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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066552
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20240509BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20240509BHJP
   F02M 37/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B63H20/00 510
F02M37/10 B
F02M37/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175952
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽介
(57)【要約】
【課題】吸引ポンプでのベーパーロックに起因するエンジンへの燃料供給不足の発生を抑制する。
【解決手段】船外機は、エンジンと、船体に配置される燃料タンクに貯留された液体燃料を吸引する吸引ポンプと、吸引ポンプによって吸引された液体燃料を貯留し、液体燃料と蒸気とを分離するベーパーセパレータタンクと、ベーパーセパレータタンクに貯留された液体燃料をエンジンに供給する供給ポンプとを有する燃料供給機構と、を備える。船外機は、燃料供給機構を複数備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機であって、
エンジンと、
船体に配置される燃料タンクに貯留された液体燃料を吸引する吸引ポンプと、前記吸引ポンプによって吸引された液体燃料を貯留し、前記液体燃料と蒸気とを分離するベーパーセパレータタンクと、前記ベーパーセパレータタンクに貯留された液体燃料を前記エンジンに供給する供給ポンプとを有する燃料供給機構と、
を備え、
前記燃料供給機構を複数備える、船外機。
【請求項2】
請求項1に記載の船外機であって、
前記複数の燃料供給機構は、上下方向において同一の高さに配置されている、船外機。
【請求項3】
請求項1に記載の船外機であって、
前記複数の燃料供給機構は、前記船外機の左右方向の中心位置に対して対称の位置に配置されている、船外機。
【請求項4】
請求項1に記載の船外機であって、
前記各燃料供給機構が有する前記ベーパーセパレータタンクは、前記吸引ポンプに連通する導入孔と、フロートと、前記フロートの上下動に応じて前記導入孔を閉塞する閉塞位置と前記導入孔を開放する開放位置に変位する開閉弁と、を収容する、船外機。
【請求項5】
請求項4に記載の船外機であって、
前記船外機は、チルト軸を中心にチルト動作可能に構成され、
前記ベーパーセパレータタンクは、さらに、前後方向において前記チルト軸と前記フロートとの間に配置され、前記フロートを支持し、前記フロートを前記チルト軸に沿った回転軸を中心に回動させる回動アームを収容する、船外機。
【請求項6】
請求項1に記載の船外機であって、
前記エンジンは、複数のバンクを有し、
前記複数の燃料供給機構は、前記複数のバンクのそれぞれに個別に液体燃料を供給する構成である、船外機。
【請求項7】
請求項1に記載の船外機であって、
前記燃料タンク側に連結される主管と、前記主管から分岐する複数の分岐管とを備え、
前記複数の分岐管は、前記複数の燃料供給機構のそれぞれの前記吸引ポンプに連通する、船外機。
【請求項8】
請求項7に記載の船外機であって、
前記複数の分岐管における高低差は、互いに同じである、船外機。
【請求項9】
請求項7に記載の船外機であって、
前記複数の分岐管のそれぞれに水分離フィルタが設けられている、船外機。
【請求項10】
請求項1に記載の船外機であって、
前記複数の燃料供給機構の少なくとも2つのそれぞれが有する前記ベーパーセパレータタンクの収容可能容量は、互いに同じである、船外機。
【請求項11】
請求項1に記載の船外機であって、
前記複数の燃料供給機構の少なくとも2つのそれぞれが有する前記ベーパーセパレータタンクの収容可能容量は、互いに異なる、船外機。
【請求項12】
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項1に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、船体と、船体の後部に取り付けられた船外機とを備える。船外機は、船舶を推進させる推力を発生する装置である。
【0003】
船外機は、エンジンと吸引ポンプとベーパーセパレータタンクと供給ポンプとを有する燃料供給機構を備えている。吸引ポンプは、船体に配置される燃料タンクに貯留された液体燃料を吸引する。ベーパーセパレータタンクは、吸引ポンプによって吸引された液体燃料を貯留し、その液体燃料と蒸気とを分離する。供給ポンプは、ベーパーセパレータタンクに貯留された液体燃料をエンジンに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-82714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の船外機は、燃料供給機構を1つしか備えていない。このため、1つの燃料供給機構に発揮できる燃料の吸引能力には限界があり、その結果、例えば吸引ポンプでのベーパーロックに起因して、エンジンへの燃料供給が不足するなどといった問題が生じるおそれがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される船外機は、エンジンと、複数の燃料供給機構とを備える。各燃料供給機構は、船体に配置される燃料タンクに貯留された液体燃料を吸引する吸引ポンプと、前記吸引ポンプによって吸引された液体燃料を貯留し、前記液体燃料と蒸気とを分離するベーパーセパレータタンクと、前記ベーパーセパレータタンクに貯留された液体燃料を前記エンジンに供給する供給ポンプとを有する。
【0008】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、船外機、船外機と船体とを備える船舶等の形態で実現することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される船外機によれば、吸引ポンプでのベーパーロックに起因するエンジンへの燃料供給不足の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図
図2】船外機100の構成を概略的に示す側面図
図3】燃料供給機構300等の構成を概略的に示す部分的断面図
図4】エンジンアセンブリ120の配置構成を模式的に示す上面図
図5】エンジンアセンブリ120の配管構成を示す模式図
図6】変形例におけるエンジンアセンブリ120の配管構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.実施形態:
(船舶10の構成)
図1は、本実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図である。図1および後述する他の図面には、船舶10の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向および上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0012】
船舶10は、船体200と、船外機100とを備える。
【0013】
(船体200の構成)
船体200は、船舶10において乗員が搭乗する部分である。船体200は、居住空間204を有する船体本体部202と、居住空間204に設置された操縦席240と、操縦席240付近に設置された操縦装置250とを有する。操縦装置250は、例えば、ステアリングホイール252と、シフト・スロットルレバー254と、モニタ256と、入力装置258とを含む。また、船体200は、居住空間204の後端を区画する仕切壁220と、船体200の後端に位置するトランサム210とを有する。前後方向において、トランサム210と仕切壁220との間には、空間(以下、「後端上方空間206」という。)が存在している。
【0014】
(船外機100の構成)
図2は、船外機100の構成を概略的に示す側面図である。図2には、船体200の船体本体部202に備えられた燃料タンク260が示されている。以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、後述するプロペラ軸136の回転軸線Apが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0015】
船外機100は、船舶10を推進させる推力を発生する装置である。船外機100は、船体200の後部のトランサム210に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0016】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、エンジンアセンブリ120と、プロペラ112と、カウル114と、ケーシング116とを備える。
【0017】
エンジンアセンブリ120は、エンジン本体122を中心とした複数の部品の集合体である。エンジンアセンブリ120は、エンジン本体122に加えて、燃料供給機構300と、上流側配管230と、水分離フィルタ235(図3等参照)とを含む。エンジンアセンブリ120は、船外機100における比較的上方の位置に配置されている。燃料供給機構300と上流側配管230と水分離フィルタ235との構成については後述する。
【0018】
エンジンアセンブリ120は、カウル114内に収容されている。エンジン本体122は、動力を発生する原動機である。エンジン本体122は、例えば内燃機関により構成されている。エンジン本体122は、燃料と空気とを含む混合気の燃焼に伴って往復するピストンが内部に収容されたシリンダ(図示しない)と、ピストンの往復に伴って回転するクランク軸(図示しない)と、を含む。シリンダは、ピストンを収容するシリンダボディと、混合気が燃焼する燃焼室をピストンおよびシリンダボディと共に形成するシリンダヘッドと、を備える。シリンダヘッドは、吸気バルブによって開閉される複数の吸気ポートと、排気バルブによって開閉される複数の排気ポートと、を備える。本実施形態では、エンジン本体122は、一対のバンク123(図4参照)を備えるV型エンジンであり、各バンク123にシリンダが配置されている。
【0019】
プロペラ112は、複数枚の羽を有する回転体であり、上記プロペラ軸136の回転軸線Apを中心に回転可能に設けられている。プロペラ112は、船外機100における比較的下方の位置に配置されている。プロペラ112は、エンジンアセンブリ120において発生した動力に基づき回転することによって推力を発生する。
【0020】
(懸架装置150の構成)
懸架装置150は、船外機本体110を船体200に懸架する装置である。懸架装置150は、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、スイベルブラケット156とを含む。
【0021】
左右一対のクランプブラケット152は、船体200の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体200のトランサム210に固定されている。各クランプブラケット152には、左右方向に延伸する貫通孔が形成されている。
【0022】
チルト軸160は、棒状の部材である。チルト軸160は、クランプブラケット152の貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160は、水平方向に沿って延びている。船外機100は、チルト軸160を中心にチルト動作可能に構成されている(図2の白抜き矢印参照)。具体的には、プロペラ112が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態 図1および図2参照)からプロペラ112が水面より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲まで、船外機本体110のチルト軸160まわりの角度を変更することができる。
【0023】
スイベルブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸160まわりに回転可能に支持されている。
【0024】
(燃料供給機構300等の詳細構成)
図3は、燃料供給機構300等の構成を概略的に示す部分的断面図である。図3では、燃料供給機構300の一部は側面構成が示されている。図3に示すように、燃料供給機構300は、吸引ポンプ310と、ベーパーセパレータタンク320と、供給ポンプ330と、プレッシャレギュレータ340とを備えている。
【0025】
吸引ポンプ310は、上下方向に延びる断熱用ケース内に駆動用モータ(図示しない)を内蔵し、燃料タンク260に貯留された液体燃料Fを吸引するポンプ(例えば低圧ポンプ)である。本実施形態では、吸引ポンプ310は、ベーパーセパレータタンク320の前側に位置している。また、ベーパーセパレータタンク320は、吸引ポンプ310に固定されている。吸引ポンプ310の下端部に位置する吸引口が、上流側配管230の一端部に接続されている。
【0026】
図2に示すように、上流側配管230の他端部には、燃料ジョイント231が設けられている。この燃料ジョイント231は、燃料タンク260から延びる連結用配管233の先端部に接続される。なお、連結用配管233には、手動式のポンプ234が設けられている。吸引ポンプ310(燃料供給機構300)は、燃料タンク260よりも高い位置に配置されている。このため、吸引ポンプ310は、燃料タンク260に貯留された液体燃料Fを、連結用配管233および上流側配管230を介して、上方に吸い上げる吸引力が要求される。吸引ポンプ310の上端部に位置する出力口は、下流側配管312の一端部に接続されている(図3参照)。
【0027】
ベーパーセパレータタンク320は、吸引ポンプ310によって吸引された液体燃料Fを貯留し、液体燃料Fと蒸気とを分離する。具体的には、ベーパーセパレータタンク320は、収容空間322を有する。収容空間322には、開閉弁350とフロート356とが収容されている。開閉弁350は、バルブ352と回動アーム354とを有している。バルブ352の上端部は、下流側配管312の他端部に接続されており、バルブ352の下端部には、導入孔353が形成されている。このため、吸引ポンプ310によって吸引された液体燃料Fは、下流側配管312とバルブ352とを介してベーパーセパレータタンク320の収容空間322に供給可能とされている。
【0028】
回動アーム354は、バルブ352の下方に配置されている。回動アーム354の前端部は、回動軸Lを中心に回動可能に支持されている。回動アーム354の回動軸Lは、バルブ352の導入孔353よりも前側に位置しており、チルト軸160に沿って平行に延びている。なお、回動アーム354の回動軸Lは、前後方向において、チルト軸160とフロート356との間に配置されている(図2および図3参照)。回動アーム354の後端部はフロート356を支持している。このような構成により、回動アーム354は、フロート356の上下動に応じて、導入孔353を閉塞する閉塞位置(図3の実線参照)と、導入孔353を開放する開放位置(図3の二点鎖線参照)とに変位することができる。
【0029】
収容空間322に貯留された液体燃料Fの量が十分である場合、液体燃料Fによる浮力によってフロート356が上昇し、回動アーム354が閉塞位置になる。一方、収容空間322に貯留された液体燃料Fの量が減少した場合、フロート356が下降し、回動アーム354が開放位置になる。このように、ベーパーセパレータタンク320は、フロート式の開閉弁を有する構成とされている。また、燃料供給機構300において、船外機100がチルトダウン状態からチルトアップ姿勢になる際に、ベーパーセパレータタンク320内の開閉弁(回動アーム354)が開放位置から閉塞位置に変位することを抑制することができる。
【0030】
供給ポンプ330は、ベーパーセパレータタンク320に貯留された液体燃料Fをエンジン本体122(インジェクタ)に供給(噴射)するポンプ(例えば高圧ポンプ)である。具体的には、供給ポンプ330の吸込部332が、ベーパーセパレータタンク320の収容空間322に配置されており、供給ポンプ330の排出部が、排出用配管342の一端部に接続されている。収容空間322に貯留された液体燃料Fが、供給ポンプ330の吸込部に吸い込まれて排出用配管342に排出される。
【0031】
プレッシャレギュレータ340は、供給ポンプ330に対して下流側に配置されており、供給ポンプ330からの噴射圧力を調整する。
【0032】
水分離フィルタ235は、上流側配管230に設けられている。水分離フィルタ235は、上流側配管230を流れる液体燃料Fから異物を除去する。
【0033】
(燃料供給機構300等の配置)
図4は、エンジンアセンブリ120の配置構成を模式的に示す上面図である。図4に示すように、船外機100は、一対の燃料供給機構300を備えている。要するに、船体200に配置された燃料タンク260に貯留された液体燃料Fが、一対の燃料供給機構300を経由してエンジン本体122に供給される。このため、燃料タンク260からの液体燃料Fの吸引負担が一対の吸引ポンプ310に分散され、さらに、液体燃料Fにおける蒸気の発生量が2つのベーパーセパレータタンク320に分散される。これにより、例えば燃料供給機構を1つだけ備える構成に比べて、1つの燃料供給機構300に要求される液体燃料Fの吸引能力が低い分だけ、吸引ポンプ310でのベーパーロックに起因するエンジン本体122への燃料供給不足の発生を抑制することができる。
【0034】
上下方向視で、一対の燃料供給機構300は、エンジン本体122のクランクケース125に対して左右対称の位置に配置されている。このため、例えば一対の燃料供給機構300が左右非対称に配置された構成に比べて、船外機100の左右レイアウトの共通化を図ることができる。具体的には、クランクケース125には、一対のシリンダブロックおよびクランクシャフトが収容されている。一対のバンク123は、クランクケース125から後方に突出するように配置されている。左側の燃料供給機構300は、排出用配管342(図4では図示しない)を介して、左側のバンク123に液体燃料Fを供給する。右側の燃料供給機構300は、排出用配管342(図4では図示しない)を介して、右側のバンクに液体燃料Fを供給する。
【0035】
クランクケース125の前側には、ミキシングボディ129が配置されている。ミキシングボディ129から導出された一対のインテークマニホールド127が一対のバンク123のそれぞれに連結されている。具体的には、左側のインテークマニホールド127が、ミキシングボディ129からクランクケース125の左側を通って、左側のバンク123に連結されている。右側のインテークマニホールド127が、ミキシングボディ129からクランクケース125の右側を通って、右側のバンク123に連結されている。これにより、ミキシングボディ129で吸い込まれた空気が、一対のインテークマニホールド127を介して、一対のバンク123のそれぞれに分配される。上下方向視で、各燃料供給機構300は、クランクケース125とインテークマニホールド127との間に配置されている。
【0036】
一対の燃料供給機構300は、上下方向において同一の高さに配置されている、このため、一対の燃料供給機構300が互いに異なる高さの位置に配置された構成に比べて、一対の燃料供給機構300における液体燃料Fの吸引能力のバラツキを抑制することができる。また、一対の燃料供給機構300がそれぞれ有するベーパーセパレータタンク320の収容可能容量(収容空間322の容積)は、互いに同じである。
【0037】
(エンジンアセンブリ120の配管構成)
図5は、エンジンアセンブリ120の配管構成を示す模式図である。図5に示すように、上流側配管230は、主管236と一対の分岐管237とを有する。主管236の一端部は、燃料ジョイント231に接続されている。一対の分岐管237は、主管236の他端部から分岐している。一対の分岐管237の下流側端部は、それぞれ、一対の燃料供給機構300が有する吸引ポンプ310に接続されている。これにより、例えば、一対の燃料供給機構300が互いに独立の配管を介して燃料タンク260に接続される構成に比べて、配管構成を簡略化することができる。
【0038】
一対の分岐管237のそれぞれには、水分離フィルタ235が設けられている。これにより、例えば主管236に1つの水分離フィルタ235が設けられた構成に比べて、1つの水分離フィルタ235における異物除去の負担を軽減することができる。また、一対の分岐管237の高低差(一方の分岐管237における高低差と他方の分岐管237における高低差)は、互いに同じである。これにより、例えば一対の分岐管237の高低差が互いに異なる構成に比べて、一対の分岐管237の高低差に起因して一対の燃料供給機構300における液体燃料Fの吸引性能がばらつくことを抑制することができる。なお、一対の分岐管237の長さは同じである。但し、エンジンアセンブリ120のレイアウトに応じて、一対の分岐管237の長さが互いに異なる構成としてもよい。
【0039】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0040】
上記実施形態の船舶10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、エンジン本体122は、一対のバンク123を有するV型エンジンであったが、これに限らず、1つのバンクを有するエンジンでもよいし、3つ以上のバンクを有するエンジン(例えばW型エンジン)でもよい。
【0041】
上記実施形態では、吸引ポンプ310がベーパーセパレータタンク320の外部に配置された構成であったが、吸引ポンプ310がベーパーセパレータタンク320の収容空間322に収容された構成でもよい。また、上記実施形態では、吸引ポンプ310とベーパーセパレータタンク320とが一体形成された構成であったが、これに限らず、吸引ポンプ310とベーパーセパレータタンク320とが別体とされ、互いに離間して配置された構成でもよい。
【0042】
上記実施形態において、一対の燃料供給機構300は、例えばミキシングボディ129の前側に配置された構成でもよい(図4の点線参照)。また、一対の燃料供給機構300が、いずれも、エンジン本体122に対して左右方向の一方側(例えば右側または左側)に配置された構成でもよい。船外機100は、3つ以上の燃料供給機構300を備える構成でもよい。上記実施形態において、一対の燃料供給機構300が左右非対称に配置された構成や一対の燃料供給機構300が互いに異なる高さの位置に配置された構成でもよい。また、一対の燃料供給機構300がそれぞれ有するベーパーセパレータタンク320の収容可能容量(収容空間322の容積)は、互いに異なってもよい。
【0043】
上記実施形態において、回動アーム354の回動軸Lがフロート356の後ろ側に位置する構成でもよい。ベーパーセパレータタンク320は、フロート式とは異なる開閉弁(例えば制御式の開閉弁)を備える構成でもよい。
【0044】
図6は、変形例におけるエンジンアセンブリ120の配管構成を示す模式図である。図6では、主管236に1つの水分離フィルタ235が設けられており、一対の分岐管237には、水分離フィルタ235が設けられていない。これにより、水分離フィルタ235の数が少ない分だけ部品点数を低減することができるとともに、配管構成を簡略化することができる。なお、上記実施形態および変形例において、水分離フィルタ235を備えない構成でもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:船舶 100:船外機 110:船外機本体 112:プロペラ 114:カウル 116:ケーシング 120:エンジンアセンブリ 122:エンジン本体 123:バンク 125:クランクケース 127:インテークマニホールド 129:ミキシングボディ 136:プロペラ軸 150:懸架装置 152:クランプブラケット 156:スイベルブラケット 160:チルト軸 200:船体 202:船体本体部 204:居住空間 206:後端上方空間 210:トランサム 220:仕切壁 230:上流側配管 231:燃料ジョイント 233:連結用配管 234:ポンプ 235:水分離フィルタ 236:主管 237:分岐管 240:操縦席 250:操縦装置 252:ステアリングホイール 254:シフト・スロットルレバー 256:モニタ 258:入力装置 260:燃料タンク 300:燃料供給機構 310:吸引ポンプ 312:下流側配管 320:ベーパーセパレータタンク 322:収容空間 330:供給ポンプ 332:吸込部 340:プレッシャレギュレータ 342:排出用配管 350:開閉弁 352:バルブ 353:導入孔 354:回動アーム 356:フロート Ap:回転軸線 F:液体燃料 L:回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6