(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066559
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】グリーンカット装置、作業システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240509BHJP
E02B 7/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
E02B7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175965
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸田 泰彰
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DD05
2E172DD07
(57)【要約】
【課題】グリーンカット装置の自動走行制御を簡略的に行えるようにするとともに、適切なタイミングでグリーンカット作業を行うことで打ち継ぎ目の品質を向上させる。
【解決手段】グリーンカット装置10が、走行部12を有する装置本体11と、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段と、時刻情報入力手段によって入力された時刻情報からの経過時間に応じて、作業エリア22内における装置本体11による作業が禁止される作業禁止エリア2aの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段と、装置本体11が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段と、装置本体11の位置を推定する自己位置推定手段と、作業禁止エリア2aを除くエリア2bと作業エリア2内の装置本体11との位置関係に基づいて走行部12を駆動制御する走行制御手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートが打ち込まれた所定の作業エリア内の、前記コンクリートの表層におけるレイタンス層の除去作業を行うためのグリーンカット装置であって、
走行部を有する装置本体と、
前記コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段と、
前記時刻情報入力手段によって入力された前記時刻情報からの経過時間に応じて、前記作業エリア内における前記装置本体による作業が禁止される作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段と、
前記作業エリア内において前記装置本体が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段と、
前記作業エリア内における前記装置本体の位置を推定する自己位置推定手段と、
前記作業エリアのうち前記作業禁止エリアを除くエリアと、前記マッピング手段及び前記自己位置推定手段によって推定される前記装置本体との位置関係に基づいて、前記走行部を駆動制御する走行制御手段と、を備えることを特徴とするグリーンカット装置。
【請求項2】
前記作業エリアが含まれた地域の気象情報を入力する気象情報入力手段を更に備え、
前記エリア規定手段は、前記経過時間と、前記気象情報入力手段によって入力された前記気象情報と、に応じて、前記作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定していることを特徴とする請求項1に記載のグリーンカット装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグリーンカット装置と、
前記グリーンカット装置と通信可能に接続されるとともに、前記作業エリアに打ち込まれたコンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を管理する時刻情報管理装置と、を備えており、
前記時刻情報管理装置は、前記グリーンカット装置に前記時刻情報を送信するための時刻情報送信手段を備え、
前記グリーンカット装置は、前記時刻情報管理装置から送信された前記時刻情報を、前記時刻情報入力手段によって入力することを特徴とする作業システム。
【請求項4】
前記時刻情報管理装置は、締固め機械による前記コンクリートの締固め作業を管理するための外部の締固め管理システムを構成しており、
前記締固め管理システムは、前記締固め機械によるコンクリートの締固め作業の進捗状況を判定していて、前記時刻情報管理装置は、前記判定の結果に基づいて前記時刻情報を取得していることを特徴とする請求項3に記載の作業システム。
【請求項5】
走行部を有する装置本体を備え、かつ、コンクリートが打ち込まれた所定の作業エリア内の、前記コンクリートの表層におけるレイタンス層の除去作業を行うグリーンカット装置に搭載されるコンピューターを、
前記コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段、
前記時刻情報入力手段によって入力された前記時刻情報からの経過時間に応じて、前記作業エリア内における前記装置本体による作業が禁止される作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段、
前記作業エリア内において前記装置本体が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段、
前記作業エリア内における前記装置本体の位置を推定する自己位置推定手段、
前記作業エリアのうち前記作業禁止エリアを除くエリアと、前記マッピング手段及び前記自己位置推定手段によって推定される前記装置本体との位置関係に基づいて、前記走行部を駆動制御する走行制御手段、として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記コンピューターを、前記作業エリアが含まれた地域の気象情報を入力する気象情報入力手段をとして機能させ、
前記エリア規定手段は、前記経過時間と、前記気象情報入力手段によって入力された前記気象情報と、に応じて、前記作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンカット装置、作業システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばダム堤体等のように大規模なコンクリート構造物を建設するにあたっては、コンクリート構造物を複数の層に分けて、下から順にコンクリートを打ち重ねていく方法が採られる。各層の打ち込み後にはコンクリート中の軽い粒子が浮上するため、コンクリートの表層には脆弱なレイタンス層が形成される。打ち継ぎ目に十分な強度、耐久性及び水密性を持たせるためには、下層のコンクリート表層に形成されたレイタンス層を除去した後に、上層にコンクリートを打ち込む必要がある。このようにレイタンス層を除去する作業が、グリーンカットあるいはレイタンス処理などと呼ばれている。
【0003】
従来、コンクリートの表層におけるレイタンス層を除去するためのグリーンカット装置を自動走行させる技術が知られている。このような技術においては、グリーンカット装置と通信可能とされた管理側コンピューターが、グリーンカット装置に搭載されたGPS測量装置によるGPS測量データと、予め設定された走行予定経路とを比較照合する。そして、グリーンカット装置が走行予定経路に沿って誘導されるように、管理側コンピューターが、グリーンカット装置の走行機構を制御する制御部に所定の制御データを送信する。これにより、グリーンカット装置の走行機構が駆動制御されるので、グリーンカット装置は、管理側コンピューターに予め入力された走行予定経路に沿って自動的に走行することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グリーンカットの作業は、コンクリートを打ち込んでから十分な時間が経過した後、コンクリート表層の凝結がある程度進んだ状態で行われる。また、コンクリートの硬化と表層の凝結は気温等の天候の影響を受けるため、それに応じてグリーンカット開始時間を設定する必要がある。一方で、さらに時間が経過し、コンクリートの硬化が進み過ぎた状態では、均一にレイタンス層を除去することが難しくなり、作業性の低下や、打ち継ぎ目の品質悪化を引き起こすことになる。つまり、同一の作業エリア内でも打ち込み開始位置と打ち込み終了位置では時間差があってコンクリート硬化の進展が異なり、コンクリート表層の状態に、その時間差による差異が生じることとなる。
そのため、従来のグリーンカット装置の自動走行に係る技術によってグリーンカット作業を行う場合は、その作業のたびに、グリーンカット装置を走行させる走行予定経路を設定し、管理側コンピューターに入力する必要がある。しかも、上記のように、コンクリート表層の状態が、打ち込み開始位置と打ち込み終了位置で異なる。そのため、コンクリートの表層を複数にエリア分けし、当該複数のエリアごとの走行予定時刻についても適切に設定し、管理側コンピューターに入力する必要があって煩雑である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、グリーンカット装置の自動走行制御を簡略的に行うことができるようにするとともに、適切なタイミングでグリーンカット作業を行うことで打ち継ぎ目の品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、コンクリートが打ち込まれた所定の作業エリア内の、前記コンクリートの表層におけるレイタンス層の除去作業を行うためのグリーンカット装置であって、
走行部を有する装置本体と、
前記コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段と、
前記時刻情報入力手段によって入力された前記時刻情報からの経過時間に応じて、前記作業エリア内における前記装置本体による作業が禁止される作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段と、
前記作業エリア内において前記装置本体が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段と、
前記作業エリア内における前記装置本体の位置を推定する自己位置推定手段と、
前記作業エリアのうち前記作業禁止エリアを除くエリアと、前記マッピング手段及び前記自己位置推定手段によって推定される前記装置本体との位置関係に基づいて、前記走行部を駆動制御する走行制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のグリーンカット装置において、
前記作業エリアが含まれた地域の気象情報を入力する気象情報入力手段を更に備え、
前記エリア規定手段は、前記経過時間と、前記気象情報入力手段によって入力された前記気象情報と、に応じて、前記作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、作業システムであって、
請求項1又は2に記載のグリーンカット装置と、
前記グリーンカット装置と通信可能に接続されるとともに、前記作業エリアに打ち込まれたコンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を管理する時刻情報管理装置と、を備えており、
前記時刻情報管理装置は、前記グリーンカット装置に前記時刻情報を送信するための時刻情報送信手段を備え、
前記グリーンカット装置は、前記時刻情報管理装置から送信された前記時刻情報を、前記時刻情報入力手段によって入力することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の作業システムにおいて、
前記時刻情報管理装置は、締固め機械による前記コンクリートの締固め作業を管理するための外部の締固め管理システムを構成しており、
前記締固め管理システムは、前記締固め機械によるコンクリートの締固め作業の進捗状況を判定していて、前記時刻情報管理装置は、前記判定の結果に基づいて前記時刻情報を取得していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、プログラムであって、
走行部を有する装置本体を備え、かつ、コンクリートが打ち込まれた所定の作業エリア内の、前記コンクリートの表層におけるレイタンス層の除去作業を行うグリーンカット装置に搭載されるコンピューターを、
前記コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段、
前記時刻情報入力手段によって入力された前記時刻情報からの経過時間に応じて、前記作業エリア内における前記装置本体による作業が禁止される作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段、
前記作業エリア内において前記装置本体が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段、
前記作業エリア内における前記装置本体の位置を推定する自己位置推定手段、
前記作業エリアのうち前記作業禁止エリアを除くエリアと、前記マッピング手段及び前記自己位置推定手段によって推定される前記装置本体との位置関係に基づいて、前記走行部を駆動制御する走行制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプログラムにおいて、
前記コンピューターを、前記作業エリアが含まれた地域の気象情報を入力する気象情報入力手段をとして機能させ、
前記エリア規定手段は、前記経過時間と、前記気象情報入力手段によって入力された前記気象情報と、に応じて、前記作業禁止エリアの範囲を縮小するように規定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グリーンカット装置の自動走行制御を簡略的に行うことができるとともに、適切なタイミングでグリーンカット作業を行うことで打ち継ぎ目の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】作業エリアのあるダム堤体を示す斜視図である。
【
図2】コンクリート打ち込みの流れを説明する図である。
【
図3】グリーンカット装置の構成を説明する図である。
【
図5】グリーンカット装置が含まれた作業システムの構成を説明する図である。
【
図6】グリーンカット作業の流れを説明する図である。
【
図7】グリーンカット作業の流れを説明する図である。
【
図8】グリーンカット作業の流れを説明する図である。
【
図9】グリーンカット装置が含まれた作業システムと外部の締固め管理システムとを連携させた構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
図1において符号1は、大規模なコンクリート構造物であり、本実施形態においてはダム堤体を示す。大規模コンクリート構造物としては、その他にもビルや橋などが挙げられる。
このようなダム堤体1を始めとする大規模コンクリート構造物は、複数の層に分けて構成され、下側の層から順にコンクリート3が打ち込まれて構築される。
各層のコンクリート打ち込み後にはコンクリート3中の軽い粒子が浮上するため、コンクリート3の表層には脆弱なレイタンス層4が形成される。このレイタンス層4を除去せずに、上層のコンクリート3を打ち込んでしまうと、下層と上層との間の打ち継ぎ目に、十分な強度や耐久性、水密性を持たせにくい。そのため、上層のコンクリート3を打ち込む前に、下層のコンクリート3におけるレイタンス層4を除去する必要がある。そして、レイタンス層4の除去には、グリーンカット装置10が用いられる。
【0017】
図1において符号2は、グリーンカット装置10によってレイタンス層4の除去が行われる対象となる作業エリアを示す。すなわち、作業エリア2は、ダム堤体1のうちコンクリート3が打ち込まれた部位及びその表層であり、例えば型枠によって囲まれている。
なお、作業エリア2に打ち込まれるコンクリート3は、バケットに投入されてクレーンによって作業エリア2の打ち込み予定位置の上空まで運搬される。そして、打ち込み予定位置のコンクリート打ち込みが可能な高さまでバケットが降下されて、その位置からコンクリート3が放出される。これにより、コンクリート3の打ち込みが行われる。
図1の作業エリア2に示されたマス目は、例えばバケット一杯分の量のコンクリート3を示している。
【0018】
コンクリート3は、
図2に示すように、作業エリア2に対し、上流側から下流側に向かって順番に打ち込まれる。また、コンクリート3は、一方から他方に向かって打ち込まれる。すなわち、例えば下流側から見て、右側から左側に向かって打ち込まれる。これにより、作業エリア2内において、上流側と下流側とで、コンクリート3の打ち込み開始時間(打ち込み終了時間)にギャップ(時間差)が生じることとなる。
コンクリート3は、作業エリア2内に打ち込まれた後に、バイブレーターによる締固め作業が行われて締め固められる。この締固め作業も、コンクリート3が打ち込まれた順番に行われるため、上流側と下流側とで、コンクリート3の締固め完了時間にギャップが生じることとなる。
【0019】
コンクリート3の締固めが完了して一定時間が経過すると、コンクリート3の表層には上記のレイタンス層4が形成される。そして、このレイタンス層4の形成についても、作業エリア2の上流側と下流側とでギャップが生じることとなる。換言すれば、作業エリア2内において、上流側と下流側とで、グリーンカット装置10によるレイタンス層4の除去作業の開始時間にもギャップが生じることとなる。
なお、コンクリート3の硬化と表層の凝結は気温等の天候の影響を受ける。そのため、レイタンス層4の除去作業の開始時間は、コンクリート3の締固め完了時間だけでなく、気象情報についても考慮に入れる必要がある。
【0020】
作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の表層におけるレイタンス層4の除去作業を行うためのグリーンカット装置10は、
図3に示すように、装置本体11と、この装置本体11によってグリーンカット作業を行うための制御装置20と、を備えている。
装置本体11は、当該装置本体11を走行させるための走行部12と、グリーンカット作業を行うための除去作業部13と、作業エリア2周囲の環境をセンシングするためのセンサー部14と、を有している。
【0021】
装置本体11は、レイタンス層の除去作業を行うのに必要な構造部分が設けられるものであり、グリーンカット装置10の筐体としての機能を持つ。
【0022】
走行部12は、複数のタイヤ12aと、複数のタイヤ12aを回転駆動させる駆動部12bと、を備えており、装置本体11の下部に設けられている。また、走行部12は、複数のタイヤ12aの向きを調節して進行方向を変更するステアリング機構や、複数のタイヤ12aの回転を止めるブレーキ等を備えているものとする。
なお、本実施形態の走行部12は、複数のタイヤ12aによるものとしたが、これに限られるものではなく、無限軌道(クローラー)によるものでもよい。
【0023】
除去作業部13は、ブラシ13aと、ブラシ13aを回転駆動させる駆動部13bと、を複数セット備えており、装置本体11の下部に設けられている。また、除去作業部13は、複数セットのブラシ13a及び駆動部13bをレイタンス層4から離間させたり近づけたりする昇降機構を備えているものとする。つまり、ブラシ13aを上昇させれば、グリーンカット作業が行われず、ブラシ13aを降下させてレイタンス層4に接した状態とすれば、グリーンカット作業が行われる。
なお、本実施形態の除去作業部13は、ブラシ13aによるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば斫り装置や高圧洗浄機によるものでもよい。
【0024】
センサー部14は、後述する自己位置推定処理やマッピング処理に用いられるものであり、本実施形態においては装置本体11の上部に設けられている。
センサー部14に用いられるセンサーの種類としては、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等の光学式測距センサーやカメラなどが挙げられる。本実施形態においては、光学式測距センサーが用いられるものとするが、カメラが用いられてもよいし、光学式測距センサーとカメラが併用されてもよい。
なお、光学式測距センサーでは、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析することができる。光学式測距センサーの場合、周囲の明るさに関係なく2次元(X,Y座標)もしくは3次元(X,Y,Z座標)の点群データを取得できる。
また、カメラとしては、単願カメラ、複眼カメラ、RGB-Dカメラ等が用いられ、周囲の環境を画像データとして取得できる。
【0025】
制御装置20は、装置本体11に内蔵されたコンピューターであり、装置本体11に設けられた走行部12、除去作業部13、センサー部14の制御を行う。このような制御装置20は、
図4に示すように、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えている。また、制御装置20には、タイマー機能が備えられている。タイマー機能では、現在の日付及び時刻に基づいて、カウントアップ式の計時と、カウントダウン式の計時を行うことができるようになっている。
【0026】
制御部21は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により構成されている。
ROMは、CPUが実行する各種プログラム等を記憶している。
そして、制御部21のCPUは、記憶部22に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、グリーンカット装置10における各手段の動作を集中制御するようになっている。
【0027】
記憶部22は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。
記憶部22には、制御部21が実行する各種プログラムや、プログラムの実行に必要な各種データ等が記憶されている。
【0028】
制御部21が実行する各種プログラムには、時刻情報入力プログラムと、気象情報入力プログラムと、マッピングプログラムと、自己位置推定プログラムと、エリア規定プログラムと、走行制御プログラムと、作業部制御プログラムと、が含まれている。
【0029】
プログラムの実行に必要な各種データには、時刻情報入力プログラムの実行により入力された時刻情報と、気象情報入力プログラムの実行により入力された気象情報と、作業エリア2のマッピング情報又は/及び位置情報と、が含まれている。
【0030】
通信部23は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部23は、通信ネットワークNを介して有線又は無線で接続された他の装置(時刻情報管理装置、気象情報提供装置等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0031】
以上のように構成されたグリーンカット装置10は、
図5に示すように、通信ネットワークNを介して時刻情報管理装置30とデータ通信可能に接続されて作業システムを構築している。すなわち、本実施形態の作業システムは、グリーンカット装置10と、作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を管理する時刻情報管理装置30と、を備えている。
【0032】
ここで、本実施形態における通信ネットワークNは、電話回線網、ISDN回線網、光ファイバー、移動体通信網、通信衛星回線、CATV回線網、その他の専用線等の各種通信回線網と、それらを接続するインターネットサービスプロバイダ(すなわち、インターネット)等を含んでいてもよい。また、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等の様々な通信網が互いに通信可能に接続された集合的な通信網であってもよい。また、接続の形態について、有線、無線及び有線と無線の混在を問わない。
【0033】
時刻情報管理装置30は、作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を含むダム堤体1建築に必要な種々の時刻情報を管理するためのものであり、本実施形態においては、汎用のコンピューターによって構成されている。ここで、汎用のコンピューターとは、例えばPC、スマートフォン、タブレット等のような通信可能な情報端末(管理用端末)を指すものとする。
時刻情報管理装置30への時刻情報の入力は、時刻情報管理装置30に備えられた操作部(例えばキーボード、マウス、タッチパネル等)を操作して行われるか、時刻情報管理装置30とデータ通信可能に接続されたスマートフォン等の携帯情報端末からの情報入力によって行われる。また、時刻情報の入力は、施工管理者又は施工管理者によって指示を受けた担当者によって行われる。
【0034】
このような時刻情報管理装置30は、グリーンカット装置10に時刻情報を送信するための時刻情報送信手段を備えている。
より具体的に説明すると、時刻情報管理装置30は、CPU等により構成された制御部と、制御部が実行する各種プログラムや各種データ等が記憶された記憶部と、通信モジュール等で構成された通信部と、を備えている。
記憶部には、施工管理者又は担当者が入力した、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報が記憶されている。また、記憶部には、時刻情報を送信するための時刻情報送信プログラムが記憶されており、制御部が、この時刻情報送信プログラムを実行すると、時刻情報が、通信部から通信ネットワークNを介してグリーンカット装置10に送信されるようになっている。つまり、時刻情報送信プログラムは、制御部及び通信部との協働により時刻情報送信手段として機能することになる。
【0035】
なお、時刻情報管理装置30は、グリーンカット装置10とデータ通信可能に接続されているため、必ずしもダム堤体1の建設現場内に設置されている必要はなく、遠隔地にあってもよい。
また、ダム堤体1に複数の作業エリア2があった場合に、複数の作業エリア2の、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を、時刻情報管理装置30によって一括管理してもよい。さらに、全国各地に大規模コンクリート構造物の建設現場があって、それらの建設現場における複数の作業エリアの、コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を、時刻情報管理装置30によって一括管理してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態の作業システムは、
図5に示すように、通信ネットワークNを介して時刻情報管理装置30とデータ通信可能に接続されるとともに、作業エリア2が含まれた地域の気象情報を外部に提供するための気象情報提供装置40を更に備えている。
【0037】
気象情報提供装置40は、気象情報を扱う機関(例えば、気象庁、気象情報会社等)によって管理されるサーバー装置であり、PC、専用の装置等で構成されている。
気象情報を扱う機関は、天気(晴れ、曇り、雨などの情報)、風向風速、気温、日較差、湿度、日射量、放射収支量、雨量等の気象情報を、全国のエリアごと(例えば250mメッシュ単位)、時間帯ごと(例えば分単位、時間単位、一日単位、週単位など)に収集している。
【0038】
気象情報提供装置40は、分析済みの気象情報を、時刻情報管理装置30を始めとする外部装置に対して送信する機能を有する。
気象情報提供装置40から時刻情報管理装置30に対する気象情報の送信は、本実施形態においては、時刻情報管理装置30に対して時刻情報が入力されたことを契機にして行われるように設定されている。この場合、時刻情報管理装置30と気象情報提供装置40との間で、通信ネットワークNを介して、気象情報の送受信を成立させるための信号データが適宜やり取りされる。ただし、時刻情報管理装置30に対する気象情報の送信タイミングは、これに限られるものではなく、例えば数時間に1回などのように定期的に行われてもよいし、時刻情報管理装置30からの要求を受けたときのみ気象情報提供装置40から気象情報が送信されるものとしてもよい。
【0039】
時刻情報管理装置30は、通信ネットワークNを介して気象情報提供装置40から受信して記憶部に入力された気象情報を、グリーンカット装置10に送信するための気象情報送信手段を備えている。
気象情報送信手段は、制御部及び通信部と、制御部によって実行される気象情報送信プログラムにより構成されている。つまり、時刻情報管理装置30の記憶部には、気象情報を送信するための気象情報送信プログラムが記憶されており、制御部が、この気象情報送信プログラムを実行すると、気象情報が、通信部から通信ネットワークNを介してグリーンカット装置10に送信されるようになっている。
なお、時刻情報管理装置30からグリーンカット装置10に対する気象情報の送信は、時刻情報の送信の後に行われることが望ましい。ダムが建築されるような山間部では天候が変わりやすいため、グリーンカット装置10に対する気象情報の送信タイミングは、時刻情報の送信前よりも送信後の方が望ましい。ただし、これに限られるものではなく、ほぼ同時に行われてもよい。
【0040】
本実施形態におけるグリーンカット装置10は、以下のように動作する。
【0041】
(時刻情報及び気象情報の入力処理)
グリーンカット装置10によって作業エリア2のグリーンカット作業を行う場合は、時刻情報管理装置30から時刻情報を取得し、各種プログラムの実行に必要なデータとして記憶部22に記憶させる必要がある。
上記のように、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報は、時刻情報管理装置30に入力されて記憶される。時刻情報管理装置30には、気象情報提供装置40から送信された気象情報も記憶されている。そして、時刻情報管理装置30に記憶された時刻情報は、時刻情報管理装置30の時刻情報送信手段によってグリーンカット装置10に送信される。さらに、気象情報も、時刻情報管理装置30の気象情報送信手段によってグリーンカット装置10に送信される。
【0042】
時刻情報管理装置30からグリーンカット装置10に送信された時刻情報は、グリーンカット装置10の通信部23が受信する。通信部23が受信した時刻情報は、制御装置20(記憶部22)に入力される。
より詳細に説明すると、グリーンカット装置10の記憶部22には、上記のように、時刻情報入力プログラムが記憶されている。この時刻情報入力プログラムは、受信した時刻情報を制御装置20(記憶部22)に入力するためのものである。
そのため、通信部23が時刻情報を受信したときに、制御部21が、時刻情報入力プログラムを実行すると、時刻情報が記憶部22に記憶されるようになっている。つまり、時刻情報入力プログラムは、制御部21及び通信部23との協働により時刻情報入力手段として機能することになる。
【0043】
時刻情報管理装置30からグリーンカット装置10に送信された気象情報は、グリーンカット装置10の通信部23が受信する。通信部23が受信した気象情報は、制御装置20(記憶部22)に入力される。
より詳細に説明すると、グリーンカット装置10の記憶部22には、上記のように、気象情報入力プログラムが記憶されている。この気象情報入力プログラムは、受信した気象情報を制御装置20(記憶部22)に入力するためのものである。
そのため、通信部23が気象情報を受信したときに、制御部21が、気象情報入力プログラムを実行すると、気象情報が記憶部22に記憶されるようになっている。つまり、気象情報入力プログラムは、制御部21及び通信部23との協働により気象情報入力手段として機能することになる。
【0044】
時刻情報及び気象情報が記憶部22に入力された時点で、作業エリア2内は、全体が作業禁止エリア2aとなっており、グリーンカット装置10(装置本体11)によるグリーンカット作業が禁止されている。
コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報が記憶部22に入力されると、その時刻情報からの経過時間に応じて、作業禁止エリア2aの範囲が縮小される。さらに、気象情報が記憶部22に入力されると、その気象情報の内容に応じて、作業禁止エリア2aの範囲が縮小されるまでの時間が調整される。
すなわち、エリア規定プログラムは、制御部21との協働によりエリア規定手段として機能することになる。
【0045】
より詳細に説明すると、グリーンカット装置10の記憶部22には、上記のように、エリア規定プログラムが記憶されている。このエリア規定プログラムは、時刻情報入力手段によって入力された時刻情報からの経過時間に応じて、作業エリア2内における装置本体11による作業が禁止される作業禁止エリア2aの範囲を縮小するように規定するためのものである。
そのため、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報が記憶部22に入力されたときに、制御部21が、エリア規定プログラムを実行すると、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間が自動計算され、その時間が経過すると、
図6に示すように、作業エリア2内における作業禁止エリア2aの縮小が行われる。換言すれば、制御部21が、エリア規定プログラムを実行すると、グリーンカット作業が開始される時間が導き出される。
【0046】
また、上記のように、時刻情報が記憶部22に入力されたときに、制御部21が、エリア規定プログラムを実行すると、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間が自動計算されるが、コンクリート3の硬化時間は、気象条件に左右される場合がある。そこで、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間は、記憶部22に入力された気象情報の内容を加味して自動計算される。すなわち、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間は、気象情報に基づいて調整され、早められたり遅らせられたりする。換言すれば、グリーンカット作業の開始時間が早められたり遅らせられたり調整される。
本実施形態においては、例えば気象情報のうち気温に基づいて時間調整が行われるものとする。コンクリート3は、打ち込み作業が行われる季節によって温度管理や養生方法が異なるものとなっており、型枠を取り外す時期も気温に応じて異なる。すなわち、コンクリート3は、気温の違いで、強度が出るまでの時間に違いが出る。そのため、本実施形態においては設定温度を予め決めておき、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間を自動計算する際には、設定温度未満であるか設定温度以上であるかに基づいて、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間を調整している。
ただし、これに限られるものではなく、天気や湿度などのその他の情報を加味して時間調整が行われてもよい。
【0047】
エリア規定プログラムが実行され、作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間が自動計算されて、所定時間の経過後に、作業エリア2内における作業禁止エリア2aが縮小されると、作業エリア2内には、必然的に、作業可能エリア2bが形成されることとなる。この作業可能エリア2bは、グリーンカット装置10(装置本体11)によるグリーンカット作業が許可されるエリアである。したがって、グリーンカット装置10は、作業エリア2内に作業可能エリア2bが形成されると、グリーンカット作業を開始する。
また、コンクリート3は、上記のように、作業エリア2の上流側と下流側とで打ち込み開始時間(コンクリート3の締固め完了時間)にギャップが生じた状態となっている。そのため、作業エリア2の上流側に打ち込まれたコンクリート3は、下流側に打ち込まれたコンクリート3よりも早い時間に硬化することになる。すなわち、コンクリート3の表層におけるレイタンス層4の形成についても、作業エリア2の上流側と下流側とで時間のギャップが生じることになるため、レイタンス層4の除去作業(グリーンカット作業)は、上流側ほど早く行われる。
【0048】
なお、エリア規定手段によって作業禁止エリア2aを縮小する広さは予め設定されているものとする。本実施形態においては、例えば
図6~
図8に示すように、作業エリア2を三分の一ずつにエリア分けする設定が事前になされており、作業禁止エリア2aが縮小されるときには、三分の一ずつ縮小される。ただし、これに限られるものではなく、コンクリート3の打ち込み作業時のバケットごとにエリア分けしてもよいし、上流側から下流側までを複数の行(
図2の右から左に向かう矢印を指す)ごとにエリア分けしてもよい。
また、作業禁止エリア2aを縮小するエリアの広さは、作業エリア2全体の広さや気象情報に基づいて変更されてもよい。すなわち、作業エリア2が広ければ広いほど上流側と下流側でコンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報に時間差が生じるし、気象情報に応じてコンクリート3の硬化時間に違いが生じるのであれば、作業禁止エリア2aを縮小する広さは、適宜調整されてもよいものとする。その場合、エリア規定手段によって自動で調整されてもよいし、制御装置20への設定入力で変更されてもよい。
【0049】
次に、作業エリア2内における作業禁止エリア2aが縮小されて、作業可能エリア2bが形成された後のグリーンカット装置10の動作を、より詳細に説明する。
グリーンカット装置10の記憶部22には、上記のように、マッピングプログラムと、自己位置推定プログラムと、走行制御プログラムと、作業部制御プログラムと、が記憶されている。
【0050】
マッピングプログラムは、作業エリア2内において装置本体11が走行した範囲の地図情報を作成するためのものであり、センサー部14による作業エリア2周囲の環境に係る情報を元に、作業エリア2の地図を作成することができる。
より詳細に説明すると、制御部21によってマッピングプログラムが実行されると、作業エリア2周囲の環境をセンシングする。本実施形態におけるセンサー部14は、上記のように光学式測距センサーであり、センシングした作業エリア2の周囲の環境に係る情報を2次元又は3次元の点群データとして取得することができる。点群とは、センサー部14が検知した周囲の物体や地形から反射してきた一つ一つのパルスを点として表現したデータ形式である。そして、取得した当該点群データに基づいて、2次元又は3次元の、作業エリア2の地図を作成することができる。その地図情報は記憶部22に記憶される。
そして、このマッピングプログラムは、自己位置推定プログラムと同時に実行される。
このようなマッピングプログラムは、制御部21及びセンサー部14との協働によりマッピング手段として機能することになる。
【0051】
自己位置推定プログラムは、作業エリア2内における装置本体11の位置を推定するためのものであり、センサー部14によって作業エリア2周囲の環境をセンシングし、そのセンシングの結果に基づいて、作業エリア2に対する装置本体11の位置を推定することができる。
より詳細に説明すると、自己位置推定プログラムは、マッピングプログラムと同時に制御部21によって実行される。制御部21によって自己位置推定プログラムが実行されると、センサー部14が、作業エリア2周囲の環境をセンシングする。そして、マッピングプログラムによって作成された地図上の、どの位置に装置本体11があるのかを2次元又は3次元で推定することができる。また、装置本体11には前後左右が設定されており、装置本体11の向きも推定することができるようになっている。
このような自己位置推定プログラムは、制御部21及びセンサー部14との協働により自己位置推定手段として機能することになる。
【0052】
なお、以上のようなマッピングプログラム及び自己位置推定プログラムは、制御部21によって同時に実行されることにより、所謂SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)として機能することになる。
SLAMとは、位置特定と地図作成を同時に行う機能を指している。すなわち、センサー部14を搭載した装置本体11が走行を行いながら作業エリア2周囲の環境をセンシングすることで、二次元もしくは三次元の環境地図の作成を行うことができる。同時に装置本体11の移動量の推定を逐次的に行うことで環境地図上での自己位置推定も行われることになる。このようなSLAMによれば、地図の存在しない環境でも自己位置推定を行うことができる。また、構築した地図情報を活用することで、一度グリーンカット作業を行った場所を重複することなく、最短時間で隅々までグリーンカット作業を行うことができる。
なお、マッピングプログラム及び自己位置推定プログラム(すなわち、SLAM)が実行されることで、作業可能エリア2b内で装置本体11が通過した場所が判明する。そのため、作業可能エリア2bのうち、どの場所のグリーンカット作業が完了しているか否かを判明させることができる。つまり、作業エリア2内でのグリーンカット作業を最適なルートで行うことができる。
【0053】
走行制御プログラムは、作業エリア2のうち作業禁止エリア2aを除くエリア(作業可能エリア2b)と、自己位置推定プログラムによって推定された装置本体11との位置関係に基づいて、走行部12を駆動制御するためのものである。そのため、作業エリア2全体が作業禁止エリア2aであるときには走行制御プログラムは実行されない。
走行制御プログラムは、エリア規定プログラムによって作業エリア2内における作業禁止エリア2aが縮小されると、制御部21によって実行される。走行制御プログラムが実行されると、装置本体11の走行部12が駆動制御されて、装置本体11は作業可能エリア2b内を走行してグリーンカット作業を行う。
装置本体11が作業エリア2内を走行している間は、上記のマッピングプログラム及び自己位置推定プログラムも実行されていて、装置本体11の位置や移動量の推定が行われつつ、装置本体11の走行部12が駆動制御されるようになっている。これにより、上記のように、作業可能エリア2bのうち、どの場所のグリーンカット作業が完了しているか否かが判別できる。そのため、作業可能エリア2b全てのグリーンカット作業が完了すると、走行制御プログラムによる走行部12の駆動制御は停止される。
なお、例えば作業エリア2の近傍に、グリーンカット装置10の待機場所があれば、グリーンカット作業が完了したときに走行部12を駆動制御して、装置本体11をその待機場所まで誘導してもよい。待機場所は、グリーンカット装置10にとって、装置本体11の走行可能が可能で、かつ、グリーンカット作業が行われない場所として認識されているものとする。
このような走行制御プログラムは、制御部21及び走行部12との協働により走行制御手段として機能することになる。
【0054】
作業部制御プログラムは、グリーンカット作業が行われる時に除去作業部13を駆動制御し、グリーンカット作業が行われない時に除去作業部13を停止制御するためのものである。
より詳細に説明すると、エリア規定プログラムによって作業エリア2内における作業禁止エリア2aが縮小されて、作業エリア2内に作業可能エリア2bが形成されると、制御部21によって実行される。作業部制御プログラムが実行されると、装置本体11の除去作業部13が駆動制御されて、除去作業部13によってレイタンス層4の除去作業(グリーンカット作業)が行われる。すなわち、ブラシ13aが降下してレイタンス層4に接した状態となり、駆動部13bによってブラシ13aが回転駆動される。
除去作業部13によるレイタンス層4の除去作業が完了した位置は、上記の自己位置推定手段によって推定された装置本体11の位置情報に基づいて判別されるものとする。作業可能エリア2b内のグリーンカット作業が完了すると、ブラシ13aが上昇されて作業エリア2の表層から離間する。
このような作業部制御プログラムは、制御部21及び除去作業部13との協働により作業部制御手段として機能することになる。
【0055】
以上のように、作業エリア2内における作業禁止エリア2aが縮小されて、作業可能エリア2bが形成された後のグリーンカット装置10は、制御部21によって、マッピングプログラムと、自己位置推定プログラムと、走行制御プログラムと、作業部制御プログラムと、が実行されてグリーンカット作業を行うように設定されている。
【0056】
次に、グリーンカット装置10及び作業システムによるレイタンス層4の除去作業(グリーンカット作業)の流れについて説明する。
【0057】
まず、建設中のダム堤体1の所定の区画について、コンクリート打ち込み作業が完了した後の区画をグリーンカット作業の対象となる作業エリア2として規定する。作業エリア2を規定するには、例えばダム堤体1のCIM(Construction Information Modeling)データの座標情報に基づいて規定されてもよいし、上記のSLAMに基づいて、グリーンカット装置10によって規定されてもよい。
なお、コンクリート3の打ち込み作業は、CIMデータの座標情報に基づいて行われているものとする。
また、SLAMによって作業エリア2を規定する場合は、グリーンカット装置10を走行させる必要があるため、コンクリート3の硬化がある程度進んでから行われる。その際に、除去作業部13は停止制御されているものとする。
【0058】
また、コンクリート3の打ち込み作業が行われ、コンクリート3の締固め作業が完了したときに、時刻情報管理装置30に対し、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報の入力を行う。
ここで、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報とは、作業エリア2全体のコンクリート3の締固め作業が最終的に完了した時刻情報を指すものとする。ただし、これに限られるものではなく、バケット分のエリア単位で時刻情報が入力されてもよいし、上流側から下流側までを複数の行(
図2の右から左に向かう矢印を指す)に分けて、当該行ごとに時刻情報を入力してもよい。
【0059】
時刻情報管理装置30への時刻情報の入力が行われると、当該時刻情報は、グリーンカット装置10に送信される。また、このとき、気象情報提供装置40から取得した気象情報も、時刻情報管理装置30からグリーンカット装置10へと送信される。
グリーンカット装置10が時刻情報を受信し、更に気象情報を受信し、これら時刻情報及び気象情報が記憶部22に入力されると、制御装置20が、作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間(経過時間)を、気象情報を加味して自動計算する。
【0060】
作業エリア2内で作業禁止エリア2aが縮小されるまでの時間が経過すると、作業禁止エリア2aが縮小した分、作業エリア2内に作業可能エリア2bが形成される。
そして、グリーンカット装置10は、マッピングプログラム及び自己位置推定プログラムを実行しつつ、走行制御プログラムを実行して作業可能エリア2b内でSLAMによる走行を開始する。さらに、グリーンカット装置10は、作業部制御プログラムを実行してグリーンカット作業を行う。
【0061】
すなわち、本実施形態においては、作業エリア2が三分の一ずつにエリア分けされている。そのため、上流側から下流側に向かってコンクリート3の打ち込み作業が行われて、コンクリート3の締固め作業が行われた場合は、上流側の三分の一のエリアが、まず作業可能エリア2bとなる。グリーンカット装置10は、当該上流側の作業可能エリア2bからグリーンカット作業を行う。
続いて、所定の時間が経過すると、作業エリア2のうち上流側と下流側との間の中央エリアが、作業可能エリア2bとなる。グリーンカット装置10は、当該中央の作業可能エリア2bのグリーンカット作業を行う。
続いて、更に所定の時間が経過すると、作業エリア2のうち下流側の三分の一のエリアが、作業可能エリア2bとなる。つまり、作業エリア2の全域が作業可能エリア2bとなり、グリーンカット装置10は、当該下流側の作業可能エリア2bのグリーンカット作業を行う。
【0062】
以上のような流れで、レイタンス層4の除去作業(グリーンカット作業)を行うことができる。
なお、このような作業の流れの場合、現場では、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報の入力が主な作業内容となる。つまり、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を入力するだけで、グリーンカット装置10によってグリーンカット作業を自動で行うことが可能となっている。
そして、レイタンス層4の除去作業が行われたコンクリート3の上層には更にコンクリート3が打ち込まれ、下層のコンクリート3と上層のコンクリート3との間には打ち継ぎ目が形成される。
【0063】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、グリーンカット装置10は、走行部12を有する装置本体11と、コンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を入力する時刻情報入力手段と、時刻情報入力手段によって入力された時刻情報からの経過時間に応じて、作業エリア2内における装置本体11による作業が禁止される作業禁止エリア2aの範囲を縮小するように規定するエリア規定手段と、作業エリア2内において装置本体11が走行した範囲の地図情報を作成するマッピング手段と、作業エリア2内における装置本体11の位置を推定する自己位置推定手段と、作業エリア2のうち作業禁止エリア2aを除くエリア(作業可能エリア2b)と、マッピング手段及び自己位置推定手段によって推定される装置本体11との位置関係に基づいて、走行部12を駆動制御する走行制御手段と、を備えるので、グリーンカット装置10を自動走行させるための走行予定経路の事前設定や入力作業を省略することができ、グリーンカット装置10を簡易に自動走行させることができる。
さらに、作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の硬化の進展に合わせて適切なタイミングでグリーンカット作業を行うことができるので、コンクリート3の表層におけるレイタンス層4を均一に除去することができ、打ち継ぎ目の品質を向上させることができる。
なお、グリーンカット装置10に搭載されるコンピューター(制御装置20)を、時刻情報入力手段、エリア規定手段、マッピング手段、自己位置推定手段、走行制御手段、として機能させるプログラムも同様の効果を奏する。
【0064】
また、グリーンカット装置10は、作業エリア2が含まれた地域の気象情報を入力する気象情報入力手段を更に備え、エリア規定手段は、経過時間と、気象情報入力手段によって入力された気象情報と、に応じて、作業禁止エリア2aの範囲を縮小するように規定しているので、気象条件に左右されるコンクリート3の硬化時間を加味して、作業エリア2内で作業禁止エリア2aの範囲が縮小されるまでの時間を調整することができる。これにより、作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の硬化の進展に合わせて適切なタイミングでグリーンカット作業を行うことができるので、打ち継ぎ目における品質の向上に貢献できる。
なお、グリーンカット装置10に搭載されるコンピューター(制御装置20)を、気象情報入力手段として機能させるプログラムも同様の効果を奏する。
【0065】
また、作業システムは、グリーンカット装置10と、グリーンカット装置10と通信可能に接続されるとともに、作業エリア2に打ち込まれたコンクリート3の締固め作業が完了した時刻情報を管理する時刻情報管理装置30と、を備えており、時刻情報管理装置30は、グリーンカット装置10に時刻情報を送信するための時刻情報送信手段を備え、グリーンカット装置10は、時刻情報管理装置30から送信された時刻情報を、時刻情報入力手段によって入力するので、遠隔地からでもグリーンカット装置10に対して時刻情報の入力を行うことができ、遠隔地であってもグリーンカット装置10を簡易に自動走行させることができる。
さらに、グリーンカット作業を行うべき現場が複数あっても、時刻情報管理装置30で一括管理することができるので、複数の現場におけるグリーンカット装置10を簡易に自動走行させることができる。
【0066】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0067】
〔変形例1〕
上記の実施形態においては、時刻情報管理装置30に対して時刻情報の入力を行っているが、本変形例においては、時刻情報の入力が、担当者によって、グリーンカット装置10に対して直接行われている。本変形例のグリーンカット装置10における制御装置20は、図示はしないが、記憶部22に時刻情報の入力を行うための操作部(例えばキーボード、マウス、タッチパネル等)を備える。すなわち、制御装置20が備える操作部を担当者が操作して、当該制御装置20への時刻情報の入力が直接行われる。
また、気象情報の入力も同様にして行われてもよい。
本変形例によれば、グリーンカット装置10への時刻情報(気象情報)の入力を現場で直接行うことができるので、例えば大掛かりなシステムを構築しなくても簡易にグリーンカット作業を行うことができる。
【0068】
〔変形例2〕
上記の実施形態においては、時刻情報管理装置30が、気象情報提供装置40から気象情報を受信しているが、本変形例においては、グリーンカット装置10が気象情報を直接受信している。すなわち、本変形例のグリーンカット装置10は、通信ネットワークNを介して気象情報提供装置40とデータ通信可能に接続されている。
本変形例において、グリーンカット装置10に対する気象情報の送信タイミングは、グリーンカット装置10に対して時刻情報が入力されたことを契機にして行われるように設定されている。この場合、グリーンカット装置10と気象情報提供装置40との間では、通信ネットワークNを介して、気象情報の送受信を成立させるための信号データが適宜やり取りされる。ただし、グリーンカット装置10に対する気象情報の送信タイミングは、これに限られるものではなく、例えば数時間に1回などのように定期的に行われてもよいものとする。
本変形例によれば、グリーンカット装置10への気象情報の入力を直接的に自動で行うことができるので、例えば大掛かりなシステムを構築しなくても簡易にグリーンカット作業を行うことができる。
【0069】
〔変形例3〕
上記の実施形態において、時刻情報の入力は、施工管理者又は施工管理者によって指示を受けた担当者(すなわち、人)によって、時刻情報管理装置30を通じて行われるものとしている。また、上記の変形例1において、時刻情報の入力は、担当者によって、グリーンカット装置10に対して直接行われている。これに対し、本変形例においては、外部の締固めシステムが取得した時刻情報に基づいて、グリーンカット装置10に対する時刻情報の入力が行われている。
【0070】
より詳細に説明すると、外部の締固め管理システムは、締固め機械60によるコンクリートの締固め作業の進捗状況を判定している。
締固め作業の進捗状況を判定する手法としては特に限定されないが、本変形例においては、例えば、バイブレーター61の位置をGNSS機器によって測位したり、バイブレーター61を備えた締固め機械60(例えば、バイバック)のアームに傾斜センサーを取り付けたり、バイブレーター61の油圧管を流れる作動油量を検知したり、コンクリート打設面の平滑度をスキャナーやカメラで判定するなどして、締固め作業の進捗状況を判定している。
このような締固め管理システムは、バイブレーター61を備えた締固め機械60にGNSS機器を設置し、締固め機械60の測位情報に基づいて、締固め作業の位置や締固め完了時刻を導き出す機能を有している。すなわち、外部の締固め管理システムは、
図9に示すように、GNSS機器と通信可能に接続された制御装置50を備える。そして、当該制御装置50は、例えば汎用のコンピューター(スマートフォンやタブレット端末、マイコン等でもよい)であって、GNSS機器による測位情報に基づいてコンクリートの締固め完了時刻を導き出す時刻情報算出手段(CPU等の制御部によって実行される時刻情報算出プログラムを指す。)を有しており、コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を取得できるようになっている。
さらに、この制御装置50は、通信部を備えていて、グリーンカット装置10における制御装置20と通信可能に接続されており、コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を、グリーンカット装置10に送信することができる。
【0071】
要するに、本変形例の作業システムにおいては、グリーンカット装置10の制御装置20に対してコンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を送信する機能を有するものが、外部の締固め管理システムを構成する制御装置50である。つまり、本変形例においては、締固め管理システムを構成している当該制御装置50が、時刻情報管理装置として機能していることとなる。
換言すれば、グリーンカット装置10と締固め管理システムは連動しており、締固め管理システムが、コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を導き出して取得し、その時刻情報がグリーンカット装置10に入力され、これにより、レイタンス層の除去作業ができるようになっている。
【0072】
さらに、本変形例において、気象情報提供装置40から提供される気象情報は、制御装置50が受信し、制御装置50からグリーンカット装置10に送信されている。
制御装置50に対する気象情報の送信タイミングは、締固め管理システムが、コンクリートの締固め作業が完了した時刻情報を導き出して取得し、その時刻情報が、制御装置50に対して入力されたことを契機にして行われるように設定されている。ただし、これに限られるものではなく、例えば数時間に1回などのように定期的に行われてもよいし、制御装置50からの要求を受けたときのみ気象情報提供装置40から気象情報が送信されるものとしてもよい。
【0073】
なお、気象情報提供装置40から提供される気象情報は、制御装置50を経由せずに、グリーンカット装置10が直接受信してもよい。
グリーンカット装置10に対する気象情報の送信タイミングについては、グリーンカット装置10に対して時刻情報が入力されたことを契機にして行われるように設定されている。ただし、これに限られるものではなく、例えば数時間に1回などのように定期的に行われてもよいものとする。
【0074】
本変形例によれば、以上のようにグリーンカット装置10と外部の締固め管理システムを連動させることで、施工管理者又は施工管理者によって指示を受けた担当者による時刻情報の入力作業を省略することができるので、コンクリートの締固め作業の完了からレイタンス層の除去作業の完了までの工程を自動化することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 ダム堤体
2 作業エリア
2a 作業禁止エリア
2b 作業可能エリア
3 コンクリート
4 レイタンス層
10 グリーンカット装置
11 装置本体
12 走行部
12a タイヤ
12b 駆動部
13 除去作業部
13a ブラシ
13b 駆動部
14 センサー部
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
30 時刻情報管理装置
40 気象情報提供装置
50 制御装置
60 締固め機械
61 バイブレーター
N 通信ネットワーク