(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066613
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】パルプシート製造装置、およびパルプシート製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 7/06 20060101AFI20240509BHJP
B26D 7/14 20060101ALI20240509BHJP
B26D 11/00 20060101ALI20240509BHJP
B26D 1/62 20060101ALI20240509BHJP
B26D 1/24 20060101ALI20240509BHJP
D21G 9/00 20060101ALI20240509BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20240509BHJP
B65H 35/04 20060101ALI20240509BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20240509BHJP
B65H 23/04 20060101ALI20240509BHJP
B65H 35/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B26D7/06 Z
B26D7/14
B26D11/00
B26D1/62 B
B26D1/24 C
D21G9/00
D04H1/26
B65H35/04
B65H20/02
B65H23/04
B65H35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176102
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】西田 和俊
(72)【発明者】
【氏名】深沢 真直
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
3F103BA01
3F103BA33
3F103EA15
3F104AA01
3F104KA05
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047EA01
4L047EA22
4L055AC00
4L055CH03
4L055CH05
4L055FA22
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】スリット片の搬送性を向上させるパルプシート製造装置、およびパルプシート製造方法を提供すること。
【解決手段】パルプシート製造装置1は、パルプから帯状のパルプシートP1を成形するパルプシート成形ユニット100と、帯状のパルプシートP1を切断する切断ユニット200と、を備え、切断ユニット200は、帯状のパルプシートP1にテンションを付与するテンションローラー211と、メインカッター220と、スリットカッター300と、スリット片Ppを搬送する複数の搬送ローラー240と、を備え、テンションローラー211の周長L2は、複数の搬送ローラー240のうち、搬送方向において互いに隣り合う搬送ローラー241,242の間の距離L3より長い。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式または湿式にてパルプから帯状のパルプシートを成形するパルプシート成形ユニットと、
前記パルプシート成形ユニットから搬送される前記帯状のパルプシートを、所定の形状に切断する切断ユニットと、を備え、
前記切断ユニットは、
前記帯状のパルプシートにテンションを付与するテンションローラーと、
前記帯状のパルプシートの搬送方向と交差する方向に、前記帯状のパルプシートを単票状のパルプシートに切断するメインカッターと、
前記単票状のパルプシートを前記搬送方向に沿って切断するスリットカッターと、
前記スリットカッターによって前記単票状のパルプシートから切断されたスリット片を搬送する複数の搬送ローラーと、を備え、
前記テンションローラーの周長は、複数の前記搬送ローラーのうち、前記搬送方向において互いに隣り合う前記搬送ローラー間の距離より長い、パルプシート製造装置。
【請求項2】
前記テンションローラーは、前記パルプシート成形ユニットと前記メインカッターとの間に設けられる、請求項1に記載のパルプシート製造装置。
【請求項3】
前記パルプシート成形ユニットは、加圧により前記帯状のパルプシートを成形する加圧ローラーを備え、
前記テンションローラーは、前記加圧ローラーから送り出される前記帯状のパルプシートに前記テンションを付与する、請求項2に記載のパルプシート製造装置。
【請求項4】
乾式または湿式にてパルプから帯状のパルプシートを成形するパルプシート成形工程と、
前記帯状のパルプシートを所定の形状に切断する切断工程と、を備え、
前記パルプシート成形工程は、テンションローラーによって前記帯状のパルプシートにテンションを付与しながら加圧する加圧工程を含み、
前記切断工程は、
前記帯状のパルプシートの搬送方向と交差する方向に、前記帯状のパルプシートを単票状のパルプシートに切断する第1切断工程と、
前記単票状のパルプシートを前記搬送方向に沿って切断する第2切断工程と、
前記第2切断工程にて前記単票状のパルプシートから切り離されたスリット片を、複数の搬送ローラーにて搬送するスリット片搬送工程と、を含み、
前記テンションローラーの周長は、複数の前記搬送ローラーのうち、前記搬送方向において互いに隣り合う前記搬送ローラー間の距離より長い、パルプシート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプシート製造装置、およびパルプシート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形したウェブやシートにおいて、不要な端部をスリット片として切り取る製造装置が知られていた。上記端部では亀裂や厚さのばらつきなどの不具合箇所が生じ易く、端部の切断はこれらを取り除くために行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、搬送方向と交差する方向のウェブの両端部を切断するシート製造装置が開示されている。また、例えば特許文献2には、ウェブの側端部から耳部であるスリット片を切り離して回収する耳部処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-30351号公報
【特許文献2】特開2013-107148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシート製造装置では、切断されたスリット片を再利用することが難しいという課題があった。詳しくは、スリット装置にて切断片であるスリット片とシートとが分離されるが、第2搬送部などはスリット片を再利用するために搬送する機能を有しない。
【0006】
また、特許文献2に記載の耳部処理装置では、パルプシートに適用するとスリット片の搬送が難しくなるという課題があった。詳しくは、上記装置では、互いに離間する複数のガイドローラーなどによってスリット片が搬送、回収される。パルプシートでは、スリット片に相当する両端部に亀裂などが生じ易く、該亀裂に起因してスリット片の搬送方向における長さが短くなる場合があった。上記長さが複数のガイドローラーの間隔より短くなると、スリット片が後段のガイドローラーに到達し難くなり、スリット片の搬送性が悪化する可能性があった、すなわち、パルプシート端部から切断されたスリット片の搬送性を向上させるパルプシート製造装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
パルプシート製造装置は、乾式または湿式にてパルプから帯状のパルプシートを成形するパルプシート成形ユニットと、前記パルプシート成形ユニットから搬送される前記帯状のパルプシートを、所定の形状に切断する切断ユニットと、を備え、前記切断ユニットは、前記帯状のパルプシートにテンションを付与するテンションローラーと、前記帯状のパルプシートの搬送方向と交差する方向に、前記帯状のパルプシートを単票状のパルプシートに切断するメインカッターと、前記単票状のパルプシートを前記搬送方向に沿って切断するスリットカッターと、前記スリットカッターによって前記単票状のパルプシートから切断されたスリット片を搬送する複数の搬送ローラーと、を備え、前記テンションローラーの周長は、複数の前記搬送ローラーのうち、前記搬送方向において互いに隣り合う前記搬送ローラー間の距離より長い。
【0008】
パルプシート製造方法は、乾式または湿式にてパルプから帯状のパルプシートを成形するパルプシート成形工程と、前記帯状のパルプシートを所定の形状に切断する切断工程と、を備え、前記パルプシート成形工程は、テンションローラーによって前記帯状のパルプシートにテンションを付与しながら加圧する加圧工程を含み、前記切断工程は、前記帯状のパルプシートの搬送方向と交差する方向に、前記帯状のパルプシートを単票状のパルプシートに切断する第1切断工程と、前記単票状のパルプシートを前記搬送方向に沿って切断する第2切断工程と、前記第2切断工程にて前記単票状のパルプシートから切り離されたスリット片を、複数の搬送ローラーにて搬送するスリット片搬送工程と、を含み、前記テンションローラーの周長は、複数の前記搬送ローラーのうち、前記搬送方向において互いに隣り合う前記搬送ローラー間の距離より長い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るパルプシートの製造方法を示すフロー図。
【
図3】成形工程を経た帯状のパルプシートの外観を示す平面図。
【
図4】切断ユニットの構成および配置を示す斜視図。
【
図5】切断ユニットの構成および配置を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に述べる実施の形態では、コピー用紙などと代替可能なパルプシートについて、比較的に小型の製造装置、および該製造装置を用いた製造方法を例示し、図面を参照して説明する。パルプシートの用途はコピー用紙に限定されない。
【0011】
本実施形態に係るパルプシート製造装置1は、乾式にてパルプからパルプシートを製造する。本発明のパルプシート製造装置およびパルプシート製造方法は、乾式であることに限定されず、湿式であってもよい。なお、本明細書において乾式とは、液体中で実施されずに、大気などの気中で実施されることをいう。
【0012】
以下の各図においては、必要に応じて座標軸であるXYZ軸を付し、矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって、-Z方向は鉛直方向と一致し、+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもある。
【0013】
図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。パルプシート製造装置1において、原料、ウェブ、パルプシート、およびスリット片などの搬送方向の先を下流、搬送方向を遡る側を上流ということもある。パルプシートおよびスリット片などにおいて、搬送方向と交差する方向を幅方向ということもある。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るパルプシート製造方法は、パルプシート成形工程S1と、切断工程S2とを備える。
【0015】
パルプシート成形工程S1では、乾式にてパルプから帯状のパルプシートを成形する。パルプシート成形工程S1は加圧工程S11を含む。図示を省略するが、パルプシート成形工程S1は、加圧工程S11の前工程として、原料供給、粗砕、解繊、混合、および堆積などの各工程も含む。パルプシート成形工程S1は、乾式であることに限定されない。パルプシートの成形には、一部または複数の工程にて湿式の操作を採用してもよい。
【0016】
切断工程S2では、帯状のパルプシートを所定の形状に切断する。切断工程S2は、第1切断工程S21、第2切断工程S22、およびスリット片搬送工程S23を含む。
【0017】
以下、パルプシート製造方法の具体例、およびパルプシート製造装置1について説明する。本実施形態に係るパルプシート製造方法、およびパルプシート製造装置1は一例であり、これに限定されない。
【0018】
図2に示すように、パルプシート製造装置1は、パルプシート成形ユニット100および切断ユニット200を備える。切断ユニット200は、パルプシート成形ユニット100の下流に配置される。
【0019】
パルプシート成形ユニット100は、乾式にてパルプから帯状のパルプシートP1を成形する。パルプシート成形ユニット100には、上流から下流に向かって、供給部5、粗砕部10、解繊部30、混合部60、堆積部105、ウェブ搬送部70、および加圧部140が備わる。加圧部140の下流に切断ユニット200が配置される。また、図示を省略するが、パルプシート製造装置1には、上記各構成の稼働を統合的に制御する制御部も備わる。
【0020】
供給部5は粗砕部10に原料Cを供給する。供給部5は、自動送り機構6を備え、粗砕部10に原料Cを連続的かつ自動的に投入する。原料Cはパルプを含む古紙である。原料Cとしてバージンパルプや古布を用いてもよい。
【0021】
粗砕部10は、原料Cを乾式にて粗砕して細片とする。粗砕部10は粗砕刃11を有するシュレッダーである。原料Cは粗砕刃11によって細断される。
【0022】
定量供給部50は、細片を計量してホッパー12へ定量供給する。定量供給部50は振動フィーダーである。ホッパー12に供給された細片は、管20内を搬送されて解繊部30の導入口31に至る。
【0023】
解繊部30は、原料Cの細片を乾式にて解繊してパルプを生成する。解繊部30は、導入口31、排出口32、ステーター33、ローター34、および図示しない気流発生機構を備える。原料Cの細片は、気流発生機構の気流によって、導入口31を介して解繊部30の内部に導入される。
【0024】
ステーター33およびローター34は、解繊部30の内部に配置される。ステーター33は略円筒状の内側面を有する。ローター34はステーター33の内側面に沿って回転する。原料Cの細片は、ステーター33とローター34との間に挟まれて、これらの間に生じるせん断力によって解繊される。これにより絡まった繊維が解きほぐされて、パルプが生成される。
【0025】
解繊部30で生成されたパルプは、排出口32から管40内へ排出される。管40は、解繊部30の内部と堆積部105の内部とに連通する。パルプは、気流発生機構の気流によって、解繊部30から堆積部105へ搬送される。解繊部30と堆積部105との間の管40には、混合部60が設けられる。
【0026】
混合部60は、パルプに結着材などを空気中で混合して混合物を生成する。混合部60は、ホッパー13,14、供給管61,62、バルブ65,66を含む。
【0027】
ホッパー13は、供給管61を介して管40の内部に連通する。供給管61において、バルブ65はホッパー13と管40との間に設けられる。ホッパー13は結着材を管40内へ供給する。バルブ65は、ホッパー13から管40に供給される結着材の重量を調整する。これにより、パルプと結着材との混合比が調整される。
【0028】
ホッパー14は、供給管62を介して管40の内部に連通する。供給管62において、バルブ66はホッパー14と管40との間に設けられる。ホッパー14は、結着材以外の添加剤を管40内へ供給する。バルブ66は、ホッパー14から管40に供給される添加剤の重量を調整する。なお、パルプシートPにおいて添加剤は必須の成分ではない。
【0029】
パルプおよび結着材などは、管40内を堆積部105に搬送されながら混合されて混合物となる。混合物は管40を介して堆積部105へ搬送される。
【0030】
堆積部105は、混合物を空気中で堆積させてウェブWを生成する。堆積部105は、ドラム部106、およびドラム部106を収容するハウジング部107を有する。混合物は、管40からドラム部106の内部に取り込まれる。
【0031】
堆積部105の下方には、メッシュベルト122、およびサクション機構110を含むウェブ搬送部70が配置される。サクション機構110は、Z軸に沿う方向において、メッシュベルト122を挟んでドラム部106と対向する。
【0032】
ドラム部106は、図示しないモーターによって回転駆動される円柱状の篩である。円柱状のドラム部106の側面には、篩の機能を有する網が設けられる。ドラム部106は、篩の網の目開きの大きさより小さいパルプや混合物などの粒子を、内部から外側に通過させる。混合物は、ドラム部106の外側へ放出されて、ハウジング部107内の空気中に分散される。混合物は、重力とサクション機構110の吸引によって、メッシュベルト122の上方の面に堆積してウェブWとなる。
【0033】
ウェブ搬送部70は、メッシュベルト122およびサクション機構110を備える。ウェブ搬送部70は、サクション機構110によって、混合物のメッシュベルト122への堆積を促進させる。また、ウェブ搬送部70は、形成されたウェブWを、メッシュベルト122の回動により下流へ搬送する。
【0034】
サクション機構110はドラム部106の下方に配置される。サクション機構110は、メッシュベルト122が有する複数の穴を介して、ハウジング部107内の空気を吸引する。これにより、ドラム部106の外側に放出された混合物は、空気と共に下方に吸引される。サクション機構110はブロアーなどの公知の吸引装置である。
【0035】
メッシュベルト122の複数の穴は、空気を通し、混合物に含まれるパルプや結着材などを通し難い。メッシュベルト122は、無端ベルトであって、3つの張架ローラー121によって張り架けられる。
【0036】
メッシュベルト122は、張架ローラー121の自転によって、
図2において時計回りに回動する。これにより、連続的に混合物が堆積してウェブWが形成される。ウェブWは、空気を比較的に多く含み、柔らかく膨らんでいる。ウェブWは、メッシュベルト122の移動に伴って、下流の加圧部140へ搬送される。
【0037】
堆積部105と加圧部140との間に加湿器130を配置して、メッシュベルト122上のウェブWに水を噴霧して加湿してもよい。これにより、ウェブWに含まれるパルプや結着材などの飛散が抑えられる。
【0038】
加圧部140では加圧工程S11が行われる。加圧部140は、加熱および加圧により、ウェブWから帯状のパルプシートP1を成形する。加圧部140は、一対の加圧ローラー141,142を含む。加圧ローラー141,142は略円柱状の部材である。加圧ローラー141は、加圧ローラー142の略上方に配置される。加圧ローラー141,142は互いの側面が圧着するよう付勢される。加圧ローラー141,142は、各々電熱ヒーターを内蔵し、ウェブWを加熱する機能を有する。
【0039】
加圧ローラー141,142の間へ、ウェブWを連続的に通過させることにより、ウェブWが加熱されながらプレス加工されて帯状のパルプシートP1となる。このとき、ウェブWは、帯状のパルプシートP1を介して、切断ユニット200の図示しないテンションローラーにより搬送方向の下流へ引かれている。
【0040】
すなわち、加圧工程S11では、ウェブWに対して、テンションローラーによって帯状のパルプシートP1にテンションを付与しながら加圧する。これにより、比較的に空気を多く含んで柔らかいウェブWから、内包する空気が低減されると共に、結着材によってパルプの繊維同士が結着された帯状のパルプシートP1が形成される。なお、加圧ローラー141,142は加熱機構を備えなくともよい。この場合に、ウェブWの加熱は別体のヒーターなどが担ってもよく、別途加熱ローラーを備えてもよい。
【0041】
図3に示すように、帯状のパルプシートP1には、パルプシートP2と成る領域と、スリット片Ppと成る領域とが存在する。パルプシートP2は、パルプシート製造装置1が製造する製品である。スリット片Ppと成る領域は、矢印で示した搬送方向に対して、直交する幅方向においてパルプシートP2と成る領域の両側、すなわち帯状のパルプシートP1の両端部に位置する。
【0042】
パルプシート製造装置1では、上述した原料Cの消費効率を向上させるため、パルプシートP2を製造するに足る原料Cが投入される。そのため、スリット片Ppと成る領域では、パルプシートP2と成る領域に対して厚さが薄くなり易い。
【0043】
ここで、帯状のパルプシートP1にテンションを付与するテンションローラーは、回転軸に対して偏心を内包することがある。テンションローラーは、帯状のパルプシートP1の幅方向に回転軸が沿って配置され、回転によって帯状のパルプシートP1にテンションを付与する。そのため、テンションローラーの偏心に応じて、テンションが周期的に変動する。スリット片Ppと成る領域では、厚さが薄くなり易いため、テンションの変動により亀裂D1,D2などが発生し易い。
【0044】
テンションローラーの偏心によって、亀裂D1,D2などは搬送方向において周期的に生じる。搬送方向において、亀裂D1と、亀裂D1と隣り合う他の亀裂D2との間の距離L1は、テンションローラーの周長に略等しくなる。
【0045】
亀裂D1や亀裂D2は、スリット片Ppと成る領域とパルプシートP2となる領域との破線の境界付近まで達する場合がある。この場合に、スリット片PpとパルプシートP2とを切断すると、亀裂D1および亀裂D2でスリット片Ppが分断されて、スリット片Pp1となる。スリット片Pp1の搬送方向の長さは、パルプシートP2の長さよりも短く、距離L1と略等しくなる。
【0046】
スリット片Pp1のように、スリット片Ppの搬送方向の長さが短くなると、スリット片Ppを再利用のために回収する際に、搬送機構などに詰まり易くなる。
【0047】
これに対して、本実施形態のパルプシート製造装置1は、テンションローラーの周長と、後述する複数の搬送ローラー間の距離との関係を規定することにより、搬送性を向上させるものである。テンションローラーの詳細については後述する。
【0048】
図2に戻り、加圧部140にて成形された帯状のパルプシートP1は、切断ユニット200へ搬送される。切断ユニット200では、切断工程S2が行われる。切断ユニット200は、パルプシート成形ユニット100から搬送される帯状のパルプシートP1を、所定の形状のパルプシートP2に切断する。
【0049】
パルプシートP2は単票状である。パルプシートP2の所定の形状とは、例えばA4判やA3判である。切断ユニット200および切断工程S2の詳細については後述する。パルプシートP2は、切断ユニット200から排出されてトレイ170に収容される。以上によりパルプシートP2が製造される。
【0050】
図4に示すように、切断ユニット200は、テンションローラーユニット210、メインカッター220、スリットカッター300、および複数の搬送ローラー240などを備える。切断ユニット200では、上流から下流に向かって、テンションローラーユニット210、メインカッター220、スリットカッター300、複数の搬送ローラー240がこの順に配置される。
【0051】
図4において、図示しない帯状のパルプシートP1は、切断ユニット200の内部に-Y方向から引き込まれる。テンションローラーユニット210およびメインカッター220は、帯状のパルプシートP1の幅方向、すなわちX軸に沿う方向の長さよりも長い。
【0052】
複数の搬送ローラー240は、後述するスリット片に対応して、切断ユニット200のX軸に沿う方向の両端付近に各々配置される。
【0053】
図5に示すように、切断ユニット200には、加圧部140にてウェブWから成形された帯状のパルプシートP1が引き込まれる。帯状のパルプシートP1は、+Y方向へ搬送されながら、メインカッター220で単票状のパルプシートP1sへ切断される。単票状のパルプシートP1sは、スリットカッター300にて、2つのスリット片PpとパルプシートP2とに切断される。
【0054】
パルプシートP2は、+Y方向の斜め上方へ搬送されて、上述したトレイ170に収容される。幅方向の両端部のスリット片Ppは、各々に対応する複数の搬送ローラー240によって、+Y方向の斜め下方へ搬送される。なお、
図5では、切断ユニット200に加えて、加圧部140およびシュレッダー400も図示している。
【0055】
テンションローラーユニット210は、テンションローラー211および従動ローラー212を含む。テンションローラー211および従動ローラー212は、略円柱状であり、各々の中心軸がX軸に沿う。テンションローラー211および従動ローラー212は、互いの側面が圧着するよう付勢される。
【0056】
テンションローラー211は、図示しないモーターの駆動により、
図5において反時計回りに回転する。従動ローラー212は、テンションローラー211の回転に従動して、
図5において時計回りに回転する。
【0057】
テンションローラー211と従動ローラー212とが、帯状のパルプシートP1を互いの間に挟んで回転することにより、加圧部140の帯状のパルプシートP1が下流へ引っ張られる。すなわち、テンションローラー211は、従動ローラー212と共に、加圧ローラー141,142から送り出される帯状のパルプシートP1にテンションを付与する。
【0058】
ここで、帯状のパルプシートP1の上述した亀裂D1と亀裂D2と間の距離L1は、テンションローラー211の周長L2によって決まり、テンションローラー211の周長L2に略等しくなる。すなわち、スリット片Ppの搬送方向に沿う長さは、短い個体の場合に周長L2と略等しくなることがある。したがって、周長L2を長くすることにより、距離L1が長くなり、スリット片Ppの搬送方向に沿う長さも長くなる。
【0059】
加圧ローラー141,142の回転と同期させてテンションを付与することにより、ウェブWから連続的に帯状のパルプシートP1が成形される。上記テンションは、テンションローラーユニット210から加圧部140までの間の帯状のパルプシートP1に付与される。上記テンションが連続的に付与されるため、帯状のパルプシートP1において、亀裂D1,D2、厚さのばらつき、および幅方向の長さのばらつきなどの不具合の発生が低減される。
【0060】
テンションローラー211および従動ローラー212は、上記パルプシート成形ユニット100の加圧部140と、メインカッター220との間に設けられる。仮に、下流に向かって、加圧部140、メインカッター220、テンションローラー211の順に配置されると、加圧部140とテンションローラー211との間で帯状のパルプシートP1が切断される。そのため上記テンションが安定し難い。これに対して、本実施形態の構成によれば、加圧部140から引き出される帯状のパルプシートP1に対して、安定的かつ連続的にテンションが付与される。
【0061】
帯状のパルプシートP1は、図示しない搬送機構によりテンションローラーユニット210からメインカッター220に搬送される。
【0062】
メインカッター220は、上述した第1切断工程S21を行う。メインカッター220は、帯状のパルプシートP1を搬送方向と交差する方向、例えばX軸に沿う方向に切断して、単票状のパルプシートP1sとする。メインカッター220には、例えば、X軸に沿う回転軸にて回転する公知のスパイラルカッターが適用可能である。単票状のパルプシートP1sは、図示しない搬送機構によりスリットカッター300へ搬送される。
【0063】
スリットカッター300は、上述した第2切断工程S22を行う。スリットカッター300は、搬送方向に沿って、単票状のパルプシートP1sをパルプシートP2と2つ以上のスリット片Ppとに切断する。
【0064】
図6に示すように、スリットカッター300は、第1輸送部310、第2輸送部320、および切断部350を備える。スリットカッター300において、切断部350は、2箇所のスリット片Ppに対応して、幅方向の両方の端部近傍に配置される。
図6では、スリットカッター300の+X方向の端部周辺を図示している。
【0065】
スリットカッター300では、-X方向の端部周辺においても、幅方向の中央を通る線を対称軸として
図6と同様な構成が配置される。そのため、-X方向の端部周辺の構成については説明を省略する。
【0066】
第1輸送部310は、上下方向に対を成す第1下部ローラー311および第1上部ローラー312を含む。第1輸送部310は、第1下部ローラー311と第1上部ローラー312との間に、単票状のパルプシートP1sにおいてパルプシートP2と成る領域を挟持して移動させる。
【0067】
第1下部ローラー311および第1上部ローラー312は、各々X軸に沿って延在する。第1下部ローラー311は、図示しないモーターの駆動によって、X軸に沿う回転軸315を中心に回転する。第1上部ローラー312は、図示しない付勢部材によって下方の第1下部ローラー311へ付勢され、第1下部ローラー311の回転に従動して、X軸に沿う回転軸316にて回転する。
【0068】
第2輸送部320は、第1輸送部310の+X方向に配置される。第2輸送部320は、上下方向に対を成す第2下部ローラー321および第2上部ローラー322を含む。第2輸送部320は、第2下部ローラー321と第2上部ローラー322との間に、単票状のパルプシートP1sにおいてスリット片Ppと成る領域を挟持して移動させる。
【0069】
第2下部ローラー321は、第1下部ローラー311と共通の軸381に設けられ、第1下部ローラー311と同様にX軸に沿う回転軸315にて回転する。第2上部ローラー322は、図示しない付勢部材によって下方の第2下部ローラー321へ付勢され、第2下部ローラー321の回転に従動して、X軸に沿う回転軸326にて回転する。
【0070】
切断部350は、単票状のパルプシートP1sを搬送方向に沿って切断する。切断部350は、駆動刃361および従動刃362を含む。駆動刃361は、第1下部ローラー311の+X方向の端部に隣接して配置される。駆動刃361は、+X方向からの側面視にて、円柱状であって、第1下部ローラー311と同様な外形寸法を有する。駆動刃361は、第1下部ローラー311と共に、回転軸315にて回転する。
【0071】
従動刃362は、駆動刃361に対応して、第1輸送部310と第2輸送部320との間に配置される。従動刃362は円板状である。従動刃362は、駆動刃361の回転に従動して回転軸366を中心に回転する。+X方向からの側面視にて、駆動刃361の外周と従動刃362の外周とは互いに重なる。従動刃362は、図示しない付勢部材によって-X方向、すなわち駆動刃361の+X方向の端面に付勢される。そのため、+Y方向からの側面視にて、駆動刃の361の+X方向の端面と、従動刃362の-X方向の端面とは互いに接する。
【0072】
単票状のパルプシートP1sは、第1輸送部310および第2輸送部320によって搬送されながら、駆動刃361と従動刃362とが接する領域を通過して切断される。これにより、単票状のパルプシートP1sは、パルプシートP2と2つ以上のスリット片Ppとに分断される。
【0073】
図5に戻り、スリットカッター300の下流では、パルプシートP2は+Y方向の斜め上方へ搬送される。パルプシートP2は、図示しないトレイ170へ搬送されて収容される。
【0074】
両端部のスリット片Ppは、パルプシートP2から離れて、各々対応する複数の搬送ローラー240へ至る。複数の搬送ローラー240は、スリットカッター300によって単票状のパルプシートP1sから切断されたスリット片Ppを回収、再利用するために搬送する。
【0075】
複数の搬送ローラー240は、上述したスリット片搬送工程S23を行う。複数の搬送ローラー240は、4つの搬送ローラー241,242,243,244を含む。4つの搬送ローラー241,242,243,244は、上流から下流に向かって、上記の順に配置される。搬送ローラー241,242,243,244の各々には、従動して回転する図示しないローラーが付設される。
【0076】
搬送ローラー241,242,243,244は、いずれも同様な略円柱状である。搬送ローラー241,242,243,244は、図示しないモーターの駆動により、
図5において、X軸に沿う回転軸を中心に反時計回りに回転する。搬送ローラー241,242,243,244は、各々従動する上記ローラーとの間にスリット片Ppを挟んで回動することにより、スリット片Ppを下流へ搬送する。
【0077】
ここで、複数の搬送ローラー240のうち、スリット片Ppの搬送方向において隣り合う搬送ローラー241,242の間の距離を距離L3とする。テンションローラー211の周長L2は、距離L3より長い。そのため、スリット片Ppの搬送方向に沿う長さは距離L3よりも長くなり、搬送性が向上する。
【0078】
距離L3は、-X方向からの側面視にて、搬送ローラー241,242の回転軸間の距離に等しい。また、距離L3は、搬送ローラー241,242の各側面がスリット片Ppと接触する領域の間の距離にも等しい。
【0079】
搬送ローラー242,243の間の距離、および搬送ローラー243,244の間の距離も、距離L3に等しい。そのため、周長L2は、隣り合う搬送ローラー242,243の間の距離、および隣り合う搬送ローラー243,244の間の距離よりも長い。これにより、複数の搬送ローラー240全般において、スリット片Ppの搬送性が向上する。なお、複数の搬送ローラー240の数は4つに限定されない。
【0080】
パルプシート製造装置1は、複数の搬送ローラー240の下流にシュレッダー400が配置される。シュレッダー400は、スリット片Ppを細断して細片とする。上記細片は、上記定量供給部50に供給されて、ウェブWの製造に再利用される。
【0081】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0082】
スリット片Ppの搬送性を向上させることができる。詳しくは、パルプシート成形ユニット100にて成形される帯状のパルプシートP1の両端部には、亀裂D1,D2、厚さのばらつき、および幅方向の長さのばらつきなどの不具合が生じる場合がある。このような不具合は、テンションローラー211の偏心に起因するため、搬送方向において、テンションローラー211の周長L2に応じて周期的に発生し易い。つまり、帯状のパルプシートP1では、テンションローラー211の周長L2に略等しい間隔で不具合が生じることがある。そのため、スリット片Ppのうち搬送方向における長さが短い個体では、該長さが周長L2に略等しくなる場合があった。
【0083】
これに対して、周長L2を隣り合う搬送ローラー240間の距離L3よりも長くすることにより、不具合が発生する周期が距離L3よりも長くなる。すなわち、搬送方向におけるスリット片Ppの長さが、距離L3よりも長くなる。そのため、隣り合う搬送ローラー240の間においてスリット片Ppが後段のローラーに到達し易くなり、スリット片Ppの搬送性が向上する。したがって、スリット片Ppの搬送性を向上させるパルプシート製造装置1およびパルプシート製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…パルプシート製造装置、100…パルプシート成形ユニット、141,142…加圧ローラー、200…切断ユニット、211…テンションローラー、220…メインカッター、240…複数の搬送ローラー、241,242,243,244…搬送ローラー、300…スリットカッター、L2…テンションローラーの周長、L3…隣り合う搬送ローラー間の距離、P1…帯状のパルプシート、P1s…単票状のパルプシート、Pp…スリット片、S1…パルプシート成形工程、S2…切断工程、S21…第1切断工程、S22…第2切断工程、S23…スリット片搬送工程。