(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006653
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】原因調査システム、原因調査方法、記録媒体およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20240110BHJP
H04N 5/77 20060101ALI20240110BHJP
H04N 5/92 20060101ALI20240110BHJP
H04N 21/488 20110101ALI20240110BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240110BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N30/86 V
H04N5/77
H04N5/92 010
H04N21/488
H04N5/232 300
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107749
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宜子
【テーマコード(参考)】
5C053
5C122
5C164
5L049
【Fターム(参考)】
5C053GB06
5C053JA21
5C053LA01
5C053LA04
5C053LA06
5C053LA11
5C053LA14
5C122DA12
5C122EA09
5C122GA18
5C122GA24
5C122GA34
5C122HA01
5C122HB01
5C164FA06
5C164MB01S
5C164UB10S
5C164UB88S
5C164UD11P
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】分析にエラーが発生した場合の原因を調査することを容易とする原因調査システムを提供する。
【解決手段】処理部(601)は、分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベース(300)から分析処理の状況を示す画像情報を取得する。また、処理部(601)は、分析処理で使用した分析装置(400)に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベース(500)から分析装置(400)の状態を示す装置ステータス情報を取得する。処理部(601)は、画像情報を再生した画像と、画像に対応する装置ステータス情報とを表示部(608)に表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析のエラー発生原因を調査するための原因調査システムであって、
表示部と、処理部とを備え、
前記処理部は、
分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベースから前記分析処理の状況を示す画像情報を取得し、
前記分析処理で使用した分析装置に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベースから前記分析装置の状態を示す装置ステータス情報を取得し、
前記処理部は、前記画像情報を再生した画像と、前記画像に対応する装置ステータス情報とを前記表示部に表示させる、原因調査システム。
【請求項2】
分析処理を行なっている時間の分析処理の状況を示す画像を撮影する撮像部と、
前記撮像部から前記画像情報を受けて前記第1記録データベースに記録する第1サーバと、
前記分析装置から前記装置ステータス情報を受けて前記第2記録データベースに記録する第2サーバとをさらに備え、
前記撮像部は、作業者が体に装着する装置に取り付けられている、請求項1に記載の原因調査システム。
【請求項3】
前記撮像部は、作業者が作業中の周囲の状況を示す動画と、前記分析処理を行なった作業場所に配置されたタグのタグ情報とを前記画像情報として記録し、
前記処理部は、前記タグ情報に基づいて前記動画のシーンの頭出しを実行する、請求項2に記載の原因調査システム。
【請求項4】
前記装置ステータス情報は、前記分析装置で検出されている計測値、前記分析装置に設定される設定値、前記分析装置に使用されている部品の交換時刻、清掃時刻の少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の原因調査システム。
【請求項5】
前記画像と前記装置ステータス情報とは、少なくともお互いの相対的な時間関係が認識できる状態で、前記表示部に表示される、請求項1に記載の原因調査システム。
【請求項6】
前記画像と前記装置ステータス情報とは、時間軸を共通にした状態で、前記表示部に表示される、請求項1に記載の原因調査システム。
【請求項7】
分析装置で行なった分析のエラー発生原因を調査するための原因調査方法であって、
コンピュータが、分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベースから前記分析処理の状況を示す画像情報を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記分析装置に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベースから前記分析装置の状態を示す装置ステータス情報を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記画像情報を再生した画像と、前記画像に対応する装置ステータス情報とを表示するステップとを備える、原因調査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の原因調査方法をコンピュータに実行させるプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
請求項7に記載の原因調査方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析のエラー発生原因を調査するための原因調査システム、原因調査方法、記録媒体およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産等の現場では、生産実績などを把握するためにカメラで撮影した画像を用いることが検討されている。特開2021-022232号公報には、設備を使用する生産において、生産実績として、設備の稼働状態とともに、作業者による段取り作業を正確に記録することができる生産実績記録システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置で分析対象の試料を分析する場合にも、カメラで撮影した画像を用いることが考えられる。たとえば、分析装置の分析結果がおかしい場合、原因を明らかにし、対策を打つ必要がある。原因を解明する際に、初期段階で装置由来か人由来かが明らかにならないと、全方位的に原因調査を行なわねばならない。よって、原因調査に多大な時間を要することとなる。
【0005】
特開2021-022232号公報(特許文献1)に記載された技術では、生産実績時間を正確に算出する助けにはなるが、分析装置の分析結果がおかしい場合の原因調査にはそのまま使用できるものではなく、改良の余地がある。
【0006】
本開示は、分析にエラーが発生した場合の原因を調査することを容易とする原因調査システム、原因調査方法、記録媒体およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、分析のエラー発生原因を調査するための原因調査システムに関する。原因調査システムは、表示部と、処理部とを備える。処理部は、分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベースから分析処理の状況を示す画像情報を取得し、分析処理で使用した分析装置に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベースから分析装置の状態を示す装置ステータス情報を取得する。処理部は、画像情報を再生した画像と、画像に対応する装置ステータス情報とを表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の原因調査システムは、人由来の原因に関する情報を提供し得る画像と分析装置由来の原因に関する情報を提供し得る装置ステータス情報とを関連付けて調査することが容易となるので、エラーの発生原因を調査するために役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態の原因調査システムの構成を示す図である。
【
図2】画像管理サーバおよびデータ管理サーバからデータを取得する調査用コンピュータ600の構成を示す図である。
【
図4】撮像装置100のコントローラの構成の一例を示す図である。
【
図5】撮像装置100で撮影された画像を蓄積する画像管理サーバ300の構成を示す図である。
【
図6】分析装置400から受けたデータを蓄積するデータ管理サーバ500の構成を示す図である。
【
図7】原因調査システムを導入する前と後の原因特定に至る過程を対比して示した図である。
【
図8】撮像装置100が画像とタグを記録する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】データ管理サーバ500が分析装置400から装置ステータス情報を受信して記録する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】調査用コンピュータ600が、画像と装置ステータス情報を表示する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】ディスプレイ608に表示されるメイン画面の一例を示す図である。
【
図12】ディスプレイ608に表示される動画再生画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本実施の形態の原因調査システムの構成を示す図である。原因調査システム1は、分析のエラー発生原因を調査するために用いられる。原因調査システム1は、撮像装置100と、画像管理サーバ300と、分析装置400と、データ管理サーバ500と、調査用コンピュータ600とを備える。
【0012】
撮像装置100および画像管理サーバ300は、有線通信または無線通信で相互に通信できる。調査用コンピュータ600および画像管理サーバ300は、有線通信または無線通信で相互に通信できる。
【0013】
分析装置400およびデータ管理サーバ500は、有線通信または無線通信で相互に通信できる。調査用コンピュータ600およびデータ管理サーバ500は、有線通信または無線通信で相互に通信できる。
【0014】
分析装置400を使用して分析を行なった担当者は、分析するたびにレポートを作成する。レポートには、サンプルIDとシステムIDが記載されている。サンプルIDは、1回の分析を特定するためのIDである。システムIDは、分析を行なった分析装置を特定するためのIDである。たとえば、ある企業が分析装置400として、複数の液体クロマトグラフィー装置を所有している場合に、複数の装置のうちどの装置を使用して分析が行なわれたのかをシステムIDによって特定することができる。
【0015】
撮像装置100は、たとえば、常時録画機能付きスマートグラスである。作業者がスマートグラスを装着して作業を行なうと、作業者視点での動画が撮影される。たとえば、作業場所または分析装置400に光学的な目印(二次元バーコードなど)が配置されている場合には、録画データから目印を抽出して、場所を特定することができる。また無線タグなどを配置してある場合には、スマートグラスに無線送受信装置を搭載しておけばよい。作業者が録画をしている場合に、無線送受信装置が取得した作業場所または分析装置の情報を録画データとともに記録しておけば、録画データがどの場所で録画されたものかを容易に知ることができる。録画データおよび場所または装置を特定するデータは、当該録画データを取得した時刻の情報とともに、画像管理サーバ300に記憶される。調査用コンピュータ600から調査担当者が画像管理サーバ300にサンプルIDを指定すると、画像管理サーバ300はサンプルIDに対応する作業場所または分析装置の情報および録画データを調査用コンピュータ600に送信する。
【0016】
一方、分析装置400は、装置ステータス情報を定期的にデータ管理サーバ500に送信しており、データ管理サーバ500は、装置ステータス情報と当該装置ステータス情報を取得した時刻の情報とを記憶する。たとえば、分析装置400が液体クロマトグラフィー装置である場合、カラムの交換時刻、清掃時刻などが自動的にデータ管理サーバ500に記憶される。調査用コンピュータ600から調査担当者がデータ管理サーバ500にシステムIDを指定すると、データ管理サーバ500はシステムIDに対応する分析装置の装置ステータス情報を調査用コンピュータ600に送信する。装置ステータス情報は、たとえば、分析装置400で検出されている圧力、温度などの計測値、分析装置400に設定される圧力、温度などの設定値、カラム等の部品交換時刻、清掃時刻などである。
【0017】
調査用コンピュータ600には、原因調査支援プログラムがインストールされている。調査用コンピュータ600は、レポートに記載されているサンプルIDおよびシステムIDが入力されると、サンプルIDを画像管理サーバ300に送信し、サンプルIDに対応するインデックス付きの試験動画を画像管理サーバ300から取得する。調査用コンピュータ600は、さらに、システムIDをデータ管理サーバ500に送信し、該当装置のステータス情報をデータ管理サーバ500から取得する。そして、調査用コンピュータ600は、時刻情報に基づいて、「録画データおよび場所または装置を特定するデータ」と「装置のステータス情報」との紐づけを行なう。
【0018】
なお、調査用コンピュータ600は、サンプルIDから分析が実行された日時を特定し、分析が実行された日時の前後数日間に絞ってデータをデータ管理サーバ500から取得しても良い。
【0019】
図2は、画像管理サーバおよびデータ管理サーバからデータを取得する調査用コンピュータ600の構成を示す図である。調査用コンピュータ600は、プロセッサ601、主メモリ602、通信インターフェイス603、入力インターフェイス605、入力装置607、表示インターフェイス606、ディスプレイ608、および記憶装置620を含む。これらのコンポーネントは、内部バス619を介して互いに通信可能に接続されている。
【0020】
プロセッサ601は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0021】
プロセッサ601は、記憶装置620に記憶されているプログラム622を主メモリ602に展開して実行することで、各種処理を実現する。主メモリ602は、揮発性メモリにより構成され、プロセッサ601によるプログラムの実行に必要なワークメモリとして機能する。
【0022】
通信インターフェイス603は、ネットワークを介して、画像管理サーバ300およびデータ管理サーバ500と通信する。一例として、通信インターフェイス603は、画像管理サーバ300から送信された作業動画と、データ管理サーバ500から送信された装置ステータスデータとを受信する。
【0023】
入力インターフェイス605は、プロセッサ601と入力装置607との間のデータ伝送を中継する。詳細には、入力インターフェイス605は、入力装置607の操作により与えられる各種指示を受け付ける。
【0024】
表示インターフェイス606は、プロセッサ601とディスプレイ608との間のデータ伝送を中継する。詳細には、表示インターフェイス606は、プロセッサ601からのコマンドに従って、各種の情報(たとえば、作業動画、装置ステータス情報等)を表示するための信号をディスプレイ608へ出力する。また、表示インターフェイス606は、プロセッサ601からのコマンドに従って、表示の終了を指示する信号をディスプレイ608へ出力する。
【0025】
記憶装置620は、たとえば、SSD(Solid State Drive)、不揮発性メモリ、またはハードディスクである。記憶装置620には、各種の処理を実現するためのプログラム622が記憶されている。また、記憶装置620には、画像管理サーバ300から送信された作業動画およびその作業動画が撮影された時刻を示す時刻情報と、データ管理サーバ500から送信された装置ステータスデータおよびその装置ステータスデータが記録された時刻を示す時刻情報とが記憶される。記憶装置620に保存されている各種の情報は、主に作業を管理する管理者によってディスプレイ608上で閲覧される。
【0026】
プログラム622は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、任意のプログラムと協働して本実施の形態に従う処理が実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う調査用コンピュータ600の趣旨を逸脱するものではない。また、プログラム622によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。プログラム622は、ネットワークを通じて配信されても良い。またプログラム622は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、配布されても良い。
【0027】
図3は、撮像装置100の外観を示す図である。
図3に示す例では、撮像装置100は、スマートグラスであり「ウエアラブルデバイス」の一例である。
【0028】
撮像装置100は、本体10と、コントローラ20と、入力装置30とを備える。本体10には、目を保護するための透明な防護グラス11が嵌め込まれており、作業者は本体10を装着した状態で前方を視認することができる。また、本体10には、透明のディスプレイ13が設けられている。
【0029】
ディスプレイ13には、画像(たとえば、後述の作業動画など)が表示される。ディスプレイ13は、右眼側のディスプレイ13aと、左眼側のディスプレイ13bとを含む。右眼側のディスプレイ13aは、右眼側の取付部15aを介して防護グラス11に取り付けられ、左眼側のディスプレイ13bは、左眼側の取付部15bを介して防護グラス11に取り付けられている。作業者は、ディスプレイ13を介して前方を視認することができ、また、ディスプレイ13に表示される画像を見ることもできる。
【0030】
また、本体10には、撮像部14が設けられている。撮像部14は、本体10を装着して作業をしている作業者の作業の様子を撮像する。詳細には、撮像部14は、作業者の視線の先にある作業者の手元を撮像する。撮像部14での撮像により得られた作業動画は、品質保証の目的で作業のログとして時刻情報とともに画像管理サーバ300に保存される。
【0031】
コントローラ20は、撮像装置100の全体を総括的に制御する。詳細には、コントローラ20は、撮像部14による撮像を制御する。また、コントローラ20は、ディスプレイ13の表示を制御する。また、コントローラ20は、作業動画を画像管理サーバ300へ送信する。
【0032】
入力装置30には、コントローラ20に対する各種指示が作業者によって入力される。入力装置30は、ボタン、タッチパッド、およびマイクのうち少なくとも1つ以上を含む。
図3に示す例では、入力装置30は、少なくとも1つのボタン31を含む。ボタン31は、ディスプレイ13上での作業動画の再生に関する指示を入力するための操作スイッチである。
【0033】
図4は、撮像装置100のコントローラの構成の一例を示す図である。コントローラ20は、プロセッサ201、主メモリ202、通信インターフェイス203、カメラインターフェイス204、入力インターフェイス205、表示インターフェイス206、および記憶装置220を含む。これらのコンポーネントは、内部バス219を介して互いに通信可能に接続されている。
【0034】
プロセッサ201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0035】
プロセッサ201は、記憶装置220に記憶されているプログラム222を主メモリ202に展開して実行することで、各種処理を実現する。主メモリ202は、揮発性メモリにより構成され、プロセッサ201によるプログラムの実行に必要なワークメモリとして機能する。
【0036】
通信インターフェイス203は、ネットワークを介して、画像管理サーバ300と通信する。一例として、通信インターフェイス203は、撮像部14での撮像により得られた作業動画およびその作業動画が撮影された時刻を示す時刻情報を画像管理サーバ300へ送信する。作業動画および時刻情報が画像管理サーバ300に送信されるタイミングは、たとえば撮像装置100の充電中であってもよいし、作業者が入力装置30から指示したタイミングであってもよい。
【0037】
カメラインターフェイス204は、プロセッサ201と撮像部14との間のデータ伝送を中継する。詳細には、カメラインターフェイス204は、プロセッサ201からのコマンドに従って、撮像の開始を指示する信号を撮像部14へ出力する。また、カメラインターフェイス204は、撮像部14から撮像により得られた画像(たとえば、作業動画等)を受け付け、受け付けた画像をプロセッサ201に出力する。また、カメラインターフェイス204は、プロセッサ201からのコマンドに従って、撮像の終了を指示する信号を撮像部14へ出力する。
【0038】
入力インターフェイス205は、プロセッサ201と入力装置30との間のデータ伝送を中継する。詳細には、入力インターフェイス205は、入力装置30の操作により与えられる各種指示、たとえば、作業動画の記録開始または再生に関する指示を受け付ける。
【0039】
表示インターフェイス206は、プロセッサ201とディスプレイ13との間のデータ伝送を中継する。詳細には、表示インターフェイス206は、プロセッサ201からのコマンドに従って、各種の情報(たとえば、作業動画等)を表示するための信号をディスプレイ13へ出力する。また、表示インターフェイス206は、プロセッサ201からのコマンドに従って、表示の終了を指示する信号をディスプレイ13へ出力する。
【0040】
記憶装置220は、たとえば、SSD、不揮発性メモリ、またはハードディスクである。記憶装置220には、各種の処理を実現するためのプログラム222が記憶されている。また、記憶装置220には、撮像部14での撮像により得られた作業動画が記憶される。
【0041】
プログラム222は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、任意のプログラムと協働して本実施の形態に従う処理が実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う撮像装置100の趣旨を逸脱するものではない。また、プログラム222によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。プログラム222は、ネットワークを通じて配信されても良い。またプログラム222は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、配布されても良い。
【0042】
図5は、撮像装置100で撮影された画像を蓄積する画像管理サーバ300の構成を示す図である。画像管理サーバ300は、プロセッサ301、主メモリ302、通信インターフェイス303、入力インターフェイス305、表示インターフェイス306、および記憶装置320を含む。これらのコンポーネントは、内部バス319を介して互いに通信可能に接続されている。
【0043】
プロセッサ301は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0044】
プロセッサ301は、記憶装置320に記憶されているプログラム322を主メモリ302に展開して実行することで、各種処理を実現する。主メモリ302は、揮発性メモリにより構成され、プロセッサ301によるプログラムの実行に必要なワークメモリとして機能する。
【0045】
通信インターフェイス303は、ネットワークを介して、撮像装置100と通信する。一例として、通信インターフェイス303は、撮像部14での撮像により得られた作業動画およびその作業動画が撮影された時刻を示す時刻情報を撮像装置100から受信する。
【0046】
入力インターフェイス305は、プロセッサ301と入力装置307との間のデータ伝送を中継する。詳細には、入力インターフェイス305は、入力装置307の操作により与えられる各種指示を受け付ける。
【0047】
表示インターフェイス306は、プロセッサ301とディスプレイ308との間のデータ伝送を中継する。詳細には、表示インターフェイス306は、プロセッサ301からのコマンドに従って、各種の情報(たとえば、作業動画等)を表示するための信号をディスプレイ308へ出力する。また、表示インターフェイス306は、プロセッサ301からのコマンドに従って、表示の終了を指示する信号をディスプレイ308へ出力する。
【0048】
記憶装置320は、たとえば、SSD、不揮発性メモリ、またはハードディスクである。記憶装置320には、本実施の形態に従う各種の処理を実現するためのプログラム322が記憶されている。また、記憶装置320には、撮像装置100から受信した作業動画およびその作業動画が撮影された時刻を示す時刻情報が記憶される。記憶装置320に保存されている作業動画は、主に作業を管理する管理者によってディスプレイ308上で閲覧される。
【0049】
プログラム322は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、任意のプログラムと協働して本実施の形態に従う処理が実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う画像管理サーバ300の趣旨を逸脱するものではない。また、プログラム322によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。プログラム322は、ネットワークを通じて配信されても良い。またプログラム322は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、配布されても良い。
【0050】
図6は、分析装置400から受けたデータを蓄積するデータ管理サーバ500の構成を示す図である。データ管理サーバ500は、プロセッサ501、主メモリ502、通信インターフェイス503、入力インターフェイス505、表示インターフェイス506、および記憶装置520を含む。これらのコンポーネントは、内部バス519を介して互いに通信可能に接続されている。
【0051】
プロセッサ501は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0052】
プロセッサ501は、記憶装置520に記憶されているプログラム522を主メモリ502に展開して実行することで、各種処理を実現する。主メモリ502は、揮発性メモリにより構成され、プロセッサ501によるプログラムの実行に必要なワークメモリとして機能する。
【0053】
通信インターフェイス503は、ネットワークを介して、分析装置400と通信する。一例として、通信インターフェイス503は、分析装置400から送信された装置ステータスデータおよびその装置ステータスデータが記録された時刻を示す時刻情報を受信する。
【0054】
入力インターフェイス505は、プロセッサ501と入力装置507との間のデータ伝送を中継する。詳細には、入力インターフェイス505は、入力装置507の操作により与えられる各種指示を受け付ける。
【0055】
表示インターフェイス506は、プロセッサ501とディスプレイ508との間のデータ伝送を中継する。詳細には、表示インターフェイス506は、プロセッサ501からのコマンドに従って、各種の情報(たとえば、分析結果、装置ステータス情報、時刻情報等)を表示するための信号をディスプレイ508へ出力する。また、表示インターフェイス506は、プロセッサ501からのコマンドに従って、表示の終了を指示する信号をディスプレイ508へ出力する。
【0056】
記憶装置520は、たとえば、SSD、不揮発性メモリ、またはハードディスクである。記憶装置520には、各種の処理を実現するためのプログラム522が記憶されている。また、記憶装置520には、分析装置400から受信した各種の情報(分析結果、装置ステータス情報など)が記憶される。記憶装置520に保存されている各種の情報は、主に作業を管理する管理者によってディスプレイ508上で閲覧される。
【0057】
プログラム522は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、任意のプログラムと協働して本実施の形態に従う処理が実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従うデータ管理サーバ500の趣旨を逸脱するものではない。また、プログラム522によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。プログラム522は、ネットワークを通じて配信されても良い。またプログラム522は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、配布されても良い。
【0058】
図7は、原因調査システムを導入する前と後の原因特定に至る過程を対比して示した図である。
【0059】
たとえば、1mgの錠剤の成分を液体クロマトグラフィー装置で分析した場合に、標準溶液のピーク値が基準値よりも大きいという異常が発生したとする。このような情報は、分析担当者が分析を行なうたびに作成するレポートに記載されている。このレポートには、録画データ、場所データに対応づけられたサンプルIDと、使用した装置に対応づけられたシステムIDとが記載されている。
【0060】
図7のS101~S106は、一般的な手法の場合の調査過程を示している。まず、工程S101において、調査担当者がレポートによって報告を受ける。たとえば、調査担当者は、標準溶液のピーク値が基準値よりも大きいという異常が記載されたレポートを受領する。
【0061】
次に、工程S102において、レポートの記載に基づいて、調査担当者は情報収集を行なう。調査担当者は、レポートと、レポートの元となった分析装置の生データ(液体クロマトグラフィーの結果など)を確認したり、分析担当者から当時の状況をヒアリングしたりする。ただし、分析担当者は、分析を行なった時点(エラー発生時点)の状況を正確に説明できないことが多い。
【0062】
続いて、工程S103において、調査担当者は、収集した情報に基づいて原因を推定し、いくつかの仮説を立てる。分析担当者は、たとえば(A)標準溶液の希釈率ミス、(B)希釈時に用いた溶媒の温度が高すぎた、などの複数の仮説を経験などに基づいて立てることができる。
【0063】
次に、調査担当者または調査担当者から指示を受けた分析担当者は、仮説(A)、(B)に追試験を実行して、異常が再現されるかを確認する。
【0064】
具体的には、工程S104において、仮説(A)に対しては、希釈率を変えて標準溶液を再調整し、保存してあった試料とともに、液体クロマトグラフィー装置で分析が行なわれる。なお、一般に、分析対象の試料の溶液は、エラー無しが確認されるまでは、廃棄しないようにする運用となっていることが多い。この分析で同じ異常が再現された場合には、原因は仮説(A)であったと特定できる。
【0065】
一方、異常が再現されなかった場合には、工程S105において、さらに仮説(B)に対する追試験が実行される。仮説(B)に対しては、溶媒の温度を標準値よりも高温として標準溶液を再調整し、保存してあった試料とともに、液体クロマトグラフィー装置で分析が行なわれる。この分析で同じ異常が再現された場合には、原因は仮説(B)であったと特定できる。
【0066】
工程S104で異常が再現せず、工程S105で異常が再現した場合、工程S106において、調査担当者は、溶媒を長時間放置したため液温が高くなったことが異常発生の原因であると特定する。
【0067】
以上のように、情報が不足し、いくつもの仮説が立案されると、追試験をいくつも行なう必要が生じて効率的でない。
【0068】
次に、本実施の形態について説明する。
図7のS201~S205は、本実施の形態の原因調査システムを導入した場合の調査過程を示している。
【0069】
最初に工程S201において、レポートによって調査担当者が報告を受ける。たとえば、調査担当者は、標準溶液のピーク値が基準値よりも大きいという異常が記載されたレポートを受領する。
【0070】
次に、工程S202において、レポートの記載に基づいて、調査担当者は情報収集を行なう。調査担当者は、レポートと、レポートの元となった分析装置の生データ(液体クロマトグラフィーの結果など)とを確認したり、分析担当者から当時の状況をヒアリングしたりする。これに加えて、調査担当者は、原因調査システムを使用することにより、サンプルIDに対応づけられた録画データ、場所データと、システムIDに対応づけられた装置ステータスデータとを時刻で紐付けられた状態で同時に確認することができる。
【0071】
続いて、工程S203において、収集した情報に基づいて、調査担当者は、原因を推定し、いくつかの仮説を立てる。このとき、調査担当者は、作業状況を示す動画を確認することができ、かつ使用した装置のステータス情報も確認することができる。調査担当者は、たとえば(A)標準溶液の希釈率ミス、(B)希釈時に用いた溶媒の温度が高すぎた、などの複数の仮説を経験などに基づいて立てることができるが、このときに動画によって希釈率が適切であったなどの確認をすることができる。このため、たとえば仮説(A)、(B)のうち仮説(A)を早期の段階で排除することができる。このため、工程S204で行なう追試験は、仮説(B)の実験だけで済む。
【0072】
工程S204で異常が再現した場合、工程S205において、調査担当者は、溶媒を長時間放置したため液温が高くなったことが異常発生の原因であると特定することができる。
【0073】
したがって、動画によって仮説の絞り込みが行なえるため、仮説検証に要する時間を短縮できる。
【0074】
図8は、撮像装置100が画像とタグを記録する処理を説明するためのフローチャートである。
【0075】
ステップS1において、撮像装置100の撮像部14は、分析処理の状況を示す画像を撮影する。画像は動画が想定されるが、静止画であっても良い。
【0076】
次にステップS2において、撮像装置100のプロセッサ201は、撮影された画像に対応するタグが存在するかを判断する。タグは、画像中に撮影されている一次元または二次元バーコード等でも良いし、撮影中に近くにあった無線タグであってもよい。
【0077】
タグが存在する場合(S2でYES)、プロセッサ201は、タグが示す情報(たとえば、場所、分析装置名など)を記憶装置220に記録し、ステップS4に処理を進める。一方、タグが存在しない場合(S2でNO)、プロセッサ201は、タグが示す情報の記録を行なわずに、ステップS4に処理を進める。
【0078】
ステップS4では、プロセッサ201は、ステップS1で撮影された画像と撮影時刻とを記憶装置220に記録する。そしてステップS5において、プロセッサ201は、撮影停止条件が成立するか否かを判断する。撮影停止条件は、たとえば、作業者が入力装置30から撮影の停止を指示した場合、場所を移動した場合などに成立する。
【0079】
撮影停止条件が成立しない場合(S5でNO)、プロセッサ201は、ステップS1からの処理を再び実行する。一方、撮影停止条件が成立した場合(S5でYES)、このフローチャートの画像撮影および記録処理は終了する。
【0080】
図9は、データ管理サーバ500が分析装置400から装置ステータス情報を受信して記録する処理を説明するためのフローチャートである。分析装置400を使用した分析処理が開始されると
図9のフローチャートが実行される。
【0081】
ステップS11において、データ管理サーバ500のプロセッサ501は、装置ステータス情報を分析装置400から取得する。
【0082】
続いてステップS12において、プロセッサ501は、装置ステータス情報とその記録時刻とを記憶装置520に記録する。そしてステップS13において、プロセッサ501は、分析が終了したか否かを判断する。たとえば、分析装置400から分析終了を示す信号を受信することによりプロセッサ501は分析の終了を知ることができる。
【0083】
分析が終了していない場合(S13でNO)、プロセッサ501は、ステップS11からの処理を再び実行する。一方、分析が終了した場合(S13でYES)、ステップS14において、プロセッサ501は、分析結果を記憶装置520に記録し、このフローチャートの処理は終了する。
【0084】
図10は、調査用コンピュータ600が、画像と装置ステータス情報を表示する処理を説明するためのフローチャートである。
図10のフローチャートの処理は、撮像装置100および画像管理サーバ300と連携した調査用コンピュータ600で実行される。
【0085】
まずステップS21において、調査用コンピュータ600のプロセッサ601は、入力装置607から入力インターフェイス605および内部バス619を経由して動画の再生指示を受信する。
【0086】
次にステップS22において、プロセッサ601は、サンプルIDを画像管理サーバ300に送信し、ステップS23において、画像管理サーバ300からサンプルIDに対応する動画データを取得する。
【0087】
続いてステップS24において、プロセッサ601は、システムIDをデータ管理サーバ500に送信し、ステップS25において、データ管理サーバ500からシステムIDに対応する装置ステータス情報を取得する。
【0088】
続いてプロセッサ601は、ステップS26において、ステップS21において受信した再生指示にタグによる頭出し要求が存在するか否かを判断する。
【0089】
タグによる頭出し要求が存在する場合(S26でYES)、プロセッサ601は、タグが示す時刻から動画再生を行なうように再生開始時刻を設定して、ステップS28に処理を進める。一方、タグによる頭出し要求が存在しない場合(S26でNO)、プロセッサ601は、再生開始時刻は初期状態である動画の開始時刻のままとして、ステップS28に処理を進める。
【0090】
このように、動画の撮影時に、作業場所に配置したタグ等を読み取り頭出しすることで、ステータス情報と動画中の画像との紐づけがより容易になる。
【0091】
ステップS28では、プロセッサ601は、ステップS23で取得した動画を再生し、再生中の画像の再生時刻とその時刻に対応する装置ステータス情報とをディスプレイ608に同時に表示する。再生中の画像は、人由来の原因に関する情報を提供し得る。一方、装置ステータス情報は、分析装置に由来する分析のエラー発生原因に関する情報を提供し得る。同時に表示される画像と装置ステータス情報とは、少なくともお互いの相対的な時間関係が認識できる状態で、ディスプレイ608に表示される。画像と装置ステータス情報とは、時間軸を共通にした状態で、ディスプレイ608に表示されてもよい。たとえば、画像と装置ステータス情報との変化の経過が分かるように、動画から得られた複数の静止画像および複数の装置ステータス情報を共通の時間軸に時刻順に並べて表示するようにしても良い。このようにすれば静止画像と装置ステータス情報との対応関係が分かりやすい。
【0092】
そしてステップS29において、プロセッサ601は、再生停止条件が成立するか否かを判断する。再生停止条件は、たとえば、調査担当者が入力装置607から再生の停止を指示した場合、動画ファイルの再生位置がファイルの最後に到達した場合などに成立する。
【0093】
再生停止条件が成立しない場合(S29でNO)、プロセッサ601は、ステップS28の処理を再び実行する。一方、再生停止条件が成立した場合(S29でYES)、このフローチャートの処理は終了する。
【0094】
図11は、ディスプレイ608に表示されるメイン画面の一例を示す図である。
図12は、ディスプレイ608に表示される動画再生画面の一例を示す図である。調査担当者は、原因調査システムを使用することにより、
図11に示す画面で、装置ステータスデータを容易に確認することができる。調査システムに発生事象を入力すると、分析結果および装置ステータスデータを総合的に判断し、想定される原因が推測される。
【0095】
図11に示した例では、入力欄に入力された「サンプルStd1の内表値が他サンプルの標準溶液よりも低い」という発生事象に対して、想定される原因が2つ示されている。第1の原因は、標準品の秤量ミスであり、第2の原因は、標準品がメスフラスコに全量入っていないということである。
【0096】
これらの原因が実際の原因であったか否かを確認するためのビデオ再生画像のアイコンが2つ画面の中央に表示されていて、調査担当者はビデオ再生画像のアイコンをクリックすることにより、ビデオ再生して原因を調査することができる。
【0097】
画像アイコンの下には、装置ステータスデータが表示されている。たとえば、装置名HPLCの構成要素である、ポンプA,ポンプB、オートサンプラー、オーブンAの各々について、パーツ名、パーツNo.、前回交換日、使用度数が一覧形式で表示されており、使用度数に対応する寿命に到達する割合(寿命到達率)がインジケータ(棒グラフ)で使用度数の横に表示されている。また寿命到達率が100%になるまでに余裕がある順に状態がA,B,Cで示されている。
【0098】
ビデオの再生を指示すると
図11のメイン画面から
図12の動画再生画面に遷移する。
図12の画面の上部には、作業者の名前と、作業日が表示されており、その下に動画の再生画面が表示され動画像の下部には再生と停止を切り替えるボタンと動画像の再生進捗度合いを示すバーが示されている。また
図12の画面の下部には、作業工程「秤量」「試料調整」「サンプルラック」の各工程名と開始時刻が時系列に沿って横に表示されており、原因と推測される部分には三角のマークが表示されている。また、各工程の代表的なシーンの画像が小さく並べて表示されているので、調査担当者が作業の流れを把握するのに便利である。
【0099】
[他の適用例]
以上の説明では、主として分析装置が液体クロマトグラフィー装置である場合の一例を示したが、本実施の形態の原因調査システムは、種々の分析に適用することができる。
【0100】
[原因調査例1]
<状況>
類縁物質(HPLC(High Performance Liquid Chromatography):EP)試験において、判定基準:98.5~101.5%であるところ、含量の結果が98.43%と判定基準外であった。あるいは、判定基準内ではあるが、調査の結果、標準溶液の調製ミスと判断し、原因調査を行なった。
【0101】
・フェーズ1a調査:明らかな試験室エラーは認められなかったため、フェーズ1b調査へ移行した。
【0102】
・フェーズ1b調査:以下の原因による試験室エラーの可能性が考えられた。
<仮説/調査試験>
(仮説H1)標準原液から標準溶液を再調製して分析した結果、初回試験と明らかに面積値の差を認めたため、標準原薬から標準溶液の調製をミスしたことがわかった。
【0103】
(仮説H2)液温が高い溶媒を用いてメスアップ(メスシリンダーを用いて所定容積に希釈すること)した標準溶液について分析した結果、初回試験と同様に面積値が大きくなったことから、標準溶液調製時の溶液の温度差により適切にメスアップされなかったことを確認した。
【0104】
(仮説H3-1)標準原液および試料原液を分析した結果、仮説H1で標準溶液のみ再調製し分析した結果と相関があったことから、標準原液および標準溶液の調製ミスはなかったとことを確認した。
【0105】
(仮説H3-2)溶媒を小分けしたビーカーをパソコン横に1時間置き、液温が上昇することを確認した。また温度が上昇した溶媒と温度上昇していない溶媒で調製した標準溶液で面積値の差を確認した結果、温かい溶媒を使用した標準溶液は面積(%)が増加した。このことから、標準溶液を調製する溶媒が温かくなり、体積が増えたことによってメスアップに失敗していたと推察した。
【0106】
調査の結果、今回の原因は、溶媒を小分けしたビーカーをパソコン横に1時間置いた後、標準溶液を調製したため標準溶液の面積だけ大きくなったことであった。標準溶液調製の際、溶媒の温度が上昇し、溶媒の体積が増え、適切なメスアップができなかった。よって、標準溶液だけ再調製し、再分析を行った結果を採用する。
【0107】
このような原因調査を行なう場合、本実施の形態の原因調査システムを用いれば、分析レポートを見た後に、作業時の動画と装置ステータス情報とを確認できるので、仮説の数を減らし時間短縮となる効果が得られる。
【0108】
[原因調査例2]
<状況>
溶出同等性試験(ph4.5)をLC(Liquid Chromatography)で実施したところ、8分析(標準溶液及びサンプル)で不特定な時間に小さなピークが10個検出された。
【0109】
<仮説/調査試験>
本実施の形態の原因調査システムを用いて装置ステータス情報を確認したところ、LCおよびカラムは前回使用から約2週間使用がなかったことがわかった。検出されたピークは保持時間が不特定でベースラインの乱れの様な形状であり、分析異常の原因は、ラインまたはカラムの汚れであると断定した。
【0110】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0111】
(第1項)本開示の第1の態様は、分析のエラー発生原因を調査するための原因調査システムに関する。原因調査システムは、表示部と、処理部とを備える。処理部は、分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベースから分析処理の状況を示す画像情報を取得し、分析処理で使用した分析装置に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベースから分析装置の状態を示す装置ステータス情報を取得する。処理部は、画像情報と、画像情報に指定した時刻に対応する装置ステータス情報とを表示部に表示させる。
【0112】
第1項の原因調査システムによれば、原因調査に必要な情報(作業動画と装置ステータス情報)を併せて表示することができるため、原因調査が容易となる。また、エラーが発生した際に原因調査に必要な情報をすぐに取得できるため、原因調査の工程や所要時間を短縮することができる。なお、ステータス情報は、装置やカラムのバーコードを読み取ることによって他のデータベースから取得しても良い。
【0113】
(第2項)第1項に記載の原因調査システムにおいて、原因調査システムは、分析処理を行なっている時間の分析処理の状況を示す画像を撮影する撮像部と、撮像部から画像情報を受けて第1記録データベースに記録する第1サーバと、分析装置から装置ステータス情報を受けて第2記録データベースに記録する第2サーバとをさらに備える。撮像部は、作業者が体に装着する装置に取り付けられている。
【0114】
第2項の原因調査システムによれば、作業者の手元を常時撮影することが容易となるので、原因調査に役立つ画像を容易に記録しておくことができる。
【0115】
(第3項)第2項に記載の原因調査システムにおいて、撮像部は、作業者が作業中の周囲の状況を示す動画と、分析処理を行なった作業場所に配置されたタグのタグ情報とを画像情報として記録し、処理部は、タグ情報に基づいて動画のシーンの頭出しを実行する。
【0116】
第3項の原因調査システムによれば、動画中の見たい場面を調査担当者が探すのが容易となるので、原因調査の作業効率がアップする。
【0117】
(第4項)第2項に記載の原因調査システムにおいて、装置ステータス情報は、分析装置で検出されている計測値、分析装置に設定される設定値、分析装置に使用されている部品の交換時刻、清掃時刻の少なくともいずれか1つを含む。
【0118】
(第5項)第1項に記載の原因調査システムにおいて、画像と装置ステータス情報とは、少なくともお互いの相対的な時間関係が認識できる状態で、表示部に表示される。
【0119】
(第6項)第1項に記載の原因調査システムにおいて、画像と装置ステータス情報とは、時間軸を共通にした状態で、表示部に表示される。このようにすれば静止画像と装置ステータス情報との対応関係が分かりやすい。
【0120】
(第7項)本開示の第2の態様は、分析装置で行なった分析のエラー発生原因を調査するための原因調査方法に関する。原因調査方法は、コンピュータが、分析対象に対する一回の分析処理に対応するサンプルIDを送信し、第1記録データベースから前記分析処理の状況を示す画像情報を取得するステップと、コンピュータが、分析装置に対応するシステムIDを送信し、第2記録データベースから前記分析装置の状態を示す装置ステータス情報を取得するステップと、コンピュータが、画像情報を再生した画像と、画像に対応する装置ステータス情報とを表示するステップとを備える。
【0121】
(第8項)本開示の第3の態様は、第7項の原因調査方法をコンピュータに実行させるプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0122】
(第9項)本開示の第4の態様は、第7項の原因調査方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0123】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 原因調査システム、10 本体、11 防護グラス、13,13a,13b,308,508,608 ディスプレイ、14 撮像部、15a,15b 取付部、20 コントローラ、30,307,507,607 入力装置、31 ボタン、100 撮像装置、201,301,501,601 プロセッサ、202,302,502,602 主メモリ、203,303,503,603 通信インターフェイス、204 カメラインターフェイス、205,305,505,605 入力インターフェイス、206,306,506,606 表示インターフェイス、219,319,519,619 内部バス、220,320,520,620 記憶装置、222,322,522,622 プログラム、300 画像管理サーバ、400 分析装置、500 データ管理サーバ、600 調査用コンピュータ。