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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066586
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】熱交換器及びそれを使用した冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/02 20060101AFI20240509BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20240509BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F28D7/02
F28D7/10
F28D1/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176037
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】591151303
【氏名又は名称】関東精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】▲えび▼澤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】青木 順和
(72)【発明者】
【氏名】石川 一仁
(72)【発明者】
【氏名】神谷 年男
(72)【発明者】
【氏名】松村 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直栄
(72)【発明者】
【氏名】田中 三郎
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103AA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷媒が流れるコイル等のチューブ群(管群)を有する熱交換器において所定の冷却性能を維持しながら省スペース化と省エネルギー化を達成することが可能な熱交換器及びそれを使用した冷却装置を提供する。
【解決手段】冷媒3aが流れるコイル81を内側容器82と外側容器83との隙間に設定する。内側容器82に戻り冷却液2aを導入する冷却液インレット管83aを取り付けるための貫通穴82aを設けると共に、内側容器82と外側容器83を連通させるスリット部82bを設ける。外側容器83の底面に冷却液インレット管83a、冷却液アウトレット管83b、冷媒インレット管83c、外側容器83の側面に冷媒アウトレット管83dをそれぞれ設ける。コイル81を構成するチューブの縦方向間隔Bをチューブの外径ΦAに対し、2~5.2の範囲内の比に設定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b、301、401)が3次元または2次元状に配設されたチューブ群(81、300、400)を備えた熱交換器であって、
前記チューブ群(81、300、400)を構成する前記チューブ(81a、81b、301、401)の縦方向間隔(B)は、該チューブの外径(ΦA)に対し2から5.2倍の範囲内に設定されている
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b)が螺旋状に巻かれたコイル(81)と、
前記コイル(81)を収容しながら前記第1熱媒体(3a)と熱交換を行う第2熱媒体(2a)を一時的に貯蔵しながら通過させる容器(82,83)とを備えた熱交換器(100、200)であって、
前記コイル(81)は前記チューブ(81a、81b)の縦方向間隔(B)が該チューブの外径(ΦA)に対して2から5.2倍の範囲内の比で螺旋状に巻かれて構成されている
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器において、
前記コイル(81)は、外径の異なる複数のコイル(81a、81b)によって構成されている
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
第1熱媒体(3a)を圧縮する圧縮器(5)と、
圧縮された前記第1熱媒体(3a)を液化させる凝縮器(6)と、
液化された前記第1熱媒体(3a)を膨張させる膨張弁(7)と、
膨張された前記第1熱媒体(3a)と、所定の回路(2)を循環する第2熱媒体(2a)との間で熱交換を行わせる熱交換器とを備えた冷却装置であって、
前記熱交換器は、前記第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b、301、401)が3次元または2次元状に配設されたチューブ群(81、300、400)を備え、
前記チューブ群(81、300、400)を構成する前記チューブ(81a、81b、301、401)の縦方向間隔(B)は、該チューブの外径(ΦA)に対し2から5.2倍の範囲内に設定されている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
第1熱媒体(3a)を圧縮する圧縮器(5)と、
圧縮された前記第1熱媒体(3a)を液化させる凝縮器(6)と、
液化された前記第1熱媒体(3a)を膨張させる膨張弁(7)と、
膨張された前記第1熱媒体(3a)と、所定の回路(2)を循環する第2熱媒体(2a)との間で熱交換を行わせる熱交換器(100、200)とを備えた冷却装置(1)であって、
前記熱交換器(100、200)は、第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b)が螺旋状に巻かれたコイル(81)と、
前記コイル(81)を収容しながら前記第1熱媒体(3a)と熱交換を行う第2熱媒体(2a)を一時的に貯蔵しながら通過させる容器(82,83)とを備え、
前記コイル(81)は前記チューブ(81a、81b)の間隔(B)が該チューブの外径(ΦA)に対して2から5.2倍の範囲内の比で螺旋状に巻かれて構成されている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の冷却装置において、
前記コイル(81)は、外径の異なる複数のコイル(81a、81b)によって構成されている
ことを特徴とする冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びそれを使用した冷却装置に関し、より詳細には冷媒が流れるコイル等のチューブ群(管群)を有する熱交換器において所定の冷却性能を維持しながら省スペース化と省エネルギー化を達成することが可能な熱交換器及びそれを使用した冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて高い加工精度が要求されるマシニングセンタ、NC研削盤、半導体製造装置等の精密工作機械においては、被加工部材(ワーク)の熱変形だけでなく、ワークを加工する切削工具が取り付けられるヘッド本体及びその駆動部、ならびにワークが取り付けられるテーブル本体及びその駆動部、さらには、作動油、潤滑油に対しても加工時に発生する熱(加工熱)によって、熱変形・熱変性することがないように、冷却液(クーラント)によって冷却する必要がある。一方、クーラントはこれら精密工作機械から加工熱を効率よく奪うように、冷却装置によって高精度に温度管理される必要がある。
【0003】
ところで、我が国では、地球温暖化防止、ひいては持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス等の、いわゆる温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロにするカーボンニュートラル(或いは「脱炭素社会」)の実現に向けた取り組みが各企業において行われている。そのため精密工作機械から加工熱を奪う上記冷却装置に対しても、環境に優しいグリーン冷媒(例えば、R-1234yf)の採用、消費電力の低減(省エネルギー化)、冷却装置全体のコンパクト化(省スペース化)、高精度・高応答性の温度制御技術等を、確立することによりメーカはカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいる。
【0004】
上記高精度・高応答性の温度制御技術を実現する技術として、圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮器および膨張弁を通過させずに熱交換器に導入するバイパス路とバイパス流量調整弁を備え、温度制御装置により低冷却モードではバイパス流量調整弁の開度を変更する一方、通常冷却モードではバイパス流量調整弁の開度を全閉とした状態で、圧縮機(駆動モータ)のインバータ周波数を変更することにより主軸頭の温度を設定温度になるようにフィードバック制御する冷却装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
同様に、バイパス路とバイパス流量調整弁を備え、膨張弁の開度とバイパス流量調整弁の開度とを一対一に対応する値に連動させて同時に変更することにより主軸頭の温度を設定温度になるようにフィードバック制御する冷却装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0006】
また、工作機械から奪った熱を空気中ではなく冷却水に排熱する水冷式の凝縮器を備えた冷却装置も知られている(例えば、特許文献3を参照。)。熱を冷却水に排熱することにより、工場内の温度上昇を抑制して空調装置の負荷を軽減し、これにより省エネルギー化、ひいては脱炭素社会の実現に貢献することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4786960号
【特許文献2】特許第5020664号
【特許文献3】特許第6595253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷却装置のサイズをコンパクト化しようとする場合、冷却装置の構成要素の内で容積の大きい熱交換器をコンパクト化することが考えられる。そして、熱交換器のサイズをコンパクト化しようとする場合、冷媒が流れるコイルのサイズをコンパクト化することが考えられる。
【0009】
一般に、コイルのサイズをコンパクト化することは、クーラントと冷媒との間の伝熱面積が減少することになる。この場合、同等の冷却性能を維持するためには、コイルを流れる冷媒の流量を増加させることが考えられる。冷媒の流量を増加させるためには、冷媒の流速を増加させるか、流速を保ったままコイルを構成するチューブの外径を大きくする必要がある。
【0010】
しかし、冷媒の流速を増加させることは、冷媒を圧縮して送り出す圧縮機の消費電力を増大させることになるため、省エネルギー化の観点から好ましくない。一方、コイルを構成するチューブの外径を大きくすることはコイルの縦方向および横方向の寸法が増大し、省スペースの観点から好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、冷媒が流れるコイル等のチューブ群(管群)を有する熱交換器において所定の冷却性能を維持しながら省スペース化と省エネルギー化を達成することが可能な熱交換器及びそれを使用した冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る熱交換器は、熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b、301、401)が3次元または2次元状に配設されたチューブ群(81、300、400)を備えた熱交換器であって、前記チューブ群(81、300、400)を構成する前記チューブ(81a、81b、301、401)の縦方向間隔(B)は、該チューブの外径(ΦA)に対し2から5.2倍の範囲内に設定されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、チューブ群(81、300、400)の単位表面積当たりの熱交換量が顕著に増加し、熱交換器での冷却性能が大幅に向上するようになる。従って、冷却性能を維持する場合、冷却性能の向上分だけチューブ群(81、300、400)を構成するチューブ(81a、81b、301、401)の全長を従来よりも短くすることが可能となる。チューブ(81a、81b、301、401)の全長が短くなることにより、熱媒体(3a)がチューブ群(81、300、400)を流れる際の圧力損失が低減され、これにより圧縮機の動力を低減することが可能となる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る他の熱交換器は、第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b)が螺旋状に巻かれたコイル(81)と、前記コイル(81)を収容しながら前記第1熱媒体(3a)と熱交換を行う第2熱媒体(2a)を一時的に貯蔵しながら通過させる容器(82,83)とを備えた熱交換器(100、200)であって、前記コイル(81)は前記チューブ(81a、81b)の縦方向間隔(B)が該チューブの外径(ΦA)に対して2から5.2倍の範囲内の比で螺旋状に巻かれて構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成では、コイル(81)の単位表面積当たりの熱交換量が顕著に増加し、熱交換器での冷却性能が大幅に向上するようになる。従って、冷却性能を維持する場合、冷却性能の向上分だけコイル(81)を構成するチューブ(81a、81b)の全長を従来よりも短くすることが可能となる。チューブ(81a、81b)の全長が短くなることにより、第1熱媒体(3a)がコイル(81)を流れる際の圧力損失が低減され、これにより圧縮機の動力を低減することが可能となる。
【0016】
本発明に係る熱交換器の第2の特徴は、前記コイル(81)は、外径の互いに異なる複数のコイル(81a、81b)によって構成されていることである。
【0017】
一般に、チューブの縦方向間隔(B)を大きくする場合、コイルの縦方向寸法が大きくなり、熱交換器の縦方向の寸法も大きくなる。しかし、本発明に係るコイル(81)では、冷却性能を維持したままチューブ(81a、81b)の全長を従来よりも短くすることが可能となるため、コイルの縦方向寸法が伸びた分を内側に折り返すことが可能となる。これにより、熱交換器の縦方向および横方向の寸法を小さくすることができるため、省スペース化を達成することが可能となる。
【0018】
それに加えて、コイル(81)を収容する容器(82、83)において第2熱媒体(2a)が通過する容器流路面積が拡大することにより、第2熱媒体(2a)と第1熱媒体(3a)との間の熱交換が効率良く行われることになる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る冷却装置は、第1熱媒体(3a)を圧縮する圧縮器(5)と、圧縮された前記第1熱媒体(3a)を液化させる凝縮器(6)と、液化された前記第1熱媒体(3a)を膨張させる膨張弁(7)と、膨張された前記第1熱媒体(3a)と、所定の回路(2)を循環する第2熱媒体(2a)との間で熱交換を行わせる熱交換器とを備えた冷却装置であって、前記熱交換器は、前記第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b、301、401)が3次元または2次元状に配設されたチューブ群(81、300、400)を備え、前記チューブ群(81、300、400)を構成する前記チューブ(81a、81b、301、401)の縦方向間隔(B)は、該チューブの外径(ΦA)に対し2から5.2倍の範囲内に設定されていることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る他の冷却装置は、第1熱媒体(3a)を圧縮する圧縮器(5)と、圧縮された前記第1熱媒体(3a)を液化させる凝縮器(6)と、液化された前記第1熱媒体(3a)を膨張させる膨張弁(7)と、膨張された前記第1熱媒体(3a)と、所定の回路(2)を循環する第2熱媒体(2a)との間で熱交換を行わせる熱交換器(100、200)とを備えた冷却装置(1)であって、前記熱交換器(100、200)は、第1熱媒体(3a)が流れるチューブ(81a、81b)が螺旋状に巻かれたコイル(81)と、前記コイル(81)を収容しながら前記第1熱媒体(3a)と熱交換を行う第2熱媒体(2a)を一時的に貯蔵しながら通過させる容器(82,83)とを備え、前記コイル(81)は前記チューブ(81a、81b)の縦方向間隔(B)が該チューブの外径(ΦA)に対して2から5.2倍の範囲内の比で螺旋状に巻かれて構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る冷却装置の第2の特徴は、前記コイル(81)は、外径の互いに異なる複数のコイル(81a、81b)によって構成されていることである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、冷媒が流れるコイル等のチューブ群(管群)を有する熱交換器において所定の冷却性能を維持しながら省スペース化と省エネルギー化を達成することが可能となる。その結果、本発明の熱交換器を備えた冷却装置においても所定の冷却性能を維持しながら省スペース化と省エネルギー化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の熱交換器を備えた冷却装置の構成を示す説明図である。
図2】本発明の熱交換器を示す要部断面説明図である。
図3】本発明に係る3次元チューブ群の一実施形態であるコイルを示す斜視図である。
図4】本発明に係るコイルの縦断面の一部分を示す説明図である。
図5】コイルを構成するチューブの縦方向間隔とコイルの単位表面積当たりの熱交換量との相関を示すグラフである。
図6】従来のコイルを示す斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る熱交換器を示す要部断面説明図である。
図8】本発明に係る3次元チューブ群の他の実施形態である矩形チューブ群を示す説明図である。
図9】本発明に係る2次元チューブ群の一実施形態であるストレートチューブ群を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の熱交換器100を備えた冷却装置1の構成を示す説明図である。なお、本発明の熱交換器100の詳細については図2から5を参照しながら後述する。また、説明の都合上、冷却装置1の温度制御対象は、精密工作機械(図示せず)の主軸頭(図示せず)の温度であり、戻り冷却液2aの温度(温度センサ21によって計測される温度)を主軸頭の温度として擬制している。また、主軸頭を冷却する冷却液2aは冷却ポンプ22によって循環され、熱交換器100において冷媒3aとの間で熱交換を行うものとする。
【0026】
冷却装置1の構成としては、冷却液2aを循環させるための冷却回路2と、冷媒3aを循環させるための循環回路3と、冷媒3aを凝縮器6及び膨張弁7を通過させずに、熱交換器100に直接導入させるためのバイパス路4と、ガス化した冷媒3aを圧縮するための圧縮機5と、高温高圧化した冷媒3aを液化させるための凝縮器6と、液化した冷媒3aを膨張させて低温低圧化させるための膨張弁7と、冷媒3aと冷却液2aとの間で熱交換を行わせるための熱交換器100と、バイパス路4を流れる冷媒3aの流量を調整するためのバイパス流量調整弁9と、戻り冷却液2aの温度が設定温度TSになるように、圧縮機5の回転数(インバータ周波数)、膨張弁7とバイパス流量調整弁9の各開度を制御する温度制御部10と、温度制御に関する種々のパラメータを表示するための表示部11と、温度制御に関するパラメータを入力するための入力部12と、基準温度に係る部位の温度を計測する基準温度センサ13と、(主軸頭から熱を奪った)戻り冷却液2aの温度を計測する温度センサ21と、冷却液2aを冷却回路2に沿って循環させる冷却ポンプ22と、冷却ポンプ22を回転駆動する駆動モータ23と、凝縮器6からの放熱を促進する冷却ファン61とを具備して構成されている。また、冷媒3aについては地球温暖化係数(GWP)が最小(1)であるグリーン冷媒(例えば、R-1234yf、CO2)を使用することが望ましい。
【0027】
図2は、本発明の熱交換器100を示す要部断面説明図である。
この熱交換器100は、冷媒3aが流れるコイル81と、戻り冷却液2aを一時的に溜めながら流れを安定させる内側容器82と、内側容器82との隙間にコイル81を収容する外側容器83と、内側容器82と外側容器83の各上部開口を封止する蓋部84と、内側容器82及び外側容器83と蓋部84との間から冷却液2aが漏れることを防止するシール部材85と具備して構成されている。以下、各構成について更に説明する。
【0028】
コイル81は、外側コイル81aと内側コイル81bによって螺旋状に2重に巻かれて構成されている。従って、膨張弁7(図1)を通過した冷媒3aは、冷媒インレット管83cから外側コイル81aの内部を下から上へ流れ、上方において内側コイル81bの内部を上から下へ流れ、冷媒アウトレット管83dから流出するようになっている。
【0029】
なお、詳細については図4及び図5を参照しながら後述するが、コイル81を構成するチューブの軸方向に沿った間隔B(以下「チューブの縦方向間隔B」という。)がチューブの外径ΦAに対し所定の比になるように設定されている。これにより、冷却液2aがコイル81の全表面に沿って均一に流れるようになる。その結果、冷媒3aと冷却液2aとの間の熱交換が効率良く行われ、コイル81の単位表面積当たりの熱交換量が増大するようになる。
【0030】
内側容器82は、例えば有底中空円筒形状を成している。また、内側容器82は外側容器83の内底面に対し離隔して外側容器83の内部に取り付けられている。底面には冷却液2aを導入する冷却液インレット管83aを通すための貫通穴82aが形成され、上端には冷却液2aを外側容器83に流すためのスリット部(又は切欠き部)82bが形成されている。
【0031】
外側容器83は、例えば有底中空四角柱形状を成している。また、外側容器83の底面には冷却前の戻り冷却液2aを導入する冷却液インレット管83a、並びに冷却後の送り冷却液2aを主軸頭に戻すための冷却液アウトレット管83bがそれぞれ取り付けられている。
【0032】
従って、冷却液2aは、冷却液インレット管83a→内側容器82→スリット部82b→外側容器83→冷却液アウトレット管83bという経路を流れて冷却回路2(図1)に戻されることになる。そして、冷却液2aは外側容器83を通る際に、コイル81を流れる冷媒3aによって冷却されて、温度センサ21(図1)によって計測される冷却液2a温度が設定温度TSになるように温度制御部10によって温度制御されることになる。なお、設定温度TSは、基準温度(基準温度センサ13によって計測される温度)を基に設定される。
【0033】
シール部材85は、内側容器82及び外側容器83と蓋部84との間に液密に取り付けられ、その間から冷却液2aが漏れることを防止する。
【0034】
図3は、本発明に係る3次元チューブ群の一実施形態であるコイル81を示す斜視図である。
コイル81は、冷媒3aが流れるチューブが時計方向に螺旋状に巻かれた外径の大きい外側コイル81aと、外径の小さい内側コイル81bとから構成されている。
【0035】
冷媒3aは、外側コイル81aと内側コイル81bにおいて共に時計方向に回転しながら、外側コイル81aにおいては下から上へ流れる一方、内側コイル81bにおいては上から下へ流れる。
【0036】
図3から明らかな通り、外側コイル81aと内側コイル81bにおいて共に隣り合うチューブとチューブとの間(チューブの縦方向間隔)には十分な隙間が確保され、さらには外側コイル81aと内側コイル81bとの間(チューブの横方向間隔)にも十分な隙間が確保されている。
【0037】
従って、冷却液2aはこれらの隙間を通って冷媒3aとの間で熱交換を行うことになる。以下に、チューブの縦方向間隔について説明する。
【0038】
図4は、本発明に係るコイル81の縦断面の一部分を示す説明図である。なお、参考として図6に示される従来のコイルの縦断面の一部分についても併せて表されている。
【0039】
従来のコイルでは、チューブの縦方向間隔Bをチューブの外径ΦAの1.25倍に設定してチューブ間の隙間を小さくしている。これによりコイルのチューブ全長を長くして、すなわちコイルの表面積を大きくして冷却液2aと冷媒3aとの間で授受される所定の熱交換量を確保している。
【0040】
他方、本発明に係るコイル81では、例えばチューブの縦方向間隔Bをチューブの外径ΦAの2.5倍に設定して、チューブ間の隙間を大きくして、冷却液2aがコイル81の全表面に沿って均一に流れるようにしている。その結果、コイル81の単位表面積当たりの熱交換量が著しく増大し、これにより却液2aと冷媒3aとの間で授受される所定の熱交換量を確保している。なお、本発明に係るコイル81のチューブの縦方向間隔Bについては、チューブの外径ΦAの2.5倍だけに限定されることはなく、所定の幅(2~5.2倍の範囲)を有している。以下に、チューブの縦方向間隔Bとコイルの単位表面積当たりの熱交換量との相関について説明する。
【0041】
図5は、コイルを構成するチューブの縦方向間隔Bとコイルの単位表面積当たりの熱交換量との相関を示すグラフである。なお、グラフ縦軸はコイルの単位表面積当たりの熱交換量を表し、コイルの単位表面積当たりの熱交換量と等価であるW密度[W/mm2]によって表されている。また、グラフ横軸はチューブの縦方向間隔Bを表し、コイルチューブの外径ΦAに対する寸法比によって表されている。
【0042】
試験は、図1に示される冷却装置1において、冷却液2aの流量が15~55[L/mm]の範囲内の何れかの値になるように冷却ポンプ22を動作させた状態で、チューブの外径ΦAを12mmに固定し、チューブの縦方向間隔Bを1.25以上の範囲内で離散的に変化させることによって行われた。
【0043】
図5に示されるように、チューブの縦方向間隔B=1.25(従来のコイル)におけるW密度は48.7[W/mm2]であった。そこからチューブの縦方向間隔Bを拡げると、W密度が増大し続け、チューブの縦方向間隔B=2.6においてW密度は最大値(71.6[W/mm2])に到達した。更にチューブの縦方向間隔Bを拡げると最大値(71.6[W/mm2])を維持した。更にチューブの縦方向間隔Bを拡げると、チューブの縦方向間隔B=3.1からW密度は緩やかに下降しているが、従来のコイル(B=1.25)のW密度(48.7[W/mm2])に比べ依然として高い値を示した。
【0044】
特に、チューブの縦方向間隔B=2.6~3.1においては、W密度が22.9[W/mm2]も増大したことになる。これはチューブの縦方向間隔B=1.25におけるW密度=48.7に比べ、22.9/48.7×100=47%も増大したことになる。このように、W密度が従来比で1.47倍増加したということは、チューブの縦方向間隔B=2.6~3.1においては実効的な伝熱面積が1.47倍に増加したとみることもできる。伝熱面積はπ×ΦA×チューブの全長Lで表されるため、W密度を維持させる場合、チューブの全長Lを1/1.47=0.68に短縮できることになる。つまり、チューブの縦方向間隔Bを拡げて、冷却性能を維持させる場合、コイル81を構成するチューブの全長Lを短縮できることになる。
【0045】
ところで、図4に示されるように、チューブの縦方向間隔Bを大きくすることにより、チューブ間の隙間(B-ΦA)も増えることになり、熱交換器の高さ方向の寸法が大きくなる可能性がある。しかしこの場合、図2及び図3に示されるように、コイル81を外側コイル81aと内側コイル81bから成る二重巻きコイル(二重巻き螺旋状コイル)とすることにより、熱交換器の高さ方向の寸法を従来よりも低くすることができる。但し、チューブの縦方向間隔B>5.2の範囲内においては、チューブを折り返したことによる従来のコイルに対するコンパクト化の効果はさほど大きくはならない。従って、コンパクト化の観点から、本発明に係るコイル81のチューブの縦方向間隔Bについては、チューブの外径ΦAに対し2~5.2倍の範囲内が好ましい。
【0046】
また、コイル81を二重巻きコイル(二重巻き螺旋状コイル)とすることにより、内側容器82の横方向寸法を小さくすることができる。この場合、冷却液2aが流れる内側容器82と外側容器83との間の隙間(流路面積)が拡大し、その結果、冷却液2aがその隙間を流れる際の圧力損失が減少する。これにより、冷却液2aを主軸頭と熱交換器100との間を循環させる冷却ポンプ22の動力を低減することが可能となる。
【0047】
また、コイル81を構成するチューブの全長Lを短縮することが可能であるため、コイル81に係る材料コストを低減することが可能となる。更には、コイル81を製造するに際し単位長さ当たりのチューブの巻き数が減少することになるため、コイル81に係る製造コストを低減することが可能となる。
【0048】
以上の通り、本発明の熱交換器100によれば、所定の冷却性能を確保しながらコイル81を構成するチューブの全長Lを短縮することが可能となる。これにより冷媒3aがコイル81を流れる際の圧力損失が低減し、圧縮機5を駆動するモータの消費電力を低減することが可能となる。その結果、冷却装置1全体の省エネルギー化を達成することができるようになる。
【0049】
また、コイル81をコイル外径の互いに異なる外側コイル81aと内側コイル81bとによって構成することにより、チューブの全長Lの短縮化と相俟って、コイル81の横方向寸法および縦方向寸法を小さくすることが可能となり、熱交換器100をコンパクトにすることが可能となる。その結果、熱交換器100ひいては冷却装置1全体の省スペース化を達成することができるようになる。
【0050】
なお、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上記だけに限定されることは決してない。即ち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において種々の変更・修正を加えることが可能である。例えば、本発明に係るコイル81は、図7に示されるように単巻き螺旋状コイルであっても良い。また、チューブの縦方向間隔Bは、チューブの外径ΦAに対し、2~5.2倍であれば良く、外側コイル81aと内側コイル81bにおいて、互いに異なるチューブの縦方向間隔Bをそれぞれ採用することも可能である。或いは同一コイルにおいて異なるチューブの縦方向間隔Bを採用することも可能である。
【0051】
図8は、本発明に係る3次元チューブ群の他の実施形態である矩形チューブ群300を示す説明図である。図8(a)は矩形チューブ群300の平面図であり、図8(b)は矩形チューブ群300の正面図であり、図8(c)は矩形チューブ群300の右側面図である。
【0052】
この矩形チューブ群300は、外形が矩形状である複数の矩形チューブ301が、チューブの縦方向間隔Bを確保しながら縦方向に沿って積層されて構成されている。隣り合う矩形チューブ301同士は連結チューブ302によってそれぞれ連通されている。両端の矩形チューブ301には、冷媒3aを流入または流出させるためのエンドチューブ303がそれぞれ設けられている。
【0053】
なお、矩形チューブ群300においても、チューブの縦方向間隔Bがチューブの外径ΦAに対し2~5.2倍の範囲内に設定されている。なお、チューブの外径は矩形(四角形)に限定されず、n角形(n:n≧3の整数)または円形・楕円形であっても良い。また、チューブの縦方向間隔Bについてはチューブの外径ΦAに対し、2~5.2倍であれば良く、一定である必要はない。
【0054】
また、上記冷却装置1の熱交換器100,200においてコイル81に代えて矩形チューブ群300を使用することも可能である。
【0055】
図9は、本発明に係る2次元チューブ群の一実施形態であるストレートチューブ群400を示す説明図である。
このストレートチューブ群400は、複数のストレートチューブ401がチューブの縦方向間隔Bを確保しながら縦方向に沿って積層されて構成されている。隣り合うストレートチューブ401同士は連結チューブ402によってそれぞれ連通されている。両端のストレートチューブ401には、冷媒3aを流入または流出させるためのエンドチューブ403がそれぞれ設けられている。
【0056】
なお、ストレートチューブ群400においても、チューブの縦方向間隔Bがチューブの外径ΦAに対し2~5.2倍の範囲内に設定されている。なお、チューブの縦方向間隔Bについてはチューブの外径ΦAに対し、2~5.2倍であれば良く、一定である必要はない。
【0057】
また、上記冷却装置1の熱交換器100,200においてコイル81に代えてストレートチューブ群400を1又は複数使用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 冷却装置
2 冷却回路
2a 冷却液(第2熱媒体)
3 循環回路
3a 冷媒(第1熱媒体)
4 バイパス路
5 圧縮機
6 凝縮器
7 膨張弁
9 バイパス流量調整弁
10 温度制御部
11 表示部
12 入力部
13 基準温度センサ
21 温度センサ
22 冷却ポンプ
23 駆動モータ
61 冷却ファン
81 コイル(3次元チューブ群)
81a 外側コイル
81b 内側コイル
82 内側容器
82a 貫通穴
82b 連通口
83 外側容器
83a 冷却液インレット管
83b 冷却液アウトレット管
83c 冷媒インレット管
83d 冷媒アウトレット管
84 蓋部
100,200 熱交換器
300 矩形チューブ群(3次元チューブ群)
400 ストレートチューブ群(2次元チューブ群)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9