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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066573
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車載制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/00 20060101AFI20240509BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H9/54 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175998
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 紳司
(72)【発明者】
【氏名】川野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宏和
【テーマコード(参考)】
5G034
【Fターム(参考)】
5G034AC20
(57)【要約】
【課題】装置のコスト低減とコンタクタの溶着の有無の判断にかかる検出時間の短縮とを図る。
【解決手段】車載制御装置1は、コンタクタ2の励磁コイル2aと励磁コイル2aに電力を供給する電源5とを繋ぐとともに、電源5の高電圧側と励磁コイル2aとの間に介装された開閉器6と、励磁コイル2aの開閉器6側に設けられた出力端子SIG-2と、を有するコンタクタ駆動回路3と、開閉器6に信号を入力することで励磁コイル2aを通電させてコンタクタ2をオン状態とし、開閉器6への信号の入力を停止することで励磁コイル2aへの通電を遮断してコンタクタ2をオフ状態とする制御部4Xと、制御部4Xによりコンタクタ2がオフ状態に切り替えられた際に、出力端子SIG-2から伝達された端子電圧Vtに基づき、コンタクタ2の溶着の有無を判断する判断部4Yと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクタの励磁コイルと前記励磁コイルに電力を供給する電源とを繋ぐとともに、前記電源の高電圧側と前記励磁コイルとの間に介装された開閉器と、前記励磁コイルの前記開閉器側に設けられた出力端子と、を有するコンタクタ駆動回路と、
前記開閉器に信号を入力することで前記励磁コイルを通電させて前記コンタクタをオン状態とし、前記開閉器への前記信号の入力を停止することで前記励磁コイルへの通電を遮断して前記コンタクタをオフ状態とする制御部と、
前記制御部により前記コンタクタがオフ状態に切り替えられた際に、前記出力端子から伝達された端子電圧に基づき、前記コンタクタの溶着の有無を判断する判断部と、を備えた
ことを特徴とする、車載制御装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記オフ状態に切り替えられた時点から前記端子電圧が所定の閾値電圧に到達するまでの閾値到達時間を測定し、前記閾値到達時間が所定の判定時間以上である場合に前記コンタクタの溶着有りと判断し、前記閾値到達閾値が前記判定時間よりも短い場合に前記コンタクタの溶着無しと判断する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記コンタクタは、車載の駆動用電源の高電圧回路を断接するものであり、
前記車載制御装置は、
前記コンタクタの溶着の可能性の有無を前記高電圧回路の使用後に判定する判定部と、
前記判定部により前記コンタクタの溶着の可能性があると判定された場合に、前記コンタクタのオンオフを所定時間または所定回数繰り返す振動制御を実施する振動制御部と、を備え、
前記振動制御部は、前記振動制御の実施中に、前記判断部により前記コンタクタの溶着無しと判断された場合には、前記振動制御を終了する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項4】
前記コンタクタは、車載の駆動用電源の高電圧回路を断接するものであり、
前記車載制御装置は、
前記コンタクタの溶着の可能性の有無を前記高電圧回路の使用後に判定する判定部と、
前記判定部により前記コンタクタの溶着の可能性があると判定された場合に、前記コンタクタのオンオフを所定時間または所定回数繰り返す振動制御を実施する振動制御部と、を備え、
前記振動制御部は、前記振動制御の実施中に、前記判断部により前記コンタクタの溶着無しと判断された場合には、前記振動制御を終了する
ことを特徴とする、請求項2に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記高電圧回路には、前記コンタクタを介して前記駆動用電源に接続されるコンデンサが設けられ、
前記判定部は、前記コンデンサの電圧に基づいて前記コンタクタの溶着の可能性の有無を判定する
ことを特徴とする、請求項3に記載の車載制御装置。
【請求項6】
前記高電圧回路には、前記コンタクタを介して前記駆動用電源に接続されるコンデンサが設けられ、
前記判定部は、前記コンデンサの電圧に基づいて前記コンタクタの溶着の可能性の有無を判定する
ことを特徴とする、請求項4に記載の車載制御装置。
【請求項7】
前記高電圧回路には、前記コンタクタを介して前記駆動用電源に接続されるコンデンサが設けられ、
前記判定部は、前記振動制御部による前記振動制御の実施後に、前記コンデンサの電圧に基づいて前記コンタクタの溶着の可能性の有無を再度判定する
ことを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の車載制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、コンタクタを制御する車載制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載の電気回路(例えば、電源系回路)には、その通電を断接するためのコンタクタと呼ばれる電磁接触器が設けられる。コンタクタは、内部に励磁コイルを備え、励磁コイルが接続されたコンタクタ駆動回路への通電が車載制御装置により制御されることでオンオフが制御される。しかし、コンタクタの接点が溶着すると、コンタクタ駆動回路の通電状態に関わらず、コンタクタの接点同士が接触された状態が維持されてしまい、上記電気回路の通電を遮断できなくなることが知られている。
【0003】
このため、コンタクタを駆動するだけでなくコンタクタの溶着を検出する装置として、例えば、特許文献1には、コンタクタ駆動回路と溶着検出回路という二つの回路を備えた装置(溶着検出装置)が開示されている。特許文献1の装置では、コンタクタに対する駆動信号がオフとされたときに、二つの回路のそれぞれに設けられたトランジスタ(開閉器)へ送られる信号が切り替えられて、コンタクタの溶着が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5370553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の装置では、コンタクタ駆動回路と溶着検出回路とが別々に設けられているため、装置の構成に係るコストが高くなる。また、特許文献1の装置では、コンタクタの溶着を判断(検出)するにあたり、二つの開閉器を制御する必要があるため、溶着の有無の判断にかかる検出時間が増加する。
【0006】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、装置のコスト低減とコンタクタの溶着の有無の判断にかかる検出時間の短縮との双方を図ることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の車載制御装置は、以下に開示する態様又は適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
ここで開示する車載制御装置は、コンタクタの励磁コイルと前記励磁コイルに電力を供給する電源とを繋ぐとともに、前記電源の高電圧側と前記励磁コイルとの間に介装された開閉器と、前記励磁コイルの前記開閉器側に設けられた出力端子と、を有するコンタクタ駆動回路と、前記開閉器に信号を入力することで前記励磁コイルを通電させて前記コンタクタをオン状態とし、前記開閉器への前記信号の入力を停止することで前記励磁コイルへの通電を遮断して前記コンタクタをオフ状態とする制御部と、前記制御部により前記コンタクタがオフ状態に切り替えられた際に、前記出力端子から伝達された端子電圧に基づき、前記コンタクタの溶着の有無を判断する判断部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
開示の車載制御装置によれば、装置のコスト低減とコンタクタの溶着の有無の判断にかかる検出時間の短縮との双方を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る車載制御装置の構成図である。
図2】(a)及び(b)は図1の車載制御装置により制御されるコンタクタの断面模式図である。
図3図1の車載制御装置によりコンタクタがオフ状態に切り替えられた際の端子電圧の挙動を説明するための図である。
図4図1の車載制御装置で実施される制御を説明するためのフローチャート例である。
図5】第二実施形態に係る車載制御装置が適用された車両の高電圧回路の回路図と車載制御装置の構成図とを併せて示す図である。
図6図5の車載制御装置で実施される高電圧回路使用後の制御を説明するためのフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態としての車載制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
[1.第一実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態の車載制御装置1(以下、単に「制御装置1」と呼ぶ)を図1図4を参照しつつ説明する。制御装置1は、車載のコンタクタ2のオンオフを制御するとともに、コンタクタ2がオフ状態に切り替えられた際にコンタクタ2の溶着の有無を判断するものである。
【0012】
本実施形態において、制御装置1は、図示しないバッテリを動力源とする駆動用モータが搭載された電動車両(電気自動車,ハイブリッド自動車,プラグインハイブリッド自動車等)に適用されるものとする。また、制御装置1は、バッテリと駆動用モータとの間の高電圧回路に介装されたコンタクタ2を制御するものとする。制御装置1は、コンタクタ2のオンオフを制御するとともに、車両の主電源スイッチ10がオフ操作された際にコンタクタ2に関して溶着の有無を判断する。また、本実施形態の制御装置1は、コンタクタ2の溶着有りと判断した場合に、車両のフェールセーフ処理を実施する。
【0013】
コンタクタ2は、上述の高電圧回路の断接を切り替える電子部品である。コンタクタ2は、図2(a)及び(b)に示すように、励磁コイル2aと固定鉄心2bと可動鉄心2cと固定接点2dと可動接点2eとを備える。励磁コイル2aは、制御装置1の後述するコンタクタ駆動回路3に介装されるコイルであり、電力が供給されることで励磁される。固定鉄心2bは、励磁コイル2aの内部に固定され、可動鉄心2cは、固定鉄心2bに対して接近又は離隔する方向に相対移動可能に設けられる。可動鉄心2cには、可動接点2eが固定され、固定接点2dは、上述の高電圧回路に介装される。
【0014】
コンタクタ2は、励磁コイル2aが励磁されることで、図2(a)に示すように、可動鉄心2cが固定鉄心2b側に引き寄せられて、固定鉄心2bに接触する。これに伴い、可動接点2eが固定接点2dに接触し、固定接点2d間の通電を可能にする。一方で、コンタクタ2は、励磁コイル2aが消磁されることで、図2(b)に示すように、可動鉄心2cがバネの付勢力によって固定鉄心2bから離隔する。これに伴い、可動接点2eが固定接点2dから離隔し、固定接点2d間の通電を遮断する。以下、励磁コイル2aが励磁されている状態をコンタクタ2のオン状態と呼び、励磁コイル2aが消磁されている状態をコンタクタ2のオフ状態と呼ぶ。
【0015】
図1に示すように、制御装置1には、コンタクタ2の励磁コイル2aと電源部5(電源)とを繋ぐためのコンタクタ駆動回路3、及び、コンタクタ駆動回路3の通電を制御するとともにコンタクタ2の溶着の有無を判断するマイコン(CPU)4が設けられている。マイコン4の入力側には、コンタクタ駆動回路3の後述する出力端子SIG-2と主電源スイッチ10(パワースイッチやエンジンスイッチ)とが接続される。主電源スイッチ10からは、ユーザによって主電源スイッチ10がオン操作されたかオフ操作されたかの情報(信号)がマイコン4に伝達される。また、マイコン4の出力側には、コンタクタ駆動回路3の後述する入力端子SIG-1が接続される。なお、制御装置1には、マイコン4の他に、マイコン4で実施されるプログラムを記録,保存するためのメモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置等(いずれも図示せず)が内蔵され、内部バス(図示せず)を介してこれらが互いに通信可能に接続されてよい。
【0016】
コンタクタ駆動回路3は、上述の通り、コンタクタ2の励磁コイル2aと電源部5とを接続する電気回路である。電源部5の高電圧側と励磁コイル2aとの間、すなわち、励磁コイル2aの高電圧側には、開閉器6が介装される。電源部5は、例えば、12[V]の電源である。電源部5は、例えば、制御装置1の内部に設けられたリチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池などの二次電池であってもよく、或いは、制御装置1の外部に設けられた電源装置(例えば、車載の補機バッテリ)から電力の供給を受ける部分であってもよい。
【0017】
開閉器6は、マイコン4からの信号に応じて、励磁コイル2aと電源部5との間の接続を断接(オンオフ)する電子部品である。開閉器6としては、例えば、トランジスタ,FET,フォトカプラ、或いは、リレーなどが挙げられる。本実施形態において、開閉器6はトランジスタであるものとする。以下、開閉器6をトランジスタ6とも呼ぶ。
【0018】
トランジスタ6のベースには、マイコン4からの信号が入力される入力端子SIG-1が設けられる。また、励磁コイル2aのトランジスタ6側には、励磁コイル2aのトランジスタ6側の端子電圧Vtをマイコン4に出力する出力端子SIG-2が設けられる。
【0019】
また、コンタクタ駆動回路3には、励磁コイル2aと並列に還流ダイオード7が接続される。還流ダイオード7は、トランジスタ6がオン状態からオフ状態となるときに、励磁コイル2aに発生する逆起電力に基づく電流を励磁コイル2a及び還流ダイオード7の閉回路で流すために設けられる。これにより、トランジスタ6の破損を防止するとともに励磁コイル2aに励磁電流が持続して流れる。
【0020】
なお、図1に示すコンタクタ駆動回路3のように、出力端子SIG-2から出力される電圧を、マイコン4の許容電圧(例えば、5[V])に降圧するための配線及び降圧用の抵抗が設けられていてもよい。言い換えれば、マイコン4の許容電圧が高い場合には、図1に示すような出力端子SIG-2の高電圧側及び低電圧側に接続される配線や抵抗は省略されてよい。この場合、出力端子SIG-2は、トランジスタ6と励磁コイル2aとを接続する配線(すなわち、励磁コイル2aのトランジスタ6側)に直接接続されてよい。
【0021】
また、コンタクタ駆動回路3には、図1に示すように、コンタクタ駆動回路3に設けられる他の抵抗と比較して高い抵抗値を持つ抵抗が、トランジスタ6のエミッタ及びコレクタと並列に設けられてもよい。コンタクタ駆動回路3には、還流ダイオード7と並列且つ励磁コイル2aと直列になるように抵抗が接続されてもよい。
【0022】
マイコン4には、上述の制御及び判断を実施するための要素として、制御部4X及び判断部4Yが設けられる。さらに、本実施形態のマイコン4には、上述のフェールセーフ処理を実施するための要素として、処理部4Zが設けられる。これらの要素は、マイコン4の機能を便宜的に分類して示したものであり、ソフトウェアとしてプログラミングされたものである。なお、これらの各要素は、例えば、マイコン4とは別の電子回路(ハードウェア)によって実装されてもよい。或いは、これらの機能のうちの一部がハードウェアとして実装され、他部がソフトウェアとして実装されてもよい。
【0023】
制御部4Xは、コンタクタ2のオンオフを制御する。具体的には、制御部4Xは、入力端子SIG-1からトランジスタ6のベースに信号を入力することで励磁コイル2aを通電させてコンタクタ2をオン状態とする。また、制御部4Xは、トランジスタ6のベースへの信号の入力を停止することで励磁コイル2aへの通電を遮断してコンタクタ2をオフ状態とする。
【0024】
本実施形態において、制御部4Xは、主電源スイッチ10から伝達された情報に基づきコンタクタ2のオンオフを制御する。具体的には、制御部4Xは、主電源スイッチ10がオフ操作からオン操作に切り替えられたことを示す信号を取得した場合、コンタクタ2をオン状態とする。また、制御部4Xは、主電源スイッチ10がオン状態からオフ状態に切り替えられたことを示す信号を取得した場合、コンタクタ2をオフ状態とする。この際、制御部4Xは、コンタクタ2がオン状態からオフ状態に切り替えられたことを示す信号を判断部4Yに伝達する。
【0025】
判断部4Yは、コンタクタ2に関し溶着判断を実施するものである。具体的には、判断部4Yは、制御部4Xからコンタクタ2がオフ状態に切り替えられたことを示す信号を取得した場合に、出力端子SIG-2から伝達された端子電圧Vtに基づき、コンタクタ2の溶着の有無を判断する。また、判断部4Yは、コンタクタ2の溶着有りを判断した場合に、判断結果を処理部4Zに伝達する。
【0026】
以下、コンタクタ2がオフ状態に切り替えられた際に、出力端子SIG-2から出力される端子電圧Vtの挙動について詳述する。図3に示すように、端子電圧Vtは、コンタクタ2がオフ状態に切り替えられると、すなわち、トランジスタ6(TR)がオン状態(ON)からオフ状態(OFF)に切り替えられると、コンタクタ2がオン状態であったときの値Vtp(>0[V])から急降下する。その後、励磁コイル2aに発生する逆起電力により端子電圧Vtは負の値となり、励磁コイル2aの磁気エネルギーの放出が完了すると0[V]に収束する。
【0027】
このとき、コンタクタ2の溶着が生じていなければ、図2(b)に示すように、可動鉄心2cがバネの付勢力によって固定鉄心2bから離隔し、可動鉄心2cと固定鉄心2bとの間に隙間が形成される。このため、励磁コイル2aのインダクタンス及び磁気エネルギーは、可動鉄心2cが固定鉄心2bに当接している状態、すなわち、図2(a)に示す状態よりも小さくなる。
【0028】
一方で、コンタクタ2の溶着が生じていた場合、励磁コイル2aが消磁(すなわち、コンタクタ2がオフ状態と)されても可動接点2eが固定接点2dに接触したままとなる。このため、図2(a)に示すような、可動鉄心2cが固定鉄心2dに接触した状態が維持される。これにより、励磁コイル2aのインダクタンス及び磁気エネルギーは、図2(b)に示す状態よりも大きくなる。このように、コンタクタ2の溶着時と非溶着時(コンタクタ2の正常時)とでは、励磁コイル2aのインダクタンス及び磁気エネルギーに差が生じる。このため、コンタクタ2の溶着時の端子電圧Vtは、図4に破線で示すように、コンタクタ2の非溶着時(図4の実線)よりも、遅れて0[V]に収束する。
【0029】
判断部4Yは、このようなコンタクタ2の内部特性(インダクタンス)を利用して溶着の有無を判断する。具体的には、判断部4Yは、コンタクタ2がオフ状態に切り替えられた時点から端子電圧Vtが所定の閾値電圧Vtthに到達するまでの閾値到達時間Ttを測定する。そして、判断部4Yは、測定した閾値到達時間Ttが所定の判定時間Ttj以上である場合にコンタクタ2の溶着有りと判断する。一方で、判断部4Yは、閾値到達時間Ttが判定時間Ttjよりも短い場合にコンタクタ2の溶着無しと判断する。
【0030】
ここで、閾値電圧Vtthは、0[V]よりも低く、且つ、励磁コイル2aに逆起電力が発生しているときに出力され得る端子電圧Vtの最小値Vtminよりも高い値に設定される。閾値電圧Vtthは、好ましくは、0[V]よりも若干低い値に設定される。判定時間Ttjは、コンタクタ2の非溶着時の閾値到達時間Ttよりも長く、溶着時の閾値到達時間Ttよりも短い値に設定される。
【0031】
処理部4Zは、判断部4Yからコンタクタ2の溶着有りを判断したことを示す信号を取得した場合に、車両のフェールセーフ処理を実行する。処理部4Zは、フェールセーフ処理の実行として、車両を走行可能状態とすることを禁止してもよく、車載の図示しない警報装置を作動させてもよい。
【0032】
[1-2.フローチャート]
図4は、制御装置1で実施される主電源スイッチ10がオフ操作された直後の制御を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、主電源スイッチ10がオフ操作されたときに開始され、上述の溶着判断及びフェールセーフ処理を実施する。
【0033】
ステップA1では、トランジスタ6への信号の入力が停止(TR:OFF)される。これにより、コンタクタ2がオン状態からオフ状態に切り替わる。ステップA2では、閾値到達時間Ttが測定され、続くステップA3では、測定された閾値到達時間Ttが、判定閾値Ttj以上であるか否かが判定される。ステップA3において、閾値到達時間Ttが判定閾値Ttj未満であると判定された場合には、コンタクタ2の溶着無しと判断されて、このフローを終了する。一方で、ステップA3で閾値到達時間Ttが判定閾値Ttj以上であると判定された場合には、コンタクタ2の溶着有りと判断され、後続するステップA4でフェールセーフ処理が実施されてこのフローを終了する。
【0034】
[1-3.効果]
(1)上述した制御装置1では、コンタクタ2のオンオフを制御する回路及びコンタクタ2の溶着の有無を判断する回路として、単一のコンタクタ駆動回路3のみが設けられており、開閉器6(例えばトランジスタ6)をオフ状態に切り替えたタイミングで溶着判断をしている。言い換えれば、上述した制御装置1では、励磁コイル2aの高電圧側にトランジスタ6を設け、出力端子SIG-2が励磁コイル2aのトランジスタ6側に設けるとともに、溶着判断のタイミングをオフ状態への切り替え時とすることで、単一のコンタクタ駆動回路3のみで、コンタクタ2のオンオフの制御とコンタクタ2の溶着の有無の判断とを実施できる。このように、上述した制御装置1では、特許文献1のように、コンタクタ駆動用の回路とコンタクタの溶着検出用の回路とを個別に設けることなく、単一の回路でコンタクタ2のオンオフの制御とコンタクタ2の溶着の有無の判断との双方を実施できるため、装置のコスト低減を図れる。また、コンタクタ駆動回路3は、単一のトランジスタ6をオフ状態に切り替えたタイミングでコンタクタ2の溶着の有無を判断できるため、コンタクタ2の溶着の有無の判断にかかる検出時間を短縮できる。
【0035】
(2)上述した制御装置1では、コンタクタ2の溶着の有無が、コンタクタ2がオフ状態に切り替えられた時点から端子電圧Vtが閾値電圧Vtthに到達するまでの閾値到達時間Ttに基づき判断される。上述の通り、コンタクタ2の溶着時と非溶着時とでは、励磁コイル2aのインダクタンス及び磁気エネルギーに差が生じる。このため、コンタクタ2の溶着時と非溶着時とでは、磁気エネルギーの放出にかかる時間が異なる。制御装置1は、このようなコンタクタ2の内部特性を利用して、励磁コイル2aへの通電の遮断後の閾値到達時間Ttに基づいてコンタクタ2の溶着の有無を判断することで、簡単かつ適切にコンタクタ2の溶着の有無を判断できる。
【0036】
[2.第二実施形態]
第一実施形態では、コンタクタ2の内部特性を利用した溶着判定(判断)方法のみを用いて、コンタクタ2の溶着の有無を判断した。ここで、コンタクタの溶着の有無を判定する方法としては、コンタクタの内部特性を利用した判定方法の他に、コンタクタが断接する回路(高電圧回路)に設けられたコンデンサの電圧(コンデンサ電圧Vc)から間接的にコンタクタの溶着の有無を判定する判定方法が考えられる。
【0037】
後者の判定方法は、前者の判定方法と比較して、外乱の影響を受けにくく、精度が高い点で利点がある。一方で、後者の判定方法では、コンデンサ電圧Vcの読取り異常により、誤って溶着有りと判定する可能性がある。そこで、第二実施形態の制御装置1′は、これら二つの判定方法を組み合わせて、コンタクタの溶着の有無を判定(判断)する。
【0038】
また、コンタクタがオフ状態とされても可動接点と固定接点との接触が解消されない原因には、溶着だけでなく、コンタクタ内の部品の位置のずれにより一時的にコンタクタの接点同士が接触状態となってしまっている場合がある。このような一過性の接点同士の接触状態は、コンタクタ内の部品の位置が元の(正常な)位置に戻れば、解消され得る。そこで、第二実施形態の制御装置1′では、上述のずれに起因する接点同士の一時的な接触状態の解消を図る制御として、コンタクタのオンオフを所定時間または所定回数繰り返す振動制御を実施する。
【0039】
以下、図5及び図6を参照して、第二実施形態に係る制御装置1′について説明する。なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる構成をおもに説明し、第一実施形態の構成と対応する構成については図1の符号にダッシュ(′)を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
[2-1.全体構成]
図5は、第二実施形態に係る制御装置1′が適用された車両の高電圧回路の回路図と制御装置1′の構成図とを併せて示す図である。本実施形態において、制御装置1′は、バッテリ20(駆動用電源)を動力源とする駆動用モータ30が搭載された電動車両(電気自動車,ハイブリッド自動車,プラグインハイブリッド自動車等)に適用される。
【0041】
図5に示すように、バッテリ20とインバータ40との間の高電圧回路(直流回路)には、正極側コンタクタ2Pと負極側コンタクタ2Nとプリチャージコンタクタ2Preという三つのコンタクタ2′が介装される。制御装置1′は、これら三つのコンタクタ2′のオンオフ状態を制御するとともに、高電圧回路の使用後に三つのコンタクタ2′の少なくとも一つに対して溶着の可能性の有無を判定する。本実施形態において、制御装置1′は、正極側コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無を判定するものとする。以下、正極側コンタクタ2Pを「対象コンタクタ2P」とも呼ぶ。なお、「高電圧回路の使用後」とは、例えば、車両の走行後や外部充電器からのバッテリ20への充電後や外部給電後など、バッテリ20への充放電を含む車両の一連の処理(一起動周期)の終了後を意味する。
【0042】
バッテリ20は、リチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池などの二次電池であり、例えば車両の床下に配置される。バッテリ20を含むバッテリパック21には、上述の三つのコンタクタ2′が配設される。
【0043】
正極側コンタクタ2Pは、高電圧回路の正極側の電線Lp(以下、「正極側電線Lp」と呼ぶ)に介装される。負極側コンタクタ2Nは、高電圧回路の負極側の電線Ln(以下、「負極側電線Ln」と呼ぶ)に介装される。プリチャージコンタクタ2Preは、正極側コンタクタ2Pに並列接続されるとともにプリチャージ抵抗器22(抵抗器)と直列接続される。なお、各コンタクタ2′は第一実施形態のコンタクタ2と同様に構成される。
【0044】
駆動用モータ30は、バッテリ20の電力で車輪を回転駆動する機能と、車輪の慣性トルクを利用した発電によって電力を回生する機能とを兼ね備えた交流電動発電機である。インバータ40は、例えば、インバータ回路41と、平滑化コンデンサ42(以下、単に「コンデンサ42」と呼ぶ)と、放電抵抗43と、放電スイッチ44と、電圧計45と、MCU(Motor Control Unit)46とを含んで構成される。
【0045】
インバータ回路41は、高電圧回路の正極側電線Lp及び負極側電線Lnにそれぞれ接続される。インバータ回路41は、複数のスイッチング素子〔例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)〕を含む三相ブリッジ回路であり、各スイッチング素子の接続状態が断続的に切り替えられることで、駆動用モータ30を駆動するための交流電力が生成される。
【0046】
コンデンサ42は、インバータ回路41でのスイッチングによって発生するノイズを平滑化するものであり、インバータ回路41と並列に正極側電線Lp及び負極側電線Lnにそれぞれ接続される。放電抵抗43は、高電圧回路の使用後にコンデンサ42に蓄えられた電荷を放電するものであり、コンデンサ42と並列に接続される。放電スイッチ44は、高電圧回路と放電抵抗43との接続を断接するものであり、放電抵抗43と直列に接続される。
【0047】
電圧計45は、コンデンサ電圧Vcを測定するものであり、コンデンサ42と並列に接続される。MCU46は、駆動用モータ30への出力要求に基づいてインバータ回路41を制御するとともに、制御装置1′から出力される信号に基づいて放電スイッチ44のオンオフ状態を制御する。また、MCU46は、電圧計45によって測定されたコンデンサ電圧Vcを制御装置1′に送信する。
【0048】
制御装置1′には、第一実施形態の制御装置1と同様に、コンタクタ駆動回路3′及びマイコン(CPU)4′が設けられている。なお、図5では、便宜的に、正極側コンタクタ2Pに繋がるコンタクタ駆動回路3′のみを示しているが、制御装置1′には、負極側コンタクタ2N及びプリチャージコンタクタ2Preのそれぞれに繋がるコンタクタ駆動回路3′が設けられてよい。マイコン4′の入力側には、各コンタクタ2′に繋がるコンタクタ駆動回路3′の出力端子SIG-2′と主電源スイッチ10′とMCU46とが接続される。また、マイコン4′の出力側には、各コンタクタ2′に繋がるコンタクタ駆動回路3′の入力端子SIG-1′とMCU46とが接続される。
【0049】
[2-2.制御概要]
制御装置1′は、上述の通り、高電圧回路の使用後に、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無を判定する。ここで、『対象コンタクタ2Pの溶着の「可能性」の有無を判定する』としているのは、上述の通り、対象コンタクタ2Pがオフ状態とされても可動接点と固定接点との接触が解消されない原因に、対象コンタクタ2Pの接点同士の一時的な接触(すなわち、溶着ではない状態)が含まれるからである。本実施形態において、制御装置1′は、コンデンサ電圧Vcに基づいて対象コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無を判定する。以下、対象コンタクタ2Pに対して溶着の可能性の有無を判定する制御を「溶着判定制御」と呼ぶ。
【0050】
また、制御装置1′は、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性有りと判定した場合に、対象コンタクタ2Pの接点同士の一時的な接触の解消を図る制御として、振動制御を実施する。さらに、制御装置1′は、振動制御を実施する際に、第一実施形態で説明したコンタクタの内部特性を利用した溶着判断を実施する。制御装置1′は、このようにして上述した二種類の判定方法を組み合わせて対象コンタクタ2Pの溶着の有無を判定(判断)するとともに、対象コンタクタ2Pの接点同士の一時的な接触状態の解消を図る。
【0051】
制御装置1′は、具体的に、以下の三種類の制御を択一的に実施する。
(1)溶着判定制御
(2)振動制御
(3)等電圧化制御
また、制御装置1′は、各制御を実施した結果、最終的に、対象コンタクタ2Pが溶着している(溶着有り)と判定した場合に、第一実施形態で説明したフェールセーフ処理を実施する。
【0052】
溶着判定制御は、上述の通り、コンデンサ電圧Vcに基づいて対象コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無を判定する制御である。本実施形態において、制御装置1′は、高電圧回路の使用後及び振動制御の実施後のそれぞれにおいて、この溶着判定制御を実施する。
【0053】
溶着判定制御において、制御装置1′は、所定の判定時間Tcjのあいだ、正極側電線Lpを開状態とするとともに、放電抵抗43を高電圧回路に接続するように制御することで、コンデンサ42を放電可能な状態とする。そして、制御装置1′は、判定時間Tcjの経過後、コンデンサ電圧Vcを検出することで、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無を判定する。判定時間Tcjは、コンデンサ42の放電にかかる所定の時間(1秒程度)よりも長く、コンデンサ42の放電にかかる部品(コンデンサ42や放電抵抗43など)のバラツキを考慮して、例えば2~20秒に設定される。
【0054】
ここで、溶着判定制御により、コンデンサ42が放電可能な状態とされたとき、対象コンタクタ2P及びプリチャージコンタクタ2Preのそれぞれの接点同士が接触していなければ(すなわち、対象コンタクタ2P及びプリチャージコンタクタ2Preが正常であれば)、正極側電線Lpは開状態となるため、コンデンサ42に蓄えられた電荷が放電抵抗43により放電される。これにより、コンデンサ電圧Vcが低下する。一方で、対象コンタクタ2P及びプリチャージコンタクタ2Preの少なくとも一方の接点同士が接触している場合には、対象コンタクタ2P及びプリチャージコンタクタ2Preがオフ状態とされても高電圧回路が閉回路のままとなるため、コンデンサ42に蓄えられた電荷が放電されず、コンデンサ電圧Vcが溶着判定制御の実施前の電圧(例えば、バッテリ電圧Vb)に維持されてしまう。
【0055】
制御装置1′は、判定時間Tcjの経過後に、コンデンサ電圧Vcが所定の判定閾値Vcth以下となった場合には、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性が無い、すなわち、正常であると判定する。また、制御装置1′は、判定時間Tcjの経過後に、コンデンサ電圧Vcが判定閾値Vcthよりも高い場合には、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると判定する。判定閾値Vcthは、例えば、コンデンサ42の放電が正常に行われる状態で判定時間Tcjの経過後に想定されるコンデンサ電圧Vcよりも高い値であって、バッテリ電圧Vbよりも低い値に設定される。
【0056】
振動制御は、溶着判定制御での判定の結果、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると判定された場合に実施される制御である。本実施形態において、溶着判定制御は、上述の通り、高電圧回路の使用後及び振動制御の実施後のそれぞれにおいて実施されるが、振動制御は、高電圧回路の使用後における溶着判定制御での判定の結果、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると判定された場合に実施される。振動制御において、制御装置1′は、対象コンタクタ2Pに接続されるコンタクタ駆動回路3′のトランジスタ6′への信号の入力を断続的に実施することで、対象コンタクタ2Pのオンオフを所定時間または所定回数繰り返す。
【0057】
制御装置1′は、このように、対象コンタクタ2Pの励磁コイル2a′を断続的に通電させることで、電気的に対象コンタクタ2Pの位置ずれの解消を図る。また、制御装置1′は、対象コンタクタ2Pの可動接点を物理的にも振動させることで、対象コンタクタ2P内の部品の位置ずれの解消を図る。
【0058】
振動制御の実施中、制御装置1′は、対象コンタクタ2Pがオフ状態とされる度に、第一実施形態で説明した溶着判断を実施する。制御装置1′は、対象コンタクタ2Pの溶着無しと判断した場合には、対象コンタクタ2Pのオンオフ動作を所定時間または所定回数だけ実施してなくても、振動制御を終了する。なお、オフ状態とされる度に実施する溶着判断にかかる時間は数十ミリ秒程度であることから、振動制御による対象コンタクタ2Pのオンオフの周期は、この判断にかかる時間よりも長く、例えば1~2秒程度に設定されることが好ましい。
【0059】
等電圧化制御は、振動制御の前に実施される制御であり、コンデンサ42をバッテリ20と等電圧化する制御である。この等電圧化制御は、万一、溶着判定制御でコンデンサ42の放電が正常に行われていたにも関わらず、例えばコンデンサ電圧Vcの読取り異常により、「溶着の可能性がある」と誤判定された場合に、後続する振動制御で高電圧回路に突入電流が流れることを防ぐために実施される。
【0060】
等電圧化制御として、制御装置1′は、所定の等電圧化時間Tepのあいだ、プリチャージコンタクタ2Preを介して、コンデンサ42とバッテリ20とを通電させる。これにより、プリチャージコンタクタ2Preに直列接続されたプリチャージ抵抗器22が通電開始時の突入電流を抑制するので、高電圧回路の保護が図られる。なお、等電圧化時間Tepは、コンデンサ42の充電にかかる時間であり、例えば、数百ミリ~1秒に設定される。
【0061】
[2-3.制御構成]
図5に示すように、制御装置1′のマイコン4′には、上述の各制御を実施するための要素として、判定部4A,等電圧化制御部4B,振動制御部4C,再判定部4D,制御部4X′,判断部4Y′及び処理部4Z′が設けられる。これらの要素は、制御装置1′の機能を便宜的に分類して示したものである。これらの各要素は、第一実施形態と同様に、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0062】
判定部4Aは、高電圧回路の使用後に上述の溶着判定制御を実施するものである。具体的には、判定部4Aは、判定時間Tcjのあいだ、放電スイッチ44をオン状態に制御する。これとともに、判定部4Aは、対象コンタクタ2P及びプリチャージコンタクタ2Preをオフ状態とし負極側コンタクタ2Nをオン状態とするように制御部4X′に指示する。また、判定部4Aは、判定時間Tcjの経過後、MCU46を介して電圧計45からコンデンサ電圧Vcを取得する。
【0063】
判定部4Aは、取得したコンデンサ電圧Vcが判定閾値Vcth以下である場合には、対象コンタクタ2Pは正常であると判定して、全てのコンタクタ2′をオフ状態とするように制御部4X′に指示する。一方で、判定部4Aは、取得したコンデンサ電圧Vcが判定閾値Vcthよりも高い場合には、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると判定して、判定結果を等電圧化制御部4B及び振動制御部4Cに伝達する。
【0064】
等電圧化制御部4Bは、判定部4Aから判定結果を受信した場合に、上述の等電圧化制御を実施するものである。具体的には、等電圧化制御部4Bは、等電圧化時間Tepのあいだ、放電スイッチ44をオフ状態に制御する。これとともに、等電圧化制御部4Bは、負極側コンタクタ2N及びプリチャージコンタクタ2Preをオン状態とし対象コンタクタ2Pをオフ状態とするように制御部4X′に指示する。等電圧化制御部4Bは、等電圧化時間Tepの経過後、等電圧化制御が完了したことを振動制御部4Cに伝達する。
【0065】
振動制御部4Cは、判定部4Aから判定結果を受信し、且つ、等電圧化制御部4Bから等電圧化制御の完了の信号を受信した場合に、上述の振動制御を実施するものである。具体的には、振動制御部4Cは、上述の振動制御として、対象コンタクタ2Pのオンオフを所定回数(例えば、数十回)又は所定時間(例えば、数十秒)繰り返すように制御部4X′に指示する。これとともに、振動制御部4Cは、プリチャージコンタクタ2Pre及び負極側コンタクタ2Nをオン状態に維持するように制御部4X′に指示する。これにより、高電圧回路の通電が維持されるため、オンオフ時の突入電流による対象コンタクタ2Pの溶着が抑制される。また、この際、振動制御部4Cは、放電スイッチ44をオフ状態に制御する。
【0066】
振動制御の完了後、振動制御部4Cは、振動制御が完了したことを再判定部4Dに伝達する。また、振動制御部4Cは、判断部4Y′から対象コンタクタ2Pの溶着無しと判断したことを示す信号を受信した場合には、上述の振動制御が途中であってもその振動制御を終了し、振動制御が終了(完了)したことを再判定部4Dに伝達する。
【0067】
再判定部4Dは、振動制御部4Cから振動制御の完了の信号を受信した場合に、判定部4Aと同様に、上述の溶着判定制御を実施するものである。再判定部4Dは、判定時間Tcjの経過後、取得したコンデンサ電圧Vcが判定閾値Vcth以下である場合には、対象コンタクタ2Pは正常であると判定して、全てのコンタクタ2′をオフ状態とするように制御部4X′に指示する。一方で、再判定部4Dは、取得したコンデンサ電圧Vcが判定閾値Vcthよりも高い場合には、対象コンタクタ2Pが溶着故障していると最終判定する。この場合、再判定部4Dは、判定結果を処理部4Z′に伝達する。
【0068】
制御部4X′は、第一実施形態の制御部4Xと同様に、各コンタクタ2′のオンオフを制御する。具体的には、制御部4X′は、各部4A~4Dから伝達された指示に従い各コンタクタ2′のオンオフを制御する。また、制御部4X′は、振動制御部4Cからの指示で対象コンタクタ2Pのオンオフを繰り返す際、対象コンタクタ2Pをオン状態からオフ状態に切り替える度に、対象コンタクタ2Pがオン状態からオフ状態に切り替えられたことを示す信号を判断部4Y′に伝達する。
【0069】
判断部4Y′は、第一実施形態の制御部4Yと同様に、制御部4X′から対象コンタクタ2Pがオフ状態に切り替えられたことを示す信号を取得した場合に、出力端子SIG-2′から伝達された端子電圧Vtに基づき、対象コンタクタ2Pの溶着の有無を判断する。また、判断部4Y′は、対象コンタクタ2Pの溶着無しを判断した場合に、判断結果を振動制御部4Cに伝達する。
【0070】
処理部4Z′は、再判定部4Dから対象コンタクタ2Pが溶着故障していると最終判定したことを示す信号を取得した場合に、車両のフェールセーフ処理を実行する。なお、処理部4Z′は、第一実施形態の処理部4Zと同様の方法で車両のフェールセーフ処理を実行してもよく、第一実施形態の処理部4Zとは異なるフェールセーフ処理を実行してもよい。
【0071】
[2-4.フローチャート]
図6は、制御装置1′で実施される高電圧回路の使用後の処理を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、高電圧回路の使用後、例えば、主電源スイッチ10′がオフ操作されたときに開始され、上述の各種制御及び判定(判断)とフェールセーフ処理とを実施する。
【0072】
ステップB1では、上述の溶着判定制御が実施されてステップB2に進む。ステップB2では、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があるか否かが判定される。ステップB2において、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性がないと判定された場合には、対象コンタクタ2Pは正常であると判定されて、このフローを終了する。一方で、ステップB2で対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると判定された場合には、ステップB3に進む。
【0073】
ステップB3では、上述の等電圧化制御が実施される。その後のステップB4では、上述の振動制御が開始され、ステップB5に進む。ステップB5では、閾値到達時間Ttが測定される。続くステップB6では、測定された閾値到達時間Ttが、判定閾値Ttj以上であるか否かが判定される。なお、ステップB5及びステップB6の処理は、第一実施形態のフローチャートのステップA2及びステップA3の処理に相当する。
【0074】
ここで、例えば、上述したコンデンサ電圧Vcの読取り異常により、誤って対象コンタクタ2Pが溶着の可能性有りと判定されてステップB3へ進んでいた場合、ステップB6で閾値到達時間Ttが判定閾値Ttj未満であると判定され、対象コンタクタ2Pの溶着無しと判断される。すなわち、読取り異常で溶着の可能性有りと判定されたとしても、コンタクタ2′の内部特性を利用した溶着判断により正しい判断がなされる。そして、後続するステップB7をスキップして、すなわち、振動制御を終了して、ステップB8に進む。これにより、不要な振動制御の実施が抑制される。
【0075】
一方で、ステップB6で閾値到達時間Ttが判定閾値Ttj以上であると判定された場合には、対象コンタクタ2Pの溶着有りと判断され、ステップB7に進む。ステップB7では、振動制御が開始されてから所定時間が経過したか、又は、対象コンタクタ2Pのオンオフを所定回数実施したかが判定される。ステップB7の判定が非成立の場合、ステップB5に戻り、ステップB6が非成立となるかステップB7が成立するまで、ステップB5~B7の処理が繰り返される。
【0076】
ここで、ステップB5~B7の処理が繰り返されたことで、すなわち、振動制御が実施されたことで、対象コンタクタ2Pの接点同士の一時的な接触状態が解消されて、ステップB6が非成立となった場合、対象コンタクタ2Pの溶着無しと判断される。そして、後続するステップB7をスキップして、すなわち、振動制御を終了して、ステップB8に進む。これにより、無駄な振動制御の実施が抑制され、振動制御の実施時間が適正化される。
【0077】
一方で、ステップB6が非成立となることなく、振動制御が開始されてから所定時間が経過すると、或いは、対象コンタクタ2Pのオンオフが所定回数実施されると、ステップB7が成立し、ステップB8に進む。
【0078】
ステップB8では、再度、溶着判定制御が実施される。そして、ステップB9に進み、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があるか否かが再度判定される。ステップB9において、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性がないと判定された場合には、対象コンタクタ2Pは正常であると判定されて、このフローを終了する。一方で、ステップB9で対象コンタクタ2Pの溶着の可能性があると最終判定された場合には、対象コンタクタ2Pが溶着故障しているものと判定されて、ステップB10で車両1のフェールセーフ処理が実施されて。このフローを終了する。
【0079】
[2-5.効果]
第二実施形態の制御装置1′においても、第一実施形態の制御装置1から得られる効果の(1)及び(2)と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(3)また、上述した制御装置1′によれば、高電圧回路の使用後、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性がある場合に、振動制御が実施されるため、対象コンタクタ2Pの接点同士の一時的な接触状態の解消を図ることができる。よって、高電圧回路の使用後の活線露出を防ぐことができる。さらには、不要なフェールセーフによって、車両が走行できなくなる状態を防ぐことができる。また、振動制御は、対象コンタクタ2Pそのものを対象として行われるため、上記の接点同士の一時的な接触状態の解消を図るために新たな装置や部品などを設ける必要がなく、車両の複雑化やコストアップを抑制することができる。
【0081】
加えて、上述した制御装置1′は、振動制御の実施中に、判断部4Y′により対象コンタクタ2Pの溶着無しと判断した場合には振動制御を終了する。これにより、無駄な振動制御の実施を抑制することができ、振動制御の実施時間の適正化を図れる。
【0082】
(4)上述した制御装置1′では、コンデンサ電圧Vcに基づいて対象コンタクタ2Pの溶着の可能性の有無が判定される。さらに、対象コンタクタ2Pの溶着の可能性有りと判定された場合には、振動制御が実施されるとともに、対象コンタクタ2Pの内部特性を利用した溶着判断が実施される。制御装置1′では、このように、異なる判定方法を組み合わせて対象コンタクタ2Pの溶着の有無を判定することで、より適切に(高精度に)対象コンタクタ2Pの溶着の有無を判断できる。
【0083】
(5)また、上述した制御装置1′では、振動制御の実施後に、再度、コンデンサ電圧Vcに基づく溶着判定制御が実施される。このように、制御装置1′は、溶着判定制御を再度実施することで、対象コンタクタ2Pの溶着以外の要因(例えば、プリチャージコンタクタ2Preの溶着)による高電圧回路の不具合の有無も判定できるため、車両の不具合に対してより適切に対応できる。
【0084】
さらに、上述した制御装置1′によれば、振動制御の実施前に等電圧化制御が実施されるため、万一、振動制御前の溶着判定制御の判定結果が誤判定であった場合でも、振動制御の開始時の突入電流を抑制することができる。したがって、高電圧回路を保護することができる。
【0085】
上述した制御装置1′では、振動制御の実施中、プリチャージコンタクタ2Pre及び負極側コンタクタ2Nがオン状態に維持される。これにより、高電圧回路の通電が維持されるため、振動制御の実施中の突入電流による対象コンタクタ2Pの溶着を抑制できる。また、後続の溶着判定制御の実施に際し、コンデンサ42を再充電させる処理が必要なく、効率良く後続の溶着判定制御を実施することができる。
【0086】
[3.変形例]
上述の制御装置1,1′の構成及び制御装置1,1′で実施される制御は一例である。
例えば、上述の制御装置1,1′において、フェールセーフ処理が不要な場合には、処理部4Z,4Z′は省略されてもよい。
【0087】
第一実施形態の制御装置1において、コンタクタ2が介装される回路は、バッテリと駆動用モータとの間の高電圧回路に限らない。制御装置1により制御されるコンタクタ2は、例えば、車両の外部充電口とバッテリとの間の電気回路に介装されていてもよく、車載の各種電装品と補機バッテリとの間の電気回路に介装されていてもよい。
【0088】
第二実施形態において、高電圧回路の使用後に溶着の可能性の有無が判定される対象コンタクタは、正極側コンタクタ2Pに限らず、負極側コンタクタ2Nやプリチャージコンタクタ2Preであってもよい。また、制御装置1′は、高電圧回路の使用後に、高電圧回路に設けられた全てのコンタクタ2′に対して上述の制御を実施してもよい。高電圧回路に設けられるコンタクタは、少なくとも一つ設けられていればよく、正極側コンタクタ2P,負極側コンタクタ2N及びプリチャージコンタクタ2Preの三つに限らない。各コンタクタ2′の配置も上述のものに限らない。
【0089】
第二実施形態において、上述の制御装置1′に設けられた要素4A~4Dのうち、等電圧化制御部4B及び再判定部4Dは省略されてもよい。例えば、等電圧化制御部4Bを省略する場合には、判定部4Aは、判定結果を振動制御部4Cのみに伝達し、振動制御部4Cは、判定結果を受信した場合に上記の振動制御を実施すればよい。
【0090】
第二実施形態において、制御装置1′のマイコン4′には上述の要素以外の要素が設けられていてよい。例えば、コンタクタがオフ状態とされても可動接点と固定接点との接触が解消されない原因には、溶着やコンタクタ内部の位置ずれだけでなく、励磁コイルの熱膨張により一時的に可動接点の変位が阻害されてしまっている場合が考えられる。制御装置1′には、このような励磁コイルの熱膨張に起因する端子同士の一時的な接触を解消するため、対象コンタクタ2Pへの通電を一定時間禁止する制御(オフ制御)を実施する要素(オフ制御部)が設けられていてもよい。
【0091】
また、制御装置1′には、振動制御の実施中に、主電源スイッチ10′がオン操作されたことを示す信号を受信した場合に、振動制御の中断を振動制御部4Cに指示する要素(中断指示部)が設けられていてもよい。この場合、制御装置1′には、振動制御の中断後に車両を走行可能状態とする要素(開始制御部)が設けられていてもよい。これにより、緊急で車両を動かさなければならない場合やサービスエリアなどで一時的に車両を停車している場合に、車両が動かせなくなる事態を回避することができるため、車両の利便性を向上させることができる。
【0092】
振動制御部4Cは、対象コンタクタ2Pのオンオフを繰り返す制御に加えて、対象コンタクタ2P以外のコンタクタ(例えば、プリチャージコンタクタ2Pre)のオンオフを繰り返す制御を実施してもよい。このように、対象コンタクタ2Pの外部から振動を伝達させる制御を実施することで、例えば、対象コンタクタ2Pのオンオフが繰り返されてもその可動接点がほとんど動かないほどに位置ずれを起こしていた場合にも、対象コンタクタ2Pの位置ずれの解消を図ることができる。また、制御装置1′では、再判定部4Dによる溶着判定制御の実施後、再度、振動制御部4Cにより振動制御が実施されてもよい。このように、振動制御をリトライすることで、対象コンタクタ2Pの位置ずれの解消をさらに図ることができる。
【符号の説明】
【0093】
1,1′ 制御装置(車載制御装置)
2,2′ コンタクタ
2a,2a′ 励磁コイル
2N 負極側コンタクタ(コンタクタ)
2P 正極側コンタクタ(対象コンタクタ,コンタクタ)
2Pre プリチャージコンタクタ(コンタクタ)
3,3′ コンタクタ駆動回路
4A 判定部
4C 振動制御部
4D 再判定部(判定部)
4X,4X′ 制御部
4Y,4Y′ 判断部
5,5′ 電源部(電源)
6,6′ トランジスタ(開閉器)
20 バッテリ(駆動用電源)
42 平滑化コンデンサ(コンデンサ)
SIG-2,SIG-2′ 出力端子
Tt 閾値到達時間
Ttj 判定時間
Vc コンデンサ電圧(コンデンサの電圧)
Vt 端子電圧
Vtth 閾値電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6