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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066598
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】顔料粉体の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/08 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
C09C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176059
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昇
(72)【発明者】
【氏名】秦 萌
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037CB04
4J037CB09
4J037CB10
4J037CB22
4J037EE28
4J037EE29
(57)【要約】
【課題】従来方法よりも、多くの水難溶性化合物を均一に顔料表面に付着させることのできる顔料粉体の表面処理方法を提供する。
【解決手段】水難溶性化合物と顔料粉体とを混合して粉体混合物にする工程と前記粉体混合物に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にする工程とで表面処理し、さらに加熱熟成させ水を蒸発除去する。この表面処理方法によって得られた表面処理粉体は、撥水性が高く、均一に水難溶性化合物が被覆された表面処理粉体となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物によって顔料粉体の表面が処理されている表面処理粉体を製造する方法であって、製造工程が前記水難溶性化合物と顔料粉体とを混合して粉体混合物にする工程と前記粉体混合物に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にする工程を包含し、さらに加熱熟成させ水を蒸発除去することを特徴とする顔料粉体の表面処理方法。
【請求項2】
前記水難溶性化合物はセラミド類、高級脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン誘導体、アルキルリン酸からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の顔料粉体の表面処理方法。
【請求項3】
水難溶性化合物の顔料粉体に対する被覆量が、0.1~10質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料粉体の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料粉体の表面に水に難溶である固体状の化合物を表面処理する方法に関し、例えばファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、あるいはサンスクリーン化粧料に配合される顔料粉体の表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水に難溶である固体状の化合物を表面処理する方法としては、1)直接化合物と顔料粉体とを、ボールミルまたは、サンドミルのような機械を用いて混合し、表面処理を行う、メカノケミカル的な方法、あるいは、2)適当な溶剤に表面処理剤となる化合物を溶解または懸濁し、顔料粉体と混合した後に溶剤を除去し必要に応じて粉砕を行う方法が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、上記処理方法1)では、メカノケミカル的な処理ゆえに、顔料表面に均一に化合物を処理することが困難であり、上記処理方法2)では、溶剤に難溶である化合物を用いた場合には、均一な処理が困難であり、また、顔料粉体に対して一定の量以上処理できないという問題点があった
【0004】
また、別の表面処理方法として、顔料粉体を水に分散させ、そこに水に難溶である固体状の化合物と水に可溶な金属塩を添加し、前記化合物の金属塩として粉体表面に吸着させる方法が知られている(特許文献3,4参照)。
【0005】
しかしながら、この方法では一旦、顔料粉体を水に分散させ、その後濾過などの煩雑な手順と前記化合物を金属塩にするなど煩雑さにおいて問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-181136号公報
【特許文献2】特開2007-238690号公報
【特許文献3】特開昭60-184571号公報
【特許文献4】特開昭60-190705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、従来方法よりも、水に難溶である固体状の化合物をそのまま均一に顔料表面に付着させることのできる顔料粉体の表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水に難溶である固体状の化合物と顔料粉体とを十分に混合して粉体混合物にする工程を行い、その後前記粉体混合物に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にする工程を行うことで、従来の方法よりも均一に被覆処理できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
要するに、前記目的を達成するために、本発明による顔料粉体の表面処理方法は、常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物と顔料粉体とを十分に混合して粉体混合物にする工程と前記粉体混合物に顔料粉体に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にする工程を包含することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記水難溶性化合物はセラミド類、高級脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン誘導体、アルキルリン酸からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の顔料粉体の表面処理方法によれば、水難溶性化合物と顔料粉体とを十分に混合して均一な粉体混合物にし、そこに特定量の水を添加混合し、粉体―水混合物にすることで水難溶性化合物が顔料粉体に均一に付着し、その後水を加熱熟成して水難溶性化合物を顔料粉体に表面処理する方法であるので、従来方法よりも、水難溶性化合物をそのまま均一に顔料表面に付着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明による顔料粉体の表面処理方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0013】
本発明による顔料粉体の表面処理方法は、常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物と顔料粉体を混合して粉体混合物にしてから、前記粉体混合物に顔料粉体に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にし、その後加熱熟成させ水を蒸発除去し、場合によっては粉砕することによって、表面処理を行う方法である。さらに水を蒸発除去する方法は、水が除去できれば特に限定されるものではないが、高温(70~120℃)で数時間乾燥する方法である。
【0014】
顔料粉体と前記水難溶性化合物及び水の混合分散方法としては、撹拌羽根を有した反応槽や、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミルなどを選択することができる。また、粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。これらいずれの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。
【0015】
本発明で用いられる水溶媒の質量としては、粉体混合物に対して0.1質量%以上30質量%以下であることが適当である。30質量%超では粉体混合物が凝集してしまい十分に混合された粉体―水混合物が得られ難く、また水を十分に乾燥させるまでに時間がかかってしまい、生産性が低下してしまう。なお、水溶媒の最低必要量は粉体混合物に対して0.1質量%である。0.1質量%未満では水難溶性化合物による表面処理の効果が得られないので好ましくない。
【0016】
本発明において、顔料粉体に表面処理される常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物は、セラミド類、高級脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン誘導体、アルキルリン酸等が挙げられる。
【0017】
本発明に係る水難溶性化合物であるセラミド類は、天然型セラミド及び疑似型セラミドから選ばれる一種または二種以上を用いることができ、具体的には、特開2013-53146号公報記載のセラミド類が使用できる。なお、天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社製)、Ceramide TIC-001(高砂香料社製)、CERAMIDE II(Quest International社製)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社製)、CERAMIDE2(セダーマ社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明に係る水難溶性化合物である高級脂肪酸は、常温で固体であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0019】
本発明に係る水難溶性化合物である高級アルコールは、常温で固体である炭素数14以上の飽和脂肪族アルコールであるミリスチルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0020】
本発明に係る水難溶性化合物であるアルキルグリセリルエーテルは、グリセロールのヒドロキシル基とアルコールがエーテル結合を作った化合物のうち、アルキル基を有するものの総称である。
【0021】
上記アルキルグリセリルエーテルは、モノアルキルグリセリルエーテル、ジアルキルグリセリルエーテル、トリアルキルグリセリルエーテルのいずれでもよく、又はこれらの混合物でもよい。上記の中でもモノアルキルグリセリルエーテルが好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、アルキル基の炭素原子数14~22のものがより好ましい。このアルキルグリセリルエーテルは、常温で固体であり、例えば、バチルアルコール、キミルアルコールなどが挙げられる。
【0022】
本発明に係る水難溶性化合物である脂肪酸エステルは、常温で固体である脂肪酸と高級アルコールとのエステルであり、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る水難溶性化合物であるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステルであり、常温で固体であるプロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート等が挙げられる。
【0024】
本発明に係る水難溶性化合物であるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステルであり、常温で固体である直鎖の高級脂肪酸のエステルであるミリスチル酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る水難溶性化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを重合したポリグリセリンと脂肪酸のエステルでグリセリンの重合度は4以下が好ましい。グリセリンの重合度が4を超えると親水性が高くなり、表面処理粉体の撥水性が得られない場合がある。前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、常温で固体であるステアリン酸ポリグリセリルー2、ステアリン酸ポリグリセリルー4等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る水難溶性化合物であるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸のエステルであり、常温で固体である直鎖の高級脂肪酸のエステルであるモノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る水難溶性化合物であるレシチン誘導体は、生体膜の主要構成成分であるリン脂質を主成分とするレシチンに水素を添加した化合物「水添レシチン」であり、卵黄を原料とするものは「卵黄レシチン」と大豆を原料とするものは「大豆レシチン」に大別され、「大豆レシチン」に水素を添加した水素添加大豆レシチンが挙げられる。
【0028】
本発明に係る水難溶性化合物であるアルキルリン酸は、リン酸とアルコールのエステルであり、炭素数16以上の直鎖の高級アルコールとのエステルが好ましく、モノセチルリン酸、ジセチルリン酸、ジステアリルリン酸が挙げられる。
【0029】
本発明において、使用される水難溶性化合物の中で、特にセラミド類、アルキルグリセリルエーテル、レシチン誘導体、アルキルリン酸が、表面処理粉体の使用感に優れているため好ましい。
【0030】
本発明に用いられる顔料粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)、有色顔料、パール顔料、タール色素等がある。
【0031】
無機粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等が挙げられる。
【0032】
有機粉体としては、例えば、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
有色顔料としては、例えば、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。
【0035】
パール顔料としては、例えば、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。
【0036】
また、タール色素としては、例えば、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0037】
本発明で使用される水難溶性化合物の顔料粉体に対する被覆量は、顔料粉体の粒子径によって異なるが0.1~10質量%とするのが好ましい。この被覆量が0.1質量%未満であると撥水性が十分得られない場合があり、10質量%を超えると感触が重くなる場合がある。
【実施例0038】
次に、本発明の代表的な実施例について説明する。なお、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0039】
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン980gと表1の水難溶性化合物20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、実施例1~7及び比較例1の表面処理粉体を表1の通りに得た。
【0040】
(実施例8)
ヘンシェルミキサーに酸化亜鉛980gとミリスチン酸ミリスチル20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、ミリスチン酸ミリスチル表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0041】
(実施例9)
ヘンシェルミキサーにタルク980gとプロピレングリコールモノステアレート20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、120℃ で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、プロピレングリコールモノステアレート表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0042】
(実施例10)
ヘンシェルミキサーにナイロンパウダー980gとステアリン酸グリセリル20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、ステアリン酸グリセリル表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例11)
ヘンシェルミキサーにステアリン酸マグネシウム980gとステアリン酸ポリグリセリルー2、20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、ステアリン酸ポリグリセリルー2表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0044】
(実施例12)
ヘンシェルミキサーに赤酸化鉄980gとトリステアリン酸ソルビタン20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、110℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、トリステアリン酸ソルビタン表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0045】
(実施例13)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン被覆雲母980gとベヘニルアルコール20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、110℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、ベヘニルアルコール表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例14)
ヘンシェルミキサーに赤色202号、980gとモノセチルリン酸20gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、モノセチルリン酸表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例15)
ヘンシェルミキサーに微粒子酸化チタン(MT-05、テイカ社製)950gと水添レシチン(NIKKOL レシノール S-10、日光ケミカルズ社製)50g を入れ均一に分散する。更に水300gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃ で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し水添レシチン表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例16)
実施例4において顔料酸化チタンを990gに、ステアリン酸を10gに変更する以外は同様にしてステアリン酸表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例17)
実施例1において顔料酸化チタンを920gに、天然型セラミドを80gに変更する以外は同様にして天然型セラミド表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性及び使用感(のびの良さ)の評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例18)
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタンを900gに、ミリスチン酸ミリスチル100gを入れ均一に分散する。更に水200gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し、ミリスチン酸ミリスチル表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン980gと水添レシチン(NIKKOL レシノール S-10、日光ケミカルズ社製)20gを入れ均一に分散する。90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し水添レシチン表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン980gを入れる。予め水添レシチン(NIKKOL レシノール S-10、日光ケミカルズ社製)20gを水200gに分散させておく。この水分散液をヘンシェルミキサーに少しずつ撹拌しながら添加し、均一になるまで混合する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し水添レシチン表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0053】
(比較例4)
ヘンシェルミキサーに顔料酸化チタン980gと水添レシチン(NIKKOL レシノール S-10、日光ケミカルズ社製)20gを入れ均一に分散する。更に水0.9gを加えて撹拌し、均一に分散する。その後、90℃で6時間乾燥し、アトマイザーで粉砕し水添レシチン表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例5)
実施例1において顔料酸化チタンを800gに、天然型セラミドを200gに変更する以外は同様にして天然型セラミド表面処理粉体を得た。当該表面処理粉体の撥水性及び使用感(のびの良さ)の評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
<撥水性>
粉体0.2gを計量し、IR用打錠器で100kgf/cmの力で5分間打錠して直径1cmのペレットにした。このペレットの表面にマイクロシリンジを用いてイオン交換水を一滴滴下し、滴下後30秒後に接触角を3回測定して粉体の撥水性を測定した。
なお、表中のNIKKOLは日光ケミカルズ社製である。
<感触>
実施例1、実施例17及び比較例5の表面処理粉体について、女性パネラー5名を使用して、使用感(のびの良さ)に関する官能評価試験を実施した。試験はアンケート形式で実施し、各項目に0点から5点の間の点数をつけ、0点は評価が悪い、5点は評価が優れるとして数値化し、結果を全パネラーの平均点として表した。
【0056】
表1に示される実施例1~18および比較例1~5の比較から、本発明による常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物と顔料粉体を十分に混合して粉体混合物にする工程と前記粉体混合物に顔料粉体に対して0.1質量%以上30質量%以下の水を添加して粉体―水混合物にする工程を包含する方法が、粉体混合物に水を添加しない方法や予め処理剤を水に分散させて添加する方法や粉体混合物に添加する水量が少ない方法に比べ、表面処理粉体の撥水性が大きく増大していることが明らかである。これは本発明の製造方法を用いることにより前記水難溶性化合物が均一に顔料粉体表面に処理されているからである。また、水難溶性化合物の被覆量が10質量%を超えると感触が重くなる場合があり、10質量%以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の製造方法にて表面処理された常温で固体であって分子構造中にエステル結合および/または水酸基を有する水難溶性化合物による表面処理顔料粉体は、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、あるいはサンスクリーン化粧料に配合して好適であり、産業上の利用可能性が大である。