動渦巻き体500、固定渦巻き体400、背圧板200およびシーリングアセンブリ300を含むスクロールコンプレッサが提供されている。ケーシング100の内部は、収容空間を有していてもよく、可動渦巻き体500、固定渦巻き体400、背圧板200およびシーリングアセンブリ300は全てケーシング100内に配置されていてもよく、可動渦巻き体500と固定渦巻き体400とは互いに協働し、圧縮室610を形成することができ、固定渦巻き体400と、この固定渦巻き体400に対して旋回する可動渦巻き体500とは、スクロールコンプレッサのスクロール圧縮構造を構成することができる。
【0039】
具体的には、上述の可動渦巻き体500はケーシング100内に回転可能に配置され、固定渦巻き体400は、ケーシング内で、ケーシングの軸方向に沿って可動に配置されており、すなわち、本実施形態の固定渦巻き体400は、浮動可能であり、かつケーシング100の軸線に沿って運動することができ、固定渦巻き体400は、可動渦巻き体500と協働し、圧縮室610が可動渦巻き体500と固定渦巻き体400との間に形成される。任意選択的に、固定渦巻き体400に、第1の貫通孔420が設けられており、背圧板200に第2の貫通孔220が設けられており、ケーシング100にガス取出し部が設けられており、圧縮室610、第1の貫通孔420、第2の貫通孔220およびガス取出し部が連続的に接続されており、圧縮器に入る流体は、圧縮室610、第1の貫通孔420、第2の貫通孔220およびガス取出し部を順次通過して、次いで排出され得る。
【0040】
例えば、スクロールコンプレッサが作動している場合、コンプレッサ内のクランク軸は、モータのステータによってモータのロータを介して駆動可能であり、クランク軸は、可動渦巻き体500を駆動して運動させることができ、これにより、圧縮された作動媒体の吸引、圧縮および排出プロセスを完了する。コンプレッサの作動プロセス中に、可動渦巻き体500の回転に伴って、圧縮室610の圧力が上昇し、圧縮室610に入る(冷媒のような)流体は圧縮され、圧縮された流体は、固定渦巻き体440に設置された第1の貫通孔420から排出され、背圧板200の第2の貫通孔220およびケーシング100のガス取出し部を順次通過した後に外部の回路に搬送される。
【0041】
上述の背圧板200は、ケーシング100内に配置されていて、固定渦巻き体400の、可動渦巻き体500とは反対の側に配置されており、固定渦巻き体400の、可動渦巻き体500とは反対側の端面に、第1の溝410が設けられており、背圧板200と第1の溝410との間に背圧室620が形成されており、背圧室620が、圧縮室610に連通している。例えば、ケーシング100内には、可動スクロール500、固定渦巻き体400および背圧板200が、ケーシング100の軸線に沿って連続して配置されており、固定渦巻き体400は渦巻き体500の端面とは反対側にあり、すなわち、固定渦巻き体400の、背圧板200に向かう端面に、第1の溝410が設けられており、背圧板200と第1の溝410との間にある程度の隙間が形成され、隙間は、背圧室620として使用することができ、この背圧室620は、固定渦巻き体400の背面と背圧板200との間に形成されていて、背圧室620は圧縮室610に連通している。
【0042】
上記のシーリングアセンブリ300は、固定渦巻き体400と背圧板200との間に配置されていて、シーリングアセンブリ300は、背圧板200および/または固定渦巻き体400に配置されていてもよく、すなわち、シーリングアセンブリ300は、背圧板200上に取り付けられていてもよく、代替的にはシーリングアセンブリ300は、固定渦巻き体400に取り付けられていてもよく、またはシーリングアセンブリ300は、背圧板200および固定渦巻き体400上に取り付けられていてもよい。
【0043】
この実施形態によれば、背圧板200は、固定渦巻き体400との嵌合構造を有しており、例えば、背圧板200と固定渦巻き体400との間に隙間嵌めが存在していてもよく、隙間嵌めにおいて、シーリングアセンブリ300のようなシーリング構造が設けられていてもよい。任意選択的に、シーリングアセンブリ300は、内部シールおよび外部シールを含むシーリングアセンブリであってもよく、外部シールは、背圧室620および吸込側をシールするために使用されてもよく、内部シールは、背圧室620および高圧側をシールするために使用されてもよい。
【0044】
したがって、上記の設定に基づき、本出願の実施形態において提供されるスクロールコンプレッサは、固定渦巻き体400の浮動構造設計を採用し、固定渦巻き体400の、可動渦巻き体500とは反対に向いた端面と背圧板200との間に背圧室620が形成されており、シーリングアセンブリ300が、背圧板200と固定渦巻き体400との間に配置されていてもよく、すなわち背圧室620および別の構成要素は、組合せシーリングリングまたは別のシーリングリングの端面のようなシーリングアセンブリ300によりシールされ得る。既存の端面シーリング法または「可動渦巻きディスク背圧」設計および「固定渦巻きディスク背圧」設計を含む既存の背圧シールと比較して、この実施形態により提供されたスクロールコンプレッサでは、背圧設計が、組み合わせられた内側シールリングおよび外側シールリングのようなシーリングアセンブリ300を用いて達成され、固定渦巻き体400および可動渦巻き体500の軸方向シールを実現することができ、渦巻き体の内部の圧縮室610の漏れを低減し、これによりコンプレッサの性能を向上させる。さらに、本実施形態において提供されたスクロールコンプレッサは、シール力の種々異なる作動条件下で調整することができ、すなわち、シール力は固定されておらず、種々異なる作動条件に応じて調整することができるので、コンプレッサの性能が向上させられる。
【0045】
本実施形態において提供されたスクロールコンプレッサは、軸シールのような特別な構成要素を用いることなしに、かつ低コストで、通常のシーリングリングあるいは組合せシーリングリングにより実現され得る比較的簡易なシーリング法を有している。
【0046】
本実施形態において提供されたスクロールコンプレッサでは、シーリングアセンブリ300を取り付けるためのシーリング溝は、背圧板200または固定渦巻き体400のような単一の部品上に設置することができ、このことは、よりコンパクトな構造およびより単純な加工をもたらし、このことは加工の困難さを低減し、組立てをより容易にし、取付けまたはメンテナンスに便利である。
【0047】
本実施形態において提供されたスクロールコンプレッサでは、シーリングアセンブリ300の圧縮は、背圧板200、ケーシング100および渦巻き体アセンブリの高さを確保するように機械加工されていてもよく、これにより、シーリングアセンブリ300の圧縮が設計範囲内であることを保証し、背圧室620または渦巻き体アセンブリの内部は良好にシールされている。
【0048】
図3~
図5において同様に示されているように、幾つかの実施形態では、固定渦巻き体400に、軸方向に沿って延びる第1のガス補給通路710が設けられており、第1のガス補給通路710の一方の端部は圧縮室610に連通しており、第1のガス補給通路710の他方の端部は、背圧室620に連通している。第1のガス補給通路710は、渦巻き体の内部の圧縮室のためのガス補給通路であってもよく、第1のガス補給通路710の両端は、背圧室620と圧縮室610とにそれぞれ接続されており、これにより、第1のガス補給通路710の設置により、背圧室620が第1のガス補給通路710を介して圧縮室610に連通するようになっていてもよい。
【0049】
この実施形態によれば、背圧室620の圧力は、渦巻き体の内部の圧縮室に由来するものとしてもよく、例えば、軸方向に沿って延びる第1のガス補給通路710が固定渦巻き体400の軸方向に設けられており、すなわち、渦巻き体の内部の圧縮室は、tガス補給通路であり、ガス補給通路は、背圧室620と圧縮室610との連通を実現するために使用される。
【0050】
幾つかの実施形態では、背圧板200の、固定渦巻き体400とは反対に向いた端面に第2の溝210が設けられており、この第2の溝210とケーシング100の端部との間に高圧室630が形成されており、この高圧室630が背圧室620に連通している。上述の背圧板200の端面は、固定渦巻き体400とは反対側にあり、すなわち、背圧板200の背面側または背圧板200の、ケーシング100に面した端面には、第2の溝210が設けられており、第2の溝210とケーシング100の端部との間に高圧室630が形成されていてもよく、これにより、良好な加工が得られ、このことはガスが第2の溝210から高圧室630に良好に流入することを保証することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、背圧板200に、軸方向に沿って延びる第2のガス補給通路720が設けられており、第2のガス補給通路720の一方の端部が、高圧室630に連通し、第2のガス補給通路720の他方の端部が、背圧室620に連通している。第2のガス補給通路720は、高圧側のガス補給通路であってもよい。また、第2のガス補給通路720の両方の端部は、背圧室620と高圧室630とにそれぞれ接続されており、したがって第2のガス補給通路720を設置することにより、背圧室620が第2のガス補給通路720を介して高圧室630に連通している。
【0052】
本実施形態によれば、背圧室620内の圧力は、渦巻き体の上述の内部の圧縮室に由来するものとすることができ、または第2のガス補給通路720に由来するものとすることもできる、すなわち、ガス補給通路、例えば軸方向に沿って延びる第2のガス補給通路720の高圧側が、背圧板200の軸方向、つまりガス補給通路の高圧側に設けられていて、これにより背圧室620と高圧室630との間の連通を実現することができる。
【0053】
任意には、ケーシング100の端部に、端部カバー110が設けられており、端部カバー110に、第3の溝120が設けられていて、第3の溝120と第2の溝210とが、高圧室630を形成するために組み合わせられている。端部カバー110には、ガス取出し部が設けられており、ガス取出し部は、高圧室630に連通している。本実施形態では、可動渦巻き体500と固定渦巻き体400との間に圧縮室610が形成されており、固定渦巻き体400には第1の貫通孔420が設けられており、背圧板200には第2の貫通孔220が設けられており、圧縮室610、第1の貫通孔420、第2の貫通孔220およびケーシング100のガス取出し部は連続的に連通している。上述の背圧板200は、コンプレッサの端部カバー110上に固定されていてもよい。さらに、ケーシング100の端部カバー110の第3の溝120と、背圧板200の背面の第2の溝210とを組み合わせて、高圧室630を形成することができ、これにより、圧縮室610、第1の貫通孔420、第2の貫通孔220、高圧室630およびガス取出し部を順に連通し、すなわち、コンプレッサに流入する流体のための流路は、圧縮室610、第1の貫通孔420、第2の貫通孔220、高圧室630、およびガス取出し部を連続して通過することができ、次いでガス取出し部の出口を通して排出される。
【0054】
これにより、上述の設定に基づいて、高圧排出空間から中圧空間への流体の漏れ、または中圧空間から低圧空間への流体の漏れを低減することができ、シール効果を向上させることができ、少ない部品数を達成することができ、スクロールコンプレッサの組立ては容易である。
【0055】
幾つかの実施形態では、突出構造体430が第1の溝410に設けられており、第1の貫通孔420が突出構造体430に開口しており、例えば、突出構造体430は、第1の溝410の中央で開いており、第1の貫通孔420は、突出構造体430の中央に画定されている。シーリングアセンブリ300は、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320を含んでおり、第1のシーリングリング310は、突出構造体430に対向する位置に配置されていて、第1の貫通孔420の周辺部に配置されているので、第1の貫通孔420は第1の溝410から分離されている。第1のシーリングリング310は、背圧室620および高圧室630をシールするために、突出構造体430に対向する位置における内部シールとして配置されていてもよい。第2のシーリングリング320は、第1の溝410の周辺部に配置されており、これにより第1の溝410はスクロールコンプレッサの吸入通路から分離されている。第2のシーリングリング320は、背圧室620および吸気側をシールするために、第1の溝410の周辺部における外部シール部材として配置されていてもよい。内部シールとして機能する第1のシーリングリング310のサイズは、外部シールとして機能する第2のシーリングリング320のサイズより小さくてもよい。
【0056】
この実施形態において、シーリングアセンブリ300は、2つのシーリングリングの組合せの形態であってもよく、またはOリングおよびシーリングリングの組合せの形態であってもよい。したがって、本実施形態のスクロールコンプレッサのシーリング法は、比較的簡単であり、軸シールのような特別な構成要素を用いることなしに、かつ低コストで、通常のシーリングリングあるいは組合せシーリングリングによって実現され得る。
【0057】
2つの環状のシーリングリングまたはシーリングリングから構成されるシーリングアセンブリの設計自由度が大きく、環状のシーリングアセンブリのシール性能および耐久性を向上させることができる。さらに、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320の材料は、フレキシブルな材料から形成されていてもよく、例えば、環状のシーリングアセンブリのシール性能および耐久性を高めるために、適切な材料の選択および設計を行うことができる。
【0058】
この実施形態では、上述の背圧板200を端部カバー110上に固定的に取り付けることができ、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320は、背圧板200上に組み付けることができる。例えば、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320を取り付けるための組付けスロットまたは保持タンクが背圧板200に設けられている。
【0059】
図5に示すように、特にこの実施形態では、背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面に、第1の保持タンク810および第2の保持タンク820が設けられており、第1の保持タンク810は、突出構造体430の端面に対向して配置され、第2の保持タンク820は、第1の溝410の周辺領域に配置されている端面に対向して配置されている。第1のシーリングリング310の少なくとも一部は、第1の保持タンク810上に配置されており、第2のシーリングリング320の少なくとも一部が、第2の保持タンク820上に配置されている。
【0060】
背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面には、第1のシーリングリング310に整合する第1の保持タンク810が設けられていてもよく、第1の保持タンク810は、突出構造体430の端面に対向して配置されていてもよく、第1の保持タンク810の形状およびサイズは、第1のシーリングリング310に適合されていてもよく、これにより、第1のシーリングリング310を取り付けることができ、背圧室620と高圧側との間のシールを実現することができる。同時に、背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面には、第2のシーリングリング320に整合する第2の保持タンク820が設けられていてもよく、第2の保持タンク820は、第1の溝410の周辺部に配置された端面に対向して配置されていてもよく、第2のシーリングリング320を取り付けるために、第2の保持タンク820の形状およびサイズが第2のシーリングリング320に適合されていてもよく、これにより、背圧チャンバ620と吸引側との間のシールを実現することができる。
【0061】
第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320をシーリングアセンブリ300の一方の部分に取り付ける、例えば背圧板200に取り付けることは、取付け溝の幅の制御を容易にすることができ、さらに組立てプロセス中に溝幅の均一性を保証し、これによりシール効果を保証することができる。
【0062】
任意選択的に、スクロールコンプレッサは、クランク軸、モータステータ、モータロータおよび別の構成要素を含んでいてもよく、可動渦巻き体500は、クランク軸によって駆動されてもよく、モータロータは、クランク軸に取り付けられており、モータステータは、コンプレッサケーシング上に固定されていてもよい。
【0063】
なお、スクロールコンプレッサに含まれる、クランク軸や電子ロータ等のような別の重要な構成要素の特定の構造、接続設定および作動原理については、関連技術における従来のスクロールコンプレッサの特定の構造設定および作動原理を参照することができ、これは本実施形態において限定されず、ここでは詳細に説明しない。
【0064】
実施形態2
図6を参照されたい。図示されているように、幾つかの実施形態では、ケーシング100、可動渦巻き体500、固定渦巻き体400、背圧板200およびシーリングアセンブリ300を含むスクロールコンプレッサが提供されている。
【0065】
実施形態2は、基本的に実施形態1と同じであり、類似部分は、繰り返し説明しない。実施形態2と実施形態1との間の相違点は、主に、シーリングアセンブリ300の取付け方法にある。
【0066】
本実施形態において、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320は、固定渦巻き体400に組み付けられていてもよく、例えば、第1のシーリングリング310および第2のシーリングリング320を取り付けるために、組付けスロットまたは保持タンクが固定渦巻き体400に設けられている。
【0067】
図6に示すように、特に本実施形態では、固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面に、第3の保持タンク830および第4の保持タンク840が設けられており、第3の保持タンク830は、突出構造体430の端面に配置されており、第4の保持タンク840は、第1の溝410の周辺部に配置されている。第1のシーリングリング310の少なくとも一部は、第3の保持タンク830上に配置されており、第2のシーリングリング320の少なくとも一部は、第4の保持タンク840上に配置されている。
【0068】
固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面には、第1のシーリングリング310に整合する第3の保持タンク830が設けられていてもよく、第3の保持タンク830は、突出構造体430の端面に対向して配置されていてもよく、第3の保持タンク830の形状およびサイズは、第1のシーリングリング310の取付けのために、第1のシーリングリング310に適合されていてもよく、これにより背圧室620と高圧側とのシールを実現することができる。同時に、固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面に、第2のシーリングリング320に整合する第4の保持タンク840が設けられていてもよく、第4の保持タンク840は、第1の溝410の周辺部に配置された端面に対向して配置されていてもよく、第4の保持タンク840の形状およびサイズは、第2のシーリングリング320を取り付けるために、第2のシーリングリング320に適合されていてもよく、これにより背圧室620と高圧側とのシールを実現することができる。
【0069】
実施形態3
図7を参照されたい。図示されているように、幾つかの実施形態では、ケーシング100、可動渦巻き体500、固定渦巻き体400、背圧板200およびシーリングアセンブリ300を含むスクロールコンプレッサが提供される。
【0070】
実施形態3は、基本的に、実施形態1と同一であり、類似部分は、繰り返し説明しない。実施形態3と実施形態1との間の相違点は、主に、シーリングアセンブリ300の取付け方法にある。
【0071】
本実施形態では、第1のシーリングリング310は背圧板200に組み付けることができ、第2のシーリングリング320を固定渦巻き体400に組み付けることができる。例えば、第1のシーリングリング310を取り付けるために組付けスロットまたは保持タンクが背圧板200に設けられており、第2のシーリングリング320を取り付けるために、組付けスロットまたは保持タンクが固定渦巻き体400に設けられている。
【0072】
図7に同様に示すように、特に本実施形態では、背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面に、第5の保持タンク850が設けられており、第5の保持タンク850は、突出構造体430の端面に対向して配置されており、第1のシーリングリング310の少なくとも一部は、第5の保持タンク850内に配置されている。固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面に、第6の保持タンク860が設けられており、第6の保持タンク860が、第1の溝410の周辺領域に配置されており、かつ第2のシーリングリング320の少なくとも一部が、第6の保持タンク860内に配置されている。
【0073】
背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面に、第1のシーリングリング310と整合する第5の保持タンク850が設けられていてもよく、第5の保持タンク850は、突出構造体430の端面に対向するように配置されていてもよく、第5の保持タンク850の形状およびサイズは、第1のシーリングリング310に適合されており、これにより第1のシーリングリング310を取り付け、背圧室620と高圧側との間のシールを実現することができる。さらに、固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面に、第2のシールリング320に整合する第6の保持タンク860が設けられていてもよく、第6の保持タンク860は、第1の溝410の周辺部に配置されている端面に対向して配置されていてもよく、第6の保持タンク860の形状およびサイズは、第2のシーリングリング320に適合されていてもよく、これにより第2のシーリングリング320を取り付け、背圧室620と高圧側とのシールを実現することができる。
【0074】
実施形態4
図8を参照されたい。図示されているように、幾つかの実施形態では、ケーシング100、可動渦巻き体500、固定渦巻き体400、背圧板200およびシーリングアセンブリ300を含むスクロールコンプレッサが提供されている。
【0075】
実施形態4は、基本的に実施形態1と同一であり、類似部分は、繰り返し説明しない。実施形態4と実施形態1との間の相違点は、主に、シーリングアセンブリ300の取付け方法にある。
【0076】
本実施形態では、第1のシールリング310を固定渦巻き体400上に組み付けることができ、第2のシールリング320を背圧板200に組み付けることができる。例えば、第1のシールリング310を取り付けるために、組付けスロットまたは保持タンクが固定渦巻き体400上に設けられており、第2のシーリングリング320を取り付けるために、組付けスロットまたは保持タンクが背圧板200上に設けられている。
【0077】
同様に
図8に示すように、特に本実施形態では、背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面に、第7の保持タンク870が設けられており、第7の保持タンク870は、第1の溝410の周辺領域に配置されており、第2のシーリングリング320の少なくとも一部は、第7の保持タンク870上に配置されている。固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面に、第8の保持タンク880が設けられており、第8の保持タンク880は、突出構造体430の端面に対向して配置されており、第1のシーリングリング310の少なくとも一部は、第8の保持タンク880上に配置されている。
【0078】
背圧板200の、固定渦巻き体400に面した端面に、第2のシーリングリング320に整合する第7の保持タンク870が設けられていてもよく、この第7の保持タンク870は、第1の溝410の周辺領域に配置されていてもよく、第7の保持タンク870の形状およびサイズは、第2のシーリングリング320に適合されていてもよく、これにより第2のシーリングリング320を取り付けることができ、かつ背圧室620と吸入側とのシールを実現することができる。さらに、上述の固定渦巻き体400の、背圧板200に面した端面には、第1のシーリングリング310に整合する第8の保持タンク880が設けられていてもよく、第8の保持タンク880は、突出構造体430の端面に対向していてもよく、第8の保持タンク880の形状およびサイズは、第1のシーリングリング310に適合されていてもよく、これにより第1のシーリングリング310を取り付け、かつ背圧室620および高圧側のシールを実現することができる。
【0079】
本出願の説明に詳細に記載されていない部分は、当業者に周知の技術である。
【0080】
本出願において、「或る実施形態」、「幾つかの実施形態」、「例」、「特定の例」または「幾つかの例」という用語は、本出願の少なくとも1つの実施形態または例に含まれる、実施形態または例に関連して説明される特定の特徴、構造体、材料または特性を意味する。本明細書において、上記の用語の概略的な表現は、必ずしも同一の実施形態または例に向けられているわけではない。さらに、記載された特定の特徴、構造、材料または特性は、任意の1つまたは複数の実施形態または例において任意の適切な方法で組み合わされ得る。さらに、互いに矛盾することなしに、当業者は、本明細書に記載された異なる実施形態または例と、異なる実施形態または例の特徴とを組み合わせることができる。
【0081】
本出願の実施形態を、添付の図面に関連して上述したが、本出願は、上述した特定の実施形態に限定されず、上述した特定の実施形態は、例示的なものにすぎず、限定的なものではなく、当業者は、本出願の着想に基づき、本出願の目的および特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなしに、多くの形態を行うこともでき、これらは全て、本出願の保護の範囲に属する。
【符号の説明】
【0082】
1 可動渦巻き体ディスク
2 固定渦巻き体ディスク
3 端部シール
4 中圧シールおよび低圧シール
5 軸シール
6 背圧室
100 ケーシング
110 端部カバー
120 第3の溝
200 背圧板
210 第2の溝
220 第2の貫通孔
300 シーリングアセンブリ
310 第1のシーリングリング
320 第2のシーリングリング
400 固定渦巻き体
410 第1の溝
420 第1の貫通孔
430 突出構造体
500 可動渦巻き体
610 圧縮室
620 背圧室
630 高圧室
710 第1のガス補給通路
720 第2のガス補給通路
810 第1の保持タンク
820 第2の保持タンク
830 第3の保持タンク
840 第4の保持タンク
850 第5の保持タンク
860 第6の保持タンク
870 第7の保持タンク
880 第8の保持タンク
【外国語明細書】