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特開2024-66635レーダシステム及びレーダ信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066635
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】レーダシステム及びレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20240509BHJP
   G01S 13/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01S7/292 200
G01S13/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176159
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】仲野 剛
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC02
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK03
5J070AK28
(57)【要約】
【課題】 低S/Nの目標物を精度よく検出する。
【解決手段】 実施形態に係るレーダシステムは、レーダ受信信号を複数の周波数帯域に分割し、分割された帯域毎にパルス圧縮して複数の圧縮信号を生成し、前記複数の圧縮信号についてそれぞれ目標物の検出を行い、それぞれの検出結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ受信信号を複数の周波数帯域に分割し、分割された帯域毎にパルス圧縮して複数の圧縮信号を生成する帯域分割処理手段と
前記複数の圧縮信号についてそれぞれ目標物の検出を行い、それぞれの検出結果を出力する検出手段と
を具備するレーダシステム。
【請求項2】
前記帯域分割処理手段は、前記周波数帯域を分割するときに前記レーダ受信信号のデータに一定値を埋める処理を行う請求項1記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記分割された帯域毎のパルス圧縮処理後のデータをそれぞれ大域的な特徴を学習した機械学習ベースで前記目標物の検出を行う請求項1記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記帯域分割処理手段は、前記分割された帯域毎にパルス圧縮して複数パターンの圧縮信号を生成し、
前記検出手段は、前記複数パターンの圧縮信号について、前記機械学習ベースでそれぞれ目標物の検出を行い、それぞれの検出結果を統合して出力する、
請求項3記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記帯域分割処理手段は、前記分割された帯域毎にパルス圧縮して複数パターンの圧縮信号を生成し、
前記検出手段は、前記複数パターンの圧縮信号について、前記機械学習ベースで目標物を検出して直接出力する、
請求項3記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記機械学習ベースによって学習する大域的な特徴は、データ間の相関性とノイズ分布を特徴として学習する、請求項3記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記圧縮信号は、距離、位置、ドップラ周波数のいずれかの次元を1つ以上含む、請求項1記載のレーダシステム。
【請求項8】
レーダ受信信号を複数の周波数帯域に分割し、
分割された帯域毎にパルス圧縮して複数の圧縮信号を生成し、
前記複数の圧縮信号についてそれぞれ目標物の検出を行い、
それぞれの検出結果を出力する
レーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダシステム及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置では、S/Nを改善する手法として、一般的に複数のパルスを積分する手法を採用し、パルス間における離散フーリエ変換または振幅ビデオの平均処理を実施する。そのため、積分処理に用いるパルス数が多いほどS/Nは向上する。
【0003】
具体的には、積分処理によりS/Nを改善した後に、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理により誤検出確率を一定にする。そして、誤検出確率が所望の値になるような閾値で検出処理を実施する。検出率はS/Nに依存するため、所望の検出率が得られるように積分パルス数を設定する。
【0004】
ここで、検出対象の目標が小さい場合や遠距離に存在する場合、低S/N信号を扱うことになる。低S/N信号の場合、積分処理を実施しても十分な強度を得ることができず、検出処理にいて閾値を下回り検出が困難になる。また、検出閾値を下げると、ノイズを検出することにより誤検出が発生する。
【0005】
この対策として、積分処理に用いるパルス数を増加させることで積分処理後のS/Nを向上させることができるが、1つの方位あたりのデータ取得に要する時間が増加する。つまり、捜索範囲全体の更新レートの低下につながる。これは目標が高速である場合や、目標の動きを注視する必要がある場合に問題となる。
【0006】
また、S/Nの向上として、空中線の開口面積や送信電力を大きくすることも考えられるが、空中線の搭載等の制約により限度がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-015079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上述べたように、従来のレーダシステムは、低S/Nの目標物の検出に際して、積分処理を実施しても十分な強度を得られず、検出閾値を下げればノイズ検出による誤検出が多発し、積分パルス数を増加すればデータ取得時間が増大し、空中線の開口面積や送信電力を大きくすれば搭載困難となる。
【0009】
本実施形態の課題は、低S/Nの目標物の検出に際して、積分処理を実施しても十分な強度を得られない場合でも、ノイズ検出による誤検出、データ取得時間の増大、空中線の開口面積や送信電力の大型化を招くことなく、低S/Nの目標物を精度よく検出することのできるレーダシステム及びレーダ信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、実施形態に係るレーダシステムによれば、レーダ受信信号を複数の周波数帯域に分割し、分割された帯域毎にパルス圧縮して複数の圧縮信号を生成し、前記複数の圧縮信号についてそれぞれ目標物の検出を行い、それぞれの検出結果を出力するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るレーダシステムの送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図である。
図2図2は、従来の信号処理と本実施形態の信号処理を比較して示す図である。
図3図3は、実施形態に係るレーダシステムの帯域分割パルス圧縮部の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係るレーダシステムの帯域分割処理例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るレーダシステムの検出処理部の目標物検出処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係るレーダシステムの検出処理部の他の目標物検出処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は実施形態に係るレーダシステムの構成を示すブロック図で、(a)は送信系統、(b)は受信系統である。図1(a)に示す送信系統は、信号生成器11で送信種信号を生成し、変調器12で送信種信号から変調信号を生成し、周波数変換器13で変調信号を高周波信号に変換した後、パルス変調器14でパルス変調してパルスによるレーダ信号を生成し、送信アンテナ15から空間に送出する。
【0014】
一方、図1(b)に示す受信系統は、受信アンテナ16でレーダ反射信号を受信し、周波数変換器17で受信信号をベースバンドに周波数変換し、AD変換器18でデジタル信号に変換して信号処理器19に入力する。信号処理器19は、参照信号記憶部191、帯域分割パルス圧縮処理部192、検出処理部193、検出結果表示部194によって構成される。
【0015】
参照信号記憶部191は、送信時のレーダ信号を参照信号として記憶する。帯域分割パルス圧縮処理部192は、ベースバンドに周波数変換されたレーダ受信信号とパルス圧縮のための参照信号とを入力し、帯域分割により分割されたNパターンの圧縮信号を生成出力する。検出処理部193は、Nパターンの圧縮信号から目標物を検出し、その検出結果を出力する。検出結果表示部194は、ディスプレイ20に接続され、検出処理部193で検出された目標物を映像化してディスプレイ20に表示する。
【0016】
上記構成において、それぞれの信号処理部の処理内容を説明する。
【0017】
図2は、従来の信号処理と本実施形態の信号処理を比較して示す図で、図2(a1)~(a3)は従来の信号処理例、図2(b1)~(b4)は本実施形態に係る信号処理例を示している。
【0018】
従来の信号処理では、例えば図2(a1)に示すレーダ受信信号をパルス圧縮した後、図2(a2)に示す圧縮処理後のデータを図2(a3)に示すように閾値と比較し、閾値異常となる領域を目標物検出結果として出力する。この手法では、前述したように、検出対象の目標が低S/N信号の場合、積分処理を実施しても十分な強度を得ることができず、検出処理にいて閾値を下回り検出が困難になる。また、検出閾値を下げると、ノイズを検出することにより誤検出が発生する。
【0019】
これに対して、本実施形態の信号処理では、図2(b1)に示すレーダ受信信号を図2(b2)、(b3)に示すように複数の周波数帯域に帯域分割(図では2分割)してそれぞれパルス圧縮し、図2(b4)に示すように、分割帯域毎の圧縮処理後のデータを、距離と尤度(目標物らしさ)の関係について大域的な特徴を学習した機械学習ベースによる目標物の検出処理を行う。この手法では、帯域分割してパルス圧縮することから、複数パターンの圧縮処理後のデータを取得することができる。この複数のデータは、分割を行って圧縮することから、目標物部分の値は、従来手法と比べてそれぞれ低いデータとなる。そのかわりに、データ間で目標物部分のみに相関性を持つという特徴が存在する。この、データ間の目標物部分のみの相関性という特徴や、ノイズの分布特徴などを機械学習で学習することにより、低S/Nの目標物の検出を可能にする。
【0020】
上記実施形態に係るレーダシステムの具体的な処理内容を図3乃至図6を参照して説明する。
【0021】
図3は、上記帯域分割パルス圧縮処理部192の処理手順を示すフローチャートである。図3において、上記帯域分割パルス圧縮処理部192は、レーダ受信信号とパルス圧縮のための参照信号とを入力する。レーダ受信信号は、フーリエ変換処理S11によって周波数領域の受信信号に変換され、帯域分割処理S12でNパターンの周波数領域の受信信号に分割される。
【0022】
図4は上記帯域分割処理S12の帯域分割処理例を示す図である。図4に示す帯域分割処理S12では、周波数領域(a~a)の受信信号を、帯域ごとに0埋め処理を行うことで、N(図4の例ではN=2)個の周波数領域の受信信号に分割を行う。
【0023】
一方、参照信号は、フーリエ変換処理S13によって周波数領域の参照信号に変換され、複素共役処理S14で複素共役がとられ、帯域分割されたNパターンの周波数領域の受信信号と共に複素乗算処理S15に入力され、複素乗算されてNパターンの周波数領域の圧縮信号となり、逆フーリエ変換処理S16で逆フーリエ変換され、これによって時間領域におけるNパターンの圧縮信号が得られる。
【0024】
なお、上記の例では周波数領域の受信信号を帯域ごとに0埋めすることで分割を行っているが、時間領域の参照信号、もしくは周波数領域の参照信号を0埋めして分割を行ってもよい。また、分割領域は、必ずしもデータ数を均等にしたり、連続させたりする必要はない。
【0025】
図5は上記検出処理部193の目標物検出処理手順を示すフローチャートである。この検出処理部193は、Nパターンの圧縮信号を入力とし、目標物の検出結果を出力とする。本実施形態では、この検出処理に機械学習ベースの検出処理S21と検出結果統合処理S22を用いる。
【0026】
機械学習ベースの検出処理S21では、Nパターンの圧縮信号を入力して機械学習ベースの目標物検出処理S21を行うことで、Nパターンの目標物の検出結果を出力する。検出処理における機械学習は、教師あり機械学習によって行う。この場合、学習データは、入力データとして、帯域分割パルス圧縮処理を用いて作成した圧縮信号を与える。教示データは、その入力データに対応した、目標物の情報を与える。このように学習を行うことで、信号とそれ以外(ノイズ等)の分類を行うようにする。なお、圧縮信号は、複素信号のまま扱ってもよいし、振幅値に変換することを前提としてもよい。
【0027】
検出結果統合処理S22では、Nパターンの目標物の検出結果を入力とし、1パターンの目標物の検出結果を出力する。ここで、検出結果の統合処理は、Nパターンの目標物の検出結果について、セル毎に目標物が存在するかどうかの投票処理を行う。投票率が閾値を超えた場合、そのセルから目標物が検出されたと判定して結果を統合する。結果の統合処理が完了したら、統合した目標物の検出結果を検出結果表示部194に出力し、その目標物の検出結果を所定の形式でディスプレイ20に表示させる。なお、検出結果の統合処理S22は、投票処理でなく、複数結果を1つに統合するような手法であれば他手法でもよい。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るレーダシステムでは、レーダ受信信号を帯域分割し、分割領域ごとに処理された、複数パターンの圧縮信号についてそれぞれ目標物の検出を行い、それぞれの検出結果を統合するようにしているので、低S/Nの目標物の検出に際して、積分処理を実施しても十分な強度を得られない場合でも、ノイズ検出による誤検出、データ取得時間の増大、空中線の開口面積や送信電力の大型化を招くことなく、低S/Nの目標物を精度よく検出することができる。
【0029】
図6は、上記レーダシステムに用いられる検出処理部193の他の目標物検出処理手順を示すフローチャートである。図5に示した処理手順では、機械学習による検出処理について、Nパターンのデータを入力して、Nパターンの検出結果を出力し(S21)、その後処理として、複数結果を統合した最終的な検出結果を出力する(S22)ようにしたが、図6に示す処理手順では、Nパターンのデータを入力して、1パターンの検出結果を直接出力するようにしている(S23)。すなわち、この処理手順では、複数の弱識別手段を用いるのでなく、1つの強識別手段を用いている。
【0030】
なお、上記実施形態において、検出処理部193へ入力する圧縮信号は、次元数を問わない。例えば、「range(距離)のみの1次元」「range-position(距離-位置)の2次元」「range-position-Doppler(距離-位置-ドップラ周波数)の3次元」等、いかなる次元数でもよい。
【0031】
また、検出処理における機械学習は、手法を問わない。例えば、教師なしクラスタリングのような手法でもよい。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0033】
11…信号生成器、12…変調器、13…周波数変換器、14…パルス変調器、15…送信アンテナ、16…受信アンテナ、17…周波数変換器、18…AD変換器、19…信号処理器、191…参照信号記憶部、192…帯域分割パルス圧縮処理部、193…検出処理部、194…検出結果表示部、20…ディスプレイ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6