(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066571
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】吸引ダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240509BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F7/06 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175996
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】591031902
【氏名又は名称】シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 利明
(72)【発明者】
【氏名】浅川 智哉
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3L058BH07
3L058BJ05
3L080AB02
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】ダクトの壁面が汚れ難い吸引ダクトを提供する。
【解決手段】吸引ダクト100は、ダクト部材と、煙が流入する入口および煙が流出する出口を有しており、ダクト部材内に取り外し可能に配置されたインナーパイプ30と、を備える。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上引き排気装置用の吸引ダクトであって、
ダクト部材と、
煙が流入する入口および煙が流出する出口を有しており、前記ダクト部材内に取り外し可能に配置されたインナーパイプと、
を備える吸引ダクト。
【請求項2】
排ガス吸引筒をさらに備え、
前記排ガス吸引筒は、前記インナーパイプの下方部分に取り付けられている、
請求項1に記載の吸引ダクト。
【請求項3】
前記排ガス吸引筒は、ネジによって、前記インナーパイプの下方部分に接続されている、
請求項2に記載の吸引ダクト。
【請求項4】
前記ダクト部材は、逆L字型の溝を有しており、
前記排ガス吸引筒は、突起部を有しており、
前記溝に前記突起部が挿入されることにより、前記排ガス吸引筒は、前記ダクト部材に取り付けられる、
請求項2または3に記載の吸引ダクト。
【請求項5】
前記インナーパイプの下方部分の内径は、前記インナーパイプの上方部分の外径よりも大きい、
請求項1または2に記載の吸引ダクト。
【請求項6】
前記インナーパイプの下方部分および上方部分は円筒状であり、
前記インナーパイプは、前記下方部分と前記上方部分との間に、前記下方部分から前記上方部分に向けて縮径するテーパ部を含む、
請求項1または2に記載の吸引ダクト。
【請求項7】
前記ダクト部材は、
固定ダクト部材と、
前記固定ダクト部材に対して上下にスライド自在で且つ前記固定ダクト部材に対して固定可能であり、内部に前記固定ダクト部材を挿入可能な昇降ダクト部材と、
を備え、
前記インナーパイプは、前記昇降ダクト部材内に配置されており、且つ、前記昇降ダクト部材と共に上下にスライド可能である、
請求項1または2に記載の吸引ダクト。
【請求項8】
前記昇降ダクト部材が最下位置にあるとき、前記インナーパイプの前記出口は、前記固定ダクト部材内に挿入されている、
請求項7に記載の吸引ダクト。
【請求項9】
前記昇降ダクト部材を最上位置までスライドさせたときに、前記インナーパイプの上方部分は、前記固定ダクト部材と重なる、
請求項7に記載の吸引ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上引き排気装置に使用可能な吸引ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器の上方に配置され、加熱調理器から立ち上がる煙を吸引して排気する上引き排気装置が知られている。上引き排気装置は、上下方向に延び、内部を煙が流れるダクト部材を備えている。
【0003】
特許文献1は、垂下管が上下に分割され、下部管が上部管に対して上下方向に摺動可能に嵌合され、下部管が弾性部材によって上方向に付勢され、下部管の上下方向の位置を固定するための下部管固定手段が設けられ、下部管の下端吸込口の高さが調節可能となっていることを特徴とする排煙又は排気装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダクト部材の内面には、煙に含まれる油が付着する。ダクト部材の内面に油が付着したままにすると、その油に着火し、火災が発生するおそれがある。そのため、ダクト部材を、定期的に清掃する必要がある。しかし、ダクト部材は、他の部材と連結されているため、取り外し難く、ダクト部材の内面の洗浄には手間が掛かっていた。
【0006】
本発明は、ダクト部材の内面が汚れ難い吸引ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
上引き排気装置用の吸引ダクトであって、
ダクト部材と、
煙が流入する入口および煙が流出する出口を有しており、前記ダクト部材内に取り外し可能に配置されたインナーパイプと、
を備える吸引ダクト。
【0008】
(項目2)
排ガス吸引筒をさらに備え、
前記排ガス吸引筒は、前記インナーパイプの下方部分に取り付けられている、
項目1に記載の吸引ダクト。
【0009】
(項目3)
前記排ガス吸引筒は、ネジによって、前記インナーパイプの下方部分に接続されている、
項目2に記載の吸引ダクト。
【0010】
(項目4)
前記ダクト部材は、逆L字型の溝を有しており、
前記排ガス吸引筒は、突起部を有しており、
前記溝に前記突起部が挿入されることにより、前記排ガス吸引筒は、前記ダクト部材に取り付けられる、
項目2または3に記載の吸引ダクト。
【0011】
(項目5)
前記インナーパイプの下方部分の内径は、前記インナーパイプの上方部分の外径よりも大きい、
項目1から4のいずれか1項に記載の吸引ダクト。
【0012】
(項目6)
前記インナーパイプの下方部分および上方部分は円筒状であり、
前記インナーパイプは、前記下方部分と前記上方部分との間に、前記下方部分から前記上方部分に向けて縮径するテーパ部を含む、
項目1から5のいずれか1項に記載の吸引ダクト。
【0013】
(項目7)
前記ダクト部材は、
固定ダクト部材と、
前記固定ダクト部材に対して上下にスライド自在で且つ前記固定ダクト部材に対して固定可能であり、内部に前記固定ダクト部材を挿入可能な昇降ダクト部材と、
を備え、
前記インナーパイプは、前記昇降ダクト部材内に配置されており、且つ、前記昇降ダクト部材と共に上下にスライド可能である、
項目1から6のいずれか1項に記載の吸引ダクト。
【0014】
(項目8)
前記昇降ダクト部材が最下位置にあるとき、前記インナーパイプの前記出口は、前記固定ダクト部材内に挿入されている、
項目7に記載の吸引ダクト。
【0015】
(項目9)
前記昇降ダクト部材を最上位置までスライドさせたときに、前記インナーパイプの上方部分は、前記固定ダクト部材と重なる、
項目7または8に記載の吸引ダクト。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸引ダクトは、ダクト部材の内部に配置されたインナーパイプを備えているため、吸引された少なくとも一部の煙、好ましくはほぼ全ての煙は、インナーパイプ内を流れる。これにより、ダクト部材の内面に沿って流れる煙の量を低減できるため、ダクト部材の内面に付着する汚れを低減できる。また、インナーパイプは、ダクト部材から取り外すことができるため、簡単に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】昇降ダクト部材が最下位置にあるときの吸引ダクトを含む上引き排気装置の正面図である。
【
図1B】昇降ダクト部材が最下位置にあるときの吸引ダクトの縦断面図である。
【
図2A】昇降ダクト部材が最上位置にあるときの吸引ダクトを含む上引き排気装置の正面図である。
【
図2B】昇降ダクト部材が最上位置にあるときの吸引ダクトの縦断面図である。
【
図4】固定手段によって、固定ダクト部材と昇降ダクト部材が接続されている状態を示す斜視図である。
【
図6】インナーパイプと排ガス吸引筒との接続状態を示す斜視図である。
【
図7】昇降ダクト部材と排ガス吸引筒との接続状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の吸引ダクト100について、図面を参照しつつ説明する。以下では、説明の便宜上、
図1Aの上下方向を吸引ダクト100の上下方向として説明する。
【0019】
<1.吸引ダクトの全体構造>
図1Aに示すように、本発明の吸引ダクト100は、上引き排気装置1000の一部を構成している。上引き排気装置1000は、加熱調理器の上方に配置され、加熱調理器から立ち上がる煙を排気するための装置である。加熱調理器は、例えば、焼肉用のロースタや、鍋料理用の調理器である。上引き排気装置1000は、本発明の吸引ダクト100、および内部にフィルタが収容されたフィルタボックス200などを備える。吸引ダクト100は、加熱調理器の直上に配置され、吸引した煙をフィルタに向けて案内する。
【0020】
図1A、
図1Bおよび
図3に示すように、吸引ダクト100は、主に、固定ダクト部材10と、昇降ダクト部材20と、インナーパイプ30と、固定手段40と、排ガス吸引筒50と、を備える。
【0021】
固定ダクト部材10は、上引き排気装置1000のフィルタボックス200に接続される。
【0022】
昇降ダクト部材20は、固定ダクト部材10と同心状に且つ固定ダクト部材10の下方に配置されており、固定手段40を介して、固定ダクト部材10と連結解除可能に接続されている。昇降ダクト部材20は、最下位置(
図1A参照)と最上位置(
図2A参照)との間で、固定ダクト部材10に対してテレスコピック式にスライド可能である。
【0023】
インナーパイプ30は、昇降ダクト部材20と同心状に且つ昇降ダクト部材20の内部に配置されている。
【0024】
排ガス吸引筒50は、昇降ダクト部材20およびインナーパイプ30の下方に、それらと同心状に配置されている。排ガス吸引筒50は、昇降ダクト部材20およびインナーパイプ30それぞれと接続(好ましくは、着脱可能に接続)されている。加熱調理器から立ち上がる煙は、排ガス吸引筒50から吸引され、インナーパイプ30内に流れる。
【0025】
図1Bおよび
図2Bに示すように、昇降ダクト部材20を昇降させると、インナーパイプ30および排ガス吸引筒50も一緒に昇降する。昇降ダクト部材20が最上位置にあるとき、インナーパイプ30の大部分が、固定ダクト部材10の内部に挿入される。
【0026】
以下、吸引ダクト100の各構成要素について詳細に説明する。
【0027】
<1-1.固定ダクト部材>
図1Aおよび
図3に示すように、固定ダクト部材10は、上下方向に延びる円筒状のパイプから成り、例えば金属材料から作製される。
【0028】
<1-2.昇降ダクト部材>
図1A、
図1Bおよび
図3に示すように、昇降ダクト部材20は、上下方向に延びる円筒状のパイプから成り、例えば金属材料から作製される。昇降ダクト部材20の内径は、固定ダクト部材10の外径よりも大きい。
【0029】
図3に示すように、昇降ダクト部材20の下部には、逆L字型の溝21が設けられている。本実施形態では、複数の溝21(3つの溝21)が、昇降ダクト部材20の周方向に互いに離隔して設けられている。後述するように、各溝21内には、排ガス吸引筒50の突起部54がそれぞれ挿入される(
図7参照)。各溝21は、第一溝部21aと、第二溝部21bと、第三溝部21cと、を含む。第一溝部21aは、昇降ダクト部材20の下端で開口すると共に、昇降ダクト部材20の下端から上方に延びている。第二溝部21bは、第一溝部21aと繋がっており、第一溝部21aから昇降ダクト部材20の周方向に延びている。第三溝部21cは、第二溝部21bと繋がっており、第二溝部21bから下方に延び、昇降ダクト部材20の下端よりも上方で終端している。
【0030】
<1-3.インナーパイプ>
図1Bおよび
図3に示すように、インナーパイプ30は、円筒状の下方筒部31、円筒状の上方筒部32、および下方筒部31と上方筒部32との間に設けられたテーパ部33を含む。下方筒部31の内径は、上方筒部32の外径よりも大きい。したがって、当然、下方筒部31の内径は、上方筒部32の内径よりも大きい。テーパ部33は、下方筒部31から上方筒部32に向けて次第に縮径している。
【0031】
インナーパイプ30は、例えば金属材料から作製される。インナーパイプ30が、昇降ダクト部材20と一緒に昇降されること、および昇降ダクト部材20から取り外されることを考慮すると、インナーパイプ30は、軽量化のために、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0032】
図3に示すように、下方筒部31は、ネジ60(
図6参照)を挿入するための貫通穴31aを有する。本実施形態では、複数の貫通穴31a(3つの貫通穴31a)が、下方筒部31の周方向に互いに離隔して設けられている。後述するように、下方筒部31は、排ガス吸引筒50にネジ60によって固定される(
図6参照)。
【0033】
図1Bに示すように、上方筒部32の外面と昇降ダクト部材20の内面との間には、固定ダクト部材10および後述するレール41を挿入可能な大きさの隙間S1が設けられている。昇降ダクト部材20が最下位置にあるとき、固定ダクト部材10の下方部分のみが、隙間S1に挿入されており、固定ダクト部材10の下方部分と昇降ダクト部材20の上方部分とが重なっている。また、上方筒部32の上方部分のみが固定ダクト部材10内に挿入されている。
【0034】
図2Bに示すように、昇降ダクト部材20が最上位置にあるとき、固定ダクト部材10が、その略全長にわたって、隙間S1に挿入されている。また、上方筒部32の全長およびテーパ部33の上方部分が固定ダクト部材10内に挿入されており、テーパ部33の下方部分および下方筒部31は固定ダクト部材10内に挿入されず、固定ダクト部材10の外部に位置している。
【0035】
<1-4.固定手段>
固定手段40は、昇降ダクト部材20を固定ダクト部材10に対して着脱可能に固定するための手段である。
図3および
図4に示すように、固定手段40は、固定ダクト部材10の外面に対称に配置された一対のレール41と、昇降ダクト部材20に対称に配置され、各レール41に係合する一対の係合部材42と、を備える。
【0036】
各レール41は、固定ダクト部材10の上下方向全長にわたって延びている。各レール41は、上下方向に離隔して設けられた複数の開口部を有する。各係合部材42は、レール41の開口部の縁部に係合するフックと、レバーと、を備えており、昇降ダクト部材20に回転可能に取り付けられている。
【0037】
昇降ダクト部材20を上下にスライドさせ、レバーを回転させて、係合部材42のフックをレール41の開口部の縁部に引っ掛けることにより、昇降ダクト部材20を、所定の位置で、固定ダクト部材10に固定できる。
【0038】
<1-5.排ガス吸引筒>
図1Bおよび
図5に示すように、排ガス吸引筒50は、本体部51と、底壁52と、周壁53と、突起部54と、を備える。排ガス吸引筒50は、例えば金属材料から作製される。
【0039】
本体部51は、内部を煙が流通可能なように中空になっており、ラッパ状に広がる吸込部511と、吸込部511から上方に向けて次第に縮径しながら延びる中間部512と、中間部512の上端から上方に延びる装着部513と、を含む。
【0040】
装着部513は、円筒状である。装着部513の外径は、インナーパイプ30の下方筒部31の内径よりも小さい。したがって、装着部513は、下方筒部31の内部に挿入可能となっている。装着部513は、ネジ穴513aを有する。ネジ穴513aの内周面には、雌ネジが設けられている。本実施形態では、複数のネジ穴513a(3つのネジ穴513a)が、装着部513の周方向に互いに離隔して設けられている。
【0041】
図6に示すように、排ガス吸引筒50は、装着部513を下方筒部31の内部に挿入した後、装着部513のネジ穴513aを下方筒部31の貫通穴31aと整合させ、それらの穴513a,31aにネジ60を挿入して、ネジ60を締め付けることにより、インナーパイプ30に固定される。加熱調理器から立ち上がる煙は、吸込部511から吸引され、中間部512内を通り、装着部513から出て、インナーパイプ30内に流れる。
【0042】
図1Bおよび
図5に示すように、底壁52は、中間部512の外面から径方向外方に水平に延びるドーナツ状である。周壁53は、底壁52の径方向外端から上方に延びる円筒状であり、装着部513よりも径方向外方に位置している。周壁53の内径は、昇降ダクト部材20の外径よりも大きい。
【0043】
突起部54は、周壁53と一体形成されており、周壁53の内面から径方向内方に延びている。突起部54は、例えば円柱状のピンである。本実施形態では、複数の突起部54(3つの突起部54)が、周壁53の周方向に互いに離隔して設けられている。
【0044】
図7に示すように、昇降ダクト部材20と排ガス吸引筒50とを接続する際には、まず、昇降ダクト部材20の第一溝部21a内に突起部54が挿入されるように、周壁53の内側に昇降ダクト部材20を配置する。次に、排ガス吸引筒50を回転させる。これにより、突起部54が、第二溝部21bを通って第三溝部21c内に嵌まる。なお、
図7では、溝21内に突起部54が配置された状態を明確に示すために、周壁53の一部を省略している。
【0045】
排ガス吸引筒50から吸引された煙は、インナーパイプ30内を通り、固定ダクト部材10内に流れる。排ガス吸引筒50が、昇降ダクト部材20およびインナーパイプ30と接続されることにより、インナーパイプ30および排ガス吸引筒50が、昇降ダクト部材20と一緒に上下にスライド可能になる。
【0046】
周壁53の内径は、昇降ダクト部材20の外径よりも大きいため、
図7に示すように、周壁53の内面と昇降ダクト部材20の外面との間には隙間S2が存在している。また、昇降ダクト部材20の下端は、底壁52の上面よりも上方に位置しており、昇降ダクト部材20の下端と底壁52の上面との間には隙間S3が存在している。上引き排気装置1000の使用時に、隙間S2から外気が吸引される。隙間S2から吸引された外気は、隙間S3を通って、隙間S1に流れ、昇降ダクト部材20の内面に沿って上昇する。したがって、仮に隙間S1に煙が流れ込んだとしても、吸引された外気によって、煙が昇降ダクト部材20の内面に接触することを防止できる。
【0047】
<2.特徴>
図1Bに示すように、昇降ダクト部材20は、固定手段40を介して固定ダクト部材10に接続されているため、昇降ダクト部材20の取り外しには手間が掛かる。そこで、昇降ダクト部材20内にインナーパイプ30を配置することにより、吸引された少なくとも一部の煙、好ましくはほぼ全ての煙がインナーパイプ30内を流れるため、昇降ダクト部材20の内面に沿って流れる煙の量を減らすことができる。したがって、インナーパイプ30の長さ分にわたって、昇降ダクト部材20の内面に付着する汚れを低減できる。インナーパイプ30は、昇降ダクト部材20から取り外すことができるため、簡単に洗浄できる。昇降ダクト部材20の内面の汚れを低減できることにより、昇降ダクト部材20を上昇させたときに、固定ダクト部材10の外面に付着する汚れも低減できる。また、煙に含まれる油の多くはインナーパイプ30の内面に付着するため、固定ダクト部材10内に流入する煙に含まれる油の量は減ることになる。したがって、固定ダクト部材10の内面に付着する汚れも低減できる。
【0048】
図1Bに示すように、昇降ダクト部材20が最下位置にあるときに、インナーパイプ30の出口(上方筒部32の上端)が固定ダクト部材10内に挿入されていることにより、インナーパイプ30から排出された煙が、昇降ダクト部材20の内面に接触することがない。これにより、昇降ダクト部材20の内面に付着する汚れを低減できる。
【0049】
図1Bに示すように、インナーパイプ30の上方筒部32の外径を、下方筒部31の外径よりも小さくすることにより、上方筒部32の外面と昇降ダクト部材20の内面との間に、固定ダクト部材10を挿入可能な隙間S1を設けることができる。そして、
図2Bに示すように、昇降ダクト部材20を最上位置まで上昇させたときに、上方筒部32は、その上下方向全長にわたって、固定ダクト部材10と重なることができる。このように、固定ダクト部材10を挿入可能な隙間S1を設けることにより、昇降ダクト部材20を昇降させるときに、昇降ダクト部材20およびインナーパイプ30が固定ダクト部材10と干渉することがないため、昇降ダクト部材20およびインナーパイプ30をスムーズに昇降させることができる。
【0050】
図1Bに示すように、インナーパイプ30の下方筒部31の内径を、上方筒部32の内径よりも大きくすることにより、広範囲にわたって煙を吸引できる。
【0051】
図1Bに示すように、下方筒部31と上方筒部32との間の接続部分を、上方に向けて次第に縮径するテーパ部33とすることにより、インナーパイプ30内の空気の流れをスムーズにすることができる。
【0052】
図1Bに示すように、吸引ダクト100が排ガス吸引筒50を備えていることにより、効率的に煙を吸引できる。
【0053】
図1Bに示すように、排ガス吸引筒50がインナーパイプ30と接続されていることにより、吸引ダクト100の清掃時に、昇降ダクト部材20から、インナーパイプ30と排ガス吸引筒50とを一緒に取り外すことができる。これにより、インナーパイプ30および排ガス吸引筒50の清掃に掛かる手間を減らすことができる。また、排ガス吸引筒50がインナーパイプ30と着脱可能に接続されていることにより、排ガス吸引筒50とインナーパイプ30とを分離して洗うことができるため、排ガス吸引筒50およびインナーパイプ30が洗いやすくなる。
【0054】
図6に示すように、排ガス吸引筒50がインナーパイプ30にネジ60によって取り付けられていることにより、昇降ダクト部材20を昇降させる際に、排ガス吸引筒50がインナーパイプ30から外れてしまうことを防止できる。また、昇降ダクト部材20から、排ガス吸引筒50およびインナーパイプ30を取り外すときに、不意にインナーパイプ30と排ガス吸引筒50とが分離し、一方が落下して壊れてしまうことがない。また、洗浄時には、ネジ60を取り外して、排ガス吸引筒50とインナーパイプ30とを分離することができるため、排ガス吸引筒50およびインナーパイプ30が洗いやすくなる。
【0055】
図6に示すように、排ガス吸引筒50の装着部513がインナーパイプ30の内部に挿入されていることにより、排ガス吸引筒50から排出されたすべての煙が、インナーパイプ30内に流れる。したがって、インナーパイプ30の外面と昇降ダクト部材20の内面との間の隙間S1に、煙がほとんどまたは全く流れなくなるため、昇降ダクト部材20の内面に付着する汚れを低減できる。
【0056】
図7に示すように、突起部54が昇降ダクト部材20の逆L字型の溝21に挿入されることにより、排ガス吸引筒50を昇降ダクト部材20と接続できると共に、昇降ダクト部材20から、排ガス吸引筒50を簡単に取り外すことができる。
【0057】
図7に示すように、溝21が、第二溝部21bから下方に延びる第三溝部21cを有していることにより、突起部54が一旦第三溝部21c内に配置されると、昇降ダクト部材20および排ガス吸引筒50は、相対回転不能になる。これにより、上引き排気装置1000の使用時に、排ガス吸引筒50が、昇降ダクト部材20から外れることを防止できる。
【0058】
<3.変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に、本発明の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、単独で、または、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせて、上記実施形態に適用できる。
【0059】
(1)吸引ダクト100は、排ガス吸引筒50を備えていなくてもよい。この場合、例えば、インナーパイプ30の外面に、径方向外方に延びる円柱状の突起部を設け、当該突起部を、突起部54と同様の方法により、昇降ダクト部材20の溝21に挿入することで、インナーパイプ30を昇降ダクト部材20に接続できる。吸引ダクト100が排ガス吸引筒50を備えていなくても、昇降ダクト部材20内にインナーパイプ30が挿入されていれば、煙の少なくとも一部はインナーパイプ30を流れるため、昇降ダクト部材20の内面に沿って流れる煙の量を減らすことができ、したがって、昇降ダクト部材20の内面に付着する汚れを低減できる。
【0060】
(2)吸引ダクト100は、昇降ダクト部材20を備えていなくてもよい。この実施形態では、ダクト部材は固定ダクト部材10のみから成り、ダクト部材は上下方向に伸縮しない。インナーパイプ30は、固定ダクト部材10内に配置される。排ガス吸引筒50は、例えば、固定ダクト部材10の下部に、溝21と同様の構造の溝を設け、当該溝に、突起部54を挿入することによって、固定ダクト部材10に着脱可能に接続できる。インナーパイプ30が固定ダクト部材10内に配置されていることにより、吸引された少なくとも一部の煙、好ましくはほぼ全ての煙がインナーパイプ30内を流れるため、固定ダクト部材10の内面に沿って流れる煙の量を減らすことができる。これにより、固定ダクト部材10の内面に付着する汚れを低減できる。インナーパイプ30は、固定ダクト部材10から取り外すことができるため、簡単に洗浄できる。
【0061】
(3)吸引ダクト100は、昇降ダクト部材20および排ガス吸引筒50を備えていなくてもよい。この実施形態では、ダクト部材は固定ダクト部材10のみから成り、ダクト部材は上下方向に伸縮しない。インナーパイプ30は、固定ダクト部材10内に配置され、固定ダクト部材10に接続できる。例えば、固定ダクト部材10の下部に、溝21と同様の構造の溝を設けると共に、インナーパイプ30の外面に、径方向外方に延びる円柱状の突起部を設け、当該突起部を、突起部54と同様の方法により、固定ダクト部材10の下部の溝に挿入することで、インナーパイプ30を固定ダクト部材10に着脱可能に接続できる。インナーパイプ30が固定ダクト部材10内に配置されていることにより、吸引された少なくとも一部の煙、好ましくはほぼ全ての煙がインナーパイプ30内を流れるため、固定ダクト部材10の内面に沿って流れる煙の量を減らすことができる。これにより、固定ダクト部材10の内面に付着する汚れを低減できる。インナーパイプ30は、固定ダクト部材10から取り外すことができるため、簡単に洗浄できる。
【0062】
(4)インナーパイプ30は、上下方向全長にわたって同一の外径および同一の内径を有する直管型(寸胴型)であってもよい。
【0063】
(5)昇降ダクト部材20を最上位置まで上昇させた際に、インナーパイプ30は、その上下方向全長にわたって、固定ダクト部材10の内部に挿入されてもよい。
【0064】
(6)インナーパイプ30と排ガス吸引筒50との接続は、ネジ60を用いた接続に限定されず、例えば、ネジ60に代わりにピンを使用してもよい。あるいは、ネジ60やピンなどの接続部材を使用せず、単に、排ガス吸引筒50の装着部513に、インナーパイプ30の下方筒部31を被せるだけであってもよい。
【0065】
(7)インナーパイプ30と排ガス吸引筒50は、例えば溶接によって、分離不能に一体形成されていてもよい。
【0066】
(8)各突起部54は、周壁53と一体形成されておらず、周壁53に着脱可能であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 吸引ダクト
10 固定ダクト部材(ダクト部材)
20 昇降ダクト部材(ダクト部材)
21 溝
30 インナーパイプ
31 下方筒部(インナーパイプの下方部分)
32 上方筒部(インナーパイプの上方部分)
33 テーパ部
50 排ガス吸引筒
54 突起部
60 ネジ
1000 上引き排気装置