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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066541
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240509BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175929
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 脩平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC33
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB20V
3D131EB20X
3D131EB22W
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB28W
3D131EB38V
3D131EB38W
3D131EB42V
3D131EB42W
3D131EB44V
3D131EB44W
3D131EB47V
3D131EB48V
3D131EB48W
3D131EC01X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC15V
3D131EC15W
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる、重荷重用タイヤの提供。
【解決手段】タイヤは路面と接地するトレッドを備える。前記トレッドは、周方向に並ぶブロックを有し、隣り合うブロックの間が横溝である、ブロック状陸部を有する。ブロック状陸部の両側に周方向溝が位置し、周方向溝は平らでない溝壁を有する変則周方向溝である。横溝は変則周方向溝よりも浅い。変則周方向溝の開口部は、ストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジを備える。横溝の溝底を含む面でトレッドを仮想的に切断することで得られる変則周方向溝の仮想開口部は、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジを備える。仮想エッジの振れ幅はエッジの振れ幅よりも大きく、仮想エッジに含まれる仮想頂点の数は、ブロック状陸部に含まれる横溝の数よりも多い。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、
前記トレッドが、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、
前記複数の周方向溝が、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分し、
前記複数の陸部のうち、赤道を含む陸部又は前記赤道に最も近い陸部がクラウン陸部であり、前記クラウン陸部に最も近い陸部がミドル陸部であり、
前記クラウン陸部及び/又は前記ミドル陸部が、周方向に並ぶブロックを有し、隣り合うブロックの間が横溝である、ブロック状陸部であり、
前記ブロック状陸部の両側に位置する周方向溝が、平らでない溝壁を有する変則周方向溝であり、
前記横溝が、前記変則周方向溝よりも浅く、
前記変則周方向溝の開口部が、ストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジを備え、
前記一対のエッジがジグザグ又は波状にのびる場合、それぞれのエッジが前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する頂点と、その第二端に近接する頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する頂点から前記第二端に近接する頂点までの軸方向距離が、前記エッジの振れ幅であり、
前記横溝の溝底を含む面で前記トレッドを仮想的に切断することで得られる前記変則周方向溝の仮想開口部が、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジを備え、
前記一対の仮想エッジがそれぞれ、前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の仮想頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する仮想頂点とその第二端に近接する仮想頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する仮想頂点から前記第二端に近接する仮想頂点までの軸方向距離が、前記仮想エッジの振れ幅であり、
前記仮想エッジの振れ幅が前記エッジの振れ幅よりも大きく、
前記仮想エッジに含まれる前記仮想頂点の数が、前記ブロック状陸部に含まれる前記横溝の数よりも多い、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記変則周方向溝が、前記トレッド面の第一端側に位置する第一溝壁と、その第二端側に位置する第二溝壁と、前記第一溝壁と前記第二溝壁との間を繋ぎ、溝底を有する溝底部とを備え、
前記第一溝壁と前記第二溝壁とが、前記平らでない溝壁であり、
前記変則周方向溝における溝底の軌跡が、前記トレッド面の第一端に近接する第一頂点と、その第二端に近接する第二頂点とを交互に経由しながら、ジグザグ又は波状にのび、
前記第一溝壁及び第二溝壁が、前記変則周方向溝のエッジにおける前記トレッド面の法線に対して傾斜し、
前記第一頂点における第一溝壁の傾斜角が第二溝壁の傾斜角よりも小さく、
前記第二頂点における第一溝壁の傾斜角が第二溝壁の傾斜角よりも大きい、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記仮想開口部の開口幅が、前記溝底から前記トレッド面の第一端側の仮想エッジまでの軸方向距離で表される第一開口幅と、前記溝底から前記トレッド面の第二端側の仮想エッジまでの軸方向距離で表される第二開口幅との和に等しく、
前記第一頂点において前記第一開口幅が前記第二開口幅よりも狭く、
前記第二頂点において前記第一開口幅が前記第二開口幅よりも広い、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記横溝の深さの、前記変則周方向溝の深さに対する比が、0.12以上0.32以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記ミドル陸部が前記ブロック状陸部であり、
前記ミドル陸部が、前記横溝としてのミドル横溝と、周方向に連続してのびるミドル縦溝とを有し、
前記ミドル縦溝が、前記変則周方向溝よりも浅い、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記ミドル縦溝の深さの、前記変則周方向溝の深さに対する比が、0.12以上0.32以下である、
請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記ミドル縦溝が、周方向に対して傾斜する第一ミドル縦溝と、前記第一ミドル縦溝の傾斜の向きと逆向きに傾斜する第二ミドル縦溝とを備え、
周方向において前記第一ミドル縦溝と前記第二ミドル縦溝とが交互に配置される、
請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記第一ミドル縦溝の傾斜角が4度以上12度以下である、
請求項7に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記第一ミドル縦溝と前記第二ミドル縦溝とがそれぞれ、周方向に並ぶ複数のミドル横溝と一つ置きに交差し、
前記第二ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置から、前記第一ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置までの周方向距離で表される、隣り合うミドル横溝間の周方向距離に対する、前記第二ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置から、前記第二ミドル縦溝と前記第一ミドル縦溝との境界までの周方向距離の比が、0.07以上0.20以下である、
請求項7又は8に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記第一ミドル縦溝及び前記第二ミドル縦溝とが、前記ミドル陸部の軸方向中心において、前記ミドル横溝と交差する、
請求項9に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
前記ミドル横溝が円弧状に湾曲する、
請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項12】
前記クラウン陸部が前記ブロック状陸部であり、
前記クラウン陸部が前記横溝としてクラウン横溝を有し、
前記クラウン横溝が軸方向に対して傾斜し、
前記クラウン横溝の傾斜角が、15度以上30度以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項13】
前記横溝が前記周方向溝に繋がることで構成される前記ブロックの角が鋭角である場合、前記角が面取りされる、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
濡れた路面での制動性能(以下、ウェット性能とも呼ばれる。)を向上させるために、トレッドの陸部に、陸部を横切る横溝を設けることが知られている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-210226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
横溝は陸部の剛性を低下させる。低剛性の陸部は転がり抵抗の増加を招く恐れがある。低剛性の陸部は摩耗しやすい。
横溝を浅くすることで、タイヤは陸部の剛性低下を抑制できる。しかし横溝が浅いと、陸部が摩耗することで横溝が消失する。横溝の消失はウェット性能の低下を招く。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備える。前記トレッドは、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有する。前記複数の周方向溝は、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分する。前記複数の陸部のうち、赤道を含む陸部又は前記赤道に最も近い陸部がクラウン陸部であり、前記クラウン陸部に最も近い陸部がミドル陸部である。前記クラウン陸部及び/又は前記ミドル陸部は、周方向に並ぶブロックを有し、隣り合うブロックの間が横溝である、ブロック状陸部である。前記ブロック状陸部の両側に位置する周方向溝は、平らでない溝壁を有する変則周方向溝である。前記横溝は、前記変則周方向溝よりも浅い。前記変則周方向溝の開口部は、ストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジを備える。前記一対のエッジがジグザグ又は波状にのびる場合、それぞれのエッジは前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する頂点と、その第二端に近接する頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する頂点から前記第二端に近接する頂点までの軸方向距離が、前記エッジの振れ幅である。前記横溝の溝底を含む面で前記トレッドを仮想的に切断することで得られる前記変則周方向溝の仮想開口部は、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジを備え、前記一対の仮想エッジがそれぞれ、前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の仮想頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する仮想頂点とその第二端に近接する仮想頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する仮想頂点から前記第二端に近接する仮想頂点までの軸方向距離が、前記仮想エッジの振れ幅である。前記仮想エッジの振れ幅は前記エッジの振れ幅よりも大きく、前記仮想エッジに含まれる前記仮想頂点の数は、前記ブロック状陸部に含まれる前記横溝の数よりも多い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤのトレッドを示す展開図である。
図2図1の一部を示す拡大展開図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図4】トレッドパターンの変形例を示す展開図である。
図5図2のV-V線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図6図2のVI-VI線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図7図2のVII-VII線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図8図2のVIII-VIII線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図9】摩耗したトレッドの仮想トレッドパターンを示す展開図である。
図10図1のブロック状陸部の一部を示す拡大展開図である。
図11図10のXI-XI線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図12図10のXII-XII線に沿った断面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0010】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0011】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態とも呼ばれる。
【0012】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0013】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0014】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0015】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0016】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
【0017】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、前記トレッドが、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、前記複数の周方向溝が、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分し、前記複数の陸部のうち、赤道を含む陸部又は前記赤道に最も近い陸部がクラウン陸部であり、前記クラウン陸部に最も近い陸部がミドル陸部であり、前記クラウン陸部及び/又は前記ミドル陸部が、周方向に並ぶブロックを有し、隣り合うブロックの間が横溝である、ブロック状陸部であり、前記ブロック状陸部の両側に位置する周方向溝が、平らでない溝壁を有する変則周方向溝であり、前記横溝が、前記変則周方向溝よりも浅く、前記変則周方向溝の開口部が、ストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジを備え、前記一対のエッジがジグザグ又は波状にのびる場合、それぞれのエッジが前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する頂点と、その第二端に近接する頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する頂点から前記第二端に近接する頂点までの軸方向距離が、前記エッジの振れ幅であり、前記横溝の溝底を含む面で前記トレッドを仮想的に切断することで得られる前記変則周方向溝の仮想開口部が、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジを備え、前記一対の仮想エッジがそれぞれ、前記トレッド面の第一端又は第二端に近接する複数の仮想頂点を含み、前記トレッド面の第一端に近接する仮想頂点とその第二端に近接する仮想頂点とが周方向に交互に配置され、前記第一端に近接する仮想頂点から前記第二端に近接する仮想頂点までの軸方向距離が、前記仮想エッジの振れ幅であり、前記仮想エッジの振れ幅が前記エッジの振れ幅よりも大きく、前記仮想エッジに含まれる前記仮想頂点の数が、前記ブロック状陸部に含まれる前記横溝の数よりも多い。
【0018】
このようにタイヤを整えることにより、横溝のエッジが、路面を掻くエッジ成分として機能する。横溝は変則周方向溝よりも浅いので、ブロック状陸部は必要な剛性を有することができる。ブロック状陸部は過剰に変形することを抑制できる。横溝を消失した後も、トレッドが摩耗することで現われる変則周方向溝のエッジが、エッジ成分として効果的に貢献できる。横溝が消失することで低減したエッジ成分を、トレッドが摩耗することで現われる変則周方向溝の仮想エッジが補う。このタイヤは、良好なウェット性能を安定に発揮できる。このタイヤは、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる。
【0019】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記変則周方向溝が、前記トレッド面の第一端側に位置する第一溝壁と、その第二端側に位置する第二溝壁と、前記第一溝壁と前記第二溝壁との間を繋ぎ、溝底を有する溝底部とを備え、前記第一溝壁と前記第二溝壁とが、前記平らでない溝壁であり、前記変則周方向溝における溝底の軌跡が、前記トレッド面の第一端に近接する第一頂点と、その第二端に近接する第二頂点とを交互に経由しながら、ジグザグ又は波状にのび、前記第一溝壁及び第二溝壁が、前記変則周方向溝のエッジにおける前記トレッド面の法線に対して傾斜し、前記第一頂点における第一溝壁の傾斜角が第二溝壁の傾斜角よりも小さく、前記第二頂点における第一溝壁の傾斜角が第二溝壁の傾斜角よりも大きい。
このようにタイヤを整えることにより、変則周方向溝の第一溝壁及び第二溝壁がウェット性能の向上に効果的に貢献できる。
【0020】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記仮想開口部の開口幅が、前記溝底から前記トレッド面の第一端側の仮想エッジまでの軸方向距離で表される第一開口幅と、前記溝底から前記トレッド面の第二端側の仮想エッジまでの軸方向距離で表される第二開口幅との和に等しく、前記第一頂点において前記第一開口幅が前記第二開口幅よりも狭く、前記第二頂点において前記第一開口幅が前記第二開口幅よりも広い。
このようにタイヤを整えることにより、トレッドが摩耗しても、変則周方向溝のエッジがウェット性能の向上に効果的に貢献できる。
【0021】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記横溝の深さの、前記変則周方向溝の深さに対する比が、0.12以上0.32以下である。
このようにタイヤを整えることにより、横溝がウェット性能の発揮に効果的に貢献できる。横溝によるブロック状陸部12bの剛性への影響が抑制されるので、タイヤが低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持することに、横溝が効果的に貢献できる。
【0022】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ミドル陸部が前記ブロック状陸部であり、前記ミドル陸部が、前記横溝としてのミドル横溝と、周方向に連続してのびるミドル縦溝とを有し、前記ミドル縦溝が、前記変則周方向溝よりも浅い。
このようにタイヤを整えることにより、ミドル横溝及びミドル縦溝の相乗効果により、このタイヤはウェット性能の向上を図ることができる。このタイヤは、ミドル陸部が過剰に変形することを抑制できるので、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制できる。
【0023】
[構成6]
好ましくは、前述の[構成5]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ミドル縦溝の深さの、前記変則周方向溝の深さに対する比が、0.12以上0.32以下である。
このようにタイヤを整えることにより、ミドル縦溝がウェット性能の発揮に効果的に貢献でき、タイヤが低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持することに、ミドル縦溝が効果的に貢献できる。
【0024】
[構成7]
好ましくは、前述の[構成5]又は[構成6]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ミドル縦溝が、周方向に対して傾斜する第一ミドル縦溝と、前記第一ミドル縦溝の傾斜の向きと逆向きに傾斜する第二ミドル縦溝とを備え、周方向において前記第一ミドル縦溝と前記第二ミドル縦溝とが交互に配置される。
このようにタイヤを整えることにより、第一ミドル縦溝及び第二ミドル縦溝を含むミドル縦溝はエッジ成分として機能する。ミドル縦溝はウェット性能の向上に貢献できる。
【0025】
[構成8]
好ましくは、前述の[構成7]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記第一ミドル縦溝の傾斜角が4度以上12度以下である。
このようにタイヤを整えることにより、第一ミドル縦溝がエッジ成分として効果的に機能できる。第一ミドル縦溝はウェット性能の向上に貢献できる。
【0026】
[構成9]
好ましくは、前述の[構成7]又は[構成8]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記第一ミドル縦溝と前記第二ミドル縦溝とがそれぞれ、周方向に並ぶ複数のミドル横溝と一つ置きに交差し、前記第二ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置から、前記第一ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置までの周方向距離で表される、隣り合うミドル横溝間の周方向距離に対する、前記第二ミドル縦溝と前記ミドル横溝との交差位置から、前記第二ミドル縦溝と前記第一ミドル縦溝との境界までの周方向距離の比が、0.07以上0.20以下である。
このようにタイヤを整えることにより、ミドル縦溝内にある水の、変則周方向溝への排出が促される。第一ミドル縦溝及び第二ミドル縦溝のそれぞれがエッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤはウェット性能の向上を図ることができる。
【0027】
[構成10]
好ましくは、前述の[構成7]から[構成9]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記第一ミドル縦溝及び前記第二ミドル縦溝とが、前記ミドル陸部の軸方向中心において、前記ミドル横溝と交差する。
このようにタイヤを整えることにより、第一ミドル縦溝及び第二ミドル縦溝を有するミドル縦溝は、エッジ成分として効果的に機能できる。ミドル縦溝はウェット性能の向上に貢献できる。
【0028】
[構成11]
好ましくは、前述の[構成5]から[構成10]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記ミドル横溝が円弧状に湾曲する。
このようにタイヤを整えることにより、ミドル横溝のエッジに作用する応力が分散される。エッジを起点とする摩耗の発生が抑制される。ミドル横溝がエッジ成分としての機能を安定に発揮できる。ミドル横溝はウェット性能の向上に貢献できる。
【0029】
[構成12]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成11]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記クラウン陸部が前記ブロック状陸部であり、前記クラウン陸部が前記横溝としてクラウン横溝を有し、前記クラウン横溝が軸方向に対して傾斜し、前記クラウン横溝の傾斜角が、15度以上30度以下である。
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、クラウン横溝による剛性への影響を抑制しながら、クラウン横溝の容積を確保できる。このタイヤは、低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持しながら、ウェット性能の向上を図ることができる。
【0030】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤとも呼ばれる。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。図1において周方向にのびる一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0031】
図1はトレッド4を示す。タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4はタイヤ2のトレッド部に含まれる。トレッド4は架橋ゴムからなる。
トレッド4はトレッド面6において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面6を有する。トレッド面6と赤道面との交線が赤道である。
【0032】
図1はトレッド面6の展開図である。図1において、符号TEで示される位置はトレッド面6の端である。図1に示されたトレッド面6では、赤道面の左側に位置する端TEが第一端TE1であり、右側に位置する端TEが第二端TE2である。図1において符号TWで示される長さは、トレッド面6の幅である。トレッド面6の幅TWは、第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離である。
【0033】
本発明においては、外観上、明瞭なエッジとしてトレッド面6の端TEを識別できない場合、接地面の軸方向外端(接地端とも呼ばれる。)に対応するトレッド面6上の位置が、トレッド面6の端TEとして特定される。接地面は、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、タイヤ2の正規荷重に相当する荷重をタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にタイヤ2を接触させて得られる。
【0034】
トレッド4には溝8が刻まれる。これにより、トレッドパターンがトレッド4に構成される。図1はタイヤ2のトレッドパターンを示す。図1のトレッドパターンは、赤道上に中心点を有する略点対称なトレッドパターンである。図示されないが、タイヤ2が、例えば、赤道を中心とする線対称なトレッドパターンを有していてもよく、非対称なトレッドパターンを有していてもよい。このタイヤ2が、周方向に方向性を有するトレッドパターンを有してもいてもよい。
【0035】
トレッド4には、周方向に連続してのびる複数の周方向溝10が刻まれる。図1に示されたトレッド4は4本の周方向溝10を有する。これにより、軸方向に並ぶ5本の陸部12がトレッド4に構成される。4本の周方向溝10は、トレッド4(具体的には、トレッド4のトレッド面6を含む部分)を5本の陸部12に区分する。
【0036】
周方向溝10の開口部は一対のエッジ14を備える。各周方向溝10の溝幅Wgは、開口部を構成する一対のエッジ14間の軸方向距離で表される。溝幅Wgが周方向において変化する場合、最大幅で溝幅Wgが表される。各周方向溝10の深さは、左右のエッジ14を結ぶ線分から溝底までの距離で表される。
図1において周方向にストレートにのびる一点鎖線HGは、溝幅Wgの中心線(以下、溝幅中心線HG)である。周方向溝10の開口部が周方向にジグザグにのびる場合は、第一端TE側のエッジ14の第一端TE側の頂点から、第二端TE側のエッジ14の第二端TE側の頂点までの軸方向距離の中心を、溝幅中心線HGは通る。
【0037】
各周方向溝10の溝幅Wgは、例えば、トレッド面6の幅TWの4.0%以上8.0%以下であるのが好ましい。各周方向溝10の深さは、例えば、10mm以上21mm以下であるのが好ましい。タイヤ2が良好なウェット性能を発揮できる観点から、深さは13mm以上18mm以下であるのがより好ましい。
【0038】
4本の周方向溝10のうち、赤道に最も近い周方向溝10がセンター周方向溝10cである。センター周方向溝10cに最も近い周方向溝10がミドル周方向溝10mである。図1に示されたトレッド4は、一対のセンター周方向溝10cと、センター周方向溝10cの軸方向外側に位置する一対のミドル周方向溝10mとを備える。
トレッド4が赤道を含む周方向溝10を有してもよい。この場合、赤道を含む周方向溝10がセンター周方向溝10cである。
【0039】
赤道から第一端TE1までのゾーン(以下、第一ゾーンとも呼ばれる。)では、第二端TE2側が赤道側であり、赤道から第二端TE2までのゾーン(以下、第二ゾーンとも呼ばれる。)では、第一端TE1側が赤道側である。例えば、第一ゾーンのミドル周方向溝10mの第一端TE1側のエッジ14は、第二ゾーンのミドル周方向溝10mの第二端TE2側のエッジ14に対応する。
【0040】
5本の陸部12のうち、赤道を含む陸部12がクラウン陸部12cである。クラウン陸部12cに最も近い陸部12がミドル陸部12mである。トレッド面6の端TEを含む陸部12がショルダー陸部12sである。このトレッド4では、ショルダー陸部12sがミドル陸部12mの次にクラウン陸部12cに近い陸部12である。
図1に示されたトレッド4は、クラウン陸部12cと、クラウン陸部12cの軸方向外側に位置する一対のミドル陸部12mと、ミドル陸部12mの軸方向外側に位置するショルダー陸部12sとを有する。
トレッド4が赤道を含む周方向溝10を有する場合、赤道に最も近い陸部12がクラウン陸部12cである。
【0041】
陸部12の頂面は、トレッド面6の一部をなす。前述のエッジ14は、陸部12の頂面と周方向溝10との境界である。
図1において符号Wcで示される長さはクラウン陸部12cの幅である。幅Wcは、クラウン陸部12cの第一端TE1側エッジ14から第二端TE2側エッジ14までの軸方向距離である。符号Wmで示される長さはミドル陸部12mの幅である。幅Wmは、ミドル陸部12mの第一端TE1側エッジ14から第二端TE2側エッジ14までの軸方向距離である。符号Wsで示される長さはショルダー陸部12sの幅である。幅Wsは、トレッド面6の端TEからショルダー陸部12sの頂面の赤道側エッジ14までの軸方向距離である。
【0042】
陸部12の幅は、グリップ性能と、ウェット性能とを考慮して適宜決められる。図1に示されたトレッド4では、クラウン陸部12cの幅Wcの、トレッド面6の幅TWに対する比(Wc/TW)は、0.10以上0.20以下であるのが好ましい。ミドル陸部12mの幅Wmの、トレッド面6の幅TWに対する比(Wm/TW)は、0.10以上0.20以下であるのが好ましい。ショルダー陸部12sの幅Wsの、トレッド面6の幅TWに対する比(Ws/TW)は、0.10以上0.25以下であるのが好ましい。
【0043】
図2図1のトレッド4の一部を示す。赤道面の左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。ミドル周方向溝10mとセンター周方向溝10cとの間がミドル陸部12mである。第一端TE1側のセンター周方向溝10cと第二端TE2側のセンター周方向溝10cとの間がクラウン陸部12cである。
図1に示されたトレッド4では、クラウン陸部12c及びミドル陸部12mに横溝16が刻まれる。横溝16の溝幅は周方向溝10の溝幅よりも狭い。
【0044】
クラウン陸部12cには、複数の横溝16(以下、クラウン横溝16cとも呼ばれる。)が刻まれる。クラウン横溝16cはクラウン陸部12cを横断する。クラウン横溝16cは、第一端TE1側のセンター周方向溝10cと第二端TE2側のセンター周方向溝10cとの間を架け渡す。クラウン横溝16cはセンター周方向溝10cよりも浅い。クラウン横溝16cはミドル周方向溝10mよりも浅い。
クラウン陸部12cに複数のクラウン横溝16cを刻むことで、周方向に並ぶ複数のブロック18(以下、クラウンブロック18cとも呼ばれる。)が構成される。複数のクラウン横溝16cは、クラウン陸部12cの頂面を含む部分を、複数のクラウンブロック18cに区分する。周方向において隣り合うクラウンブロック18cの間はクラウン横溝16cである。
詳述しないが、クラウン陸部12cにおけるクラウン横溝16cのピッチは、タイヤ2の仕様に応じて適宜設定される。
【0045】
ミドル陸部12mには、複数の横溝16(以下、ミドル横溝16mとも呼ばれる。)が刻まれる。ミドル横溝16mはミドル陸部12mを横断する。ミドル横溝16mは、センター周方向溝10cとミドル周方向溝10mとの間を架け渡す。ミドル横溝16mはセンター周方向溝10cよりも浅く、ミドル周方向溝10mよりも浅い。
ミドル横溝16mはクラウン横溝16cの深さと同じ深さを有する。ミドル横溝16mがクラウン横溝16cよりも浅くてもよく、深くてもよい。
ミドル陸部12mに複数のミドル横溝16mを刻むことで、周方向に並ぶ複数のブロック18(以下、ミドルブロック18mとも呼ばれる。)が構成される。複数のミドル横溝16mは、ミドル陸部12mの頂面を含む部分を、複数のミドルブロック18mに区分する。周方向において隣り合うミドルブロック18mの間はミドル横溝16mである。
ミドル陸部12mにおけるミドル横溝16mのピッチは、クラウン陸部12cにおけるクラウン横溝16cのピッチと同じである。
【0046】
図1に示されるように、ショルダー陸部12sには、クラウン陸部12c及びミドル陸部12mのように横溝16は刻まれていない。ショルダー陸部12sに複数の横溝16が刻まれてもよい。
【0047】
本発明において、周方向に並ぶブロック18を有し、隣り合うブロック18の間が横溝16である陸部12は、ブロック状陸部12bとも呼ばれる。図1に示されたトレッド4では、クラウン陸部12c及びミドル陸部12mがブロック状陸部12bである。
本発明においては、クラウン陸部12cのみがブロック状陸部12bであってもよく、ミドル陸部12mのみがブロック状陸部12bであってもよい。
クラウン陸部12c及び/又はミドル陸部12mがブロック状陸部12bである。
【0048】
図3は、図2のIII-III線に沿った、ミドル周方向溝10mの断面図である。図3において、ミドル周方向溝10mの溝幅中心線HG(以下、溝幅中心線HM)の左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。このミドル周方向溝10mの断面を用いて周方向溝10の構成が説明される。
【0049】
周方向溝10は、一対の溝壁20と、両溝壁20の間を繋ぐ溝底部22とを備える。
溝壁20は前述のエッジ14を含む。溝壁20はエッジ14と溝底部22との間を架け渡す。一対の溝壁20のうち、トレッド面6の第一端TE1側の溝壁20が第一溝壁20fであり、その第二端TE2側の溝壁20が第二溝壁20sである。
図3の符号PBは周方向溝10の溝底の位置を表わす。溝底部22は溝底PBを有する。溝底PBは、周方向溝10の断面において最も深い位置である。周方向溝10の左右のエッジ14を結ぶ線分の法線に沿って、この線分から溝底部22までの距離が計測される。この線分から溝底部22までの距離が最大となる位置が、溝底PBである。
図3に示された溝底部22は曲面である。言い換えれば、この溝底部22の輪郭は円弧である。溝底部22が平面を含み、この平面が溝底PBを含んでもよい。この場合、平面の幅中心が溝底PBとして用いられる。
【0050】
図2に示されるように、周方向溝10の開口部を構成する一対のエッジ14はストレートにのびる。このエッジ14がジグザグにのびてもよく、波状にのびてもよい。
図2において一点鎖線LBは周方向溝10の溝底PBの軌跡である。図2に示された周方向溝10の溝底の軌跡LBはジグザグにのびる。この軌跡LBが波状にのびてもよく、ストレートにのびてもよい。
【0051】
図2に示されたミドル周方向溝10mでは、その開口部を構成する一対のエッジ14mはストレートにのびる。
図4はトレッドパターンの変形例を示す。この図4に示されるように、ミドル周方向溝10mのエッジ14mがジグザグにのびてもよい。図示されないが、このエッジ14mが波状にのびてもよい。
【0052】
図4に示されたミドル周方向溝10mでは、エッジ14mは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の頂点Emを含み、これら頂点Emは周方向に等間隔に配置される。トレッド面6の第一端TE1に近接する頂点Em(以下、第一頂点Em1)と、その第二端TE2に近接する頂点Em(以下、第二頂点Em2)とは、周方向に交互に配置される。エッジ14mは、第一頂点Em1と、第二頂点Em2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、エッジ14mが波状にのびる場合、このエッジ14mは、第一頂点Em1と第二頂点Em2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0053】
図4に示されたミドル周方向溝10mでは、開口部を構成する、第一端TE1側のエッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置は、第二端TE2側のエッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置と一致する。
第一端TE1側のエッジ14mに含まれる頂点Emの数と、第二端TE2側のエッジ14mに含まれる頂点Emの数とが同じであれば、第二端TE2側のエッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置が、第一端TE1側のエッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置とずれてもよい。
【0054】
図4において、符号Amで示される長さは、ミドル周方向溝10mのエッジ14mにおける第一頂点Em1から第二頂点Em2までの軸方向距離である。この軸方向距離Amは、ミドル周方向溝10mのエッジ14mの振れ幅である。図1に示されたミドル周方向溝10mのエッジ14mはストレートにのびるので、振れ幅Amは0(ゼロ)mmである。
【0055】
図2において一点鎖線LBmは、ミドル周方向溝10mの溝底PBmの軌跡を表す。この溝底PBmの軌跡LBmはジグザグにのびる。この軌跡LBmは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の頂点Bmを含み、これら頂点Bmは周方向に等間隔で配置される。トレッド面6の第一端TE1に近接する頂点Bm(以下、第一頂点Bm1)と、その第二端TE2に近接する頂点Bm(以下、第二頂点Bm2)とは、周方向に交互に配置される。軌跡LBmは、第一頂点Bm1と、第二頂点Bm2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、この軌跡LBmが波状にのびてもよい。この場合、軌跡LBmは、第一頂点Bm1と第二頂点Bm2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0056】
図4に示された溝底PBmの軌跡LBmは、図2に示された溝底PBmの軌跡LBmの構成と同じ構成を有する。図4の軌跡LBmも、第一頂点Bm1と、第二頂点Bm2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図4において、溝底PBmの軌跡LBmにおける第一頂点Bm1及び第二頂点Bm2の周方向位置は、開口部のエッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置と一致する。
溝底PBmの軌跡LBmに含まれる頂点Bmの数と開口部のエッジ14mに含まれる頂点Emの数が同じであれば、溝底PBmの軌跡LBmにおける第一頂点Bm1及び第二頂点Bm2の周方向位置が、エッジ14mにおける第一頂点Em1及び第二頂点Em2の周方向位置とずれてもよい。
【0057】
前述の、図2のIII-III線は、符号BMで示された、軌跡LBm上の特定の位置を通る。この位置BMは、第一頂点Bm1及び第二頂点Bm2から等距離にある位置であり、中間点とも呼ばれる。図3が示す周方向溝10の断面は、中間点BMにおけるミドル周方向溝10mの断面である。
【0058】
図5図2のV-V線に沿った断面図である。図2においてV-V線は、軸方向にのび、軌跡LBmの第一頂点Bm1を通る。図5は、第一頂点Bm1におけるミドル周方向溝10mの断面を示す。図5において溝幅中心線HMの左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。
【0059】
ミドル周方向溝10mは、一対の溝壁20mと、両溝壁20mの間を繋ぐ溝底部22mとを備える。溝底部22mは溝底PBmを有する。
実線HMは溝幅の中心線である。図5に示されるように、溝底PBmは、軸方向において、溝幅中心線HMよりもトレッド面6の第一端TE1側に位置する。前述の中間点BMにおける溝底PBmの位置は、図3に示されるように、溝幅中心線HMと溝底部22mとの交点に一致する。
【0060】
図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。図2においてVI-VI線は軸方向にのび、軌跡LBmの第二頂点Bm2を通る。図6は、第二頂点Bm2におけるミドル周方向溝10mの断面を示す。図6において溝幅中心線HMの左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。
図6に示されるように、溝底PBmは、軸方向において、溝幅中心線HMよりもトレッド面6の第二端TE2側に位置する。
【0061】
図2に示されたセンター周方向溝10cでは、その開口部を構成する一対のエッジ14cはストレートにのびる。
図4に示されるように、センター周方向溝10cのエッジ14cがジグザグにのびてもよい。図示されないが、このエッジ14cが波状にのびてもよい。
【0062】
図4に示されたセンター周方向溝10cでは、エッジ14cは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の頂点Ecを含み、これら頂点Ecは周方向に等間隔に配置される。トレッド面6の第一端TE1に近接する頂点Ec(以下、第一頂点Ec1)と、その第二端TE2に近接する頂点Ec(以下、第二頂点Ec2)とは、周方向に交互に配置される。エッジ14cは、第一頂点Ec1と、第二頂点Ec2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、エッジ14cが波状にのびる場合、このエッジ14cは、第一頂点Ec1と第二頂点Ec2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0063】
図4に示されたセンター周方向溝10cでは、開口部を構成する、第一端TE1側のエッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置は、第二端TE2側のエッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置と一致する。
第一端TE1側のエッジ14cに含まれる頂点Ecの数と、第二端TE2側のエッジ14cに含まれる頂点Ecの数とが同じであれば、第二端TE2側のエッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置が、第一端TE1側のエッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置とずれてもよい。
【0064】
図4において、符号Acで示される長さは、センター周方向溝10cのエッジ14cにおける第一頂点Ec1から第二頂点Ec2までの軸方向距離である。この軸方向距離Acは、センター周方向溝10cのエッジ14cの振れ幅である。図1に示されたセンター周方向溝10cのエッジ14cはストレートにのびるので、この振れ幅Acは0(ゼロ)mmである。
【0065】
図2において一点鎖線LBcは、センター周方向溝10cの溝底PBcの軌跡を表す。この溝底PBcの軌跡LBcはジグザグにのびる。この軌跡LBcは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の頂点Bcを含み、これら頂点Bcは周方向に等間隔で配置される。トレッド面6の第一端TE1に近接する頂点Bc(以下、第一頂点Bc1)と、その第二端TE2に近接する頂点Bc(以下、第二頂点Bc2)とは、周方向に交互に配置される。軌跡LBcは、第一頂点Bc1と、第二頂点Bc2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、この軌跡LBcが波状にのびてもよい。この場合、軌跡LBcは、第一頂点Bc1と第二頂点Bc2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0066】
図4に示された溝底PBcの軌跡LBcは、図2に示された溝底PBcの軌跡LBcの構成と同じ構成を有する。図4の軌跡LBcも、第一頂点Bc1と、第二頂点Bc2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図4において、溝底PBcの軌跡LBcにおける第一頂点Bc1及び第二頂点Bc2の周方向位置は、開口部のエッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置と一致する。
溝底PBcの軌跡LBcに含まれる頂点Bcの数と開口部のエッジ14cに含まれる頂点Ecの数が同じであれば、溝底PBcの軌跡LBcにおける第一頂点Bc1及び第二頂点Bc2の周方向位置が、エッジ14cにおける第一頂点Ec1及び第二頂点Ec2の周方向位置とずれてもよい。
【0067】
図7図2のVII-VII線に沿った断面図である。図2においてVII-VII線は、軸方向にのび、軌跡LBcの第一頂点Bc1を通る。図7は、第一頂点Bc1におけるセンター周方向溝10cの断面を示す。図7においてセンター周方向溝10cの溝幅中心線HG(以下、溝幅中心線HC)の左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。
【0068】
センター周方向溝10cは、一対の溝壁20cと、両溝壁20cの間を繋ぐ溝底部22cとを備える。溝底部22cは溝底PBcを有する。
図7に示されるように、溝底PBcは、軸方向において、溝幅中心線HCよりもトレッド面6の第一端TE1側に位置する。
【0069】
図7において二点鎖線Smは、ミドル横溝16mの溝底を含む面を表す。ミドル陸部12mがミドル横溝16mの溝底を含む面Smまで摩耗すると、ミドル横溝16mは消失する。ミドル横溝16mはセンター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mよりも浅いので、ミドル横溝16mが消失しても、センター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mは残存する。
【0070】
本発明において、横溝16の溝底を含む面は、横溝16の深さと等しい距離、トレッド面6から離れた位置で、トレッド4を仮想的に切断することで得られる仮想面を意味する。横溝16の溝底を含む面は、横溝16が消失するまで摩耗したトレッド4の仮想トレッドパターンを示す。
【0071】
図8図2のVIII-VIII線に沿った断面図である。図2においてVIII-VIII線は軸方向にのび、軌跡LBcの第二頂点Bc2を通る。図8は、第二頂点Bc2におけるセンター周方向溝10cの断面を示す。図8において溝幅中心線HCの左側が、トレッド面6の第一端TE1側である。
図8に示されるように、溝底PBcは、軸方向において、溝幅の中心線HCよりもトレッド面6の第二端TE2側に位置する。
【0072】
図8において二点鎖線Scは、クラウン横溝16cの溝底を含む面を表す。クラウン陸部12cがクラウン横溝16cの溝底を含む面Scまで摩耗すると、クラウン横溝16cは消失する。クラウン横溝16cはセンター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mよりも浅いので、クラウン横溝16cが消失しても、センター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mは残存する。
【0073】
図9は、横溝16の溝底を含む面でトレッド4を仮想的に切断することで得られる、仮想トレッドパターンを示す。
前述したように、図1に示されたトレッド4では、ミドル横溝16mはクラウン横溝16cの深さと同じ深さを有する。この図9に示された仮想トレッドパターンは、ミドル横溝16m及びクラウン横溝16cの溝底を含む面までトレッド4が摩耗し、ミドル横溝16m及びクラウン横溝16cが消失した場合の、トレッドパターンを仮想的に表す。
図9に示された、各周方向溝10の開口部は仮想開口部とも呼ばれる。仮想開口部を構成する一対のエッジ24は仮想エッジとも呼ばれる。
仮想エッジ24は、トレッド4が摩耗することで現われる、周方向溝10のエッジである。この仮想エッジ24の形状には、周方向溝10の溝壁20の形状が反映される。
【0074】
図9に示されるように、ミドル周方向溝10mの仮想開口部はジグザグにのびる一対の仮想エッジ24mを備える。それぞれの仮想エッジ24mは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の仮想頂点EAmを含む。トレッド面6の第一端TE1に近接する仮想頂点EAm(以下、第一仮想頂点EAm1)と、その第二端TE2に近接する仮想頂点EAm(以下、第二仮想頂点EAm2)とは周方向に交互に配置される。仮想エッジ24mは、第一仮想頂点EAm1と、第二仮想頂点EAm2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、仮想エッジ24mが波状にのびてもよい。この場合、仮想エッジ24mは、第一仮想頂点EAm1と、第二仮想頂点EAm2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0075】
図9において、符号AAmで示される長さは、ミドル周方向溝10mの仮想エッジ24mにおける第一仮想頂点EAm1から第二仮想頂点EAm2までの軸方向距離である。この軸方向距離AAmは、ミドル周方向溝10mの仮想エッジ24mの振れ幅である。
【0076】
前述したように、仮想エッジ24の形状には、周方向溝10の溝壁20の形状が反映される。ミドル周方向溝10mの仮想開口部の仮想エッジ24mは、ストレートではなくジグザグにのびる。ミドル周方向溝10mの溝壁20mは、仮想エッジ24mのジグザグ形状が反映された凹凸を有する。言い換えれば、このミドル周方向溝10mの溝壁20mは平らでない。
【0077】
センター周方向溝10cの仮想開口部はジグザグにのびる一対の仮想エッジ24cを備える。それぞれの仮想エッジ24cは、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の仮想頂点EAcを含む。トレッド面6の第一端TE1に近接する仮想頂点EAc(以下、第一仮想頂点EAc1)と、その第二端TE2に近接する仮想頂点EAc(以下、第二仮想頂点EAc2)とが周方向に交互に配置される。仮想エッジ24cは、第一仮想頂点EAc1と、第二仮想頂点EAc2とを交互に経由しながら、ジグザグにのびる。
図示されないが、仮想エッジ24cが波状にのびてもよい。この場合、仮想エッジ24cは、第一仮想頂点EAc1と、第二仮想頂点EAc2とを交互に経由しながら、波状にのびる。
【0078】
図9において、符号AAcで示される長さは、センター周方向溝10cの仮想エッジ24cにおける第一仮想頂点EAc1から第二仮想頂点EAc2までの軸方向距離である。この軸方向距離AAcは、センター周方向溝10cの仮想エッジ24cの振れ幅である。
【0079】
センター周方向溝10cの仮想開口部の仮想エッジ24cは、ストレートではなくジグザグにのびる。センター周方向溝10cの溝壁20cは、仮想エッジ24cのジグザグ形状が反映された凹凸を有する。言い換えれば、このセンター周方向溝10cの溝壁20cは平らでない。
【0080】
本発明において、平らでない溝壁20を有する周方向溝10は変則周方向溝10bとも呼ばれる。図1に示されたトレッド4では、センター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mが変則周方向溝10bである。
【0081】
前述したように、このトレッド4のクラウン陸部12c及びミドル陸部12mはブロック状陸部12bである。2本のセンター周方向溝10cの間がクラウン陸部12cであり、センター周方向溝10cとミドル周方向溝10mとの間がミドル陸部12mである。
ブロック状陸部12bの両側に位置する周方向溝10は、変則周方向溝10bである。
【0082】
クラウン陸部12cに設けられるクラウン横溝16cはセンター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mよりも浅く、ミドル陸部12mに設けられるミドル横溝16mはセンター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mよりも浅い。
ブロック状陸部12bに設けられる横溝16bは変則周方向溝10bよりも浅い。
【0083】
センター周方向溝10cの開口部はストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジ14cを備え、ミドル周方向溝10mの開口部はストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジ14mを備える。
変則周方向溝10bの開口部は、ストレート又はジグザグ若しくは波状にのびる一対のエッジ14bを備える。
一対のエッジ14bがジグザグ又は波状にのびる場合、それぞれのエッジ14bはトレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の頂点Ebを含む。トレッド面6の第一端TE1に近接する頂点Eb(以下、第一頂点Eb1)と、その第二端TE2に近接する頂点Eb(以下、第二頂点Eb2)とは周方向に交互に配置される。
【0084】
クラウン陸部12cに設けられるクラウン横溝16cの溝底を含む面でトレッド4を仮想的に切断することで得られるセンター周方向溝10cの仮想開口部は、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジ24cを備える。ミドル陸部12mに設けられるミドル横溝16mの溝底を含む面でトレッド4を仮想的に切断することで得られるミドル周方向溝10mの仮想開口部は、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジ24mを備える。
ブロック状陸部12bに設けられる横溝16bの溝底を含む面でトレッド4を仮想的に切断することで得られる変則周方向溝10bの仮想開口部は、ジグザグ又は波状にのびる一対の仮想エッジ24bを備える。
一対の仮想エッジ24bはそれぞれ、トレッド面6の第一端TE1又は第二端TE2に近接する複数の仮想頂点EAbを含み、トレッド面6の第一端TE1に近接する仮想頂点EAb(以下、第一仮想頂点EAb1)とその第二端TE2に近接する仮想頂点EAb(以下、第二仮想頂点EAb2)とが周方向に交互に配置される。
【0085】
前述したように、センター周方向溝10c及びミドル周方向溝10mは変則周方向溝10bである。
図4に示された、センター周方向溝10cのエッジ14cの振れ幅Ac及びミドル周方向溝10mのエッジ14mの振れ幅Amは、変則周方向溝10bのエッジ14bの振れ幅Abである。この振れ幅Abは、エッジ14bの第一頂点Eb1から第二頂点Eb2までの軸方向距離である。図1に示されたトレッドパターンにおける変則周方向溝10bのエッジ14bはストレートにのびるので、振れ幅Abは0(ゼロ)mmである。
図9に示された、センター周方向溝10cの仮想エッジ24cの振れ幅AAc及びミドル周方向溝10mの仮想エッジ24mの振れ幅AAmは、変則周方向溝10bの仮想エッジ24bの振れ幅AAbである。この振れ幅AAbは、仮想エッジ24bの第一頂点EAb1から第二頂点EAb2までの軸方向距離である。
図1に示されたトレッド4において、クラウン横溝16cがミドル横溝16mよりも深い場合は、センター周方向溝10cの仮想エッジ24cの振れ幅AAcが変則周方向溝10bの仮想エッジ24bの振れ幅AAbとして用いられる。クラウン横溝16cがミドル横溝16mよりも浅い場合は、ミドル周方向溝10mの仮想エッジ24mの振れ幅AAmが変則周方向溝10bの仮想エッジ24bの振れ幅AAbとして用いられる。
【0086】
このタイヤ2では、クラウン陸部12c及び/又はミドル陸部12mが、ブロック状陸部12bであり、ブロック状陸部12bの両側に位置する周方向溝10は変則周方向溝10bである。
【0087】
ブロック状陸部12bは周方向に並ぶ横溝16bを有する。横溝16bは略軸方向にのびる。この横溝16bのエッジが、路面を掻くエッジ成分として機能する。ブロック状陸部12bはウェット性能の向上に貢献できる。
この観点から、図1に示されたトレッド4のように、クラウン陸部12c及びミドル陸部12mがブロック状陸部12bであるのが好ましい。
【0088】
前述したように、ブロック状陸部12bに刻まれる横溝16bは変則周方向溝10bよりも浅い。ブロック状陸部12bは必要な剛性を有することができる。このタイヤ2は、ブロック状陸部12bが過剰に変形することを抑制できる。このタイヤ2は転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制できる。
【0089】
横溝16bは浅いので、トレッド4が摩耗すると変則周方向溝10bよりも先に横溝16bが消失する。この場合、ウェット性能の低下が懸念される。
【0090】
しかしこのタイヤ2では、変則周方向溝10bにおいて、仮想エッジ24bの振れ幅AAbがエッジ14bの振れ幅Abよりも大きい。トレッド4が摩耗することで現われる変則周方向溝10bのエッジが、エッジ成分として効果的に貢献できる。横溝16bが消失することで低減したエッジ成分を、トレッド4が摩耗することで現われる変則周方向溝10bの仮想エッジ24bが補う。このタイヤ2はウェット性能の低下を抑制できる。
【0091】
図9に示されるように、クラウン陸部12cにおいてクラウン横溝16cの第一端TE1側の端の近くに、仮想エッジ24cの第二仮想頂点EAc2が位置する。隣り合う2つのクラウン横溝16cの間に、第一仮想頂点EAc1が位置する。仮想エッジ24cに含まれる仮想頂点EAcの数は、クラウン陸部12cに含まれるクラウン横溝16cの数よりも多い。
ミドル陸部12mにおいてミドル横溝16mの第一端TE1側の端の近くに、仮想エッジ24mの第一仮想頂点EAm1が位置する。隣り合う2つのミドル横溝16mの間に、第二仮想頂点EAm2が位置する。仮想エッジ24mに含まれる仮想頂点EAmの数は、ミドル陸部12mに含まれるミドル横溝16mの数よりも多い。
変則周方向溝10bにおいて仮想エッジ24bに含まれる仮想頂点EAbの数は、ブロック状陸部12bに含まれる横溝16bの数よりも多い。横溝16bが消失することで低減したエッジ成分を、トレッド4が摩耗することで現われる変則周方向溝10bの仮想エッジ24bが効果的に補う。仮想エッジ24bはウェット性能の向上に貢献できる。このタイヤ2は、良好なウェット性能を安定に発揮できる。
このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる。
【0092】
例えば、図5に示されるように、ミドル周方向溝10mは、第一端TE1側の第一溝壁20mfと、第二端TE2側の第二溝壁20msと、第一溝壁20mfと第二溝壁20msとの間を繋ぎ、溝底PBmを有する溝底部22mとを備える。そして、第一溝壁20mfと第二溝壁20msとが平らでない溝壁である。図7に示されるように、センター周方向溝10cは、第一端TE1側の第一溝壁20cfと、第二端TE2側の第二溝壁20csと、第一溝壁20cfと第二溝壁20csとの間を繋ぎ、溝底PBcを有する溝底部22cとを備える。そして、第一溝壁20cfと第二溝壁20csとが平らでない溝壁である。
変則周方向溝10bは、第一端TE1側の第一溝壁20bfと、第二端TE2側の第二溝壁20bsと、第一溝壁20bfと第二溝壁20bsとの間を繋ぎ、溝底PBbを有する溝底部22bとを備え、第一溝壁20bfと第二溝壁20bsとは平らでない溝壁である。
【0093】
前述したように、ミドル周方向溝10mの溝底PBmの軌跡LBmは、第一頂点Bm1と、第二頂点Bm2とを交互に経由しながら、ジグザグ又は波状にのびる。センター周方向溝10cの溝底PBcの軌跡LBcは、第一頂点Bc1と、第二頂点Bc2とを交互に経由しながら、ジグザグ又は波状にのびる。
変則周方向溝10bにおける溝底PBbの軌跡LBcは、トレッド面6の第一端TE1に近接する第一頂点Bb1と、その第二端TE2に近接する第二頂点Bb2とを交互に経由しながら、ジグザグ又は波状にのびる。
【0094】
図5から図8に示されるように、変則周方向溝10bの第一溝壁20bf及び第二溝壁20bsは、変則周方向溝10bのエッジ14bにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜する。
図5において角度θ1fは、溝底PBbの軌跡LBcの第一頂点Bb1において第一溝壁20bfの延長線が、エッジ14bにおけるトレッド面6の法線に対してなす角度である。この角度θ1fは、第一頂点Bb1における第一溝壁20bfの傾斜角である。角度θ1sは、第一頂点Bb1における第二溝壁20bsの傾斜角である。
図6において角度θ2fは、溝底PBbの軌跡LBcの第二頂点Bb2において第一溝壁20bfの延長線が、エッジ14bにおけるトレッド面6の法線に対してなす角度である。この角度θ2fは、第二頂点Bb2における第一溝壁20bfの傾斜角である。角度θ2sは、第二頂点Bb2における第二溝壁20bsの傾斜角である。
【0095】
図5及び図6に示されるように、このタイヤ2では、第一頂点Bb1における第一溝壁20bfの傾斜角θ1fは第二溝壁20bsの傾斜角θ1sよりも小さく、第二頂点Bb2における第一溝壁20bfの傾斜角θ2fは第二溝壁20bsの傾斜角θ2sよりも大きい。これにより、第一頂点Bb1では第二溝壁20bsが、第二頂点Bb2では第一溝壁20bfが、トレッド4が摩耗した状態において、エッジ成分として効果的に機能できる。変則周方向溝10bの第一溝壁20bf及び第二溝壁20bsがウェット性能の向上に効果的に貢献できる。この観点から、第一頂点Bb1における第一溝壁20bfの傾斜角θ1fは第二溝壁20bsの傾斜角θ1sよりも小さく、第二頂点Bb2における第一溝壁20bfの傾斜角θ2fは第二溝壁20bsの傾斜角θ2sよりも大きいのが好ましい。
【0096】
図7及び図8において符号WAで示される長さは、変則周方向溝10bの仮想開口部の開口幅である。開口幅WAは、トレッド面6の第一端TE1側の仮想エッジ24bから第二端TE2側の仮想エッジ24bまでの軸方向距離で表される。符号Wfで示される長さは第一開口幅とも呼ばれる。第一開口幅Wfは、溝底PBbから第一端TE1側の仮想エッジ24bまでの軸方向距離で表される。符号Wsで示される長さは第二開口幅とも呼ばれる。第二開口幅Wsは、溝底PBbから第二端TE2側の仮想エッジ24bまでの軸方向距離で表される。
第一開口幅Wfと第二開口幅Wsとの和は、開口幅WAに等しい。
なお、図7の第一頂点Bb1における第一開口幅Wfは第一開口幅W1fとも呼ばれ、図8の第二頂点Bb2における第一開口幅Wfは第一開口幅W2fとも呼ばれる。図7の第一頂点Bb1における第二開口幅Wsは第二開口幅W1sとも呼ばれ、図8の第二頂点Bb2における第二開口幅Wsは第二開口幅W2sとも呼ばれる。
【0097】
図5及び図7に示されるように、第一頂点Bb1での変則周方向溝10bの溝底PBbは、軸方向において、溝幅中心線HGよりもトレッド面6の第一端TE1側に位置する。図6及び図8に示されるように、第二頂点Bb2での溝底PBbは、軸方向において、溝幅中心線HGよりもトレッド面6の第二端TE2側に位置する。
【0098】
変則周方向溝10bの仮想開口部では、図7に示されるように、第一頂点Bb1では第一開口幅W1fが第二開口幅W1sよりも狭い。第二頂点Bb2では、図8に示されるように第一開口幅W2fが第二開口幅W2sよりも広い。第一頂点Bb1では主に第二溝壁20bsが、第二頂点Bb2では主に第一溝壁20bfが、トレッド4が摩耗した状態においてエッジ成分として機能する。第一頂点Bb1と第二頂点Bb2とは周方向に交互に配置されるので、第一溝壁20bfと第二溝壁20bsとが交互にエッジ成分として機能する。このタイヤ2では、トレッド4が摩耗しても、変則周方向溝10bのエッジがウェット性能の向上に効果的に貢献できる。この観点から、変則周方向溝10bの仮想開口部では、第一頂点Bb1において第一開口幅W1fが第二開口幅W1sよりも狭く、第二頂点Bb2において第一開口幅W2fが第二開口幅W2sよりも広いのが好ましい。
【0099】
変則周方向溝10bの仮想エッジ24bにおける剛性を確保しながら、変則周方向溝10bがウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、第一頂点Bb1において第二開口幅W1sの第一開口幅W1fに対する比(W1s/W1f)は1.30以上2.20以下であるのがより好ましい。この比(W1s/W1f)は1.50以上2.00以下であるのがさらに好ましい。
同様の観点から、第二頂点Bb2において第一開口幅W2fの第二開口幅W2sに対する比(W2f/W2s)は1.30以上2.20以下であるのがより好ましい。この比(W2f/W2s)は1.50以上2.00以下であるのがさらに好ましい。
【0100】
変則周方向溝10bの仮想エッジ24bにおける剛性を十分に確保しながら、変則周方向溝10bがウェット性能の向上により効果的に貢献できる観点から、第一頂点Bb1において第二開口幅W1sの第一開口幅W1fに対する比(W1s/W1f)は1.30以上2.20以下であり、第二頂点Bb2において第一開口幅W2fの第二開口幅W2sに対する比(W2f/W2s)は1.30以上2.20以下であるのがさらに好ましい。
【0101】
図7及び図8において符号Dで示される長さは、センター周方向溝10cの深さである。センター周方向溝10cは変則周方向溝10bであるので、深さDは変則周方向溝10bの深さである。
図7において符号dmで示される長さはミドル横溝16mの深さである。図8において符号dcで示される長さはクラウン横溝16cの深さである。ミドル横溝16m及びクラウン横溝16cはブロック状陸部12bに刻まれる横溝16bである。深さdm及び深さdcはブロック状陸部12bに設けられる横溝16bの深さであり、横溝16bの深さは深さdyで表される。
【0102】
前述したように、ブロック状陸部12bに設けられる横溝16bは変則周方向溝10bよりも浅い。横溝16bが深すぎると、ブロック状陸部12bの剛性が低下するため、耐摩耗性が低下したり転がり抵抗が増加する恐れがある。横溝16bが浅すぎると、摩耗により横溝16bが消失するタイミングが早まるため、横溝16bがウェット性能の発揮に十分に貢献できない。
【0103】
このタイヤ2では、ブロック状陸部12bに設けられる横溝16bの深さdyの変則周方向溝10bの深さDに対する比(dy/D)は、0.12以上0.32以下であるのが好ましい。
比(dy/D)が0.12以上に設定されることにより、横溝16bがウェット性能の発揮に効果的に貢献できる。この観点から、比(dy/D)は0.17以上であるのがより好ましい。
比(dy/D)が0.32以下に設定されることにより、横溝16bによるブロック状陸部12bの剛性への影響が抑制される。タイヤ2が低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持することに、横溝16bが効果的に貢献できる。この観点から、比(dy/D)は0.27以下であるのがより好ましい。
【0104】
図10図1のトレッドパターンの一部を示す。詳細には、この図10はブロック状陸部12bとしてのミドル陸部12mの一部を示す。
【0105】
ミドル陸部12mは、ブロック状陸部12bに設けられる横溝16bとしてのミドル横溝16mに加え、縦溝26(以下、ミドル縦溝26mとも呼ばれる。)を有する。ミドル陸部12mはミドル横溝16mとミドル縦溝26mとを有する。ミドル縦溝26mは周方向に連続してのびる。ミドル縦溝26mは変則周方向溝10bよりも浅い。
【0106】
前述したように、ミドル陸部12mは複数のブロック18mを含む。ミドル縦溝26mは、ブロック18m(具体的には、ブロック18mの頂面を含む部分)を2つのサブブロック28mに区分する。
【0107】
ミドル縦溝26mは、第一ミドル縦溝30と、第二ミドル縦溝32とを備える。
第一ミドル縦溝30はストレートにのびる。第一ミドル縦溝30は周方向に対して傾斜する。第二ミドル縦溝32も周方向に対して傾斜する。しかし第二ミドル縦溝32は、第一ミドル縦溝30の傾斜の向きと逆向きに傾斜する。周方向において、第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32とは交互に配置される。
【0108】
図11は、図10のXI-XI線に沿った断面を示す。図11は、第一ミドル縦溝30の断面を示す。図11において符号g1で示される長さは第一ミドル縦溝30の溝幅である。符号d1で示される長さは第一ミドル縦溝30の深さである。
図12は、図10のXII-XII線に沿った断面を示す。図12は、第二ミドル縦溝32の断面を示す。図12において符号g2で示される長さは第二ミドル縦溝32の溝幅である。符号d2で示される長さは第二ミドル縦溝32の深さである。
【0109】
このタイヤ2では、第一ミドル縦溝30の溝幅g1は横溝16bの溝幅よりも狭い。排水性が考慮され、第一ミドル縦溝30の溝幅g1は横溝16bの溝幅の0.5倍以上に設定される。第二ミドル縦溝32の溝幅g2は横溝16bの溝幅よりも広い。第二ミドル縦溝32による剛性への影響が考慮され、第二ミドル縦溝32の溝幅g2は横溝16bの溝幅の1.5倍以下に設定される。
【0110】
第一ミドル縦溝30の深さd1は第二ミドル縦溝32の深さd2と同じである。深さd1及び深さd2は、ブロック状陸部12bとしてのミドル陸部12mに設けられるミドル縦溝26mの深さである。ミドル縦溝26mの深さは深さdtで表される。ミドル縦溝26mの深さdtは横溝16bの深さdyと同じである。なお、深さdtは深さdyと同じであるとは、深さdtの深さdyに対する比(dt/dy)が0.95以上1.05以下であることを意味する。
【0111】
ブロック状陸部12bとしてのミドル陸部12mにおいて、横溝16bとしてのミドル横溝16mに加えて設けられるミドル縦溝26mも、エッジ成分として機能する。ミドル横溝16m及びミドル縦溝26mの相乗効果により、このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。そして、前述したように、ミドル縦溝26mは変則周方向溝10bよりも浅い。ミドル横溝16mに加えてミドル縦溝26mが設けられているにもかかわらず、ミドル陸部12mは必要な剛性を有することができる。このタイヤ2は、ミドル陸部12mが過剰に変形することを抑制できる。このタイヤ2は転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制できる。
この観点から、ブロック状陸部12bとしてのミドル陸部12mが、横溝16bとしてのミドル横溝16mに加え、周方向に連続してのび、変則周方向溝10bよりも浅いミドル縦溝26mを有するのが好ましい。
【0112】
このタイヤ2では、ミドル縦溝26mの深さdtの変則周方向溝10bの深さDに対する比(dt/D)は、0.12以上0.32以下であるのが好ましい。
比(dt/D)が0.12以上に設定されることにより、ミドル縦溝26mがウェット性能の発揮に効果的に貢献できる。この観点から、比(dt/D)は0.17以上であるのがより好ましい。
比(dt/D)が0.32以下に設定されることにより、ミドル縦溝26mによるブロック状陸部12bとしてのミドル陸部12mの剛性への影響が抑制される。タイヤ2が低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持することに、ミドル縦溝26mが効果的に貢献できる。この観点から、比(dt/D)は0.27以下であるのがより好ましい。
【0113】
第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32の傾斜の向きは互いに異なるが、第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32は周方向に対して傾斜する。第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32を含むミドル縦溝26mはエッジ成分として機能する。ミドル縦溝26mはウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、ミドル縦溝26mが、周方向に対して傾斜する第一ミドル縦溝30と、第一ミドル縦溝30の傾斜の向きと逆向きに傾斜する第二ミドル縦溝32とを備え、周方向において第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32とが交互に配置されるのが好ましい。
【0114】
図10において一点鎖線TLはミドル縦溝26mの溝幅の中心線である。
図10に示されるように、第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32との境界部分で、ミドル縦溝26mは湾曲する。前述したように、第一ミドル縦溝30はストレートにのびる。図10において符号PTで示される位置は、ミドル縦溝26mの溝幅の中心線TLが直線から曲線に変わる位置である。本発明においては、この位置PTが第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32との境界である。
【0115】
図10において、角度θaは溝幅の中心線TLの直線部分が、周方向に対してなす角度である。本発明においてはこの角度θaが、第一ミドル縦溝30の傾斜角である。
第一ミドル縦溝30の傾斜角θaは4度以上12度以下であるのが好ましい。これにより、第一ミドル縦溝30がエッジ成分として効果的に機能できる。第一ミドル縦溝30はウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、第一ミドル縦溝30の傾斜角θaは8度以上12度以下であるのがより好ましい。
第二ミドル縦溝32も周方向に対して傾斜するが、この第二ミドル縦溝32の傾斜角は、第一ミドル縦溝30の傾斜角θaと、第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32との境界PTの位置とによって適宜設定される。
【0116】
例えば図10に示されるように、第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32のそれぞれはミドル横溝16mと交差する。第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32とは周方向において交互に配置される。第二ミドル縦溝32は、第一ミドル縦溝30が交差するミドル横溝16mの隣に位置するミドル横溝16mと交差する。第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32とはそれぞれ、周方向に並ぶ複数のミドル横溝16mと一つ置きに交差する。ミドル横溝16mはミドル縦溝26mと変則周方向溝10bとの間を架け渡す。ミドル縦溝26m内にある水の、変則周方向溝10bへの排出が促される。第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32のそれぞれがエッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32とはそれぞれ、周方向に並ぶ複数のミドル横溝16mと一つ置きに交差するのが好ましい。
【0117】
図10において、一点鎖線YLはミドル横溝16mの溝幅の中心線である。第一ミドル縦溝30と交差するミドル横溝16mの溝幅の中心線YLは中心線YL1とも呼ばれ、第二ミドル縦溝32と交差するミドル横溝16mの溝幅の中心線YLは中心線YL2とも呼ばれる。
符号TY1で示される位置は、ミドル縦溝26mの溝幅の中心線TLとミドル横溝16mの溝幅の中心線YL1との交点である。この交点TY1は、第一ミドル縦溝30とミドル横溝16mとの交差位置である。
符号TY2で示される位置は、ミドル縦溝26mの溝幅の中心線TLとミドル横溝16mの溝幅の中心線YL2との交点である。この交点TY2は、第二ミドル縦溝32とミドル横溝16mとの交差位置である。
図10において符号Lxで示される長さは、交差位置TY1から交差位置TY2までの周方向距離である。周方向距離Lxは、隣り合うミドル横溝16m間の周方向距離である。符号Ly1で示される長さは、交差位置TY2から、周方向距離Lxを規定する2つのミドル横溝16mの間に位置する、第一ミドル縦溝30と第二ミドル縦溝32との境界PTまでの周方向距離である。符号Ly2で示される長さは、交差位置TY2から、この交差位置TY2を挟んで周方向距離Ly1の起点である境界PT(以下、第一境界PT1とも呼ばれる。)の反対側に位置する境界PT(以下、第二境界PT2とも呼ばれる。)までの周方向距離である。
【0118】
隣り合うミドル横溝16m間の周方向距離Lxに対する、第二ミドル縦溝32とミドル横溝16mとの交差位置TY2から、第二ミドル縦溝32と第一ミドル縦溝30との境界PT1までの周方向距離Ly1の比(Ly1/Lx)は、0.07以上0.20以下であるのが好ましい。
比(Ly1/Lx)が0.07以上に設定されることにより、ミドル縦溝26mがエッジ成分として効果的に機能できる。ミドル縦溝26mはウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、比(Ly1/Lx)は0.10以上であるのがより好ましい。
比(Ly1/Lx)が0.20以下に設定されることにより、ミドル縦溝26m内にある水の排出が促される。この場合においてもミドル縦溝26mがウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、比(Ly1/Lx)は0.17以下であるのがより好ましい。
【0119】
交差位置TY2から第二境界PT2までの周方向距離Ly2は、交差位置TY2から第一境界PT1までの周方向距離Ly1に等しい。周方向距離Ly2が周方向距離Ly1よりも短くてもよく、周方向距離Ly2が周方向距離Ly1よりも長くてもよい。
ミドル縦溝26mがウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、周方向距離Ly2は周方向距離Ly1に等しいのが好ましい。なお、本発明において、周方向距離Ly2が周方向距離Ly1に等しいとは、周方向距離Ly2の周方向距離Ly1に対する比(Ly2/Ly1)が0.98以上1.02以下であることを意味する。
【0120】
このタイヤ2では、前述の交差位置TY1及びTY2は、ミドル陸部12mの幅中心に位置する。言い換えれば、第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32とは、ミドル陸部12mの軸方向中心において、ミドル横溝16mと交差する。この第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32を有するミドル縦溝26mは、エッジ成分として効果的に機能できる。ミドル縦溝26mはウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、第一ミドル縦溝30及び第二ミドル縦溝32とは、ミドル陸部12mの軸方向中心において、ミドル横溝16mと交差するのが好ましい。
【0121】
図10に示されたミドル横溝16mでは、そのエッジの輪郭は円弧で表される。ミドル横溝16mは円弧状に湾曲する。このミドル横溝16mでは、そのエッジに作用する応力が分散される。エッジを起点とする摩耗の発生が抑制される。ミドル横溝16mがエッジ成分としての機能を安定に発揮できる。このミドル横溝16mはウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、ミドル横溝16mは円弧状に湾曲するのが好ましい。
【0122】
図10において、符号Rで示される矢印は、ミドル横溝16mのエッジの輪郭を表す円弧の半径である。図示されないが、この円弧の中心は、ミドル陸部12mの外側領域に位置する。詳細には、この円弧の中心は、ミドル陸部12mの幅中心よりも軸方向外側の領域に位置する。ミドル横溝16mのエッジの輪郭を表す円弧の中心が、ミドル陸部12mの外側領域に位置することで、このミドル横溝16mがエッジ成分として効果的に機能できる。この観点から、ミドル横溝16mのエッジが、ミドル陸部12mの外側領域に中心を有する円弧で表される輪郭を有するのがより好ましい。
【0123】
図2に示されるように、クラウン陸部12cに設けられるクラウン横溝16cは軸方向に対して傾斜する。このクラウン横溝16cの容積は、このクラウン横溝16cを軸方向にのびるように構成した場合の容積に比べて増加する。このクラウン横溝16cは路面とトレッド面との間に存在する水の排出に貢献できる。このクラウン横溝16cはウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、ブロック状陸部12bとしてのクラウン陸部12cにおいて、横溝16bとしてのクラウン横溝16cは軸方向に対して傾斜するのが好ましい。
【0124】
図2に示されたクラウン横溝16cは、傾斜角が大きい中央部16ccと、この中央部16ccの両側に位置し傾斜角が小さい一対のサイド部16csとを備える。図2において角度θbcは中央部16ccのエッジが軸方向に対してなす角度である。この角度θbcは中央部16ccの傾斜角を表す。角度θbsはサイド部16csのエッジが軸方向に対してなす角度である。この角度θbsはサイド部16csの傾斜角を表す。
【0125】
このタイヤ2では、サイド部16csの傾斜角θbsが15度以上であり、中央部16ccの傾斜角θbcが30度以下であるのが好ましい。言い換えれば、クラウン横溝16cの傾斜角は15度以上30度以下であるのが好ましい。これにより、このタイヤ2は、クラウン横溝16cによる剛性への影響を抑制しながら、クラウン横溝16cの容積を確保できる。このタイヤ2は、低い転がり抵抗と良好な耐摩耗性とを維持しながら、ウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、クラウン横溝16cの傾斜角は15度以上25度以下であるのがより好ましい。
【0126】
例えば図2に示されるように、ミドル横溝16mは、その第一端TE1側の端部において、ミドル周方向溝10mと繋がる。ミドル横溝16mは、その第二端TE2側の端部において、センター周方向溝10cと繋がる。これにより、ミドルブロック18mの4つの角34mが構成される。このタイヤ2では、周方向において一方側に位置する2つの角34m1が鋭角であり、他方側に位置する2つの角34m2が鈍角である。
クラウン横溝16cは、その第一端TE1側の端部において、第一端TE1側のセンター周方向溝10cと繋がる。クラウン横溝16cは、その第二端TE2側の端部において、第二端TE2側のセンター周方向溝10cと繋がる。これにより、クラウンブロック18cの4つの角34cが構成される。このタイヤ2では、周方向において一方側に位置する2つの角34c1のうち、第二端TE2側の角34c1が鋭角であり、第一端TE1側に位置する角34c1が鈍角である。周方向において他方側に位置する2つの角34c2のうち、第二端TE2側の角34c2が鈍角であり、第一端TE2側に位置する角34c2が鋭角である。
このタイヤ2では、横溝16が周方向溝10に繋がることでブロック18の角34が構成される。この横溝16の向きをコントロールすることで、鋭角の角34又は鈍角の角34が構成される。なお、角34が鋭角であるか鈍角であるかは、ブロック18の頂面の形状によって判断される。
【0127】
図2に示されるように、このタイヤ2では、ブロック18の角34が鋭角である場合、この角34は面取りされる。これにより、角34が鋭角であることによる摩耗の発生が抑制される。この観点から、横溝16が周方向溝10に繋がることで構成されるブロック18の角34が鋭角である場合、角34が面取りされるのが好ましい。
【0128】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明された、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、良好なウェット性能を安定に発揮できる技術は種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0130】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・トレッド面
8・・・溝
10、10c、10m、10b・・・周方向溝
12、12c、12m、12s、12b・・・陸部
14、14m、14c、14b・・・周方向溝10のエッジ
16、16c、16m、16b・・・横溝
18、18c、18m・・・ブロック
20、20f、20s、20c、20m・・・溝壁
22、22m、22c、22b・・・溝底部
24、24m、24c、24b・・・仮想エッジ
26、26m、・・・縦溝
28m・・・サブブロック
30・・・第一ミドル縦溝
32・・・第二ミドル縦溝
34・・・ブロック18の角
図1
図2
図3
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図12