(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006658
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タールパンクリーナ
(51)【国際特許分類】
C10B 43/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C10B43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107756
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】伏貫 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 侑嗣
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012FA04
(57)【要約】
【課題】タールパン上のタールをより確実に除去することのできるタールパンクリーナを提供する。
【解決手段】コークス炉100の炉底101側に配置されコークス炉100の炉口部103に近づくに従い高さ位置が高くなる傾斜状のタールパン105を清掃するためのタールパンクリーナ1は、前後方向Xに移動可能に構成された第1可動台21と、第1可動台21と前後方向Xに連動して移動可能に構成され、前後方向Xのうち炉口部103に近づく方向に移動しつつタールパン105上のタール200を掻き上げるように構成されたスクレーパ63と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉底側に配置され前記コークス炉の炉口部に近づくに従い高さ位置が高くなる傾斜状のタールパンを清掃するためのタールパンクリーナであって、
前記炉口部に対して近接および離隔する方向としての前後方向に移動可能に構成された可動台と、
前記可動台と前記前後方向に連動して移動可能に構成され、前記前後方向のうち前記炉口部に近づく方向に移動しつつ前記タールパン上の物体を掻き上げるように構成されたスクレーパと、
を備えている、タールパンクリーナ。
【請求項2】
前記スクレーパは、前記前後方向と直交する左右方向に沿う支軸を介して前記支持台に支持されており、前記支軸回りを揺動することで、前記タールパン上の物体を掻き上げる、請求項1に記載のタールパンクリーナ。
【請求項3】
前記炉口部は、前記タールパンの上部の上方に配置されており、
前記スクレーパは、前記タールパンの上部における前記炉口部の下方まで到達するように構成されている、請求項1または請求項2に記載のタールパンクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の前側(赤熱コークスの排出側)または後側(石炭の押出側)に設置された炉蓋枠の下部に設けられたタールパンに付着したタールを除去するためのタールパンクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉での製鉄に用いられるコークスを製造するためのコークス炉の炭化室では、操業時にタール成分を含んだガスが発生し、発生したガスは、炭化室の前後に設けられた炉蓋から外部に漏れ出して冷却される。このため、ガス中のタール成分はタールとなって炉蓋枠の下部に設けられたタールパンに付着する。また、炉蓋から直接タールが落下しタールパンに付着することもある。タールパンは、炉蓋から遠ざかるに従い下方に向かうスロープ形状を有しているが、高温のタールがタールパンから落下する前にタールパンに付着することとなる。そこで、コークス炉に設置している車両(移動機械ともいう)、例えば、ガイド車にスクレーパを設け、スクレーパをタールパンの上部側から下部側に移動させることにより、タールパンに付着したタールをタールパンから落下させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、スクレーパは、タールを上からなぞるようにタール上を滑るように動いてしまい、タールの掻き落とし残りを生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記の背景に鑑みることにより、タールパン上のタールをより確実に除去することのできるタールパンクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記のタールパクリーナを要旨とする。
【0007】
(1)コークス炉の炉底側に配置され前記コークス炉の炉口部に近づくに従い高さ位置が高くなる傾斜状のタールパンを清掃するためのタールパンクリーナであって、
前記炉口部に対して近接および離隔する方向としての前後方向に移動可能に構成された可動台と、
前記可動台と前記前後方向に連動して移動可能に構成され、前記前後方向のうち前記炉口部に近づく方向に移動しつつ前記タールパン上の物体を掻き上げるように構成されたスクレーパと、
を備えている、タールパンクリーナ。
【0008】
(2)前記スクレーパは、前記前後方向と直交する左右方向に沿う支軸を介して前記支持台に支持されており、前記支軸回りを揺動することで、前記タールパン上の物体を掻き上げる、前記(1)に記載のタールパンクリーナ。
【0009】
(3)前記炉口部は、前記タールパンの上部の上方に配置されており、
前記スクレーパは、前記タールパンの上部における前記炉口部の下方まで到達するように構成されている、前記(1)または前記(2)に記載のタールパンクリーナ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、タールパン上のタールをより確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタールパンクリーナとコークス炉の一部とを示す平面図であり、噴射ノズルおよびスクレーパが後端位置と前端位置にあるときの両方を示している。
【
図2】
図2は、タールパンクリーナとコークス炉の一部とを示す側面図であり、噴射ノズルおよびスクレーパが後端位置と前端位置にあるときの両方を示している。
【
図3】
図3は、タールパンクリーナの正面図であり、コークス炉側からタールパンクリーナを見た状態を示しており、左右スライドユニットが右端位置と左端位置にあるときの両方を示している。
【
図5】
図5は、
図4の平面図の一部をさらに拡大した図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図であり、左右方向に見た状態を示している。
【
図7】
図7は、タールパンクリーナの制御に関する構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】
図8は、タールパンクリーナの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るタールパンクリーナ1とコークス炉100の一部とを示す平面図であり、噴射ノズル42およびスクレーパ63が後端位置X1と前端位置X2にあるときの両方を示している。
図2は、タールパンクリーナ1とコークス炉100の一部とを示す側面図であり、噴射ノズル42およびスクレーパ63が後端位置X1と前端位置X2にあるときの両方を示している。
図3は、タールパンクリーナ1の正面図であり、コークス炉100側からタールパンクリーナ1を見た状態を示しており、左右スライドユニット23が右端位置Y1と左端位置Y2にあるときの両方を示している。
図4は、
図1の平面図の一部を拡大した図である。
図5は、
図4の平面図の一部をさらに拡大した図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図であり、左右方向Yに見た状態を示している。なお、各図において、移動した後の部分を想像線である二点鎖線で示している。
【0014】
本明細書では、コークス炉100の炉口部103に対して近接および離隔する方向(水平方向)を、前後方向Xという。前後方向Xのうちコークス炉100側に向かうほうを前といい、コークス炉100から遠ざかるほうを後という。また、コークス炉100のタールパン105の幅方向(水平方向)を左右方向Yという。左右方向Yのうちコークス炉100からタールパンクリーナ1を見たときの右側を右といい、左側を左という。また、鉛直方向に沿った上下を上下方向Zという。前後方向X、左右方向Y、および、上下方向Zは互いに直交している。
【0015】
図1~
図4を参照して、タールパンクリーナ1は、コークス炉100のタールパン105に付着したタール200をタールパン105から除去することでタールパン105を清掃するために設けられている。タールパンクリーナ1の説明に先立ち、コークス炉100の構成を説明する。
【0016】
コークス炉100は、石炭をコークスとするために用いられる。コークス炉100内では、大量の石炭が約1200℃~1300℃に所定時間加熱されることで、コークスとなる。このとき、コークスに加えて、タールが生成される。コークス炉100は、例えば内部が多層に仕切られた箱形形状に形成されている。
【0017】
コークス炉100は、炉底101と、炉底101から立ち上がる縦壁102と、縦壁102に形成された炉口部103と、炉口部103に設置された炉蓋104と、炉口部103および炉蓋104の下方に配置されたタールパン105と、を有している。
【0018】
炉底101は、コークス炉100における石炭(コークス)が収容される収容室の下端を形成する床部分である。炉底101の一端(
図2では左端)に縦壁102が配置されている。
【0019】
縦壁102は、炉底101から上方に立ち上がっている。縦壁102に炉口部103が形成されている。
【0020】
炉口部103は、タールパン105の上部の上方に配置されている。炉口部103を通して、例えばコークスをコークス炉100から取り出すことができる。炉口部103は、炉蓋104によって開閉される。
【0021】
炉蓋104は、炉底101付近に配置されており、縦壁102から突出した枠106を有している。枠106の下方に、タールパン105が配置されている。
【0022】
タールパン105は、コークス炉100の炉底側に配置されコークス炉100の炉口部103に近づくに従い高さ位置が高くなる傾斜状の部分であり、炉蓋104が開かれたとき等にコークス炉100内から落下するタール200をコークス炉100の側方に設置されたコンベア107に案内するために設けられている。コンベア107に落下したタール200は、コンベア107によって所定の回収場所へ搬送される。タールパン105は、本実施形態では縦壁102に繋がっており、炉底101から遠ざかるに従い(後方に進むに従い)下方に進むスロープ形状に形成されている。タールパン105の上部側の一部は、炉蓋104の下方に位置している一方で、タールパン105の残りの部分は炉蓋104の後方に位置している。すなわち、タールパン105の上部において、タールパン105と炉蓋104とが上下に並ぶ狭い空間108が形成されている。
【0023】
タールパンクリーナ1は、台座2に載せられて左右方向Yに移動可能とされている。これにより、タールパンクリーナ1は、コークス炉100に複数設けられたタールパン105を個別に清掃可能とされている。
【0024】
タールパンクリーナ1は、台座2に設置されタールパンクリーナ1の後部に位置するベース3と、ベース3に支持された前後駆動機構4と、前後駆動機構4によって前後方向Xに移動する可動ユニット5と、可動ユニット5に支持されたスクレーパユニット6と、を有している。
【0025】
ベース3は、台座2に固定され左右方向Yに細長い第1ベース部材11と、台座2に固定され前後方向Xに細長い左右一対の第2ベース部材12,12と、を有している。
【0026】
第1ベース部材11および一対の第2ベース部材12,12は、台座2に固定されており、台座2とともに左右方向Yに移動可能である。
【0027】
第1ベース部材11は、左右一対の第2ベース部材12,12間に配置されている。第1ベース部材11上に前後駆動機構4が取り付けられている。
【0028】
一対の第2ベース部材12,12は、後述する左右一対の可動レール26,26を支持するために設けられている。一対の第2ベース部材12,12にはそれぞれローラ台13が設置されており、ローラ台13はローラ14を支持している。
【0029】
前後駆動機構4は、本実施形態では、油圧シリンダ機構を含んでいる。前後駆動機構4は、第1ベース部材11に固定された固定部としてのシリンダ15と、シリンダ15から前方に突出する可動部としてのロッド16と、を有している。なお、前後駆動機構4は、可動ユニット5を前後方向Xに移動させることが可能な構成であればよく、流体圧シリンダ以外の駆動機構であってもよい。このような駆動機構として、例えば第1ベース部材11に設置された電動モータまたは油圧モータの出力回転を可動ユニット5の前後方向移動に変換するラックアンドピニオン機構等を例示できる。上記の構成を有するベース3および前後駆動機構4の前方に、可動ユニット5が配置されている。可動ユニット5は、前後方向Xに移動可能に構成されている。
【0030】
可動ユニット5は、前後駆動機構4のロッド16と一体的に前後方向Xに移動する第1可動台21と、第1可動台21に支持された左右駆動機構22と、左右駆動機構22によって左右方向Yに移動する左右スライドユニット23と、を有している。
【0031】
第1可動台21は、後述するスクレーパ63および噴射ノズル42を前後方向Xに移動させるために設けられている。
【0032】
第1可動台21は、前後駆動機構4のロッド16に連結されるフック25と、フック25が固定される可動ベース24と、可動ベース24から後方に延びる左右一対のレール26,26と、可動ベース24から前方に延びる左右一対の前後ビーム27,27と、一対の前後ビーム27,27に設置された左右一対のスライドレール固定部28,28と、一対のスライドレール固定部28,28に支持された前後一対のスライドレール29,29と、を有している。
【0033】
フック25は、例えば左右方向Yにおける第1可動台21の中央に配置されており、前後駆動機構4のロッド16と前後方向Xに一体的に移動するようにロッド16に連結されている。本実施形態では、フック25は、可動ベース24の後部に固定されている。
【0034】
可動ベース24は、左右方向Yに細長く延びた例えば板状部材であり、起立姿勢に配置されている。可動ベース24の後部における右側部分および左側部分に左右一対のレール26,26が固定されており、これらのレール26,26が可動ベース24から後方に延びている。
【0035】
左右一対のレール26,26は、ベース3のローラ14,14に受けられている。レール26,26が前後方向Xに移動するとき、ローラ14,14がレール26,26と転がり接触することで、レール26,26を含む第1可動台21が前後方向Xにスムーズに移動できる。本実施形態では、可動ベース24の左右両端部に、一対の前後ビーム27,27が配置されている。
【0036】
左右一対の前後ビーム27,27は、可動ベース24の例えば前面に固定されており、前後方向Xに沿って延びている。前後ビーム27,27は、例えば、チャンネル鋼等を用いて形成されている。左右一対の前後ビーム27,27間の空間は、噴射ノズル42が左右方向Yに移動するための空間でもある。一対の前後ビーム27,27の例えば上面に、左右一対のスライドレール固定部28,28が固定されている。
【0037】
スライドレール固定部28,28は、ブロック状部材である。本実施形態では、スライドレール固定部28,28には左右方向Yに沿う孔部が形成されており、この孔部にスライドレール29,29が差し込まれている。これにより、スライドレール29,29がスライドレール固定部28,28に固定されている。
【0038】
スライドレール29,29は、噴射ノズル42を含む左右スライドユニット23を支持しており、また、第1可動台21に対して左右スライドユニット23を左右方向Yに移動可能に構成されている。スライドレール29,29は、本実施形態では、前後一対設けられており、何れも左右方向Yに延びている。スライドレール29,29は、それぞれ、左右方向Yと直交する断面において、断面円形に形成されていてもよいし、断面楕円形に形成されていてもよいし、断面多角形に形成されていてもよい。上記のスライドレール29,29上を左右スライドユニット23が左右方向Yに移動するために、左右駆動機構22が配置されている。
【0039】
図1~
図6を参照して、左右駆動機構22は、本実施形態では、油圧シリンダ機構である。左右駆動機構22は、第一対の前後ビーム27,27の何れか(本実施形態では右側の前後ビーム27)に直接または本実施形態のようにステー30を介して固定された固定部としてのシリンダ31と、シリンダ31から左右方向Y(左方)に突出する可動部としてのロッド32と、を有している。なお、左右駆動機構22は、左右スライドユニット23を左右方向Yに移動させることが可能な構成であればよく、流体圧シリンダ以外の駆動機構であってもよい。このような駆動機構として、例えば前後ビーム27に設置された電動モータまたは油圧モータの出力回転を可動ユニット5の前後方向移動に変換するラックアンドピニオン機構等を例示できる。
【0040】
左右スライドユニット23は、噴射ノズル42を左右方向Yに移動させるために設けられている。左右スライドユニット23は、平面視において左右一対の前後ビーム27,27間に配置されている。左右スライドユニット23は、スライドレール29,29上を左右方向Yに移動する。
【0041】
左右スライドユニット23は、スライドレール29,29によって左右方向Yにスライド可能に支持されたスライダとしての第2可動台41と、第2可動台41に取り付けられ第2可動台41と左右方向Yに一体的に移動する噴射ノズル42と、噴射ノズル42を保持するノズルホルダ43と、後述する供給管ホルダ55の第2ホルダ部57であって第2可動台41に固定された第2ホルダ部57と、後述する供給管50の第2管52であって第2ホルダ部57に保持される第2管52と、を有している。
【0042】
第2可動台41は、第1可動台21によって前後方向Xに移動するように支持され、噴射ノズル42を左右方向Yに移動可能に支持している。第2可動台41は、本実施形態ではブロック状部材である。第2可動台41には、前後一対のスライドレール29,29に対応して前後方向Xに離隔して一対のスライド孔41a,41aが形成されており、これらのスライド孔41a,41aがスライドレール29,29に嵌合している。
【0043】
第2可動台41の側方(本実施形態では、右側方)に左右駆動機構22のロッド32が配置されており、このロッド32が第2可動台41に連結されている。これにより、左右方向Yへのロッド32の移動と一体的に左右スライドユニット23が移動する。第2可動台41は、例えば、右側の前後ビーム27から左右方向Yに数cm程度の位置の右端位置Y1と、左側の前後ビーム27から左右方向Yに数cm程度の位置の左端位置Y2と、の間で左右方向Yに移動可能である。なお、第2可動台41の周囲を取り囲むカバーが設置されていてもよい。
【0044】
噴射ノズル42は、タールパン105に対してタールパン105の幅方向としての左右方向Yに沿って移動可能に構成され、タールパン105へ洗浄液Fを噴射する。噴射ノズル42は、本実施形態では、第2可動台41の上方に配置されているが、第2可動台から真っ直ぐに前方に進んだ箇所に配置されていてもよい。
【0045】
噴射ノズル42は、筒状の本体にノズルが形成された構成を有しており、ノズルから水等の高圧流体をコーン状の噴流となるように噴射する。本実施形態では、噴射ノズル42は、第2可動台41に支持されている一方、スクレーパ63は第1可動台21に支持されている。これにより、噴射ノズル42は、スクレーパ63の変位とは独立して左右方向Yに移動可能とされている。また、本実施形態では、噴射ノズル42は、第1可動台21の前端位置よりも後方の位置に配置されており、スクレーパ63のうちタールパン105を掻く部分としての先端部63aから後方に進んだ箇所に配置されている。噴射ノズル42は、第2可動台41に直接固定されていてもよいが、本実施形態では、ノズルホルダ43を介して第2可動台41に支持されている。
【0046】
ノズルホルダ43は、本実施形態では、複数の部材を組み合わせて形成されているが、1つの部材で構成されていてもよい。
【0047】
図5、
図6によく示されているように、ノズルホルダ43は、第2可動台41に固定された第1部分43aと、第1部分43aに固定された第2部分43bと、第2部分43bに固定された第3部分43cと、第3部分43cに固定され噴射ノズル42に結合された第4部分43dと、を有している。
【0048】
第1部分43aは、本実施形態では、平面視でL字状に形成された板部材であり、第2可動台41の例えば前面に固定されている。第2部分43bは、本実施形態では、左右方向Yと直交する平板部材である。第1部分43aおよび第2部分43bの何れか一方に前後方向Xに細長い長孔が形成されているとともに、他方に丸孔が形成されている。そして、これらの長孔および丸孔に挿入されたボルトにナットがねじ結合していることで、第2部分43bは、第1部分43aに対して前後方向Xの位置を変更可能に固定されている。すなわち、噴射ノズル42が第2可動台41に対して前後方向Xの位置を変更可能とされいる。
【0049】
第3部分43cは、本実施形態では、第2部分43bに沿わされた平板部材である。左右方向Yから見て、第2部分43bおよび第3部分43cの何れか一方に一対の円弧状の長孔が形成されているとともに、他方に丸孔が形成されている。そして、これらの円弧状の長孔および丸孔に挿入されたボルトにナットがねじ結合していることで、第3部分43cは、第2部分43bに対して左右方向Yに延びる水平軸線回りの位置を変更可能に固定されている。すなわち、噴射ノズル42が第2可動台41に対して左右方向Yに延びる水平軸線回りの向きを変更可能とされている。第4部分43dは、本実施形態ではクランプ部材であり、噴射ノズル42の外周部を保持しつつ第3部分43cにボルト等の固定部材を用いて固定されている。
【0050】
上記の構成により、噴射ノズル42は、第1可動台21および第2可動台41に対して、前後方向Xの位置および左右方向Yに延びる水平軸線回りの向きを変更可能である。噴射ノズル42には、供給管50を通して例えば水(冷却媒体)を用いた洗浄液Fが供給される。
【0051】
図2~
図6を参照して、供給管50は、本実施形態では、第2可動台41の上方に配置されているが、第2可動台41の後方に配置されていてもよい。
【0052】
供給管50は、第1可動台21に設置され第1可動台21から上方に立ち上がった第1管51と、第2可動台41に設置され第2可動台41から上方に立ち上がった第2管52と、第1管51と第2管52とを接続するフレキシブル管53と、を有している。
【0053】
第1管51は、左右スライドユニット23の側方(本実施形態では右方)に配置されており、例えば左右駆動機構22の近傍(本実施形態では後方)に位置している。第1管51の下端(基端)は、図示しない接続管を介して洗浄液源(例えば上水道)に接続されている。接続管には洗浄液Fを加圧する加圧ポンプが設置されていてもよい。第1管51は、本実施形態では左右駆動機構22の周辺から上方に延びている。第1管51の上下方向長さは、左右方向Yにおける左右スライドユニット23の最大移動量に応じて設定されている。第1管51の上端は、例えば下向きのU字状に形成されており、第1管51の先端は下方に向けて開口されている。第1管51の先端にフレキシブル管53の一端が接続されている。
【0054】
フレキシブル管53は、左右方向Yにおける左右スライドユニット23の移動に併せて変形することで左右スライドユニット23の移動に追随する可撓性部材である。フレキシブル管53は、例えば、左右スライドユニット23が第1管51から最も離隔した左端位置Y2にあるときに円弧状を描くように配置される。フレキシブル管53の他端は、第2管52に接続されている。
【0055】
第2管52は、上述したように、左右スライドユニット23の一要素でもある。第2管52は、当該第2管52の一端部を構成し下向きのU字状に形成された剛体状の上側部分52aと、上側部分52aから下方に進んだ後に前方に延びて噴射ノズル42に接続される下側部分52bと、を有している。
【0056】
上側部分52aの一端にフレキシブル管53の他端が接続されている。上側部分52aの他端に下側部部52bの一端が接続されている。下側部分52bは、フレキシブル管53と同様の可撓性の管であり、下側部分52bの他端が噴射ノズル42に接続されている。下側部分52bは、第2可動台41に対する噴射ノズル42の位置調整に応じて弾性変形する。
【0057】
上記の構成を有する供給管50を保持するために供給管ホルダ55が設けられている。供給管ホルダ55は、供給管50の第1管51を支持する第1ホルダ部56と、第2管52を支持する第2ホルダ部57と、を有している。
【0058】
第1ホルダ部56は、本実施形態では、左右駆動機構22を支持するステー30に固定されており、第1管51に沿って上下方向Zに延びている。第1ホルダ部56は、上下方向Zにおける例えば2箇所で第1管51を把持している。第2ホルダ部57は、本実施形態では、第2可動台41に固定されており、第2管52の上側部分52aに沿って上下方向Zに延びている。第2ホルダ部57は、上下方向Zにおける例えば2箇所で上側部分52aを把持している。第2ホルダ部57は、第2管52の下側部分52bは保持していないことで、下側部分52bの弾性変形を阻害しないようにされている。
【0059】
次に、スクレーパユニット6の構成を説明する。
【0060】
スクレーパユニット6は、可動ユニット5の第1可動台21によって支持されており、左右一対の前後ビーム27,27に対して前方に突出した部分を含んでいる。
【0061】
スクレーパユニット6は、可動ユニット5の第1可動台21に連結される部分である左右一対のステー61,61と、ステー61,61に支持された支軸62と、支軸62に支持されているスクレーパ63と、支軸62回りのスクレーパ63の移動範囲を規定する上下一対のストッパ64,65と、を有している。
【0062】
ステー61,61は、本実施形態では、左右一対の前後ビーム27,27の前部下面に固定されたブロック状部材である。なお、ステー61,61は、第1可動台21に固定されていればよく、具体的な位置は限定されない。各ステー61,61には左右方向Yに延びる軸受孔61aが形成されており、これらの軸受孔61aによって支軸62の両端部が回転自在に支持されている。
【0063】
支軸62は、左右方向Yに沿って配置されている。本実施形態では、支軸62は、前後一対のスライドレール29,29の下方に配置されている。支軸62は、本実施形態のように丸軸であってもよいし、多角柱状の軸であってもよい。
【0064】
スクレーパ63は、第1可動台21と前後方向Xに連動して移動可能であり、前後方向Xのうち炉口部103に近づく方向(前方)に移動しつつタールパン105上のタール200を掻き上げる。スクレーパ63は、板状に形成されており、本実施形態では、側面視において「ヘ」字状に形成されている。より具体的には、側面視において、スクレーパ63は、支軸62から前方に真っ直ぐ進んだ後、数十度ほど湾曲し、その後再び直線状に延びている。
【0065】
スクレーパ63は、本実施形態では、左右方向Yにおいて、噴射ノズル42の可動範囲と概ね一致する領域に配置されている。スクレーパ63のうち、タールパン105およびタール200を掻くのは先端部63aである。スクレーパ63の先端部63aを含むスクレーパ63の先端側部分は、左右一対の前後ビーム27,27に対して側面視で前方に突出している。スクレーパ63は、支軸62を介して第1可動台21に支持されており、支軸62回りを揺動しつつタールパン105上の物体(タール200)を掻き上げる。
【0066】
スクレーパ63は、タールパンクリーナ1が後端位置X1にあるときにスクレーパ63の先端部63aがタールパン105の後方の例えばコンベア107の上方に配置される。一方、スクレーパ63は、タールパンクリーナ1が前端位置X2にあるときに先端部63aが炉蓋104の下方におけるタールパン105の上端部(狭い空間108)に配置される。このように、スクレーパ63は、タールパン105の上部における炉口部103の下方(炉蓋104の下方)まで到達するように構成されている。
【0067】
上下一対のストッパ64,65のうちの下側に配置された下ストッパ64は、スクレーパ63の先端部63aの下端位置Z1を規定するために設けられている。下ストッパ64は、支軸62に隣接して設けられている。下ストッパ64は、例えば、左右一対の前後ビーム27,27のそれぞれに設けられている。下ストッパ64は、例えば、対応する前後ビーム27,27に固定されたステーにねじ結合するボルトを有しており、ステーに対するボルトの突出量を調整することで、支軸62回りの下端位置Z1を調整可能である。下ストッパ64は、スクレーパ63の基端側部分を受けることで、下方へのスクレーパ63の回転移動を規制する。
【0068】
上ストッパ65は、下ストッパ64とは支軸62の円周方向に向かい合って設けられている。上ストッパ65は、例えば、左右一対の前後ビーム27,27のそれぞれに設けられている。上ストッパ65は、例えば、対応する前後ビーム27,27に固定されたステーにねじ結合するボルトを有しており、ステーに対するボルトの突出量を調整することで、支軸62回りの上端位置Z2を調整可能である。上ストッパ65は、スクレーパ63の基端側部分を受けることで、上方へのスクレーパ63の回転移動を規制する。
【0069】
スクレーパ63の先端部63aは、下端位置Z1において、タールパン105の下端位置と高さが揃えられている。また、スクレーパ63の先端部63aは、上端位置Z2において、タールパン105の上端位置と高さが揃えられている。
【0070】
次に、タールパンクリーナ1の動作を制御するための構成を説明する。
【0071】
図7は、タールパンクリーナ1の制御に関する構成を説明するためのブロック図である。
図1~
図7を参照して、タールパンクリーナ1は、制御部71を有している。この制御部71は、例えば、シーケンス回路であってもよいし、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、CPU、ROMおよびRAMを含むコンピュータであってもよい。
【0072】
制御部71は、前後駆動機構4および左右駆動機構22と電気的に接続されている。より具体的には、制御部71は、前後駆動機構4のロッド16を駆動するための液圧回路に設けられた電磁弁等の電動制御弁と、左右駆動機構22のロッド32を駆動するための液圧回路に設けられた電磁弁等の電動制御弁と、に接続されている。これにより、制御部71は、前後駆動機構4による可動ユニット5の前後方向変位と、左右駆動機構22による左右スライドユニット23の左右方向変位と、を制御可能である。すなわち、制御部71は、噴射ノズル42およびスクレーパ63の前後方向Xにおける移動と、噴射ノズル43の左右方向Yにおける移動と、を制御する。
【0073】
また、制御部71は、供給管50と洗浄液源との間に配置された電磁開閉弁等の電動制御弁である噴射ノズル弁72に接続されており、噴射ノズル42への洗浄液の供給のオン/オフを制御する。
【0074】
また、本実施形態では、可動ユニット5に、左右方向Yにおける左右スライドユニット23の位置を検出するための左右位置センサ73が設けられている。左右位置センサ73は、左右スライドユニット23の右端位置Y1と、左端位置Y2と、を検出できればよく、具体的な構成は限定されない。
【0075】
また、本実施形態では、タールパンクリーナ1に、後端位置X1における可動ユニット5(噴射ノズル42およびスクレーパ63)の位置を検出するための後端位置センサ74が設けられている。後端位置センサ74は、可動ユニット5の後端位置X1を検出できればよく、具体的な構成は限定されない。本実施形態では、制御部71による可動ユニット5(噴射ノズル42およびスクレーパ63)の前端位置X2の設定は、タイマー制御によって行われる。具体的には、可動ユニット5が後端位置X1にあるときから前後駆動機構4の駆動によって可動ユニット5が前方へ移動を開始してから一定時間後に、制御部71は前後駆動機構4の駆動を停止させる。これにより、可動ユニット5(スクレーパ63の前端部63a)は、前端位置X2に到達する。このように、スクレーパ63の前端部63aを前端位置X2に到達させる制御をタイマー制御とすることで、コークス炉100における炉の出入り差に対応させてスクレーパ63の動作を行うことができる。
【0076】
なお、左右位置センサ73を省略した状態で、制御部71が左右スライドユニット23(噴射ノズル42)の左右方向Yにおける移動制御を行ってもよい。この場合、制御部71は、一定時間毎に左右駆動機構22を制御するとともに、タイマー制御等によって噴射ノズル42からの洗浄液Fの供給のオン/オフを制御する。同様に、後端位置センサ74を省略した状態で、制御部71が可動ユニット5(噴射ノズル42およびスクレーパ63)の前後方向Xにおける移動制御を行ってもよい。この場合、制御部71は、一定時間毎に前後駆動機構4の駆動態様を変更するタイマー制御等によって前後駆動機構4を制御することで、可動ユニット5(噴射ノズル42およびスクレーパ63)を後端位置X1と前端位置X2との間で移動させる。
【0077】
次に、タールパンクリーナ1におけるタールパン105の清掃動作の一例を説明する。
【0078】
図8は、タールパンクリーナ1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。フローチャートを参照しながら説明する時はフローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
【0079】
図8のフローチャートを参照して、本実施形態では、タールパンクリーナ1によるタールパン105の清掃動作は、可動ユニット5が後端位置X1にあり、且つ左右スライドユニット23が右端位置Y1にあるときから開始される。
【0080】
制御部71は、まず、前後駆動機構4を駆動することで、可動ユニット5を前進させる(ステップS1)。これにより、スクレーパ63の先端部63aは、タールパン105の下端に接触し、さらに、タールパン105上をなぞるようにタールパン105を掻き上げつつ、支軸62回りを上方に移動する。制御部71は、前後駆動機構4の駆動開始から所定時間経過した後、前後駆動機構4の駆動を停止する。これにより、スクレーパ63の前端部63aは、前端位置X2で停止する。
【0081】
制御部71は、スクレーパ63がタールパン105と接触する前または接触した後のタイミングで、噴射ノズル42による左右方向Yへの往復動作を行いつつ噴射ノズル42に洗浄液Fを噴射させる(ステップS2)。なお、ステップS2は、ステップS1の前に実行されてもよいし、ステップS1と同時に実行されてもよいし、ステップS1の開始時点よりも後の時点で実行されてもよい。
【0082】
ステップS2では、制御部71は、噴射ノズル42へ洗浄液Fを供給するよう噴射ノズル弁72を開くとともに、左右位置センサ73で左右方向Yにおける左右スライドユニット23(噴射ノズル42)の位置を検出しながら、左右駆動機構22を駆動することで左右スライドユニット23を左方に移動させる。そして、制御部71は、左右スライドユニット23が左端位置Y2に到達したことを検出すると、左右駆動機構22のロッド32の移動方向を変更し、右端位置Y1まで左右スライドユニット23(噴射ノズル42)を移動する。これにより、噴射ノズル42は、洗浄液Fをタールパン105に噴射しつつ左右方向Yに例えば一往復移動する。制御部71は、噴射ノズル42が右端位置Y1まで戻ったことを検出すると、噴射ノズル弁72を閉じることで噴射ノズル42からの洗浄液Fの噴射を停止させる。
【0083】
噴射ノズル42が左右方向Yに一往復した後、制御部71は、スクレーパ63を炉口部103から遠ざかる方向(後方)に所定量移動させる(ステップS3)。このとき、制御部71は、例えば前後駆動機構4を所定時間駆動することで、スクレーパ63を前端位置X2と後端位置X1との間の中間位置に後退させる。
【0084】
次に、制御部71は、噴射ノズル42による左右方向Yへの往復動作を行いつつ噴射ノズル42に洗浄液Fを噴射させる(ステップS4)。ステップS4での動作はステップS2と同じである。このように、本実施形態では、噴射ノズル42は、洗浄液Fを噴射しつつ左右方向Yに一往復移動した後、後方に所定量移動し、その後、再度洗浄液Fを噴射するように構成されている。
【0085】
次に、制御部71は、前後駆動機構4のロッド16を後方に移動させることで、可動ユニット5(スクレーパ63)を後端位置X1まで後退させる(ステップS5)。このとき、制御部71は、可動ユニット5が後端位置X1に到達したことを後端位置センサ74が検出するまで前後駆動機構4を駆動し、この検出がされたときに前後駆動機構4の駆動を停止する。
【0086】
なお、本実施形態において、上記した1回の清掃動作における左右方向Yへの噴射ノズル42の往復移動回数は、1回でもよいし、3回以上であってもよい。また、タールパンクリーナ1による清掃動作中、噴射ノズル42から洗浄液Fを常時噴射してもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によると、スクレーパ63は、タールパン105の下側からタールパン105上を登るように移動することで、タールパン105上のタール200を掻き上げる。スクレーパ63がタールパン105上を下方に向けて移動しつつタール200を掻き落とす従来構成と比べて、本実施形態の構成であれば、スクレーパ63は、タールパン105上のタール200とより確実に引っかかることができる。よって、スクレーパ63がタール200上を単になぞってしまってタール200を掻き落とすことができないという不具合が生じずに済む。よって、タールパン105上のタール200をスクレーパ63でより確実に掻き上げてタールパン105から剥がし、タール200をタールパン105からより確実に除去できる。
【0088】
また、本実施形態によると、スクレーパ63は、左右方向Yに沿う支軸62回りを揺動することで、タールパン105上の広い範囲を掻き上げることができる。
【0089】
また、本実施形態によると、炉口部103は、タールパン105の上部の上方に配置されており、スクレーパ63は、前端位置X2においてタールパン105の上部における炉口部103(炉蓋104)の下方まで到達するように構成されている。この構成によると、炉口部103(炉蓋104)の下方における炉蓋104とタールパン105との間の上下に狭い空間108に溜まったタール200をスクレーパ63で掻き上げることができる。狭い空間108に上方からスクレーパ63を振り下げてスクレーパ63を到達させることは現実的には難しい一方で、本実施形態では、狭い空間108に下方からスクレーパ63をより確実に進入させることができる。
【0090】
また、本実施形態によると、噴射ノズル42は、タールパン105に対して左右方向Yに沿って移動可能に構成されタールパン105へ洗浄液Fを噴射する。この構成によると、スクレーパ63でタールパン105上のタール200を掻いてタールパン105から除去しつつ、噴射ノズル42からの例えば数MPaの高圧洗浄液Fをタールパン105の広い範囲に到達させてタールパン105上のタール200をタールパン105から剥がすことができる。これにより、タールパン105上のタール200をより確実に除去できる。
【0091】
また、本実施形態によると、噴射ノズル42は、スクレーパ63の変位とは独立して移動可能に構成されている。この構成によると、タール200の掻き上げ動作に適したスクレーパ63の動作(掻き上げ動作)を行いつつ、噴射ノズル42によってタールパン105上のタール200を除去するのに適した箇所から噴射ノズル42が洗浄液Fを噴射できる。スクレーパ63による掻き上げ動作と噴射ノズル42の噴射位置とを無理に連動させなくて済み、その結果、スクレーパ63と噴射ノズル42によるタール200の除去効果を最適化できる。特に、本実施形態では、スクレーパ63のうちタールパン105を掻く先端部63aの後方に噴射ノズル42が配置されている。これにより、噴射ノズル42は、タールパン105から適度に離隔した位置から十分に大きなコーン状で且つ十分な液圧の噴流をタールパン105に供給できる。
【0092】
また、本実施形態によると、第1可動台21によってスクレーパ63を前後方向Xに移動させるとともに、第2可動台41によって噴射ノズル42を左右方向Yに移動させることができる。この構成であれば、スクレーパ63および噴射ノズル42の前後方向Xへの移動と、噴射ノズル42の左右方向Yへの移動と、を互いに高い自由度で実行できる。よって、スクレーパ63と噴射ノズル42の協働によるタール除去効果をより高くできる。
【0093】
また、本実施形態によると、供給管50の第1管51と第2管52との間にフレキシブル管53が設けられていることで、第2可動台41(噴射ノズル42)が左右方向Yに移動したときに供給管50を弾性変形させることができ、供給管50による洗浄液Fの供給動作をスムーズに継続できる。
【0094】
また、本実施形態によると、噴射ノズル42は、洗浄液Fを噴射しつつ左右方向Yに一往復移動した後、後方(炉口部103から遠ざかる方向)へ所定量移動した後、再度洗浄液Fを噴射するように構成されている。このように、スクレーパ63を後方に移動させつつ洗浄液Fを複数回往復移動させることで、タールパン105上のより多くの領域に噴射ノズル42からの噴流を与えてタール200を除去できる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、タールパンクリーナとして、広く適用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 タールパンクリーナ
21 第1可動台(可動台)
62 支軸
63 スクレーパ
100 コークス炉
101 炉底
103 炉口部
105 タールパン
200 タール(物体)
X 前後方向
Y 左右方向