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  • 特開-カテーテル 図1
  • 特開-カテーテル 図2
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  • 特開-カテーテル 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066603
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176075
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昂太
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 祐八
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB14
4C267BB15
4C267DD01
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハブ強度が向上したカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル1は、補強線14、15が互いに編み込まれたカテーテルであって、長軸方向の断面視において、内側に配置された補強線および外側に配置された補強線に交差する仮想線Lを引いたときの同位角が異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強線が互いに編み込まれたカテーテルであって、
長軸方向の断面視において、
内側に配置された補強線と外側に配置された補強線に交差する仮想線を引いたときの同位角が異なる、カテーテル。
【請求項2】
前記内側に配置された補強線および前記仮想線、ならびに前記外側に配置された補強線および前記仮想線の同位角の差が2~8°である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記内側に配置された補強線および前記外側に配置された補強線の少なくとも一方が平板である、請求項1または2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルの1つであるガイディングカテーテルは、心臓の冠状動脈を治療するためのPTCAカテーテル等を目的部位まで挿入する際に、ガイドするためのカテーテルである(例えば下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-288670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ガイディングカテーテルのハブおよびチューブの接合部の強度(ハブ強度)が低いと、例えばガイディングカテーテルが体内でスタックして引張負荷がかかった際に、接合部が破断する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ハブ強度が向上したカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)
補強線が互いに編み込まれたカテーテルであって、
長軸方向の断面視において、
内側に配置された補強線および外側に配置された補強線に交差する仮想線を引いたときの同位角が異なる、カテーテル。
【0008】
(2)
前記内側に配置された補強線および前記仮想線、ならびに前記外側に配置された補強線および前記仮想線の同位角の差が2~8°である、(1)に記載のカテーテル。
【0009】
(3)前記内側に配置された補強線および前記外側に配置された補強線の少なくとも一方が平板である、(1)または(2)に記載のカテーテル。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したカテーテルによれば、内側に配置された補強線および外側に配置された補強線に交差する仮想線を引いたときの同位角が異なるため、同位角が同一である場合と比較して、カテーテルを引っ張った際における補強線のアンカーとしての効果が向上し、ハブ強度を向上させることができる。以上から、ハブ強度が向上したカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るカテーテルを示す全体図である。
図2】本実施形態に係るカテーテルのチューブを示す正面断面図である。
図3】本実施形態に係るカテーテルのチューブを示す軸直交断面図である。
図4】本実施形態に係るカテーテルを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図4を参照して、本発明の実施形態に係るカテーテル1を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカテーテル1を示す全体図である。図2は、本実施形態に係るカテーテル1のチューブ10を示す正面断面図である。図3は、本実施形態に係るカテーテル1のチューブ10を示す軸直交断面図である。図4は、本実施形態に係るカテーテル1を示す正面図である。
【0013】
図1に示すカテーテル1は、例えばPTCA用の拡張カテーテル(バルーンカテーテル)や、ステントを縮径状態で狭窄部まで搬送し、狭窄部にて拡径、留置して狭窄部を拡張維持するためのカテーテル(ステント運搬用カテーテル)のような処置用カテーテル(デバイス)を、冠動脈の狭窄部のような目的部位まで誘導するためのガイディングカテーテルとして用いられるものである。
【0014】
カテーテル1は、図1図4に示すように、チューブ10と、チューブ10の先端側に設けられた柔軟な先端チップ20と、チューブ10の基端側に設けられたハブ(ハブチューブ)30と、を有し、ハブ30の先端側に耐キンクプロテクター40が設けられている。
【0015】
チューブ10は、可撓性を有する管状体で構成されている。チューブ10には、チューブ10の全長にわたって、ルーメン10Hが形成されている。ルーメン10Hは、先端チップ20の先端において開放している。
【0016】
チューブ10は、図2に示すように、内面側に配置される内層11と、内層11の外周に配置される外層12と、外層12の内部に配置される補強材層13と、を有する。
【0017】
外層12は、第1の領域121と、第1の領域121より基端側に位置する第2の領域122と、第2の領域122より基端側に位置する第3の領域123と、第3の領域123より基端側に位置する第4の領域124とを有している。第3の領域123は、第4の領域124より柔軟性に富んでおり、第2の領域122は、第3の領域123より柔軟性に富んでおり、第1の領域121は、第2の領域122より柔軟性に富んでいる。このような構成とすることにより、チューブ10は、先端方向に向かって徐々に柔軟性が増し、血管への挿入操作の際に、プッシャビリティや先端側へのトルク伝達性を十分に確保しつつ、血管に対しより安全に挿入することができる。
【0018】
外層12を構成する材料としては、それぞれ、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を用いることができる。
【0019】
内層11の構成材料は、ルーメン10H内に処置用カテーテルやガイドワイヤ等のデバイスを挿入する際に、少なくともこれらデバイスと接する部分が低摩擦となるような材料で構成されているのが好ましい。この構成によれば、チューブ10に対し挿入されたデバイスを、より小さい摺動抵抗で長手方向に移動することができ、操作性を向上することができる。具体的には、内層11の構成材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂材料が挙げられる。
【0020】
補強材層13は、チューブ10を補強する複数の補強線を有している。この補強線としては、例えば、らせん状や網状にしたものが挙げられる。補強線は、ステンレス等の金属で構成されている。具体例を挙げると、チューブ10の径方向の肉厚が薄くなるように、ステンレス鋼の線を平板状に潰し加工し、それを8本~32本程度の複数本使用してらせん状にしたものや、編んだもの(編組体)等が挙げられる。補強線の本数は、管状にバランス良く補強するため、8の倍数とすることが好ましい。
【0021】
補強線を平板にすることによって、楕円にくらべ、外部応力に対し均等に力を受けるため、物性が一定となる。
【0022】
複数の補強線のうち、図2に示す断面図において、内側に配置される補強材を内側に配置された補強線14と称し、外側に配置される補強材を外側に配置された補強線15と称する(図3図4参照)。図4では、補強線は1本ごとに交差する1-over-1であるが、2本ごとに交差する2-over-2、2本と1本が交差する2-over-1でもよい。
【0023】
本実施形態に係るカテーテル1において、図2に示す長軸方向の断面視において、内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15に交差する仮想線Lを引き、仮想線Lおよび内側に配置された補強線14がなす角度θ1、ならびに仮想線Lおよび外側に配置された補強線15がなす角度をθ2としたとき、同位角の関係にある角度θ1および角度θ2は異なる。
【0024】
ここで、仮想線Lは内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15に交差する限りにおいて限定されず、図2では一例として仮想線Lは、軸方向(図2の水平方向)に直交する方向に引かれている。
【0025】
角度θ1および角度θ2の差は、特に限定されないが、2~8°であることが好ましい。ここで、角度θ1および角度θ2の差が2°より小さい場合、引張方向に対する樹脂との接触面積が小さく、アンカーとしての役割を果たすことができないとの観点から好ましくない。また、角度θ1および角度θ2の差が8°より大きい場合、ブレード線の露出につながる恐れがあるとの観点から好ましくない。
【0026】
ここで、例えば、角度θ1および角度θ2が同一(換言すれば内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15が互いに平行)の場合、カテーテルのハブおよびチューブの接合部の強度(ハブ強度)が低いと、例えばガイディングカテーテルが体内でスタックして引張負荷がかかった際に、接合部が破断する可能性がある。
【0027】
これに対して、本実施形態に係るカテーテル1によれば、内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15に交差する仮想線を引いたときの同位角が異なるため、同位角が同一である場合と比較して、カテーテル1を引っ張った際における補強線のアンカーとしての効果が向上し、ハブ強度を向上させることができる。以上から、ハブ強度が向上したカテーテル1を提供することができる。
【0028】
なお、チューブ10を構成する層の数や各層の構成材料は、チューブ10の長手方向に沿って異なっていてもよい。例えば、チューブ10の先端側の部分は、より柔軟性を持たせるために、層の数を減らしたり、より柔軟な材料を用いたり、当該部分にのみ補強材を配置しなかったりすることができる。
【0029】
カテーテル1の体内への挿入は、X線透視下でその位置を確認しつつ行われるため、外層12の構成材料中には、X線不透過材料(X線造影剤)が配合されているのが好ましい。X線不透過材料としては、例えば、硫酸バリウム、酸化ビスマス、タングステン等が使
用可能である。さらに、X線不透過材料を外層12の構成材料に配合する割合としては、30~80wt%が好ましい。
【0030】
また、このようなX線不透過材料は、チューブ10の全長にわたって存在している場合に限らず、チューブ10の一部、例えば、先端部のみや、先端チップ20のみに存在していてもよい。
【0031】
チューブ10の先端部は、左冠動脈、右冠動脈等のチューブ10の先端部を挿入する部位に適した所望の形状に湾曲している。特に、先端部は、冠動脈口に係合させる操作(エンゲージの操作)がし易いような形状、あるいは冠動脈口に係合した状態(エンゲージ)をより確実に維持し得るような形状をなしている。
【0032】
また、チューブ10の先端には、先端チップ20が連結されている。この先端チップ20は、柔軟性に富む材料で構成されており、その先端が好ましくは丸みを帯びた形状をなしている。このような先端チップ20を設けることにより、湾曲、屈曲、分岐した血管内でも、円滑かつ安全に走行させることができる。先端チップ20の構成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム等の各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0033】
また、先端チップ20の構成材料中には、前述したようなX線不透過材料(X線造影剤)が配合されていてもよい。
【0034】
先端チップ20の長さは、特に限定されないが、通常、0.5~3mm程度が好ましく、1~2mm程度がより好ましい。
【0035】
チューブ10の基端には、ハブ30が装着(固定)されている。このハブ30には、ルーメン10Hと連通する内腔が形成されている。この内腔は、ルーメン10Hの内径とほぼ等しい内径を有し、ルーメン10Hの基端部内面に対し、段差等を生じることなく連続している。
【0036】
ハブ30からは、例えば、ガイドワイヤ、カテーテル類(例えば、PTCA用のバルーンカテーテル、ステント搬送用カテーテル)、内視鏡、超音波プローブ、温度センサー等の長尺物(線状体)を挿入または抜去したり、造影剤(X線造影剤)、薬液、生理食塩水等の各種液体を注入することができる。また、ハブ30は、例えば、Y型分岐コネクタ等、他の器具と接続することもできる。
【0037】
以下、図3を参照して本実施形態のチューブ10の好適な寸法を説明する。
【0038】
チューブ10の外径D1は、1.35mm以上3mm以下であるのが好ましい。外径D1が大きすぎると、チューブ10を動脈に挿通し、走行させる際の操作性が低下し、また、患者の負担が増大するおそれがある。
【0039】
また、チューブ10の内径d1は、1.2mm以上2.85mm以下であるのが好ましい。内径d1が小さすぎると、それに応じてチューブ10に挿入可能な処置用カテーテル等も外径が小さいものとなり、挿入して用いるデバイスの選択の幅が制限されてしまい、好ましくない。
【0040】
チューブ10において、外径に対する内径の比率であるd1/D1は、0.85以上0.91以下、好ましくは0.87以上0.91以下である。d1/D1の値が小さすぎると、結果的にチューブ10の壁厚が厚くなり、内径が小さくなり、チューブ10内に導入可能なデバイスが限定される。また、d1/D1の値が大きすぎると、チューブ10の壁厚が十分に得られなくなるので、バックアップ力が弱くなるとともに、使用時における耐キンク性が低下する。
【0041】
内層11は、8μm以上20μm以下が好ましい。チューブ10の内表面をむら無く覆い、かつ可能な限り薄い寸法が望まれる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るカテーテル1は、補強線14、15が互いに編み込まれたカテーテル1であって、長軸方向の断面視において、内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15に交差する仮想線Lを引いたときの同位角が異なる。このように構成されたカテーテル1によれば、内側に配置された補強線14および外側に配置された補強線15に交差する仮想線Lを引いたときの同位角が異なるため、同位角が同一である場合と比較して、カテーテル1を引っ張った際における補強線のアンカーとしての効果が向上し、ハブ強度を向上させることができる。以上から、ハブ強度が向上したカテーテル1を提供することができる。
【0043】
以上、実施形態を通じて本発明に係るカテーテル1を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 カテーテル、
10 チューブ、
13 補強材層、
14 内側に配置された補強線、
15 外側に配置された補強線、
L 仮想線、
θ1、θ2 角度。
図1
図2
図3
図4