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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066595
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176051
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悟
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB16
4C267BB32
4C267BB38
4C267BB40
4C267CC07
4C267CC08
4C267CC21
4C267CC22
4C267CC26
4C267DD03
4C267GG02
4C267GG06
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】先端部を曲げやすくし、屈曲したり湾曲したりした管状器官等であっても挿入しやすいガイドワイヤを提供する。
【解決手段】このガイドワイヤ10は、芯線20とコイル部材40と樹脂充填部50とを有し、芯線20の先端部23は、剛性が急激に変化する剛性変化部31を有しており、樹脂充填部50は、芯線20の先端部23の先端側部分、及び、コイル部材40の疎巻き部分43の間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部51と、芯線20の先端部23の、先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分、及び、コイル部材40の疎巻き部分43の間に、第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部53とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、
該芯線の前記先端部の外周に装着されたコイル部材と、
前記芯線の前記先端部及び前記コイル部材の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部とを有しており、
前記芯線の前記先端部は、その軸方向において剛性が急激に変化する剛性変化部を有し、該剛性変化部を境界として、軸方向の先端側部分の曲げ強度と軸方向の基端側部分の曲げ強度とが異なるように形成されており、
前記コイル部材は、線材を所定間隔を空けて巻回してなる疎巻き部分が全長に亘り形成されたものとなっており、
前記樹脂充填部は、
前記芯線の前記先端部の先端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部分との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部と、
前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部との間に、前記第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部とを有することを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、
該芯線の前記先端部の外周に装着されたコイル部材と、
前記芯線の前記先端部及び前記コイル部材の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部とを有しており、
前記芯線の前記先端部は、その軸方向において剛性が急激に変化する剛性変化部を有し、該剛性変化部を境界として、軸方向の先端側部分の曲げ強度と軸方向の基端側部分の曲げ強度とが異なるように形成されており、
前記コイル部材は、線材を所定間隔を空けて巻回してなる疎巻き部分と、線材を間隔を空けずに巻回してなる密巻き部分とを有しており、前記疎巻き部分が先端側に配置され、前記密巻き部分が基端側に配置されており、
前記樹脂充填部は、
前記芯線の前記先端部の先端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部分との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部を有していると共に、
前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記密巻き部分との間に、前記第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部を有しているか、又は、前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記密巻き部分との間は、空隙となっていることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項3】
前記先端側充填部と前記基端側充填部との境界部分は、前記剛性変化部に対して、前記芯線の軸方向において一致するように配置されている請求項1記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記先端側充填部と前記基端側充填部との境界部分、又は、前記先端側充填部と前記空隙との境界部分は、前記剛性変化部に対して、前記芯線の軸方向において一致するように配置されている請求項2記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
少なくとも前記コイル部材の外周には、樹脂カバーが被覆されており、
該樹脂カバーの内面が、前記先端側充填部及び前記基端側充填部に接合されている請求項1又は3記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
少なくとも前記コイル部材の外周には、樹脂カバーが被覆されており、
該樹脂カバーの内面が、少なくとも前記先端側充填部に接合されている請求項2又は4記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血管、胆管、膵管、尿管、気管等の人体の管状器官や、体腔等の人
体組織の所定位置に、カテーテル等を留置する際に用いられる、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、人工透析の際には、図8に示すように、腕の皮下等で動脈1と静脈2とを吻合して、静脈に流れる血液量を多くする、シャントが行われている。この際の、動脈1と静脈2とが吻合された部分を、「吻合部分3」とする。
【0003】
ところで、時間経過等によって、上記の吻合部分3の内径が小さくなったり閉塞したりしてしまうことがあった。また、吻合部分3のみならず、その周囲の血管等に狭窄部分が生じる場合もある。そのため、吻合部分3や狭窄部分(以下、単に「吻合部分等」という)を、バルーンカテーテルで拡張したり、或いは、吻合部分等にステント等の拡径具を留置して拡張したりしていた。
【0004】
この場合、図8に示すように、例えば、動脈1側からガイドワイヤ5を挿入し、その先端部を静脈2まで到達させた後、ガイドワイヤ5を介して、バルーンカテーテルやステントを収容したカテーテルを移動させ、吻合部分等をバルーンカテーテルで拡張したり、吻合部分等にステントを留置して拡張したりする。なお、バルーンカテーテルは、吻合部分等を拡張させた後は、体内から取り出し、ステントは、吻合部分等を拡張させた後は、そのまま留置する。
【0005】
上記のようなガイドワイヤとしては、例えば、下記特許文献1には、コアシャフトと、コアシャフトの周りに巻回されてなる第1コイル体と、第1コイル体の内側に設けられた第2コイル体とを備えたものが記載されている。第1コイル体は、各素線が離間した疎巻き部と、疎巻き部の基端側に隣接して設けられ、各素線が接触した密巻き部とを有し、疎巻き部と密巻き部との境界部分には、コアシャフトに接合せず第1コイル体と第2コイル体とを接合した接合部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6008451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図8に示すように、前記吻合部分3は、動脈1に静脈2を吻合した関係上、二股形状となる。吻合部分3がこのような形状の場合、動脈1におけるガイドワイヤ5の進行方向(矢印F1参照)と、静脈2におけるガイドワイヤ5の進行方向(矢印F2参照)とが逆向きとなるため、吻合部分3の近傍において、ガイドワイヤ5の最先端5aの向きを変える必要がある。そのため、ガイドワイヤ5の先端部には、曲げやすさが要求される。
【0008】
この点、上記特許文献1のガイドワイヤの場合、第1コイル体は、疎巻き部と密巻き部との間の境界部分に接合部が設けられており、この接合部を介して第1コイル体の剛性が変化するので、前記境界部分で、第1コイル体が曲がりやすく、ガイドワイヤの先端部が変形しやすい。また、上記のような吻合部分等へのガイドワイヤ挿入時のみならず、血管等の管状器官や体腔等の屈曲部分の所定箇所に、ガイドワイヤを挿入する際にも、ガイドワイヤ先端部の曲げやすさが要求される。
【0009】
しかし、特許文献1のガイドワイヤのように、第1コイル体側の工夫だけでは、ガイドワイヤ全体の先端部の曲がりやすさを確保するうえで不十分であり、図8に示すように、ガイドワイヤ5を静脈2へと到達させにくい場合があり、また、血管等の管状器官や体腔等の屈曲部分の所定箇所に、ガイドワイヤを到達させにくい場合があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ガイドワイヤの先端部を曲げやすくして、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等であっても、容易に挿入することができる、ガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るガイドワイヤの一つは、基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、該芯線の前記先端部の外周に装着されたコイル部材と、前記芯線の前記先端部及び前記コイル部材の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部とを有しており、前記芯線の前記先端部は、その軸方向において剛性が急激に変化する剛性変化部を有し、該剛性変化部を境界として、軸方向の先端側部分の曲げ強度と軸方向の基端側部分の曲げ強度とが異なるように形成されており、前記コイル部材は、線材を所定間隔を空けて巻回してなる疎巻き部分が全長に亘り形成されたものとなっており、前記樹脂充填部は、前記芯線の前記先端部の先端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部分との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部と、前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部との間に、前記第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るガイドワイヤのもう一つは、基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、該芯線の前記先端部の外周に装着されたコイル部材と、前記芯線の前記先端部及び前記コイル部材の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部とを有しており、前記芯線の前記先端部は、その軸方向において剛性が急激に変化する剛性変化部を有し、該剛性変化部を境界として、軸方向の先端側部分の曲げ強度と軸方向の基端側部分の曲げ強度とが異なるように形成されており、前記コイル部材は、線材を所定間隔を空けて巻回してなる疎巻き部分と、線材を間隔を空けずに巻回してなる密巻き部分とを有しており、前記疎巻き部分が先端側に配置され、前記密巻き部分が基端側に配置されており、前記樹脂充填部は、前記芯線の前記先端部の先端側部分と、前記コイル部材の前記疎巻き部分との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部を有していると共に、前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記密巻き部分との間に、前記第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部を有しているか、又は、前記芯線の前記先端部の、前記先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、前記コイル部材の前記密巻き部分との間は、空隙となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るガイドワイヤの一つによれば、芯線の先端部では、剛性変化部により曲げ強度の変化を生じさせることができ、樹脂充填部では、先端側充填部と基端側充填部との境界部分により硬度の変化を生じさせることができる。その結果、曲げ強度の変化を生じさせる部分及び硬度の変化を生じさせる部分の両方を起点として、ガイドワイヤの先端部を曲げやすくすることができ、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤを容易に挿入することができる。
【0014】
また、本発明に係るガイドワイヤのもう一つによれば、芯線の先端部では、剛性変化部により曲げ強度の変化を生じさせることができ、樹脂充填部では、先端側充填部と基端側充填部の境界部分又は先端側充填部と空隙との境界部分により硬度の変化を生じさせることができる。その結果、曲げ強度の変化を生じさせる部分及び硬度の変化を生じさせる部分の両方を起点として、ガイドワイヤの先端部を曲げやすくすることができ、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤを容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るガイドワイヤの第1実施形態を示しており、その断面図である。
図2】同ガイドワイヤの先端部が曲がった状態の断面図である。
図3】同ガイドワイヤの使用方法を示しており、(a)第1工程の説明図、(b)は第2工程の説明図、(c)は第3工程の説明図である。
図4】同ガイドワイヤの使用方法を示しており、(a)第4工程の説明図、(b)は第5工程の説明図、(c)は第6工程の説明図である。
図5】本発明に係るガイドワイヤの第2実施形態を示しており、その断面図である。
図6】本発明に係るガイドワイヤの第3実施形態を示しており、(a)はその断面図、(b)は(a)に直交する方向での断面図、(c)は(a)のA-A矢視線における断面図である。
図7】本発明に係るガイドワイヤの第4実施形態を示しており、その断面図である。
図8】従来のガイドワイヤの使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ガイドワイヤの第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係るガイドワイヤの一実施形態について説明する。図1~4には、本発明に係るガイドワイヤの第1実施形態が示されている。
【0017】
図1に示すように、この実施形態のガイドワイヤ10は、基部21及び基部21よりも縮径した先端部23を有する芯線20と、該芯線20の先端部23の外周に装着されたコイル部材40と、芯線20の先端部23及びコイル部材40の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部50とを有している。
【0018】
なお、図1に示すように、ガイドワイヤ10の軸方向において、芯線20の先端部23や、コイル部材40、樹脂充填部50が位置する部分を、ガイドワイヤ10の先端部11とする。
【0019】
まず、芯線20について説明する。
【0020】
この実施形態における芯線20の基部21は、円形断面を有する丸線であって、一定の外径にて所定長さで延びている。この基部21の先端からは、芯線20の最先端23aに向けて次第に縮径するように所定角度で傾斜して延びる第1テーパ部25が設けられている。
【0021】
また、この第1テーパ部25の先端部分から、芯線20の最先端23aに向けて次第に縮径するように、且つ、第1テーパ部25と異なる角度で傾斜して延びる第2テーパ部27が設けられている。なお、芯線20の軸心Cに対する第2テーパ部27の角度θ2は、芯線20の軸心Cに対する第1テーパ部25の角度θ1よりも大きく、第2テーパ部27は第1テーパ部25よりも急角度で傾斜している。更に、第2テーパ部27の先端部分27aから、一定の外径で直線状をなすように、細径部29が延びている。
【0022】
なお、この実施形態の場合、第1テーパ部25と、第2テーパ部27と、細径部29とが、芯線20の先端部23をなしている。
【0023】
また、芯線20の先端部23の最先端23aが、ガイドワイヤ操作者の手元側から最も離れた遠位端であり、基部21の最基端が、ガイドワイヤ操作者の手元側に最も近い近位端となっている。
【0024】
なお、上記の芯線20や以下に説明する各部材(コイル部材、樹脂充填部等)における「先端部」、「先端」、「先端側」とは、ガイドワイヤ操作者の手元側から最も離れた遠位端部、遠位端、遠位端側を意味し、更に、「基端部」、「基端」、「基端側」とは、ガイドワイヤ操作者の手元側に最も近い近位端部、近位端、近位端側を意味する。
【0025】
そして、芯線20の先端部23は、その軸方向において剛性が急激に変化する剛性変化部31を有しており、該剛性変化部31を境界として、軸方向の先端側部分(以下、単に「軸方向先端側部分」ともいう)の曲げ強度と、軸方向の基端側部分(以下、単に「軸方向基端側部分」ともいう)の曲げ強度とが異なるように形成されている。
【0026】
また、芯線20の先端部23は、第2テーパ部27の先端部分27aと、細径部29の基端部分29aとの境界部分(連結部分)において、その外径が非常に大きく変化するように形成されることで、上記境界部分で、芯線20の先端部23の剛性が急激に変化するようになっており、上記境界部分が剛性変化部31をなしている。なお、剛性変化部31は、芯線20の先端部23の剛性が急激に変化するという意味で、「剛性ギャップ」ともいえる。
【0027】
また、この実施形態の場合、前記細径部29が、上記の「軸方向先端側部分」をなしており、前記第2テーパ部27、及び、前記第1テーパ部25の先端部側(第2テーパ部27に連設する端部側)で且つコイル部材40が外装される部分が、上記の「軸方向基端側部分」をなしている。
【0028】
そして、この実施形態の場合、芯線20の先端部23は、剛性変化部31を境界として、軸方向先端側部分の曲げ強度よりも、軸方向基端側部分の曲げ強度が大きくなるように形成されている。
【0029】
なお、この実施形態では、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分の曲げ強度は、その径方向全域において、芯線20の先端部23の軸方向基端側部分の曲げ強度よりも小さい。すなわち、後述する図6に示すガイドワイヤ10Bの芯線20の先端部23の軸方向先端側部分(鍛造加工部38)のように、曲がりやすい方向がある(曲がりやすさに方向性がある)のに対して、この実施形態における、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分の曲がりやすい方向は特にない(曲がりやすさに方向性はない)構成となっている。
【0030】
また、本発明における剛性とは、「曲げ剛性」を意味している。なお、この曲げ剛性は、ヤング率×断面二次モーメントで算出される。
【0031】
この実施形態の場合、芯線20は、中実の円形断面を有する丸線であるので、仮に、第2テーパ部27の先端部分27aにおける外径をD1とすると、断面二次モーメントは、πD14/64(mm4)となる。また、細径部29の基端部分29aにおける外径をD2とすると、断面二次モーメントは、πD24/64(mm4)となる。仮に、D1が2mmの場合、断面二次モーメントは0.785mm4となり、D2が1.5mmの場合、断面二次モーメントは0.249mm4となり、第2テーパ部27の先端部分27aと細径部29の基端部分29aとの境界部分である剛性変化部31において、曲げ剛性が急激に変化することになる。
【0032】
また、本発明における「剛性変化部」とは、次のように規定することもできる。すなわち、本発明における「剛性変化部」とは、図1に示す第1実施形態のガイドワイヤ10や、図5に示す第2実施形態のガイドワイヤ10A、図7に示す第4実施形態のガイドワイヤ10C等のように、芯線20の先端部23の外径が変化する構成の場合は、芯線の先端部を径方向外方から見たときに、凹部や隅部となり、且つ、芯線の先端部に曲げ応力が付与されたときに、曲げ応力が集中する部分を意味する。それによって、芯線の先端部に曲げ応力が付与されたときに、芯線の先端部は、剛性変化部を起点として曲がるように構成されている。
【0033】
すなわち、第2テーパ部27の先端部分27aと細径部29の基端部分29aとの境界部分は、芯線20の先端部23を径方向外方から見たときに(図1の部分拡大図の矢印F3参照)、凹部や隅部となり、且つ、芯線20の先端部23に曲げ応力が付与されたときに、曲げ応力が集中する部分となることから、剛性変化部31をなしている。そして、芯線20の先端部23に曲げ応力が付与されたときに、芯線20の先端部23は、図2に示すように、剛性変化部31を起点として曲がるようになっている。
【0034】
一方、第1テーパ部25の先端部分と第2テーパ部27の基端部分との境界部分は、芯線20の先端部23を径方向外方から見たときに(図1の部分拡大図の矢印F4参照)、凸部や角部となるため、本発明における「剛性変化部」とはならない。
【0035】
なお、芯線の先端部に、上記のような剛性変化部が複数存在する場合は、そのうちの最も剛性変化率が大きい部分が、本発明における「剛性変化部」となる。
【0036】
また、図6に示す第3実施形態のガイドワイヤ10Bのように、芯線20の先端部23の加工度が変化する構成の場合における「剛性変化部」とは、芯線20の先端部23における加工率の高い部分と加工率の低い部分との境界部分を意味する。
【0037】
なお、上記芯線20としては、例えば、Ni-Ti系合金,Ni-Ti-X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu-Zn-X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレス、ピアノ線材などを用いることができ、或いは、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属を用いることもできる。上記の中でも、Ni-Ti係合金、Ni-Ti-X合金、ステンレスを用いることが好ましい。
【0038】
次に、芯線20の先端部23の外周に装着されたコイル部材40について説明する。
【0039】
この実施形態におけるコイル部材40は、一定外径の円形の線材41を、所定間隔を空けて巻回してなる、疎巻き部分43が全長に亘り形成されている。
【0040】
また、コイル部材40の内径及び外径は、基端から先端に至るまで一定径で形成されている。更に、コイル部材40の内径は、芯線20の先端部23の、第1テーパ部25の先端部分の外径、第2テーパ部27の外径、細径部29の外径よりも、大きくなるように形成されている。そのため、コイル部材40を、芯線20の先端部23の外周に配置した状態では、コイル部材40の内周と、芯線20の先端部23の上記箇所(第1テーパ部25の先端部分、第2テーパ部27、細径部29)における外周との間に、所定の隙間が形成されるようになっている。
【0041】
また、コイル部材40は、芯線20の先端部23の外周に配置された状態で、その基端側が、第1テーパ部25の先端部分の所定箇所に、固着部33を介して固着される。更に、コイル部材40は、芯線20の先端部23の外周に配置された状態で、その先端側が、細径部29の先端(芯線20の先端部23の最先端23a)に、固着部35を介して固着される。このように、コイル部材40の基端側及び先端側が、固着部33,35を介して芯線20の先端部23に固着されることで、芯線20の先端部23の外周にコイル部材40が装着されるようになっている。
【0042】
なお、上記コイル部材40を形成する線材41としては、例えば、Ni-Ti系合金,Ni-Ti-X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu-Zn-X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレス、ピアノ線材などを用いることができ、或いは、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属を用いることもできる。上記の中でも、Ni-Ti係合金、Ni-Ti-X合金、ステンレスを用いることが好ましい。
【0043】
また、上記の固着部33,35としては、例えば、SnやAgロウ等のロウ材や、紫外線硬化型のアクリレート樹脂、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、アクリレート系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等を用いることができる。
【0044】
次に、芯線20の先端部23及びコイル部材40の間に、樹脂が充填されてなる樹脂充填部50について説明する。
【0045】
この樹脂充填部50は、芯線20の先端部23の先端側部分、及び、コイル部材40の疎巻き部分43の間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部51と、芯線20の先端部23の、先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分、及び、コイル部材40の疎巻き部分43の間に、第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部53とを有する。
【0046】
この実施形態の場合、先端側充填部51及び基端側充填部53は、芯線20の先端部23の外周とコイル部材40の内周との隙間全体に充填されると共に、コイル部材40の線材41,41の間にも入り込むようになっている。
【0047】
そして、上記のように、先端側充填部51に充填された第1の樹脂の硬度よりも、基端側充填部53に充填された第2の樹脂の硬度の方が高く、先端側充填部51と基端側充填部53とで硬度が異なることから、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55(すなわち、先端側充填部51の基端と基端側充填部53の先端とが互いに向き合う部分)において、硬度変化が明確となる。なお、上記の境界部分55は、樹脂充填部50の硬度が変化するという意味で、「硬度ギャップ」ともいえる。
【0048】
その結果、図2に示すように、ガイドワイヤ10の先端部11に曲げ応力が付与されたときに、ガイドワイヤ10の先端部11が、芯線20の先端部23の剛性変化部31(剛性ギャップ)を起点して曲がるだけではなく、樹脂充填部50の先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55(硬度ギャップ)を起点としても曲がるようになっている。
【0049】
また、この実施形態の場合、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55は、芯線20の先端部23に設けた剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されている。
【0050】
先端側充填部51を構成する第1の樹脂、及び、基端側充填部53を構成する第2の樹脂は、例えば、ポリウレタンや、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、アクリレート樹脂等の紫外線硬化樹脂、接着剤(アクリレート樹脂、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系)に用いられる樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂などを採用することができる。ただし、第2の樹脂の硬度は、第1の樹脂の硬度よりも高いものであることが必要である。なお、この実施形態の場合、第1の樹脂は、ポリウレタンとなっており、第2の樹脂は、紫外線硬化型のアクリレート樹脂となっている。
【0051】
また、第1の樹脂及び第2の樹脂の材料は、例えば、JIS K 6253に規定される、デュロメータで計測した硬度において、その差が、10以上となる材料であることが好ましく、50以上となる材料であることがより好ましい。
【0052】
更に、少なくともコイル部材40の外周には、樹脂カバー60が被覆されている。図1に示すように、この実施形態の場合、樹脂カバー60は、コイル部材40の外周及び芯線20の外周全体に被覆されている。
【0053】
また、樹脂カバー60の内面が、先端側充填部51及び基端側充填部53に接合されている。この実施形態の場合、樹脂カバー60は、その内面が、コイル部材40の外周に接着剤等を介して接合すると共に、図1の部分拡大図に示すように、コイル部材40を形成する線材41,41の間に入り込んだ先端側充填部51及び基端側充填部53にも、接着剤等を介して接合するようになっている。
【0054】
更に、この実施形態の場合、樹脂カバー60の外周に、更に親水性樹脂膜70が被覆されている。この親水性樹脂膜70は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の親水性樹脂などを採用することができる。
【0055】
なお、図1に示すように、樹脂カバー60の先端(芯線20の最先端23aに位置する固着部35を被覆した部分)や親水性樹脂膜70の先端を含めた箇所を、ガイドワイヤ10の最先端13とする。
【0056】
(変形例)
以上説明したガイドワイヤを構成する芯線、コイル部材、樹脂充填部等の、形状や構造、材質、レイアウトなどは、上記態様に限定されるものではない。
【0057】
この実施形態の芯線20の先端部23の場合、芯線20の最先端23aに向けて次第に縮径する2個のテーパ部25,27と一定径の細径部29とを有する構成となっているが、芯線の先端部としては、例えば、(1)1個又は3個以上のテーパ部と細径部との組み合わせとしたり、(2)1個又は複数のテーパ部のみの組み合わせとしたり、(3)一定径且つ一定長さで延びる大径部と、該外径部よりも小径で一定径且つ一定長さで延びる小径部とを有し、芯線の先端部外周が階段状に変化するような形状としたりしてもよく、剛性変化部を有する形状・構造であればよい。
【0058】
また、この実施形態における剛性変化部31は、芯線20の先端部23の外径を、剛性変化部31を境界として大きく変化させることで設けられているが、剛性変化部は、例えば、芯線の先端部の軸方向先端側部分や軸方向基端側部分に、鍛造加工等を施すことで設けてもよい(これについては図6に示す第3実施形態で説明する)。
【0059】
更に、この実施形態の場合、芯線20の先端部23は、剛性変化部31を境界として、軸方向先端側部分の曲げ強度よりも、軸方向基端側部分の曲げ強度が大きく形成されているが、芯線の先端部としては、剛性変化部を境界として、軸方向基端側部分の曲げ強度よりも、軸方向先端側部分の曲げ強度を大きく形成してもよい。
【0060】
また、この実施形態では、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55は、芯線20の先端部23の剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されているが、先端側充填部と基端側充填部との境界部分は、例えば、剛性変化部に対して、芯線の先端側又は基端側に、1~5mm位置ずれしていてもよい。
【0061】
更に、この実施形態のコイル部材40は、疎巻き部分43が全長に亘り形成されているが、コイル部材としては、例えば、疎巻き部分と密巻き部分とを有するものであってもよい(これについては、図7に示す第4実施形態で説明する)。
【0062】
また、この実施形態の樹脂充填部50は、先端側充填部51と基端側充填部53とを有する構成となっているが、樹脂充填部としては、例えば、芯線の先端側部分のみに先端側充填部を設け、芯線の基端側部分は空隙とする構成であってもよい(これについては、図7に示す第4実施形態の説明中にて詳述する)。
【0063】
更に、この実施形態における樹脂カバー60は、コイル部材40のみならず、芯線20の外周全体も被覆しているが、樹脂カバーとしては、少なくともコイル部材を被覆可能であればよい。
【0064】
また、この実施形態では、コイル部材40は、その基端側及び先端側が、固着部33,35を介して、芯線20に固着されるようになっているが、コイル部材としては、その基端側及び先端側を、固着部を介して芯線に固着させなくてもよい。
【0065】
更に、この実施形態では、コイル部材40は、芯線20の剛性変化部31を境にして、基端側及び先端側に向けて、略同一長さで延びているが(図1参照)、例えば、コイル部の基端側を、芯線20の先端部23の第1テーパ部25の基端部側に向けて、図1よりも長く延びるようにしてもよく、コイル部材の長さは特に限定されない。
【0066】
また、この実施形態では、同一材料からなる線材で巻回されたコイル部材40を採用したが、2種以上の材料からなるコイル部材を、組み合わせて用いてもよい。例えば、芯線20の剛性変化部31よりも軸方向先端側部分の外周に、Pt製の線材からなるコイル部材を配置し、剛性変化部31よりも軸方向基端側部分の外周に、W製の線材からなるコイル部材を配置してもよい。この場合、Pt製コイル部材の基端部と、W製コイル部材の先端部との境界部分で、両コイル部材の、互いの線材どうしを適宜絡ませることで、両コイル部材を軸方向に連結することができる。
【0067】
更に、樹脂カバー60の材質は特に限定されないが、樹脂カバーの材質は、先端側充填部51を構成する第1の樹脂、又は、基端側充填部53を構成する第2の樹脂と、同一としてもよい。
【0068】
(作用効果)
次に、上記構造からなる本発明のガイドワイヤの使用方法等について説明する。
【0069】
この実施形態のガイドワイヤ10は、図3図4に示すように、例えば、人工透析に際して静脈に流れる血液量の増大のため、腕の皮下等において動脈1と静脈2とを吻合してシャントが形成される場合に、動脈1と静脈2との吻合部分3を拡張させるための拡張具(バルーンカテーテル7)を、当該吻合部分3に留置する際に用いられる。なお、動脈1と静脈2との吻合部分3は、二股形状をなしている。
【0070】
なお、ガイドワイヤ10としては、例えば、腕の皮下以外の血管や、胆管、膵管、尿管、気管等の各種の管状器官や、体腔等の人体組織の所定位置に、カテーテルを配置したりステントを留置したりする際にも用いることができ、ガイドワイヤ10の使用箇所は特に限定されない。
【0071】
ガイドワイヤ10の使用に際しては、ガイドワイヤ10を、その先端部11側から、動脈1に挿入して押し込んでいく(図3(a)の矢印F1参照)。そして、ガイドワイヤ10の最先端13が、吻合部分3を通過して、動脈1の内壁の所定箇所に当接すると、図2に示すように、ガイドワイヤ10の先端部11が、芯線20の先端部23の剛性変化部31、及び、樹脂充填部50の先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55を起点として曲がる。また、図3(a)に示すように、ガイドワイヤ10の最先端13が吻合部分3の内壁に当接する。
【0072】
更に、ガイドワイヤ10を押し込んでいくと、図3(b)に示すように、ガイドワイヤ10が軸方向の所定箇所で略U字状をなすように湾曲するが、この際、ガイドワイヤ10の最先端13は吻合部分3の内壁から離れて静脈2に向かなくなる。そのため、ガイドワイヤ10の基端部側を回転させて、図3(c)に示すように、ガイドワイヤ10の先端部11を回転させ、その最先端13を静脈2に向ける。
【0073】
その状態で、ガイドワイヤ10を押し込んでいくと、図4(a)に示すように、ガイドワイヤ10の先端部11が静脈2の内腔に挿入される。更にガイドワイヤ10を押し込んで、図4(b)に示すように、ガイドワイヤ10の最先端13を静脈2の所定位置に到達させる。その後、ガイドワイヤ10でバルーンカテーテル7をガイドしながら挿入していき、吻合部分3にバルーンカテーテル7を留置した後、ガイドワイヤ10をバルーンカテーテル7から引き抜く。
【0074】
上記状態で、バルーンカテーテル7を、生理食塩水等で膨らませることで、図4(c)に示すように、吻合部分3の内径を拡張させることができる。
【0075】
そして、このガイドワイヤ10においては、芯線20の先端部23では、剛性が急激に変化する剛性変化部31を境界として、軸方向先端側部分と軸方向基端側部分との曲げ強度が異なるように形成されているので、芯線20の先端部23は、剛性変化部31を境界として、曲げ強度の変化を明確に生じさせることができる。
【0076】
また、樹脂充填部50は、第1の樹脂が充填される先端側充填部51と、第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填された基端側充填部53とを有するので、先端側充填部51と基端側充填部53との間の境界部分55を境界として、硬度の変化を明確に生じさせることができる。
【0077】
したがって、湾曲した管状器官や体腔等へのガイドワイヤ10の挿入時に、ガイドワイヤ10の先端部11を、芯線20の先端部23の曲げ強度が変化した剛性変化部31(剛性ギャップ)と、樹脂充填部50の硬度が変化した境界部分55(硬度ギャップ)との、両方を起点として曲げやすくすることができる(図3(a)参照)。その結果、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10を容易に挿入することができる。また、ガイドワイヤ10の先端部11を、ガイドワイヤ操作者の意図に沿って曲げやすくなる。
【0078】
また、この実施形態においては、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55は、芯線20の先端部23に設けた剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されている。
【0079】
上記態様によれば、芯線20の先端部23で、曲げ強度が変化する剛性変化部31と、樹脂充填部50で、硬度が変化する先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55とを、軸方向において一致させることができるので、ガイドワイヤ10の先端部11をより曲げやすくして、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10をより容易に挿入することができる。
【0080】
更に、この実施形態においては、少なくともコイル部材40の外周には、樹脂カバー60が被覆されており、樹脂カバー60の内面が、先端側充填部51及び基端側充填部53に接合されている(図1の部分拡大図参照)。
【0081】
上記態様によれば、樹脂カバー60の内面が、先端側充填部51及び基端側充填部53に接合されているので、コイル部材40に対して樹脂カバー60を位置ずれさせにくくすることができる。すなわち、コイル部材40の内側に充填された両充填部51,53と、コイル部材40の外周に被覆された樹脂カバー60とによって、コイル部材40が挟持される態様となるため、コイル部材40に対して樹脂カバー60が位置ずれしにくくなる。
【0082】
また、先端側充填部51と基端側充填部53との収縮率の変化等によって、樹脂充填部50の外面に凹凸等が生じても、そのような凹凸等を樹脂カバー60によって被覆することができる。
【0083】
更に、先端側充填部51や基端側充填部53の材料の物性等の影響によって、コイル部材40及び樹脂充填部50の外周に、親水性樹脂膜70等をコーティングさせにくくなることがある。このような場合であっても、コイル部材40の外周に被覆された樹脂カバー60上に、親水性樹脂膜70等をコーティングすることができるので、先端側充填部51や基端側充填部53の材料を自由に選択することができる。
【0084】
(ガイドワイヤの第2実施形態)
図5には、本発明に係るガイドワイヤの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図5に示すように、この第2実施形態のガイドワイヤ10Aは、芯線20の先端部23に対するコイル部材40の装着態様が、前記第1実施形態と異なっている。すなわち、コイル部材40は、その基端側及び先端側が、固着部33,35を介して芯線20の先端部23に固着されると共に、芯線20の先端部23の剛性変化部31に配置される固着部37を介して、剛性変化部31の部分にも固着されている。
【0086】
なお、樹脂充填部50における、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55は、剛性変化部31及び固着部37に対して、芯線20の軸方向において一致するように配置されている。
【0087】
そして、この実施形態のガイドワイヤ10Aにおいては、芯線20の先端部23での、剛性変化部31による曲げ強度の変化と、樹脂充填部50での、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55による硬度の変化とが、固着部37によって更に明確になって(強調されて)、ガイドワイヤ10Aの先端部23を一層曲げやすくすることができ、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10Aを更に容易に挿入することができる。
【0088】
(ガイドワイヤの第3実施形態)
図6には、本発明に係るガイドワイヤの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図6に示すように、この第3実施形態のガイドワイヤ10Bは、第1実施形態のガイドワイヤ10や、第2実施形態のガイドワイヤ10A、第4実施形態のガイドワイヤ10Cとは異なり、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分に、鍛造加工を施すことで、剛性変化部31が設けられている。
【0090】
すなわち、図6(a)に示すように、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分のみに、鍛造加工が施されることで、鍛造加工部38が設けられている。なお、芯線20の先端部23の軸方向基端側部分には、鍛造加工は施されていない。
【0091】
また、鍛造加工部38は、鍛造加工が施されることによって、芯線20の先端部23の軸方向基端側部分に対して肉薄となり(図6(b)参照)、且つ、平坦面状をなした長板形状となっている(図6(a))。
【0092】
更に、鍛造加工部38の軸方向の基端部38aは、第1テーパ部25の先端部分と連結されている。また、鍛造加工部38の基端部38aの両側部は、図6(a)に示すように芯線20の断面を側方から見たときに、次第に幅狭となるテーパ状をなし、且つ、図6(b)に示すように芯線20の断面を平面方向から見たときに(図6(a)に対して直交する方向から見たときに)、次第に幅広となるテーパ状をなしている。
【0093】
なお、この実施形態の場合、鍛造加工部38が、芯線20の先端部23の「軸方向先端側部分」をなし、第1テーパ部25の先端部側で且つコイル部材40が外装される部分が、芯線20の先端部23の「軸方向基端側部分」をなしている。
【0094】
また、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分に、鍛造加工部38が施されることにより、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分における加工率の方が、軸方向基端側部分における加工率よりも大きくなり、軸方向先端側部分の硬度が、軸方向基端側部分の硬度よりも高くなる。
【0095】
すなわち、芯線20の先端部23における加工率の高い部分である鍛造加工部38の基端部38aと、加工率の低い部分である第1テーパ部25の先端部との境界部分が、剛性変化部31をなしている。その結果、芯線20の先端部23は、剛性変化部31を境界として、軸方向先端側部分の曲げ強度と軸方向基端側部分の曲げ強度とが異なるようになっている。
【0096】
なお、この実施形態の場合、芯線20の先端部23の軸方向先端側部分に設けた鍛造加工部38が、平坦面状をなしているので、図6(b)の矢印F3に示すように、面方向に直交する方向では曲がりやすくなる一方、図6(a)の矢印F4に示す方向(平坦面状をなした鍛造加工部38の幅方向)には曲がりにくくなる(曲がりやすさに方向性がある、と言える)。
【0097】
そのため、この実施形態のガイドワイヤ10Bの場合、少なくとも図6(b)に示すように、芯線20の断面を平面方向から見たとき(鍛造加工部38の厚さ方向から見たときともいえる)、芯線20の先端部23は、剛性変化部31を境界として、軸方向先端側部分の曲げ強度よりも、軸方向基端側部分の曲げ強度が大きくなる。
【0098】
そして、この実施形態のガイドワイヤ10Bにおいても、第1実施形態等と同様に、芯線20の先端部23の剛性変化部31と、樹脂充填部50の先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55との、両方を起点として曲げやすくして、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10Aを容易に挿入することができる。
【0099】
(ガイドワイヤの第4実施形態)
図7には、本発明に係るガイドワイヤの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0100】
図7に示すように、この第4実施形態のガイドワイヤ10Cは、コイル部材の構造が、前記第1~第3の実施形態と異なっている。
【0101】
すなわち、この実施形態におけるコイル部材40Cは、線材41を所定間隔を空けて巻回してなる疎巻き部分43と、線材41を間隔を空けずに巻回してなる密巻き部分45とを有しており、疎巻き部分43が先端側に配置され、密巻き部分45が基端側に配置されている。
【0102】
また、疎巻き部分43と密巻き部分45とは、いずれも一定外径の円形の線材41を、間隔を空けるか又は間隔を空けずに巻回することで形成されており、疎巻き部分43及び密巻き部分45の内径及び外径は、基端から先端に至るまで一定径で形成されている。
【0103】
そして、密巻き部分45は、芯線20の先端部23の外周に配置された状態で、その基端側が、芯線20の先端部23の第1テーパ部25の軸方向途中部分に、固着部33を介して固着される。一方、疎巻き部分43は、芯線20の先端部23の外周に配置された状態で、その基端側を、密巻き部分45の先端に当接させると共に、先端側が、芯線20の先端部23の細径部29の先端に、固着部35を介して固着される。
【0104】
こうして、コイル部材40Cは、疎巻き部分43を先端側に、密巻き部分45を基端側に配置した状態で、芯線20の先端部23の外周に装着される。
【0105】
また、樹脂充填部50は、芯線20の先端部23の先端側部分と、コイル部材40Cの疎巻き部分43との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部51を有していると共に、芯線20の先端部23の、先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、コイル部材40Cの密巻き部分45との間に、第1の樹脂の硬度よりも高い硬度となる第2の樹脂が充填される基端側充填部53とを有している。
【0106】
また、図7に示すように、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55は、
芯線20の先端部23に設けた剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されている。更に、コイル部材40Cの疎巻き部分43と密巻き部分45との境界部分も、芯線20の先端部23に設けた剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されている。
【0107】
また、図7に示すように、少なくともコイル部材40Cの外周には、樹脂カバー60が被覆されており(ここでの樹脂カバー60は、コイル部材40Cの外周及び芯線20の外周全体に被覆されている)、樹脂カバー60の内面が、少なくとも先端側充填部51に接合されている。
【0108】
なお、樹脂充填部としては、芯線20の先端部23の先端側部分と、コイル部材40Cの疎巻き部分43との間に、第1の樹脂が充填される先端側充填部51を有していると共に、芯線20の先端部23の、先端側部分よりも基端側に位置する基端側部分と、コイル部材40Cの密巻き部分45との間は、空隙となっている構成(樹脂が充填されない構成)としてもよい。
【0109】
また、上記のように基端側充填部53が存在せず、空隙を有する構成の場合、先端側充填部51と空隙との境界部分、及び、コイル部材40Cの疎巻き部分43と密巻き部分45との境界部分が、剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向において一致するように配置されるようになっている。
【0110】
そして、このガイドワイヤ10Cにおいては、芯線20の先端部23では、剛性変化部31により、曲げ強度の変化を生じさせることができると共に、樹脂充填部50では、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55、又は、先端側充填部51と空隙との境界部分において、硬度の変化を生じさせることができる。また、コイル部材40Cの疎巻き部分43と密巻き部分45との境界部分において、コイル部材40Cの剛性の変化を生じさせることができる。
【0111】
その結果、ガイドワイヤ10の先端部11を、芯線20の先端部23の曲げ強度が変化した剛性変化部31と、樹脂充填部50の硬度が変化した境界部分55、又は、先端側充填部51と空隙との境界部分と、コイル部材40Cの、剛性が変化した疎巻き部分43と密巻き部分45との境界部分との、全てを起点として曲げやすくすることができ、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10を容易に挿入することができる。
【0112】
また、この実施形態においては、先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55、又は、先端側充填部51と空隙との境界部分は、芯線20の先端部23に設けた剛性変化部31に対して、芯線20の軸方向に一致するように配置されている。
【0113】
上記態様によれば、芯線20の先端部23で、曲げ強度が変化する剛性変化部31、及び、樹脂充填部50で、硬度が変化する先端側充填部51と基端側充填部53との境界部分55、又は、先端側充填部51と空隙との境界部分を、軸方向において一致させることができるので、ガイドワイヤ10の先端部11をより曲げやすくして、屈曲したり湾曲したりした管状器官や体腔等に、ガイドワイヤ10をより容易に挿入することができる。
【0114】
更に、この実施形態においては、少なくともコイル部材40Cの外周には、樹脂カバー60が被覆されており、樹脂カバー60の内面が、少なくとも先端側充填部51に接合されている。
【0115】
上記態様によれば、樹脂カバー60の内面が、少なくとも先端側充填部51に接合されているので、コイル部材40Cに対して樹脂カバー60を位置ずれさせにくくすることができる。すなわち、コイル部材40Cの内側に充填された先端部充填部51と、コイル部材40Cの外周に被覆された樹脂カバー60とによって、コイル部材40Cが挟持される態様となるため、コイル部材40Cに対して樹脂カバー60が位置ずれしにくくなる。
【0116】
また、先端側充填部51と基端側充填部53とを有している場合に、両充填部51,53の収縮率の変化等によって、樹脂充填部50の外面に凹凸等が生じても、そのような凹凸等を樹脂カバー60によって被覆することができる。
【0117】
更に、先端側充填部51と基端側充填部53とを有している場合や、或いは、先端側充填部51のみ有している場合において、各充填部の材料の物性等の影響によって、コイル部材40C及び樹脂充填部50の外周に、親水性樹脂膜70等をコーティングさせにくくなることがある。このような場合であっても、コイル部材40Cの外周に被覆された樹脂カバー60上に、親水性樹脂膜70等をコーティングすることができるので、先端側充填部51や基端側充填部53の材料を自由に選択することができる。
【0118】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
10,10A,10B,10C ガイドワイヤ
20 芯線
23 先端部
31 剛性変化部
40,40C コイル部材
41 線材
43 疎巻き部分
45 密巻き部分
50 樹脂充填部
51 先端側充填部
53 基端側充填部
55 境界部分
60 樹脂カバー
70 親水性樹脂膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8