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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066623
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】蓄電装置、及び、蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/24 20210101AFI20240509BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/342 20210101ALN20240509BHJP
【FI】
H01M50/24
H01M50/209
H01M50/30
H01M50/204 101
H01M50/342 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176129
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】青山 拓哉
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD01
5H012EE01
5H012FF01
5H012JJ02
5H012JJ06
5H040AA37
5H040AS01
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
(57)【要約】
【課題】外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上された蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を収容する外装体10と、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50と、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆う樹脂部材80と、を備える。膜部材50は壁部14と樹脂部材80との間に配置されており、樹脂部材80と膜部材50とは接合されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、
前記貫通孔の周囲で前記膜部材を覆う樹脂部材と、を備え、
前記膜部材は前記壁部と前記樹脂部材との間に配置されており、前記樹脂部材と前記膜部材とは接合されている、
蓄電装置。
【請求項2】
前記樹脂部材は、レーザ光透過性樹脂により形成されている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記膜部材に向けて突出する凸部であって、前記貫通孔を囲む凸部を有する、
請求項1または2記載の蓄電装置。
【請求項4】
貫通孔が形成された壁部を有する外装体と、前記貫通孔を塞ぐ膜部材とを備える蓄電装置の製造方法であって、
前記膜部材は、前記壁部とレーザ光透過性を有する樹脂部材との間に配置されており、
前記樹脂部材にレーザ光を照射することで前記壁部と前記膜部材とを接合する、
蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、を備え、
前記壁部は、前記膜部材に向けて突出する凸部であって、前記貫通孔を囲み、かつ、前記膜部材と接合された凸部を有する、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置、及び、蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池パックが開示されている。電池パックは、ガス排出穴を通気性防水シートで閉塞している外装ケースを有している。通気性防水シートを被覆するように意匠シートが配置されている。通気性防水シートと意匠シートとの間にはガス溝を形成されており、ガス溝は通気性防水シートの排出側に連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/163550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池パック(蓄電装置)では、意匠シートは、通気性防水シートの全面をカバーすることで通気性防水シートを保護している。しかしながら、通気性防水シートは、ガス排出穴の外周縁の外側に配置された第1の接着面で外装ケースと接着されている。さらに、意匠シートは、第1の接着面の外周縁の外側の第2の接着面で外装ケースと接着されている。つまり、意匠シートは、外装ケースのみに固定されているため、通気性防水シートの移動または変形等の抑制には関与し難い。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目してなされたものであり、外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上された蓄電装置、及び蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体と、前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、前記貫通孔の周囲で前記膜部材を覆う樹脂部材と、を備え、前記膜部材は前記壁部と前記樹脂部材との間に配置されており、前記樹脂部材と前記膜部材とは接合されている。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、貫通孔が形成された壁部を有する外装体と、前記貫通孔を塞ぐ膜部材とを備える蓄電装置の製造方法であって、前記膜部材は、前記壁部とレーザ光透過性を有する樹脂部材との間に配置されており、前記樹脂部材にレーザ光を照射することで前記壁部と前記膜部材とを接合する。
【0008】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体と、前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、を備え、前記壁部は、前記膜部材に向けて突出する凸部であって、前記貫通孔を囲み、かつ、前記膜部材と接合された凸部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上された蓄電装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る外装体が備える通気部の拡大斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る通気部の分解斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係る通気部の断面図である。
図6図6は、実施の形態に係る通気部の構成を示す平面図である。
図7図7は、実施の形態に係る膜部材と樹脂部材及び外装体の壁部との接合方法を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態の変形例1に係る通気部の断面図である。
図9図9は、実施の形態の変形例1に係る樹脂部材の構成を示す斜視図である。
図10図10は、実施の形態の変形例2に係る通気部の分解斜視図である。
図11図11は、実施の形態の変形例2に係る通気部の断面図である。
図12図12は、実施の形態の変形例3に係る通気部の断面図である。
図13図13は、実施の形態の変形例4に係る通気部の断面図である。
図14図14は、実施の形態の変形例4に係る通気部の構成を示す平面図である。
図15図15は、実施の形態の変形例5に係る通気部の断面図である。
図16図16は、実施の形態の変形例5に係る通気部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体と、前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、前記貫通孔の周囲で前記膜部材を覆う樹脂部材と、を備え、前記膜部材は前記壁部と前記樹脂部材との間に配置されており、前記樹脂部材と前記膜部材とは接合されている。
【0012】
この構成によれば、外装体の壁部には、貫通孔が設けられており、貫通孔は膜部材に塞がれていることで、外装体の内部への異物の侵入が抑制される。この膜部材における壁部とは反対側には、膜部材と接合された状態で樹脂部材が配置されている。これにより、樹脂部材は膜部材の移動または変形を抑制するよう作用することができる。従って、本態様に係る蓄電装置によれば、外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上されている。
【0013】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において前記樹脂部材は、レーザ光透過性樹脂により形成されている、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、樹脂部材の上(膜部材とは反対側)からレーザ光を照射することで、レーザ光は、樹脂部材及び膜部材を透過して壁部に到達できる。その結果、レーザ光によって壁部を溶融させることで壁部と膜部材とを溶着できる。壁部と膜部材とを接合する際に、樹脂部材は、膜部材を壁部に向けて押さえることができる。そのため、膜部材と壁部との密着性が高い状態で膜部材と壁部とを溶着できる。これにより、膜部材と壁部とを接合する接合部(溶着部)をより精度よく形成できる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に記載の蓄電装置において、前記樹脂部材は、前記膜部材に向けて突出する凸部であって、前記貫通孔を囲む凸部を有する、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、壁部と膜部材とを接合する際に、樹脂部材は、貫通孔を囲む位置に配置された凸部によって、膜部材を壁部に向けて押さえることができる。これにより、膜部材と壁部との密着性をさらに高めることができる。その結果、膜部材と壁部とをより良好に接合できる。
【0017】
(4)本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、貫通孔が形成された壁部を有する外装体と、前記貫通孔を塞ぐ膜部材とを備える蓄電装置の製造方法であって、前記膜部材は、前記壁部とレーザ光透過性を有する樹脂部材との間に配置されており、前記樹脂部材にレーザ光を照射することで前記壁部と前記膜部材とを接合する。
【0018】
この製造方法によれば、膜部材と壁部との接合の際に樹脂部材の上からレーザ光を照射することで、壁部を溶融させて壁部と膜部材とを溶着できる。この溶着において、樹脂部材で膜部材を壁部に押さえることができる。そのため、膜部材と壁部との密着性が高い状態で溶着できる。これにより、膜部材と壁部とを接合する接合部(溶着部)を、より精度よく形成できる。従って、本態様に係る蓄電装置の製造方法によれば、外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上された蓄電装置を製造できる。
【0019】
(5)本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体と、前記外装体の壁部に形成された貫通孔を塞ぐ膜部材と、を備え、前記壁部は、前記膜部材に向けて突出する凸部であって、前記貫通孔を囲み、かつ、前記膜部材と接合された凸部を有する。
【0020】
この構成によれば、外装体の壁部には、貫通孔が設けられており、貫通孔は膜部材に塞がれていることで、外装体の内部への異物の侵入が抑制される。壁部における膜部材と接合される部分は、貫通孔を囲む凸部である。従って、膜部材と壁部とを接合する際に膜部材を壁部に向けて押さえた場合、膜部材と壁部の凸部との密着性が高い状態となる。これにより、壁部と膜部材とを良好に接合できる。従って、本態様に係る蓄電装置によれば、外装体の壁部に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材の位置の安定性が向上されている。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0022】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の外装体の短手方向、または、蓄電素子の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の長手方向、または、複数の蓄電素子の並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の本体と蓋体との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0023】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。単に「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0024】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。さらに、単に、「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0025】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置1の概略構成について説明する。図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。外装体10の内部には、図2に示される部材に加え、バスバー及び電気機器等が収容され、さらに、蓄電素子100に沿って配置されるスペーサ、及び、複数の蓄電素子100を拘束する拘束部材等が配置され得る。しかし、これらの部材の図示及び説明は適宜省略する。
【0026】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。ここでいう直方体とは、すべての面が長方形または正方形で構成された六面体である。蓄電装置1は、例えば、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。また、蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0027】
図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、外装体10と、1以上の蓄電素子100を有する蓄電素子ユニット101とを備えている。蓄電素子ユニット101は外装体10に収容されている。外装体10は、蓄電装置1の筐体を構成する箱形(略直方体形状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット101の外方に配置され、蓄電素子ユニット101を所定の位置で固定する。外装体10には、後述する膜部材50がレーザ溶着によって接合されるため、外装体10を形成する材料として、レーザ溶着に適した樹脂が採用されることが好ましい。具体的には、外装体10の材料としては、非結晶樹脂または結晶性樹脂が採用され得る。非結晶樹脂としては、ABS樹脂、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアミド(PA)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及び、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)等が例示される。結晶性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)等が例示される。
【0028】
外装体10は、外装体10の本体を構成する外装体本体12と、蓋体11とを有している。外装体本体12は、Z軸プラス方向に開口12aが形成された有底矩形筒状のハウジングである。蓋体11は、外装体本体12の開口12aを閉塞する矩形状の部材である。蓋体11は、外装体本体12と、接着剤、ヒートシール、または、超音波溶着等によって接合される。これにより、蓋体11と外装体本体12との接合部分は気密性が高い状態に維持される。
【0029】
蓋体11には、正極及び負極の一対の外部端子19が配置されている。蓄電装置1は、この一対の外部端子19を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子19は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0030】
本実施の形態では、蓋体11には、外装体10の内部と外部との気体のやり取りを行うための通気部30が設けられている。通気部30は、蓋体11の壁部14に設けられた貫通孔を塞ぐ膜部材50と、膜部材50に接合された樹脂部材80とを有している。通気部30の詳細については、図3図7を用いて後述する。
【0031】
蓄電素子ユニット101は、1以上の蓄電素子100で構成された蓄電素子100群である。本実施の形態に係る蓄電素子ユニット101は8個の蓄電素子100で構成されている。8個の蓄電素子100は、それぞれが長側面110aをY軸方向に向けた状態でY軸方向に並べられている。蓄電素子ユニット101は、蓄電素子100に沿って配置されたスペーサまたはホルダ(図示せず)を有してもよい。蓄電素子ユニット101は、複数の蓄電素子100をその並び方向で拘束する拘束部材(図示せず)を有してもよい。蓄電素子ユニット101が有する8個の蓄電素子100は、複数の図示しないバスバーにより例えば直列に接続されるが、電気的な接続態様はこれに限らない。蓄電素子ユニット101が有する蓄電素子100の数についても特に限定はない。蓄電素子ユニット101が有する蓄電素子100の数は、1~7のいずれかであってもよく、9以上であってもよい。
【0032】
蓄電素子100は、二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、図2に示すように、扁平な直方体形状(角形)の容器110を備え、容器110の内部には、図示しない電極体、集電体、及び電解液等が収容されている。当該電極体としては、例えば、極板とセパレータとが巻回されて形成された巻回型、または複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体が採用される。容器110に収容される電解液としては、蓄電素子100の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。蓄電素子100は、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子100は、一次電池であってもよい。蓄電素子100は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。蓄電素子100は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子100の形状は、上記角形には限定されず、それ以外の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0033】
容器110は、図2に示すように、一対の長側面110aと、一対の短側面110bと、底面110dと、端子配置面110cとを有する直方体形状のケースである。端子配置面110cには、一対の端子120と、容器110内方の圧力が過度に上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁105とが設けられている。容器110は、端子配置面110c以外を形成する容器本体の内部に電極体等を収容後、容器本体と、端子配置面110cとが溶接等されることにより、内部を密封できる構造となっている。なお、容器110の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0034】
端子120は、容器110に収容された電極体に電気的に接続される端子部材であり、端子配置面110cから突出して設けられている。一対の端子120のうちの一方は、電極体の正極と電気的に接続され、他方は電極体の負極と電気的に接続される。端子120は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の導電部材で形成されている。
【0035】
蓄電装置1において、外装体本体12と、外装体本体12の開口12aを塞ぐ蓋体11との接合部分は、上述のように、気密性が高い状態に維持されている。そのため、蓄電装置1の外部環境の変化、または、蓄電素子100の温度変化等に起因して、外装体10の内部と外部との間の圧力差(内外の圧力差)が比較的に大きくなる可能性がある。外装体10における内外の圧力差の増加、及び、内外の圧力差の変動の繰り返しは、外装体10の損傷の要因となる。そこで、本実施の形態に係る蓄電装置1では、外装体10の外部から内部への異物の侵入を抑制しつつ、外装体の内部と外部との間で気体をやり取りできるように、外装体10に通気部30が設けられている。以下、通気部30の構成について、図3図7を用いて説明する。
【0036】
[2.通気部の構成]
図3は、実施の形態に係る外装体10が備える通気部30の拡大斜視図である。図4は、実施の形態に係る通気部30の分解斜視図である。図4では、膜部材50を視認しやすいように、膜部材50には模様が付されている。このことは、図6、及び、後述する図10にも適用される。図5は、実施の形態に係る通気部30の断面図である。図5では、図3のV-V線を通るXZ平面における通気部30の断面が図示されている。図6は、実施の形態に係る通気部30の構成を示す平面図である。図7は、実施の形態に係る膜部材50と樹脂部材80及び外装体10の壁部14との接合方法を示す断面図である。図7における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。
【0037】
図3図5に示すように、外装体10は通気部30を有している。本実施の形態では蓋体11のY軸方向の端部に設けられた凹部14aに通気部30が配置されている。蓄電装置1は、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50と、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆う樹脂部材80とを備える。本実施の形態では、壁部14における貫通孔20が形成された部分と、膜部材50と、樹脂部材80とによって通気部30が構成されている。図1図3に示される通気部30の配置位置は一例である。通気部30は、外装体10の凹部14aに配置される必要はない。例えば、蓋体11の壁部14における平板状の部分に通気部30が設けられてもよい。外装体本体12のX軸方向またはY軸方向の側壁部に通気部30が設けられてもよい。
【0038】
膜部材50は、防水性および通気性(透湿性)を有する素材からなる通気防水膜である。つまり、外装体10の外部の気体(例えば、大気)は、膜部材50及び貫通孔20を介して外装体10の内部と外部とを行き来できる。これにより、例えば、通常時における外装体10の内外の圧力平衡が図られる。その結果、通常時における外装体10の内外の圧力差の大きさ、または、内外の圧力差の変化の繰り返しにより生じる外装体10の損傷または劣化が抑制される。さらに、仮に、貫通孔20を介して外装体10の内部に水が侵入しようとした場合であっても、膜部材50によって、外装体10の内部への水の侵入が抑制される。膜部材50としては、具体的に、ゴアテックス(登録商標)(Gore-Tex)またはTEMISH(登録商標)などが挙げられる。
【0039】
本実施の形態では、図3図6に示すように、膜部材50は、樹脂部材80と外装体10の壁部14との間に配置されている。本実施の形態では、樹脂部材80、膜部材50、及び壁部14は、接合部90で接合されている。接合部90は、第一接合部91と第二接合部92とを含む。膜部材50と壁部14とは第一接合部91で接合されており、膜部材50と樹脂部材80とは第二接合部92で接合されている。つまり、本実施の形態では、樹脂部材80は、膜部材50を介して壁部14と接合されている。
【0040】
このような接合構造は、レーザ光を用いたレーザ溶着によって実現されている。レーザ溶着によって膜部材50と壁部14とを良好に接合するためには、膜部材50を壁部14に密着させた状態でレーザ光を当てることが好ましい。そこで、本実施の形態では、図7に示すように、レーザ光Lを透過させる治具400で膜部材50を壁部14に向けて押さえながらレーザ光Lを膜部材50に向けて照射する。治具400は、例えばガラス製のブロックである。膜部材50は、より具体的には、例えば、PETまたはPP等で形成されたメッシュ層に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で形成された多孔質の薄膜が形成された部材である。そのため、レーザ光Lは膜部材50を透過する。これに対し、壁部14は、レーザ光Lの透過率が低い樹脂材料で形成されているためレーザ光Lを吸収する。その結果、壁部14は、レーザ光Lが照射された位置において発熱及び溶融し、溶融した樹脂材料が膜部材50に含浸して冷え固まることで、第一接合部91が形成される。このとき、膜部材50の一部が溶融することで、第一接合部91に膜部材50の溶融した一部が含まれてもよい。図6に示すように、第一接合部91は、貫通孔20を囲むように形成される。
【0041】
上記のように、レーザ光Lを用いて膜部材50と壁部14とを接合する場合、レーザ光Lの照射による熱によって樹脂材料の一部が気化することがある。気化により発生したガスが膜部材50を通過して治具400に付着し、そのガスによって治具400が汚れる場合がある。治具400が汚れた場合、レーザ光Lの透過率が低下することで溶着不良が発生する可能性がある。そのため、治具400が汚れた場合、治具400の清掃または治具400の交換が必要となる。このことは、蓄電装置1の製造効率の低下の要因となる。
【0042】
本実施の形態では、治具400と膜部材50との間に樹脂部材80を配置する。これにより、樹脂材料の一部が気化して発生したガスは、樹脂部材80によって遮られる。その結果、当該ガスに起因する治具400の汚れが抑制される。さらに、治具400は、樹脂部材80を介して膜部材50を壁部材14に押さえるため、膜部材50と壁部14との間の密着性を高めることができる。
【0043】
本実施の形態では、樹脂部材80は、外装体10を形成する樹脂材料と同種の樹脂材料で形成され、かつ、レーザ光透過性を有している。例えば、外装体10はカーボンブラック等で着色された樹脂材料で形成されていることでレーザ光吸収性を有し、樹脂部材80は、着色されていない当該樹脂材料で形成されていることで、レーザ光透過性を有している。従って、図7に示すように、レーザ光Lが樹脂部材80に向けて照射された場合、レーザ光Lは、樹脂部材80及び膜部材50を透過して壁部14で吸収される。その結果、上述のように、膜部材50と壁部14とを接合する第一接合部91が形成される。
【0044】
本実施の形態において、樹脂部材80のレーザ透過率は、20%以上である。樹脂部材80の厚みは、0.2mm以上かつ5mm以下であり、好ましくは1mm以上かつ3mm以下であり、さらに好ましくは、1mm以上かつ1.5mm以下である。樹脂部材80を形成する樹脂としては、外装体10を形成する樹脂と同じく、非結晶樹脂(ABS樹脂、ASA、PA、AS樹脂、PS、PC、及びPES等)または結晶性樹脂(PE、PP、POM、PBT、PA6、及びPA66等)が採用され得る。
【0045】
さらに、壁部14がレーザ光Lを吸収することにより生じる熱は、膜部材50を介して樹脂部材80に伝わる。樹脂部材80は、壁部14と同種の樹脂材料で形成されているため融点もほぼ同一である。従って、壁部14がレーザ光Lを吸収することにより生じる熱によって、樹脂部材80も一部が溶融し、溶融した当該一部が膜部材50に含浸して冷え固まる。これにより、第二接合部92が形成され、膜部材50と樹脂部材80とは接合される。このとき、膜部材50の一部が溶融することで、第二接合部92に膜部材50の溶融した一部が含まれてもよい。なお、第二接合部92は、樹脂部材80の厚み方向(Z軸方向)を貫通しない範囲で形成される。また、第二接合部92が樹脂部材80を貫通したとしても、貫通して露出した部分は非常に小さい。そのため、樹脂部材80による、ガスの移動を抑制する機能は失われない。樹脂部材80及び壁部14が、いずれも着色された樹脂材料で形成されていてもよい。膜部材50の壁部14への接合手法としてレーザ溶着が採用される場合、壁部14に向けて照射されたレーザ光Lが、樹脂部材80を透過して壁部14に吸収されるのであれば、樹脂部材80及び壁部14それぞれを形成する材料に特に限定はない。
【0046】
第二接合部92は、第一接合部91が形成される際の熱によって形成されるため、第二接合部92は、第一接合部91に沿うように形成される。すなわち、図5及び図6に示されるように、Z軸方向から見た場合に、第二接合部92が形成される位置と、第一接合部91が形成される位置とはおおよそ一致する。すなわち、壁部14、膜部材50、及び、樹脂部材80の並び方向(Z軸方向)において、第一接合部91と第二接合部92とは互いに隣り合う位置に配置される。第一接合部91と第二接合部92とは、膜部材50の内部で繋がっていてもよい。
【0047】
以上、説明したように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を収容する外装体10と、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50と、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆う樹脂部材80と、を備える。膜部材50は壁部14と樹脂部材80との間に配置されており、樹脂部材80と膜部材50とは接合されている。
【0048】
このように、本実施の形態では、外装体10の壁部14に貫通孔20が設けられており、貫通孔20は膜部材50に塞がれていることで、外装体10の内部への異物の侵入が抑制される。この膜部材50における壁部14とは反対側には、膜部材50と接合された状態で樹脂部材80が配置されている。つまり、樹脂部材80は膜部材50に接続されている。これにより、樹脂部材80は膜部材50の移動または変形を抑制するよう作用することができる。例えば、膜部材50の一部が壁部14から離れる方向に変形しようとした場合、当該一部には樹脂部材80が接合されているため変形が抑制される。従って、本態様に係る蓄電装置1によれば、外装体10の壁部14に設けられた貫通孔20を塞ぐ膜部材50の位置の安定性が向上されている。
【0049】
さらに、本実施の形態に係る樹脂部材80は、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆っている。具体的には、樹脂部材80は、Z軸方向で貫通孔20と対向する位置に開口部82を有している。開口部82は貫通孔20を覆わない形状及びサイズに形成されている(図5及び図6参照)。そのため、本実施の形態のように、膜部材50が通気性を有する場合において、樹脂部材80の開口部82によって膜部材50の通気性は阻害されにくい。より詳細には、樹脂部材80の開口部82は、Z軸方向から見た場合に、壁部14に設けられた貫通孔20を含む形状及びサイズに形成されている。そのため、貫通孔20を通過する気体に対する樹脂部材80による抵抗をより低減できる。開口部82は、Z軸方向から見た場合に、貫通孔20の全体を覆わない形状及びサイズで形成されていてもよいし、貫通孔20の一部しか覆わない形状及びサイズで形成されていてもよい。
【0050】
蓄電装置1が、通気部30以外に内外の圧力平衡のための通気が可能な部位を有する場合、または、内外の圧力平衡のための通気の必要性が低い場合などにおいて、膜部材50は、通気性を有しなくてもよい。膜部材50が通気性を有しない場合であっても、貫通孔20を介した外装体10の内部への異物の侵入が、膜部材50によって抑制される。この場合、貫通孔20は、外装体10の内圧が急激に上昇した場合の緊急的な圧力開放用の孔として利用されてもよい。
【0051】
貫通孔20が、緊急的な圧力開放用の孔として利用される場合、膜部材50は、通気性を有するか否かにかかわらず、外装体10の内部のガスの圧力によって破断されてもよい。具体的には、蓄電素子100のガス排出弁105からガスが排出された場合、外装体10の内圧が急激に上昇することで、膜部材50に比較的に大きな内圧が作用する。この場合、膜部材50は当該圧力を受けることで破断してもよい。これにより、内圧の過度な上昇による外装体10の損傷が抑制される。本実施の形態では、上述のように、樹脂部材80は、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆っている。より詳細には、Z軸方向から見た場合に、樹脂部材80の開口部82は貫通孔20よりも大きい。そのため、樹脂部材80は、膜部材50の外方への膨張を妨げ難い。すなわち、緊急的な圧力開放のための膜部材50の膨張および破断が、樹脂部材80によって阻害されることが抑制される。
【0052】
本実施の形態では、樹脂部材80は、レーザ光透過性樹脂により形成されている。
【0053】
これにより、図7に示すように、樹脂部材80の上(膜部材50とは反対側)からレーザ光Lを照射することで、レーザ光Lは、樹脂部材80及び膜部材50を透過して壁部14まで到達できる。すなわち、本実施の形態に係る蓄電装置1の製造方法は、少なくとも下記の接合工程が含まれる。当該製造方法では、膜部材50は、壁部14とレーザ光透過性を有する樹脂部材80との間に配置されており、樹脂部材80にレーザ光Lを照射することで壁部14と膜部材50とを接合する。
【0054】
この製造方法によれば、膜部材50と壁部14との接合の際に、樹脂部材80の上(膜部材50の反対側)からレーザ光Lを照射することで、壁部14を溶融させて壁部14と膜部材50とを溶着できる。この溶着において、樹脂部材80で膜部材50を壁部14に押さえることができる。そのため、膜部材50と壁部14との密着性が高い状態で溶着できる。これにより、膜部材50と壁部14とを接合する第一接合部91をより精度よく形成できる。従って、本態様に係る蓄電装置1の製造方法によれば、外装体10の壁部14に設けられた貫通孔20を塞ぐ膜部材50の位置の安定性が向上された蓄電装置1を製造できる。
【0055】
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について、通気部30の構成を中心に説明した。しかし、蓄電装置1は、図2図6とは異なる構成の通気部30を備えてもよい。そこで、以下に、通気部30の構成についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。蓄電装置1は、以下で説明される通気部30a及び30bのそれぞれを、通気部30に換えてまたは加えて備えることができる。
【0056】
[3-1.変形例1]
図8は、実施の形態の変形例1に係る通気部30aの断面図である。図8における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。図9は、実施の形態の変形例1に係る樹脂部材80aの構成を示す斜視図である。
【0057】
図8に示すように、本変形例に係る通気部30aは、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50と、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆う樹脂部材80aと、を備える。膜部材50は壁部14と樹脂部材80aとの間に配置されており、樹脂部材80aと膜部材50とは接合されている。この構成において、本変形例に係る通気部30aと、実施の形態に係る通気部30とは共通する。
【0058】
本変形例に係る通気部30aでは、樹脂部材80aは、膜部材50に向けて突出する凸部83であって、貫通孔20を囲む凸部83を有している。この点で、本変形例に係る通気部30aと実施の形態に係る通気部30とは異なる。具体的には、樹脂部材80aは、樹脂部材80と同じ形状の樹脂本体部81と、樹脂本体部81のZ軸マイナス方向の面からZ軸マイナス方向に突出する凸部83とを有している。
【0059】
この構成によれば、樹脂部材80aは、貫通孔20を囲む位置に配置された凸部83を有している。壁部14と膜部材50とを接合する際に、凸部83によって、膜部材50を壁部14に高い圧力で押さえることができる。具体的には、レーザ溶着の際に治具400(図7参照)で樹脂部材80aが押さえられた場合、凸部83の先端面(Z軸マイナス方向の端面)に高い圧力が作用する。その結果、凸部83のない平面で膜部材50を押さえる樹脂部材80(図5参照)と比較して、凸部83で膜部材50を押さえる樹脂部材80aの方が、膜部材50と壁部14との密着性をより高くすることができる。つまり、膜部材50と壁部14との密着性がより高い状態でレーザ溶着できる。その結果、膜部材50と壁部14とをより良好に接合できる。これにより、膜部材50の位置の安定性が向上する。
【0060】
さらに、レーザ溶着の際に壁部14を形成する樹脂材料の一部が気化してガスが発生した場合であっても、そのガスは樹脂部材80aによって遮られる。その結果、当該ガスに起因する治具400の汚れが抑制される。
【0061】
[3-2.変形例2]
図10は、実施の形態の変形例2に係る通気部30bの分解斜視図である。図11は、実施の形態の変形例2に係る通気部30bの断面図である。図11における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。
【0062】
図10及び図11に示されるように、本変形例に係る通気部30bでは、外装体10bの壁部14における貫通孔20の周縁部に凸部23が設けられており、かつ、樹脂部材80が配置されていない。それらの点で、本変形例に係る通気部30bと実施の形態に係る通気部30とは異なる。すなわち、本変形例に係る蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を収容する外装体10bと、外装体10bの壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50と、を備える。壁部14は、膜部材50に向けて突出する凸部23であって、貫通孔20を囲むように形成された凸部23を有する。凸部23は膜部材50と接合される。
【0063】
本変形例において、膜部材50と壁部14の凸部23とは、レーザ溶着によって接合される。具体的には、膜部材50を壁部14の凸部23の上(Z軸プラス方向)に配置し、レーザ光透過性を有する治具400で、膜部材50を凸部23に向けて押さえながらレーザ光Lを照射する(図7参照)。これにより、壁部14の凸部23と膜部材50とを接合する接合部90が形成される。
【0064】
この構成によれば、壁部14における膜部材50と接合される部分は、貫通孔20を囲む凸部23である。膜部材50と壁部14との接合時に、治具400によって凸部23がZ軸マイナス方向に押さえられた場合、凸部23の先端に高い圧力が作用する。膜部材50と壁部14との密着性をより高くすることができる。つまり、膜部材50と壁部14の凸部23との密着性がより高い状態でレーザ溶着できる。その結果、膜部材50と壁部14とをより良好に接合できる。
【0065】
[3-3.変形例3]
図12は、実施の形態の変形例3に係る通気部30cの断面図である。図12における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。
【0066】
図12に示すように、本変形例に係る通気部30cは、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50を備える。壁部14は、膜部材50に向けて突出する凸部23であって、貫通孔20を囲み、かつ、膜部材50と接合された凸部23を有する。この構成において、本変形例に係る通気部30cと、上記変形例2に係る通気部30bとは共通する。
【0067】
本変形例に係る通気部30cは、さらに、貫通孔20の周囲で膜部材50を覆う樹脂部材80を備えている。この点で上記変形例2に係る通気部30bと異なり、かつ、実施の形態に係る通気部30と共通する。
【0068】
この構成によれば、上記変形例2に係る通気部30bと同じく、膜部材50と壁部14の凸部23との密着性がより高い状態でレーザ溶着できる。その結果、膜部材50と壁部14とをより良好に接合できる。さらに、第一接合部91の形成時に発生する熱によって、樹脂部材80と膜部材50とを接合する第二接合部92が形成される。つまり、樹脂部材80は膜部材50に接続される。これにより、樹脂部材80は膜部材50の移動または変形を抑制することができ、その結果、膜部材50の位置の安定性が向上する。レーザ溶着の際に樹脂材料の一部が気化してガスが発生した場合であっても、そのガスは、樹脂部材80によって遮られる。その結果、当該ガスに起因する治具400の汚れが抑制される。
【0069】
[3-4.変形例4]
図13は、実施の形態の変形例4に係る通気部30dの断面図である。図13における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。図14は、実施の形態の変形例4に係る通気部30dの構成を示す平面図である。
【0070】
図13に示すように、本変形例に係る通気部30dは、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20dを塞ぐ膜部材50を備える。膜部材50は、壁部14と樹脂部材80との間に配置されている。樹脂部材80、膜部材50、及び壁部14は、接合部90で接合されている。接合部90は、第一接合部91と第二接合部92とを含む。膜部材50と壁部14とは第一接合部91で接合されており、膜部材50と樹脂部材80とは第二接合部92で接合されている。これらの構成において、本変形例に係る通気部30dと、上記実施の形態に係る通気部30とは共通する。
【0071】
本変形例に係る通気部30dでは、貫通孔20dは、複数の第一孔21で構成されている。それぞれの第一孔21は、壁部14をZ軸方向に貫通する孔である。この点で、本変形例に係る通気部30dは、実施の形態に係る通気部30と異なる。つまり、本変形例では、複数の第一孔21の集合が、貫通孔20dとみなされている。従って、図13及び図14に示されるように、本変形例においても、樹脂部材80は貫通孔20dの周囲で膜部材50を覆っており、かつ、樹脂部材80と膜部材50とは接合されている。
【0072】
この構成によれば、貫通孔20dが膜部材50に塞がれていることで、外装体10の内部への異物の侵入が抑制される。膜部材50における壁部14とは反対側には、膜部材50と接合された状態で樹脂部材80が配置されている。これにより、樹脂部材80は膜部材50の移動または変形を抑制するよう作用することができる。その結果、外装体10の壁部14に設けられた貫通孔20dを塞ぐ膜部材50の位置の安定性が向上されている。
【0073】
本変形例では、図13及び図14に示されるように、比較的に小さい内径を有する第一孔21が複数並べられることで貫通孔20dが構成される。そのため、比較的に大きい内径を有する貫通孔20(図4図6参照)と比較すると、貫通孔20dを介して、外装体10の内部に異物が侵入する可能性が低減する。
【0074】
図14では、貫通孔20dは、9個の第一孔21によって構成されているが、貫通孔20dを構成する第一孔21の数は2以上であればよい。Z軸方向から見た場合の第一孔21の形状及びサイズは、図13及び図14に示す形状及びサイズには限定されない。第一孔21は、Z軸方向から見た場合に、矩形または三角形等の円形以外の形状であってもよい。複数の第一孔21のうちの少なくとも1つの第一孔21のサイズまたは形状は、他の1以上の第一孔21のサイズまたは形状と異なっていてもよい。本変形例において、樹脂部材80に換えて変形例1に係る樹脂部材80a(図8及び図9参照)が配置されてもよい。本変形例において、外装体10の壁部14における貫通孔20dの周縁部に凸部23(図10図12参照)が配置されてもよい。
【0075】
[3-5.変形例5]
図15は、実施の形態の変形例5に係る通気部30eの断面図である。図15における断面の位置は、図5の断面の位置に準ずる。図16は、実施の形態の変形例5に係る通気部30eの構成を示す平面図である。
【0076】
図15に示すように、本変形例に係る通気部30eは、外装体10の壁部14に形成された貫通孔20を塞ぐ膜部材50を備える。膜部材50は、壁部14と樹脂部材80eとの間に配置されている。樹脂部材80e、膜部材50、及び壁部14は、接合部90で接合されている。接合部90は、第一接合部91と第二接合部92とを含む。膜部材50と壁部14とは第一接合部91で接合されており、膜部材50と樹脂部材80eとは第二接合部92で接合されている。これらの構成において、本変形例に係る通気部30eと、上記実施の形態に係る通気部30とは共通する。
【0077】
本変形例に係る通気部30eでは、開口部82eは、複数の第二孔84で構成されている。それぞれの複数の第二孔84は、樹脂部材80eをZ軸方向に貫通する孔である。この点で、本変形例に係る通気部30eは、実施の形態に係る通気部30と異なる。つまり、本変形例では、複数の第二孔84の集合が、開口部82eとみなされている。さらに、複数の第二孔84が配置されている範囲は、実施の形態に係る樹脂部材80の開口部82(図6参照)が配置された範囲とほぼ等しい。従って、図15及び図16に示されるように、本変形例においても、樹脂部材80eは貫通孔20の周囲で膜部材50を覆っており、かつ、樹脂部材80eと膜部材50とは接合されている。
【0078】
この構成によれば、貫通孔20が膜部材50に塞がれていることで、外装体10の内部への異物の侵入が抑制される。膜部材50における壁部14とは反対側には、膜部材50と接合された状態で樹脂部材80eが配置されている。これにより、樹脂部材80eは膜部材50の移動または変形を抑制するよう作用することができる。その結果、外装体10の壁部14に設けられた貫通孔20を塞ぐ膜部材50の位置の安定性が向上されている。
【0079】
本変形例では、図15及び図16に示されるように、比較的に小さい内径を有する第二孔84が複数並べられることで開口部82eが構成される。そのため、比較的に大きい内径を有する開口部82(図4図6参照)を有する樹脂部材80と比較すると、樹脂部材80eが膜部材50を覆う面積が増加する。これにより、樹脂部材80eは、より確実に膜部材50を保護できる。
【0080】
図16では、開口部82は、9個の第二孔84によって構成されているが、開口部82を構成する第二孔84の数は2以上であればよい。Z軸方向から見た場合の第二孔84の形状及びサイズは、図15及び図16に示す形状及びサイズには限定されない。第二孔84は、Z軸方向から見た場合に、矩形または三角形等の円形以外の形状であってもよい。複数の第二孔83のうちの少なくとも1つの第二孔83のサイズまたは形状は、他の1以上の第二孔83のサイズまたは形状と異なっていてもよい。本変形例において、樹脂部材80eは、膜部材50に向けて突出する凸部83であって、貫通孔20を囲む凸部83(図8及び図9参照)を有してもよい。本変形例において、外装体10の壁部14における貫通孔20の周縁部に凸部23(図10図12参照)が配置されてもよい。
【0081】
本変形例に係る樹脂部材80eを、変形例4に係る樹脂部材80(図13及び図14参照)に換えて配置してもよい。この場合、複数の第二孔84のそれぞれのZ軸マイナス方向に、1以上の第一孔21(図13及び図14参照)が、配置されていることが、通常時における外装体10の内外の圧力平衡を効率よく維持する観点から好ましい。
【0082】
[4.他の変形例]
以上、実施の形態に係る蓄電装置1及びその変形例について説明したが、本発明は、実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0083】
貫通孔20の、貫通方向(実施の形態ではZ軸方向)から見た場合の形状は円形(図4及び図6参照)である必要はない。貫通方向から見た場合の貫通孔20の形状は、円形以外の楕円形、長円形、多角形、または、直線と曲線との組み合わせによる形状等であってもよい。
【0084】
厚み方向(実施の形態ではZ軸方向)から見た場合の膜部材50の形状は矩形(図4及び図6参照)である必要はない。膜部材50の、厚み方向から見た場合の形状は、矩形以外の多角形、楕円形(円形を含む)、または、直線と曲線との組み合わせによる形状等であってもよい。膜部材50は、貫通孔20を塞ぐことができる形状及びサイズであれば、その形状及びサイズに特に限定はない。
【0085】
膜部材50と壁部14とを接合する第一接合部91の、Z軸プラス方向から見た場合の形状は円環状(図6参照)である必要はない。第一接合部91は、Z軸プラス方向から見た場合に、膜部材50と壁部14とがZ軸方向で重ねられている範囲内で、貫通孔20を囲むように形成されていればよい。好ましくは、第一接合部91は、図6に示されるように、貫通孔20の周縁部の全周において連続して形成される。これにより、貫通孔20を介した外装体10の内部への異物の侵入がより確実に抑制される。第二接合部92は、Z軸方向において第一接合部91と並ぶ位置に配置されるため、Z軸方向から見た場合の第二接合部92の形状は、第一接合部91の形状と同一である。つまり、第一接合部91及び第二接合部92を含む接合部90(図5及び図6参照)は、Z軸プラス方向から見た場合、第一接合部91は、膜部材50と壁部14とがZ軸方向で重ねられている範囲内において、貫通孔20を囲むように形成されていればよい。
【0086】
膜部材50と壁部14とを接合する第一接合部91の形成時に発生する熱によって、膜部材50と樹脂部材80とを接合する第二接合部92が形成されることは必須ではない。例えば、樹脂部材80と膜部材50とを、予め溶着または接着等で接合しておく。樹脂部材80が接合されている膜部材50を、図7に示す位置に配置して、レーザ光Lを照射する。これにより膜部材50と壁部14とを溶着する。このような手順であっても、樹脂部材80と膜部材50とは接合されている、との構成を有する蓄電装置1を得ることができる。この場合、膜部材50と壁部14とを接合する第一接合部91と、樹脂部材80と膜部材50との接合部分(第二接合部92)とが、Z軸方向で並んでいなくてもよい。つまり、Z軸プラス方向から見た場合に、第一接合部91と第二接合部92とが互いにずれた位置に配置されていてもよい。
【0087】
膜部材50と壁部14とをレーザ溶着する場合に用いる治具400(図7参照)は、ガラス製でなくてもよい。ただし、治具400は、樹脂部材80を介して膜部材50を押さえるため、樹脂部材80よりも硬度の高い材料で形成されていることが好ましい。
【0088】
樹脂部材80は、外装体10を形成する樹脂材料と同種の樹脂材料で形成されていなくてもよい。ただし、膜部材50と壁部14とをレーザ溶着する際の熱によって、膜部材50と樹脂部材80とを溶着するためには、樹脂部材80を形成する樹脂材料の融点と、壁部14を形成する樹脂材料の融点とが近いことが好ましい。外装体10の壁部14の全体が、樹脂部材80を形成する樹脂材料と近い融点の樹脂材料で形成されていなくてもよい。外装体10の壁部14における、膜部材50と接合される部分のみが、樹脂部材80を形成する樹脂材料と近い融点の樹脂材料で形成されていてもよい。
【0089】
樹脂部材80は、膜部材50を介さずに壁部14に直接的に接合されてもよい。例えば、Z軸プラス方向から見た場合に、樹脂部材80が膜部材50を含む大きさに形成されている場合を想定する。この場合、Z軸方向から見た場合に、膜部材50の外周に、樹脂部材80と壁部14とが膜部材50を介さずに重ねられる領域が存在する。従って、当該領域において、樹脂部材80と壁部14とを直接的に接合してもよい。樹脂部材80と壁部14との接合の手法としては、レーザ溶着、ヒートシール、接着剤または両面テープによる接合が例示される。膜部材50を囲む全周において連続して樹脂部材80と壁部14とが接合された場合、膜部材50と壁部14とが接合されていない場合であっても、貫通孔20を介した外装体10の内部への異物の侵入が抑制される。膜部材50と接続されている樹脂部材80が、壁部14に固定されていることで、膜部材50の位置の安定性がより向上する。
【0090】
外装体10の形状は、図1及び図2に示すような直方体形状である必要はない。例えば、円柱形状などの他の形状の外装体が、蓄電素子ユニット101を収容するケースとして採用されてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 蓄電装置
10、10b 外装体
14 壁部
20、20d 貫通孔
21 第一孔
23、83 凸部
30、30a、30b、30c、30d、30e 通気部
50 膜部材
80、80a、80e 樹脂部材
81 樹脂本体部
82、82e 開口部
84 第二孔
90 接合部
91 第一接合部
92 第二接合部
100 蓄電素子
400 治具
401 端面
図1
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