(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066558
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ピックアップ装置、ピックアップ装置の制御方法およびピックアップ装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H01L21/68 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175961
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 右一
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA04
5F131BA52
5F131BA53
5F131CA32
5F131DA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB62
5F131EA07
5F131EA14
5F131EB01
5F131EC35
5F131EC74
5F131KA40
(57)【要約】
【課題】チップ部品がダイシングテープから剥離される際に、より良い歩留りでチップ部品をピックアップされるピックアップ装置等を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置は、ダイシングテープに貼付されたチップ部品をピックアップする装置であって、ダイシングテープの下面を介してチップ部品を突き上げる突き上げピンと、突き上げピン駆動手段と、突き上げピン駆動手段を制御する駆動制御手段と、を有する。駆動制御手段は、突き上げピンの位置と駆動トルクとをモニタし第1のトルクをもって、突き上げピンの先端がチップ部品上面方向の第1の位置まで移動するように、突き上げ駆動手段を制御し、その間の突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、チップ部品のダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行い、第1の判定で剥離が無いと判定した際には、トルクを第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置であって、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、
前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、
前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、
を有し、
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタし、
前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクを第1のトルクに制御し、
前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行い、
前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、
前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する、
ことを特徴とするピックアップ装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンが前記第1の位置で一時停止するように前記第2のトルクを設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンが前記第1の位置で減速するように前記第2のトルクを設定し、
前記第2のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記第1の位置から前記第1の位置より上方の第2の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御し、
前記突き上げピンの先端が前記第1の位置から前記第2の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの前記剥離の有無を判定する第2の判定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、
前記第2の判定で前記剥離が無いと判定された際に、
前記突き上げピンの移動が停止するように、前記突き上げピン駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載のピックアップ装置。
【請求項5】
前記チップ部品の上面と対向する位置に設けられ、前記チップ部品を吸着するコレットと、
前記コレットを少なくとも前記チップ部品の上面の法線の方向に移動させるコレット駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のピックアップ装置。
【請求項6】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御方法であって、
前記ピックアップ装置は、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、
前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、
前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、
を有し、
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタし、
第1のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御し、
前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行い、
前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、
前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する、
ことを特徴とするピックアップ装置の制御方法。
【請求項7】
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンが前記第1の位置で一時停止するように前記第2のトルクを設定する、
ことを特徴とする請求項6に記載のピックアップ装置の制御方法。
【請求項8】
前記駆動制御手段は、
前記突き上げピンが前記第1の位置で減速するように前記第2のトルクを設定し、
前記第2のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記第1の位置から前記第1の位置より上方の第2の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御し、
前記突き上げピンの先端が前記第1の位置から前記第2の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの前記剥離の有無を判定する第2の判定を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載のピックアップ装置の制御方法。
【請求項9】
前記駆動制御手段は、
前記第2の判定で前記剥離が無いと判定された際に、
前記突き上げピンの移動が停止するように、前記突き上げピン駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載のピックアップ装置の制御方法。
【請求項10】
ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御プログラムであって、
前記ピックアップ装置は、
前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、
前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、
前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、
を有し、
前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタする処理と、
第1のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御する処理と、
前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行う処理と、
前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、
前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する処理と、
を前記ピックアップ装置に実行させることを特徴とするピックアップ装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等のチップ部品の製造では、一般的に、1枚のウェハに複数のチップ部品が形成される。そして、ダイシング等の分割手法を用いて、ウェハが個々のチップ部品に分割される。一般的なダイシングでは、ダイシングテープが用いられる。ダイシングテープは片面に粘着性を有するフィルムである。ダイシングテープは、ダイシングシート、ウェハシート、粘着シートなどとも呼ばれる。
【0003】
ダイシングを行う際に、まずウェハの裏面がダイシングテープに貼付される。次にダイシングによってウェハが個々のチップ部品に分割される。ダイシングが終わると、次に、ダイシングテープを引き延ばす加工であるエキスパンドが施され、チップ部品とチップ部品の間に隙間が形成される。次に、紫外線照射等によって、ダイシングテープの粘着性が低下される。次にコレットと呼ばれる吸着手段を備えたピックアップ装置によって、チップ部品の表面が吸着され、チップ部品がピックアップされる。この際、一般的な方法では、突き上げピンによって、ダイシングテープの裏面が突き上げられる。この突き上げによって、チップ部品のダイシングテープからの剥離が促進される。
【0004】
上記のピックアップ装置では、チップ部品の中央を1本の突き上げピンで突き上げるのが最も簡単な構成である。この構成で突き上げを行うと、チップ部品の端部から剥離が始まる。この際、突き上げピンの先端部が突き当たっている場所を支点とし、チップ部品の端部を作用点とし、作用点にダイシングテープの粘着力(剥離力)が作用する曲げモーメントが発生する。この際、ダイシングテープの粘着力が許容範囲以下であれば、曲げモーメントが小さく、チップ部品がダメージを受けることがない。ところが、チップ部品とダイシングテープの粘着力にはバラツキがあり、時として、粘着力の大きいものが存在する。この場合、突き上げによるダイシングテープの剥離が開始されない。そして、そのまま突き上げを継続すると、曲げモーメントが大きくなり、チップ部品がダメージを受ける恐れがある。
【0005】
そこで、粘着力の大きい場所があった際に、チップ部品に過大な曲げモーメントが加わることを防止する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、突き上げ時の荷重に基づいて、チップ部品に過大な曲げモーメントが加わることを防止するダイボンディング装置の技術が開示されている。ダイボンディング装置は、粘着シートに貼着された半導体チップをピックアップする。このダイボンディング装置は、突き上げピンと、荷重測定手段と、移動量測定手段と、制御手段とを備える。この際、粘着シートを介して、突き上げピンが半導体チップを突き上げる。また、荷重測定手段が、半導体チップに作用する突き上げ荷重を測定する。また、移動量測定手段が、突上げピンの移動量を測定する。そして、以下の条件が満たされたときに、制御手段が、半導体チップが粘着シートから剥離されていると判定する。その条件は、突上げ荷重の測定値bが許容値a以下で、且つ、移動量の測定値cが基準値h以上なことである。一方、突上げピンの移動量がその基準値hに達するまでの間で、突上げ荷重の測定値bが許容値aを越えたときには、制御手段が突き上げ動作を停止させる。すなわち、当該チップのピックアップが一旦中止される。以上のような動作によって、チップ部品に過大な曲げモーメントが加わることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のピックアップ装置では、移動量(突き上げ量)の測定値が基準値に達するまでに、チップ部品のダイシングテープからの剥離が検出されない場合に、突き上げによるダイシングテープの剥離が中止される。しかしながら、突き上げ直後には剥離が起きなくても、時間の経過に伴って剥離が可能になる場合がある。特許文献1のダイボンディング装置では、このような場合もピックアップが中止)されてしまうので、ピックアップの中止の頻度が過剰になる恐れがあった。すなわち、必要以上にピックアップの歩留りを低下させてしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、チップ部品がダイシングテープから剥離される際に、より良い歩留りでチップ部品がピックアップされるピックアップ装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のピックアップ装置は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置であって、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、を有し、前記駆動制御手段は、前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタし、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクを第1のトルクに制御し、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行い、前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。
【0010】
また、本発明のピックアップ装置の制御方法は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御方法であって、前記ピックアップ装置は、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、を有し、前記駆動制御手段は、前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタし、第1のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御し、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行い、前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。
【0011】
また、本発明のピックアップ装置の制御プログラムは、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップするためのピックアップ装置の制御プログラムであって、前記ピックアップ装置は、前記ダイシングテープの下面を介して前記チップ部品を突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを駆動させる突き上げピン駆動手段と、前記突き上げピン駆動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、を有し、前記突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタする処理と、第1のトルクをもって、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記チップ部品の上面方向の第1の位置まで移動するように、前記突き上げピン駆動手段を制御する処理と、前記突き上げピンの先端が前記ダイシングテープの下面に当接する位置から前記第1の位置まで移動する間の前記突き上げピンの移動速度の変化に基づいて、前記チップ部品の前記ダイシングテープからの剥離の有無を判定する第1の判定を行う処理と、前記第1の判定で前記剥離が無いと判定した際には、前記第1の位置において前記トルクを前記第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する処理と、を前記駆動制御手段に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は、チップ部品がダイシングテープから剥離される際に、より良い歩留りでチップ部品がピックアップされるピックアップ装置等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。
【
図2】第1の実施形態のピックアップ装置の具体的な構成例を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態のピックアップ装置の第1の動作状態を示す側面図である。
【
図4】第1の実施形態のピックアップ装置の第2の動作状態を示す側面図である。
【
図5】第1の実施形態のピックアップ装置の動作の具体例1を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第1の具体例を説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第2の具体例を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第3の具体例を説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態のピックアップ装置の第3の動作状態を示す側面図である。
【
図10】第1の実施形態のピックアップ装置の第4の動作状態を示す側面図である。
【
図11】第1の実施形態のピックアップ装置の第2の動作を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第4の具体例を説明するための図である。
【
図13】第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第5の具体例を説明するための図である。
【
図14】第2の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。
【
図15】第2の実施形態のピックアップ装置の第1の動作状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のピックアップ装置を示す側面図である。ピックアップ装置100は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をピックアップするための装置である。ピックアップ装置100は、突き上げピン10と、突き上げピン駆動手段20と、駆動制御手段30と、を有する。
【0016】
突き上げピン10は、ダイシングテープ200の下面を介してチップ部品300を突き上げる。ここで、チップ部品300の上面の法線を法線nとする。またチップ部品300から見て、ダイシングテープ200のある方向を下方とし、その逆方向を上方とする。
【0017】
チップ部品300を搭載したダイシングテープ200は、吸着ブロック40に吸着固定される。吸着ブロック40において、ピックアップの対象となるチップ部品300を含む領域には開口部が設けられ、開口部を介して、突き上げピン10がダイシングテープ200の下面を突き上げる。
【0018】
突き上げピン駆動手段20は、突き上げピン10を上下方向に駆動させる。
【0019】
駆動制御手段30は、突き上げピン駆動手段の駆動を制御する。
【0020】
駆動制御手段30は、突き上げピンの位置と前記突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとをモニタする。そして、駆動制御手段30が、突き上げピン駆動手段20の駆動を制御する。この制御によって、ダイシングテープ200の下面に当接する位置から、チップ部品300の上面方向の第1の位置Pまで、突き上げピン10の先端が移動する。この際、突き上げが第1のトルクをもって行われるように、駆動制御手段30が、突き上げピン駆動手段20のトルクを制御する。
【0021】
また、駆動制御手段30が、第1の判定を行う。第1の判定は、上記の移動の期間における突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて、チップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無を判定するものである。突き上げピン10が一定のトルクで駆動されているため、剥離が始まると、突き上げピン10の突き上げ速度が上昇する。突き上げピン10には、ダイシングテープ200の張力が下方向に働いている。剥離が始まると、この反発力が減少する。その結果、突き上げピン10の突き上げ速度が上昇する。このような突き上げピン10の移動速度の上昇が観測されれば、剥離が開始されたと駆動制御手段30が判定する。一方、移動速度の上昇が観測されなければ、駆動制御手段30が、剥離は開始されていないと判定する。
【0022】
そして、第1の判定で剥離が無いと判定した際には、第1の位置Pにおいて、駆動制御手段30が、トルクが第1のトルクより小さな第2のトルクに制御される。
【0023】
以上の動作では、突き上げピン10が最初に第1の位置Pに移動した段階で、剥離が開始されていれば、第1のトルクで突き上げが継続される。そして、ピックアップが実行できる状態になる。一方、突き上げピン10が第1の位置Pに移動した段階で、剥離が開始されていなければ、第1のトルクより小さい第2のトルクに、突き上げピン駆動手段20のトルクが調整される。トルクが第2のトルクに調整されることで、突き上げピン10の突き上げ速度が減速される。
【0024】
剥離が始まっていない時に、第1のトルクで突き上げを継続すると、突き上げの進行とともにチップ部品300に加わる曲げモーメントが増大する。これにより、チップが破損する恐れがある。一方、上記の動作では、トルクが第2のトルクに調整されることによって、突き上げ速度が減速される。この減速により、チップ部品300に働く曲げモーメントの増加が抑制される。こうして、曲げモーメントの増加が抑制された期間において、剥離の開始が期待される。この期間に剥離が開始されるものがあれば、第1の位置Pで突き上げを中止する方式に比べて、ピックアップ可能なチップ部品300の数が増加する。すなわち、より良い歩留りで、チップ部品300がピックアップされる。
【0025】
次にピックアップ装置100の具体的な構成例について説明する。
図2は、第1の実施形態のピックアップ装置100の具体的な構成例を示す側面図である。
【0026】
突き上げピン駆動手段20は、例えば、モータ21を備えている。そして。例えば、図示しないギアシステムによって、モータ21の動きが、突き上げピン10に伝えられる。あるいは、モータ21としてボイスコイルモータが用いられ、ボイスコイルモータの往復運動によって、突き上げピン10が、この往復運動に連動されても良い。ここで、ボイスコイルモータとは、コイルが磁界中を往復運動するモータである。
【0027】
駆動制御手段30は、位置制御部31と、トルク制御部32と、制御部33を備えている。また、突き上げピン10の側面に対向して、エンコーダ34が設けられている。この構成により、駆動制御手段30は、突き上げピン10の位置制御およびトルク制御を行うことができる。
【0028】
上記の構成では、エンコーダ34が突き上げピンの位置を検出する。そして位置制御部31および制御部33が、この位置をモニタする。位置制御の場合、突き上げピン10の位置が設定した目標値となるように、位置制御部31が突き上げピン10の位置制御を行う。この際、位置の目標値からのずれがフィードバックされて、トルク制御部32がトルクを調整する。例えば、モータ21がサーボモータであれば、エンコーダ34によって読み取られた現在位置が位置制御部31にフィードバックされ、位置制御が実行される。
【0029】
トルク制御部32は、モータ21のトルクを制御することによって、突き上げピン10の突き上げトルクを制御する。一般に、モータ21のトルクは電流に比例する。このため、トルク制御部32が、モータ21を駆動する電流を制御することで、突き上げピン10の突き上げトルクが制御される。
【0030】
制御部33は、エンコーダ34によって検出された突き上げピン10の位置をモニタする。また、モータ21の駆動電流に基づいて、突き上げピン10の駆動トルクを制御部33がモニタする。さらに、突き上げピン10の位置の時間変化に基づいて求まる突き上げピン10の移動速度を、制御部33がモニタする。
【0031】
次にピックアップ装置100の動作例について説明する。突き上げに当たっては、まず、トルク制御部32が、モータ21のトルクを第1のトルクに制御し、突き上げピン10の先端を、予め定めた第1の位置Pまで移動させる。突き上げ前のダイシングテープ200の下面の位置から、所定距離だけ上方の位置が、第1の位置Pである。剥離が無くてもチップ部品300に小さな曲げモーメントしか加わらない位置に、第1の位置Pが設定される。ここで、小さいとは、チップ部品300が破損する曲げモーメントに対して大きなマージンがあるという意味である。なお、チップ部品300がどの程度の曲げモーメントで破損するかは、チップ部品300の大きさや厚さに依存する。このため、第1の位置Pも、チップ部品300の種類に応じて決定される。
【0032】
図3は、第1の実施形態のピックアップ装置の第1の動作状態を示す側面図である。突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで突き上げられている。そして、チップ部品300の端部で、剥離が発生している。剥離が始まると、突き上げピン10を押し下げるダイシングテープ200の張力が減少する。このため、突き上げピン10の突き上げ速度が上昇する。この時、制御部33が、第1の閾値以上の突き上げ速度の上昇を検出する。この検出をもって、制御部33が、剥離が開始されたと判定する。突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで移動する間に、剥離が開始されたと判定された場合は、トルクを第1のトルクに保ったまま、突き上げが継続される。この場合は、正常なピックアップが可能になる。
【0033】
次に、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達するまでに、剥離が発生しない例について説明する。
図4は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第2の動作状態を示す側面図である。突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで突き上げられても、剥離が開始されなかった例が、
図4に示されている。この場合、移動の間に突き上げ速度の上昇が発生しない。突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで移動する間に突き上げ速度の上昇が起こらなかった場合、制御部33が、剥離が無いと判定する。そして、突き上げピン10を駆動するトルクを、トルク制御部32が、第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。以下に、第2のトルクの設定の2つの具体例を説明する。
(具体例1)
まず、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに達するまで、制御部33がトルク制御行い、第1のトルクで突き上げピン10が突き上げを行う。突き上げピン10の先端が第1の位置Pに達したら、制御部33が制御を位置制御に切り替える。そして、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに保たれるように、トルクが制御される。つまり、突き上げのトルクと、ダイシングテープ200の張力による下方向の力が釣り合うように、トルクが制御される。例えば、突き上げピン10の先端が第1の位置Pより上方に移動すればトルクを減少させる。一方、突き上げピン10の先端が第1の位置Pより下方に移動すればトルクを減少させる。このようなフィードバックの結果、突き上げピン10の先端を第1の位置Pに一時停止させる第2のトルクが求まる。
【0034】
第2のトルクが求まったら、制御部33が制御を位置制御からトルク制御に切り替える。そして、トルクが第2のトルクに制御される。所定の第1の期間だけ、この状態が維持される。第1の期間内に剥離が始まれば、突き上げピン10の先端が第1の位置Pより上方に移動する。この移動を検出することで、制御部33が剥離を検出する。そして、剥離が検出された際は、例えば、トルク制御部32がトルクを第1のトルクに制御して、突き上げが再開される。
【0035】
一方、第1の期間内に剥離が起こらなければ、第1の位置Pに突き上げピン10の先端が停止している。第1の期間内で、突き上げピン10の先端が第1の位置Pから動かなければ、制御部33が、剥離が無いと判定する。そして、制御部33が、突き上げ対象のチップ部品300を剥離不可と判定し、当該チップ部品300の突き上げを中止する。そして、ピックアップ装置100が、次のチップ部品300の突き上げ動作を開始する。
【0036】
図5は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第1の動作を示すフローチャートである。ピックアップ装置100の第1の動作について、
図5を参照して説明する。まず、駆動トルクが第1のトルクに制御され、突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで突き上げられる(S101)。この突き上げの期間における、突き上げ速度の上昇の有無を制御部33が検出する(S102)。ここで、突き上げ速度の上昇が検出されたら(S102_Yes)、剥離が開始されたと制御部33が判定する(S103)。そして、第1のトルクによる突き上げが、予め定めたピックアップ位置まで継続される(S104)。
【0037】
一方、第1の位置Pまでに突き上げ速度の上昇が検出されなかったら(S102_No)、第1の位置Pでトルクが、第2のトルクに制御される(S105)。第2のトルクは、第1のトルクより小さい。この状態を第1の期間維持する。そして第1の期間内に突き上げ速度の上昇が検出されたら(S106_Yes)、剥離が開始されたと制御部33が判定する(S103)。そして、予め定めたピックアップ位置まで突き上げが継続される(S104)。この時のトルクは、第2のトルクでもよく、第1のトルクでも良い。
【0038】
一方、第1の期間内に突き上げ速度の上昇が検出されなかったら(S106_No)、制御部33が剥離不可と判定する(S107)。そして、当該チップ部品300の突き上げが中止される。
【0039】
次に動作の具体例について説明する。
図6は、第1の実施形態のピックアップ装置100の動作タイミングの第1の具体例を説明するための図である。突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達するまでに、剥離が始まる時の動作を、
図6が示している。まず、時刻t0でトルクが第1のトルクに制御される。次に、時刻t1で、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に接触する接触位置に到達する。次に突き上げピン10が上方に移動して、突き上げが行われる。この例では、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達する前の時刻t2で、剥離が始まる。突き上げピン10が一定の第1のトルクで駆動されているため、剥離が始まると、ダイシングテープ200の張力が減少し、突き上げピン10の突き上げの速度が上昇する。制御部33は、この速度の上昇に基づいて剥離の開始を検出する。そして突き上げピン10の先端が第1の位置Pを通過する時刻t3の後も、トルクが第1のトルクに維持される。そして、突き上げピン10の先端がピックアップ位置に到達したら、突き上げピン10の駆動トルクが0に制御され、突き上げピン10が停止する。ここで、ピックアップ位置とは、後述するコレットなどで、チップ部品300をダイシングテープ200からピックアップする位置である。なお、上記ではトルクが0に制御されるとしたが、ピックアップ位置で制御が位置制御に切り替えられても良い。この場合、例えば、突き上げピン10の先端がピックアップ位置に保持される。
【0040】
次に、第1の位置Pでは剥離が開始されず、かつ、第1の位置Pで待機している間に、剥離が始まる例について説明する。
図7は、第1の実施形態のピックアップ装置100の動作タイミングの第2の具体例を説明するための図である。ここでは、第1の期間T1が上記の待機の期間である。
【0041】
まず、時刻t0でトルクが第1のトルクに制御される。次に、時刻t1で、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に接触する接触位置に到達する。次に突き上げピン10が上方に移動して、突き上げが行われる。この例では、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達する時刻t3までの期間に、剥離が発生していない。この期間に突き上げピン10の突き上げの速度の上昇が無いことをもって、制御部33が、剥離がないと判定する。
【0042】
そして、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達した時刻t5で、第1のトルクより小さい第2のトルクにトルクが調整される。ここでは、突き上げピン10が第1の位置Pで一時停止するように、第2のトルクが設定される。また、第1の期間T1が経過する時刻t6まで、トルクが第2のトルクに維持される。
【0043】
図7の例では、第1の期間T1の間に剥離が発生する。ここで、第1の期間T1において、突き上げピン10を駆動するトルクが一定の第2のトルクに維持されている。このため、剥離が始まってダイシングテープ200の張力が減少すると、突き上げピン10の先端が上方に移動する。この速度変化に基づいて、制御部33が剥離開始と判定する。制御部33が剥離を検出すると、トルクが第2のトルクに維持され、突き上げピン10の先端がピックアップ位置まで上昇する。なお、第1の期間T1で剥離が開始された際は、時刻t6において、トルクが第2のトルクより大きな値に変更されても良い。この値は、例えば第1のトルクである。このような制御によって、剥離が加速される。
【0044】
そして、突き上げピン10の先端がピックアップ位置に到達する時刻t7で、トルクが0に制御され、突き上げピン10が停止する。なお、ピックアップ位置で制御が位置制御に切り替えられても良い。この場合、例えば、突き上げピン10の先端がピックアップ位置に保持される。
【0045】
次に、第1の期間T1において、剥離が発生しない例について説明する。
図8は、第1の実施形態のピックアップ装置100の動作タイミングの第3の具体例を説明するための図である。
【0046】
まず、時刻t0でトルクが第1のトルクに制御される。次に、時刻t1で、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に接触する接触位置に到達する。次に突き上げピン10が上方に移動して、突き上げが行われる。この例では、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達する時刻t8までの期間に、剥離が発生していない。この期間に突き上げピン10の突き上げの速度の上昇が無いことをもって、制御部33が、剥離なしと判定する。
【0047】
そして、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達した時刻t8で、第1のトルクより小さい第2のトルクにトルクが調整される。ここでは、突き上げピン10が第1の位置Pで一時停止するように、第2のトルクが設定される。また、第1の期間T1が経過する時刻t9まで、トルクが第2のトルクに維持される。
【0048】
図8の例では、第1の期間T1の間に剥離が発生しない。このため、第2のトルクとダイシングテープ200の張力が釣り合い、突き上げピン10の停止が継続する。第1の期間T1において、突き上げピン10を駆動するトルクが一定の第2のトルクに維持されている。このように、突き上げピン10の速度の上昇がないことをもって、制御部33が、剥離が開始されていないと判定する。第1の期間T1だけ待機しても、剥離が開始されない時には、制御部33が、対象とするチップ部品300を剥離不可と判定する。そして、第1の期間が経過した時刻t9で、トルクが0に調整される。すると、ダイシングテープ200の張力によって、突き上げピン10が押し下げられ、突き上げピン10の先端が接触位置まで戻る。なお、時刻t9で、制御が位置制御に切り替えられても良い。この場合、突き上げピン10の先端が制御に従って下降する。そして、ピックアップ装置100が当該チップ部品300のピックアップを中止し、次のチップ部品300のピックアップ動作を開始する。
【0049】
以上の動作では、最初に第1の位置Pまで突き上げが行われた期間に剥離が開始されていない時に、突き上げがすぐに中止されない。そして、突き上げを停止もしくは減速している間に剥離が始まるチップ部品300のピックアップが可能になる。このため、第1の位置Pまでの移動期間で剥離が検出されなかったチップ部品300について、ピックアップできる確率が上昇する。こうして、第1の位置P(特許文献1では移動量の基準値hの位置)までの突き上げで剥離が検出されなかった際に、すぐ剥離を中止する特許文献1の方法に比べて、より良い歩留りでチップ部品がピックアップされる。
【0050】
(具体例2)
次に、ピックアップ装置100の動作の具体例2について説明する。この具体例2では、第1の位置Pにおける待機期間に剥離が発生しなかった例について説明する。第1の位置Pにおいて、第2のトルクに調整される点は、具体例1と同様である。ここで、第2のトルクは、トルクが第1のトルクより小さい。しかし、具体例2では、第2のトルクが具体例1より大きな値に設定される。これにより、第1の位置Pに到達した後も、突き上げピン10の先端が、それ以前より減速した状態で上昇する。そして、突き上げピン10の先端が、第1の位置Pより上方の第2の位置Qに到達する。この期間に、制御部33が第2の判定を行う。第2の判定は、上記の期間における剥離の有無の判定である。第1の位置Pより上方であるが、剥離が無くてもチップ部品300の破損の恐れがない位置に、第2の位置Qが設定される。すなわち、危険な位置からのマージンが第1の位置Pよりも少ない位置に、第2の位置Qが設定される。第2の位置Qは、いわば、チップ部品300の曲げモーメントに関する安全限界である。
【0051】
図9は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第3の動作状態を示す側面図である。
図9は、突き上げピン10の先端が、第1の位置Pから第2の位置Qに移動する間に、剥離が開始された例である。チップ部品300の端部で、ダイシングテープ200とチップ部品300との剥離が発生している。この場合は、突き上げが継続され、突き上げピン10の先端がピックアップ位置まで移動することで、チップ部品300のピックアップが可能になる。
【0052】
図10は、第1の実施形態のピックアップ装置の第4の動作状態を示す側面図である。
図10は、突き上げピン10の先端が第2の位置Qに到達しても、剥離が発生しなかった状態を示している。このまま、突き上げを継続するとチップ部品300が破損する恐れがある。このため、制御部33が剥離不可と判定し、ピックアップが中止される。
【0053】
次に具体例2の動作について説明する。
図11は、第1の実施形態のピックアップ装置100の第2の動作を示すフローチャートである。まず、駆動トルクが第1のトルクに制御され、突き上げピン10の先端が第1の位置Pまで突き上げられる(S201)。この突き上げの期間における、突き上げ速度の上昇の有無を制御部33が検出する(S202)。ここで、突き上げ速度の上昇が検出されたら(S202_Yes)、剥離が開始されたと制御部33が判定する(S203)。そして、第1のトルクによる突き上げが、予め定めたピックアップ位置まで継続される(S204)。
【0054】
一方、第1の位置Pまでに突き上げ速度の上昇が検出されなかったら(S202_No)、第1の位置Pで、トルクが第2のトルクに制御される(S205)。第2のトルクは、第1のトルクより小さい。ただし、具体例1の第2のトルクよりは大きい。これにより、それまでよりは減速された状態で、突き上げピン10の先端が上昇する。そして、突き上げピン10の先端が、第2の位置Qに到達するまで上昇が継続される。この間に、突き上げ速度の上昇が検出されたら(S206_Yes)、剥離が開始されたと制御部33が判定する(S203)。そして、予め定めたピックアップ位置まで突き上げが継続される(S204)。
【0055】
一方、第2の位置Qまでの上昇で、突き上げ速度の上昇が検出されなかったら(S206_No)、突き上げが停止される(S207)。そして、制御部33が剥離不可と判定する(S208)。こうして、チップ部品300の突き上げが中止される。
【0056】
次に、動作の具体例について説明する。
図12は、第1の実施形態のピックアップ装置100の動作タイミングの第4の具体例を説明するための図である。突き上げピン10の先端が第2の位置Qに到達するまでに、剥離が始まるケースの動作を、
図12が示している。まず、時刻t0でトルクが第1のトルクに制御される。次に、時刻t1で、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に接触する接触位置に到達する。次に突き上げピン10が上方に移動して、突き上げが行われる。この例では、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達する時刻t11までの期間に、剥離が発生していない。この期間に突き上げピン10の突き上げの速度の上昇が無いことをもって、制御部33が、剥離が開始されていないと判定する。
【0057】
そして、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達した時刻t11で、第1のトルクより小さい第2のトルクにトルクが調整される。ここでは、それ以前より減速した状態で突き上げピン10が上昇するように、第2のトルクが設定される。そして、
図12の例では、突き上げピン10の先端が、第2の位置Qに到達する前の時刻t12で、剥離が発生する。ここで、第1の期間T1において、突き上げピン10を駆動するトルクが一定の第2のトルクに維持されている。このため、剥離が始まってダイシングテープ200の張力が減少すると、突き上げピン10の先端の突き上げの速度が上昇する。この速度変化に基づいて、制御部33が剥離開始と判定する。制御部33が剥離を検出すると、トルクが第2のトルクに維持され、突き上げピン10の先端がピックアップ位置まで上昇する。
【0058】
次に、突き上げピン10の先端が第2の位置Qに到達するまでに、剥離が開始されないケースについて説明する。
図13は、第1の実施形態のピックアップ装置の動作タイミングの第5の具体例を説明するための図である。
【0059】
まず、時刻t0でトルクが第1のトルクに制御される。次に、時刻t1で、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に接触する接触位置に到達する。次に突き上げピン10が上方に移動して、突き上げが行われる。この例では、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達する時刻t3までの期間に、剥離が発生していない。この期間に突き上げピン10の突き上げの速度の上昇が無いことをもって、制御部33が剥離なしと判定する。
【0060】
そして、突き上げピン10の先端が第1の位置Pに到達した時刻t14で、第1のトルクより小さい第2のトルクにトルクが調整される。ここでは、突き上げピン10が、時刻t14以前より減速して上昇するように、第2のトルクが設定される。そして、突き上げピン10の先端が第2の位置Qに到達する時刻t15まで、トルクが第2のトルクに維持される。
【0061】
図13の例では、突き上げピン10の先端が第2の位置Qに到達するまでに、剥離が発生していない。時刻t15までの間に、速度の上昇に急な変化が無いことをもって、制御部33が、剥離が開始されていないと判定する。これ以上突き上げを継続するとチップ部品300が破損する恐れがあるため、制御部33がトルクを減少させ突き上げを中止する。
図13の例では、時刻t15でトルクの減少が開始され、時刻t16でトルクが0になる。すると、ダイシングテープ200の張力によって、突き上げピン10が押し下げられ、突き上げピン10の先端が接触位置まで戻る。あるいは、制御部33が制御を位置制御に切り替えて、時刻t16で、突き上げピン10が、所定の待機位置まで移動されても良い。上記のような動作によって、ピックアップ装置100が当該チップ部品300のピックアップを中止し、次のチップ部品300のピックアップ動作を開始する。
【0062】
以上のような動作とすることで、チップ部品300の破損を回避しながら、ピックアップできるチップ部品300の数を増やすことが可能になる。すなわち、
なお、上記の説明は突き上げピン10が1本の構成について行ったが、突き上げピン10が2本以上の複数であっても良い。突き上げピン10が複数の場合も、トルク制御、位置制御、剥離の判定等が同様に実行される。
【0063】
以上、本実施形態のピックアップ装置100等について説明した。
【0064】
本実施形態のピックアップ装置100は、ダイシングテープの上に貼り付けられているチップ部品を前記ダイシングテープからピックアップする。ピックアップ装置100は、突き上げピン10と、突き上げピン駆動手段20と、駆動制御手段30と、を有する。ダイシングテープ200の下面を介してチップ部品300を、突き上げピンが突き上げる。突き上げピン10を、突き上げピン駆動手段が駆動させる。突き上げピン駆動手段20の駆動を、駆動制御手段30が制御する。突き上げピン10の位置と突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとを、駆動制御手段がモニタする。そして、突き上げピン駆動手段20が突き上げピン10を駆動する。この駆動によって、ダイシングテープ200の下面に当接する位置からチップ部品300の上面方向の第1の位置まで、突き上げピン10の先端が移動する。この際、突き上げピン駆動手段が駆動するトルクを、駆動制御手段30が第1のトルクに制御する。また駆動制御手段30が、第1の判定を行う。第1の判定は、チップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無の判定である。第1の判定は、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に当接する位置から、第1の位置Pまで移動する間の、突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて行われる。そして、第1の判定で剥離が無いと判定した際には、第1の位置Pにおいて、駆動制御手段30が、トルクを第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。
【0065】
上記の第1の位置Pは、剥離が開始されなくても、チップ部品300が破損しない位置である。つまり、チップ部品300が破損する確率が高くなる点より、所定の距離だけ下方に設定される。ピックアップ装置100では、この第1の位置Pまでに剥離が開始されなかった際に、トルクが第1のトルクより小さい第2のトルクに調整される。この調整により、突き上げ速度が減速される。チップ部品300の中には、この減速している期間に剥離が開始されるものが含まれる。このため、ピックアップ装置100では、第1の位置Pで突き上げを中止する方法に比べて、より良い歩留りでチップ部品300がピックアップされる。
【0066】
また一態様によれば、ピックアップ装置100の駆動制御手段30が、突き上げピン10が第1の位置Pで一時停止するように第2のトルクを設定する。このようにすることで、チップ部品300に加わる曲げモーメントを増加させずに、剥離の開始を待つことが可能になる。
【0067】
また一態様によれば、ピックアップ装置100において、突き上げピン10が第1の位置Pで減速するように、駆動制御手段30が突き上げピン駆動手段20のトルクを制御する。この制御で、トルクが第2のトルクに設定される。これにより、第2のトルクをもって、突き上げピン10の先端が第1の位置Pから、第1の位置より上方の第2の位置Qまで移動する。そして、駆動制御手段30が第2の判定を行う。第2の判定では、上記期間における、チップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無が判定される。第2の判定は、この期間における突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて行われる。
【0068】
上記の動作では、第1の位置Pにおいて、それ以前より突き上げ速度が減速される。減速により、曲げモーメントの増加が緩やかになる。そして、第1の位置Pより上方で、かつ、チップ部品300が破損しない位置に第2の位置が設定される。こうして、第1の位置Pから第2の位置Qの間で、より積極的に剥離が促進される。このため、ピックアップの歩留りの向上が期待される。
【0069】
また一態様によれば、ピックアップ装置100において、第2の判定で剥離が無いと判定された際に、突き上げピン10の移動が停止するように、駆動制御手段30が突き上げピン駆動手段20を制御する。
【0070】
安全限界である第2の位置Qでも剥離が開始されない際に、突き上げが中止されることで、チップ部品300の破損が防止される。
【0071】
また、本実施形態のピックアップ装置100の制御方法は、ピックアップ装置100を制御する。ピックアップ装置100は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をダイシングテープ200からピックアップするための装置である。そして、ピックアップ装置100は、突き上げピン10と、突き上げピン駆動手段20と、駆動制御手段30と、を有する。ダイシングテープ200の下面を介してチップ部品300を、突き上げピンが突き上げる。突き上げピン10を、突き上げピン駆動手段が駆動させる。突き上げピン駆動手段20の駆動を、駆動制御手段30が制御する。突き上げピン10の位置と突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとを、駆動制御手段がモニタする。そして、ダイシングテープ200の下面に当接する位置からチップ部品300の上面方向の第1の位置まで、突き上げピン10の先端が移動する。この際、突き上げピン駆動手段が駆動するトルクを、駆動制御手段30が第1のトルクに制御する。また駆動制御手段30が、第1の判定を行う。第1の判定は、チップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無の判定である。第1の判定は、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に当接する位置から、第1の位置Pまで移動する間の、突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて行われる。そして、第1の判定で剥離が無いと判定した際には、第1の位置Pにおいて、駆動制御手段30が、トルクを第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。
【0072】
上記の第1の位置Pは、剥離が開始されなくても、チップ部品300が破損しない位置である。つまり、チップ部品300が破損する確率が高くなる点より、所定の距離だけ下方に設定される。ピックアップ装置100の制御方法では、この第1の位置Pまでに剥離が開始されなかった際に、トルクが第1のトルクより小さい第2のトルクに調整される。この調整により、突き上げ速度が減速される。チップ部品300の中には、この減速している期間に剥離が開始されるものが含まれる。このため、ピックアップ装置100では、第1の位置Pで突き上げを中止する方法に比べて、より良い歩留りでチップ部品300がピックアップされる。
【0073】
また、一態様によれば、ピックアップ装置100の制御方法において、ピックアップ装置100の駆動制御手段30が、突き上げピン10が第1の位置Pで一時停止するように第2のトルクを設定する。このようにすることで、チップ部品300に加わる曲げモーメントを増加させずに、剥離の開始を待つことが可能になる。
【0074】
また一態様によれば、ピックアップ装置100の制御方法において、突き上げピン10が第1の位置Pで減速するように、駆動制御手段30が突き上げピン駆動手段20のトルクを第2のトルクに設定する。これにより、第2のトルクをもって、突き上げピン10の先端が第1の位置Pから、第1の位置より上方の第2の位置Qまで移動する。そして、駆動制御手段30が第2の判定を行う。第2の判定では、上記の期間におけるチップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無が判定される。第2の判定は、この期間における突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて行われる。
【0075】
上記の動作では、第1の位置Pから、それ以前より突き上げ速度が減速して、突き上げが行われる。減速により、曲げモーメントの増加が緩やかになる。そして、第1の位置Pより上方で、かつ、チップ部品300が破損しない位置に第2の位置が設定される。こうして、第1の位置Pから第2の位置Qの間で、より積極的に剥離が促進される。このため、ピックアップの歩留りの向上が期待される。
【0076】
また一態様によれば、ピックアップ装置100の制御方法において、ピックアップ装置100で、第2の判定で剥離が無いと判定された際に、突き上げピン10の移動が停止するように、駆動制御手段30が突き上げピン駆動手段20を制御する。
【0077】
安全限界である第2の位置Qでも剥離が開始されない際に、突き上げが中止されることで、チップ部品300の破損が防止される。
【0078】
また、本実施形態のピックアップ装置100の制御プログラムは、ピックアップ装置100を制御する。ピックアップ装置100は、ダイシングテープ200の上に貼り付けられているチップ部品300をダイシングテープ200からピックアップするための装置である。そして、ピックアップ装置100は、突き上げピン10と、突き上げピン駆動手段20と、駆動制御手段30と、を有する。ダイシングテープ200の下面を介してチップ部品300を、突き上げピンが突き上げる。突き上げピン10を、突き上げピン駆動手段が駆動させる。突き上げピン駆動手段20の駆動を、駆動制御手段30が制御する。突き上げピン10の位置と突き上げピン駆動手段が駆動するトルクとを、駆動制御手段がモニタする処理を、制御プログラムがピックアップ装置100に実行させる。そして、ダイシングテープ200の下面に当接する位置からチップ部品300の上面方向の第1の位置まで、突き上げピン10の先端が移動する。この際、突き上げピン駆動手段が駆動するトルクを、駆動制御手段30が第1のトルクに制御する処理を、制御プログラムがピックアップ装置100に実行させる。また駆動制御手段30が、第1の判定を行う処理を、制御プログラムがピックアップ装置100に実行させる。第1の判定は、チップ部品300のダイシングテープ200からの剥離の有無の判定である。第1の判定は、突き上げピン10の先端がダイシングテープ200の下面に当接する位置から、第1の位置Pまで移動する間の、突き上げピン10の移動速度の変化に基づいて行われる。そして、第1の判定で剥離が無いと判定した際には、第1の位置Pにおいて、駆動制御手段30が、トルクを第1のトルクより小さな第2のトルクに制御する。この処理を、制御プログラムがピックアップ装置100に実行させる。
【0079】
上記の第1の位置Pは、剥離が開始されないまま突き上げても、チップ部品300が破損しない位置である。つまり、チップ部品300が破損する確率が高くなる点より、所定の距離だけ下方に設定される。ピックアップ装置100の制御方法では、この第1の位置Pまでに剥離が開始されなかった際に、トルクが第1のトルクより小さい第2のトルクに調整される。この調整により、突き上げ速度が減速される。チップ部品300の中には、この減速している期間に剥離が開始されるものが含まれる。このため、ピックアップ装置100では、第1の位置Pで突き上げを中止する方法に比べて、より良い歩留りでチップ部品300がピックアップされる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態のピックアップ装置100の構成に加えて、チップ部品300をピックアップするコレット90を備えたピックアップ装置101について説明する。
【0080】
図14は、第2の実施形態のピックアップ装置101を示す側面図である。ピックアップ装置101は、第1の実施形態のピックアップ装置100と同様に、突き上げピン10と、突き上げピン駆動手段20と、駆動制御手段30と、吸着ブロック40とを備えている。これに加えて、ピックアップ装置101は、コレット90と、コレット駆動手段91とを備えている。
【0081】
コレット90は、チップ部品300の上面と対向する位置に設けられる。そして、コレット90は、チップ部品300を吸着する。
【0082】
コレット駆動手段91は、コレット90を少なくとも法線nの方向に移動させる。コレット駆動手段91はコレットに付加する力を調整できるようになっている。また、図示はしていないが、コレット90の位置は、コレット位置検出手段で検出される。コレット90の下面がチップ部品300の上面を吸着している。このため、突き上げ動作においては、突き上げピン10の上下動にコレット90が連動する。通常は、チップ部品300に下方向の荷重がかからないように、コレット駆動手段91の荷重が調整されている。
【0083】
ピックアップ装置101における突き上げピン10の制御と動作は、第1の実施形態のピックアップ装置100と同様である。ただし、コレット90がチップ部品300に下方向の荷重を加えている際には、設定する第1のトルク、第2のトルクに、この荷重が加算される。
【0084】
図15は、第2の実施形態のピックアップ装置101の第1の動作状態を示す側面図である。
図15は、突き上げピン10の先端が、ピックアップ位置まで突き上げられた状態を示している。チップ部品300とダイシングテープ200との間に剥離が発生している際には、ピックアップ位置では、チップ部品300が容易にピックアップされる。ここで、容易にピックアップされる状態とは、チップ部品300をダイシングテープ200から引き離すことが容易な状態である。この状態から、コレット90が上方に移動することで、チップ部品300のピックアップが完了する。
【0085】
以上に説明したピックアップ装置101では、第1の実施形態と同様に、突き上げピン10によるチップ部品300の突き上げが行われる。このため、第1の実施形態と同様に、より良い歩留りでチップ部品がピックアップされる。
【0086】
以上、本実施形態のピックアップ装置101等について説明した。
【0087】
本実施形態のピックアップ装置101は、チップ部品300を吸着するコレット90を備える。コレット90は、チップ部品300の上面と対向する位置に設けられる。また、ピックアップ装置101が、コレット駆動手段91を備える。コレット駆動手段91は、コレット90を少なくともチップ部品300の上面の法線nの方向に移動させる。
【0088】
上記の構成では、第1の実施形態と同様に、突き上げを行ったチップ部品300をコレット90によって、