(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066622
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240509BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240509BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/483 20210101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/105
H01M50/124
H01M50/474
H01M50/477
H01M50/483
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176127
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健児
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H021AA02
5H021CC09
5H021CC14
5H021EE00
5H021EE29
5H021HH10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を提供する。
【解決手段】開示される全固体電池100は、正極層121、負極層122、および固体電解質層123を含む少なくとも1つの単位電池120を含む。全固体電池100は、少なくとも1つの単位電池120を含む積層体110と、積層体110を囲むように配置され積層体110を拘束する拘束部材130と、積層体110および拘束部材130を密封する外装体140とを含む。拘束部材130は、拘束部材130の内部を密封していない。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池であって、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体と、
前記積層体を囲むように配置され、前記積層体を拘束する拘束部材と、
前記積層体および前記拘束部材を密封する外装体とを含み、
前記拘束部材は、前記拘束部材の内部を密封していない、全固体電池。
【請求項2】
前記外装体は、ラミネートフィルムを用いて形成されている、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記拘束部材は、第1の板状部と第2の板状部とを有する筒状体を含み、
前記積層体の第1の主面および第2の主面はそれぞれ、前記第1の板状部および前記第2の板状部によって押されている、請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記拘束部材が単独で存在する状態において、前記第1の板状部および前記第2の板状部はそれぞれ、前記拘束部材の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲している、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記筒状体は、前記第1の板状部と前記第2の板状部とを結ぶ第1の側壁および第2の側壁を含み、
前記第1の側壁および前記第2の側壁はそれぞれ、前記第1の板状部と前記第2の板状部とを結ぶ方向に弾性を有する、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記筒状体は金属からなる、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記拘束部材と前記積層体との間に配置された緩衝部材をさらに含む、請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記緩衝部材は減圧下で膨張する部材である、請求項7に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記緩衝部材は発泡体を含む、請求項8に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記外装体の内部は減圧されている、請求項1または2に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、安全性およびエネルギー密度が高い全固体電池が注目されている。全固体電池は、正極層、固体電解質層、および負極層を含む積層体を、発電要素として含む。全固体電池の構造や製造方法について、従来から様々な提案がなされている。
【0003】
特許文献1(特開2018-129153号公報)の請求項1には、「負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、及び正極集電体層がこの順に積層された全固体電池素子を2個以上有する全固体電池積層体と、第1の板状部、前記第1の板状部に対向する第2の板状部、及び前記第1の板状部と前記第2の板状部とを連結する第3の板状部を有し、これら第1、第2、及び第3の板状部の厚み方向の断面がコの字型を形成する、集電部材と、ラミネートフィルムから成る外装体に収容されており、前記集電部材は、前記第3の板状部が前記全固体電池積層体の積層方向と略平行であって前記コの字の開口が前記全固体電池積層体側に向くように配置されており、前記全固体電池積層体における複数の負極集電体層、及び複数の正極集電体層のうちの一方は、前記複数の集電体層それぞれの集電タブを介して、前記集電部材の前記第1の板状部及び前記第2の板状部のうちの少なくとも一方に電気的に接続されており、且つ前記集電部材における前記第1の板状部及び前記第2の板状部は、前記集電部材に電気的に接続された前記複数の集電体層のうちの、前記全固体電池積層体の積層方向における最外側の集電体層よりも更に外側に配置されている、全固体電池」が記載されている。
【0004】
特許文献2(特許第6868871号公報)の請求項1には、「外装と、前記外装に収容される被収容物とを備え、前記被収容物は、電極体と、当該電極体を内部に密封するラミネートパックとを有し、前記外装は、その弾性力により、前記被収容物の表面および裏面のそれぞれに、略均一に押圧を加えるものであり、前記外装の内部が負圧であり、前記外装の内部において、前記ラミネートパックの内部が外部よりも低圧であり、前記外装の内部において、前記ラミネートパックの内部の圧力が1Pa以下であり、且つ、当該ラミネートパックの外部の圧力が1000Pa以下であることを特徴とする二次電池」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-129153号公報
【特許文献2】特許第6868871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全固体電池を減圧下で用いる場合、電池が膨張する場合がある。電池が膨張すると、電極と集電体との接触不良が生じたり、各層における抵抗が増大したりして、電池の性能が大幅に低下することがある。このような状況において、本開示の目的の1つは、減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面は、全固体電池に関する。当該全固体電池は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池であって、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体と、前記積層体を囲むように配置され、前記積層体を拘束する拘束部材と、前記積層体および前記拘束部材を密封する外装体とを含み、前記拘束部材は、前記拘束部材の内部を密封していない。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を容易に製造できる製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1の全固体電池の一例を模式的に示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態1の全固体電池に用いられる拘束部材の一例を模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の全固体電池に用いられる拘束部材の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の全固体電池に用いられる拘束部材のその他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の全固体電池の他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0011】
(全固体電池)
本実施形態に係る全固体電池を以下では、「全固体電池(B)」と称する場合がある。全固体電池(B)は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む。全固体電池(B)は、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体と、積層体を囲むように配置され、積層体を拘束する拘束部材と、積層体および拘束部材を密封する外装体とを含む。当該積層体を以下では、「積層体(S)」と称する場合がある。拘束部材は、拘束部材の内部を密封していない。
【0012】
この明細書において、「外装体が物体を密封する」とは、内部に物体が配置された外装体が、気体が通過する隙間がないように封じられていることを意味する。1つの観点では、外装体は気密であり、拘束部材は気密ではない。外装体がその内部を密封することによって、単位電池が劣化することを抑制できる。一方、従来の全固体電池を減圧下におくと、外装体が膨張し、内部の積層体も膨張しやすくなる。その結果、電極と集電体との接触不良が生じたり、各層における抵抗が増大したりして、電池の性能が大幅に低下することがある。
【0013】
全固体電池(B)では、積層体を拘束部材で拘束しているため、減圧下において外装体が膨張したとしても、積層体が膨張することを抑制できる。そのため、全固体電池(B)は、減圧下でも高い性能を発揮することが可能である。また、全固体電池(B)は、減圧下でも、長期にわたって信頼性よく使用できる。
【0014】
外装体は、ラミネートフィルムを用いて形成されていてもよい。ラミネートフィルムを用いて外装体を形成することによって、電池を軽量化することができる。
【0015】
拘束部材は、第1の板状部と第2の板状部とを有する筒状体を含んでもよい。積層体(S)の第1の主面および第2の主面はそれぞれ、第1の板状部および第2の板状部によって押されていてもよい。この場合、拘束部材が単独で存在する状態において、第1の板状部および第2の板状部はそれぞれ、拘束部材の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲していてもよい。この構成によれば、湾曲した板状部によって積層体(S)の主面を押すことができる。板状部によって積層体(S)の主面を押すことによって、積層体(S)を積層方向に加圧できる。その結果、電池の性能および信頼性を高めることができる。筒状体の両端は、開口していてもよい。筒状体の内部が密閉されない限り、筒状体の両端に蓋がされていてもよい。
【0016】
湾曲している第1および第2の板状部を用いる場合、積層体(S)等(積層体および必要に応じて緩衝部材など)を筒状体の内部に配置したときに、積層体(S)等を筒状体の内部に配置する前よりも第1および第2の板状部が平らになるように、筒状体の形状およびサイズが選択されることが好ましい。その場合、筒状体を外側に引っ張った状態で積層体(S)等を筒状体の内部に挿入してもよい。
【0017】
筒状体は、第1の板状部と第2の板状部とを結ぶ第1の側壁および第2の側壁を含んでもよく、第1の側壁および第2の側壁はそれぞれ、第1の板状部と第2の板状部とを結ぶ方向に弾性を有してもよい。この構成では、側壁の弾性を利用して板状部が積層体(S)の主面を強く押すことが可能である。弾性を有する側壁の例には、板バネ状に湾曲している側壁が含まれる。この場合、筒状体は金属で形成されていることが好ましい。弾性を有する側壁の他の例には、ゴムなどの弾性体を用いた側壁が含まれる。
【0018】
筒状体は金属からなるものであってもよい。金属からなる筒状体を用いることによって、積層体(S)の主面を強い力で押すことが可能である。
【0019】
全固体電池(B)は、拘束部材と積層体との間に配置された緩衝部材をさらに含んでもよい。緩衝部材を用いることによって、積層体に衝撃が加わることを抑制できる。さらに、緩衝部材を用いることによって、拘束部材によって積層体(S)に加えられる圧力を均一化することができる。
【0020】
緩衝部材は減圧下で膨張する部材であってもよい。例えば、緩衝部材は発泡体を含んでもよい。減圧下で膨張する緩衝部材を用いることによって、減圧下で積層体(S)が膨張することを抑制できる。
【0021】
外装体の内部は減圧されていてもよい。外装体内の内部を減圧することによって、減圧下における電池および積層体(S)の膨張を抑制できる。外装体の内部は、2000Pa以下、1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下、1.0Pa以下、または0.1Pa以下に減圧されていてもよい。
【0022】
(全固体電池の構成要素)
全固体電池(B)の構成要素の例について、以下に説明する。ただし、以下の構成要素は例示であり、他の構成要素を用いてもよい。なお、以下では、積層体(S)が全固体リチウムイオン電池の積層体である例について主に説明するが、他の全固体電池の積層体であってもよい。積層体(S)は特に限定されず、公知の全固体電池の積層体であってもよい。
【0023】
上述したように、全固体電池は、積層体(S)を含む。積層体(S)は少なくとも1つの単位電池(発電要素)を含む。積層体(S)は、単位電池を1つだけ含んでもよいし、積層された複数の単位電池を含んでもよい。単位電池は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む。積層体(S)は、必要に応じて、集電体を含む。全固体電池では、積層体(S)がその積層方向に加圧されることが好ましい。積層体(S)が加圧されることによって、高い性能を発揮することが可能になる。積層体(S)の平面形状は、例えば矩形である。
【0024】
(拘束部材)
上述したように、拘束部材は、金属などで形成できる。拘束部材を構成する金属板の例には、ステンレス鋼板、炭素鋼板、アルミニウム合金板などが含まれる。あるいは、拘束部材は、樹脂で形成してもよい。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)などの比較的硬い樹脂が好ましく用いられる。
【0025】
拘束部材は、内部に積層体(S)等を配置可能なサイズを有する。拘束部材は、積層体(S)の全体を内部に配置できるサイズを有することが好ましい。積層体(S)の平面形状が矩形である場合、拘束部材の内部空間の平面形状も矩形であることが好ましい。拘束部材を構成する金属板の厚さは、材質や求められる加圧性や金属板の材質に応じて選択すればよい。拘束部材を構成する金属板の厚さは、0.10mm以上、または0.15mm以上であってもよく、0.60mm以下、または0.50mm以下であってもよい。
【0026】
(外装体)
外装体を構成するラミネートフィルムには、内部の気密を長期間保つことが可能なフィルムを用いることが好ましい。そのため、ラミネートフィルムは、金属層を含むことが好ましい。金属層の例には、アルミニウム層(例えば、アルミニウム蒸着層、アルミニウム箔など)などが含まれる。ラミネートフィルムは、樹脂層を含む。ラミネートフィルムは、その表面に、ヒートシールするための層を含んでもよい。ラミネートフィルムには、電池の外装体に用いられている公知のラミネートフィルムを用いてもよい。
【0027】
なお、外装体としてラミネートフィルム以外の任意の材料を用いて形成された外装体を用いてもよい。外装体には、全固体電池の外装体として用いられている公知の外装体を用いてもよい。例えば、金属、板状の樹脂または樹脂組成物、シール部材などの少なくとも1つを用いて形成された外装体を用いてもよい。例えば、外装体は、金属で形成されていてもよいし、金属ケースと他の部材(例えば封口体)とで形成されていてもよい。金属ケースを含む外装体を用いることによって、減圧下で外装体が膨張することを抑制できる。いずれの場合でも、外装体は、その内部を密封する。
【0028】
(緩衝部材)
緩衝部材の例には、弾性体、減圧下で膨張する部材などが含まれる。弾性体の例には、ゴムなどが含まれる。減圧下で膨張する部材の例には、発泡体が含まれる。発泡体の例には、多数の微小な独立気泡を内部に有する樹脂発泡体などが含まれる。
【0029】
(正極層)
正極層は、正極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の正極層に使用される公知の成分(結着剤、導電材など)が含まれる。正極層におけるリチウムイオン伝導性を高める観点から、正極層は、正極活物質とともに、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質を含んでもよい。通常、正極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0030】
正極活物質には、全固体電池の正極活物質として使用できる材料を用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、正極活物質の例には、リチウム含有複合酸化物や、酸化物以外の化合物が含まれる。リチウム含有複合酸化物の例には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、およびその他のリチウム含有複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2など)が含まれる。酸化物以外の化合物の例には、オリビン系化合物(LiMPO4など)、硫黄含有化合物(Li2Sなど)などが含まれる。なお、上記式中、Mは遷移金属を示す。正極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(負極層)
負極層は、負極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の負極層に使用される公知の成分(結着剤、導電材など)が含まれる。負極層は、負極活物質と、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質とを含んでもよい。通常、負極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0032】
負極活物質には、全固体電池の負極活物質として使用できる材料を用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な所定の材料(炭素質材料、金属や半金属の単体または合金、あるいは化合物など)を用いることができる。炭素質材料の例には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛など)、ハードカーボン、非晶質炭素などが含まれる。金属や半金属の単体、合金の例には、リチウム金属や合金、Si単体などが含まれる。化合物の例には、酸化物(チタン酸化物、ケイ素酸化物など)、硫化物、窒化物、水化物、シリサイド(リチウムシリサイドなど)などが挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ケイ素酸化物と炭素質材料とを併用してもよい。負極活物質として、黒鉛粒子と黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素とを含む粒子を用いてもよい。
【0033】
(固体電解質層)
固体電解質層は、正極層と負極層との間に配置される。固体電解質層は、固体電解質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の固体電解質層に使用される公知の成分が含まれる。通常、固体電解質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0034】
固体電解質には、全固体電池の固体電解質として使用できる材料を特に制限なく用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、固体電解質には、リチウムイオン伝導性を有する物質を用いることができる。そのような固体電解質の例には、硫化物(硫化物系固体電解質)、水素化物(水素化物系固体電解質)などの無機固体電解質が含まれる。
【0035】
硫化物の例には、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-B2S3、Li2S-Ga2S3、Li2S-Al2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-Al2S3-P2S5、Li2S-P2S3、Li2S-P2S3-P2S5、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-B2S3(X:I、Br、またはCl)などが含まれる。水素化物の例には、LiBH4-LiI系錯体水素化物およびLiBH4-LiNH2系錯体水素化物などが含まれる。
【0036】
(正極集電体)
正極層の外側には、通常、正極集電体が配置される。正極集電体には、金属箔を用いてもよい。正極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、亜鉛、スズ、またはこれらの合金などが含まれる。正極集電体および負極集電体には、必要に応じてリードタブが接続される。
【0037】
(負極集電体)
負極層の外側には、通常、負極集電体が配置される。負極集電体には、金属箔を用いてもよい。負極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、またはこれらの合金などが含まれる。
【0038】
(全固体電池(B)の製造方法)
全固体電池(B)の製造方法は特に限定されない。全固体電池(B)の製造方法の一例を以下に説明する。この製造方法は、工程(i)と工程(ii)とをこの順に含む。それらの工程について以下に説明する。
【0039】
工程(i)は、積層体(S)を拘束部材の内側に配置する工程である。その際に、必要に応じて拘束部材を外側に引っ張って積層体(S)を配置する。工程(i)では、必要に応じて、積層体(S)とともに緩衝部材を拘束部材の内側に配置する。
【0040】
工程(ii)は、外装体によって、拘束部材と、その内側に配置された物体(少なくとも積層体(S)を含み、必要に応じて緩衝部材などを含む)とを密封する工程である。例えば、ラミネートフィルムで拘束部材を包んでから、必要な箇所を接着してもよい。ラミネートフィルムの接着の方法は限定されず、ヒートシールなどを用いてもよい。必要に応じて、ヒートシールは、リードタブなどが外装体から突出するように行われる。外装体の内部を減圧する場合には、工程(ii)を減圧下で行ってもよい。あるいは、外装体を密封する際に外装体の内部を脱気してもよい。
【0041】
以上のようにして、全固体電池(B)を製造できる。積層体(S)は、すでに形成されたものを用いてもよいし、形成してもよい。積層体(S)を形成する方法に特に限定はなく、公知の方法で形成してもよい。積層体(S)は、液状成分を含まない材料を用いて形成することが好ましい。そのような形成方法(乾式の形成方法)によって積層体(S)を形成する方法の一例を以下に説明する。
【0042】
まず、正極層の材料、固体電解質層の材料、および負極層の材料を、所定の順に金属箔(集電体)上に積層した後、さらに集電体(金属箔)を配置する。次に、積層された材料および金属箔をまとめてプレス(本プレス)することによって積層体(S)を形成する。この本プレスによって、金属箔および各層が一体化されて積層体(S)が得られる。本プレスの圧力は、材料や厚さなどに応じて適宜変更すればよく、50MPa以上5000MPa以下(例えば、300MPa以上3000MPa以下)であってもよい。以上のようにして、正極集電体/正極層/固体電解質層/負極層/負極集電体という構造を有する積層体(S)が得られる。なお、積層体(S)は、これらの層以外の層、例えば、薄い導電層などを含んでもよい。
【0043】
正極層の材料を配置した後、固体電解質層の材料を配置した後、負極層の材料を配置した後のいずれかの段階において、配置した材料を予備的にプレスしてもよい。予備的なプレスは通常、上記の本プレスの圧力よりも小さい圧力で行われる。予備的なプレスの圧力に特に限定はなく、1MPa~10MPaの範囲にあってもよい。積層体中の空隙を減らすために、積層体を形成する工程の少なくとも一部は減圧下で行われてもよい。
【0044】
液状成分を含まない材料をプレスする工程を用いて積層体(S)を形成することによって、高圧の加圧なしで高い性能を示す全固体電池を得ることが可能である。液状成分(分散媒)を含まない材料を層状に配置する方法として、静電スプレー法、スキージ成膜法、または、静電塗装法などを用いてもよい。
【0045】
積層体(S)が複数の単位電池を含む場合、1つの単位電池を含む積層体をプレス成形によって形成した後に、それらの積層体を積層して積層体(S)を形成してもよい。あるいは、複数の単位電池が積層されるようにそれらの材料をプレス成形することによって、積層体(S)を形成してもよい。
【0046】
以下では、本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態は、上述した記載に基づいて変更してもよい。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。なお、以下の図は模式的な図であり、実際の縮尺とは異なる。以下の図では、図を見やすくするために、部材の一部を省略して図示する場合がある。
【0047】
(実施形態1)
実施形態1の全固体電池100の上面図を
図1に模式的に示す。また、
図1の線IIA-IIAにおける断面図を
図2Aに示し、
図1の線IIB-IIBにおける断面図を
図2Bに示す。
【0048】
全固体電池100は、積層体110、拘束部材130、および外装体140を含む。積層体110は、正極集電体111、負極集電体112、および、それらの間に配置された単位電池120を含む。単位電池120は、正極層121、負極層122、および、それらの間に配置された固体電解質層123とを含む。積層体110は、正極集電体111、正極層121、固体電解質層123、負極層122、および負極集電体112がこの順で積層方向SDに沿って積層された積層構造を有する。
【0049】
正極集電体111からは、正極リードタブ111aが突出している。負極集電体112からは、負極リードタブ112aが突出している。正極リードタブ111aは、正極集電体111と一体であってもよいし、正極集電体111に接続されたリードタブであってもよい。負極リードタブ112aは、負極集電体112と一体であってもよいし、負極集電体112に接続されたリードタブであってもよい。
【0050】
実施形態1では、外装体140がラミネートフィルムで形成されている一例について説明する。実施形態1に示す一例の外装体140は、矩形状の2枚のラミネートの四辺を貼り合わせることによって形成されている。それらの四辺は、例えばヒートシールなどによって貼り合わせることができる。外装体140の内部は密閉されている。外装体140の内部は減圧されていてもよい。なお、内部を密閉できる限り、外装体140の形態は
図1に示す形態に限定されない。
【0051】
拘束部材130は、第1の板状部131、第2の板状部132、第1の側壁133、および第2の側壁134で構成されている。第1および第2の側壁133および134は、第1の板状部131と第2の板状部132とを結んでいる。第1の板状部131は積層体110の第1の主面110aと対向しており、第2の板状部132は、積層体110の第2の主面110bと対向している。第1および第2の板状部131および132によって、第1の主面110aおよび第2の主面110bを積層体110の内側に向かって押すことが可能である。
【0052】
拘束部材130は、金属などからなる。拘束部材130は、角筒状の形状を有する。拘束部材130が単独で存在する状態の断面図を
図3Aに示す。
図3Aの線IIIB-IIIBにおける断面、すなわち角筒が延びる方向LDに垂直な断面を、
図3Bに示す。拘束部材130が単独で存在する状態とは、拘束部材130の内側および外側に他の部材が存在しておらず、拘束部材130に外力が加わっていない状態を意味する。
図3Bに示す拘束部材130は、矩形状の断面を有する。
【0053】
別の一例の拘束部材130が単独で存在する状態の断面図を
図4に示し、さらに別の一例の拘束部材130が単独で存在する状態の断面図を
図5に示す。それらの上面図は、
図3Aに示す上面図と同じである。
図4および
図5は、
図3Aの方向LDに垂直な断面を示す。
図4および
図5には、内部に配置される積層体110の輪郭も示す。
【0054】
図4および
図5に示す拘束部材130において、第1の板状部131および第2の板状部132はそれぞれ、拘束部材130の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲している。より具体的には、第1の板状部131および第2の板状部132の幅方向WDの中央部131cおよび132cが最も内側になるように、第1の板状部131および第2の板状部132は湾曲している。中央部131cと中央部132cとの間の間隔は、積層体110の厚さよりも短い。
【0055】
拘束部材130の内部に積層体110などを配置したときに、第1の板状部131および132の形状は、拘束部材130が単独で存在するときの形状よりも平らになる。その結果、第1の板状部131および132は、積層体110の第1および第2の主面110aおよび110bをより高い圧力で加圧できる。
【0056】
図5に示す拘束部材130は、第1の板状部131および第2の板状部132だけでなく、第1の側壁133および第2の側壁134も、拘束部材130の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲している。このような第1の側壁133および第2の側壁134は、第1の板状部131と第2の板状部132とを結ぶ方向Dに弾性を有する板バネとして機能する。そのため、
図5に示す拘束部材130の第1の板状部131および132は、積層体110の第1および第2の主面110aおよび110bを特に高い圧力で加圧できる。第1の側壁133および第2の側壁134の形状は、
図4および
図5に示す形状以外の形状であって、且つ、方向Dに弾性を有する形状であってもよい。
【0057】
図4および
図5に示す拘束部材130の内側に積層体110などを配置する場合、拘束部材130を外側に向かって引っ張った状態で積層体110などを配置すればよい。例えば、中央部131cおよび132cを真空吸着などで吸着して外側に向かって引っ張ってもよい。
【0058】
上述したように、全固体電池100は、緩衝部材をさらに含んでもよい。緩衝部材150を含む全固体電池100の一例の断面図を
図6に示す。
図6は、
図2Aの断面図と同じ位置における断面図である。
図6に示す一例において、緩衝部材150は、拘束部材130と積層体110との間に配置されている。緩衝部材150の平面形状は、第1の主面110aの平面形状とほぼ同じである。全固体電池100は、第1の主面110aと第1の板状部131との間に配置された緩衝部材150と、第2の主面110bと第2の板状部132との間に配置された緩衝部材150とを含んでもよい。
【0059】
(付記)
上記の記載によって以下の発明例が開示される。
(発明例1)
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池であって、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体と、
前記積層体を囲むように配置され、前記積層体を拘束する拘束部材と、
前記積層体および前記拘束部材を密封する外装体とを含み、
前記拘束部材は、前記拘束部材の内部を密封していない、全固体電池。
(発明例2)
前記外装体は、ラミネートフィルムを用いて形成されている、発明例1に記載の全固体電池。
(発明例3)
前記拘束部材は、第1の板状部と第2の板状部とを有する筒状体を含み、
前記積層体の第1の主面および第2の主面はそれぞれ、前記第1の板状部および前記第2の板状部によって押されている、発明例1または2に記載の全固体電池。
(発明例4)
前記拘束部材が単独で存在する状態において、前記第1の板状部および前記第2の板状部はそれぞれ、前記拘束部材の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲している、発明例3に記載の全固体電池。
(発明例5)
前記筒状体は、前記第1の板状部と前記第2の板状部とを結ぶ第1の側壁および第2の側壁を含み、
前記第1の側壁および前記第2の側壁はそれぞれ、前記第1の板状部と前記第2の板状部とを結ぶ方向に弾性を有する、発明例3または4に記載の全固体電池。
(発明例6)
前記筒状体は金属からなる、発明例3~5のいずれか1つに記載の全固体電池。
(発明例7)
前記拘束部材と前記積層体との間に配置された緩衝部材をさらに含む、発明例1~6のいずれか1つに記載の全固体電池。
(発明例8)
前記緩衝部材は減圧下で膨張する部材である、発明例7に記載の全固体電池。
(発明例9)
前記緩衝部材は発泡体を含む、発明例8に記載の全固体電池。
(発明例10)
前記外装体の内部は減圧されている、発明例1~9のいずれか1つに記載の全固体電池。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、全固体電池に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
100 :全固体電池
110 :積層体
110a :第2の主面
110b :第2の主面
120 :単位電池
121 :正極層
122 :負極層
123 :固体電解質層
130 :拘束部材
131 :第1の板状部
132 :第2の板状部
133 :第1の側壁
134 :第2の側壁
140 :外装体
150 :緩衝部材